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特許異議申立

2022-700597

センサ電線およびセンサ回路

審判番号
2022-700597
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-554613
登録番号
6996796
請求日
2022年07月07日
審決日
2022年12月22日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ロボセンサー技研株式会社
  • 【権利者代理人】吉延 彰広
  • 【権利者代理人】倉澤 直人
  • 【権利者代理人】八木 秀幸
  • 【異議申立人】福井 隆一
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 濱本 禎広
  • 審判官 波多江 進
分類
P1652.537-Z (G01L) / P1652.121-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6996796号発明「センサ電線およびセンサ回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6996796号の請求項2に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許第6996796号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月29日を国際出願日とする日本語特許出願であって、令和3年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月17日に特許掲載公報が発行された。 2(1) 本件特許の請求項2に係る特許に対して、令和4年7月7日に特許異議申立人福井隆一(以下、単に「特許異議申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。 (2) 同年9月26日付けで、本件特許の請求項2に係る特許に対して、取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 第2 本件発明 特許第6996796号の請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項2には次のとおり記載されている。 「 【請求項2】 圧電材料で覆われた第一の内部導体と、 前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体と、 前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、を備えたセンサ電線であって、 前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、 前記センサ電線は、外周を覆うシースが設けられたものであり、 前記センサ電線の一方の端部において、前記第一の内部導体および前記第二の内部導体の端部の外側が、前記外部シールド導体または前記外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、 さらに前記一方の端部は、前記シースの端部までをカバー部材で覆われたものである、 ことを特徴とするセンサ電線。」 第3 令和4年9月26日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 本件発明に係る特許に対して、当審において、令和4年9月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、請求項2に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、請求項2に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由3(進歩性の欠如) 請求項2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 甲1号証 :特開昭50-17877号公報 甲2号証 :米国特許第4183010号明細書 甲3号証 :特開2005-24385号公報 甲5号証 :特開昭62-230071号公報 第4 取消理由通知で通知した取消理由についての検討 1 理由1(明確性)について 請求項2には、「圧電材料で覆われた第一の内部導体」、「前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体」と記載されており、「圧電材料」が、「第一の内部導体」と「第二の内部導体」の間に配置されていることが記載されている。 また、同請求項2には、「前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており」と記載されており、「絶縁体」が、「第一の内部導体」と「第二の内部導体」の間に配置されていることが記載されている。 しかしながら、「第一の内部導体」と「第二の内部導体」の間に配置されている「圧電材料」と「絶縁体」が、同じものなのか、別のものなのか、別のものである場合、両者がどのような配置関係にあるのか、請求項2には記載されておらず、請求項2に係る発明は明確でない。 2 理由2(サポート要件)について 前記1で示したとおり、請求項2の記載において、「圧電材料」と「絶縁体」が同じものであることは特定されておらず、両者が異なるものであるものも含まれるが、発明の詳細な説明の【0030】、【0032】、【0057】及び【0085】には、「第一の絶縁被覆」が圧電性を有する材料で構成されていること、すなわち、両者が同じものであることしか記載されておらず、その他の記載にも、両者が異なるものであることは記載も示唆もされていないから、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 3 理由3(進歩性の欠如)について (1) 各甲号証に記載された事項の認定 ア 甲1号証に記載された事項と甲1発明の認定 (ア) 甲1号証に記載された事項 前記甲1号証には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。 a 1頁左欄18行~右欄3行 「本発明は、機械的ひずみを与えられたとき圧電発振器のように応答することがわかっているプラスチック材料製の誘電体を有する感知素子から得られる圧電効果の利用を指向する。このような感知素子は、例えば、侵入検知装置、ひずみ測定装置、あるいは温度勾配装置に利用し得る。」 b 2頁右上欄3~8行 「公知の侵入検知器は共軸型ケーブルを長く延びた摩擦電気変換器として用いている。この装置は、感知装置内の不可欠な素子として本質的に「雑音性の」共軸型ケーブルを用いており、人、動物、車輛その他がケーブルをじゃましたり動かしたりする度にそれらの存在を検知する。」 c 2頁右下欄6~17行、第1図 「本発明を添付の図面に関して説明する。第1図において、たわみ得る高感度の圧電性感知素子10は該素子に伝送されたひずみあるいは変形の大きさに振幅と極性とが比例する電荷を発生するようになっている。上記素子10はひずみ感知材料14の層で固くおおわれた内側導体14を有し該感知材料14は素子10が変形あるいはひずみを受けると圧電発振器のように応答する。感知材料14は遮蔽あるいは外側導体16によりおおわれている。外側導体は二つの機能を果す。すなわち、回路内の帰路としておよび望ましくない電場あるいは磁場を抑止する遮蔽として。」 「 [図:0001395228000001.jpg] 」 d 3頁右上欄11~16行 「上述した多くの選択の余地を考慮するならば、ケーブルの一つの好ましい実施例は、銀めっきした銅で被覆した鋼をより合わせてつくった内部導体と、ポリテトラフルオロエチレンでつくった感知素子と、銀めっきした銅を編んでつくった外側導体とを有している。」 e 3頁左下欄11~15行、第3図 「第3図は、第1図の感知素子10の望ましい設計変更であって、例えば、保護用絶縁ジャケット30が備えられていて外部導体16をおおい感知素子を天候や乱暴な取扱いから保護し該素子を水中、地中等に埋設することを可能にする。」 「 [図:0001395228000002.jpg] 」 f 3頁右下欄3~7行、第4図 「第4図に示した感知素子10の設計変更においては、圧電性ひずみ感知材料32の付加層32と付加的外側導体あるいは遮蔽34とが外側導体16とジャケット30との間に備えられていてより高い感度を有する感知素子を与える。」 「 [図:0001395228000003.jpg] 」 g 3頁右下欄17行~4頁右上欄3行、第6図 「第6図は、本発明の圧電感知素子と温度勾配検知装置、ひずみ計装置あるいは侵入検知装置のいずれかに用いるのに適した関連の電子装置との相互接続を示す簡単な線図である。詳細に述べるならば、一端に防湿シール52を有する圧電感知素子50が増幅器54に接続され、該増幅器54はチャージフォロア型でもまたはある場合には高入力インピーダンスを有する電圧増幅器でもよい。増幅器54は圧電感知素子により発生した電荷を増幅する。望ましい信号と望ましくない信号との分離を容易にするには帯域フィルタ回路(図示せず)が望ましい。圧電感知素子がひずみ計装置に用いられているとすれば、増幅器54の出力は、第6図の56に示したような適当な測定装置、例えばテープレコーダあるいはオシロスコープに接続される。圧電感知装置50が侵入検知装置に用いられているとすれば、増幅器54の出力を、第6図のそれぞれ58、60に示したように、警報装置60に信号を与える限界検知回路58に接続するのが好ましい。すべての回路は適当な電源(図示せず)によって電力を供給されている。人、動物、車輛の存在を指示することに加えて、このような侵入検知器の出力は、例えば地雷やラジオリンクの引金をひくことにも利用され得る。侵入検知装置用に圧電感知素子を設ける際、該素子をつねに土中に埋める必要はない。感知素子は例えば柵や橋に付着されてもよい。」 「 [図:0001395228000004.jpg] 」 (イ) 甲1号証に記載された発明の認定 a 前記(ア)cに摘記した「ひずみ感知材料14の層で固くおおわれた内部導体14」において、「ひずみ感知材料14」と「内側導体14」の参照符号が14と同じであり、いずれかの参照符号が誤りであるところ、第1図には、14の参照符号が示された部材は、12の参照符号が示された部材をおおっていることが示されているから、前記「内部導体14」は、「内部導体12」の誤記であることは明らかである。 b 前記(ア)b~dの記載から、圧電性感知素子10がケーブルであることが読み取れる。 c 前記(ア)eの記載における「外部導体16」は、前記(ア)c及びfの記載から見て、「外側導体16」の誤記であることは明らかである。 d 第4図から、外側導体16と付加的外側導体あるいは遮蔽34の間に付加層32が備えられていることが読み取れる。 e 前記(ア)の記載事項及び前記a~dの認定事項を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲1発明> 「ひずみ感知材料14の層で固くおおわれた内側導体12を有し、感知材料14は外側導体16によりおおわれており(2頁右下欄6~17行、第1図、前記aの認定事項)、 前記感知材料14は、ポリテトラフルオロエチレンでつくられ(3頁右上欄11~16行)、 保護用絶縁ジャケット30が備えられていて外側導体16をおおい(3頁左下欄11~15行、第3図、前記cの認定事項)、 圧電性ひずみ感知材料の付加層32と付加的外側導体あるいは遮蔽34とが外側導体16とジャケット30との間に備えられ(3頁右下欄3~7行、第4図)、 外側導体16と付加的外側導体あるいは遮蔽34の間に付加層32が備えられている(第4図、前記dの認定事項)、 ケーブルである圧電性感知素子10(前記bの認定事項)。」 イ 甲2号証に記載された事項と甲2発明の認定 (ア) 甲2号証に記載された事項 前記甲2号証には、以下の事項が記載されている。なお、括弧書きの日本語訳は当合議体によるものであり、下線は当合議体が付したものである。 a 1欄9~11行 「This invention relates to hydrophones and more particularly to an improved coaxial electret line hydrophone and method detecting underwater vibrations.」 (本発明は水中聴音器に関し、特に改良された同軸エレクトレットライン水中聴音器及び水中振動検出方法に関する。) b 2欄24~39行、図1 「Referring now to the drawings, FIG. 1 shows a surface ship 10 from which a coaxial electret cable 12 embodying the invention trails in the water between the sea floor 13 and the surface 14. The cable may be submerged to depths of 1,000 to 3,000 meters or greater and may be 1,000 meters or greater in length for the purpose of detecting reflections of seismic waves from the sea floor in the manner well known in the art of undersea geophysical exploration. Electrical signals induced in the cable by vibrations from underwater detonations are recorded and analyzed by suitable electronic equipment 15 carried on the vessel 10 for carrying out the purposes of the exploration. The nature of the undersea exploration may require that the cable 12 be submerged at a shallow depth as shown in solid line or at a greater depth as indicated in broken lines.」 (ここで図面を参照すると、図1は、水上艦10を示し、当該水上艦10から、本発明を具現化する同軸エレクトレットケーブル12が、海底13と海面14との間の水中を通っている。ケーブルは、海底の地球物理学的探査の技術分野において周知の方法で海底からの地震波の反射を検出する目的で、1000~3000メートル以上の深さに沈められてもよく、1000メートル以上の長さであってもよい。水中爆発からの振動によってケーブル内に誘導された電気信号は、調査の目的を実行するために水上艦10上に担持された適切な電子機器15によって記録され、分析される。海底探査の性質は、ケーブル12が、実線で示されるように浅い深さで、又は、破線で示されるようにより深い深さで沈められることを必要とし得る。) 「 [図:0001395228000005.jpg] 」 c 2欄40~53行、図2 「In accordance with one form of the invention, as shown in FIGS. 1 and 2, cable 12 has a coaxial configuration and comprises an outer jacket or covering 16, an outer conductor or shield 17, an electret layer 18 such as tetrafluoroethylene (Teflon), an intermediate conductor 19, a flexible polymer layer 20 such as polyvinylidene fluoride (PVF2) conditioned to have piezoelectric properties, and inner conductor 21. An air gap 22 exists between shield 17 and the electret layer 18 and is the result of normal cable manufacturing procedures. In this embodiment, outer conductor 17 and inner conductor 21 are connected by a common input lead 24 to the signal processing equipment 15 and intermediate conductor 19 is connected to the other input lead 26.」 (本発明の一形態によれば、図1及び図2に示すように、ケーブル12は同軸構造を有し、外側ジャケット又は被覆16、外側導体又はシールド17、テトラフルオロエチレン(テフロン)等のエレクトレット層18、中間導体19、圧電特性を有するものとされたポリビニリデンフルオライド(PVF2)等の可撓性ポリマー層20及び内側導体21を有する。空隙22が、シールド17とエレクトレット層18の間に存在しており、これは通常のケーブル製造手順の結果生じるものである。この実施例では、外側導体17及び内側導体21は共通の入力リード24によって信号処理装置15に接続され、中間導体19は他方の入力リード26に接続される。) 「 [図:0001395228000006.jpg] 」 (イ) 甲2号証に記載された発明の認定 a 図2及び前記(ア)cの記載から、ケーブル12が同軸構造を有し、外側から内側にかけて、外側ジャケット又は被覆16、シールド17、テトラフルオロエチレン(テフロン)等のエレクトレット層18、中間導体19、圧電特性を有するものとされたポリビニリデンフルオライド(PVF2)等の可撓性ポリマー層20及び内側導体21を有することが読み取れる。 b 前記(ア)の記載事項及び前記aの認定事項を総合すると、甲2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 <甲2発明> 「海底からの地震波の反射を検出する同軸エレクトレットケーブル12であって(2欄24~39行)、 前記ケーブル12は同軸構造を有し、外側から内側にかけて、外側ジャケット又は被覆16、シールド17、テトラフルオロエチレン(テフロン)等のエレクトレット層18、中間導体19、圧電特性を有するものとされたポリビニリデンフルオライド(PVF2)等の可撓性ポリマー層20及び内側導体21を有する(前記aの認定事項)、 同軸エレクトレットケーブル12。」 ウ 甲3、5号証に記載された事項と周知技術の認定 (ア) 甲3号証に記載された事項 前記甲3号証には、以下の事項が記載されている。 a 【0022】、【0027】、【図1】 「【0022】 図1は本実施例1の感圧センサの概略構成図、図2は図1りA-A位置における断面図である。図1より、感圧センサ1は、中心電極2、感圧層としての圧電体層3、外側電極4、被覆層5、絶縁被覆した導出線10、11を積層して同軸ケーブル状に成形した圧電センサで、図2に示すように導出線10、11は中心電極2と密接して配設されている。」 「【0027】 次に、図1に示すように感圧センサ1の先端部分Sで被覆層5を所定長さだけ剥き、外側電極4、圧電体層3、導出線10、11、中心電極2をむき出す。そして、導出線11を中心電極2に接続し、導出線10を外側電極4に接続する。接続は、例えば、ハンダ付けスポット溶接、カシメ等により行う。この接続後、端部Sは絶縁保護のため、熱収縮チューブや樹脂等からなる保護部(図示せず)により密封される。密封後、必要に応じてさらに導電部材によりカバーし、外側電極4と前記導電部材とを導通して端部Sをシールドする。以上の工程により感圧センサ1が製造される。」 「【図1】 [図:0001395228000007.jpg] 」 b 【0046】、【図8】 「【0046】 本実施例は特に、実施例1の先端部分Sに、導電ゴムキャップ21を被せた構成を点である。たとえば、熱収縮性の導電ゴムキャップを用い、収縮後、導電ゴムキャップ21の内径は外側電極4の外径より若干小さく設定するとで、導電ゴム21は外側電極4と機械的に係合するのみならず、電気的にも導通する。簡単な構成により、端末の機械的な保護と電気的なシールを果たすことができる。」 「【図8】 [図:0001395228000008.jpg] 」 c 【図8】から読み取れる事項 図8から、導電ゴムキャップ21が、感圧センサ1の被覆層5の端部までを覆っていることが読み取れる。 (イ) 甲5号証に記載された事項 前記甲5号証には、以下の事項が記載されている。 a 2頁右上欄7~20行、第1図、第2図 「第1、2図は、本発明に係る同軸状機械電気変換素子1の一例を示す。 ここで2は圧電ゴムからなる圧電層であって、その中心には線状導電材からなる芯電極3を有する導電ゴム製の芯電極層4が埋め込まれている。 またその外周には外皮電極層5と、熱収縮チューブ6とが順次被着されている。 前記熱収縮チューブ6は、圧電層2の一端部をも覆い、さらに他端部からは芯電極3、外皮電極層5を露出して、リード線10、10と接続し、前記機械電気変換素子1への機械的応力によって生じた芯電極3、外皮電極層5間の電位差を、前記リード線10、10により電気信号として取出すようにしている。」 「 [図:0001395228000009.jpg] 」 「 [図:0001395228000010.jpg] 」 b 2頁右下欄11~16行 「本発明は、上述のように、圧電層2に熱収縮チューブ6を被着して保護するようにしたものであるから、その内部に空気層が生じず、良好な信号電圧を発生し得るとともに、その外径も可及的に小さくでき、さらには構造が簡単なため、製造が容易低廉にできる等の優れた効果がある。」 (ウ) 甲3号証に記載された事項の認定 前記(ア)の【0022】、【0046】及び【図8】の記載事項を総合すると、甲3号証には、次の事項が記載されているものと認められる(以下「甲3記載事項」という。)。 <甲3記載事項> 「同軸ケーブル状に成形した圧電センサにおいて、その先端部分の被覆層の端部までを導電ゴムキャップで覆い、圧電センサの外側電極と機械的に係合するのみならず、電気的にも導通させ、端末の機械的な保護と電気的なシールを果たすこと。」 (エ) 周知技術の認定 a 前記甲3号証の【0022】、【0027】、【図1】に示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という。)。 <周知技術A> 「同軸ケーブル状に成形した圧電センサにおいて、その端部を導電部材によりカバーし、外側電極と前記導電部材とを導通してシールドすること。」 b 前記甲3号証の【0022】、【0027】、【図1】、及び、前記甲5号証の2頁右上欄7~20行、2頁右下欄11~16行、第1図、第2図に示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という。)。 <周知技術B> 「同軸ケーブル状に成形した圧電センサにおいて、その端部を熱収縮チューブや樹脂等からなる保護部により密封すること。」 (2) 甲1発明に基づく進歩性の欠如 ア 対比分析 本件発明と甲1発明を対比する。 (ア) 甲1発明の「圧電性ひずみ感知材料14」は、本件発明の「圧電材料」に相当し、甲1発明の「ひずみ感知材料14の層で固くおおわれた内側導体12」は、本件発明の「圧電材料で覆われた第一の内部導体」に相当する。 (イ) 甲1発明の「感知材料14」をおおう「外側導体16」は、本件発明の「前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体」に相当する。 (ウ) 甲1発明の「付加的外側導体あるいは遮蔽34」は、本件発明の「前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体」に相当する。 (エ) 甲1発明の「ケーブルである圧電性感知素子10」は、本件発明の「センサ電線」に相当する。 (オ)a 甲1発明の「ひずみ感知材料14」は、内側導体12をおおい、外側導体16によりおおわれており、また、ポリテトラフルオロエチレンでつくられたものであるから絶縁体である。 b 甲1発明の「圧電性ひずみ感知材料の付加層32」は、外側導体16と付加的外側導体あるいは遮蔽34の間に備えられており、前記感知材料14と同様、ポリテトラフルオロエチレンでつくられたものであると認められるから絶縁体である。 c 前記(ア)~(ウ)及びa、bを踏まえると、甲1発明の「内側導体12」、「ひずみ感知材料14」、「外側導体16」、「圧電性ひずみ感知材料の付加層32」、「付加的外側導体あるいは遮蔽34」の配列構造は、本件発明の「前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されて[いる]」構成に相当する。 (カ) 甲1発明の「保護用絶縁ジャケット30」は、圧電性感知素子10の最も外側にあるから、本件発明の「外周を覆うシース」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件発明と甲1発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点1において相違する。 <一致点> 圧電材料で覆われた第一の内部導体と、 前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体と、 前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、を備えたセンサ電線であって、 前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、 前記センサ電線は、外周を覆うシースが設けられたものである、 センサ電線、である点。 <相違点1> 本件発明では、「前記センサ電線の一方の端部において、前記第一の内部導体および前記第二の内部導体の端部の外側が、前記外部シールド導体または前記外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらに前記一方の端部は、前記シースの端部までをカバー部材で覆われたものである」のに対して、甲1発明では、そのような構成を有するとはされていない点。 ウ 相違点1に対する判断 前記相違点1について検討する。 前記相違点1に係る構成は、下記(ア)又は(イ)に示した理由により、甲1発明及び甲3記載事項、又は、甲1発明、周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 (ア) 前記(1)ウ(ウ)で甲3記載事項として示したとおり、甲3号証には、同軸ケーブル状に成形した圧電センサにおいて、その先端部分の被覆層の端部までを導電ゴムキャップで覆い、圧電センサの外側電極と機械的に係合するのみならず、電気的にも導通させ、端末の機械的な保護と電気的なシールを果たすことが記載されている。 そして、甲1発明においても、端部を機械的かつ電気的に保護することは、当然に配慮されるべきことであるから、甲1発明に甲3記載事項を適用し、圧電性感知素子10の保護用絶縁ジャケット30の端部までを、機械的な保護と電気的なシールを果たす導電ゴムキャップで覆い、このとき、前記甲3記載事項の電気的なシールを果たすという目的から、導電ゴムキャップを付加的外側導体あるいは遮蔽34と電気的に導通させることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、甲1発明に甲3記載事項を適用した構成における保護用絶縁ジャケット30は、本件発明の外部シールド導体と同じ電位の導体及びカバー部材を兼ねた構成に相当する。 (イ) 前記(1)ウ(エ)のa及びbで周知技術A及びBとして示したとおり、同軸ケーブル状に成形した圧電センサにおいて、その端部を、導電部材によりカバーし、外側電極と前記導電部材とを導通してシールドすることや、熱収縮チューブや樹脂等からなる保護部により密封することは、いずれも本件特許出願前に周知である。 そして、甲1発明においても、端部を機械的かつ電気的に保護することは、当然に配慮されるべきことであるから、甲1発明に前記周知技術A及びBを適用し、圧電性感知素子10の端部を、シールドのための部材である付加的外側導体あるいは遮蔽34と導通する導電部材でシールドし、かつ熱収縮チューブや樹脂等からなる保護部により密封することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際、前記導電部材でシールドしてから前記保護部を設けるようにするか、前記保護部を設けてから前記導電部材でシールドするようにするかは、当業者が適宜になし得る設計変更にすぎない。 また、圧電性感知素子10の端部を保護部により密封する際は、保護という目的からみて、保護用絶縁ジャケットの内部に位置する導体等が露出しないように、圧電性感知素子10の保護用絶縁ジャケット30の端部までを密封することについても、格別の困難性は認められない。 そして、本件発明によって奏される効果は、甲1発明及び甲3記載事項、又は、甲1発明、周知技術A及びBから当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 よって、本件発明は、甲1発明及び甲3記載事項、又は、甲1発明、周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである (3) 甲2発明に基づく進歩性の欠如 ア 対比分析 本件発明と甲2発明を対比する。 (ア) 甲2発明の「圧電特性を有するものとされたポリビニリデンフルオライド(PVF2)等の可撓性ポリマー層20」は、本件発明の「圧電材料」に相当し、甲1発明の「内側導体21」は、可撓性ポリマー層20の内側にあるから、本件発明の「圧電材料で覆われた第一の内部導体」に相当する。 (イ) 甲2発明の「中間導体19」は、可撓性ポリマー層20の外側にあり、シールド17の内側にあるから、本件発明の「前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体」に相当する。 (ウ) 甲2発明の「シールド17」は、内側導体21及び中間導体19の外側にあるから、本件発明の「前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体」に相当する。 (エ) 甲2発明の「海底からの地震波の反射を検出する同軸エレクトレットケーブル12」は、本件発明の「センサ電線」に相当する。 (オ)a 甲2発明の「可撓性ポリマー層20」及び「テトラフルオロエチレン(テフロン)等のエレクトレット層18」が、絶縁体であることは明らかである。 b 前記(ア)~(ウ)及びaを踏まえると、甲2発明の「外側から内側にかけて、シールド17、テトラフルオロエチレン(テフロン)等のエレクトレット層18、中間導体19、圧電特性を有するものとされたポリビニリデンフルオライド(PVF2)等の可撓性ポリマー層20及び内側導体21を有する」配列構造は、本件発明の「前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されて[いる]」構成に相当する。 (カ) 甲2発明の「外側ジャケット又は被覆16」は、同軸エレクトレットケーブル12の最も外側にあるから、本件発明の「外周を覆うシース」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件発明と甲2発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点2において相違する。 <一致点> 圧電材料で覆われた第一の内部導体と、 前記圧電材料の外側に設けられた第二の内部導体と、 前記第一の内部導体および前記第二の内部導体を囲む外部シールド導体と、を備えたセンサ電線であって、 前記第一の内部導体、前記第二の内部導体、および前記外部シールド導体の間には絶縁体が配置されており、 前記センサ電線は、外周を覆うシースが設けられたものである、 センサ電線、である点。 <相違点2> 本件発明では、「前記センサ電線の一方の端部において、前記第一の内部導体および前記第二の内部導体の端部の外側が、前記外部シールド導体または前記外部シールド導体と同じ電位の導体に囲まれた状態となっており、さらに前記一方の端部は、前記シースの端部までをカバー部材で覆われたものである」のに対して、甲2発明では、そのような構成を有するとはされていない点。 ウ 相違点2に対する判断 前記相違点2について検討する。 前記相違点2は前記(2)ウにおいて検討した前記相違点1と同一であるから、前記(2)ウの(ア)及び(イ)において示した理由と同様の理由により、前記相違点2に係る構成は、甲2発明及び甲3記載事項、又は、甲2発明、周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 また、本件発明によって奏される効果は、甲2発明及び甲3記載事項、又は、甲2発明、周知技術A及びBから当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 よって、本件発明は、甲2発明及び甲3記載事項、又は、甲2発明、周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明に係る特許は、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当するから、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700597

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