審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2020-700247

触覚情報推定装置、触覚情報推定方法、プログラム及び非一時的コンピュータ可読媒体

審判番号
2020-700247
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-005151
登録番号
特許第6587195号(P6587195)
請求日
2020年04月08日
審決日
2020年09月30日
公報発行日
2020年11月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社Preferred Networks
  • 【権利者代理人】中村 行孝
  • 【権利者代理人】朝倉 悟
  • 【権利者代理人】鈴木 順生
  • 【権利者代理人】石原 信人
  • 【異議申立人】川部 典子
  • 【異議申立人】浜口 由佳
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 岡田 吉美
  • 審判官 濱本 禎広
分類
P1651.113-Y (G01L) / P1651.121-Y (G01L) / P1651.537-Y (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6587195号発明「触覚情報推定装置、触覚情報推定方法、プログラム及び非一時的コンピュータ可読媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6587195号の請求項1~25に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・特許異議の申立ての趣旨 1 本件特許の設定登録までの経緯 特許第6587195号(以下「本件特許」という。)の請求項1~25に係る特許についての出願は、平成30年1月16日に出願された後、令和元年9月20日にその特許権の設定登録がされ、同年10月9日に特許掲載公報が発行された。 2 本件特許異議申立の趣旨 (1)特許異議申立て1 本件特許につき令和2年4月8日付けで特許異議申立人の川部典子(以下「特許異議申立人1」という。)により、請求項1~25に係る特許は取り消されるべきである旨の特許異議申立がされた(以下「特許異議申立て1」という。)。 (2)特許異議申立て2 本件特許につき令和2年4月8日付けで特許異議申立人の浜口由佳(以下「特許異議申立人2」という。)により、請求項1、10~14、21~25に係る特許は取り消されるべきである旨の特許異議申立がされた(以下「特許異議申立て2」という。)。 第2 各特許異議申立人が主張する取消理由 1 特許異議申立人1の主張する取消理由の概要 (1)取消理由1-1 「物体の触覚情報」及び「物体の触覚情報に関する特徴量」は、本件特許明細書の詳細な説明に記載されていない事項を含むものであって、出願時の技術常識に照らしても、各請求項に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、また、「モデル」は、本件特許明細書の詳細な説明に記載されていない事項を含むものであって、出願時の技術常識に照らしても、各請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1~25に係る特許は、特許法36条6項1号の規定に違反して特許がされたものであり、取り消されるべきである。 (2)取消理由1-2 「物体の触覚情報」、「物体の触覚情報に関する特徴量」及び「モデル」の意味が明確ではないから、請求項1~25に係る特許は特許法36条6項2号の規定に違反して特許がなされたものであり、取り消されるべきである。 (3)取消理由1-3 本件特許の請求項1、10~14、21~25に係る発明は、下記の文献1に記載された発明および文献2~4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1、10~14、21~25に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。 文献1 特開2003-24306号公報 文献2 「皮膚の抗老化最前線」、株式会社エヌ・ティー・エス、2006年7月5日発行、150-161頁 文献3 特開2009-268640号公報 文献4 特開2009-297064号公報 2 特許異議申立人2の主張する取消理由の概要 (1)取消理由2-1 本件特許の請求項1、10~14、21~25に係る発明は、下記文献5に記載された発明と同一であるから、請求項1、10~14、21~25に係る発明は特許法29条1項3号に該当し、本請求項に係る特許は取り消されるべきである。 文献5:井川翔太・牧野泰才・篠田裕之「ニューラルネットワークを用いた連続画像に基づく指先押下力の推定」、第34回センシングフォーラム-新たな地平を切り開くセンシング-(2017年8月31日・9月1日・熊本大学)において頒布された文献、公益社団法人計測自動制御学会計測部門、2017年8月31日発行、298-302頁。 (2)取消理由2-2 本件特許の請求項1、10~14、21~25に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが上記文献5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。したがって、本請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~25に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件特許発明1」などという。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~25に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、各請求項の記載は下記のとおりである。 「【請求項1】 1又は複数のメモリと、 1又は複数のプロセッサと、を備え、 前記1又は複数のプロセッサは、 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出すること、 を実行するよう構成される、 触覚情報推定装置。 【請求項2】 前記1又は複数のプロセッサは、 前記物体の第2の視覚情報に基づいて、把持装置が前記物体を把持する位置を決定すること、 を実行するようにさらに構成される、 請求項1に記載の触覚情報推定装置。 【請求項3】 前記第2の視覚情報が前記第1の視覚情報である、 請求項2に記載の触覚情報推定装置。 【請求項4】 前記1又は複数のプロセッサは、 決定された前記把持する位置に基づいて、前記把持装置に前記物体を把持させること、 を実行するようにさらに構成される、 請求項2又は請求項3に記載の触覚情報推定装置。 【請求項5】 前記1又は複数のプロセッサは、 前記物体の触覚情報に関する特徴量に基づいて、前記把持装置が前記物体を把持する力を決定すること、 を実行するようにさらに構成される、 請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の触覚情報推定装置。 【請求項6】 前記1又は複数のプロセッサは、 決定された前記把持する力に基づいて、前記把持装置に前記物体を把持させること、 を実行するようにさらに構成される、 請求項5に記載の触覚情報推定装置。 【請求項7】 前記1又は複数のプロセッサは、 前記把持装置が前記物体を把持した状態に基づいて、前記把持する位置を更新すること、 を実行するようにさらに構成される、 請求項2又は請求項3に記載の触覚情報推定装置。 【請求項8】 前記把持装置が前記物体を把持した状態は、少なくとも、前記物体を安定して把持できているか否かを示す情報又は触覚センサからの情報のいずれかを含む、 請求項7に記載の触覚情報推定装置。 【請求項9】 前記視覚センサと、 前記把持装置と、 を更に備える請求項2乃至請求項8のいずれかに記載の触覚情報推定装置。 【請求項10】 前記モデルは、前記視覚情報と前記視覚情報に紐づけられた触覚情報とを自己組織化したモデルである、 請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の触覚情報推定装置。 【請求項11】 前記第1の視覚情報は、少なくとも、前記物体のテクスチャ情報又は前記物体の形状情報のいずれか一つを含む、 請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の触覚情報推定装置。 【請求項12】 前記物体の触覚情報は、前記物体の表面からの面としての圧力情報を含む、 請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の触覚情報推定装置。 【請求項13】 1又は複数のメモリと、 1又は複数のプロセッサと、を備え、 前記1又は複数のプロセッサは、 視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて、少なくとも、視覚センサで取得された物体の視覚情報が入力されると、前記物体の触覚情報に関する特徴量を出力するモデルを学習すること、 を実行するよう構成される、 触覚情報学習装置。 【請求項14】 1又は複数のプロセッサが、 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出する、 触覚情報推定方法。 【請求項15】 前記1又は複数のプロセッサが、 前記物体の第2の視覚情報に基づいて、把持装置が前記物体を把持する位置を決定する、 請求項14に記載の触覚情報推定方法。 【請求項16】 前記第2の視覚情報が前記第1の視覚情報である、 請求項15に記載の触覚情報推定方法。 【請求項17】 前記1又は複数のプロセッサが、 決定された前記把持する位置に基づいて、前記把持装置に前記物体を把持させる、 請求項15又は請求項16に記載の触覚情報推定方法。 【請求項18】 前記1又は複数のプロセッサが、 前記物体の触覚情報に関する特徴量に基づいて、前記把持装置が前記物体を把持する力を決定する、 請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の触覚情報推定方法。 【請求項19】 前記1又は複数のプロセッサが、 決定された前記把持する力に基づいて、前記把持装置に前記物体を把持させる、 請求項18に記載の触覚情報推定方法。 【請求項20】 前記1又は複数のプロセッサが、 前記把持装置が前記物体を把持した状態に基づいて、前記把持する位置を更新する、 請求項15又は請求項16に記載の触覚情報推定方法。 【請求項21】 1又は複数のプロセッサが 視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて、少なくとも、視覚センサで取得された物体の視覚情報が入力されると、前記物体の触覚情報に関する特徴量を出力するモデルを学習する、 触覚情報学習方法。 【請求項22】 コンピュータを 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出する手段、 として機能させる、プログラム。 【請求項23】 コンピュータを、 視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて、少なくとも、視覚センサで取得された物体の視覚情報が入力されると、前記物体の触覚情報に関する特徴量を出力するモデルを学習する手段、 として機能させる、プログラム。 【請求項24】 1又は複数のプロセッサにより実行させると、 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出すること、 を備える方法、 を実行するプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体。 【請求項25】 1又は複数のプロセッサにより実行させると、 視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて、少なくとも、視覚センサで取得された物体の視覚情報が入力されると、前記物体の触覚情報に関する特徴量を出力するモデルを学習すること、 を備える方法、 を実行するプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体。」 第4 当審の判断 1 取消理由1-1について (1)特許異議申立人1の取消理由1-1についての具体的主張1 ア 特許異議申立人1は、取消理由1-1について、より詳細には、次のように主張している。 広辞苑(第6版)によると、「触覚」とは「物に触れたときにおこる感覚。皮膚の触点および各種の受容器により感受される。」と定義されている。皮膚には、触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の受容器が含まれていることが知られており、「触覚」には「滑りやすさ」、「硬さ」以外の様々な感覚が含まれ得る。したがって、本件特許発明1における「物体の触覚情報」は、圧力だけでなく、物体の表面形状、熱抵抗などの情報を含むと解される。また「物体の触覚情報に関する特徴量」は、「滑りやすさ」、「硬さ」だけでなく、物体の質感(ざらつき感、べたつき感)、物体の温冷感(金属の冷感、樹脂の温感)などの情報を含むと解される。請求項1における「物体の触覚情報」、「物体の触覚情報に関する特徴量」は、本件特許明細書の詳細な説明に記載されていない事項を含むものであって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 イ 上記特許異議申立人1の主張について検討すると、特許異議申立人1は、本件特許明細書の詳細な説明に記載されていない事項を含むものであるから本件特許発明1の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張しているが、なぜ、明細書の詳細な説明に具体的に開示されてないということから本件特許発明1の範囲まで一般化できないのか、その根拠は不明である(「滑りやすさ」や「硬さ」といった記載は例示にすぎない。)。また、「出願時の技術常識に照らしても」と述べているが、どのような技術常識であるのかも不明である。 むしろ、請求項1においては、「視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出する」ところ、特徴量を抽出される「物体の触覚情報」には限定はなく、どのような触覚情報でもいいと考えるのが常識的であるから、上記の理由に基づく特許法36条6項1号の違反は認められない。 2~25についても、同様にして、上記の理由に基づく特許法36条6項1号の違反は認められない。 (2)特許異議申立人1の取消理由1-1についての具体的主張2 特許異議申立人1は、取消理由1-1について、次の主張もしている。 モデル生成部106によって生成されるモデルは、視覚情報(及び触覚情報)を入力し、触覚情報(及び視覚情報)を出力するモデルであってCNN、FNNなどのニューラルネットワークモデルであると解される。一方、情報処理の分野における「モデル」は多義的な意味に用いられ、ある事象を数式で表した数理モデル、ルックアップテープルなどのデータモデル、アルゴリズムモデルなどの様々な意味を含み得る。請求項1における「モデル」は、本件特許明細書の詳細な説明に記載されていない事項を含むものであって、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 上記特許異議申立人1の主張について検討すると、請求項1では、「視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた触覚情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の触覚情報に関する特徴量を抽出する」と記載されており、請求項1のモデルとしては、情報処理の分野において「モデル」と呼ばれるものが全て含まれる訳ではない。したがって、情報処理の分野において「モデル」と呼ばれるものの全てにまで一般化できないことを根拠としての特許法36条6項1号の違反は認められない。 請求項2~25についても、同様にして、上記の理由に基づく特許法36条6項1号の違反は認められない。 (3)取消理由1-1についてのまとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立人1のより詳細な主張を参酌しても、請求項1~25に係る特許が特許法36条6項1号の規定に違反してされたとは認められない。したがって、取消理由1-1は理由がない。 2 取消理由1-2について 特許異議申立人1は、「物体の触覚情報」、「物体の触覚情報に関する特徴量」及び「モデル」の意味が明確ではないと主張するのみで、明確でないことの具体的な説明はない。 請求項1~25に係る特許が特許法36条6項2号の規定に違反してされたとは認められず、取消理由1-2は理由がない。 3 取消理由1-3について (1)各文献に記載された技術事項等 ア 文献1(特開2003-24306号公報) (ア) 文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 皮膚表面を撮像して皮膚表面画像データを得る撮像手段と、 得られた該皮膚表面画像データに対して処理を施して処理データを得る画像処理手段と、 複数の被験者について皮膚表面を目視観察して得たはりの程度についての官能評価データを教師信号として用いて、該複数の被験者について撮像し、処理した該処理データを学習した学習結果に基づいて、評価対象の被験者についてはりの程度を評価するはり評価手段とを有することを特徴とする皮膚のはり評価システム。 【請求項2】 前記撮像手段は、皮膚表面を拡大する拡大手段を備えたCCDカメラを有することを特徴とする請求項1記載の皮膚のはり評価システム。 【請求項3】 前記画像処理手段は、前記皮膚表面画像データから皮膚のはりに関するものとして予め設定した複数の特徴量について値を抽出する特徴量抽出部を有することを特徴とする請求項1記載の皮膚のはり評価システム。 【請求項4】 前記特徴量として、少なくともきめおよびくすみに関する指標のうちのいずれか1つまたは双方の指標を含むことを特徴とする請求項3記載の皮膚のはり評価システム。 【請求項5】 前記はり評価手段はコンピュータであり、 入力層、中間層および出力層からなる階層型ニューラルネットワークを有し、 学習により各層間の重み付けを変えて、はりの程度を評価することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚のはり評価システム。 【請求項6】 前記出力層は、はりの評価データを含むとともに、はり以外の他の皮膚状態の評価データをさらに含むことを特徴とする請求項5記載の皮膚のはり評価システム。 【請求項7】 前記階層型ニューラルネットワークにおいて、バックプロバゲーション学習則に基づいて学習することを特徴とする請求項5または6記載の皮膚のはり評価システム。」 「【0002】 【従来の技術】皮膚のはりは、皮膚が引き締まって力強いことをいい、この皮膚のはりの程度は、一般的に、老化の程度を判断する指標とされる。また、皮膚のはりの程度は、例えば、化粧品の分野においては、皮膚の表面状態を表す多くの指標のなかでも重要な指標であり、この皮膚のはりの程度を的確に評価することは、化粧品使用者の皮膚のはりの程度に応じた適切な化粧品を開発する際や化粧品使用者ひとりひとりの皮膚のはりの程度に応じた好適な化粧品を化粧品使用者に提供する際の有力な道具となる。 【0003】通常、皮膚の表面状態を評価する方法として、美容技師等の経験豊富な専門家が皮膚表面、例えば顔全体あるいは頬等の部分を目視観察して行う官能評価に依ることが多い。 【0004】しかしながら、上記官能評価は、評価の難しさや煩雑さ等を避けられない。このため、これらの不具合を軽減することを目的として、皮膚表面を撮像し、得られた画像データを処理、解析して評価データを得る方法も種々検討されており、そのための測定機器も実用化されている。 【0005】上記の測定機器は、画像処理方法を工夫することにより、画像の鮮明化等を図り、これにより、処理後の画像を見て皮膚の表面状態を評価するものが大半である。これらの測定機器は、いわば皮膚表面観察装置というべきものであり、自動的に評価までを行うシステムではない。 【0006】一方、例えば、特開平6-4601号公報に記載された顕微鏡画像評価システムによれば、染色した生物標本について細胞の重なり度合い、配列の程度等を評価するために、顕微鏡およびCCDカメラを用いて撮像して得られた処理画像データについて、所定の画像前処理を施した後、生物標本を評価するための評価値を教師信号として、処理された画像データを学習するニューラルネットワークを有するコンピュータを用いて評価することが行われている。そして、このシステムを用いることにより、常に評価精度を維持でき、また、作業者の負担を軽減することができるとされている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したように、従来の皮膚表面観察装置は、画像を観察して、皮膚のくすみ、きめの細かさ、しみ・そばかす、肌荒れ等を判断するものであり、皮膚のはりの程度を的確に評価するのに適した装置は得られていない。 【0008】また、特開平6-4601号公報記載のものは、上記のように生物標本について細胞の状態を評価するものであり、皮膚のはりを含めた皮膚の表面状態を測定する技術とはかけ離れたものである。 【0009】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、皮膚のはりの程度を再現性よくかつ簡易、迅速に評価することができ、これにより、化粧品研究開発に寄与し、また、店頭販売等において各人に好適な化粧品を化粧品使用者に提供することができる皮膚のはり評価システムを提供することを目的とする。」 「【0012】この場合、前記撮像手段は、皮膚表面を拡大する拡大手段を備えたCCDカメラを有すると、好適である。」 「【0016】また、この場合、前記はり評価手段はコンピュータであり、入力層、中間層および出力層からなる階層型ニューラルネットワークを有し、学習により各層間の重み付けを変えて、はりの程度を評価すると、好適である。 【0017】このとき、前記出力層は、はりの評価データを含むとともに、はり以外の他の皮膚状態の評価データをさらに含むと、好適である。 【0018】また、このとき、前記階層型ニューラルネットワークにおいて、バックプロバゲーション学習則に基づいて学習すると、好適である。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明に係る皮膚のはり評価システムの好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。 【0020】本実施の形態例に係る皮膚のはり評価システム(以下、単に評価システムという。)10は、図1に示すように、撮像装置(撮像手段)12と、コンピュータ14とで略構成される。 【0021】撮像装置12は、例えば後述する10.4インチモニタ上で倍率32倍に拡大される、f11.7mm、F=5.6のレンズ(拡大手段)16を備えたCCDカメラ18を有する。また、陰の出にくい撮像を可能とする適宜の照明手段を備える(図示せず。)。 【0022】CCDカメラ18は、図示しない1/3インチCCDカラーイメージセンサを有し、この1/3インチCCDカラーイメージセンサで得られる有効画素は、水平510、垂直492である。所定の撮像条件で例えば約6.5mm×5.0mmの範囲の皮膚表面がCCDカメラ18により撮像される。 【0023】コンピュータ14は、画像処理手段20およびはり評価手段22を有する。 【0024】画像処理手段20は、特徴量抽出部24を有する。また、はり評価手段22は、ニューラルネットワーク26を有する。また、出力装置として、例えば10.4型液晶カラーテレビ28を有する。 【0025】コンピュータ14は、例えば、Pentium III (650MHz)のものを用いる。 【0026】特徴量抽出部24は、皮膚表面画像について後述する皮膚のはりの程度の官能評価と相関が高いと考えられる画像特徴量(以下、特徴量あるいは指標ということがある。)を設定し、皮膚表面画像データからその画像特徴量の値(処理データ)を抽出する。」 「【0028】ここで、皮膚のはりについて、その特徴と、美容技師等による皮膚のはりの程度の評価方法を説明する。 【0029】加齢によって生じる皮膚のはりの低下は、皮膚の弛みの増加という言葉で置きかえることができる。 【0030】この皮膚の弛みは、40歳前後から特に顎、瞼、頬、側腹などに生じる。発生原因は、しわと同様、真皮の弾性力の低下や皮下脂肪組織の支持力の低下、さらには皮膚を支える筋力の低下などが挙げられる。 【0031】この皮膚の弛みは、皮膚のミクロな形態変化としては、皮膚表面の凹凸が浅くなり皮溝、皮丘が不鮮明となる現象として現われる。また、このとき、皮溝の放射状の均一性は失われ一方向に流れるようになる。さらに、皮溝は、長さが増加し、幅が狭くなる。一方、毛孔は、大きくなる傾向を示す。 【0032】美容技師等は、このような皮膚の弛みの状態、言いかえれば、皮膚のはりの程度を、目視による官能評価(視感評価)によって判断する。この場合、顔全体を見て判断することもあれば、撮像装置を用いて得た皮膚表面の特定箇所の拡大画像を見て判断することもあり、両者を併用することもある。 【0033】官能評価は、皮膚のはりを非常に感じると判定するものから皮膚のはりを感じないと判定するものまでの下記6段階で行い、数値化したものである。 【0034】 6 非常に感じる 5 かなり感じる 4 感じる 3 やや感じる 2 わずかに感じる 1 感じない 本実施の形態例の評価システム10において、前記したCCDカメラ18の画像データは画像処理手段20に出力される。」 「【0039】はり評価手段22について、図3を参照して説明する。 【0040】画像(皮膚表面画像データ 図3中S1)から抽出された特徴量(図3中S2)は正規化(図3中S3)された後、ニューラルネットワーク(図3中S4)に取り込まれる。ニューラルネットワークS4では、上記した美容技師等が複数の被験者について皮膚表面を目視観察して得たはりの程度についての官能評価(視感評価)データを教師信号として用いて、その複数の被験者について撮像し、処理した処理データを学習して(図3中S5)得られる学習結果(学習済みネットワーク 図3中S6)に基づいて、評価対象の被験者(評価用画像 図3中S7)について、はりの程度を評価する(図3中S8)。 【0041】ここで、被験者として120人を評価対象とし、そのうち80人については学習データとして用い、残り40人については、本評価システムの妥当性を評価するための未学習データとして用いた。 【0042】つぎに、ニューラルネットワーク26(S4)の構成についてさらに説明する。 【0043】ニューラルネットワーク26は、図4に示す階層型であり、53個の入力層S10および11個の出力層S11とともに、これらの層間に設けられた20~40個の中間層S12とで構成される。 【0044】階層型のニューラルネットワーク26は、入力層S10の特徴量データ信号が結合の重みによって変換されながら出力層S11の11個の評価項目の値として出力される。この11個の評価項目は、はり、透明感、つや、黒さ、白さ、毛穴の目立ち、くすみ、きめの細かさ、しみ・そばかす、色むら及び肌荒れであり、前記した美容技師等が用いる官能評価項目と対応するものである。 【0045】ニューラルネットワーク26における学習過程と認識過程について説明する。これらの過程は、先に説明した図3と対応するものである。 【0046】学習過程では、まず、ニューラルネットワーク26によって53個の特徴量についての80組の入力パターン(学習データ)から11個の評価項目について80組の出力パターンを得る。そして、バックプロバゲーション(誤差逆伝送法)を用いて、その出力パターンと官能評価データから得られる望ましい出力パターン(教師信号)との誤差を計算し、それを学習信号として入力層のほうへ伝播させながら結合の重みを改善していく。これにより、学習の結果としてのニューラルネットワーク26が再構築される。」 「【図3】 」 「【図4】 」 (イ) 文献1に記載された発明 文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「 皮膚表面を撮像して皮膚表面画像データを得る撮像手段と、 得られた該皮膚表面画像データに対して処理を施して処理データを得る画像処理手段と、 複数の被験者について皮膚表面を目視観察して得たはりの程度についての官能評価データを教師信号として用いて、該複数の被験者について撮像し、処理した該処理データを学習した学習結果に基づいて、評価対象の被験者についてはりの程度を評価するはり評価手段と を有する皮膚のはり評価システムであって(【請求項1】)、 前記画像処理手段は、前記皮膚表面画像データから皮膚のはりに関するものとして予め設定した複数の特徴量について値を抽出する特徴量抽出部を有し(【請求項3】)、 前記特徴量として、少なくともきめおよびくすみに関する指標のうちのいずれか1つまたは双方の指標を含み(【請求項4】)。 前記はり評価手段はコンピュータであり、 入力層、中間層および出力層からなる階層型ニューラルネットワークを有し、 学習により各層間の重み付けを変えて、はりの程度を評価するものであり(【請求項5】)、 前記階層型ニューラルネットワークにおいて、バックプロバゲーション学習則に基づいて学習する(【請求項7】)、 皮膚のはり評価システム。」 イ 文献2(皮膚の抗老化最前線) 150頁下から4行目-151頁下から2行目まで。 「理論的に皮膚はこの両方の性質、つまり粘弾性を有し、弾性と粘性が混じり合って検出され、図1(c)の粘弾性体としてのレオロジー的な挙動を示す。 さらにレオロジーの理論的解析を皮膚に適用する場合、理論的解釈を余計に困難にする要因として、皮膚は多層構造を有し、それぞれの層(表皮・真皮)の寄与がお互いに影響して、合成されて検出される。そのため、皮膚のどこの部分がどのように寄与して検出されるかは不明であるし、測定器によりその検出特性は異なると思われることである。 皮隋の柔軟性を測定する方法は、いろいろな方法が考案・報告されている。表1に示すように、接触法は、皮陪に対して垂直に負荷をかけて、その負荷に対する挙動を解析する方法と、皮廣に対して水平に負荷をかけて、その負荷に対する挙動を解析する方法の2つに大別される。」 ウ 文献3(特開2009-268640号公報) 文献3には、次の事項が記載されている。 「【0002】 皮膚の柔軟性を非侵襲で測定する方法は、従来色々な方法が考案されている。例えば、皮膚を減圧で吸引して皮膚の変形を計測する吸引法、皮膚を機械的に持ち上げたり押し込んだりして、皮膚の変形を計測する牽引・圧搾法、皮膚表面に垂直に重りのついた物を落とし、その落ちたときの振動の減衰を計測するバリスト法、超音波振動子を利用し、皮膚に垂直に振動を与え、その振動の帰りを測定する超音波振動法、皮膚に1つあるいは2つの金属接触子を密着させ伸縮させその応力等を測定する伸展法、皮膚に円盤状のDiskを皮膚に当て回転トルクをかけてその応力や位相のずれを測定する捻れ法、ある周波数の波動を皮膚に水平に伝搬させ、その振動の速さや振動の位相のズレを測定する波動伝搬法等が知られている。このうち、吸引法は、皮膚のはり・たるみを測定する一般的な評価法としてその地位を確立しており、一定の吸引圧及び時間で変形する皮膚の変位を解析した場合に、戻り弾性比率(Ur/Uf)には加齢に伴いその戻り比率が減少することが報告されている(非特許文献1及び2)。 しかしながら、皮膚は多層構造を有することから、それぞれの層(表皮・真皮・皮下組織)の寄与が互いに影響し、いずれ方法を用いてもこれらが合成されて検出されるために、皮膚のどこの部分がどのように寄与し検出されるかどうかは不明であり、また、皮膚の内部弾性を非侵襲で表皮・真皮・皮下組織といった層別に算出することは不可能である。」 エ 文献4(特開2009-297064号公報) 文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0002】 美しい皮膚でありたいと願うのは、女性のみならず万人が思うところであり、この為、化粧料などを使用して皮膚の状態を好ましく保とうと多くの人が思っている現状がある。この皮膚の状態は個人によって大きく異なっているが、かような皮膚の状態を的確に測定・評価する方法が種々に検討されてきた。このような方法には、官能的評価法と機器的測定法の2種類がある。官能的評価法は、人間の感覚を計器として測定する方法であり、押す、つまむ、ずらす、引っ張る、すべらす、こする等の動作の評価項目、評価尺度、評価条件等が存する。一方、機器的測定法は、官能的評価法の代用として研究開発され、官能的評価との対応性が重要な課題であった。このため、そのため種々の計測法の開発やそれらの官能的評価法との関係性が総合的に検討されてきた(非特許文献1)。 【0003】 かような機器開発としては、例えば、皮膚表面の官能的な「ハリ」「すべり」を評価する時の動作をシミュレートした、肌の「ハリ・弾力性」・「すべり」測定器が開発され、肌や化粧料の評価に利用された(非特許文献2,3参照)。その後、頭皮の張力測定装置(特許文献1参照)、摩擦係数を用いた皮膚状態評価法(特許文献2参照)、及び皮膚画像特性とニューラルネットを利用した皮膚のはり評価装置(特許文献3参照)、シワとの関連性が高い皮膚のコラーゲン線維構造に注目した弾性体の物性測定装置(特許文献4参照)、角層中の酸化タンパク質を指標にした角層の弾力性評価法(特許文献5参照)等が開示され、評価対象部位の拡大や精度アップした鑑別ができるようになった。しかし、上記の方法は、物性的乃至は触覚的ハリ・弾力性、又は視覚から見たハリ・弾力性のいずれか一方の測定方法であり、両者の明確な違いや「視覚的ハリ」の特徴は全く知られていなかった。 【0004】 このような状況下、本発明者らは、理想の肌の要素として、女性が最も重要視している「肌のハリ」の構造特性を測定できる手段を検討してきたが、肌に触ったときに感じる肌のハリ(以下「触覚的ハリ」と定義)と、肌を見た時に感じる肌のハリ(以下「視覚的ハリ」と定義)とが全く異なることは知られていなかった。また、かような「視覚的ハリ」が皮膚物性(皮膚生理値)によって精度良く鑑別できることも全く知られていなかった。 【0005】 【特許文献1】特開平06-078886号公報 【特許文献2】特開2003-024282号公報 【特許文献3】特開2003-024306号公報 【特許文献4】再表01/052724号公報 【特許文献5】特開2006-349372号公報 【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊(5), 376, 1984 【非特許文献2】J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. 15(1), 32, 1981 【非特許文献3 】J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. 18(2), 121, 1984 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、このような状況下為されたものであり、肌の「視覚的ハリ」の鑑別技術に関し、さらに詳細には、肌を見た時に感じる「視覚的ハリ」を、肌を触ったときの「触覚的ハリ」から分離し、皮膚物性(皮膚生理値)によって精度良く鑑別する技術を提供することを課題とする。」 「【図1】 」 (2)本件特許発明1と文献1に記載された発明の対比 本件特許発明1と文献1に記載された発明を対比すると、両者は、 「1又は複数のメモリと、 1又は複数のプロセッサと、を備え、 前記1又は複数のプロセッサは、 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた別の情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の別の情報に関する特徴量を抽出すること、 を実行するよう構成される、もの」 の点で一致し、次の相違点において相違する。 <相違点> 視覚情報に紐付けられた別の情報が、本件特許発明1においては、触覚情報であり、本件特許発明1は「触覚情報推定装置」であるのに対して、文献1に記載された発明においては、視覚情報に紐付けられた別の情報が、「皮膚表面を目視観察して得た」「官能評価」であり、「皮膚のはり評価システム」である点。 (3)相違点についての検討 文献1に記載された発明は、「通常、皮膚の表面状態を評価する方法として、美容技師等の経験豊富な専門家が皮膚表面、例えば顔全体あるいは頬等の部分を目視観察して行う官能評価に依ることが多い」(文献1の【0003】)ところ、「皮膚のはりの程度を再現性よくかつ簡易、迅速に評価することができる皮膚のはり評価システムを提供することを目的」としている(文献1の【0009】)。 一方、文献4には「肌に触ったときに感じる肌のハリ(以下「触覚的ハリ」と定義)と、肌を見た時に感じる肌のハリ(以下「視覚的ハリ」と定義)とが全く異なることは知られていなかった。」(文献1の【0004】)と記載されているように、「視覚的ハリ」と「触覚的ハリ」とは異なるものである。 してみれば、経験豊富な専門家に依っていた「視覚的ハリ」の評価をシステムによって得ようとする文献1に記載の発明において、これを「触覚的ハリ」に置き換えることは、その目的と相容れないものであるから、「触覚的ハリ」の測定方法として文献2、3に記載されているように種々のものが知られているとはいえ、文献1に記載された発明における、視覚情報に紐付けられた別の情報を、「触覚的ハリ」に置き換えることは、当業者には思いもよらないことというべきである。 したがって、請求項1に係る発明は、文献1に記載された発明および文献2~4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明10~14、21~25について 本件特許発明10~14、21~25においても、「視覚情報に紐付けられた触覚情報」を発明の構成としているところ、上記と同様にして、これらの発明は、文献1に記載された発明および文献2~4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由1-3についてのまとめ 以上検討のとおり、本件特許発明1、10~14、21~25は、文献1に記載された発明および文献2~4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、取消理由1-3は理由がない。 4 取消理由2-1及び取消理由2-2について (1)文献5 ア 文献5に記載された事項 文献5には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。なお、カンマ及びピリオドは読点及び句点に変更した。)。 (ア)タイトル 「ニューラルネットワークを用いた連続画像に基づく指先押下力の推定」 (イ)298頁右欄13行-299頁左欄15行 「本手法は事前にモデルの学習を行うことにより、画像センサを利用可能なデバイスのみを用いて指に一切の装置を接触させることのない力推定が可能であるという利点をもつ。この方法は対象物体と指のどちらかにセンサを装着することにより行われている従来の力計測が適さない場面での活用が期待できる。提案手法は将来的に任意の平面で画像センサのみを用いた遠隔的な押下力の推定を実現することを目指すものである。応用例として先述したようなプロジェクタによる仮想タッチ入力デバイスにおける入力情報の拡張や、カメラを内蔵したスマートフォンのアプリケーション等への入力手段、専門技能における指先力の計測手段としての利用が考えられる。 本研究では以下の条件のもとで指先力推定を行う。 ・指先によって押下する位置とカメラ位置は固定する。 ・力が加わるタイミングは事前情報として計測された力情報から取得する。 ・既に取得された動画像情報に対し、オフラインで押下力推定を行う。 ・本研究はこれらの条件の下で押下力推定を行うことにより,画像情報のみにより押下力推定が可能であるか検証を行うことを目的とする。 2.データ取得 Fig.I の装置を用いて動画像と押下力を取得する。本装置はアルミニウム・アクリルで構成されたフレーム、WEBカメラ、ロードセル部からなる。フレームによりWEBカメラとロードセル部の相対的な位置は同定されている。ロードセル部はアクリルで構成された押下面とロードセルからなり、押下面に加わる鉛直方向の力をロードセルによって計測することができる。ロードセル部は光の反射を低滅するため焦色の紙で覆われている。本研究では被験者1名に対し実験を行いデータを収得した。」 (ウ)299頁右欄19-100頁右欄3行 「 4. 推定器のネットワークモデル フィードフォワードニューラルネットワークにより推定器を構成し、前述のデータセットを用いて学習を行う。入力層を正規化された画像データのピクセル値とする。また、出力層のユニット数を1とし、このユニットの持つ値を押下力の推定値とする。誤差関数を平均二乗誤差として訓練データを用いた誤差逆伝播法による学習を行い、確認用データにおける誤差二乗平均が最小となった学習同数におけるパラメータを採用する。活性化関数としてReLU指数を用い、最適化手法にはAdam5)を用いた。 以下では本実験で構成した4種類のネットワークモデルについて述べる。 4.1 モデル1:全結合層からなるニューラルネットワークによるモデル 2層の隠れ層を持つフィードフォワードネットワークを用いて、押下力の推定値を計算する。入力層、隠れ層、出力層はそれぞれ全結合によって結合されている。入力は前節で選出した6枚のフレーム全体である。隠れ層のユニット数はそれぞれ1OOO個であり、50%の確率でランダムにドロップアウト6)を行う。 4.2 モデル2:畳込みニューラルネットワークによるモデル 畳込み暦とプーリング層を交互に2層ずつ重ねたネットワークを用いて、押下力の推定値を計算する。入力は前節で選出した6枚のフレームを奥行方向に並べた多チャンネル画像である。 隠れ層は入力側から順に畳込み層、プーリング層、畳込み層、プーリング層であり、出力側のプーリング層の値の重み付き和をとることによって出力を得る。2つの畳込み層はフィルタサイズがともに5×5でありフィルタ数は入力側の畳込み層が32、出力側の畳込み層が64である。2つのプーリング層はともに2×2の小領域に対しマックスプーリングを行う。出力層側のプーリング層に全結合を行うことにより出力層を得る。Fig.3はネットワークモデルの構造を表した図である。」 「4.3 モデル3:指先周辺部のみを用いた畳込みニューラルネットによるモデル 前節で選出した6枚のフレームを奥行方向に並べた多チャンネル画像の指先周辺部分のみを取り出して入力とし、畳込みニューラルネットワークにより押下力の推定を行う。押下力が加えられたとき、その特徴量が爪の模様に現れることは実証されている2)。手全体の画像を利用する場合に爪色変化以外の特徴量の自動的な抽出が実現できているかを、このモデルを用いた結果とモデル2を用いた結果の比較により検証する。隠れ層のフィルタサイズ、フィルタ数およびプーリング層の設定はモデル2と同様である。 4.4 モデル4:1フレームのみを用いた畳み込みニューラルネットによるモデル 前節で選出した6枚のフレームのうち,押下力のピークを観測したフレームのみを取り出して人力とし、畳込みニューラルネットワークにより押下カの推定を行う。連続した複数の画像を用いる有効性を、このモデルを用いた結果とモデル2を用いた結果の比較により検証する。隠れ層フィルタサイズ、フィルタ数およびプーリング層の設定はモデル2、モデル3と同様である。」 」 (エ)Fig. 3 「 」 (オ)Fig. 4 「 」 イ 文献5に記載された発明 文献5には次の発明が記載されていると認められる。 「事前にモデルの学習を行うことにより、画像センサを用いて指に一切の装置を接触させることなく、画像情報のみにより押下力推定が可能であり、 動画像と押下力を取得する装置は、アルミニウム・アクリルで構成されたフレーム、WEBカメラ、ロードセル部からなり、 フレームによりWEBカメラとロードセル部の相対的な位置は同定されており、 ロードセル部はアクリルで構成された押下面とロードセルからなり、押下面に加わる鉛直方向の力をロードセルによって計測することができ(摘記事項(イ))、 フィードフォワードニューラルネットワークにより推定器を構成し、前述のデータセットを用いて学習を行うものであり、 入力層を正規化された画像データのピクセル値とし、 出力層のユニット数を1とし、このユニットの持つ値を押下力の推定値とし、 押下力が加えられたとき、その特徴量が爪の模様に現れ(摘記事項(ウ))、 メモリとプロセッサを備える(下記技術常識)、 ニューラルネットワークを用いた連続画像に基づく指先押下力の推定装置(摘記事項(ア)及び摘記事項(イ))。」 (コンピュータで処理をしている以上、コンピュータに「メモリとプロセッサを備える」ことは自明であるので、上記のとおり認定した。) (2)本件特許発明1と文献5に記載された発明の対比 本件特許発明1と文献5に記載された発明を対比すると、両者は、 「 1又は複数のメモリと、 1又は複数のプロセッサと、を備え、 前記1又は複数のプロセッサは、 少なくとも、視覚センサで取得された物体の第1の視覚情報を、視覚情報と前記視覚情報に紐付けられた別の情報とに基づいて生成されたモデルに入力し、前記物体の情報に関する特徴量を抽出すること、 を実行するよう構成される、 情報推定装置」の点で一致し、下記の点で相違する。 <相違点> 本件特許発明においては、視覚情報に紐付けられた別の情報が「触覚情報」であり、抽出される特徴量が「物体の触覚情報に関する特徴量」であり、装置の種類が「触覚情報推定装置」であるのに対して、文献5に記載された発明においては、視覚情報に紐付けられた別の情報が「指先押下力」であり、抽出される特徴量が「爪の模様」であり、装置の種類が「指先押下力の推定装置」である点。 (3)相違点についての検討 指を物体としてみるとき、「指先押下力」は、指が押下する力であって、指に対する触覚情報であるとはいえないから、上記相違点は実質的な相違点であり、本件特許発明1は文献5に記載された発明であるとはいえない。 また、文献5に記載された発明においては、視覚画像を取得される指が押下力という力を及ぼす主体となっていることが前提となっているから、視覚画像が取得される対象を、力を受ける物体に変更することは、逆転の発想が必要であり、発想の飛躍がないと直ちにいうことはできない。 したがって、本件特許発明1は、文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。 (4)本件特許発明10~14、21~25について 本件特許発明10~14、21~25においても、「視覚情報に紐付けられた触覚情報」を発明の構成としているところ、上記と同様にして、これらの発明は、文献5に記載された発明であるということはできず、また、文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由2-1及び2-2についてのまとめ 以上検討のとおり、本件特許発明1、10~14、21~25は、文献5に記載された発明ではないから、これらの発明は特許法29条2項3号には該当しない。したがって、取消理由2-1は理由がない。 また、本件特許発明1、10~14、21~25は、文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。したがって、これらの発明に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるとは認められないから、取消理由2-2は理由がない。 第5 むすび 以上検討のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠に基づいては、請求項1~25に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700247

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決19件(川部 典子、株式会社Preferred Networks、浜口 由佳)
  • 2023-700045異議申立 / 2024-05-14 / 訂正認容故障予知装置、故障予知システム及び故障予知方法
    同じ当事者: 株式会社Preferred Networks
  • 2022-700162異議申立 / 2023-06-08 / 訂正認容コントローラ、作業制御装置、多軸動作制御装置、及び駆動制御装置
    同じ当事者: 川部 典子
  • 2018-700363異議申立 / 2019-08-19 / 訂正認容支持部材及び基板処理装置
    同じ当事者: 川部 典子
  • 2025-009513拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)物体把持方法、物体把持プログラム、物体把持装置、学習方法、学習プログラムおよび学…
    同じ当事者: 株式会社Preferred Networks
  • 2023-014576拒絶査定不服審判 / 2025-01-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)異常検出システム、異常検出方法、異常検出プログラム及び学習済モデル生成方法
    同じ当事者: 株式会社Preferred Networks
同じ論点・分野の審決(審決分類)107件(113・G01L、121・G01L、537・G01L)
  • 2022-700350異議申立 / 2023-02-13 / 訂正認容入力装置および電子機器
    共通の審決分類: 113・G01L、121・G01L、537・G01L
  • 2018-700652異議申立 / 2019-09-27 / 訂正認容センサ測定値を検出して処理しかつ/又は操作器を制御する装置
    共通の審決分類: 113・G01L、121・G01L、537・G01L
  • 2024-008041拒絶査定不服審判 / 2025-08-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)長さの変化を測定するための装置
    共通の審決分類: 113・G01L、121・G01L、537・G01L
  • 2023-007647拒絶査定不服審判 / 2024-02-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)圧電センサを用いた繊維構造体
    共通の審決分類: 113・G01L、121・G01L、537・G01L
  • 2017-002752拒絶査定不服審判 / 2018-06-05 / 請求不成立感知装置
    共通の審決分類: 113・G01L、121・G01L、537・G01L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存