特許異議申立
2022-700581
ベーパーチャンバー
- 審判番号
- 2022-700581
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-105038
- 登録番号
- 6988170
- 請求日
- 2022年07月04日
- 審決日
- 2023年03月30日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社村田製作所
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【権利者代理人】吉田 環
- 【権利者代理人】式見 真行
- 【異議申立人】佐藤 惠一
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 松下 聡
- 審判官 マキロイ 寛済
- 分類
- P1651.536-YAA(F28D) / P1651.537-YAA(F28D) / P1651.55 -YAA(F28D) / P1651.113-YAA(F28D) / P1651.121-YAA(F28D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6988170号発明「ベーパーチャンバー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6988170号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6988170号の請求項1、2、4、6ないし8、10ないし12に係る特許を維持する。
特許第6988170号の請求項3、5、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6988170号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成29年5月26日(優先権主張 平成29年4月28日)に出願されたものであって、令和3年12月6日に特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月 4日 特許異議申立人 佐藤 惠一(以下、「申立人」という。)による請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年10月 7日付け 取消理由通知書
令和4年12月13日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 1月30日 申立人による意見書の提出
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和4年12月13日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の事項からなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記筐体の主内面の少なくとも一部分が、前記筐体の内部空間に露出しており、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、
前記柱の、筐体の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、」とあるのを、
「前記筐体の主内面の少なくとも一部分が、前記筐体の内部空間に露出しており、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、
前記筐体の主内面の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、
前記柱の、筐体の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、
前記柱の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記細孔は、互いに非連続の複数の細孔である」とあるのを、
「前記細孔は、互いに独立した複数の細孔である」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1~3のいずれか1項に記載の」とあるのを、
「請求項1または2に記載の」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、「凸部が形成されている」とあるのを、
「複数の凸部が形成されている」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2または4に記載の」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2、4および6のいずれか一項に記載の」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2、4および6~7のいずれか一項に記載の」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10に、
「細孔の数の平均」とあるのを、
「前記細孔の数の平均」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1~9のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2、4、および6~8のいずれか一項に記載の」と訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2、4、6~8、および10のいずれか一項に記載の」と訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1~10のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1、2、4、6~8、および10のいずれか一項に記載の」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、「筐体の主内面」と「柱」が有する「細孔」について、「
平均直径が10nm以上100nm以下」であることを限定したものである
。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号
に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本願特許明細書の段落【0053】及び【0060】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、「互いに非連続の複数の細孔」とあるのを、「互いに独立した複数の細孔」に訂正して、「非連続」をより明確な用語である「独立した」と訂正することにより、その意味を明瞭にしたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許の特許請求の範囲の請求項9、本件図面の図2、図6~8の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、「互いに非連続の複数の細孔」とあるのを、「互いに独立した複数の細孔」に訂正することにより、細孔の一つ、一つが単独に存在するものとして、「非連続」をより具体的に表現したものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許
法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、訂正前の請求項4が引用する請求項のうち、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項4が引用する請求項のうち、請求項3を削
除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するもので
はない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許
法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、特
許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号
に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
内の訂正であること
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、願
書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂
正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、実
質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許
法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項6における「凸部」が、「複数」
であることを限定したものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号
に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、本願図面の図3、及び本願特許明細書の段落【0062】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項6が請求項1~5を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、及び訂正事項5による訂正前の請求項5の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、訂正前の請求項6が引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、訂正前の請求項6が引用する請求項のうち、請求項3、5
を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するも
のではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許
法第126条第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項7が請求項1~6を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、及び訂正事項5による訂正前の請求項5の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、訂正前の請求項7が引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、訂正前の請求項7が引用する請求項のうち、請求項3、5
を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するも
のではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項8が請求項1~7を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、及び訂正事項5による訂正前の請求項5の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、訂正前の請求項8が引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、訂正前の請求項8が引用する請求項のうち、請求項3、5を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項10における「細孔」を、「前記細孔」とすることにより、請求項10が引用する請求項において「前記」される「細孔」であることを明瞭にしたものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、本件特許明細書の段落【0055】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項10における「細孔」を、「前記細孔」とすることにより、請求項10が引用する請求項に記載された「細孔」であることを明瞭にしたものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(12)訂正事項12
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正前の請求項10が請求項1~9を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、訂正事項5による訂正前の請求項5の削除、及び訂正事項10における訂正前の請求項9の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、訂正前の請求項10が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項12は、訂正前の請求項10が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(13)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、訂正前の請求項11が請求項1~10を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、訂正事項5による訂正前の請求項5の削除、及び訂正事項10における訂正前の請求項9の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、訂正前の請求項11が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項13は、訂正前の請求項11が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(14)訂正事項14
ア 訂正の目的について
訂正事項14は、訂正前の請求項12が請求項1~10を引用する記載であるところ、訂正事項3による訂正前の請求項3の削除、訂正事項5による訂正前の請求項5の削除、及び訂正事項10における訂正前の請求項9の削除に伴って、引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14は、訂正前の請求項12が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項14は、訂正前の請求項12が引用する請求項のうち、請求項3、5、9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし12について、請求項2ないし12は、それぞれ請求項1を直接あるいは間接的に引用するものであって、訂正事項1、2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正による、訂正前の請求項1-12に対応する一群の請求項〔1-12〕は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の特許請求の範囲は、以下のとおりであり、本件訂正後の本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件訂正発明1」などというとともに、総称して「本件訂正発明」という。)は、それぞれ本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
筐体と、
前記筐体を内側から支持するように、前記筐体の内部空間に配置された柱と、
前記筐体の内部空間に封入された作動液と、
前記筐体の内部空間に配置されたウィックとを有し、
前記筐体の主内面の少なくとも一部分が、前記筐体の内部空間に露出しており、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、
前記筐体の主内面の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、
前記柱の、筐体の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、
前記柱の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、
前記細孔は、互いに独立した複数の細孔である、
ベーパーチャンバー。
【請求項2】
前記筐体の主内面の細孔の平均深さが40nm以下である、請求項1に記載のベーパーチャンバー。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記柱の細孔の平均深さが40nm以下である、請求項1または2に記載のベーパーチャンバー。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記細孔を有する主内面と対向する主内面に高さ1μm以上100μm以下の複数の凸部が形成されている、請求項1、2または4のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー。
【請求項7】
前記筐体が、外縁部が封止された対向する2つのシートから成る、請求項1、2、4および6のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー。
【請求項8】
前記ウィックが、少なくとも一部分に前記細孔を有する主内面と対向する主内面上に配置されている、請求項1、2、4および6~7のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記筐体の内部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた前記細孔の数の平均は、10個以上1000個以下である、請求項1、2、4、および6~8のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー。
【請求項11】
請求項1、2、4、6~8、および10のいずれか一項に記載のベーパーチャンバーを有して成る放熱デバイス。
【請求項12】
請求項1、2、4、6~8、および10のいずれか一項に記載のベーパーチャンバーまたは請求項11に記載の放熱デバイスを有して成る電子機器。」
第4 特許異議申立理由の概要及び証拠方法
特許異議申立書における特許異議申立理由の概要及び証拠方法は、以下のとおりである。
1 特許異議申立理由の概要
(1)理由1:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)について
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確でない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由2:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)について
本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)理由3:特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)について
本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1ないし12に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
よって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)理由4:特許法第17条の2第3項(同法第113条第1号)について
令和3年9月13日の手続補正によってされた請求項1、9に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものではない。
したがって、本件特許発明1、9に係る特許、及び本件特許発明1を直接あるいは間接的に引用する本件特許発明2ないし12に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(5)理由5:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)について
ア 本件特許発明1、7、8、11、12は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1ないし12は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
(6)理由6:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
ア 本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第5号証にみられるような周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 本件特許発明1ないし12は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3ないし7号証にみられるような周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 証拠方法
甲第1号証:米国特許出願公開第2010/0071879号明細書
甲第2号証:特開2013-53837号公報
甲第3号証:特開平11-193994号公報
甲第4号証:特開2016-156584号公報
甲第5号証:特開2011-43320号公報
甲第6号証:登録実用新案第3086493号公報
甲第7号証:特開2002-228389号公報
甲第8号証:特開2016-205693号公報
甲第9号証:新村 出編、広辞苑第六版、株式会社岩波書店、2008年1月11日、1189頁
(以下、「甲第1号証」ないし「甲第9号証」を「甲1」ないし「甲9」という。)
3 各甲号証の記載等
(1)甲1
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「プレート型ヒートパイプ」に関して、以下の事項が記載されている。(当審注:下線は、理解の一助のために当審において付与したものである、以下同様。)
[図:0001399363000001.jpg]
(当審訳:[0001] 1. 発明の分野
[0002]本発明は、プレート型ヒートパイプの製造方法に関し、より詳細には、その対向する側を相互に連結する複数の支持部材とを備えたプレート型ヒートパイプを製造するための方法に関する。本発明は、また、この方法によって得られたプレート型ヒートパイプに関する。
[0003] 2. 関連技術の説明
[0004]一般的には、プレート型ヒートパイプはコンピュータの中央処理装置(CPU)などの発熱部品からの熱を効率良く放出する。図6-7を参照すれば、従来のプレート型ヒートパイプは、その中にトラフを画定する係合プレート100とベースプレート101とを備えている。ヒートパイプは、内部に作動流体を収容する。ウイック構造102が、ベースプレート101の内壁に配置される。ベースプレート101は、熱発生部品と熱的に接触するために使用される。係合プレート100は、発熱するコンポーネントが生じた熱を放熱するヒートシンク等の放熱部材に熱的に使用される。ベースプレート101と係止プレート100とは溶接によって一体に組み立てられる。発熱部品で発生した熱は、ベースプレート101を介してヒートパイプに入力されると、作動流体は熱を吸収し蒸気となる。蒸気は、熱を保持したまま移動させるヒートパイプの係合プレート100に向かう蒸気は、係合プレート100に熱を放出して凝縮液に凝縮される。係合プレート100の異なる部分を確保するのに異なる蒸気圧のために、係止プレート100を変形する傾向がある。これにより、係合プレート100と放熱部材との接触面積が減少し、発熱部品で発生した熱は、ヒートパイプ内に蓄積される。)
[図:0001399363000002.jpg]
[図:0001399363000003.jpg]
[図:0001399363000004.jpg]
(当審訳:[0017]図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る板型ヒートパイプ10を製造するための方法は、内部に細長い係合プレート11とベースプレート12を持つ凹部(図示せず)を含む。複数の支持部材16は、第1の固体金属ポストで構成されている。支持部材16は、ベースプレート12の上面に固定されている。第2の金属粉末と第3金属粉末は、トラフ内のベースプレート12の上面に充填されている。第2及び第3の粉体は、支持部材16の下端部、第3金属粉末と第2金属粉末よりも大きい粒径を有している。ベースプレート12と、第2及び第3の金属粉末を高温で加熱して第3金属粉末と第2金属粉末と第2のウィック構造15によって第1のウィック構造14を得ることができる。第1のウィック構造14は、ベースプレート12の上面にしっかりと密着し、第2のウィック構造15は、第1のウィック構造14の上部表面に確実に接着する。ベースプレート12と支持部材16は、ワーク(図示せず)を得るために係合プレート11の底面に固定される。水、アルコール、メタノール等のような作業流体(図示せず)は、ワークピースの開口した端部(図示せず)を介してワークピースに注入され、次いで、ワークピースの開放端を通じて真空にされる。最後に、被加工材の開放端は、プレート型ヒートパイプ10を得るために密封される。
[0018]支持部材16は、互いに離間している。支持部材16は、係合プレート11とベースプレート12とを相互に連結し、当接板型ヒートパイプ10に安定性および強度をもたらす。第1のウィック構造体14は、第2のウィック構造15の孔と連通する複数の細孔を含む。第1のウィック構造体14の細孔は、それぞれ第2のウィック構造15の孔よりも小さい孔サイズを有する。)
[図:0001399363000005.jpg]
(当審訳:[0019]図2を参照すると、本発明の第2の実施形態に係るプレート型ヒートパイプ20を製造するための方法は、本発明の第1の実施形態の方法と、各支持部材16の外周上に設けられ、各支持部材16の外周に第4の金属粉末を焼結することにより、第3のウィック構造27を形成する第4の金属粉末を作製することを除いて同様である。第3のウィック構造27は、係合プレート11の下面に当接し、第2のウィック構造15に接続されている。第3のウイック構造27は、第2のウィック構造15と連通する複数の孔を有する、プレート型ヒートパイプ20を使用している場合、作動流体は第3のウィック構造27からプレート型ヒートパイプ20の第1及び第2のウィック構造体14、15に戻され、蒸気は係合プレート11の下面に凝縮して液体になる。
[0020]図3を参照すると、本発明の第3の実施形態に係るプレート型ヒートパイプ30を製造するための方法は、本発明の第2の実施形態と同様に、第5の金属粉末は係合プレート11の下面に被着された第5金属粉末を焼結して第4のウィック構造38を形成する。係合プレート11およびベースプレート12を組み付ける際には、第3のウィック構造27の上部先端部は第4のウイック構造38と連通している。したがって、作動流体は、プレート型ヒートパイプ30が使用されるときは、第3および第4のウィック構造体27、38からプレート型ヒートパイプ30の第1および第2のウィック構造14、15に戻され、蒸気は係合プレート11の下面に凝縮して液体になる。)
図1
[図:0001399363000006.jpg]
図2
[図:0001399363000007.jpg]
図3
[図:0001399363000008.jpg]
イ 甲1発明
上記アから、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「係合プレート11及びベースプレート12と、
係合プレート11及びベースプレート12とを相互に連結するように、係合プレート11及びベースプレート12による内部空間に配置された支持部材16と、
係合プレート11及びベースプレート12によって囲まれた内部空間に注入された作業流体と、
係合プレート11及びベースプレート12によって囲まれた内部空間に配置され、ベースプレート12の上面に固定される第1のウイック構造14、第1のウイック構造の上部表面に接着された第2のウイック構造15、支持部材16の外周上に設けられた第3のウイック構造27、及び係合プレート11の下面に設けられた第4のウイック構造38を有する、
プレート型ヒートパイプ。」
(2)甲2
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「板型ヒートパイプ」に関して、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を備える板型ヒートパイプの構造であって、
前記本体は、金属板体及びセラミック板体から構成し、前記金属板体と前
記セラミック板体とを相対向して接合することにより、その間にチャンバと
なる空間を画定し、前記チャンバ内壁面にウィック構造を形成し、上記金属
板体及びセラミック板体を接続してチャンバ空間を支持する支持構造を配置
し、チャンバ内に作動流体を充填したことを特徴とする板型ヒートパイプの
構造。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、板型ヒートパイプの構造及びその製造方法に関し、特に、金属材料とセラミック材料とが接合されて構成されることにより、板型ヒートパイプと発熱源との接合部分に、熱疲労(thermal fatigue)によってクラック(crack)が発生することを防ぐ板型ヒートパイプの構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の進歩に伴い、集積回路の体積は、徐々に縮小されている。また、集積回路がさらに多くのデータを処理できるようにするために、集積回路には、従来より数倍以上の数の演算素子が積載されるようになっている。しかし、集積回路内の演算素子の数が増加することにより、演算素子が稼動するときに発生する熱も多くなる。CPUを例に挙げると、最大稼動中のCPUから発生する熱は、CPU全体を焼損させるのに十分な熱量である。従って、集積回路の放熱装置は、非常に重要である。
【0003】
電子装置中のCPUユニット及びチップは、発熱源であるため、電子装置が稼動するとき、熱が発生する。CPUユニット及びチップの外部パッケージは、主に、セラミック材料からなる。セラミック材料は、熱膨張係数が低く、絶縁物質である上、熱膨張係数がチップに近いため、パッケージ材料及び半導体材料として大量に使用されている。
【0004】
放熱装置は、一般に、アルミニウム材料及び銅材料が放熱構造の材料とされる。また、ファン、ヒートパイプなどの放熱部材が組み合わされることにより、放熱効果が増強される。しかし、ファン及びヒートパイプを採用することにより、放熱装置全体の信頼性が低下してしまう。」
「【0026】
(第1実施形態)
図1~図3を参照する。図1~図3に示すように、本発明の第1実施形態による板型ヒートパイプの構造は、本体1を含む。
【0027】
本体1は、金属板体11及びセラミック板体12とから構成される。金属板体11は、セラミック板体12と相対向して接合され、金属板体11とセラミック板体12との相対向する間にチャンバー13となる空間が画定される。チャンバ13内は、ウィック構造14及び支持構造15を形成する。ウィック構造14は、チャンバ13の内壁面に形成され、支持構造15は、チャンバーの空間内で金属板体11とセラミック板体12との間に配置されて両者を接続して扁平なチャンバー空間を支持する。チャンバ13内は、作動流体16を充填する。
【0028】
ウィック構造14は、粉末焼結体を例示して説明するが、これのみに限定されない。
【0029】
セラミック板体12は、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ジルコニウム(ZrO2)又は酸化アルミニウム(Al2O3)からなる。
【0030】
支持構造15は、軟質はんだ接合、硬質はんだ接合、拡散接合、超音波溶接又は銅直接接合(Direct Bonding Copper:DBC)によってセラミック板体12に接合される。
【0031】
支持構造15は、銅柱である。金属板体11は、銅材料、アルミニウム材料、ステンレス鋼又は放熱性及び熱伝導性に優れた材料からなる。」
「【0039】
ウィック構造14が網状体の場合、軟質はんだ接合、硬質はんだ接合、拡散接合、超音波溶接又は銅直接接合により、網状体がセラミック板体12と金属板体11とに接合される。【0040】
ウィック構造14が複数の溝の場合、予め、機械加工により、金属板体11及びセラミック板体12に溝がそれぞれ設けられる。機械加工は、フライス加工、ルータ加工、レーザ切断又はエッチングである。」
【図1】
[図:0001399363000009.jpg]
【図2】
[図:0001399363000010.jpg]
【図3】
[図:0001399363000011.jpg]
イ 甲2発明
上記アから、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「金属板体11及びセラミック板体12と、
金属板体11及びセラミック板体12とを相対向して画定した空間であるチャンバ13に設けられ、金属板体11とセラミック板体12とを接続してチャンバ13を支持する支持構造15と、
チャンバ13内に充填された作動流体13と、
チャンバ13の内壁面に形成されたウイック構造14とを有する、
板状ヒートパイプ。」
(3)甲3
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「平板状ヒートパイプ」に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、作動流体の潜熱として熱輸送するヒートパイプに関し、特にコンテナが中空平板状を成す平板状ヒートパイプに関するものである。」
「【0011】
【発明の実施の形態】つぎに、パソコンに搭載されるCPUの冷却に、この発明の平板状ヒートパイプを適用した具体例を、図1ないし図3を参照して説明する。平板状ヒートパイプ1は、本体部3と封止板4とからなる中空平板状の密閉金属容器によってコンテナ2が構成されている。そして、コンテナ2の内部には、真空脱気した状態で図示しない作動流体が封入されている。
【0012】より詳細には、本体部3は矩形の板状体からなる底壁部5と、その底壁部4の4つの辺(縁部)からそれぞれ立ち上がる平板状の側壁部6とによって構成されたカップ状の部材である。なお、各側壁部6の高さは、底壁部5の長さおよび幅のいずれよりも小さく設定されている。すなわち、本体部3は、その深さ以上の開口幅を有している。また、底壁部5の上面には、互いに平行な複数条のグルーブ7が形成されている。これに対して、底壁部5の下面は、平坦面を成している。なお、各グルーブ7は、要は毛細管圧力を生じるものであればよく、図示する方形状断面には限定されず、例えばV字形状断面あるいはU字形状断面のものを採用することもできる。
【0013】また、側壁部6の各縁部のうちの内面側には、直角断面の段差からなる嵌合部10が形成されている。この嵌合部10は、封止板4を嵌め込んで取り付ける部分である。そして、この嵌合部10を除く本体部3の内面の全域、すなわち、各側壁部6と底壁部5ならびにグルーブの表面には、所定厚さの溶射皮膜9が設けられている。
【0014】この溶射皮膜9は、互いに結合する溶射粒子同士の間に気孔を備えた多孔構造となっており、大きい毛細管圧力を生じさせるようになっている。したがって、この溶射皮膜9が、この発明の多孔質層に相当する。なお、溶射粒子としては、各グルーブ7の内部空間を埋めないように、各グルーブ7の開口幅よりも粒径の小さいものが採用されている。」
「【0016】他方、封止板4は、嵌合部10と平面図上で一致する大きさの金属製の板状体である。この封止板4の図2での下面は、平坦面を成している。これに対して、封止板4の図2での上面には、一例として一辺の大きさがグルーブ7の開口幅とほぼ同じ角柱状の支柱8が複数本設けられている。これらの支柱8の基端部15は、封止板4と一体に形成されている。したがって、各支柱8は、銅などの実質的な剛体からなっている。また、一例としてこれらの支柱8は、図2での横4本・縦3列の列ごとを横方向に互いにずらした配列とされている。更に、各支柱8の表面および封止板4の図2での上面うち、縁部以外の全域、つまり、嵌合部10に取り付けられて接触する範囲を除いた部分には、溶射皮膜9が形成されている。この溶射皮膜9は、本体部3に備えられるものと同じ組成となっている。したがって、この発明の多孔質層に相当している。」
「【0022】コンテナ2の底部に還流した作動流体は、溶射皮膜9内に浸透するとともに、各グルーブ7に入り込み、溶射粒子同士の隙間に生じる毛細管圧力によって底壁部5の面方向に移動するとともに、各グルーブ7に沿って図3での奥行き方向に移動する。その結果、コンテナ2の底部のほぼ全域が蒸発部16の実効面積として作用する。」
【図1】
[図:0001399363000012.jpg]
【図2】
[図:0001399363000013.jpg]
【図3】
[図:0001399363000014.jpg]
(4)甲4
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「薄型ヒートパイプ型熱拡散板」に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、多機能携帯電話(スマートフォン)やタブレット型パソコンな
どの携帯型の情報端末あるいは電子機器における発熱体である電子素子の熱
を拡散させる用途に好適な薄板ヒートパイプ型の熱拡散板に関するものであ
る。」
「【0017】
図1ないし図3は本発明に係る熱拡散板1の一例を示しており、ここに示
す例は、平面視で矩形状に形成されている。図3に一部を拡大して示してあ
るように、熱拡散板1は、共に矩形状を成す上板2と下板3とを接合して構
成されている。」
「【0019】
上板2と下板3との間に複数条の溝が形成されており、その溝の内部に空
気などの非凝縮性の気体を脱気した状態で作動流体が封入されている。これ
らの溝は、プレスやエッチングなどの従来知られている方法で形成されてい
てよい。したがって、熱拡散板1は薄板型のヒートパイプとして構成され、
上板2と下板3とはヒートパイプとしてのコンテナを構成している。図1な
いし図3に示す例では二種類の溝4,5が形成されている。本発明における
第1溝に相当する縦溝4は、下板3の上板2に対向する面に、その長手方向
に沿って互いに平行に形成されている。また、本発明における第2溝に相当
する横溝5は、下板3の上板2に対向する面に、その幅方向に沿って互いに
平行に形成されており、したがって縦溝4と横溝5とは互いに交差し、連通
している。なお、縦溝4の両端部は横溝5によって連通されている。また、
各横溝5の端部はいずれかの縦溝4に一致しており、したがっていずれの溝
4,5も閉塞端のない構成となっている。これらの溝4,5の開口端は、下
板3に接合された上板2によって密閉されている。」
【0020】
作動流体は、設計上想定されている温度範囲で蒸発および凝縮する流体で
あり、従来知られているヒートパイプで使用されている作動流体を使用する
ことができる。より具体的には、作動流体として水を採用することができる
。ここで説明している例では、上板2におけるコンテナの内面が銅であり、
また下板3が銅であるから、作動流体として水を使用した場合であっても、
水素などの非凝縮性の気体が発生することはない。
【0021】
各縦溝4の内部にウイック6が配置されている。ウイック6は液相の作動
流体(以下、作動液と記す。)が浸透することにより毛管力を発生させる微
細空隙のある部材であって、カーボンファイバーなどの極細線を束ね、ある
いは網状に編んだメッシュ材で構成され、あるいは金属粉末を焼結した焼結
材などの多孔質体によって構成されている。このウイック6は、図1ないし
図3に示す例では、各縦溝4と、縦溝4の端部を繋いでいる横溝5との内部
に配置されている。また、ウイック6の幅は縦溝4あるいは横溝5の幅より
小さい。したがってこれらの溝4,5の内部には、ウイック6によって占め
られていない残余の空間部分が生じている。残余の空間部分が蒸気流路7と
なっている。なお、ウイック6が配置されていない横溝5も蒸気流路7とな
っている。」
「【0029】
また、本発明における各溝4,5の内面は平滑面でなくてもよい。例えば
図5に示すように、溝4,5の内面にその長手方向に沿って、微細溝9を形
成してもよい。この微細溝9は、幅が0.02~0.05mm程度のもので
あって、エッチングなどによって形成することができる。この微細溝9は作
動液が浸透することにより毛管力を発生するので、溝4,5の内面に対する
作動液の濡れ性が向上し、また作動液の還流特性が向上する。」
【図1】
[図:0001399363000015.jpg]
【図2】
[図:0001399363000016.jpg]
【図3】
[図:0001399363000017.jpg]
【図5】
[図:0001399363000018.jpg]
(5)甲5
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「扁平型ヒートパイプ」に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、パソコン、電子機器等に収納されているCPU等の被冷却体
、例えば発熱素子、伝熱体等を冷却するヒートパイプ、特に大きな熱輸送量
を有する扁平型ヒートパイプに関する。」
「【0040】
図3は、この発明の扁平型ヒートパイプの他の1つの態様を説明する断面
図である。図3に示すように、この発明の扁平型ヒートパイプ1は、管形状
のコンテナを扁平加工して形成された密閉されたコンテナ2と、コンテナ2
内に長手方向に配置されたウイック3-1、3-2からなるウイック構造体
3と、空洞部6-1、6-2と、コンテナ内に封入された図示しない作動液
とを備えている。」
「【0043】
図6(a)は、この発明の扁平型ヒートパイプの他の1つの態様を説明す
る断面図である。図6に示す態様では、図3を参照して説明した縦方向に配
置された2つのウイック3ー1、3ー2が、コンテナの概ね中央部に配置さ
れており、かつ、コンテナの内壁部が凹凸部を備えている。図6(b)は、
図6(a)の丸で囲んだ部分の拡大図である。図6(b)に示すように、コ
ンテナ内壁5には、所謂グルーブと呼ばれる凹凸部が、コンテナの長手方向
の全長にわたって形成されている。このように、コンテナ内壁部に凹凸部か
らなるグルーブを形成することによって、扁平型ヒートパイプの毛細管力を
強化し、作動液の還流を容易にすることができ、ヒートパイプの放熱効率を
更に高めることができる。」
【図3】
[図:0001399363000019.jpg]
【図6】
[図:0001399363000020.jpg]
(6)甲6
ア 甲6に記載された事項
甲6には、「放熱装置」に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は一種の放熱装置に係り、特に、作業流体の液?気相変化と多孔構
造の毛細管現象により均一で且つ快速な放熱特性を達成し、且つその上主体
と下主体の環状の上側壁と下側壁間に連通状の凹溝が形成され、それにはん
だ材料が充填され且つ加熱後に上主体と下主体が接合され一体とされた、放
熱装置に関する。」
「【0007】
【考案の実施の形態】
図2、3を参照されたい。本考案の放熱装置20は、伝熱しやすい金属材
料(例えば、銀、銅、アルミ及びその合金等)で製造され、この放熱装置2
0は上主体22と下主体21で組成され、放熱装置20内部に密閉空間が形
成され、該放熱装置20が吸熱面213で電子製品14の上に緊密に当接し
、並びに放熱面223で熱エネルギーを空気中に伝導し、該電子製品14の
作業時に発生する熱エネルギーを排除する。本実施例中の電子製品14はC
PUとされ、別に上述の放熱装置20は密閉空間を具え、その密閉空間内部
に多孔構造24と作業流体23が設けられ、上述の多孔構造24は金属粉末
(銅粉、ニッケル粉、銀粉、及びその混合物或いは合金粉等)を放熱装置2
0の密閉空間内部で焼結するか或いは該密閉空間内部の表面を粗化して形成
され、その目的は、熱伝導の面積を増加することにあり、毛細管現象を利用
して作業流体23の発生する蒸気を吸着し、作業流体23の気ー液相変化の
循環使用を加速する。」
「【0009】
さらに、その下主体21に設置される多孔構造24は電子製品14の発生
する熱エネルギーを快速且つ均一に作業流体23に伝導し、この焼結された
金属粉末は作業流体23に容易に核沸騰する特性を持たせる。また、該多孔
構造24の厚さは焼結された金属粉末の半径の2~10倍とされ、作業流体
23の充填量は金属粉末孔率の0.5~2倍とされる。このほか、該作業流
体23は潜熱が高く且つ沸点の低い液体、例えば、水、エタノール、アセト
ン或いは冷媒で組成され、多孔構造24は放熱面積を増加して熱量交換を加
速し、並びに毛細管現象を利用し蒸発した作業流体23を吸着し、さらに冷
却して下主体21の上表面に流して戻す。
【0010】
上述の放熱装置20中、上主体22と下主体21の間の環状側壁は上側壁
221と下側壁211を含み、上主体22の下表面と下主体21の上表面の
指示構造は、少なくとも一つの第1支持部222と少なくとも一つの第2支
持部212を含み、上側壁221が下側壁211に対応しはんだ付けされ、
且つ第1支持部222が第2支持部212に対応し且つ当接し、これにより
本考案の放熱装置20の密閉空間構造が強化される。別に、第1支持部22
2、第2支持部212にも多孔構造24が設けられることにより、全体の放
熱面積が増加される。このほか、電子製品14の作業時に発生する熱エネル
ギーが直接吸熱面213より作業流体23中に伝導される。別にその第1支
持部222、第2支持部212は多孔性材質とされ得て、且つ第1支持部2
22、第2支持部212の表面の該多孔構造24に被覆される部分が、作業
流体23の蒸気を容易に凝結させ並びにその相変化の循環を加速される機能
を有する。ゆえに、上述の多孔構造24は必ずしも均一に第1支持部222
、第2支持部212の表面を被覆せず、該作業流体23の相変化の状況及び
放熱装置20の密閉空間構造の必要な強度により定められる。一般には、作
業流体23の蒸気の最も密集する或いは温度が最高の部分は、その多孔構造
24の空孔率が比較的高い。」
【図2】
[図:0001399363000021.jpg]
【図3】
[図:0001399363000022.jpg]
(7)甲7
ア 甲7に記載された事項
甲7には、「伝熱促進方法および沸騰伝熱面」に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体などの伝熱面と冷却液との間、または高温流体から低温流体に熱を伝える熱交換器の隔壁(伝熱壁)と低温流体との間などの熱伝達を良くする伝熱促進方法および沸騰伝熱面に関し、特に伝熱面が液体で濡れ易くても熱伝達を良好にできるようにした伝熱促進方法及び沸騰伝熱面に関する。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、表面が液体で濡れ易く沸騰熱伝達が余り良いとは言えないシリコンウエハ伝熱面のフッ化炭化水素の沸騰実験について鋭意研究を重ねた結果、従来の基準では伝熱面が十分に滑らかと判断される程度の表面加工を行なうことにより、無垢のシリコン面に比べて飛躍的な熱伝達の向上が得られることを発見した。そのことから本発明は、下記のスパッタリング、化学蒸着(CVD)、湿式エッチングなどの加工技術を採用して微細な粗さ(10nm~1000nm)を伝熱面の表面に加工することにより、無垢平滑な伝熱面より沸騰熱伝達の性能を飛躍的に改善することが可能となった。
【0007】本発明請求項1記載の伝熱促進方法では、伝熱壁に高さ10nm~1000nmの凹凸体が密集した面粗さの沸騰伝熱面を形成する表面処理を行なうことを特徴とする。
【0008】請求項2記載の伝熱促進方法では、請求項1記載の伝熱促進方法において、前記表面処理がスパッタリングまたは化学蒸着法により伝熱壁に薄膜を形成することを特徴とする。
【0009】請求項3記載の伝熱促進方法では、伝熱壁の表面または請求項2記載の薄膜表面に湿式エッチングを行なって高さ10nm~1000nmの凹凸体が密集した面粗さを形成することを特徴とする。
【0010】請求項4記載の沸騰伝熱面では 液体の沸騰が生じる面に高さ10nm~1000nmの凹凸体が密集した面粗さを有することを特徴とする。
【0011】
【発明の作用および効果】本発明では、伝熱面の表面に1000nm以下の微細な粗さを形成させることにより、沸騰熱伝達を向上させるというものである。本発明における微細な粗さは、従来の沸騰熱伝達の研究や沸騰伝熱面に用いられる粗さとはそのスケールが極めて小さく、従来であれば平滑とみなされるオーダーであるところに特徴がある。この微細な粗さは、伝熱面の表面処理で形成できるので、伝熱面表面の一次加工で拡大伝熱面を形成する従来の伝熱促進技術と組み合わせて用いることも可能である。従って、半導体素子の冷却、熱交換器の伝熱面などの多くの沸騰熱伝達利用機器で熱伝達の向上に用いることができる。」
「【0017】以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体的な構成は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても本発明に含まれる。表面処理はスパッタリングで行なう他、均質なアモルファス膜を生成する通常の温度、圧力、原料濃度、流量などとは異なる条件の下で熱CVDによる成膜を行ない、表面が滑らかでなく、10nm~1000nmに入る程度の粗さの多結晶構造の異常成長膜を作成することもできる。また、アルミニウムなどの金属の場合、電解腐食などの電気化学的な方法を用いて金属表面に微細な粗さを形成することも可能である。スパッタリングによる表面処理を行なった後、湿式エッチングを行なって表面粗さを設けたが、必要とする表面粗さの程度によっては、スパッタリング、または化学蒸着法のみで得ることもできる。」
[図:0001399363000023.jpg]
(8)甲8
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「シート状ヒートパイプ」に関して、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末に搭載可
能であり、小型でありながら十分な熱輸送量が得られるシート状ヒートパイ
プに関する。」
「【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、タブレット端末などの携帯情
報端末に搭載されるシート状ヒートパイプ(以下、SHPという)を例にし
て説明する。ここでは先ず、SHP単体の構成について説明し、次にSHP
を含む熱拡散ユニットの構成を説明する。これらの説明で、共通する箇所に
は共通する符号を付し、共通する部分の説明は重複を避けるため極力省略す
る。
【0017】
図1~図8は、好ましい一実施形態のSHP1を示している。先ず、図1
に基づきSHP1の外観の構成を説明すると、SHP1は、少なくとも2枚
の銅箔シートである第1シート体11と第2シート体12を拡散接合した本
体2を有し、その内部には中空状の密閉した容器15が構成される。これら
のシート体11,12は、例えばアルミニウムのように、熱伝導性が良好で
エッチング加工またはプレス加工が可能な他の金属シートを利用してもよい
。」
「【0020】
次に、各シート体11,12の構成について詳しく説明する。図2は、第
2シート体12と接合する前の状態で、第1シート体11を内面側から見た
平面図であり、図3は、図2のA部を拡大した図である。
【0021】
同図において、第1シート体11の厚さT1(図8参照)は0.3mmで
あり、容器15の内面となる片側面にのみ、ハーフエッチング加工により第
1シート体11の厚みの途中までエッチングが施されて、受熱部で作動流体
が蒸発した蒸気を放熱部に輸送する蒸気通路20と、放熱部で凝縮した作動
流体を受熱部に戻すウィック22をそれぞれ形成している。」
【図1】
[図:0001399363000024.jpg]
【図2】
[図:0001399363000025.jpg]
【図3】
[図:0001399363000026.jpg]
(9)甲9
甲9の第1189ページには、「シート【Sheet】」が、「薄板や紙などの一枚」であることについて記載されている。
第5 取消理由
当審において令和4年10月7日付けで通知した取消理由の内容は以下のとおりである。
理由1(明確性)本件特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由2(サポート要件)本件特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
理由3(実施可能要件)本件特許は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由4(新規事項)令和3年9月13日の手続補正でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
1 理由1(明確性)について
下記(1)~(4)に示す理由により、請求項1、9~10、及びこれらを直接的又は間接的に引用する請求項2~8、11~12に係る発明(以下、請求項に応じて「本件特許発明1」等という。)は明確でない。
(1)請求項1における「互いに非連続の複数の細孔」の記載について
「互いに非連続の」とは、どのようなことを意味するのか不明である。
「互いに非連続」とは、例えば、複数の細孔同士の全ての部分において、互いに連通する部分がない」という意味なのか、また、複数の細孔が、筐体の内部空間に露出する部分においては連続していないが、筐体の内部空間に露出していない部分において連続している場合に、その複数の細孔が「互いに非連続の複数の細孔」に該当するのか否かが判然としない。
さらに、請求項1を引用する請求項9における「互いに独立した複数の細
孔」の「互いに独立した」こととの差異についても不明であるため、「互い
に非連続の複数の細孔」の意味が不明瞭である。
(2)請求項1における「平均深さが10nm以上の細孔」の記載について
「平均深さ」とはどのような条件や測定方法で求められたものか請求項1の記載からは不明であり、例えば、平均深さの算定の対象とする細孔の径の範囲などに応じて変化し得るものであって、一義的に定まるものではない。よって、「平均深さが10nm以上の細孔」の意味が不明瞭である。
(3)請求項9における「互いに独立した複数の細孔」の記載について
請求項9は、請求項1を直接あるいは間接的に引用するところ、請求項1における「互いに非連続」であって、さらに、請求項9における「互いに独立した」ものである「複数の細孔」とは、どのような細孔を意味するのか不明瞭である。また、「互いに独立」とは、「複数の細孔」同士がどのような関係であることを意味するのかも明瞭でない。
(4)請求項10における「表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均は、10個以上1000個以下である」の記載について
表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均を求めるために測定する細孔の対象の範囲や、測定方法が不明であるため、「表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均」は一義的に定まるものではない。よって、「表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均は、10個以上1000個以下である」の意味が不明瞭である。
2 理由2(サポート要件)について
(1)本件特許発明1、7、8、11、12
本件特許発明1における「平均深さが10nm以上の細孔を有しており、前記細孔は、互いに非連続の複数の細孔である」という構成のみでは、「不純物ガスによるウイックの親水性の低下によるベーパーチャンバーの熱伝導特性の低下を防止する」という課題を達成することができない。すなわち、細孔の単位面積あたりの個数が非常に少ない場合や細孔の平均直径が非常に大きい場合は、細孔に不純物ガスがトラップされることはないと考えられる。
よって、細孔の平均直径や単位面積あたりの個数にかかわらず、課題を解決するとはいえない。
また、「平均深さが10nm以上の細孔」は、不純物ガスがトラップされるか否かにかかわらず、通常の筐体をエッチング加工で形成する際に通常生じうる細孔や圧延痕も含みうる。
さらに、本件特許明細書には、細孔の平均深さは40nmまでの実施例が記載されるのみであって、40nmを超えて課題を解決できるかについて示されていない。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
さらに、本件特許発明7、8、11、12は、本件特許発明1を引用するものであって、細孔の特徴を規定するものではないから、本件特許発明1と同様に、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
(2)本件特許発明2、4
本件特許発明2、4は、本件特許発明1を引用するものであって、筐体の
主内面、あるいは柱の細孔の深さを40nm以下とするものであるが、上記
(1)に示したと同様に、細孔の平均直径や単位面積あたりの個数などにか
かわらず、課題を解決するとはいえない。
よって、本件特許発明2、4は、発明の詳細な説明において発明の課題が
解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるもので
ある。
(3)本件特許発明3、5
本件特許発明3、5における「細孔の平均直径が10nm以上、100nm以下」は、発明の詳細な説明において、表面1μm2あたりの細孔の数の平均などと関わりなく発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものである。
(4)本件特許発明6
本件特許発明6は、1つの凸部しか有しないものを含むものであり、この場合、凸部間の空間によって作動液の還流を促進する、あるいは筐体の内部空間に露出する筐体の主内面の面積を増やすことによってより多くの細孔を有しうるようにするという作用効果(本件特許明細書の段落【0062】を参照。)を奏することはない。
したがって、本件特許発明6は、当業者が上述の作用効果を奏すると認識できる範囲を超えるものである。
(5)本件特許発明9
本件特許発明9は、本件特許発明1を引用するものであって、細孔は、互
いに独立した細孔である、とするものであるが、上記(1)に示したと同様
に、細孔の平均直径や単位面積あたりの個数などにかかわらず、課題を解決
するとはいえない。
よって、本件特許発明9は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決
できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである
。
(6)本件特許発明10
本件特許発明10は、本件特許発明1を引用するものであって、筐体の内
部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均は、1
0個以上1000個以下としたものであるが、細孔の平均直径などにかかわ
らず、課題を解決するとはいえない。
よって、本件特許発明10は、発明の詳細な説明において発明の課題が解
決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであ
る。
3 理由3(実施可能要件)について
(1)本件特許発明1ないし12
本件特許明細書には、
「【0055】
筐体2の内部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた細孔10の数の平均は、10個以上1000個以下であってよく、好ましくは30個以上400個以下であり、より好ましくは50個以上200個以下である。筐体2が高温になると、筐体2の内部空間に露出した部分から内部空間へ、防錆剤の成分由来の不純物ガスが発生するおそれがある。このとき発生する不純物ガスの量は、筐体2の内部空間を規定する表面の面積に比例するため、筐体2の内部空間を規定する表面1μm2あたりに細孔10が平均で10個以上設けられることにより、発生する不純物ガスを効果的にトラップすることが可能になる。また、筐体2の内部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた細孔10の個数が平均で1000個以下であることにより、細孔10を有する主内面の脆化を効果的に防ぐことができる。
【0056】
細孔10の形成方法は、特に限定されないが、例えばエッチング、ブラスト等の表面処理によって形成する方法が挙げられ、その他の方法としては、めっき、溶射等が挙げられる。細孔10をエッチングにより形成する場合、使用するエッチング液の種類、エッチングの温度およびエッチングの時間等の条件を調節することにより、形成される細孔10の平均深さ、平均直径および筐体2の内部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた細孔10の個数の平均を制御することができる。」
「【0061】
柱3の表面1μm2あたりの細孔10の数の平均は、10個以上1000個以下であってよく、好ましくは30個以上400個以下であり、より好ましくは50個以上200個以下である。柱3の表面1μm2あたりの細孔10の個数が10個以上であることにより、不純物ガスを効果的にトラップすることが可能になる。また、柱3の表面1μm2あたりの細孔10の個数が1000個以下であることにより、細孔10を有する柱3の表面の脆化を効果的に防ぐことができる。」
と記載されているところ、
細孔10を形成するにあたり、具体的にどのような方法を用いて、例えばエッチング、ブラスト等の表面処理や、めっき、溶射等によって、細孔の平均深さ、平均直径、及び表面1μm2あたりの細孔10の数の平均を全て所望の範囲にするのかについて不明である。
さらに、細孔の平均深さ、平均直径、及び表面1μm2あたりの細孔10の数の平均の具体的な測定方法も明らかでないため、細孔の平均深さ、平均直径、及び表面1μm2あたりの細孔10の数の平均が所望の範囲となったことを確認する手段や方法についても、本件特許明細書の記載からは不明である。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし12を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
4 理由4(新規事項)
令和3年9月13日にされた手続補正による補正後の請求項1は、「互いに非連続の複数の細孔」、また、補正後の請求項9は、「互いに独立した複数の細孔」の記載をそれぞれ含むものであるが、これらの記載は、いずれも願書に最初に添付された明細書や特許請求の範囲に直接記載されたものではない。
さらに、図2は、ベーパーチャンバーの筐体2の内部空間に露出している主内面の、細孔10を有する部分を模式的に示す部分拡大図(当初明細書の段落【0023】)であり、図6ないし8は、上部筐体シート6の主内面の断面のSEM像(当初明細書の段落【0080】)であるが、いずれも筐体の主内面の特定方向からの断面を観察したものであって、異なる別方向からの断面を含めて3次元的に見た場合に「非連続」か「独立」であることを認識できるものではない。
また、図2、図6ないし8は、柱が有する細孔について示すものではない。
そうすると、令和3年9月13日にされた手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第6 当審の判断
1 理由1(明確性)について
(1)請求項1における「互いに非連続の複数の細孔」の記載について
本件訂正により、「互いに非連続の複数の細孔」の記載は、「互いに独立した複数の細孔」と訂正された。そして、「互いに独立した」とは、本件特許の図2、図6ないし8の記載から、細孔の一つ、一つが単独で存在しているという意味において明確である。
(2)請求項1における「平均深さが10nm以上の細孔」の記載について
平均深さの測定方法については、本件特許明細書段落【0051】に、「
細孔10の平均深さとは、主内面の任意の位置3箇所について、1μmの長
さで断面を観察し、深さ5nm以上、直径300nm以下の細孔について、
その細孔の深さの平均値を測定することにより測定される値をいう。」と定
義されている。
よって、「平均深さが10nm以上の細孔」について、その測定方法や条
件が、本件特許明細書の記載を参酌すれば理解できるものであるから明確で
ある。
(3)請求項9における「互いに独立した複数の細孔」の記載について
上記(1)のとおりの本件訂正により請求項9が削除されたことにより、「互いに非連続」であって、さらに、「互いに独立した」、「複数の細孔」の意味が不明瞭であることについては解消された。
そして、「互いに独立した」とは、上記(1)において説示したとおり、本件特許の図2、図6ないし8の記載から、細孔の一つ、一つが単独で存在しているという意味において明確である。
(4)請求項10における「表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均は、10個以上1000個以下である」の記載について
表面1μm2あたりに設けられた細孔の数を計数するにあたって、BET法によって細孔径と細孔体積から計算して測定領域の面積で除すること、あるいは内面全体のSEM画像を取得し、細孔の数を数えて、細孔数を内面の表面積で除することにより求めることは技術常識であるから、「表面1μm2あたりに設けられた細孔の数の平均は、10個以上1000個以下である」の意味は明確である。
・意見書(令和5年1月30日提出)における申立人の主張について
ア 「『細孔の平均直径』の意義が不明確」との主張(意見書第5ページ第9行ないし第6ページ第17行)がされている。
上記主張アについて検討すると、細孔の平均直径の測定方法については、本件特許明細書段落【0054】に、「細孔10の平均直径とは、主内面の任意の位置3箇所において1μmの長さで断面観察を行った際に観察される、深さ5nm以上かつ直径300nm以下の細孔の平均値をいう。」と定義されているから、「細孔の平均直径」についてその測定方法や条件が、本件特許明細書の記載を参酌すれば理解できるものであるから明確である。
イ 「『互いに独立した複数の細孔』の意義が不明」との主張(意見書第6ページ第18行ないし第7ページ第24行)がされている。
上記主張イについて検討すると、上記(1)及び(3)において説示したとおり、「互いに独立した」とは、本件特許の図2、図6ないし8の記載から、細孔の一つ、一つが単独で存在しているという意味において明確である。
この点について、さらに、申立人は「線状に延びる細孔は、『互いに独立
した複数の細孔』に該当しないことになる。」(意見書第7ページ第9、1
0行)と主張するが、「線状に延びる細孔」とは、一般的にみて「溝」に相
当するものであって、直径を有する孔とはいえず、「線状に延びる細孔」は「互いに独立した複数の細孔」に含まれないことは明らかであるから、「互いに独立した複数の細孔」に該当する構成の範囲は明確である。
そうすると、申立人による上記主張ア、イを採用することはできない。
2 理由2(サポート要件)について
(1)請求項1、7、8、11、12
本件訂正により、請求項1における「筐体の主内面」及び「柱」が有する「細孔」において、「細孔の平均直径が10nm以上100nm以下」とされたから、「平均深さが10nm以上の細孔」は、細孔の平均直径が非常に大きい場合を含まないものとなった。
また、細孔の単位面積あたりの個数が少ない場合、あるいは、細孔の平均深さが40nmを超えた場合においても、わずかでも不純物ガスを吸着しうることは、当業者にとって明らかである。
よって、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
さらに、本件訂正発明7、8、11、12は、本件訂正発明1を引用するものであるから、本件訂正発明1と同様に、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
(2)請求項2、4
本件訂正発明2、4は、本件訂正発明1を、直接あるいは間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様に、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
(3)請求項3、5
本件訂正により、請求項3及び請求項5は削除された。
よって、本件訂正発明3、5についての理由2は解消された。
(4)請求項6
本件訂正により、請求項6における「凸部」の記載は、「複数の凸部」と訂正された。
よって、本件特許明細書段落【0062】に記載の、凸部間の空間によって作動液の還流を促進する、あるいは筐体の内部空間に露出する筐体の主内面の面積を増やすことによってより多くの細孔を有しうるようにするという作用効果を奏するものとなった。
したがって、本件特許発明6は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えるものとはいえない。
(5)請求項9
本件訂正により、請求項9は削除された。
よって、本件訂正発明9についての理由2は解消された。
(6)請求項10
本件訂正発明10は、本件訂正発明1を、直接あるいは間接的に引用するものであるから、本件訂正発明1と同様に、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
3 理由3(実施可能要件)について
本件訂正発明1、2、4、6ないし8、10ないし12において特定された「細孔」に関して、本件特許明細書段落【0056】には、「細孔10の形成方法は、特に限定されないが、例えばエッチング、ブラスト等の表面処理によって形成する方法が挙げられ、その他の方法としては、めっき、溶射等が挙げられる。細孔10をエッチングにより形成する場合、使用するエッチング液の種類、エッチングの温度およびエッチングの時間等の条件を調節することにより、形成される細孔10の平均深さ、平均直径および筐体2の内部空間を規定する表面1μm2あたりに設けられた細孔10の個数の平均を制御することができる。」と記載されているから、細孔の平均深さ、平均直径、及び表面1μm2あたりの細孔10の数の平均を所望の範囲にする手法については本件特許明細書において開示されており、表面1μm2あたりに設けられた細孔の数を計数する方法についても、BET法によって細孔径と細孔体積から計算して測定領域の面積で除すること、あるいは内面全体のSEM画像を取得し、細孔の数を数えて、細孔数を内面の表面積で除することにより求めることは技術常識である。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1、2、4、6ないし8、10ないし12を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
・意見書(令和5年1月30日提出)における申立人の主張について
エ 「細孔の平均深さ、平均直径、表面1μm2あたりの細孔の数は様々
な要因が絡んで決定されるものであって、当業者であれば容易に条件を調整
し得るといえるものではない。特許権者の意見は、当業者に期待し得る程度
を超える過度の試行錯誤を強いるものといわざるを得ない。」との主張(意
見書第11ページ第17ないし20行)がされている。
上記主張エについて検討すると、本件特許明細書段落【0056】に記載
されているように、細孔の平均深さ、平均直径、及び表面1μm2あたり
の細孔10の数の平均を所望の範囲にする手法について本件特許明細書にお
いて当業者が理解できるように開示されているから、本件訂正発明の実施に
あたって、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を強いるものと
まではいえない。
そうすると、申立人による上記主張エを採用することはできない。
4 理由4(新規事項)
本件訂正により、本件特許の請求項1における「互いに非連続の複数の細孔」の記載は、「互いに独立した複数の細孔」に訂正されるとともに、請求項9は削除された。
そこで、「互いに独立した複数の細孔」が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)に記載されたものか検討すると、出願当初の図面の、図2、図6ないし8において示される断面の全てにおいて独立した凹部が看取できることから、これら独立した凹部は、それぞれ個々に独立した孔であると解するのが自然である。
また、出願当初明細書段落【0058】には、「本発明のベーパーチャンバーにおいて、筐体2の主内面に設けられる平均深さが10nm以上の細孔10は、柱3の、筐体2の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分にも同様に設けられていてよい。」と、柱3が有する細孔についても、筐体2の主内面に設けられたものと同様であることについて記載されている。
そうすると、令和3年9月13日にされた手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
・意見書(令和5年1月30日提出)における申立人の主張について
オ 「例えば線状に延びる細孔については、細孔が延びる方向に平行な断面での観察においては、主内面と細孔との区別ができず、細孔は観察されないのが通常である。また、主内面に網目状に形成された細孔については、どの方向の断面の観察にいても独立した細孔が観察されることになる、そのため、3枚の図においてすべて独立した細孔が示されていることは、細孔が独立したものであることの根拠となるものではない。」との主張(意見書第12ページ第23ないし28行)がされている。
上記主張オについて検討すると、まず、「線状に延びる細孔」は、一般的にみて「溝」に相当するものであって、直径を有する孔とはいえないから、「線状に延びる細孔」は「互いに独立した複数の細孔」に含まれないことは明らかである。
さらに、「主内面に網目状に形成された細孔」は、互いに交差するもので
あって、互いに独立したものとはいえない。
そして、3枚の図である出願当初の図面の、図2、図6ないし8に示され
る断面の全てにおいて観察される細孔は、全て独立しており、溝であること
を窺わせるものはないから、これら独立した凹部は、それぞれ個々に独立し
た孔であると解することができる。
そうすると、申立人による上記主張オを採用することはできない。
第7 取消理由通知書で採用しなかった異議申立理由について
1 理由1(明確性)について
(1)申立人の主張
申立人は、本件特許発明1における、ウイックと細孔との関係において、筐体の主内面及び柱が有する細孔がウイックとしての機能を有するものである場合、この細孔は、本件特許発明1の「ウイックを兼ねるものとなるのか、それとも、この細孔とは別に、「ウイック」を有している必要があるのか明らかでないと主張している(特許異議申立書第22ページ)。
(2)当審の判断
以下、本件訂正発明1におけるウイックと細孔との関係について検討する。
「ウィック4は、筐体2の内部空間に配置され、作動液を還流させる役割を果たす。ウィック4の配置の態様は、特に限定されず、例えば、図1に示されるように、筐体2の主内面と柱3との間に挟持されるように配置されてもよい。また、図2に示されるように、細孔10が設けられた筐体2の主内面に対向する筐体2の主内面に凸部5が形成されている場合には、凸部5と柱3との間に挟持されるように配置されてもよい。」(段落【0067】)
「ウィック4の材料は特に限定されず、例えば、多孔体、メッシュ、焼結体、不織布、ワイヤー等を用いることができ、好ましくはメッシュ、不織布が用いられる。」(段落【0069】)
「ウィック4は、少なくとも一部分に細孔10を有する主内面に対向する主内面上に配置されることが好ましい。ウィック4が一方の主内面上に配置される場合、ウィック4が配置される主内面側に液体が、ウィック4が配置される主内面と対向する主内面側に気体が分布しやすくなる。そのため、ウィック4が、少なくとも一部分に細孔10を有する主内面に対向する主内面上に配置されることにより、細孔10を有する主内面側に気体が分布しやすくなり、細孔10が不純物ガスと接しやすくなるため、不純物ガスを細孔10で効果的にトラップすることができるようになる。」(段落【0070】)の本件特許明細書の記載によると、「ウイック4」は、例えば、多孔体、メッシュ、焼結体、不織布、ワイヤー等、好ましくはメッシュ、不織布であって、筐体2の内部空間に配置され、少なくとも一部分に細孔10を有する主内面に対向する主内面上に配置されるものであって、作動液を還流させる役割を果たすものである。
他方、「細孔10」は、平均深さが10nm以上であり、平均直径が10nm以上100nm以下であって、筐体2の主内面、及び柱の筐体2の内部空間に露出する部分が有するものであって、不純物ガスをトラップする役割を果たすものであるから、ウイック4と細孔10とは、その構造、設ける場所、役割において異なるものであって、明確に区別できる。
また、申立人が主張する、ウイック4と細孔10との関係が不明確であるという前提である「筐体の主内面及び柱が有する細孔がウイックとしての機能を有する」ことについても、本件特許明細書の記載等からは根拠が見いだせない。
よって、本件訂正発明1において、ウイックと細孔との関係が不明確とはいえない。
2 理由5、6(新規性、進歩性)
(1)甲1発明を主引用例とした場合
・請求項1について
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「係合プレート11及びベースプレート12」は、係合プレート11及びベースプレート12とが相互に連結されて、内部空間を形成するものであるから、本件訂正発明1における「筐体」に相当する。
甲1発明における「係合プレート11及びベースプレート12とを相互に連結するように、係合プレート11及びベースプレート12による内部空間に配置された」「支持部材16」は、係合プレート11及びベースプレート12を内側から支持するものとなることが、上記第4 3(1)ア 図1ないし図3からみても明らかであるから、本件訂正発明1における「前記筐体を内側から支持するように、前記筐体の内部空間に配置された」「柱」に相当する。
甲1発明における「係合プレート11及びベースプレート12によって囲まれた内部空間」は、本件訂正発明1における「筐体の内部空間」に相当し、以下同様に、「注入された」は「封入された」に、「作業流体」は「作動液」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1発明における「係合プレート11及びベースプレート1
2によって囲まれた内部空間に注入された」「作業流体」は、本件訂正発明
1における「前記筐体の内部空間に封入された」「作動液」に相当する。
甲1発明における「ベースプレート12の上面に固定される第1のウイック構造14」、「第1のウイック構造の上部表面に接着された第2のウイック構造15」、「支持部材16の外周上に設けられた第3のウイック構造27」、「係合プレート11の下面に設けられた第4のウイック構造38」は、それぞれ、「係合プレート11及びベースプレート12によって囲まれた内部空間に配置され」るものであって、上記第4 3(1)ア 段落[0017]ないし[0019]の記載によると、ベースプレート12の上面、係合プレート11の下面、及び支持部材16の外周上に金属粉末を付着し、焼結して形成したものであって、作動流体を移送するものであるから、本件訂正発明1における「前記筐体の内部空間に配置された」「ウイック」に相当する。
甲1発明における「プレート型ヒートパイプ」は、本件訂正発明1における「ベーパーチャンバー」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「筐体と、
前記筐体を内側から支持するように、前記筐体の内部空間に配置された柱
と、
前記筐体の内部空間に封入された作動液と、
前記筐体の内部空間に配置されたウィックとを有する、
ベーパーチャンバー。」
[相違点1]
本件訂正発明1においては、「前記筐体の主内面の少なくとも一部分が、前記筐体の内部空間に露出しており、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、前記筐体の主内面の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、前記柱の、筐体の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、前記柱の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、前記細孔は、互いに独立した複数の細孔である」のに対して、
甲1発明においては、係合プレート11、ベースプレート12、あるいは支持部材16の内部空間に露出した少なくとも一部分において、平均深さが10nm以上であって、平均直径が10nm以上100nm以下の細孔を有するか不明である点。
上記相違点1について判断する。
上記相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項は、自明なものとはいえないから、上記相違点1は実質的な相違点である。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明とは同一であるとはいえない。
また、甲2においては、「板型ヒートパイプ」に関して、チャンバ13の内壁面において、粉末焼結体、網状体、複数の溝などからなるウイック構造14が設けられていることが記載(段落【0027】、【0028】、【0039】、【0040】、及び図1ないし3の記載を参照。)されている(以下、「甲2記載事項」という。)。
甲3においては、「平板状ヒートパイプ」に関して、内部空間における、各側壁部6と底壁部5ならびにグルーブ7の表面において、互いに結合する溶射粒子同士の間に気孔を備えた多孔構造となっている所定厚さの溶射皮膜9が設けられることにより大きい毛細管圧力を生じさせることが記載(段落【0012】ないし【0014】、【0016】、【0022】、及び図1ないし3の記載を参照。)されており、溶射皮膜9は作動流体に対して大きい毛細管圧力を生じさせるものであるから、ウイックであると認められる(以下、「甲3記載事項」という。)。
甲4においては、「薄型ヒートパイプ型熱拡散板」に関して、下板3の上板2に対向する面に、その幅方向に沿って互いに平行に複数条の縦溝4を形成し、縦溝4の内部にウイック6を配置すること、及び縦溝4内面に微細溝を設けることが記載(段落【0019】、【0021】、【0029】、及び図1ないし5の記載を参照。)されている(以下、「甲4記載事項」という。)。
甲5においては、「扁平型ヒートパイプ」に関して、コンテナ2内壁部の長手方向の全長にわたって、凹凸部からなるグルーブが形成されるとともに、ウイック3-1、3-2がコンテナ2内の概ね中央部に長手方向に沿って設けられることが記載(段落【0040】、【0043】、図3、及び図6の記載を参照。)されている(以下、「甲5記載事項」という。)。
甲6においては、「放熱装置」に関して、放熱装置20が、上主体22と下主体21で組成され、内部に密閉空間が形成されており、密閉空間の内部を金属粉末を焼結させたことによる多孔構造24により被覆することにより、熱伝導の面積を増加することにあり、毛細管現象を利用して作業流体23の発生する蒸気を吸着し、作業流体23の気?液相変化の循環使用を加速することについて記載(段落【0007】、【0009】、図2、及び図3の記載を参照。)されている(以下、「甲6記載事項」という。)。
甲7においては、「伝熱促進方法および沸騰伝熱面」に関して、伝熱面の表面に高さ1000nm以下の微細な粗さを形成させることにより、沸騰熱伝達を向上させることについて記載(段落【0006】、【0007】、【0011】及び図1の記載を参照)されている(以下、「甲7記載事項」という。)。
甲8においては、「シート状ヒートパイプ」に関して、少なくとも2枚の銅箔シートである第1シート体11と第2シート体12を拡散接合した本体2を有し、その内部には中空状の密閉した容器15が構成され、容器15の内面となる片側面にのみエッチングを施すことによりウイック22を形成することが記載(段落【0017】、【0021】、及び図1ないし図3の記載を参照。)されている(以下、「甲8記載事項という」。)。
しかし、甲2ないし甲6、及び甲8記載事項は、ヒートパイプの内壁面に形成したウイック構造に関するものであり、甲7記載事項は、沸騰熱伝達を向上させるために伝熱面の表面に1000nm以下の微細な粗さを形成させることについて示すものであるが、甲2ないし甲8のいずれもベーパーチャンバーの筐体の内部空間に露出する主内面あるいは柱の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上であって、平均直径が10nm以上100nm以下の互いに独立した複数の細孔を有することについての記載や示唆をするものではない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲8記載事項に基いて当業者が容易になし得たとはいえない。
・請求項2、4、6ないし8、10ないし12について
本件訂正発明2、4、6ないし8、10ないし12は、本件訂正発明1を直接あるいは間接的に引用するものであるから、甲1発明との対比において、上記相違点1を有するものである。
そうすると、本件訂正発明2、4、6ないし8、10ないし12は、上記「請求項1について」において検討したとおり、甲1発明と同一であるとはいえず、また、甲1発明及び甲2ないし甲8記載事項に基いて当業者が容易になし得たとはいえない。
(2)甲2発明を主引用例とした場合
・請求項1について
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「金属板体11及びセラミック板体12」は、金属板体11及びセラミック板体12とを相対向して、空間であるチャンバ13を画定するものであるから、本件訂正発明1における「筐体」に相当する。
甲2発明における「金属板体11及びセラミック板体12とを相対向して画定した空間であるチャンバ13に設けられ」ることは、本件訂正発明1における「筐体の内部空間に配置され」ることに相当し、甲2発明における「金属板体11とセラミック板体12とを接続してチャンバ13を支持する」ことは、本件訂正発明1における「前記筐体を内側から支持する」ことに相当する。
そうすると、甲2発明における「金属板体11及びセラミック板体12とを相対向して画定した空間であるチャンバ13に設けられ、金属板体11とセラミック板体12とを接続してチャンバ13を支持する」「支持構造15」は、本件訂正発明1における「前記筐体を内側から支持するように、前記筐体の内部空間に配置された」「柱」に相当する。
甲2発明における「チャンバ内に充填された」「作動流体13」は、本件訂正発明1における「筐体の内部空間に封入された」「作動液」に相当する。
甲2発明における「チャンバ13の内壁面に形成された」「ウイック構造14」は、本件訂正発明1における「前記筐体の内部空間に配置された」「ウイック」に相当する。
甲2発明における「板状ヒートパイプ」は、本件訂正発明1における「ベーパーチャンバー」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「筐体と、
前記筐体を内側から支持するように、前記筐体の内部空間に配置された柱と、
前記筐体の内部空間に封入された作動液と、
前記筐体の内部空間に配置されたウィックとを有する、
ベーパーチャンバー。」
[相違点2]
本件訂正発明1においては、「前記筐体の主内面の少なくとも一部分が、前記筐体の内部空間に露出しており、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、前記筐体の主内面の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、前記柱の、筐体の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分が、平均深さが10nm以上の細孔を有しており、前記柱の細孔の平均直径が10nm以上100nm以下であり、前記細孔は、互いに独立した複数の細孔である」のに対して、
甲2発明においては、金属板体11、セラミック板体12、あるいは支持構造15の金属板体11及びセラミック板体12とを相対向して画定した空間に露出する部分の少なくとも一部分において、平均深さが10nm以上であって、平均直径が10nm以上100nm以下の細孔を有するか不明である点。
上記相違点2について判断する。
上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項は、自明なものとはい
えないから、上記相違点2は、実質的な相違点である。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明とは同一であるとはいえない。
また、甲1においては、「プレート型ヒートパイプ」に関して、「係合プレート11及びベースプレート12によって囲まれた内部空間に配置され、ベースプレート12の上面に固定される第1のウイック構造14、第1のウイック構造の上部表面に接着された第2のウイック構造15、支持部材16の外周上に設けられた第3のウイック構造27、及び係合プレート11の下面に設けられた第4のウイック構造38を有する」ことが記載(段落[0017]ないし[0020]、及び図1ないし3の記載を参照。)されている(以下、「甲1記載事項」という。)。
そして、甲3ないし甲8記載事項は、上記(1)で認定したとおりである
。
しかし、甲1、甲3ないし甲6、及び甲8記載事項は、ヒートパイプの内壁面に形成したウイック構造に関するものであり、甲7記載事項は、沸騰熱伝達を向上させるために伝熱面の表面に1000nm以下の微細な粗さを形成させることについて示すものであるが、甲1、甲3ないし甲8のいずれもベーパーチャンバーの筐体の内部空間に露出する主内面あるいは柱の内部空間に露出する部分の少なくとも一部分において、平均深さが10nm以上であって、平均直径が10nm以上100nm以下の互いに独立した複数の細孔を有することについての記載や示唆をするものではない。
そうすると、本件訂正発明1は、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲8記載事項に基いて当業者が容易になし得たとはいえない。
・請求項2、4、6ないし8、10ないし12について
本件訂正発明2、4、6ないし8、10ないし12は、本件訂正発明1を直接あるいは間接的に引用するものであるから、甲2発明との対比において、上記相違点2を有するものである。
そうすると、本件訂正発明2、4、6ないし8、10ないし12は、上記「請求項1について」において検討したとおり、甲2発明と同一であるとはいえず、また、甲2発明及び甲1、甲3ないし甲8記載事項に基いて当業者が容易になし得たとはいえない。
(3)意見書(令和5年1月30日提出)における申立人の主張について
上記意見書において、申立人による「従来のベーパーチャンバーは、エッチングの原理上、その主内面がある程度の数の細孔(訂正後の請求項に規定の細孔)を有するものとなっている。そのため、訂正後の請求項1は、従来のベーパーチャンバーの構成を規定するにすぎない。」(意見書第13ページ第15ないし18行)旨の主張がされている。
上記主張について検討すると、甲2には、金属板体11に、複数の溝などのウイック構造14を設ける際に、エッチング加工を行うことが記載(段落【0040】)されており、
甲4には、上板2と下板3との間に設けられた複数条の溝4、5をエッチングなどの方法で形成することが記載(段落【0019】)され、さらに、溝4、5の内面に、それらの長手方向に沿って、エッチングなどの方法で形成した微細溝9が設けられることが記載(段落【0029】)されており、
甲8には、容器15の内面となる片側面にのみ、ハーフエッチング加工により第1シート体11の厚みの途中までエッチングが施されて、蒸気通路20とウイック22が形成されることが記載(段落【0021】)されていることからみて、金属からなるベーパーチャンバーの容器の内面をエッチングにより加工することにより、溝やウイックを形成することは、周知技術であると認められ、エッチングにより加工された面において粗面が形成されることも技術常識であると一応認められる。
しかし、甲2、甲4、及び甲8において、エッチングにより加工したべーパーチャンバーの容器の内面が、本件訂正発明における「複数の細孔」のように、平均深さが10nm以上、平均直径が10nm以上100nm以下であり、互いに独立したものであることまでは開示されておらず、本件訂正発明の細孔における、平均深さ、平均直径を得るにあたって、本件特許明細書段落【0056】に記載のとおり、エッチング液の種類、温度、エッチングの時間等を調整する必要があることからみて、金属にエッチングによる加工を行うことにより、本件訂正発明において特定された、平均深さ、平均直径を有し、互いに独立した複数の細孔が必ずしも形成されるとは限らない。
そうすると、本件訂正発明1は、「従来のベーパーチャンバーの構成を規定するにすぎない」とはいえないから、上記意見書における申立人の主張を採用することはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由、並びに各証拠によっては、請求項1、2、4、6ないし8、10ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、4、6ないし8、10ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3、5、9は、上記のとおり本件訂正により削除されたことにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3、5、9に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700581