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特許異議申立

2018-700491

熱回収装置

審判番号
2018-700491
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-544291
登録番号
特許第6249314号(P6249314)
請求日
2018年06月15日
審決日
2019年04月03日
公報発行日
2019年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】渡部 崇
  • 【権利者代理人】赤井 吉郎
  • 【権利者代理人】崔 允辰
  • 【権利者代理人】木村 一貴
  • 【異議申立人】星 正美
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 宮崎 賢司
  • 審判官 槙原 進
分類
P1651.536-YAA(F28D) / P1651.537-YAA(F28D) / P1651.121-YAA(F28D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6249314号発明「熱回収装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6249314号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14~19〕について、訂正することを認める。 特許第6249314号の請求項1、3~11及び14~18に係る特許を維持する。 特許第6249314号の請求項2、12、13及び19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6249314号の請求項1~19に係る特許についての出願は、2014年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年9月17日 大韓民国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月20日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、平成30年6月15日に特許異議申立人星正美(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされると共に、甲第1号証~甲第9号証が提出され、当審により平成30年8月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年11月26日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求があり、それを受けて、当審より平成30年12月7日付けで異議申立人に対して通知書を通知し、期間を指定して意見を求めたが、その指定した期間内に異議申立人からの応答がなかった。その後、当審より、平成31年1月30日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、特許権者は平成31年3月22日に手続補正書を提出して平成30年11月26日に提出の訂正請求書の補正を行った。 第2 訂正の適否についての判断 1 平成31年3月22日付け手続補正書による補正について 請求項14に係る補正(下記訂正事項5)は、補正前の訂正事項5における「熱タンク流出ライン」が誤記であったものを、「断熱タンク流出ライン」に正すものであって、軽微な瑕疵の補正といえる。 したがって、平成31年3月22日付けの手続補正書による補正は、平成30年11月26日付け訂正請求書の要旨を変更するものではなく、当該補正を認める。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1~訂正事項6のとおりである。 [訂正事項1] 請求項1を、以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正する(下線部は、訂正箇所を示す。以下、同じ。)。 「【請求項1】 飽和水が貯蔵されている断熱タンク、反応器、熱交換器、及び、スチームの需要先の要求に応じてスチーム圧力及びスチームの生産量を制御するための制御部を含み、前記断熱タンク、反応器および熱交換器はそれぞれ流入ラインおよび流出ラインを含み、 前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、前記飽和水または前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に再流入し、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れであり、 前記制御部は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する測定部と、前記測定部で測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する調節部と、を含み、 反応器は回分式反応器である、熱回収装置。」 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項2を削除。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項12を削除。 [訂正事項4] 特許請求の範囲の請求項13を削除。 [訂正事項5] 請求項14を、以下の事項により特定されるとおりの請求項14として訂正する。 「【請求項14】 回分式反応器から流出される流れを熱交換器に流入し、断熱タンク内部に貯蔵された飽和水または前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換させる段階、 前記回分式反応器から流出され、前記飽和水または熱交換媒体と熱交換された流れを前記回分式反応器に再流入させる段階、及び、 スチームの需要先の要求に応じてスチームの圧力及びスチームの生産量を制御する段階を含み、 前記制御する段階は、 断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する段階と、 測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する段階と、 を含み、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れである、熱回収方法。」 [訂正事項6] 特許請求の範囲の請求項19を削除。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1~13〕及び一群の請求項〔14~19〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1の発明特定事項に、「スチームの需要先の要求に応じてスチーム圧力及びスチームの生産量を制御するための制御部を含み」、「前記制御部は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する測定部と、前記測定部で測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する調節部と、を含み、反応器は回分式反応器である」点を追加して、請求項1の発明特定事項を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)における明細書の段落0042の「一具現例において、前記熱回収装置10はスチームの圧力および/または生産量を制御する制御部をさらに含むことができる。前記制御部はスチーム流出ライン310の油圧を測定する測定部を含むことができ、前記測定部で測定された油圧によりバルブの開閉程度を適切に調節する調節部を含むことができる。これによって、流出するスチームの圧力および生産量をスチームの需要先で要求する程度に応じて適切に調節することができる。前記制御部により、スチームを回分式反応器100で非連続的に発生する廃熱から連続的にスチームを生産することができる。」という記載からみて、上記点を追加する訂正事項1は明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、新規事項の追加に該当しないものと認められる。 さらに、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 (2)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項14の発明特定事項に、「スチームの需要先の要求に応じてスチームの圧力及びスチームの生産量を制御する段階を含み、前記制御する段階は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する段階と、測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する段階と、を含」む点を追加して、請求項14の発明特定事項を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、明細書等における明細書の上記段落0042の記載及び段落0062の「一つの例示において、前記方法は、スチームの圧力および/または生産量を制御する段階をさらに含むことができ、これにより、流出するスチームの圧力および生産量をスチームの需要先で要求される程度に応じて適切に調節することができる。前記制御部により、スチームを回分式反応器100で非連続的に発生する廃熱から連続的にスチームを生産することができる。」という記載からみて、上記点を追加する訂正事項5は明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、新規事項の追加に該当しないものと認められる。 さらに、訂正事項5は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 (3)訂正事項2~訂正事項4、訂正事項6について 訂正事項2~訂正事項4及び訂正事項6は、それぞれ請求項2、12、13及び19を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、訂正事項2~訂正事項4及び訂正事項6はいずれも、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 4 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1~訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14~19〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正請求項1、3~11、14~18に係る発明(以下、「本件発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3~11、14~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件発明1 「飽和水が貯蔵されている断熱タンク、反応器、熱交換器、及び、スチームの需要先の要求に応じてスチーム圧力及びスチームの生産量を制御するための制御部を含み、前記断熱タンク、反応器および熱交換器はそれぞれ流入ラインおよび流出ラインを含み、 前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、前記飽和水または前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に再流入し、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れであり、 前記制御部は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する測定部と、前記測定部で測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する調節部と、を含み、 反応器は回分式反応器である、熱回収装置。」 本件発明3 「熱交換媒体は凝縮水である、請求項1に記載の熱回収装置。」 本件発明4 「熱交換器は断熱タンクの内部または外部に設置されている、請求項1に記載の熱回収装置。」 本件発明5 「熱交換器は断熱タンクの外部に設置されており、前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、熱交換器流入ラインに沿って前記熱交換器に流入した熱交換媒体と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に流入し、熱交換された前記熱交換媒体は断熱タンク流入ラインに沿って前記断熱タンクに流入する、請求項4に記載の熱回収装置。」 本件発明6 「熱交換器は飽和水が貯蔵された断熱タンクの内部に設置されており、前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、前記断熱タンクに貯蔵された飽和水と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に再流入される、請求項4に記載の熱回収装置。」 本件発明7 「反応器に流入する流れの温度と断熱タンクに貯蔵された飽和水の温度が下記の数式(1)を満足する、請求項5または請求項6に記載の熱回収装置。 5℃≦TRin-TSW≦70℃・・・(1) 前記数式(1)で、TRinは反応器に流入する流れの温度を表し、TSWは断熱タンクに貯蔵された飽和水の温度を表す。」 本件発明8 「反応器に流入する流れは凝縮された反応物の流れである、請求項7に記載の熱回収装置。」 本件発明9 「凝縮水が断熱タンク流入ラインに沿って前記断熱タンクに流入する、請求項6に記載の熱回収装置。」 本件発明10 「熱交換された熱交換媒体は液相の凝縮水の流れであり、断熱タンク下部から熱交換器流入ラインに連結されている循環ラインをさらに含み、前記断熱タンク下部から流出する飽和水が前記循環ラインに沿って前記熱交換器流入ラインに流入する、請求項5に記載の熱回収装置。」 本件発明11 「断熱タンクはスチーム流出ラインをさらに含む、請求項5または請求項9に記載の熱回収装置。」 本件発明14 「回分式反応器から流出される流れを熱交換器に流入し、断熱タンク内部に貯蔵された飽和水または前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換させる段階、 前記回分式反応器から流出され、前記飽和水または熱交換媒体と熱交換された流れを前記回分式反応器に再流入させる段階、及び、 スチームの需要先の要求に応じてスチームの圧力及びスチームの生産量を制御する段階を含み、 前記制御する段階は、 断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する段階と、 測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する段階と、 を含み、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れである、熱回収方法。」 本件発明15 「熱交換媒体は凝縮水である、請求項14に記載の熱回収方法。」 本件発明16 「凝縮水または熱交換された熱交換媒体を断熱タンクに流入させる段階をさらに含む、請求項14に記載の熱回収方法。」 本件発明17 「反応器に流入する流れの温度と断熱タンクに貯蔵された飽和水の温度が下記の数式(1)を満足するように調節することを含む、請求項16に記載の熱回収方法。 5℃≦TRin-TSW≦70℃・・・(1) 前記数式(1)で、TRinは反応器に流入する流れの温度を表し、TSWは断熱タンクに貯蔵された飽和水の温度を表す。」 本件発明18 「前記断熱タンクの上部からスチームを流出させる段階をさらに含む、請求項16に記載の熱回収方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~19に係る特許に対して平成30年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)実施可能要件 本件特許の明細書の段落0038の記載を踏まえると、同明細書の段落0046~0048の記載は矛盾している。 また、上記段落0046~0048の記載によれば、TSout-TTinが負の値を示すこととなるから、TSout-TTinが正の値を示すという段落0038、0059の記載とも矛盾する。 加えて、本件発明12、19は、実施例1(図3)と実施例2(図4)とを選択的に包含する発明であると認められるが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、実施例2(図4)についてしか数式2により温度範囲を特定する発明が記載されておらず、実施例1(図3)についてはTSoutとTTinの関係をどのようにすればよいかは記載されていない。 したがって、本件発明12、19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)サポート要件 本件発明5は、熱交換器が断熱タンクの外部に設置され、熱交換された熱交換媒体が断熱タンクに流入することからみて、本件特許の明細書の発明の詳細な説明にいう実施例1(図3)に対応するかのようであるが、この実施例1には、断熱タンク流入ライン330を備えていない。 よって、本件発明5及び本件発明5を引用する本件発明7、8、10~13は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。 したがって、本件請求項5、7、8、10~13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)進歩性 本件特許の請求項1~5、7、8、10~19に係る発明は、本件特許の出願(優先日)前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 (甲号証一覧) 甲第1号証:特開2008-155178号公報 甲第2号証:特開昭57-117784号公報 甲第3号証:特開2006-200777号公報 甲第4号証:特開2001-248903号公報 甲第5号証:特開2002-356517号公報 以下、甲第1号証を「甲1」と略記する。甲第2号証~甲第5号証についても同様。 なお、取消理由は特許異議申立書に記載された、特許異議申立理由を全て含むものである。 2 取消理由についての当審の判断 (1)実施可能要件について 特許請求の範囲の請求項12、19が削除されたため、本件特許の請求項12、19に対する取消理由については、対象となる請求項が存在しないものとなった。 (2)サポート要件について 本件発明5は、「熱交換器は断熱タンクの外部に設置されており、前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、熱交換器流入ラインに沿って前記熱交換器に流入した熱交換媒体と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に流入し、熱交換された前記熱交換媒体は断熱タンク流入ラインに沿って前記断熱タンクに流入する、請求項4に記載の熱回収装置。」である(なお、下線は当審が付与した。以下、同じ。)。 本件特許の明細書の発明の詳細な説明にいう実施例1(図3)は、断熱タンク流入ライン330を備えていないものの、平成30年11月26日の意見書(第2~3頁)において、特許権者が主張するように、同明細書の段落0017の「また、前記のように熱交換された熱交換媒体は熱交換器200から流出されて断熱タンク流入ライン330に沿って前記断熱タンク300に流入することができる。この場合、前記反応器流出ライン110と熱交換器流入ライン210は互いに異なる流体が流れる独立的なラインであり、熱交換器流出ライン220と断熱タンク流入ライン330は同じラインで形成され得る。」という記載からみて、熱交換器が断熱タンクの外部に設置され、熱交換された熱交換媒体が断熱タンクに流入する熱回収装置(実施例1(図3)に対応)において、熱交換され、熱交換器200から流出された熱交換媒体が断熱タンク流入ライン330に沿って前記断熱タンクに流入することが記載されているといえるから、本件発明5は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。 また、同様の理由で、本件発明5を引用する本件発明7、8、10、11も、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえる。 よって、請求項5、7、8、10、11に係る特許に対する上記1(2)の取消理由は、理由がない。 (3)進歩性について ア 取消理由で引用した各甲号証の記載 (ア)甲1 甲1には、以下の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審で付与した。以下、甲2~甲5についても同じ。)。 「【請求項4】 液相で発熱を伴う反応をさせるための反応器と、 前記反応器内において液相の発熱反応に関与する反応系を、前記反応器の外部を通って、再び前記反応器内に循環させるための反応系循環路と、 前記反応系循環路の途中に介在される熱交換器と、 前記熱交換器に対し、気液平衡状態の熱媒を循環させるための熱媒循環路と、 前記反応器内の反応系の温度に基づいて、前記熱媒循環路内の圧力を制御するための制御手段と、を備えていることを特徴とする、反応装置。」 「【0002】 発熱を伴う液相反応においては、効率よく反応させるために、反応器内での反応に関与する反応系の温度を所定の温度領域に調整し、反応温度を適度な範囲に制御することが必要である。 発熱を伴う液相反応の反応温度を制御するための除熱操作には、冷却水などを用いた顕熱による除熱よりも、水蒸気などを用いた潜熱による除熱の方が、熱媒に貯蔵できる熱量が多いことから好適である。また、潜熱による除熱の場合は、単位熱量あたりの熱媒使用量を削減することができ、さらに、例えば、水蒸気などの熱媒を他の設備の熱源に利用できるなど、熱量の有効利用を図ることもできる。」 「【0016】 図1において、この反応装置1は、例えば、原料ガスとして水素ガスなどが用いられる各種水素添加反応などに、有効に適用することのできる反応装置であって、反応器としての液相反応槽2と、原料ガス供給ライン3と、原料液供給ライン4と、反応液循環路(第1反応系循環路)としての反応液取出ライン5および反応液回収ライン6と、第1熱交換器7と、第1熱媒循環路としての第1熱媒供給ライン8および第1熱媒回収ライン9と、第1制御手段および第2制御手段としての温度センサ10と、第1制御手段としての第1熱媒排出制御弁11と、還流路(第2反応系循環路)としての蒸気取出ライン13および還流ライン14と、第2熱交換器15と、第2熱媒循環路としての第2熱媒供給ライン16および第2熱媒回収ライン17と、第2制御手段としての第2熱媒排出制御弁18と、を備えている。 【0017】 液相反応槽2は、液相において発熱反応させることができる反応槽であれば、特に限定されない。例えば、図示の液相反応槽2は、液相において、気液接触により発熱反応させることができる反応槽であって、攪拌翼20を備える耐圧性の通気攪拌槽などから構成される。 原料ガス供給ライン3は、その下流側端部が、攪拌翼20の下方であって、液相反応槽2の底部内に配置されている。原料ガス供給ライン3の下流側端部には、ノズル(もしくは、スパージャ)21が設けられている。また、この原料ガス供給ライン3の上流側端部には、水素ガスなどの原料ガス源が接続されている。」 「【0024】 第1熱媒供給ライン8および第1熱媒回収ライン9での第1熱媒の循環は、ポンプ25による強制循環に限定されず、例えば、サーモサイフォン効果による自然循環であってもよい。 第1熱媒としては、第1熱交換器7内にて求められる反応液22の除熱量に合わせて、かつ、熱媒の飽和蒸気圧を考慮しつつ、選択される。第1熱媒の具体例としては、各種の熱媒が挙げられ、特に限定されないが、例えば、水、アルコール類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これら熱媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」 「【0033】 図1において、蒸気取出ライン13と、還流ライン14とは、液相反応槽2内の蒸気を、液相反応槽2の外部を通って、再び液相反応槽2内に循環させるための還流路(第2反応系循環路)を形成する。また、この還流路の途中には、還流路内の蒸気を除熱するための第2熱交換器15が介在される。 蒸気取出ライン13は、その上流側端部が、液相反応槽2の頂部に接続されており、その下流側端部が、第2熱交換器15に接続されている。 【0034】 還流ライン14は、その上流側端部が、第2熱交換器15に接続されており、その下流側端部が、液相反応槽2の鉛直方向上部側に接続されている。 第2熱交換器15は、蒸気取出ライン13と還流ライン14との間に介在されている。この第2熱交換器15は、還流路内を循環する蒸気を、熱交換により除熱させることができる熱交換器である。 【0035】 液相反応槽2中の蒸気は、蒸気取出ライン13に取り込まれ、第2熱交換器15内で除熱された後、後述する反応生成物排出ライン32への排出分と分離され、還流ライン14を経て、液相反応槽2内へと戻る。これにより、液相反応槽2中の蒸気が、第2熱交換器15を通って、還流路内を循環する。 図1において、第2熱媒供給ライン16と、第2熱媒回収ライン17とは、第2熱交換器15に対し、気液平衡状態の第2熱媒を循環させるための第2熱媒循環路を形成する。また、この第2熱媒循環路の途中には、第2気液分離槽28が介在される。 【0036】 第2熱媒供給ライン16は、その上流側端部が、第2気液分離槽28の底部に接続されており、その下流側端部が、第2熱交換器15に接続されている。 第2熱媒回収ライン17は、その上流側端部が、第2熱交換器15に接続されており、その下流側端部が、第2気液分離槽28の鉛直方向上方側に接続されている。 第2気液分離槽28は、第2熱媒供給ライン16と第2熱媒回収ライン17との間に接続されている。この第2気液分離槽28は、第2熱媒を、蒸気(気体状態)と液(液体状態)とに分離させ得るものであれば、特に制限されず、例えば、円筒型圧力容器などから構成される。 【0037】 第2熱媒供給ライン16の途中には、第2熱媒循環用のポンプ29が介在されている。このポンプ29は、第2気液分離槽28から第2熱媒供給ライン16に取り込まれた第2熱媒を、第2熱交換器15へと送り込む。 第2熱交換器15へと送り込まれた第2熱媒は、第2熱交換器15内で蒸気の除熱に用いられ、その後、第2熱媒回収ライン17を経て、第2気液分離槽28へと送り込まれる。こうして、第2熱媒が、第2熱交換器15を通って、第2熱媒循環路内を循環し、蒸気を除熱する。」 「【0040】 温度センサ10は、上記したのと同様であり、液相反応槽2内に配置され、液相反応槽2内の反応液22の温度を検知するためのセンサと、このセンサにより計測された反応液22の温度に基づいて、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度や、第1熱媒排出制御弁11の開閉または開度を制御するための制御部(CPU)と、を備えている。 第2熱媒排出制御弁18は、第2熱媒循環路からの第2熱媒の排出を制御するための制御弁であって、第2熱媒循環路に接続されている。図1に示す反応装置1では、第2気液分離槽28の頂部に第2熱媒排出ライン30が接続されており、この第2熱媒排出ライン30の途中に、第2熱媒排出制御弁18が介在されている。 【0041】 第2熱媒排出ライン30は、第2熱媒を、第2熱媒循環路外へ排出するためのラインである。この熱媒排出ライン30から第2熱媒循環路外への第2熱媒の除去は、温度センサ10の制御部(CPU)により、第2熱媒排出制御弁18の開閉や開度を調整することによって制御される。 第2熱媒の温度は、第2熱媒排出制御弁18の開閉や開度を適宜調整することにより、調節される。すなわち、液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づき、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度が、温度センサ10の制御部(CPU)によって調整されると、第2熱媒の排出が制御され、これにより、第2熱媒循環路内の圧力が適宜調整される。さらに、第2熱媒循環路内の圧力に合わせて、第2熱媒の温度が調整される。」 「【0049】 ・・・図1において、第2熱交換器15の還流ライン14側には、反応生成物排出ライン32が接続されている。また、この反応生成物排出ライン32の下流側端部には、気相反応槽33が接続されており、さらに、気相反応槽33には、反応生成物取出ライン34が接続されている。 【0050】 液相反応槽2内の反応生成物は、未反応の反応原料や未反応の原料ガスとともに、蒸気として、蒸気供給ライン13に取り込まれ、第2熱交換器15で除熱された後、その一部(液相反応槽2への還流分)が、還流ライン14を経て、液相反応槽2内へ戻される。一方、他の一部(気相反応槽33への排出分)は、第2熱交換器15から、反応生成物排出ライン32に取り込まれて、気相反応槽33に送り込まれる。」 「【0052】 ・・・第2熱媒の温度は、上述のように、液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づいて、第2熱媒循環路内の圧力を調整することにより、制御される。一方で、このような制御とは別に、反応生成物排出ライン32を通過する反応生成物の温度の計測結果に基づいて、温度センサ35の制御部(CPU)により、第2熱媒排出制御弁18や第2熱媒補充制御弁19の開閉または開度を調整し、第2熱媒循環路内の圧力を調整することによっても、制御することができる。」 「【0055】 より具体的には、例えば、アニリンの製造においては、溶媒として、例えば、反応生成物であるアニリンが用いられ、触媒として、例えば、パラジウム/活性炭、パラジウム-白金/活性炭などの固体触媒が用いられる。また、原料ガスとして、例えば、水素ガスが用いられ、原料液として、例えば、ニトロベンゼンが用いられる。」 「 」 以上の記載を総合すると、甲1には、以下の2つの発明(以下、「甲1発明A」、「甲1発明B」という。)が記載されている。 (甲1発明A) 「反応器としての液相反応槽2と、蒸気取出ライン13および還流ライン14と、第2熱交換器15と、第2熱媒循環路としての第2熱媒供給ライン16および第2熱媒回収ライン17と、第2熱媒排出制御弁18と、を備えた反応装置であって、 蒸気取出ライン13と、還流ライン14とは、液相反応槽2内の蒸気を、液相反応槽2の外部を通って、再び液相反応槽2内に循環させるための還流路を形成するとともに、この還流路の途中には、還流路内の蒸気を除熱するための第2熱交換器15が介在され、 さらに、第2熱媒供給ライン16と、第2熱媒回収ライン17とは、第2熱交換器15に対し、気液平衡状態の第2熱媒を循環させるための第2熱媒循環路を形成するとともに、この第2熱媒循環路の途中には、第2気液分離槽28が介在され、 第2気液分離槽28の頂部に第2熱媒排出ライン30が接続されており、第2熱媒が、第2熱媒排出ライン30と第2熱媒排出制御弁18を経て第2熱媒循環路外へ排出されると共に、 液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づき、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度が、温度センサ10の制御部によって調節されると、第2熱媒の排出が制御され、これにより、第2熱媒循環路内の圧力が適宜調節され、さらに、第2熱媒循環路内の圧力に合わせて、第2熱媒の温度が調整される、 反応熱を除熱する装置。」 (甲1発明B) 「反応器としての液相反応槽2と、蒸気取出ライン13および還流ライン14と、第2熱交換器15と、第2熱媒供給ライン16および第2熱媒回収ライン17と、第2熱媒排出制御弁18と、を備えた反応装置において、 液相反応槽2中の蒸気が、蒸気取出ライン13に取り込まれ、第2熱交換器15内で除熱された後、後述する反応生成物排出ライン32への排出分と分離され、還流ライン14を経て、液相反応槽2内へと戻ることにより、液相反応槽2中の蒸気が、第2熱交換器15を通って、還流路内を循環する段階と、 第2熱交換器15へと送り込まれた第2熱媒が、第2熱交換器15内で蒸気の除熱に用いられ、その後、第2熱媒回収ライン17を経て、第2気液分離槽28へと送り込まれ、第2気液分離槽28から第2熱媒供給ライン16に取り込まれた第2熱媒を、第2熱交換器15へと送り込み、気液平衡状態の第2熱媒が第2熱媒循環路内を循環して蒸気を除熱する段階と、 第2気液分離槽28の頂部に第2熱媒排出ライン30が接続されており、第2熱媒を、第2気液分離槽28から、第2熱媒排出ライン30により第2熱媒排出制御弁18を経て第2熱媒循環路外へ排出する段階と、を含み、 液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づき、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度が、温度センサ10の制御部によって調整されると、第2熱媒の排出が制御され、これにより、第2熱媒循環路内の圧力が適宜調整され、さらに、第2熱媒循環路内の圧力に合わせて、第2熱媒の温度が調整される、 反応熱の除熱方法。」 (イ)甲2 甲2には、以下の記載がある。 「2.特許請求の範囲 水を収容した断熱容器と、該断熱容器内に収容された水の量を検出する検出手段と、該検出手段にて検出される水の量に応じて該断熱容器内に所定量の水を供給する給水手段と、該断熱容器内に形成される蒸発空間に接続され、該断熱容器内を所定の減圧下と為す真空ポンプ手段と、該断熱容器内に収容された水と接触し得るように配設され、冷却すべき流体が流通せしめられる冷却通路とを含み、該真空ポンプ手段にて達成される所定の減圧下において該断熱容器内で蒸発せしめられる水の蒸発熱により、該冷却通路内を流通せしめられる所定の流体を冷却せしめるようにしたことを特徴とする冷却装置。」(第1頁左欄第4行~下から第4行) 「図において、1は、所定大きさの、よく知られた断熱材料にて被覆されている断熱容器であって、その内部に収容される水2に対して外部からの熱の供給を遮断するようになっている。」(第2頁左下欄第3行~第6行) 「従って、かかる構成の装置においては、断熱容器1内に所定量の水を収容せしめる一方、真空ポンプ8の作動によって断熱容器1内の雰囲気を排気せしめて所定の減圧度と為すことにより、該断熱容器1内の水2が連続的に蒸発せしめられることとなるが、該断熱容器1の内部と外部との間の断熱が行なわれているため、かかる水の蒸発によって奪われる蒸発熱は断熱容器1内の水2の冷却に作用することとなるのである。従って、断熱容器1内において水の蒸発が進行すればする程、そこに収容されている水2の温度はより低下せしめられるのであり、それ故かかる状態下において冷却パイプ9内に所定の冷却されるべき流体を流通せしめれば、該冷却パイプ9の熱交換部9cにおいてパイプ壁を介して該流体と冷水2との間に熱交換が行なわれ、以て所望の程度に冷却された流体がその出口部9bから取り出されるのである。なお、かくの如き水の蒸発によって、断熱容器1内の水2の量は漸次減少するが、その水の量はレベルコントローラ3によって検出され、そしてその検出に基づいて出力される信号による電磁弁4の開閉により、給水パイプ5より継続して給水されるため、該断熱容器1内の水2の量は常に所定量に維持されるようになっているのである。」(第2頁右下欄第13行~第3頁左上欄第下から5行) 「その他、断熱容器1内の水2はその一部の蒸発によって冷水となっているので、断熱容器1底部の排水パイプ10から所望量の冷水を取り出すことも可能であり、且つ大気温度が高い場合でも冷凍機を使用することなく冷水を得ることが出来るのである。」(第3頁左下欄第3行~第8行) 以上の記載を総合すると、甲2には、以下の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。 「水の潜熱を利用する冷却装置において、水を収容する容器が断熱容器であって、その内部に収容される水に対して外部からの熱の供給を遮断するようにして、断熱容器の内部と外部との間の断熱を行い、水の蒸発によって奪われる蒸発熱を断熱容器内の水の冷却に作用させる技術。」 (ウ)甲3 甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 圧縮機、水-冷媒熱交換器、減圧手段および空気-冷媒熱交換器を順次接続して形成され、冷媒を循環させる冷媒循環回路と、前記水-冷媒熱交換器と接続され、前記水-冷媒熱交換器にて加熱された温水を貯湯する貯湯手段とを備え、前記貯湯手段の断熱材として、真空断熱材を使用する構成としたヒ-トポンプ給湯機。 【請求項2】 貯湯手段の側部に真空断熱材を使用し、前記側部以外の部分には、グラスウ-ル断熱材および/または発泡断熱材を使用する構成とした請求項1に記載のヒ-トポンプ給湯機。」 「【0005】 しかしながら、上記従来の構成では、貯湯手段28の断熱材にグラスウールを使用することが一般的であり、グラスウールで断熱性能を確保するには厚みを稼ぐ必要があり、タンクの直径が大きくなり、しいては本体が大きくなってしまうと言う課題を有していた。 【0006】 本発明は上記従来の課題を解決するもので、貯湯手段の断熱性能も確保しながら、小型コンパクト化を実現できるヒートポンプ給湯機を提供することを目的とする。」 「【0018】 一方、給湯回路は、水-冷媒熱交換器22にて沸き上げた温水を貯める貯湯手段である貯湯タンク15と、貯湯タンク15を断熱する真空断熱材16と、貯湯タンク15に水道水を入水する入水管13と、貯湯タンク15内の低温の水を送水する水ポンプ17と、水-冷媒熱交換器22にて沸き上げた温水を貯湯タンク15に入水する湯入口19と、貯湯タンク15から温水を蛇口や風呂の給湯端末(図示せず)に給湯する給湯管14などから構成されている。」 以上の記載を総合すると、甲3には、以下の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。 「圧縮機、水-冷媒熱交換器、減圧手段および空気-冷媒熱交換器を順次接続して形成され、冷媒を循環させる冷媒循環回路と、前記水-冷媒熱交換器と接続され、前記水-冷媒熱交換器にて加熱された温水を貯湯する貯湯手段とを備え、前記貯湯手段の断熱材として、真空断熱材を使用する構成としたヒ-トポンプ給湯機において、貯湯手段の側部に真空断熱材を使用し、前記側部以外の部分に、グラスウ-ル断熱材および/または発泡断熱材を使用する技術、及び、従来の構成では貯湯手段28の断熱材にグラスウールを使用することが一般的であったこと。」 (エ)甲4 甲4には、以下の記載がある。 「【要約】 【課題】 効率的に利用水Wの加熱が行えるようにする。 【解決手段】 ヒートポンプ給湯装置を冷媒Rが凝縮する凝縮器12を備えた冷媒回路10と、該凝縮器12の熱により利用水Wを加熱して当該利用水Wをお湯として利用されるようにする熱交換器20とにより構成し、熱交換器20は凝縮器12を内設すると共に当該凝縮器12により加熱される熱搬送媒体Hを貯留する断熱タンク21と、該断熱タンク21の上部空間23に設けられて、当該上部空間23における熱搬送媒体Hの蒸気と循環してきた利用水Wとを熱交換させることにより当該利用水Wが蒸気で加熱されるようにする受熱器25と、上部空間23の圧力を減圧して熱搬送媒体Hの蒸発を促進させる減圧ポンプ24とにより構成する。これにより、受熱器25は熱搬送媒体Hの蒸気と熱交換するようにして効率的に利用水Wを加熱する。」 「【0022】熱交換器20は、熱搬送媒体Hが収納された断熱性のタンク21(21a,21b)、熱搬送媒体Hを状況に応じて加熱する電気ヒータ22(22a,22b)、断熱タンク21内の上部空間23(23a,23b)を真空引して減圧する減圧ポンプ24(24a,24b)、上部空間23(23a,23b)に設けられ利用水Wが循環する受熱器25(25a~25d)等を有している。」 「【0025】断熱タンク21には上述した熱搬送媒体Hが所定量貯留され、蒸気室23に露出して受熱器25が設けられると共に、断熱タンク21の底部側(少なくとも熱搬送媒体Hの水面下)には凝縮器12及び電気ヒータ22が設けられている。 【0026】このような構成で、給水口26(26a,26b)から水道水等の熱搬送媒体Hを断熱タンク21内に所定量供給する。このとき受熱器25が熱搬送媒体Hに接触したり、減圧ポンプ24の吸引口27(27a,27b)が当該熱搬送媒体Hにより塞がれたりしないようにする。」 以上の記載を総合すると、甲4には、以下の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。 「水道水等の熱搬送媒体Hを貯留する断熱タンク21と、その上部空間23に設けられて、当該上部空間23における熱搬送媒体Hの蒸気と循環してきた利用水Wとを熱交換させることにより当該利用水Wが蒸気で加熱されるようにする受熱器25を備えたヒートポンプ給湯装置であって、熱搬送媒体H(たとえば水)を貯留するタンクが断熱タンクであること。」 (オ)甲5 甲5には、以下の記載がある。 「【請求項1】 重合槽内で、エチレン、酢酸ビニル、メタノールおよび重合開始剤を含む重合溶液においてエチレン-酢酸ビニル共重合体を製造する方法であって、 前記重合溶液から気化した蒸気を含む気体を冷却し、前記気体の少なくとも一部の凝縮液を生成させる工程と、 前記凝縮液を前記重合溶液へと導入し、前記凝縮液の少なくとも1つの成分を気化させる工程と、を含み、 前記蒸気が前記少なくとも1つの成分を含むことを特徴とするエチレン-酢酸ビニル共重合体の製造方法。」 「【請求項18】 エチレン-酢酸ビニル共重合体の製造装置であって、エチレン、酢酸ビニル、メタノールおよび重合開始剤を含む重合溶液を保持する重合槽と、冷却器と、を備え、 前記冷却器が、前記重合溶液から気化した蒸気と接触し、かつ前記重合溶液と接触しない位置に配置されたことを特徴とするエチレン-酢酸ビニル共重合体の製造装置。 【請求項19】 冷却器が、冷却媒体供給源と接続され、前記冷却媒体供給源を除く液体供給源とは接続されていない熱交換器である請求項18に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体の製造装置。 【請求項20】 冷却器が重合槽外に配置され、 前記冷却器と前記重合槽とを、冷却するべき気体が前記重合槽から前記冷却器へと導入されるように接続した第1の導管と、 前記冷却器と前記重合槽とを、凝縮液が前記冷却器から前記重合槽へと導入されるように接続した第2の導管と、をさらに備えた請求項18または19に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体の製造装置。」 「【0032】重合槽1には、重合反応に伴う発熱を除去するために、気体凝縮装置10が接続されている。この気体凝縮装置10は、熱交換器12と、この熱交換器と重合槽とを接続する配管(気体導入管11、凝縮液導入管13)とを備えている。気体導入管11は、重合槽の気相部2から熱交換器12に重合溶液上方の気体を供給する。熱交換器12は、この気体と冷却媒体との間の熱交換により気体を凝縮する。凝縮液導入管13は、生成した凝縮液を重合槽へと流し込む。冷却媒体は、冷却媒体供給管15から熱交換器に供給され、同回収管16から回収される。冷却媒体の供給方向はこの逆であってもよい。」 「【0049】 【発明の効果】本発明を適用すれば、原料を連続して供給しなくても、長期間にわたって安定してEVAを製造できる。本発明は、回分式の製造にも適用が可能であり、連続製造においても、その開始、終了または緊急停止時の安定性に優れている。」 以上の記載を総合すると、甲5には、以下の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。 「重合槽から抜き出される冷却するべき気体を気体凝縮器に供給して熱交換し、凝縮液の一部を重合槽に戻すようにしたエチレン-酢酸ビニル共重合体の製造装置であって、原料を連続して供給しなくても、長期間にわたって安定してEVAを製造でき、回分式の製造にも適用が可能であり、連続製造においても、その開始、終了または緊急停止時の安定性に優れること。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と、甲1発明Aとを対比する。 甲1発明Aの「反応器としての液相反応槽2」、「蒸気取出ライン13」、「還流ライン14」、「第2熱交換器15」、「第2熱媒排出制御弁18」、「第2熱媒排出ライン30」は、それぞれ、本件発明1の「反応器」、「反応器流出ライン」、「反応器流入ライン」、「熱交換器」、「バルブ」、「断熱タンク流出ライン」に相当し、甲1発明Aの「気液平衡状態の第2熱媒」は、飽和水といえると共に、第2熱交換器15に送られることから、本件発明1の「飽和水」、「前記熱交換器に流入する熱交換媒体」に相当し、甲1発明Aの「第2気液分離槽28」は、本件発明1の「断熱タンク」と、「タンク」であるという限りにおいて一致する。 また、甲1発明Aの第2気液分離槽28、液相反応槽2および第2熱交換器15は、これらの流入ラインおよび流出ラインとなるものとして、第2熱媒供給ライン16、第2熱媒回収ライン17、蒸気取出ライン13、還流ライン14、第2熱媒排出ライン30を備えているから、甲1発明Aは、「タンク、反応器および熱交換器はそれぞれ流入ラインおよび流出ラインを含」むということができる。 さらに、甲1発明Aの液相反応槽2から流出される流れは蒸気取出ライン13に沿って第2熱交換器15に流入し、第2熱交換器15に流入する第2熱媒と熱交換された後、還流ライン14に沿って液相反応槽2に再流入するといえると共に、液相反応槽2から流出される蒸気取出ライン13における流れは、蒸気を取り出すのであるから、気相の反応物の流れであるといえる。 したがって、本件発明1と、甲1発明Aは、以下の点で一致し、以下の点で少なくとも相違する。 (一致点) 「飽和水が貯蔵されているタンク、反応器、熱交換器を含み、前記タンク、反応器および熱交換器はそれぞれ流入ラインおよび流出ラインを含み、 前記反応器から流出される流れは反応器流出ラインに沿って前記熱交換器に流入し、前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換された後、反応器流入ラインに沿って前記反応器に再流入し、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れである、 装置。」 (相違点1) 本件発明1は、「スチームの需要先の要求に応じてスチーム圧力及びスチームの生産量を制御するための制御部を含み」、「前記制御部は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する測定部と、前記測定部で測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する調節部と」を含むのに対して、甲1発明Aは、「液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づき、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度が、温度センサ10の制御部によって調整されると、第2熱媒の排出が制御され、これにより、第2熱媒循環路内の圧力が適宜調整され、さらに、第2熱媒循環路内の圧力に合わせて、第2熱媒の温度が調整される」点。 (相違点2) 本件発明1は、反応熱を回収する「熱回収装置」であって、「反応器は回分式反応器である」のに対して、甲1発明Aは、「反応熱を除熱する装置」である点。 (相違点3) 本件発明1は、「飽和水が貯蔵されている」タンクが断熱タンクであるのに対して、甲1発明Aは、「第2気液分離槽28」が断熱タンクではない点。 (イ)判断 相違点1について判断する。 甲1発明Aの相違点1に係る、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度の制御は、温度センサ10による、液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づくものであるから、これを、スチームの需要先の要求に応じてスチーム圧力及びスチームの生産量を制御するものとし、測定された断熱タンク流出ラインのスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調整するものとする動機付けがあるとはいえない。また、甲2記載事項~甲5記載事項のいずれも相違点1に係る本件発明1の構成とはいえず、甲2~甲5のいずれにも相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされておらず、本件特許の優先日前の周知技術ともいえないから、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは困難である。 また、異議申立人が特許異議の申立てと共に提出した甲第6号証(特開平11-322811号公報)、甲第7号証(特開2003-226703号公報)、甲第8号証(特開2008-241177号公報)及び甲第9号証(特公平4-81101号公報)のいずれにも相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 以上のことから、相違点2、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明A及び甲2~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ゆえに、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 ウ 本件発明3~11について 本件発明3~11は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明A及び甲2~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ゆえに、本件発明3~11についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 エ 本件発明14について (ア)対比 本件発明14と、甲1発明Bとを対比する。 甲1発明Bの「第2熱交換器15」、「第2熱媒排出制御弁18」、「第2熱媒」、「第2熱媒排出ライン30」は、それぞれ、本件発明14の「熱交換器」、「バルブ」、「スチーム」、「断熱タンク流出ライン」に相当し、甲1発明Bの「反応器としての液相反応槽2」は、本件発明14の「回分式反応器」と、「反応器」であるという限りにおいて一致し、甲1発明Bの「第2気液分離槽28」は、本件発明14の「断熱タンク」と、「タンク」であるという限りにおいて一致する。 甲1発明Bの「気液平衡状態の第2熱媒」は、飽和水といえると共に、第2熱交換器15に送られることから、本件発明14の「飽和水」、「前記熱交換器に流入する熱交換媒体」に相当する。 また、甲1発明Bは、液相反応槽2から流出される流れを第2熱交換器15に流入し、第2熱交換器15に流入する第2熱媒と熱交換させる段階、前記液相反応槽2から流出され、前記第2熱媒と熱交換された流れを前記液相反応槽2に再流入させる段階を含むと共に、前記液相反応槽2中の蒸気が蒸気取出ライン13に取り込まれ前記液相反応槽2から流出される流れは気相の反応物の流れであるといえる。 したがって、本件発明14と、甲1発明Bは、以下の点で一致し、以下の点で少なくとも相違する。 (一致点) 「反応器から流出される流れを熱交換器に流入し、タンク内部に貯蔵された飽和水または前記熱交換器に流入する熱交換媒体と熱交換させる段階、 前記反応器から流出され、前記飽和水または熱交換媒体と熱交換された流れを前記反応器に再流入させる段階、及び、 反応器から流出される流れは気相の反応物の流れである、方法。」 (相違点4) 本件発明14は、「スチームの需要先の要求に応じてスチームの圧力及びスチームの生産量を制御する段階を含み、前記制御する段階は、断熱タンク流出ラインのスチーム圧力を測定する段階と、測定されたスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する段階と」を含むのに対して、甲1発明Bは、「液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づき、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度が、温度センサ10の制御部によって調整されると、第2熱媒の排出が制御され、これにより、第2熱媒循環路内の圧力が適宜調整され、さらに、第2熱媒循環路内の圧力に合わせて、第2熱媒の温度が調整される」点。 (相違点5) 本件発明14は、「熱回収方法」であって、反応器は「回分式反応器」であるのに対して、甲1発明Bは、「反応熱の除熱方法」であって、「液相反応槽2」は「回分式反応器」ではない点。 (相違点6) 本件発明14は、「断熱タンク」を備えるのに対して、甲1発明Bの「第2気液分離槽28」は断熱タンクではない点。 (イ)判断 相違点4について検討する。 甲1発明Bの相違点4に係る、第2熱媒排出制御弁18の開閉または開度の制御は、温度センサ10による、液相反応槽2内の反応液22の温度の計測結果に基づくものであるから、これを、スチームの需要先の要求に応じてスチームの圧力及びスチームの生産量を制御し、測定された断熱タンク流出ラインのスチーム圧力によりバルブの開閉程度を調節する動機付けがあるとはいえない。また、甲2記載事項~甲5記載事項のいずれも相違点4に係る本件発明14の構成とはいえず、甲2~甲5のいずれにも相違点4に係る本件発明14の構成は記載も示唆もされておらず、本件特許の優先日前の周知技術ともいえないから、甲1発明Bにおいて、上記相違点4に係る本件発明14の構成を採用することは困難である。 また、異議申立人が特許異議の申立てと共に提出した甲第6号証(特開平11-322811号公報)、甲第7号証(特開2003-226703号公報)、甲第8号証(特開2008-241177号公報)及び甲第9号証(特公平4-81101号公報)のいずれにも相違点4に係る本件発明14の構成は記載も示唆もされていない。 以上のことから、相違点5、相違点6について検討するまでもなく、本件発明14は、甲1発明B及び甲2~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ゆえに、本件発明14についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 オ 本件発明15~18について 本件発明15~18は、本件発明14の発明特定事項を全て含み、本件発明14を更に減縮したものであるから、本件発明15~18と同様に、甲1発明B及び甲2~甲9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ゆえに、本件発明15~18についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、3~11及び14~18に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に本件請求項1、3~11及び14~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件訂正により、請求項2、12、13及び19は削除されたため、本件特許の請求項2、12、13及び19に係る特許に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについて、対象が存在しないため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700491

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