特許異議申立
2022-700560
ホットメルト接着剤
- 審判番号
- 2022-700560
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-143652
- 登録番号
- 7034463
- 請求日
- 2022年06月27日
- 審決日
- 2023年07月04日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水フーラー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】北岡 弘章
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.537-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7034463号発明「ホットメルト接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7034463号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7034463号の請求項1-3、5-7に係る特許を維持する。
特許第7034463号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成29年7月25日の出願であって、令和4年3月4日に特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行され、その後、同年6月27日に特許異議申立人 北岡 弘章により、そのすべての請求項について特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年11月22日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和5年1月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年2月15日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年3月9日に意見書を提出した。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨について
本件訂正の「請求の趣旨」は、「特許第7034463号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体、成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体、及び成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%、成分(C)を5~12質量%含み、
130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であり、
前記成分(C)のメルトインデックスは170g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着剤。」
とあるのを、
「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体、成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重体、及び成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%、成分(C)を5~12質量%含み、
130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であり、
前記成分(A)のメルトインデックスは1,000g/10分以上1,500g/10分以下であり、
前記成分(C)のメルトインデックスは40g/10分以上150g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着剤。」と、訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5~7も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4の何れか1項」と記載されているのを、「請求項1~3の何れか1項」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5の何れか1項」と記載されているのを、「請求項1~3及び5の何れか1項」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6の何れか1項に記載の」と記載されているのを、「請求項1~3、5及び6の何れか1項に記載の」と訂正する。
3 一群の請求項について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1~7について、請求項2~7は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1に係る発明では、成分(A)のメルトインデックスを特定せず、また、成分(C)のメルトインデックスについても上限値のみを特定するものとなっている。
これに対し、訂正後の請求項1に係る発明では、成分(A)のメルトインデックスの数値範囲を具体的に特定し、成分(C)のメルトインデックスの上限値に加えて下限値を特定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1における成分(A)のメルトインデックスの数値範囲に関する構成は、明細書の段落【0020】、【0021】に記載された構成である。
同様に、訂正事項1における成分(C)のメルトインデックスの数値範囲に関する構成についても、明細書の段落【0066】の【表1】に記載された構成である。
よって、訂正事項1は、原書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(3)訂正事項3~5
ア 訂正の目的
訂正事項3~5は、訂正事項2で請求項4が削除されるのに伴い、引用する請求項の数を減少させる訂正であるから、訂正事項3~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと
上記アに記載した通り、訂正事項3~5は、訂正事項2で請求項4が削除されるのに伴い、引用する請求項の数を減少させる訂正であるから、訂正事項3~5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに記載した通り、訂正事項3~5は、訂正事項2で請求項4が削除されるのに伴い、引用する請求項の数を減少させる訂正であるから、訂正事項3~5は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)独立特許要件
本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~3、5~7に係る発明は、令和5年1月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~7に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体、成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体、及び成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%、成分(C)を5~12質量%含み、
130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であり、
前記成分(A)のメルトインデックスは1,000g/10分以上1,500g/10分以下であり、
前記成分(C)のメルトインデックスは40g/10分以上150g/10分以下であることを特徴とする、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記成分(B)は、無水マレイン酸官能化エチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記成分(C)は、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体及び/又はエチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含み、
前記成分(C)100質量%中の、アクリル酸ブチルに由来するユニット及び/又はメタクリル酸メチルに由来するユニットの含有量は25質量%以上である、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
さらにフィッシャートロプシュワックスを含む、請求項1~3の何れか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
さらに粘着付与樹脂を含む、請求項1~3及び5の何れか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
紙製包装資材用である、請求項1~3、5及び6の何れか1項に記載のホットメルト接着剤。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
1 理由1(明確性要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。
本件特許発明4の「1,000/10分」は、「1,000」の「単位」(例:g)が特定されておらず、当該数値範囲が不明である。
よって、本件特許発明4は不明確であるから、明確性要件に適合しない。
本件特許発明4を引用する本件特許発明5~7についても同様に不明確である。
2 理由2(サポ-ト要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
(1)成分(A)のメルトインデックス(MI)について
本件特許発明1では成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)が特定されていない。
ここで、本件特許明細書の【表1】からみて、実施例のように、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,086~l,097g/l0分であるものが、上記課題を解決できることは理解できるが、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,086~l,097g/l0分の範囲外であるものが、上記課題を解決できることは理解できない。
そして、本件特許明細書の記載をみると、【0021】に「エチレン-α-オレフィン共重合体のMIを1,000g/10分以上とすることにより、得られるホットメルト接着剤の溶融粘度を低く抑えることができ、ホットメルト接着剤の低温塗布が可能となる。一方、エチレン-α-オレフィン共重合体のMIを1,500g/10分以下とすることにより、ホットメルト接着剤が硬化する際の凝集力の低下を抑えることができる。そして、ホットメルト接着剤の硬化後、高温環境下での接着性及び耐クリープ性を維持することが可能になる。」と記載されていることから、成分(A)のメルトインデックス(MI)を特定範囲とすることは本件特許発明1の課題を解決するために必須の要件であるといえる。
実際、本件特許明細書の【表2】のとおり、比較例1のように、成分(A)のメルトインデックス(MI)が500g/10分の場合には、糸引き性の評価に「△」があり、本件特許発明1の課題を解決することができないし、特に、比較例1の成分(A)のメルトインデックス(MI)の500g/10分は、前記実施例の成分(A)のメルトインデックス(MI)の1,086~l,097g/l0分の半分以下と大きく相違するため、成分(A)のメルトインデックス(MI)が500~1086g/10分の範囲においても課題を解決できることは理解できない。
そうすると、成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)を特定範囲とすることを発明特定事項としない本件特許発明1は、明らかに本願発明の課題を解決できない態様を含むといえる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えていると認められる。
成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)を特定範囲とすることが特定されていない本件特許発明2~7及び成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)の上限が特定されていない本件特許発明4~7についても同様である。
(2)成分(C)のメルトインデックス(MI)について
本件特許発明1は「(C)のメルトインデックスは170g/10分以下」と特定するものであり、成分(C)のメルトインデックス(MI)の下限は特定されていない。
ここで、本件特許明細書の【表1】からみて、実施例のように、(C)のメルトインデックスが(MI)が40g/10分以上150g/10分以下であるものが、上記課題を解決できることは理解できるが、成分(C)のメルトインデックス(MI)が40g/10分未満であるものが、上記課題を解決できることは理解できない。
また、成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の市販品のカタログである参考資料1、2に示されるように、メルトインデックス(MI)の低い(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ホットメルト接着剤用とはされていない。
そうすると、40g/10分未満であるものが上記課題を解決できるとはいえず、成分(C)のメルトインデックス(MI)の下限を発明特定事項としない本件特許発明1は、明らかに本願発明の課題を解決できない態様を含むといえる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えていると認められる。
成分(C)のメルトインデックス(MI)が特定されていない本件特許発明2~7についても同様である。
第5 前記第4における「1 理由1(明確性要件)」について
本件訂正により本件特許発明4は削除されたので、本件特許発明4及び本件特許発明4を引用する形式で特定された本件特許発明5~7が不明確であるという取消理由は解消した。
第6 前記第4における「2 理由2(サポート要件)」について
1 本件特許発明の課題について
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の【0013】に記載のとおり、塗布時の糸引き性に関する問題が抑制され、加熱安定性に優れ、且つ、低温及び高温環境下での接着性にも優れた、低温度塗布ホットメルト接着剤を提供することである。
2 成分(A)のメルトインデックス(MI)について
(1)当審の判断
本件訂正により、本件特許発明1では成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)が1,000g/l0分以上l,500g/l0分以下となった。
ここで、本件特許明細書の【表1】からみて、実施例のように、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,086~l,097g/l0分であるものが、上記課題を解決できることは理解できる。
そして、本件特許明細書の記載をみると、【0021】に「エチレン-α-オレフィン共重合体のMIを1,000g/10分以上とすることにより、得られるホットメルト接着剤の溶融粘度を低く抑えることができ、ホットメルト接着剤の低温塗布が可能となる。一方、エチレン-α-オレフィン共重合体のMIを1,500g/10分以下とすることにより、ホットメルト接着剤が硬化する際の凝集力の低下を抑えることができる。そして、ホットメルト接着剤の硬化後、高温環境下での接着性及び耐クリープ性を維持することが可能になる。」と記載されており、実際に、特許権者による令和5年1月27日付けの意見書において、実験データにより成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,000g/l0分及びl,250g/l0分であるものが前記課題を解決できるが示されたから、成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックス(MI)が1,000g/l0分以上l,500g/l0分以下であるものが前記課題を解決できると推認できる。
そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
そして、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3、5~7についても同様である。
(2)特許異議申立人の主張及び当審の判断
特許異議申立人は、令和5年3月9日付けの意見書において、(1)特許権者による令和5年3月9日付けの意見書における後出しの追試データは到底認められないこと、及び、(2)特許権者はメルトインデックス(MI)を「1,500g/10分」として追試試験を行った結果、期待どおりの結果が得られなかったため、止むを得ず、「1,250g/10分」のデータのみを提出したものと推察せざるを得ず、追加実施例8において、更に250g/分高い成分(A)(1,500g/10分)を用いた場合について追試を行えば、高温接着性(耐熱性)の評価が更に悪化し、少なくとも「△」以下(比較例相当)になることが合理的に推察できると主張する。
しかし、(1)該追試データは、本件特許明細書【0021】に記載されていたことを追加的に実証するものであり、採用できるものである。
また、(2)特許異議申立人の前記推察は推論の域を出ないものであり、本件特許明細書の【表1】からみて、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,086g/10分である実施例3のものの高温接着性(耐熱性)の評価は〇であり、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,097g/10分である実施例2のものの同評価が◎であるから、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,250g/10分である追試データのものの同評価が〇だからといって、成分(A)のメルトインデックス(MI)がそれより高くなると同評価が悪化する傾向を示すとはいえず、むしろ、実施例2及び3の同評価をみれば、成分(A)のメルトインデックス(MI)が1,500g/10分であるものの同評価が必ずしも△以下になるとはいえない。
そうすると、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
3 成分(C)のメルトインデックス(MI)について
本件訂正により、本件特許発明1は成分(C)のメルトインデックス(MI)の下限は特定されるものとなり、また、上限も実施例において実証されている上限値となったので、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
そして、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3、5~7についても同様である。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
1 理由1(サポ-ト要件)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
(1)「ワックス」について
本件特許明細書の【0036】には、実施例で効果が確認されている「フィッシャートロプシュワックス」(融点83℃)以外の様々な種類のワックスについても使用できる旨の記載があるが、ワックスの諸物性(融点や溶融粘度等)は、種類によって大きく異なることは技術常識であるから、実際に実施例において唯一確認されている「フィッシャートロプシュワックス」(融点83℃)以外のワックスを用いた場合でも、本件特許発明の効果を奏するか否かは不明である。
したがって、本件特許発明1において「ワックス」を具体的に特定しない限り、本件課題が解決できるとは認められず、本件特許発明1の範囲まで、本件公報において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。
とりわけ、本件特許明細書の【0036】には、フィッシャートロプシュワックスが(A)エチレン-α-オレフィン共重合体との相溶性が良く、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させずに、低粘度化できる旨が記載されており、さらに、本件特許明細書の【0037】には、融点が70℃以上のワックスを使用することによってホットメルト接着剤が硬化後、高温環境下においても優れた接着性を維持でき、融点が90℃以下のワックスを使用することにより、ホットメルト接着剤が硬化後、低温環境下においても接着性が低下せず、低温塗布性も優れたものとなる旨が記載されている。このように、ワックスの種別や融点は、ホットメルト接着剤の低粘度化に大きく寄与し、本件特許発明の課題解決に大きく影響することは明らかである。本件実施例においても、その全てのホットメルト接着剤が、融点83℃のフィッシャートロプシュワックスのみを含んでおり、融点70~90℃の範囲外のワックスを含むホットメルト接着剤は一切開示されていない。
したがって、「融点70~90℃のフィッシャートロプシュワックス」を特定しない本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるため、サポート要件に適合しない。
(2)「粘着付与樹脂」について
本件明細書の段落【0040】には、実施例で効果が確認されている「完全水添石油炭化水素樹脂」以外の様々な粘着付与樹脂成分についても使用できる旨の記載があるが、粘着付与樹脂成分の諸特性(軟化点や他の成分との相溶性等)は、種類によって大きく異なるものであることは技術常識であるから、実際に実施例において唯一確認されている「完全水添石油炭化水素樹脂」以外の粘着付与樹脂成分を用いた場合でも本件特許発明の効果を奏するか否かは不明である。
したがって、本件特許発明1において「粘着付与樹脂」を具体的に特定しない限り、本件課題が解決できるとは認められず、本件特許発明1の範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。
とりわけ、本件公報の【0041】には、粘着付与樹脂は(A)エチレン-α-オレフィン共重合体と相溶性に優れることで、ホットメルト接着剤の接着性を向上させる旨が記載されており、さらに、本件公報の【0042】には、軟化点が95℃以上の石油樹脂を使用することで、ホットメルト接着剤が硬化後、高温環境下での接着性を維持でき、耐クリープ性も良好なものになり、軟化点が130℃以下の石油樹脂を使用することで、ホットメルト接着剤が硬化する際に、硬くて脆い硬化物となることを回避することができ、これにより接着性が向上することも記載されている。このように、粘着付与樹脂の種別や軟化点は、本件特許発明の課題解決に大きく影響することは明らかである。本件実施例においても、その全てのホットメルト接着剤が、「軟化点95~130℃の石油樹脂」のみを含んでおり、「軟化点95~130℃の石油樹脂」に該当しない粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤は一切開示されていない。
したがって、「軟化点95~130℃の石油樹脂」を特定しない本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるため、サポート要件に適合しない。
2 理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:特表2016-537486号公報
甲第2号証:特開2006-188580号公報
甲第3号証:特開2007-314716号公報
甲第4号証:特開2012-136648号公報
甲第5号証:特開2016-11386号公報
第8 前記第7における「1 理由1(サポート要件)」について
1 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は前記「第6 1」に記載したとおりである。
2 「ワックス(前記第7 1(1)参照)」について
ワックスの諸物性(融点や溶融粘度等)は、種類によって大きく異なることは技術常識であるが、本件特許明細書【0036】には、本発明のホットメルト接着剤は、オープンタイム、セットタイム調整の目的で、ワックスを含んでもよく、ワックスとしては、ホットメルト接着剤に通常使用される公知のワックスを、広く使用することが可能であることが、記載され、実際に実施例において唯一確認されている「フィッシャートロプシュワックス」(融点83℃)以外のワックスを用いた場合であっても、多少程度は異なるとしても、「フィッシャートロプシュワックス」(融点83℃)と同様に、(A)エチレン-α-オレフィン共重合体と十分な相溶性があり、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を低下させずに、低粘度化できると推認でき、ホットメルト接着剤が硬化後、低温環境下においても接着性が低下せず、十分な低温塗布性を有するものとなることも推認でき、前記課題を解決できるといえる。
また、「フィッシャートロプシュワックス」(融点83℃)以外のワックスを用いたものが、(A)エチレン-α-オレフィン共重合体との相溶性を損ない、ホットメルト接着剤の耐寒接着性を損ない、低粘度化できず、ホットメルト接着剤が硬化後、低温環境下において接着性を損ない、低温塗布性を損なうという技術常識もなく、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
そして、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3、5~7についても同様である。
3 「粘着付与樹脂(前記第7 1(2)参照。)」について
粘着付与樹脂成分の諸特性(軟化点や他の成分との相溶性等)は、種類によって大きく異なるものであることは技術常識であるが、本件明細書の段落【0040】には、実施例で効果が確認されている「完全水添石油炭化水素樹脂」以外の様々な粘着付与樹脂成分についても使用できる旨の記載があり、【0041】には、石油樹脂やその水素添加物は、エチレン-α-オレフィン共重合体との相溶性に優れ、これによりホットメルト接着剤の接着性を、より一層向上させる事ができることが、記載されているから、実施例で効果が確認されている「完全水添石油炭化水素樹脂」以外の様々な粘着付与樹脂成分は、ホットメルト接着剤の接着性を、向上させる事ができることが、読み取れ、そうすると、実際に実施例において唯一確認されている「完全水添石油炭化水素樹脂」以外のワックスを用いた場合であっても、多少程度は異なるとしても、(A)エチレン-α-オレフィン共重合体と十分な相溶性があり、十分なホットメルト接着剤の接着性を有し、ホットメルト接着剤が硬化後、高温環境下での接着性を維持でき、耐クリープ性も十分なものになり、ホットメルト接着剤が硬化する際に、硬くて脆い硬化物となることを回避することができ、これにより十分な接着性を有することが、推認でき、前記課題を解決できることが推認できる。
また、「完全水添石油炭化水素樹脂」以外の粘着付与樹脂を用いた場合、(A)エチレン-α-オレフィン共重合体との相溶性を損ない、ホットメルト接着剤の接着性を損ない、ホットメルト接着剤が硬化後、高温環境下での接着性を損ない、耐クリープ性も損ない、ホットメルト接着剤が硬化する際に、硬くて脆い硬化物となり、これにより接着性を損なうという、技術常識もなく、特許異議申立人は、前記課題を解決できないことについて、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているとはいえない。
そして、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3、5~7についても同様である。
第10 前記第7における「2 理由3(進歩性)」について
1 甲号証について
甲第1号証:特表2016-537486号公報
甲第2号証:特開2006-188580号公報
甲第3号証:特開2007-314716号公報
甲第4号証:特開2012-136648号公報
甲第5号証:特開2016-11386号公報
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
下記成分のブレンドを含むホットメルト接着剤組成物であって:
約5重量%~約50重量%の、無水マレイン酸とグラフトされたメタロセン触媒ランダムポリオレフィンエラストマを含む官能化ポリマ;
約5重量%~約70重量%の、15MI以上のメルトインデックスを有する第2ポリマとしてメタロセン触媒ランダムまたはブロックポリオレフィンエラストマを含む非官能化ポリマ;
約0重量%~約30重量%の固体または液体可塑剤;
約5重量%~約30重量%のワックス;
約20重量%~約70重量%の、少なくとも約95℃の軟化点を有する第1の粘着付与樹脂;
約0重量%~約20重量%の、115℃以上の軟化点を有する芳香族強化樹脂;
約0.1重量%~約5重量%の安定剤;ならびに
約0重量%~約3重量%の補助添加物;
前記成分は合計して前記組成物の100重量%であり、かつ前記組成物の粘度は163℃で約20,000センチポアズ以下である、組成物。
【請求項2】
約1重量%~約25重量%の、メタロセン触媒ポリオレフィンエラストマ、プロピレン系コポリマ、エチレン系コポリマ、エチレン/α-オレフィンコポリマ、オレフィンブロックコポリマ、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリル酸n-ブチルコポリマ、およびスチレンブロックコポリマからなる群より選択される補助ポリマをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ワックスがパラフィンワックス、微結晶ワックス、および合成ワックス、特定的には、限定はされないが化学修飾ワックス、重合αオレフィン、フィッシャ-・トロプシュ、および他のポリエチレン(PE)ワックスからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。」
1b「【0002】
ホットメルト接着剤はパッケ-ジング用途において使用され、その場合、これはしばしば、機能または美的目的のための広範囲のインク、コ-ティング、およびオ-バ-プリントラッカ-で被覆されている、低多孔度紙またはボ-ル紙に接着することが要求される。その他の場合、これらは、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)フィルムなどの低表面エネルギ-基材、ならびに高いレベルのリサイクル材料のために物理的特性、例えば剛性、密度、および化学組成が変動する箱または基材に接着するように使用される。これらの型の基材には、接着するのが困難である。その結果、接着剤は、これらの障害を克服するように調合されなければならない。結果として、接着剤調合者は、最も広い可能な適用窓を有する接着剤を開発するために、新しい材料および新規調合戦略を継続して評価している。接着剤の適用窓は、適用欠陥および/または製造変数を克服する接着剤の能力として規定される。本発明はホットメルト調合者が高温環境耐性および基材への接着に悪影響を及ぼさずに接着剤の適用窓のバランスをとることができる新規方法を詳述する。
・・・
【0013】
本発明は、官能化メタロセン触媒ポリオレフィンエラストマを使用するホットメルト接着剤に関する。より特定的には、本発明の組成物は、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのホットメルト接着剤における無水マレイン酸(MAH)官能基とグラフトされたメタロセン触媒ポリオレフィンエラストマの使用に基づく。」
1c「【0043】
好ましい実施形態では、組成物はまた、約1重量%~約25重量%の、メタロセン触媒ポリオレフィンエラストマ、プロピレンまたはエチレン系コポリマ、エチレン-α-オレフィンコポリマ、オレフィンブロックコポリマ、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリル酸n-ブチルコポリマ、およびスチレンブロックコポリマからなる群より選択される補助ポリマを含み得る。
・・・
【0050】
本発明の接着剤組成物の粘度は、325°F(163℃)で20,000センチポアズ(cP)以下である。好ましくは、Brookfield Thermocelまたは他の適切な粘度計を使用して、ASTM方法D3236-88において明記される試験技術を用いて決定されるように、325°F(163℃)で15,000センチポアズ(cP)未満でなければならず、最も好ましくは325°F(163℃)で10,000センチポアズ(cP)未満でなければならない。最終接着剤の粘度は接着剤の最終用途によって広く変動し得る。例えば、ビンラベリング適用のために使用されるホットメルト接着剤は、一般に粘度がかなり低く、例えば、325°Fで約2,000センチポアズ(cP)未満、より好ましくは325°Fで1,000センチポアズ(cP)未満である。他方、ケ-スおよびカ-トンシ-リングのために使用されるホットメルトは典型的には、325°Fで約10,000センチポアズ(cP)未満である。」
1d「【0051】
実施例
2つの試験を使用して、ホットメルト接着剤組成物試料の高温耐性を評価した。第1はマンドレル試験であり、第2は包装技術協会(IOPP)試験である。
・・・
【表4】
[図:0001402737000001.jpg]
【表5】
[図:0001402737000002.jpg]
【表6】
[図:0001402737000003.jpg]
」
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
少なくとも1種のエチレン/C3~C20α-オレフィン共重合体を包含する第1の成分、
前記第1の成分100重量部につき約6~約12重量部の量の、少なくとも1種のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分、
前記第1の成分100重量部につき約50~約200重量部の量の、少なくとも1種の粘着付与樹脂を包含し、前記第1および前記第2の成分と相溶性の第3の成分
を含むホットメルト接着組成物。」
2b「
【0009】
従って、本発明は、糸引きが一層低減され、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
・・・
【0017】
本発明のホットメルト接着剤組成物の第2の成分は、第1の成分であるエチレン/α-オレフィン共重合体と非相溶性のポリマ-であり、糸引き性を有意に低減させるものである。この第2の成分は、エチレンと少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、すなわちエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む。ここで、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの総称である。(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸のC1~C8アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)エステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸のC1~C4アルキルエステルであることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルであることが特に好ましい。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを約5~約35モル%の量で含有することが好ましく、約20~約35モル%の量で含有することがさらに好ましい。また、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、約20~約400g/10分のメルトインデックスを有することが好ましい。かかるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、市販されている。その例を挙げると、三井・デュポンポリケミカル社からEVAFLEX-EEAの商品名の下で販売されているエチレン/アクリル酸エチル共重合体A704(メルトインデックス:275g/10分;アクリル酸エチル含有量25モル%)、同A709(メルトインデックス:25g/10分;アクリル酸エチル含有量34モル%);日本ユニカ-社からそれぞれDPDJ-9169の商品名(メルトインデックス:20g/10分;アクリル酸エチル含有量20モル%)、NUC-6070の商品名(メルトインデックス:250g/10分;アクリル酸エチル含有量25モル%)およびNUC-6940の商品名(メルトインデックス:20g/10分;アクリル酸エチル含有量35モル%)の下で販売されているエチレン/アクリル酸エチル共重合体;住友化学社からそれぞれアクリフト(ACRYFT)CM5021の商品名(メルトインデックス:450g/10分;メタクリル酸メチル含有率:28モル%)、アクリフトCM5022の商品名(メルトインデックス:450g/10分;メタクリル酸メチル含有率;32モル%)、アクリフトCM5023の商品名(メルトインデックス:150g/10分;メタクリル酸メチル含有率;28モル%)の下で販売されているエチレン/メタクリル酸メチル共重合体等である。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、単独で、または組み合わせて用いることができる。」
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、粘着性付与樹脂(B)と、ワックス(C)と、酸化防止剤(D)とを含むホットメルト接着剤であって、メルトフロ-レ-ト1~100の中低圧法で得られたポリエチレン(E)がさらに配合されていることを特徴とするホットメルト接着剤。」
3b「【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、糸曳きが少なく、熱安定性に優れるとともに、ベース樹脂として、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いたホットメルト接着剤を提供することを目的としている。
・・・
3c「 (実施例6)
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてのエチレン-メタクリル酸メチル(住友化学社の商品名アクリフトCM5023,メタクリル酸メチル28%、メルトフロ-レ-ト150)25重量部、ポリエチレン(E)としての低圧法ポリエチレン(HDPE、東ソ-社の商品名ニポロンハ-ド1000、メルトフロ-レ-ト20)1重量部、粘着性付与樹脂としての水添テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製商品名クリアロンM115)45重量部、ワックス(サゾ-ル社製商品名サゾ-ルワックスH1)30重量部、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製商品名イルガノックス1010)0.5重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト接着剤を得た。」
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
摘記箇所の後に当審の仮訳を記載した。
4a「【請求項1】
(A)エチレン系共重合体及び(B)ワックスを含むホットメルト接着剤であって、
(B)ワックスは、(B1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィン共重合体ワックスを含むホットメルト接着剤。
・・・
【請求項5】
130℃での溶融粘度が500~1100mPa・sである請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。」
4b「【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、本発明の目的は、低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有するホットメルト接着剤を提供することである。更に、そのようなホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品を提供することである。
・・・
【0017】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(B)ワックスが、更に、(B2)フィッシャ-トロプシュワックスを含む場合、特に耐熱性に優れる。
本発明に係るホットメルト接着剤は、130℃での溶融粘度が500~1100mPa・sである場合、より低温塗工性に優れる。」
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
摘記箇所の後に当審の仮訳を記載した。
5a「【請求項1】
(A)オレフィン系重合体、
(B)ブチラ-ル樹脂、
(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種、ならびに
(D)粘着付与樹脂
を含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(C)脂肪酸誘導体がヒマシ油および/または硬化ヒマシ油を含んでいる、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A)オレフィン系重合体が、エチレン系共重合体を含む請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
さらに、(E)ワックスを含んでいる、請求項1~3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗布されて製造された紙製品。」
5b「【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは、種々の基材に対して接着性が良好であり、特にダンボール等の紙基材を組み立てるのに好適なホットメルト接着剤に関する。
・・・
【0037】
「エチレンとオクテンとの共重合体」として、例えばダウ・ケミカル社製のアフィニティGA1900(商品名)、アフィニティGA1950(商品名)、アフィニティEG8185(商品名)、アフィニティEG8200(商品名)、エンゲージ8137(商品名)、エンゲージ8180(商品名)、エンゲージ8400(商品名)等を例示できる。
・・・
【0090】
本発明のさらなる好ましい態様として、ホットメルト接着剤は、150℃での粘度(又は溶融粘度)が5000mPa・s以下であることが好ましく、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0091】
ホットメルト接着剤を均一に塗工できる粘度は、5000mPa・s以下であり、均一な塗工を容易に行える粘度は、2000mPa・s未満である。ホットメルト接着剤は、150℃での粘度が上記範囲にあることによって、よりいっそう塗工に適したものとなる。本明細書の150℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。」
5c「【実施例】
【0098】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0099】
ホットメルト接着剤に配合する成分を以下に示す。
【0100】
<(A)オレフィン系重合体>
(A1)プロピレン/エチレン/1-ブテン共重合体(エボニックデグサ社製の“ベストプラスト703” 重量平均分子量34000)
(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)
(A3)エチレン/酢酸ビニル共重合体(東ソ-社製の“ウルトラセン722” 重量平均分子量60000)
(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)
(A5)ポリプロピレン(出光化学社製の“L-MODU S400” 重量平均分子量40000)
(A6)ポリエチレン(東ソ-社製の“ペトロセン249”)
(A7)エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合樹脂(住友化学社製の“ボンドファ-スト7M” 重量平均分子量140000)
(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)
(A9)エチレン/エチルアクリレ-トマレイン酸共重合体(アルケマ社製の“BONDAINE HX8210” 重量平均分子量80000)
【0101】
<(B)ブチラ-ル樹脂>
(B1)ポリビニルブチラ-ル樹脂(積水化学社製の“エスレックB BL-1” 数平均分子量19,000)
(B2)ポリビニルブチラ-ル樹脂(積水化学社製の“エスレックB BM-1” 数平均分子量40,000)
(B3)ポリビニルブチラ-ル樹脂(積水化学社製の“エスレックB BH-3” 数平均分子量110,000)
【0102】
<(C)脂肪酸およびその誘導体>
(C1)水添ヒマシ硬化油(日油株式会社製の“カスタ-ワックスA”)
(C2)精製ヒマシ油(伊藤製油株式会社製の“LAV”)
(C3)エポキシ化大豆油(日油株式会社製の“ニュ-サイザ-510R”)
(C4)ステアリン酸(日油株式会社製の“ステアリン酸さくら”)
(C5)12-ヒドロキシステアリン酸(日油株式会社製の“ヒマシ硬化脂肪酸”)
(C6)オレイン酸(日油株式会社製の“NAA-34”)
【0103】
<(D)粘着付与樹脂>
(D1)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(出光興産社製の“アイマ-ブP100”)
(D2)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(出光興産社製の“アイマ-ブS100”)
【0104】
<(E)ワックス>
(E1)パラフィンワックス(日本精蝋社製の“Paraffin Wax150”)
(E2)マレイン酸変性フィッシャ-トロプシュワックス(Sasol社製の“サゾ-ルH105”)
(E3)フィッシャ-トロプシュワックス(Sasol社製の“サゾ-ルH1”)
(E4)フィッシャ-トロプシュワックス(Sasol社製の“サゾ-ルC80”)
【0105】
<(F)安定化剤>
(F1)酸化防止剤(アデカ社製の“AO-60”)
【0106】
これらの成分を表1~3に示す割合(重量部)で配合し、約160℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1~21、比較例1~4のホットメルト接着剤を調製した。表1~3に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は、全て重量部である。
・・・
【0124】
【表1】
[図:0001402737000004.jpg]
」
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1の表4には、Inv.1として「CWP/CHU 561 ポリエチレンワックス 6質量%、Epolene C-10(ポリオレフィンワックス)15質量%、Nynass 222B(水素化ナフテン系プロセス油)15質量%、Eastotac H142R(部分水素化脂肪族炭化水素樹脂)38.5質量%、メルトインデックスが1,000g/10min(190℃/2.16kg)であるAffinity GA 1900(エチレン-オクテンコポリマ-)(当審注:表4中の「Affinity G1900」は「Affinity GA 1900」の誤記と認める。)20質量%、メルトインデックスが6600g/10min(190℃/2.16kg)であるAffinity GA 1000R(無水マレイン酸(MAH)エチレン-オクテンコポリマ)5質量%及びIRGANOX 1010(ヒンダ-ドフェノ-ル)からなり、粘度@250°F(cP):3,775、粘度@275°F(cP):2,245、粘度@300°F(cP):1,420、粘度@325°F(cP):940、粘度@350°F(cP):650である、ホットメルト接着剤組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照)。
(2)甲5に記載された発明
甲5には、実施例8として「(A)オレフィン系重合体として(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)13重量部、(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)2重量部、(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)5重量部、(B)ブチラール樹脂として(B1)ポリビニルブチラ-ル樹脂(積水化学社製の“エスレックB BL-1” 数平均分子量19,000)30重量部、(C)脂肪酸およびその誘導体として(C1)水添ヒマシ硬化油(日油株式会社製の“カスタ-ワックスA”)5重量部、(D)粘着付与樹脂として(D2)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(出光興産社製の“アイマ-ブS100”)25重量部、(E)ワックスとして(E3)フィッシャ-トロプシュワックス(Sasol社製の“サゾ-ルH1”)20重量部及び(F)安定化剤(F1)酸化防止剤(アデカ社製の“AO-60”)からなるホットメルト接着剤。」の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる(摘記5c参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「メルトインデックスが1,000g/10min(190℃/2.16kg)であるAffinity GA 1900(エチレン-オクテンコポリマ-)」は、本件特許明細書【0025】の記載をみれば、本件特許発明1の「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体」及び「前記成分(A)のメルトインデックスは1,000g/10分以上1,500g/10分以下であり」に相当する。
甲1発明の「Affinity GA 1000R(無水マレイン酸(MAH)エチレン-オクテンコポリマ)」は、本件特許発明1の「成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体、成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
前記成分(A)のメルトインデックスは1,000g/10分以上1,500g/10分以下である、ホットメルト接着剤。」である点で一致し、以下の相違点する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は、成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%、成分(C)を5~12質量%含み、前記成分(C)のメルトインデックスは40g/10分以上150g/10分以下であるのに対し、甲1発明は、成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に該当する成分を含まない点。
<相違点1-2>
ホットメルト接着剤が、本件特許発明1では130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であるのに対し、甲1発明では、粘度@250°F(cP):3,775、粘度@275°F(cP):2,245、粘度@300°F(cP):1,420、粘度@325°F(cP):940、粘度@350°F(cP):650である点。
(イ)相違点についての検討
<相違点1-1>
甲1には、甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体の1つであるエチレンアクリル酸n-ブチルコポリマを含みうることが、記載されている(摘記1a【請求項2】、同1c【0043】参照。)。
そして、甲2には、エチレン/C3~C20α-オレフィン共重合体を包含する第1の成分、前記第1の成分100重量部につき約6~約12重量部の量のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分を含むホットメルト接着組成物が、記載されており(摘記2a参照)、エチレン/C3~C20α-オレフィン共重合体は甲1発明のAffinity GA 1900(エチレン-オクテンコポリマ-)と同様に、成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体である。
また、甲2には、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体として、アクリフトCM5023の商品名(メルトインデックス:150g/10分が記載されており(摘記2b参照)、同様のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体として、甲3には、エチレン-メタクリル酸メチル(住友化学社の商品名アクリフトCM5023,メタクリル酸メチル28%、メルトフローレート150)が、記載されている(摘記3b参照)。
しかし、甲1発明のホットメルト接着剤組成物は、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのものであり(摘記1b参照)、一方、甲2に記載のホットメルト接着組成物は、糸引きが一層低減され、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とするものであるから(摘記2b参照)、甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、前記甲1の記載から、成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むものとする動機付けはあるとしても、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのものである甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、糸引きが一層低減され、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする甲2に記載のホットメルト接着組成物のエチレン/C3~C20α-オレフィン共重合体を包含する第1の成分100重量部につき約6~約12重量部の量のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含するという事項を適用する動機付けはなく、仮にそのような動機付けがあったとしても、甲1~甲3には、その量を、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(C)を5~12質量%含むものとすることについて記載も示唆もないから、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(C)を5~12質量%含むものとする動機付けがあるとはいえず、その結果、成分(B)を5~19質量%とする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%、成分(C)を5~12質量%含み、前記成分(C)のメルトインデックスは40g/10分以上150g/10分以下であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるはいえない。
<相違点1-2>
甲1には、甲1発明のホットメルト接着剤組成物の粘度は接着剤の最終用途によって広く変動し得ること、ビンラベリング適用のために使用されるホットメルト接着剤は、一般に粘度がかなり低く、325°Fで1,000センチポアズ(cP)未満であることが、記載されているものの(摘記1c参照)、325°Fは166℃であり、130℃での粘度をどの程度にするのか不明であるから、甲1発明のホットメルト接着剤組成物において130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲4には、ホットメルト接着剤は、130℃での溶融粘度が500~1100mPa・sである場合、より低温塗工性に優れると具体的に記載されている(摘記4b参照)。
しかし、甲4に記載のホットメルト接着剤は、低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有するホットメルト接着剤を提供するものであるから(摘記4b参照)、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのものである甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、低温塗工可能で、耐熱性に優れ、適切な長さのオープンタイムを有するホットメルト接着剤を提供することを目的とする甲4に記載のホットメルト接着剤組成物の溶融粘度を採用する動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲1発明のホットメルト接着剤組成物において、130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の効果
甲1発明のホットメルト接着剤組成物が、塗布時の糸曳き性を抑制し、且つ、低温及び高温環境下での接着性に優れているか否かは不明であり、甲2に記載のように成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を採用し、甲4に記載のもののように130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下としても、塗布時の糸曳き性を抑制し、且つ、低温及び高温環境下での接着性に優れているものとなることは不明であるから、本件特許発明1の塗布時の糸曳き性が抑制され、且つ、低温及び高温環境下での接着性に優れているという効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。
(エ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2、3、5~7
本件特許発明2、3、5~7は、本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点1-1>及び<相違点1-2>については前記(1)イ及びウで検討したとおりである。
したがって、本件特許発明2、3、5~7は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特特許を受けることができないものではない。
(2)甲5発明を主引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲5発明との対比
本件特許発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の「(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)」、「(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)」及び「(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)」は、それぞれ、本件特許発明1の「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体」、「(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体」及び「成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体」に相当する。
甲5発明の「(A)オレフィン系重合体として(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)13重量部、(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)2重量部、(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)5重量部」において、「(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)」は「(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)」、「(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)」及び「(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)」の合計100質量%に対して、10質量%(100×2/(13+2+5))であるから、本件特許発明1の「前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に」及び「成分(C)を5~12質量%含み」を充足する。
そうすると、本件特許発明1と甲5発明は、「成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体、成分(B)官能化エチレン-α-オレフィン共重合体、及び成分(C)エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤であって、
前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(C)を5~12質量%含む、ホットメルト接着剤。」である点で一致し、以下の相違点する。
<相違点5-1>
本件特許発明1は、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%含むのに対し、甲5発明は成分(B)を25質量%含む点。
<相違点5-2>
ホットメルト接着剤が、本件特許発明1は130℃での溶融粘度が2,000mPa・s以下であるのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-3>
成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックスが、本件特許発明1では、1,000g/10分以上1,500g/10分以下であるのに対し、甲5発明ではではそのような特定がない点。
<相違点5-4>
本件特許発明1は成分(C)のメルトインデックスは40g/10分以上150g/10分以下であるのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点5-1>及び<相違点5-3>について検討する。
<相違点5-1>
甲5には、甲5発明のホットメルト接着剤において、(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)、(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)及び(A8)エチレン/1-オクテンマレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製の“AFFINITY GA1000R” 重量平均分子量30000)の合計100質量%中で、(A4)エチレン/メタクリル酸メチル重合体(住友化学社製の“アクリフトCM5022” 重量平均分子量35000)の量を変更することについて記載も示唆もない。
また、甲1の「表1C」(【表3】)のInv.2~4及び「表2-ビンラベリング」(【表4】)のInv.1のとおり、本件特許発明1の成分(A)に相当するエチレン-α-オレフィン共重合体20質量部に対して、本件特許発明1の成分(B)に相当する官能化エチレン-α-オレフィン共重合体を5質量部含むホットメルト接着剤が記載されており(摘記1c参照)、両者の質量比は4:1である。
しかし、甲5発明のホットメルト接着組成物は、糸曳きを低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性、さらに、薬剤が表面にコーティングされたカートンにも優れた接着性を持つホットメルト接着剤を提供することを目的とするものであり(摘記5b参照)、一方、甲1に記載のホットメルト接着剤組成物は、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのものであるから(摘記1b参照)、糸曳きを低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性、さらに、薬剤が表面にコーティングされたカートンにも優れた接着性を持つホットメルト接着剤を提供することを目的とする甲5発明のホットメルト接着組成物において、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のための甲1に記載のホットメルト接着剤組成物のエチレン-α-オレフィン共重合体及び官能化エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量を適用し、その結果、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%とする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲5発明のホットメルト接着剤において、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%中に、成分(B)を5~19質量%とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
<相違点5-3>
甲5には、甲5発明のホットメルト接着剤において、(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)をメルトインデックスが1,000g/10分以上1,500g/10分以下であるものとすることについて記載も示唆もない。
また、甲1には、甲1に記載のホットメルト接着剤組成物において、メルトインデックスが1,000g/10min(190℃/2.16kg)であるAffinity GA 1900(エチレン-オクテンコポリマ-)を含むものが、記載されているが(摘記1c参照)、甲5発明のホットメルト接着組成物は、糸曳きを低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性、さらに、薬剤が表面にコーティングされたカートンにも優れた接着性を持つホットメルト接着剤を提供することを目的とするものであり(摘記5b参照)、一方、甲1に記載のホットメルト接着剤組成物は、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のためのものであるから(摘記1b参照)、糸曳きを低減でき、熱安定性に優れ、紙への接着性、さらに、薬剤が表面にコーティングされたカートンにも優れた接着性を持つホットメルト接着剤を提供することを目的とする甲5発明のホットメルト接着組成物において、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のための甲1に記載のホットメルト接着剤組成物の(A2)エチレン/オクテン共重合体(ダウケミカル社製の“AFFINITY GA1950” 重量平均分子量30000)に代えて、ホットタック、接着、可撓性、および150°F超での耐熱性の増加を要求する適用のための甲1に記載のホットメルト接着剤組成物のメルトインデックスが1,000g/10min(190℃/2.16kg)であるAffinity GA 1900(エチレン-オクテンコポリマ-)を採用する動機付けがあるとはいえない。
そうすると、甲5発明のホットメルト接着組成物において、成分(A)エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトインデックスが、本件特許発明1では、1,000g/10分以上1,500g/10分以下であるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の効果
甲5発明のホットメルト接着剤は、【表1】の記載からみて、糸曳き性が抑制され、加熱安定性を有しており(摘記5c参照)、塗布時の糸曳き性が抑制され、且つ、高温環境下での接着性に優れているといえるが、本件特許発明1の低温環境下での接着性に優れているという効果を奏するものであり、甲5発明から当業者の予測を超える顕著な効果を奏するであるとはいえる。
(エ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、<相違点5-2>及び<相違点5-4>について検討するまでもなく、甲5に記載された発明及び甲1~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
イ 本件特許発明2、3、5~7
本件特許発明2、3、5~7は、本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲5発明との<相違点5-1>及び<相違点5-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点5-1>及び<相違点5-3>については前記(1)イ及びウで検討したとおりである。
したがって、本件特許発明2、3、5~7は、甲5に記載された発明及び甲1~甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1~3、5~7は、甲1又は甲5に記載された発明、並びに甲1~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第11 特許異議申立人が令和5年3月9日に提出した意見書の第5ページ下から第4行~第6ページ第10行の「(4)本件明細書の成分(A)に関する更なる検証」における主張について
この主張は、特許異議申立書に記載されておらず、特許異議申立書に記載された申立ての理由に対して、意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められ、そして、それが特許権者による訂正の請求に付随して生じた事項でもない。
したがって、異議申立人の前記主張は採用しないが、仮に採用したとしても、前記第6及び第8の結論を左右するものではない。
第12 むすび
以上のとおりであるから、令和4年11月22日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
訂正前の請求項4は本件訂正により削除されたため、請求項4についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700560