特許異議申立
2022-700408
シロドシンの苦味をマスキングした経口投与製剤
- 審判番号
- 2022-700408
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-155700
- 登録番号
- 6965217
- 請求日
- 2022年05月10日
- 審決日
- 2023年01月05日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キッセイ薬品工業株式会社
- 【権利者代理人】柳 伸子
- 【権利者代理人】鈴木 皓
- 【権利者代理人】飯塚 雅人
- 【異議申立人】岩田 明彦
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 鳥居 敬司
- 審判官 田中 耕一郎
- 分類
- P1651.121-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6965217号発明「シロドシンの苦味をマスキングした経口投与製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6965217号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。
特許第6965217号の請求項1、2、4~10に係る特許を維持する。
特許第6965217号の請求項3に係る特許についての特許異議申立ては却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許第6965217号(以下「本件特許」という。)に係る特願2018-155700号は、平成26年3月25日(優先権主張 平成25年3月26日、平成25年8月30日 いずれも日本国(JP))を国際出願日とする特願2015-508511号の一部を、平成30年8月22日に分割して新たな特許出願としたものであって、令和3年10月22日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がなされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年5月10日に異議申立人 岩田 明彦(以下「申立人」という。)により請求項1~10に係る本件特許に対する特許異議の申立てがなされた。
以後の主要な経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月26日付け 取消理由通知書
同年 9月30日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月24日 意見書の提出(申立人)
2 申立人は、特許異議申立書申立書(以下「申立書」という。)において、本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、概略以下の(1)の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張する。
また、上記の経緯において提出された証拠方法は、下記(2)のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2~7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)証拠方法
<申立人が申立書とともに提出した文献>
・甲第1号証:特開2004-339071号公報
・甲第2号証:特開2008-44960号公報
・甲第3号証:特表2013-532651号公報
・甲第4号証:特開2011-184378号公報
・甲第5号証:特開2003-201256号公報
・甲第6号証:国際公開第94/10983号
・甲第7号証:PHARM TECH JAPAN、平成24年1月27日発行、第28巻第2号(2012臨時増刊号)、177~180頁
以下、申立人が提出した甲第1~7号証を、甲号証の番号に従い、それぞれ甲1~7という。
<職権探知により追加した文献>
・文献A:新薬承認情報集、シロドシン、平成18年 No.03、2006年6月29日発行、財団法人 日本薬剤師研修センター、2.3.S 原薬
・文献B:医薬品インタビューフォーム、ユリーフ(R)錠2mg ユリーフ(R)錠4mg、2010年8月改訂(改訂第3版)、1~4頁(当審合議体注:(R)はRの丸囲いを意味する。)
・文献C:特開2004-175796号公報
・文献D:特開2010―83886号公報
・文献E:土戸康平ほか、アクリル系ポリマーによる口腔内崩壊錠用主薬顆粒の粒子設計、製剤機械技術学会誌、2012、Vol.21、No.4、221~236頁
<特許権者が意見書とともに提出した文献>
・乙第1号証:国際公開第2005/055989号
・乙第2号証:特開2002-338501号公報
・乙第3号証:特開2002-338500号公報
・乙第4号証:特開2012-246252号公報
・乙第5号証:特開2011-225468号公報
・乙第6号証:特開2011- 93882号公報
・乙第7号証:特開2008- 81448号公報
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
令和4年9月30日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、「特許第6965217号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める」ことを、請求の趣旨とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当審合議体が付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、」と記載されているのを、「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られるマスキング粒子であって、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。」と記載されているのを、「非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下であり、該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載のマスキング粒子。」とあるのを、「請求項1又は2のいずれかに記載のマスキング粒子。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれかに記載のマスキング粒子。」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれかに記載のマスキング粒子。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載のマスキング粒子。」とあるのを、「請求項1、2及び4~6のいずれかに記載のマスキング粒子。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載のマスキング粒子。」とあるのを、「請求項1、2及び4~7のいずれかに記載のマスキング粒子。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれかに記載のマスキング粒子。」とあるのを、「請求項1、2及び4~8のいずれかに記載のマスキング粒子。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「(a)ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程、」とあるのを、「(a)シロドシンと添加剤を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程、」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「(b)工程(a)で得られた薬物粒子にアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤で造粒又は被覆して、」と記載されているのを、「(b)工程(a)で得られた薬物粒子にアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤で被覆して、」に訂正する。
訂正前の請求項2~9はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているので、これらの請求項は、訂正事項1、2により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
そして、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕及び請求項10について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は、訂正前の請求項1における「造粒又は被覆」から片方の選択肢を削除し、「被覆」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2は、訂正前の請求項2における「非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。」を、「非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下であり、該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項3には、「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上である、請求項1又は2に記載のマスキング粒子。」が記載されており、本件特許明細書【0033】にも「苦味を感じ始めるまでの時間は、30秒以上が好ましく、40秒以上、又は50秒以上のように、より長いほうが好ましい。」と記載されていることからみて、訂正事項2は、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4は、訂正前の請求項4が、訂正前の請求項1~3のいずれかを引用して記載されていたところ、訂正事項3で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5は、訂正前の請求項6が、訂正前の請求項1~5のいずれかを引用して記載されていたところ、訂正事項3で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6は、訂正前の請求項7が、訂正前の請求項1~6のいずれかを引用して記載されていたところ、訂正事項3で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7は、訂正前の請求項8が、訂正前の請求項1~7のいずれかを引用して記載されていたところ、訂正事項3で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8は、訂正前の請求項9が、訂正前の請求項1~8のいずれかを引用して記載されていたところ、訂正事項3で請求項3が削除されて請求項3を引用できなくなったことに伴い、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9は、訂正前の請求項10における「(a)ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程」を、「(a)シロドシンと添加剤を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9は、本件特許明細書【0012】の「薬物粒子に用いられる添加剤としては、シロドシンと配合変化を起こさない種々の添加剤が用いることができ、例えば、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、酸味剤、発泡剤、香料、着色剤等を適宜用いることができる。崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、・・・部分アルファー化デンプン、・・・結晶セルロース等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、コメデンプン、・・・部分アルファー化デンプン、・・・マルチトール等が挙げられる。・・・滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、・・・タルク、・・・モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。」という記載や、同【0060】(実施例7)には「シロドシン120 g、部分アルファー化デンプン(日本カラコン社製)438 g及びタルク(松村産業社製)30 gを、流動層造粒乾燥機(MP-01、パウレック社製)を用いて混合し、ここへヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)12 gを精製水に添加した溶液をスプレーノズルで噴霧しながら造粒を行った。得られた造粒物を、整粒機(P-02S、ダルトン社製)を用いて、スクリーンサイズφ1.0mmにて整粒し、薬物粒子を得た。」といった記載から導き出されるものである。
したがって、訂正事項9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(10)訂正事項10は、訂正前の請求項10における「造粒又は被覆」から片方の選択肢を削除し、「被覆」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項10は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもないから、特許法120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(11)独立特許要件について
本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1~10について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、10について訂正することを認める。
第3 本件各発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~10に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られるマスキング粒子であって、シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒された造粒物であり、非腸溶性高分子が、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEであり、非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下であり、該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。
【請求項2】
非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して20質量部~40質量部であり、該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のpH6.8における15分後の溶出率が、85%以上である、請求項1に記載のマスキング粒子。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、シロドシンと添加剤とヒドロキシプロピルセルロースを含有する造粒物である、請求項1又は2に記載のマスキング粒子。
【請求項5】
添加剤が、糖又は糖アルコール及びデンプン類から選択される少なくとも1つの添加剤である、請求項4に記載のマスキング粒子。
【請求項6】
非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して100質量部~200質量部である、請求項1、2、4及び5のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項7】
該マスキング粒子中のシロドシン含量が、5~25質量%である、請求項1、2及び4~6のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項8】
該マスキング粒子中の非腸溶性高分子含量が、15~30質量%である、請求項1、2及び4~7のいずれかに記載のマスキング粒子。
【請求項9】
請求項1、2及び4~8のいずれかに記載のマスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤。
【請求項10】
(a)シロドシンと添加剤を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程、及び
(b)工程(a)で得られた薬物粒子にアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤で被覆して、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下である、マスキング粒子を調製する工程を包含することを特徴とする、マスキング粒子を製造する方法。
以下、本件訂正後の請求項1~10に係る発明を、請求項の番号に従い「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件各発明」ということがある。
第4 令和4年7月26日付け取消理由通知の概要
本件訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審合議体が令和4年7月26日付け取消理由通知書で通知した取消理由1(進歩性)の概要は、以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2の記載事項、甲7の記載事項、本願優先日当時の技術常識及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
1 甲1には、以下の記載がある。
(摘記a)
「【請求項1】
(a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び
(b)糖または糖アルコールを水に不溶であるが親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、
との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤。
・・・
【請求項3】
水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーが、胃溶性コーティング剤または腸溶性コーティング剤である請求項1または2の口腔内崩壊錠剤。
【請求項4】
胃溶性コーティング剤がアミノアルキルメタクリレートコポリマーまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートであり、腸溶性コーティング剤がメタクリル酸コポリマーである請求項3の口腔内崩壊錠剤。
【請求項5】
薬物含有顆粒(a)中の薬物に対するフィルム形成性ポリマーの重量比が、1:1ないし6:1である請求項1ないし4のいずれかの口腔内崩壊錠剤。
【請求項6】
薬物含有顆粒(a)中に占めるフィルム形成性ポリマーの割合が10ないし50重量%である請求項1ないし5のいずれかの口腔内崩壊錠剤。」
(摘記b)
「【0006】
そこで本発明は、口腔内での薬物の放出を最小化する一方で、消化管内での薬物の放出を低下させない苦味を低減した口腔内崩壊錠剤を提供する。
【0007】
【本発明の開示】
本発明によれば、(a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び(b)糖または糖アルコールを水に不溶である親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤が提供される。
【0008】
本錠剤は、口腔内で唾液と接触する時、顆粒(b)は口腔内で崩壊するが、顆粒(a)はそのままの形で消化管へ通過するからその中に含まれる薬物は口腔内で放出されない。消化管に到達した顆粒(a)は、通常の胃溶性顆粒または腸溶性顆粒と同様に消化管内において崩壊し、同様なバイオアベイラビリティーを発揮する。
【0009】
【好ましい実施態様】
苦味を呈する薬物は錠剤や顆粒に用いられる通常の賦形剤と混合される。その例は、デンプン、マンニトール、乳糖などである。苦味を呈する薬物の種類は問わない。また賦形剤と薬物の混合比は造粒が可能であり、かつ所定の薬物含量が達成可能である限り任意である。
【0010】
薬物含有顆粒(a)は、この混合物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆することによって調製される。使用されるポリマーは製剤分野で錠剤や顆粒を胃溶性もしくは腸溶性とするために使用されるポリマーである。多数のそのようなポリマーが知られているが、環境および人体に対して無害なエタノールまたは含水エタノールに溶解するポリマーが好ましい。具体例としては、胃溶性ポリマーとしてアミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットEおよびRS)、およびポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートがあり、腸溶性ポリマーとしてメタクリル酸コポリマー(商品名オイドラギットS)などがある。薬物の性質によって顆粒を胃溶性とすべきかそれとも腸溶性とすべきかを選択する。
【0011】
薬物と賦形剤の混合物は上記ポリマーの溶液を用いて造粒される。造粒方法は任意であるが、流動層造粒法が好ましい。この場合賦形剤と混合した薬物を粉末状で流動させ、それへ前記ポリマーの溶液を噴霧してコーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製する。薬物に対するフィルム形成性ポリマーの比は、重量で1:1ないし6:1の範囲内が適当である。フィルム形成性ポリマーの重量比をあまり大きくすると薬物のバイオアベイラビリティが低下するので好ましくない。
【0012】
(a)顆粒には賦形剤と薬物のほかに、酸化チタンのような顔料や、タルクやステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤を含ませることができる。この場合顆粒(a)全重量のポリマーの割合は10ないし50%であることが望ましい。」
(摘記c)
「【0018】
【実施例】
限定を意図しない以下の実施例によって本発明を具体的に説明する。これら実施例においては、薬物としてプラバスチンナトリウムおよびファモチジンを用いたが、本発明は苦味を有する他の薬物に対しても同様に適用し得ることは自明である。
【0019】
実施例1
プラバスタチンナトリウム27.5gとD-マンニトール310gを流動層造粒装置(ワースターMP-01)に投入し、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットE)50gを70%エタノール1300mLに溶かした溶液に酸化チタン12.5gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a-1)を調製した。
・・・
【0026】
実施例3
プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gをMP-01に投入し、オイドラギットE80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5gおよびタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a-3)を調製した。
【0027】
顆粒(a-3)80g、顆粒(b-2)170g、軽質無水ケイ酸0.5gおよびアスパルテーム7.0gをポリエチレン袋中で混合し、さらにステアリン酸マグネシウム2.5gを加えて混合し、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧10kNにて打錠し、直径9.0mm,重量260mgを錠剤を製造した。」
2 甲1に記載された発明
(1)上記1によれば、甲1には、プラバスチンナトリウム等の苦味を有する薬物と、D-マンニトール等の賦形剤との混合物を、水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーを用いて造粒もしくは被覆してなる、薬物含有顆粒を含む苦みを低減した口腔内崩壊錠剤が記載されている(摘記a)。
そして、甲1の実施例3(上記1の摘記c)には、プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gをMP-01(流動層造粒装置)に投入し、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して顆粒(a-3)を調製したことが記載されているので、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gを流動層造粒装置に投入し、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して得られた顆粒。」(以下「甲1発明A」という。)
(2)また、上記1によれば(特に摘記cの実施例3)、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gを流動層造粒装置に投入し、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティングし、乾燥して、顆粒を製造する方法。」(以下「甲1発明B」という。)
第6 取消理由1(進歩性)に対する当審合議体の判断
1 本件発明1について
(1)甲1発明Aとの対比
ア 甲1の「苦味を有する薬物」(上記第5の1摘記aの【請求項1】)という記載、及び「これら実施例においては、薬物としてプラバスチンナトリウムおよびファモチジンを用いたが、本発明は苦味を有する他の薬物に対しても同様に適用し得ることは自明である」(上記第5の1摘記cの【0018】、(当審合議体注:「プラバスチンナトリウム」は誤記であり、正しくは「プラバスタチンナトリウム」と解される。)という記載、並びに本件明細書の「極めて苦味の強い薬剤であるシロドシン」(【0001】)という記載から、甲1発明Aの「プラバスタチンナトリウム」と、本件発明1の「シロドシン」は、いずれも苦味を有する薬物である。
イ そして、甲1の「造粒方法は任意であるが、流動層造粒法が好ましい。この場合賦形剤と混合した薬物を粉末状で流動させ、それへ前記ポリマーの溶液を噴霧してコーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製する。」(上記第5の1摘記bの【0011】)という記載を参酌すると、甲1発明Aで「流動層造粒装置」に投入された「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5g」は、粉末状のものと解される。
ウ 上記ア及びイから、甲1発明Aで「流動層造粒装置」に投入された「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5g」の粉末を含有する組成物は、本件発明1の「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子」と、「苦味を有する薬物の粉末を含有する組成物」である限りにおいて一致する。
エ 甲1の「薬物含有顆粒(a)は、この混合物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆することによって調製される。」(上記第5の1(1)摘記bの【0010】)という記載を参酌すると、甲1発明Aの顆粒は、「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5g」の粉末を含有する組成物に、「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティング」することにより、造粒又は被覆して調製されたものといえる。
オ 甲1発明Aの「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)」は、その名称からみて、本件発明1の「非腸溶性高分子」である「アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE」に相当するものと認められる。
カ 上記エ及びオから、甲1発明Aの「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液」は、本件発明1の「非腸溶性高分子」である「アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE」を含有する「コーティング剤」に相当する。
そして、甲1発明Aの「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティング」することにより、造粒又は被覆して調製された顆粒は、本件発明1の「非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られるマスキング粒子」と、少なくとも「非腸溶性高分子を含有するコーティング剤を用いて調製される粒子」である限りにおいて一致する。
キ ここで、本件発明の「マスキング粒子」とは、本件明細書の「薬物が苦味を有する場合、その苦味を抑制する方法としては、薬物自体の化学修飾や包接化といった化学的マスキング手法・・・胃溶性高分子又は腸溶性高分子等のコーティング剤により薬物をコーティングする物理的マスキング手法・・・等が知られている」(【0002】)という記載を参酌すると、苦味が抑制された粒子を意味するものと解される。
他方、甲1の「本発明は、口腔内での薬物の放出を最小化する一方で、消化管内での薬物の放出を低下させない苦味を低減した口腔内崩壊錠剤を提供する」(上記第5の1摘記bの【0006】)という記載や、「(a)賦形剤と混合した苦味を有する薬物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆してなる薬物含有顆粒、及び(b)糖または糖アルコールを水に不溶である親水性の造粒成分で造粒もしくは被覆してなる薬物不含顆粒、との混合圧縮成形物である、苦味を低減した口腔内崩壊錠剤」(上記第5の1摘記bの【0007】)という上記「本発明」の構成に加えて、「本錠剤は、口腔内で唾液と接触する時、顆粒(b)は口腔内で崩壊するが、顆粒(a)はそのままの形で消化管へ通過するからその中に含まれる薬物は口腔内で放出されない。消化管に到達した顆粒(a)は、通常の胃溶性顆粒または腸溶性顆粒と同様に消化管内において崩壊し、同様なバイオアベイラビリティーを発揮する」(上記第5の1摘記bの【0008】)という記載を併せ考慮すると、甲1発明Aの顆粒は、口腔内崩壊製剤用の顆粒であって、当該顆粒に含まれる薬物は口腔内で放出されないから、プラバスタチンナトリウムの苦味が低減された顆粒といえる。そして、一般に顆粒が粒子状の物質を意味することは明らかであるから、甲1発明Aの顆粒は、本件発明1の「口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子」に相当するといえる。
ク 上記ア~キを踏まえると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「苦味を有する薬物の粉末を含有する組成物を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で処理して調製されるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子が、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEである、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。」
<相違点1>
「苦味を有する薬物」が、本件発明1では「シロドシン」であるのに対して、甲1発明Aでは「プラバスタチンナトリウム」である点。
<相違点2>
本件発明1の「マスキング粒子」は、「ヒドロキシプロピルセルロースで造粒された」「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子」を「非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られる」ものであるに対して、甲1発明Aの顆粒は、「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5g」の粉末に「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティング」することにより、造粒又は被覆して得られるものである点。
<相違点3>
本件発明1の「マスキング粒子」には「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という特定がなされているのに対して、甲1発明Aにはそのような特定がされていない点。
<相違点4>
本件発明1には「非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下」という特定がなされているのに対して、甲1発明Aにはそのような特定がされていない点。
(2)判断
ア 事案に鑑み、相違点1、2についてまとめて検討する。
イ 甲1の「薬物含有顆粒(a)は、この混合物を水に不溶であるが消化液に可溶なフィルム形成性ポリマーで造粒もしくは被覆することによって調製される。」(上記第5の1(1)摘記bの【0010】)、「薬物と賦形剤の混合物は上記ポリマーの溶液を用いて造粒される。造粒方法は任意であるが、流動層造粒法が好ましい。この場合賦形剤と混合した薬物を粉末状で流動させ、それへ前記ポリマーの溶液を噴霧してコーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製する。」(上記第5の1摘記bの【0011】)という記載からみて、甲1の「流動層造粒法」は、粉末状の「薬物と賦形剤の混合物」に「フィルム形成性ポリマー」を噴霧してコーティングすることで、薬物含有顆粒を調製する手法、つまり、甲7で「マトリックス型製剤」(177頁の表1)と称される手法であることが理解される。
ウ 甲1発明Aは、甲1の「流動層造粒法」で調製された顆粒の具体例(実施例)であるから、甲1発明Aの顆粒は、甲7の「マトリックス型製剤」のように、薬物としてのプラバスタチンナトリウムと、添加剤としてのD-マンニトール、酸化チタン及びタルクが、コーティング剤としてのアミノアルキルメタクリレートコポリマー中に広く分散して存在する構造を有するものと認められる。
エ 他方、本件発明1の「マスキング粒子」は、「ヒドロキシプロピルセルロースで造粒された」「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子」を「非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られる」(この手法を以下「造粒コーティング法」という。)ものであるから、甲7の「膜制御型製剤」(177頁の表1)のように、シロドシンの微粉末(薬物)及びヒドロキシプロピルセルロース(結合剤)を含有する薬物粒子を核とし、これがコーティング剤で被覆された構造を有するものと認められる。
オ 上記イ~エから、甲1発明Aの顆粒と本件発明1の「マスキング粒子」の間には、その製造方法(相違点2)に起因する構造上の差異があるといえる。
そして、薬物粒子に含有させる薬物の選択と、その薬物に適した薬物粒子の製造方法とには、一般に密接な関連があるから、相違点2は、相違点1と一体的に検討する必要がある。すなわち、甲1発明Aにおいて、「プラバスタチンナトリウム」に代えて「シロドシン」を採用し(相違点1)、同時に「流動層造粒法」に代えて「造粒コーティング法」を採用すること(相違点2)の容易想到性が検討されなくてはならない。
そこで、この観点に沿って以下検討する。
カ 甲1には、「苦味を呈する薬物の種類は問わない」(上記第5の1摘記bの【0009】)、「これら実施例においては、薬物としてプラバスチンナトリウムおよびファモチジンを用いたが、本発明は苦味を有する他の薬物に対しても同様に適用し得ることは自明である。」(上記第5の1摘記cの【0018】)、「薬物と賦形剤の混合物は上記ポリマーの溶液を用いて造粒される。造粒方法は任意であるが、流動層造粒法が好ましい。」(上記第5の1摘記bの【0011】)と記載されているものの、甲1に記載されている「流動層造粒法」は、本件発明1の「造粒コーティング法」(上記エ)とは異なる製造方法である。
そして、甲1には、本件発明1の「シロドシン」と「造粒コーティング法」(上記エ)を同時に採用する動機付けとなり得る明示的な記載はない。
キ 他方、甲7には、本件発明1の「造粒コーティング法」(上記エ)に対応する「膜制御型製剤」と、甲1の「流動層造粒法」に対応する「マトリックス型製剤」について記載されている(177頁の表1)。
より詳細には、甲7の表1(177頁)には、「マトリックス型製剤」(甲1発明Aの顆粒)の特徴として「薬物の水溶性が低い場合や、添加剤の濡れが悪い場合に効果が高い」、「強い苦味を有する薬物、水溶性が高い薬物のマスキングは難しい」と記載されており、「膜制御型製剤」(本件発明1のマスキング粒子)の特徴として「膜厚、添加剤の疎水性、速やかな薬物吸収のバランスが重要」と記載されている。
そして、同表1が「苦味マスキング技術」と題する表であることを踏まえると、上記「効果」は、それぞれの製剤における苦味のマスキング効果を意味するものと解されるので、甲7には、「マトリックス型製剤」(甲1発明Aの顆粒)の特徴として、「薬物の水溶性が低い場合や、添加剤の濡れが悪い場合に」、苦味のマスキング効果が高いことが記載されているといえる。
ク ここで、シロドシンが水に極めて溶けにくいこと(水溶性が低いこと)は、本件優先日当時の技術常識であったと認められる(文献Aの2.3.S原薬(2)物理化学的性質2)溶解性の項、文献Bの3頁1.物理化学的性質(2)溶解性の項を参照。)。
また、シロドシンが苦味を有する薬物であることも、本件優先日当時の技術常識であったと認められる(文献Aの2.3.S原薬(2)物理化学的性質1)性状の項、文献Bの3頁1.物理化学的性質(1)外観・性状の項を参照。)。
さらに、シロドシンを有効成分とする医薬品が上市されていた事実からすると(文献Aの表紙、文献Bの表紙)、シロドシンを有効成分とする、苦味が低減されている新たな医薬品を提供することは、本願優先日当時の当業者にとって自明の課題であったものと認められる。
ケ 上記カ~クを総合的に勘案すると、甲1発明Aにおけるプラバスタチンナトリウムに代えて、同じく苦味を有するシロドシンを採用する(相違点1)とともに、「流動層造粒法」(甲1発明Aの顆粒の製造方法)に代えて「造粒コーティング法」(本件発明1のマスキング粒子の製造方法、上記エ)を採用すること(相違点2)までが、当業者にとって容易に想到し得た事項とはいえない。
具体的には、甲7の記載から、「流動層造粒法」(甲1発明Aの顆粒の製造方法)で調製される「マトリックス型製剤」(甲1発明Aの顆粒)は、低い水溶性を示す薬物の苦味マスキング効果が高いことが知られていたから(上記キ)、水に極めて溶けにくいシロドシンを採用する場合は、「流動層造粒法」を採用するのが自然な着想と解されるところ、敢えて「流動層造粒法」とは異なるマスキング手法である「造粒コーティング法」(本件発明1のマスキング粒子の製造方法、上記エ)を採用する動機付けは見いだせない。
そして、本件特許明細書の実施例4、6~11には、本件発明1のマスキング粒子が、シロドシンの苦味を少なくとも40秒にわたって抑制するのみならず、市販のシロドシン錠剤と同様の速やかな溶出性を両立するという優れた効果を奏することが示されており、このような優れた効果について、当業者が予想できたことを示す証拠は存在しない。
コ したがって、相違点3、4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明A、甲7の記載事項及び本願優先日当時の技術常識(文献A、B)に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
さらに、甲2~6及び文献C~Eの記載(以下(ア)~(ク))を参酌しても、甲1発明Aの「プラバスタチンナトリウム」に代えて「シロドシン」を採用するとともに、「流動層造粒法」に代えて「造粒コーティング法」を採用する動機付けがないことに変わりはないから、上記の判断は左右されない。
(ア)甲2には、「KMD-3213 4.0部、D-マンニトール 117.0部、コーンスターチ 7.0部および低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(「L-HPC(登録商標)」、信越化学株式会社製) 7.0部の混合物をよく混合し、これに約12%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液(ヒドロキシプロピルセルロース 4.0部、水 約30部)を加えて練合し、造粒した。造粒物を流動層造粒乾燥機により、給気60℃で排気40℃まで乾燥し、乾燥後粉砕、整粒し、篩過して顆粒を製した。これにステアリン酸マグネシウム 1.0部を添加し、3分間混合し、打錠して素錠を製し、コーティング剤でコーティングして1錠中4.0mgのKMD-3213を含有する錠剤を製した」(【0083】実施例3)ことが記載されている。
(イ)甲3には、「シロドシンまたはその薬学的に許容される塩と塩基性コポリマーとの混合物を含む経口投与用医薬品」(請求項1)が記載されており、「シロドシンの不快味がマスキングされていることが好ましい」(【0012】)こと、「このような塩基性コポリマーは、たとえば、オイドラギットEの商標で市販されており、具体的には、オイドラギットE 100、オイドラギットE PO、オイドラギットE 12,5などの製品が挙げられる」(【0016】)こと、「12gのシロドシンと、62gのオイドラギットE POと、6gのポリビニルピロリドンと、6gのポリエチレングリコールとの混合物を、オイドラギットE 12,5と3gのラウリル硫酸ナトリウムとの混合物80mLとともに造粒し、40℃で2時間乾燥した。造粒物を710μmのふるいにかけ、次いで2時間にわたり再度乾燥した。乾燥した造粒物にリン酸水素カルシウム420gを加えた。得られた材料を15分間混合し、ステアリン酸マグネシウム3gを加えさらに3分間混合した」(【0071】実施例1)ことが記載されている。
(ウ)甲4には、「薬物または機能性コーティングが施された薬物粒子を、固形分として糖分を70wt%以上含有する高濃度糖類溶液、若しくは5%水溶液の粘度(25℃)が55mPa・s以下の結合剤の15wt%以上の水含有溶液で練合し、細分化した後乾燥して得られる口腔内崩壊製剤」(請求項1)が記載されている。「本発明により、薬物そのものが微粒子であるもの、あるいはマスキング、徐放性等の機能を持たせた平均粒子径約400μm以下の微粒子を含有する口腔内崩壊製剤を製造するに当たって、当該微粒子含量が50%以上、場合によっては90%という高含量の口腔内崩壊製剤を製造することが可能となった」(【0010】)こと、「苦味のマスキングのためには、例えばエチルセルロースや、オイドラギットRSのような水不溶性高分子か、またはオイドラギットE,オイドラギットRD100,ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどの胃溶性高分子が用いられる。腸溶性コーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートのようなセルロース系高分子,オイドラギットS,オイドラギットLのようなアクリル高分子が用いられる」(【0022】)ことも記載されている。
(エ)甲5には、「フルオロウラシルを10~70重量%含有する核、該核を被覆する陽イオン性ポリマーを1種又は2種以上含有する内層及び陰イオン性ポリマーを1種又は2種以上含有する外層を含む、大腸癌治療用経口医薬製剤」(請求項15)において、「核が、結合剤、崩壊剤および糖類からなる群から選択される1種又は2種以上を含むこと」(請求項18)、結合剤がヒドロキシプロピルセルロースを含むこと(請求項20)が記載されている。
(オ)甲6には、「本発明は、これら従来技術の課題を解消し、胃液の影響を受けることなく胃内 を通過し、小腸においても何ら変化せずに、大腸に到達したときに初めて錠剤が崩壊放出され、活性成分が大腸内で吸収されてなる経口医薬製剤を提供することを目的とするものである。本発明による下部消化管放出性の経口医薬製剤は、活性成分を含有する核からなる固形薬剤を、陽イオン性ポリマーからなる内層、陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有することを特徴とする」(3頁[発明の開示]1~7行目)こと、「次に、pH6. 0以下で溶解または膨潤し、内層として用いられる陽イオン性ポリマーは、一般名であるアミノアルキルメタアクリレートコポリマー[メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチルからなる共重合体、 商品名:Eudragit E(オイドラギットE)、レーム社製]、またはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(商品名:AEA、三共社製)である」(5頁1~9行目)ことが記載されている。
(カ)文献Cには、「水難溶性であって粒径が実質的に0.4~105μmの排尿障害及び/又はそれに関連する疾患の治療用薬物と、第1の添加物である水溶性添加物及び/又は水不溶性添加剤とを混合し、造粒し、さらに第2の添加物である水溶性添加物及び/又は水不溶性添加剤を必要により混合し、得られた混合物又は造粒物を湿潤条件下で型に投入して0.1~100MPaの圧力で圧縮成型した後、乾燥することにより得られる口腔内崩壊製剤であって、該製剤中における水不溶性添加剤の含有率が10%w/w以上である場合には、その水不溶性添加剤の平均粒径が100μm以下である上記1ないし3のいずれか1項に記載の口腔内崩壊製剤」(【0011】)が記載されている。「KMD-3213(silodosin;(-)-(R)-1-(3-hydroxypropyl)-5-[2-[2-[2-(2,2,2-trifluoroethoxy)phenoxy]ethylamino]propyl]indoline-7-carboxamide;米国特許第5387603号明細書)も好ましい例として挙げられる」(【0023】)こと、添加物として賦形剤と結合剤の組み合わせが通常好ましく選択され、賦形剤としてはD-マンニトール等が挙げられ、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられること(【0056】)が記載されている。
(キ)文献Dには、「薬物含有粒子が、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、および水溶性高分子物質を含む被膜物質により被覆されてなる、経口投与用粒子状医薬組成物」(請求項1)において、「薬物と添加物からなる粒子の製造は、例えば薬物と適当な賦形剤(例えば結晶セルロース、乳糖、トウモロコシデンプン等)とを混合し、必要に応じて結合剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース等)を加えて、造粒し、整粒、乾燥してもよい」(【0055】)ことが記載されている。
(ク)文献Eには、アセトアミノフェンをEUDRAGIT(R)EPOと称されるポリマーでコーティングした顆粒及びその顆粒を用いて製錠した錠剤について、pH約6.8における溶出結果が記載されている(p.223の「2.1.3」の項及び「Fig.4」、当審合議体注:「(R)」はRの丸囲いを意味する。)。
サ 令和4年11月24日提出の意見書における申立人の主張について
(ア)申立人は、本件発明1の「コーティング剤で被覆して」という構成は、甲1、甲4に記載されており、「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という構成は、甲7から当業者が適宜採用し得る設計事項にすぎないから、本件発明1は、甲1、甲4、甲7、並びに本願優先日当時の技術常識及び周知技術に基づいて、依然として当業者が容易に想到できたものである旨を主張する(意見書4~5頁の(2-1))。
しかし、本件発明1において、「コーティング剤で被覆して」という構成を単独で取り上げて検討するのは適切ではなく、上記ア~オに説示したとおり、少なくとも上記(1)クの相違点1と相違点2については一体的な検討を要すると認められるところ、甲1発明Aの「プラバスタチンナトリウム」に代えて「シロドシン」を採用するとともに、「流動層造粒法」に代えて「造粒コーティング法」を採用することまでが容易想到とはいえないことは、上記ケ及びコに説示したとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(イ)申立人は、本件発明1の「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という構成は、単に本件発明1の効果を規定したものであると理解できるから、特許権者の「相違点4が存在する」、及び「当業者が相違点4の構成を容易に想到することができたとは認められない」という主張は失当である旨を主張する(意見書5~6頁の(2-2))。
上記主張の「相違点4」は、上記(1)クの相違点3と同じものであるところ、上記(1)クの相違点3、4については検討するまでもなく、取消理由1(進歩性)に理由がないことは、上記コに説示したとおりである。しかし、念のため、申立人の上記主張について以下検討する。
申立人が主張するとおり、本件発明1の「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という構成は、本件発明1が奏する効果のうち、シロドシンの苦味を抑制する部分に対応するものといえる。
しかし、本件発明1のうち、「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」以外の構成を備えていれば、つまり「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られるマスキング粒子であって、シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子が、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒された造粒物であり、非腸溶性高分子が、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEであり、非腸溶性高分子含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下」「である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子」であれば、必然的に「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という構成を満たすとは認められない。
この点については、本件特許明細書に「本発明のマスキング粒子及びこれを含有する経口投与製剤は、良好な苦味マスキング効果を示す。・・・苦味を感じ始めるまでの時間は、30秒以上が好ましく、40秒以上、又は50秒以上のように、より長いほうが好ましい」(【0033】)と記載されているように、「シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で被覆して得られるマスキング粒子」の「苦味を感じ始める時間」が、例えば30秒以上40秒未満となる態様も存在する蓋然性は高いといえる。
これに対して、本件発明1は、特に「該マスキング粒子を含有する口腔内崩壊製剤のヒト苦味官能試験における苦味を感じ始める時間が、40秒以上」という構成を加えることによって、本件発明1の「マスキング粒子」を、シロドシンの苦味を十分に抑制する態様に限定し、本件発明1の「マスキング粒子」と甲1発明Aの差異をより一層明らかにするものであるから、上記「相違点4」(上記(1)クの相違点3)が存在しないとはいえない。
したがって、申立人の上記主張も採用できない。
2 本件発明2、4~9について
本件発明2、4~9は、いずれも本件発明1の構成を備えたものであるから、上記1(2)ア~コに説示した理由と同様に、甲1発明A、甲1~7の記載事項、本願優先日当時の技術常識及び周知技術(文献A~E)に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
3 本件発明10について
(1)甲1発明Bとの対比
ア 上記1(1)アに説示した理由と同様に、甲1発明Bのプラバスタチンナトリウムと、本件発明1のシロドシンは、いずれも苦味を有する薬物といえる。
そして、甲1の「苦味を呈する薬物は錠剤や顆粒に用いられる通常の賦形剤と混合される。その例は・・・マンニトール・・・などである。」(上記第5の1(1)摘記1bの【0009】)という記載に照らして、甲1発明Bのプラバスタチンナトリウムと混合されるD-マンニトールは、苦味を呈する薬物と混合される「賦形剤」であるから、本件発明10の「ヒドロキシプロピルセルロース」と、苦味を有する薬物と混合される「添加剤」である点で一致する。
イ 甲1の「この場合賦形剤と混合した薬物を粉末状で流動させ、それへ前記ポリマーの溶液を噴霧してコーティングし、乾燥して薬物含有顆粒(a)を調製する。」(上記第5の1摘記bの【0011】)という記載を考慮すると、甲1発明Bの「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gを流動層造粒装置に投入し・・・噴霧コーティング」とは、流動層造粒装置に投入されたプラバスタチンナトリウムとD-マンニトールが、粉末状で流動し、その後に噴霧コーティングされること、すなわち、流動層造粒装置内でプラバスタチンナトリウムとD-マンニトールとを含有する薬物組成物が調製され、その後に噴霧コーティングすることを意味するものと解するのが相当である。
ウ 上記ア及びイから、甲1発明Bの「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5gを流動層造粒装置に投入」する工程は、本件発明10の「(a)シロドシンと添加剤を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製する工程」と、「苦味を有する薬物と添加剤を混合し、薬物組成物を調製する工程」である限りにおいて一致する。
エ また、上記1(1)エ~カに説示した理由と同様に、甲1発明Bの「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液」は、本件発明10の「アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤」に相当する。
オ 上記1(1)キに説示した理由と同様に、甲1発明Bの顆粒は、本件発明10の「マスキング粒子」に相当する。
カ 上記ア~オから、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)苦味を有する薬物と添加剤を混合して、薬物組成物を調製する工程、及び
(b)工程(a)で得られた薬物組成物にアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤を処理して、マスキング粒子を調製する工程を包含することを特徴とする、マスキング粒子を製造する方法。」
<相違点5>
「苦味を有する薬物」が、本件発明10では「シロドシン」であるのに対して、甲1発明Aでは「プラバスタチンナトリウム」である点。
<相違点6>
本件発明10では、工程(a)において「シロドシンと添加剤を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースで造粒してシロドシンを含有する薬物粒子を調製」し、工程(b)において、「工程(a)で得られた薬物粒子にアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含有するコーティング剤で被覆」することが特定されている。
これに対して、甲1発明Bでは、工程(a)において「プラバスタチンナトリウム26.0gとD-マンニトール266.5g」を混合して薬物組成物を調製し、工程(b)において、当該薬物組成物に「アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名オイドラギットE)80gを70%エタノール1600mLに溶解した溶液に酸化チタン12.5g及びタルク15gを分散した液を噴霧コーティング」する点。
<相違点7>
本件発明10には「アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE含量が、薬物粒子100質量部に対して40質量部以下」という特定がなされているのに対して、甲1発明Bにはそのような特定がされていない点。
(2)判断
上記1(2)ア~オに説示した理由と同様に、相違点5と相違点6は一体的に検討する必要があるところ、上記1(2)カ~コに説示した理由と同様に、甲1発明Bを相違点5、6に係る本件発明10の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得ない。
また、本件特許明細書の実施例4、6~11には、本件発明10のマスキング粒子を製造する方法が、シロドシンの苦味を少なくとも40秒にわたって抑制するのみならず、市販のシロドシン錠剤と同様の速やかな溶出性を両立するマスキング粒子を製造できるという優れた効果を奏することが示されており、このような優れた効果について、当業者が予想できたことを示す証拠は存在しない。
したがって、相違点7について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1発明B、甲1~7の記載事項、本願優先日当時の技術常識及び周知技術(文献A~E)に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1、2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。また、ほかに請求項1、2、4~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により請求項3が削除された結果、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700408