特許異議申立
2020-700179
アピキサバン製剤
- 審判番号
- 2020-700179
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-149644
- 登録番号
- 特許第6577980号(P6577980)
- 請求日
- 2020年03月17日
- 審決日
- 2020年11月05日
- 公報発行日
- 2021年09月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ブリストル-マイヤーズ・スクイブ・ホールディングス・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】森本 靖
- 【権利者代理人】呉 英燦
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【権利者】ファイザー・インク
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】森本 靖
- 【権利者代理人】呉 英燦
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【異議申立人】岩田 明彦
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 石井 裕美子
- 審判官 渕野 留香
- 分類
- P1651.121-ZC (A61K) / P1651.536-ZC (A61K) / P1651.537-ZC (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6577980号発明「アピキサバン製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6577980号の請求項1ないし17、23ないし28に係る特許を取り消す。
特許第6577980号の請求項18ないし22に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6577980号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~28に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)2月24日(パリ条約による優先権主張 2010年2月25日(US)米国)を国際出願日とする特願2012-555127号の一部を平成27年11月19日に新たな出願(特願2015-226794号)とし、さらにその一部を平成28年10月26日に新たな出願(特願2016-209347号)とし、さらにその一部を新たな出願として、平成29年8月2日に出願された特願2017-149644号であり、令和1年8月30日にその特許権の設定登録がされ、令和1年9月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和2年3月17日に、請求項1~28に係る特許に対し、特許異議申立人岩田明彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和2年5月21日付けで取消理由が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは指定期間内に応答はなかった。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~28に係る発明(以下、請求項の番号順に、「本件特許発明1」~「本件特許発明28」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~28に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
2.5mg~5mgのアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む固形医薬組成物であって、
前記アピキサバンが結晶形のアピキサバンを含むことを特徴とし、
USP装置2を75rpmのパドル回転速度で37℃にて900mLの溶解媒体中で用いて測定すると、前記医薬組成物中のアピキサバンの少なくとも77重量%が前記溶解媒体中に30分以内に溶解するものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、固形医薬組成物。
【請求項2】
前記結晶形のアピキサバンが、アピキサバンの形体N-1を含む、請求項1に記載の医薬組成物であって、前記アピキサバンの形体N-1は、下記の特徴;
表1:
【表1】
に示される単位格子パラメータと等しいもの;または
10.0±0.1、10.6±0.1、12.3±0.1、12.9±0.1、18.5±0.1、および27.1±0.1の2θ値の室温でのX線回折ピーク
を有するものである、医薬組成物。
【請求項3】
前記アピキサバンが、前記固形医薬組成物の製造時に造粒されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アピキサバンが、乾式造粒法によって造粒されるものである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
2.5mgのアピキサバンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
5mgのアピキサバンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
カプセル剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
2.5mg~5mgのアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む固形医薬組成物であって、
USP装置2を75rpmのパドル回転速度で37℃にて900mLの溶解媒体中で用いて測定すると、前記医薬組成物中のアピキサバンの少なくとも77重量%が前記溶解媒体中に30分以内に溶解するものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、固形医薬組成物。
【請求項10】
前記アピキサバンが、前記固形医薬組成物の製造時に造粒されるものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アピキサバンが、乾式造粒法によって造粒されるものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
2.5mgのアピキサバンを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
5mgのアピキサバンを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
錠剤である、請求項9~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
カプセル剤である、請求項9~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
5mg以下のアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む錠剤であって、
少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性を示し、溶解試験は、USP装置2を75rpmのパドル回転速度で用いて、37℃にて900mLの溶解媒体中で行われるものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである、錠剤。
【請求項17】
前記錠剤が、アピキサバンの形体N-1を含む、請求項16に記載の錠剤であって、前記形体N-1は、下記の特徴;
表1:
【表2】
に示される単位格子パラメータと等しいもの;または
10.0±0.1、10.6±0.1、12.3±0.1、12.9±0.1、18.5±0.1、および27.1±0.1の2θ値の室温でのX線回折ピーク
を有するものである、錠剤。
【請求項18】
前記アピキサバンが、89μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項19】
前記アピキサバンが、85μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項20】
前記アピキサバンが、50μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項21】
前記アピキサバンが、30μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項22】
前記アピキサバンが、25μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む、請求項16または17に記載の錠剤。
【請求項23】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、
(a)2.5~5mg;または
(b)2.5mgまたは5mg
である、請求項16~22のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項24】
請求項16~23のいずれか1項に記載の錠剤である、血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項25】
1日2回経口で投与される、請求項24に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項26】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、2.5~5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項27】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、2.5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。
【請求項28】
前記錠剤に含まれるアピキサバンの量が、5mgである、請求項24または25に記載の血栓塞栓性疾患の治療における使用のための錠剤。」
第3 取消理由の概要
当審が令和2年5月21日付けの取消理由通知にて特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由1]
本件特許発明1~23、27~28は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないため、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[取消理由2]
本件特許は、明細書が本件特許発明1~23、27~28を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[取消理由3]
本件特許発明3、4、7、8、10、11、14及び15は、明確でないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 当審の判断
1 本件特許発明1~17、23~28について
上記第3のとおり、本件特許発明1~17、23~28について、令和2年5月21日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
そして、令和2年5月21日付けで通知した取消理由はいずれも妥当なものと認められるので、本件特許発明1~17、23~28に係る特許は、これらの取消理由によって取り消すべきものである。
2 本件特許発明18~22について(取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由)
(1)申立人は、証拠方法として甲第1~6号証(以下、番号順に「甲1」~「甲6」ということがある。)を提出し、本件特許発明18~22に係る特許については、以下の申立理由1及び2を主張している。
申立理由1
本件特許発明18~22は、甲1~6から当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明18~22に係る特許は、特許法第113条第2号により取り消されるべきものである。
申立理由2
請求項19で規定する「85μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子」は、発明の詳細な説明に記載がなく、本件特許発明19は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるため、本願は特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明19に係る特許は、特許法第113条第4号により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特許第4249621号公報 第1~2頁、第6頁、第131頁、第150~152頁
甲第2号証:“Apixaban, an Oral, Direct, Selective Factor Xa Inhibitor, in Combination With Antiplatelet Therapy After Acute Coronary Syndrome”, Circulation, 2009年, Vol.119, pp.2877-2885
( https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.108.832139)
甲第3号証:国際公開第2010/147978号(翻訳文:特表2012-530141号公報) 第1~2頁、第10~11頁、第37頁、第62~63頁、第73~76頁
甲第4号証:第十五改正日本薬局方(平成18年3月31日厚生労働省告示第285号)第104~109頁
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000066530.html)
甲第5号証:医薬審第599号 厚生省医薬安全局審査管理課長通知「医療用医薬品の品質に係る再評価の予試験について」(平成10年7月15日) 第1~6頁
甲第6号証:杉山雄一・山本恵司編、総合製剤学、株式会社南山堂発行(2000年4月3日 1版1刷)第431~437頁
(2)申立人が主張する申立理由1(特許法第29条第2項)について
ア 甲1の記載事項及び甲1発明
甲1の実施例18には、1-(4-メトキシフェニル)-7-オキソ-6-[4-(2-オキソ-1-ピペリジニル)フェニル-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾール-[3,4-c]ピリジン-3-カルボキサミド、すなわち、甲1の請求項1に記載された式(1)の化合物を、再結晶化工程を経て取得したことが記載されている。
そうすると、甲1には、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「式(1)
の化合物の結晶。 」
イ 請求項16を引用する本件特許発明18について
(ア)対比
本件特許発明18は、請求項16又は請求項17を引用するものであるところ、請求項16を引用する本件特許発明18と甲1発明とを対比する。
本件特許発明18の「アピキサバン」は、本件特許明細書【0002】に【化1】として記載される以下の化学構造のものであり、本件特許明細書【0003】のとおり、「1-(4-メトキシフェニル)-7-オキソ-6-[4-(2-オキソ-1-ピペリジニル)フェニル]-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン-3-カルボキサミド」というIUPAC名で知られるものである。そうすると、甲1発明における「式(1)の化合物」は、本件特許発明18の「アピキサバン」に相当する。
してみれば、甲1発明と本件特許発明18は、以下の点において一致及び相違するといえる。
【化1】
<一致点>
「結晶形であるアピキサバン」
<相違点1>
本件特許発明18は、「5mg以下のアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む錠剤」であるのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本件特許発明18では、アピキサバンの粒径が「89μmと同等またはそれ以下のD90」であり、「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性を示し、溶解試験は、USP装置2を75rpmのパドル回転速度で用いて、37℃にて900mLの溶解媒体中で行われるものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである」との特定がなされているのに対し、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点1について
甲2(要約の「方法と結果」及び「結論」の項)には、臨床試験において、急性冠症候群の患者に対して、2.5mgのアピキサバンを1日2回、10mgのアピキサバンを1日1回、10mgのアピキサバンを1日2回、もしくは、20mgのアピキサバンを1日回投与すると、再発のリスクが低下することが記載されている。
また、甲1(【0021】)には、式(1)の化合物を錠剤として使用できることが記載されていることも考慮すると、甲1発明に係る式(1)の化合物の結晶を、甲2において効果が確認されている用量の範囲内の5mg以下の用量で含む錠剤とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
b 相違点2について
(a)甲1には、実施例18において、再結晶を経て式(1)の化合物を得たことが記載されているものの、得られた結晶の粒径や溶解性については全く記載がない。
また、甲1(【0019】)には、「背景技術」として、新たな第Xa因子阻害剤の発見が望まれており、また、有利で改善された特性を有する化合物を見出すことも望ましいことであると記載され、その特性の一つとして「(a)医薬的特性(例えば、溶解性、透過性、および徐放性製剤への順応性)」が記載されているものの、式(1)の化合物の溶解性を改善する必要があることは記載されていない。
したがって、甲1の記載から、式(1)の化合物の結晶の粒子径がどの程度であるのか手がかりは見出せないし、また、溶解性を改善するために何らかの手段を講じる必要があることも認識できない。
(b)また、甲3には、アピキサバンの溶解性改良形態としてアピキサバンおよびポリマーを含む固体非晶質分散物が開示され(請求項7)、固体非晶質分散物は、結晶性アピキサバン単独と比較して溶解性改良形態であったこと(実施例6)、5mgのアピキサバンを含有する即時放出錠剤を調製したこと(実施例7)が記載されている。
甲3の記載に接した当業者であれば、甲1発明に係る式(1)の化合物の結晶の溶解性を改良する必要があることは認識し得るものの、そのためには、当該化合物を固体非晶質分散物とするものといえ、その他の溶解性改良手段を採用することを検討するとはいえない。
(c)さらに、甲6(第435頁の下から11行目~第436頁第12行)には、薬物原末の粒子径はバイオアベイラビリティに影響する重要な要因であること、難溶性薬物の場合、粉末の粒子径が小さいほど全体の表面積は大きく、溶解速度は速いことが記載されている。
しかし、甲6には、難溶性薬物としてアピキサバンは記載されていないし、薬物の種類によっては、粒径が小さくなりすぎると凝集して有効表面積が大きくなり、逆に溶解性が低下するものもあることから、甲6の記載を参照しても、甲1発明に係る式(1)の化合物の結晶を、どの程度の粒子径とすれば溶解性が改善できるのかを、当業者が容易に想到できるとはいえない。
(d)そして、甲4(第105頁右欄第7行~107頁右欄第5行)及び甲5(第2頁第17行~第5頁第2行)には、本件特許発明18で規定される溶解試験が日本薬局方で推奨される規格試験であることが記載されているが、これらの文献を考慮しても、甲1発明に係る式(1)の化合物の結晶を、甲4及び甲5に記載された溶解性に関する規格試験において良好な溶解性とするために、どのような手段を用いればよいのかについて具体的な示唆は見出せない。
(e)上記(a)~(d)を併せ考慮しても、甲1発明に係る式(1)の化合物の結晶の溶解性を改善するために、その粒径を「89μmと同等またはそれ以下のD90」とし、特定の溶解試験において「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性」を示す錠剤とすることを、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
(ウ)効果について
本件特許発明18が、89μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子とすることで、それを含む錠剤が、一貫したインビボ露出が予想される溶解性を示すものとなることを、甲1~甲6の記載から当業者が予測できたとはいえない。
(エ)申立人の主張について
特許異議申立書では、甲4、甲5の記載を根拠として、「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する」という記載は、日本薬局方が推奨する規格試験を行い、アピキサバンの試験結果を記載したにすぎないものであるから、発明を特定する事項にはなり得ないとの主張がなされている(第44頁第3行~第45頁第7行)。
しかし、錠剤からのアピキサバンの溶解速度は、アピキサバンの粒子径だけでなく、添加剤や錠剤の製造方法によっても変わり得る値であり、「89μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む」「錠剤」が、「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性」という規定を必然的に充足するわけではない。
したがって、「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する」との記載は、「89μmと同等またはそれ以下のD90を有する結晶のアピキサバン粒子を含む」「錠剤」を、さらに特定する事項であるといえる。
(オ)以上によれば、請求項16を引用する本件特許発明18は、甲1に記載された発明、及び、甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 請求項17を引用する本件特許発明18について
請求項17は、請求項16を引用し、「アピキサバン」の「X線回折ピーク」について特定を加えるものである。そうすると、甲1発明は、上記イで認定した相違点1及び2に加え、「アピキサバン」の「X線回折ピーク」を特定していない点においても、請求項17を引用する本件特許発明18とさらに相違するものである。
そして、甲1に記載された発明、及び、甲2~6に記載された事項に基づいて、上記相違点2に係る本件特許発明18の構成に想到することが、当業者が容易になし得たこととはいえない点は、上記イで説示したとおりである。
よって、さらなる相違点を検討するまでもなく、請求項17を引用する本件特許発明18も、甲1に記載された発明、及び、甲2~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明19~22について
本件特許発明19~22は、本件特許発明18と同様に、「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性を示し、溶解試験は、USP装置2を75rpmのパドル回転速度で用いて、37℃にて900mLの溶解媒体中で行われるものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである」ことを特定し、かつ、「アピキサバン」の「D90」として、本件特許発明18よりもさらに小さい上限値を規定するものである。
そうすると、上記イでの説示と同様の理由により、本件特許発明19~22もまた、甲1に記載された発明、及び、甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 小括
以上のとおり、本件特許発明18~22は、甲1に記載された発明、及び、甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人が主張する申立理由1には理由がない。
(3)申立人が主張する申立理由2(特許法第36条第6項第1号)について
本件特許明細書【0005】、【0008】、【0013】等の記載からみて、本件特許発明19が解決しようとする課題は、一貫したインビボ溶解、一貫した露出を可能とするアピキサバン製剤を提供することであると認められる。
そして、本件特許明細書には、「USP装置2を75rpmのパドル回転速度で用いて、37℃にて900mLの溶解媒体中で行われるものであり、前記溶解媒体は、0.05% ラウリル硫酸ナトリウムを含有するpH6.8の0.05M リン酸ナトリウムである」「溶解試験」において、「30分で77%」という溶解速度が一貫した露出を達成するための閾値であること(【0040】)、アピキサバンの溶解速度は粒径の減少とともに増大すること(【0041】、【図3】、【図4】)、粒径を89μm以下に制御することで一貫したインビボ露出を確実にする溶解速度が生じること(【0041】、【図3】、【図4】)、好ましい粒径の範囲は89μm以下、より好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは30μm以下、最も好ましくは25μm以下のD90であることが記載されている(【0009】)。
これらの記載に照らせば、5mg以下のアピキサバンおよび医薬的に許容される希釈剤または担体を含む錠剤において、アピキサバンの粒径を89μm以下とし、上記溶解試験において「少なくとも77重量%に相当するアピキサバンの量が30分以内に溶解する溶解特性」とすることで、一貫したインビボ溶解、一貫した露出を可能とする溶解速度は実現され、上記課題の解決が可能となることを当業者は理解できるし、アピキサバンの粒径を、本件特許発明19に規定される「85μmと同等又はそれ以下」とする場合にも、同様に上記課題の解決が可能であると当業者は理解できるといえる。
よって、本件特許発明19は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
以上によれば、本件特許の請求項19は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足するものであり、申立人が主張する申立理由2には理由がない。
第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1~17、23~28に係る特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項18~22に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項18~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700179