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特許異議申立

2022-700289

対象の細胞外液量状態のマーカーとしてのMR-proADM

審判番号
2022-700289
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-527070
登録番号
6944449
請求日
2022年04月06日
審決日
2023年01月31日
公報発行日
2023年05月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【権利者代理人】塩澤 寿夫
  • 【権利者代理人】渡辺 紫保
  • 【権利者代理人】竹田 陽子
  • 【権利者代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】久門 享
審判長/審判官
  • 審判長 樋口 宗彦
  • 審判官 渡戸 正義
  • 審判官 石井 哲
分類
P1651.537-YAA(G01N) / P1651.536-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6944449号発明「対象の細胞外液量状態のマーカーとしてのMR-proADM」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6944449号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第6944449号の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を維持する。 特許第6944449号の請求項7及び11ないし15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6944449号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)11月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年11月27日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月14日にその特許権の設定登録がされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 4月 6日 :特許異議申立人 久門 享(以下「申立人」と いう。)による請求項1ないし15に係る特 許に対する特許異議の申立て 同年 6月13日付け:取消理由通知 同年 9月13日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 同年11月17日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)特許権者が令和4年9月13日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし15について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし13のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1における「対象の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び/又は血球量状態の決定を補助する方法であって」との記載を、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって」に訂正し、「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、重篤な血球量状態及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」との記載を、「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」と訂正し、「(ii)前記参照レベルと比較したときに同一又は同様のレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が同一若しくは同様の体液バランス、及び/又は同一若しくは同様の塩分バランスを有することを示し;前記同一の体液バランス及び/又は塩分バランスが、前記対象が正常な細胞外液量状態及び/又は正常な血球量状態を有することを示し」との記載を、「(ii)前記参照レベルと比較したときに同一又は同様のレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が同一若しくは同様の体液バランス、及び/又は同一若しくは同様の塩分バランスを有することを示し;前記同一の体液バランス及び/又は塩分バランスが、前記対象が正常な細胞外液量状態を有することを示し」と訂正し、「(iii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が負の体液バランス及び/又は負の塩分バランスを有することを示す、方法」との記載を、「(iii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が負の体液バランス及び/又は負の塩分バランスを有することを示し、前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項2における「対象の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び/又は血球量状態の決定を補助する方法であって」との記載を、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって」と訂正し、「(i)前記参照レベルと比較したときに同様のレベル、同一のレベル又は上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、重篤な血球量状態及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」との記載を、「(i)前記参照レベルと比較したときに同様のレベル、同一のレベル又は上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」と訂正し、「(ii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正常な体液バランス、正常な塩分バランス、正常な細胞外液量状態及び/又は正常な血球量状態を有することを示す、方法」との記載を、「(ii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正常な体液バランス、正常な塩分バランス、及び/又は正常な細胞外液量状態を有することを示し、前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法」と訂正する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項3における、「重篤な細胞外液量状態、重篤な血球量状態、正の塩分バランス及び/又は正の塩分バランスの指標である」との記載を、「重篤な細胞外液量状態、及び/又は正の塩分バランスの指標である」と訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項4における、「(iii)前記試料中のproANPレベル、全血量レベル、前記試料中のヘマトクリットレベル、赤血球量レベル、血漿量レベル、全尿量レベル、前記試料中のアンジオテンシンIIレベル、前記対象の障害又は医学的状態、前記試料中のコルチゾールレベル、血中の内皮幹細胞数、前記試料中のカテコールアミンレベル、前記対象の全血イオノグラム、前記対象の尿イオノグラム、前記対象の血液浸透圧、前記対象の尿浸透圧、血糖、前記試料中のプロエンドセリン-1(pro-ET-1)レベル、前記試料中のCT-proAVPレベル、前記試料中のアルドステロンレベル、前記試料中の乳酸塩レベル、前記対象の急性生理学及び慢性健康評価II(APACHE II)、前記対象の世界脳神経外科連盟(WFNS)グレード分類、及び前記対象のグラスゴーコーマスケール(GCS)からなる群から選択される前記対象の少なくとも1つのマーカー及び/又はパラメータを決定するステップが決定されること」との記載を、「(iii)前記試料中のproADMレベル、全血量レベル、前記試料中のヘマトクリットレベル、赤血球量レベル、血漿量レベル、全尿量レベル、前記試料中のアンジオテンシンIIレベル、前記対象の障害又は医学的状態、前記試料中のコルチゾールレベル、血中の内皮幹細胞数、前記試料中のカテコールアミンレベル、前記対象の全血イオノグラム、前記対象の尿イオノグラム、前記対象の血液浸透圧、前記対象の尿浸透圧、血糖、前記試料中のプロエンドセリン-1(pro-ET-1)レベル、前記試料中のCT-proAVPレベル、前記試料中のアルドステロンレベル、前記試料中の乳酸塩レベル、前記対象の急性生理学及び慢性健康評価II(APACHE II)、前記対象の世界脳神経外科連盟(WFNS)グレード分類、及び前記対象のグラスゴーコーマスケール(GCS)からなる群から選択される前記対象の少なくとも1つのマーカー及び/又はパラメータを決定するステップ」と訂正する。 (訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項7の記載を削除する。 (訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項8における「請求項1~7のいずれか一項に」との記載を、「請求項1~6のいずれか一項に」と訂正する。 (訂正事項7) 特許請求の範囲の請求項9における「請求項1~8のいずれか一項に」との記載を、「請求項1~6および8のいずれか一項に」と訂正する。 (訂正事項8) 特許請求の範囲の請求項10における「請求項1~9のいずれか一項に」との記載を、「請求項1~6、8および9のいずれか一項に」と訂正する。 (訂正事項9) 特許請求の範囲の請求項11の記載を削除する。 (訂正事項10) 特許請求の範囲の請求項12の記載を削除する。 (訂正事項11) 特許請求の範囲の請求項13の記載を削除する。 (訂正事項12) 特許請求の範囲の請求項14の記載を削除する。 (訂正事項13) 特許請求の範囲の請求項15の記載を削除する。 (2)訂正の単位について 訂正前の請求項1及び3ないし15について、請求項3ないし15は訂正事項1の訂正対象である請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、請求項1及び3ないし15は一群の請求項である。 また、訂正前の請求項2ないし15について、請求項3ないし15は訂正事項2の訂正対象である請求項2を直接的又は間接的に引用しているから、請求項2ないし15は一群の請求項である。 そして、請求項3ないし15は、二つの一群の請求項で共通しているから、これらの請求項を含む両一群の請求項は組み合わされ、請求項1ないし15は一群の請求項である。 したがって、訂正事項1ないし13は、一群の請求項〔1-15〕に対して請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項1のうち、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び/又は血球量状態の決定を補助する方法であって」を、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって」とする訂正(以下「訂正事項1A」という。)は、決定する項目について、訂正前の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び血球量状態それぞれの単独又はそれらの任意の組合せの選択肢から、「血球量状態」の単独及び「血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項1のうち、「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、重篤な血球量状態及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」を、「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」とする訂正(以下「訂正事項1B」という。)は、判定結果の選択肢から「重篤な血球量状態」の単独及び「重篤な血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項1のうち、「(ii)前記参照レベルと比較したときに同一又は同様のレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が同一若しくは同様の体液バランス、及び/又は同一若しくは同様の塩分バランスを有することを示し;前記同一の体液バランス及び/又は塩分バランスが、前記対象が正常な細胞外液量状態及び/又は正常な血球量状態を有することを示し」を、「(ii)前記参照レベルと比較したときに同一又は同様のレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が同一若しくは同様の体液バランス、及び/又は同一若しくは同様の塩分バランスを有することを示し;前記同一の体液バランス及び/又は塩分バランスが、前記対象が正常な細胞外液量状態を有することを示し」とする訂正(以下「訂正事項1C」という。)は、判定結果の選択肢から「正常な血球量状態」の単独及び「正常な血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (エ)訂正事項1のうち、「(iii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が負の体液バランス及び/又は負の塩分バランスを有することを示す、方法」を、「(iii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が負の体液バランス及び/又は負の塩分バランスを有することを示し、前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法」とする訂正(以下「訂正事項1D」という。)は、「前記試料」を「血液、血漿、又は血清」に特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1のうち、訂正事項1AないしCは、択一的な選択肢の一部を削除するものであるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項1AないしCは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項1のうち、訂正事項1Dは、本件特許明細書等の「【請求項7】 前記試料が血液、血漿、血清又は尿である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。」及び「【0104】 好ましくは、本発明との関連において試料は血液試料、より好ましくは血清試料、又は最も好ましくは血漿試料である。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 また、訂正事項1Dは、「前記試料」を「血液、血漿、又は血清」に特定して限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項1Dは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項2のうち、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び/又は血球量状態の決定を補助する方法であって」を、「対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって」とする訂正(以下「訂正事項2A」という。)は、決定する項目について、訂正前の細胞外液量状態、体液バランス、塩分バランス及び血球量状態それぞれの単独又はそれらの任意の組合せの選択肢から、「血球量状態」の単独及び「血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項2のうち、「(i)前記参照レベルと比較したときに同様のレベル、同一のレベル又は上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、重篤な血球量状態及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」を、「(i)前記参照レベルと比較したときに同様のレベル、同一のレベル又は上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し」とする訂正(以下「訂正事項2B」という。)は、判定結果の選択肢から「重篤な血球量状態」の単独及び「重篤な血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項2のうち、「(ii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正常な体液バランス、正常な塩分バランス、正常な細胞外液量状態及び/又は正常な血球量状態を有すること」を、「(ii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正常な体液バランス、正常な塩分バランス、及び/又は正常な細胞外液量状態を有すること」とする訂正(以下「訂正事項2C」という。)は、判定結果の選択肢から「正常な血球量状態」の単独及び「正常な血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (エ)訂正事項2のうち、「示す、方法」を、「示し、前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法」とする訂正(以下「訂正事項2D」という。)は、「前記試料」を「血液、血漿、又は血清」に特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項2のうち、訂正事項2AないしCは、択一的な選択肢の一部を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項2AないしCは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項2のうち、訂正事項2Dは、本件特許明細書等の「【請求項7】 前記試料が血液、血漿、血清又は尿である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。」及び「【0104】 好ましくは、本発明との関連において試料は血液試料、より好ましくは血清試料、又は最も好ましくは血漿試料である。」との記載に基づくものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 また、訂正事項2Dは、「前記試料」を「血液、血漿、又は血清」に特定して限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項2Dは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項3のうち、「重篤な血球量状態」を削除する訂正(以下「訂正事項3A」という。)は、判定結果の選択肢から「重篤な血球量状態」の単独及び「重篤な血球量状態」を含む組合せを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)訂正事項3のうち、「、正の塩分バランス」を削除する訂正(以下「訂正事項3B」という。)は、「、正の塩分バランス及び/又は正の塩分バランス」と選択肢中に「正の塩分バランス」が重複して記載されていたところ、一方の記載を削除して重複記載を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項3のうち、訂正事項3Aは、択一的な選択肢の一部を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項3Aは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項3のうち、訂正事項3Bは、明瞭でない記載を明瞭な記載にするものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項3Bは、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項4において「決定するステップが決定されること」との記載から「が決定されること」を削除して「決定するステップ」とし、その意味する内容を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5及び9ないし13について 訂正事項5及び9ないし13は、それぞれ特許請求の範囲の請求項7及び11ないし15を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項5及び9ないし13は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6ないし8について 訂正事項6ないし8は、それぞれ請求項8ないし10において選択的に記載を引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、訂正事項6ないし8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 3 独立特許要件 (1)訂正事項1、2、3A及び5ないし13について 本件においては、請求項1ないし15について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1、2、3A及び5ないし13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項3B及び4について 訂正事項3B及び4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、訂正事項3B及び4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 4 訂正の適否についてのまとめ 上記のとおり、訂正事項1ないし13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、請求項7及び11ないし15は削除された。そして、本件訂正後の請求項1ないし6及び8ないし10に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6及び8ないし10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって、前記対象から得られた試料においてプロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片のレベルを決定することを含み、 前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP、アドレノテンシン及び成熟アドレノメデュリンからなる群から選択され、 前記方法は、 (a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象又は参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ;又は (a2)前記proADM又はその断片のレベルを、以前の分析から得られた同じ対象のproADM又はその断片のレベルと比較するステップ を含み、 前記参照対象が健常対象であり、 (i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し; (ii)前記参照レベルと比較したときに同一又は同様のレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が同一若しくは同様の体液バランス、及び/又は同一若しくは同様の塩分バランスを有することを示し;前記同一の体液バランス及び/又は塩分バランスが、前記対象が正常な細胞外液量状態を有することを示し;及び/又は (iii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が負の体液バランス及び/又は負の塩分バランスを有することを示し、 前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法。 【請求項2】 対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法であって、前記対象から得られた試料においてプロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片のレベルを決定することを含み、 前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP、アドレノテンシン及び成熟アドレノメデュリンからなる群から選択され、 前記方法は、 (a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象又は参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ;又は (a2)前記proADM又はその断片のレベルを、以前の分析から得られた同じ対象のproADM又はその断片のレベルと比較するステップ を含み、 前記参照対象が、動脈瘤、多発外傷、脳傷害、及び/又は頭部傷害など、重篤な細胞外液量状態に関連することが公知の疾患又は障害に罹患している対象であり、又は前記参照対象が、ショックを伴う腹膜炎に罹患している術後対象であり、 (i)前記参照レベルと比較したときに同様のレベル、同一のレベル又は上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示し;及び/又は (ii)前記参照レベルと比較したときに低下したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正常な体液バランス、正常な塩分バランス、及び/又は正常な細胞外液量状態を有することを示し、 前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法 【請求項3】 前記試料中におけるproADM又はその断片の1nmol/L以上のレベルが、重篤な細胞外液量状態、及び/又は正の塩分バランスの指標である、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 (i)ヘモグロビンレベル及び/又は血清総タンパクレベルを決定するステップ; (ii)ボディマスインデックス、体重、年齢及び性別からなる群から選択される前記対象の少なくとも1つのパラメータを決定するステップ;及び/又は (iii)前記試料中のproANPレベル、全血量レベル、前記試料中のヘマトクリットレベル、赤血球量レベル、血漿量レベル、全尿量レベル、前記試料中のアンジオテンシンIIレベル、前記対象の障害又は医学的状態、前記試料中のコルチゾールレベル、血中の内皮幹細胞数、前記試料中のカテコールアミンレベル、前記対象の全血イオノグラム、前記対象の尿イオノグラム、前記対象の血液浸透圧、前記対象の尿浸透圧、血糖、前記試料中のプロエンドセリン-1(pro-ET-1)レベル、前記試料中のCT-proAVPレベル、前記試料中のアルドステロンレベル、前記試料中の乳酸塩レベル、前記対象の急性生理学及び慢性健康評価II(APACHE II)、前記対象の世界脳神経外科連盟(WFNS)グレード分類、及び前記対象のグラスゴーコーマスケール(GCS)からなる群から選択される前記対象の少なくとも1つのマーカー及び/又はパラメータを決定するステップ;又は (iv)前記対象のボディマスインデックス、前記対象の体重、前記対象の年齢、前記対象の性別、前記試料中のヘモグロビンレベル及び前記試料中の血清総タンパクレベルを決定するステップ を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 前記障害又は医学的状態が、浮腫、脳損傷、動脈瘤破裂後、頭部傷害、神経学的障害、多発外傷性傷害、手術後、臓器不全、無制御のリンパ液流活性、腎機能不全、心機能不全、乱れた体液バランスに関連する疾患からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 前記対象が脳傷害、動脈瘤、頭部傷害、多発外傷性傷害に罹患しており、及び/又は前記対象が手術後である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 前記proADM又はその断片のレベルがイムノアッセイによって決定され、前記アッセイが均一相又は不均一相で実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 前記対象の決定された細胞外液量状態が、対象の障害又は医学的状態のインビトロ診断、予後予測、リスク評価、リスク層別化、療法管理及び/又は手術管理を補助するために使用される、請求項1~6および8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 前記proADMの断片が、MR-proADMである、請求項1~6、8および9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 (削除) 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし15に係る特許に対して、当審が令和4年6月13日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)(サポート要件)血球量状態に係る特定事項を含み、対象から得られた試料として血液以外の体液又は組織を含む請求項1ないし15に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)(実施可能要件)発明の詳細な説明の記載は、血球量状態に係る特定事項を含み、対象から得られた試料として血液以外の体液又は組織を含む請求項1ないし15に記載された発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものでないから、その特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 したがって、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)(進歩性)請求項11ないし15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、請求項11ないし15に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第1号証:国際公開第2014/147153号(以下「甲1」という。) 2 当審の判断 (1)特許法第36条第6項第1号について 本件訂正により、請求項1ないし3において、血球量状態に係る特定事項は削除された。 また、本件訂正により、請求項1及び2において、対象から得られた試料は、「血液、血漿又は血清」に特定され、血液に係る試料のみとなった。 そして、請求項1又は2を直接的又は間接的に引用する請求項3ないし6及び8ないし10も同様に訂正され、請求項7及び11ないし15は削除された。 したがって、本件発明1ないし6及び8ないし10は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (2)特許法第36条第4項第1号について 本件訂正により、請求項1ないし3において、血球量状態に係る特定事項は削除された。 また、本件訂正により、請求項1及び2において、対象から得られた試料は、「血液、血漿又は血清」に特定され、血液に係る試料のみとなった。 そして、請求項1又は2を直接的又は間接的に引用する請求項3ないし6及び8ないし10も同様に訂正され、請求項7及び11ないし15は削除された。 したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし6及び8ないし10の実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものである。 (3)特許法第29条第2項について 本件訂正により請求項11ないし15は削除されたため、特許法第29条第2項の取消理由の対象となる請求項は存在しないものとなった。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について (1)申立人の特許異議申立理由 ア 細胞外液量状態の決定について 実施例1について、本件特許明細書段落0188には「細胞外液量の判定」がされた旨が記載されている。しかし、実施例1で実際に実施されたものは塩分(ナトリウム)と水分の流入流出評価のみである。つまり、「塩分バランス」と「体液バランス」がそれぞれ測定されているにすぎない。細胞外液量自体については実施例1のみならず、いずれの実施例において測定も評価もされてない。 実施例3では、MR-proADMは本質的に血球量と相関していないことが示されている。本件特許明細書段落0215には、MR-proADMについて、全血量のAUCが0.5967であり、血漿量のAUCが0.6277であり、マーカーの予測特性は弱く、ROC曲線のAUCは低かったと記載されている。 細胞外液量は、血球量と血漿と間質液量で構成され、血球量と血漿の合計は、全血量と称される。 MR-proADMは、血球、血漿及び全血量とは相関しない又は相関するとしても非常に弱い相関であることが実証されている。したがって、MR-proADMから「細胞外液量の状態」を決定できるという結論を導くことは不可能である。 したがって、対象の細胞外液状態の決定を含む本件特許発明1ないし15は、実施例により十分に裏付けられておらず、当業者が、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない範囲を含むものである。 よって、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 同様の理由により、本件特許明細書は、本件特許発明1ないし15の全体において対象の細胞外液状態の決定ができることを理解できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 対象について 請求項1では参照対象が健常対象であり、請求項2では参照対象が動脈瘤、多発外傷、脳傷害、及び/又は頭部傷害など、重篤な細胞外液量状態に関連することが公知の疾患又は障害に罹患している対象である旨が特定されているものの、MR-proADMを測定する対象については何らの特定もない。請求項6では、MR-proADMを測定する対象が脳傷害、動脈瘤、頭部傷害、多発外傷性傷害に罹忠しており、及び/又は前記対象が手術後である旨が特定されている。 一方、本件特許明細書の実施例にて実際にMR-proADM測定した対象から、慢性心不全の対象、妊娠中の対象、18歳未満の対象、輸液投与を受けてない対象は除外されている。 そして、そのような除外された対象についての試験結果は当然に示されていない。そのような対象を試験に含めると、研究データの信頼性が損なわれると発明者らが危惧した可能性が合理的に推測される。 甲第2号証として添付するPatino et al.,J Bras Pneumol.,2018,44(2),p.84(以下「甲2」という。)の第84頁左欄第2段落には以下のように記載されている。 「exclusion criteria are defined as features of the potential study participants who meet the inclusion criteria but present with additional characteristics that could interfere with the success of the study or increase their risk for an unfavorable outcome.(訳:除外基準は、採用基準は満たすが、研究成果の妨げとなり得る又は芳しくない結果のリスクを高め得るさらなる特徴を示す潜在的な研究参加者の特性として定義される。)」 また、甲第3号証として添付するChondrogiannis et al.,Journal of Biomedical Informatics,2017,69,p.10-23(以下「甲3」という。)の第13頁右欄第4段落には以下のように記載されている。 「Moreover, clinicians may not explicitly specify the target population characteristics, but implicitly by aiming at mitigating the factors contributing to an increase of the health risks for patients and/or negatively affecting the efficacy of the study, for example by "hiding" the drug effect and obscuring the analysis of the study data. Such criteria often serve as exclusion ones and may include specific disorders, not adequate organ function, cognitive dysfunction following specific treatment, life expectancy, etc.(訳:さらに、臨床医は、対象の母集団の特性を明示的に特定することはしないかもしれないが、患者の健康リスクの増加及び/又は研究の有効性への悪影響に寄与する要因を軽減する目的により、例えば薬物効果を「隠す」ことや研究データの分析を曖昧にすることにより、暗黙的に特定することがある。このような基準はしばしば除外基準として機能し、除外基準としては、特定の障害、適切な臓器機能の欠如、特定の治療後の認知機能障害、平均余命などが含まれうる。)」 つまり、研究結果を「希釈」する蓋然性が高い患者を試験から除外することは、当該分野における技術常識である。 してみると、発明者らは、上記除外された対象、例えば慢性心不全の対象については、本件特許発明の効果が得られないとの認識の上、意図的に除外したと合理的に推測される。 しかしながら、本件特許発明1ないし15のいずれにおいても、MR-proADMを決定される対象は、特定の患者グループに限定されているわけではなく、ありとあらゆる患者グループを包含する。 したがって、本件特許発明1ないし15が、実施例に記載の試験から除外された患者グループ、即ち、輸液が投与されない状況(例えば、心不全など)、妊娠中、18歳未満の対象には適用できるとはいえない。よって、本件特許発明1ないし15は、特定の患者グループ、少なくとも、慢性心不全を有さず妊娠中でもない18歳以上の輸液投与を受けた対象に限定する必要がある。 以上のとおり、慢性心不全の対象、妊娠中の対象、18歳未満の対象、輸液投与を受けてない対象までをも含む本件特許発明1ないし15は、実施例により十分に裏付けられておらず、当業者が、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない範囲を含むものである。 よって、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 さらに、同様の理由により、本件特許明細書は、本件特許発明1ないし15の全体において慢性心不全の対象、妊娠中の対象、18歳未満の対象、輸液投与を受けてない対象について評価ができることを理解できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ウ 試料について 請求項1及び2では、対象から得られた試料におけるMR-proADM又はその断片のレベルを決定することを含んでいるが、MR-proADMを測定する試料については何らの特定もない。請求項7では、試料が血液、血漿、血清又は尿である旨が特定されている。 一方、本件特許明細書の実施例では、血漿におけるマーカーMR-proADMを測定することにより試験を行っている。明細書段落0191では、「各患者について、D2、D5及びD7に血漿バイオマーカーを調べた。」と記載されている。さらに、明細書段落0192表3では、全ての「血漿マーカー」が記載されている。 しかしながら、血漿以外の試料を用いてMR-proADMを分析したことは記載されていない。 また、本件特許発明の血漿等の血液由来試料及び非血液由来試料を含むあらゆる試料においてMR-proADMが、対象の「細胞外液量状態」、「体液バランス」、「塩分バランス」、「血球量状態」の決定に有効利用できるとは考えられない。したがって、係る実験から、あらゆる試料、少なくとも尿、髄液、組織などの非血液由来試料にまで、発明の範囲を拡張ないし一般化できるとは考えられない。 以上のとおり、対象の血液由来試料及び非血液由来試料のいずれも含むあらゆる試料の評価を含む本件特許発明1ないし15は、実施例により十分に裏付けられておらず、当業者が、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない範囲を含むものである。 よって、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 さらに、同様の理由により、本件特許明細書は、本件特許発明1ないし15の全体において対象の血液由来試料及び非血液由来試料のいずれも含むあらゆる試料を評価ができることを理解できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)当審の判断 ア 細胞外液量状態の決定について (ア)申立人が主張するように、本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、MR-proADMの測定値と細胞外液量の測定値とから、MR-proADM濃度と細胞外液量状態の相関関係を確認したことは記載されていない。 (イ)しかしながら、発明の詳細な説明の以下の記載から把握されるように、発明の詳細な説明には、MR-proADM濃度が塩分バランス及び体液バランスと相関関係を有することが記載されている。 「【0210】 試験した全てのバイオマーカーの中で、本発明者らは、2つのバイオマーカー、レニン及びMR pro-ADMのみがΔNa+及び/又はΔH2Oと統計的関係を有することを見出した(表6)。MR pro-ADMとΔNa+及び/又はΔH2Oとの間の関係は極めて強く、且つ臨床状況のタイプと完全に独立しているように見える。」 「【0213】 MR-proADMが塩分バランス及び体液バランス(ΔNa+及びΔH2O)を予測できる許容可能な確率が分かったため、MR-proADM及び他の単純共変量でΔNa+及び/又はΔH2Oの予測スコアを構築した。ΔNa+及び/又はΔH2Oについて、最良の予測モデルには、強い方のパラメータから最も弱いパラメータへの順に、MR-proADM、D0におけるBMI、D0における体重、年齢、性別、[Hb]、IGS及びD0における体液摂取量が必要である。このモデルからMR-proADMを取り除くと予測力が低下する。これらの2つのモデルは独立に分散の約70%を説明することができ、ΔNa+について88%及びΔH2Oについて92%のAUCの良好な判別力を有する。」 「【0226】 ショック後の過負荷は重要であり、過小評価されている生存因子である。正の塩分バランスは、実際、重要な予後予測マーカーとして報告されている。血液量は血液増量に自動的に結び付くものではない。MR-proADMは、重篤疾患患者において急性炎症状況後の最初の1週間の塩分及び体液バランスを評価するための興味深いサロゲートである。高頻度の過剰な血液増量の抑制が提案される。」 「【0243】 3 結果及び考察 3.1 体液バランス MR.proADMはΔH2Oの予測に関して良好な性能を示す。MR.proADM自体は良好な分類力を実現し(AUC≒0.82)(図2A)、応答変数は35%の分散である。 【0244】 ΔH2Oの選択手順を実施した。重要度分析から、以下の患者及び1日共変量の重要度が指摘された:bmi.D0、体重.D0、年齢、性別、BMI、総タンパク、Hb、液体摂取量.D0(体液.D0)、患者群(群)。バイオマーカーのMR.proADMは、最も高い重要度を実現した。更なるバイオマーカーが役割を果たすように見える:Pro.Endo、CT.proAVP、EPO、血清総タンパク及びHb。 【0245】 3.2塩分バランス ΔH2Oについて観察されたとおり、MR.proADMが良好な分類力を有し(AUC≒0.79)、r2は0.42である(図2B)。 【0246】 実施した重要度分析から、ΔH2Oについての観察と同じマーカー/パラメータが指摘され、違いはD0におけるナトリウム摂取量(Na.D0)がD0における液体摂取量(体液.D0)に代わったことであった。 【0247】 4.結論 ΔH2O及びΔNaの予測に関するMR-proADMの鍵となる役割が明確に確認された。それにも関わらず、MR-proADMを更なるマーカー及び/又はパラメータと組み合わせた場合、体液及び/又は塩分バランスの予測が改善され得る。」 (ウ)そして、発明の詳細な説明には、細胞外液量と水分バランス及び塩分バランスとの関係について、以下の記載がある。当該記載によれば、体液バランス及び塩分バランスがそれぞれ細胞外液量と相関することが、本件特許に係る出願の優先日前において公知であり、本件特許明細書等においては、体液バランス及び塩分バランスそれぞれと細胞外液量との当該公知の相関に基づいて、MR-proADM濃度と細胞外液量状態との相関関係を求めたことが理解できる。 「【0032】 添付の実施例では、塩分バランス及び/又は体液バランスを計算して細胞外液量の変化又は変動を推定する。体液バランス及び/又は塩分バランスは細胞外液量と相関することが知られている(Charra etal.,2004)。従って、体液バランス及び/又は塩分バランスが細胞外液量状態の変化を決定する。」 「【0101】 本発明の好ましい態様において、本明細書で提供される方法は、対象の細胞外液量を決定し、ここで、本方法は、前記対象から得られた試料においてマーカーproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMのレベルを決定することを含み、このproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMのレベルに基づいて体液バランスが決定され、前記体液バランスが細胞外液量状態を決定し、ここで、対象のproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMの上昇したレベルは、前記対象が正の体液バランスを有することを示し、MR-proADMの上昇したレベルは少なくとも1nmol/Lであり、前記レベルは前記正の体液バランスが少なくとも約4Lであることを示し、及び前記正の体液バランスは、前記対象が重篤と見なされる細胞外液量状態を有することを示す。 【0102】 好ましい態様において、本明細書で提供される方法は、対象の細胞外液量を決定し、ここで、本方法は、前記対象から得られた試料においてマーカーproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMのレベルを決定することを含み、このproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMのレベルに基づき、塩分バランスが決定され、前記塩分バランスが細胞外液量状態を決定し、対象のproADM又はその断片、好ましくはMR-proADMの上昇したレベルは、前記対象が正の塩分バランスを有することを示し、proADM又はその断片、好ましくはMR-proADMの上昇したレベルは少なくとも1nmol/Lであり、前記レベルは、前記正の塩分バランスが少なくとも約36gであることを示し、及び前記正の塩分バランスは、前記対象が重篤と見なされる細胞外液量状態を有することを示す。」 「【0187】 細胞外液量の判定 毎日塩分及び体液バランスを計算して細胞外空間の変化を推定した。毎朝塩分及び水分に関して前日の全流入-流出評価を行った。正確な塩分及び水分の寄与を記録した。」 「【0204】 全ての患者を調べた。細胞外液量の増加は、各臨床状況についてD2及びD7における塩分の変化(ΔNa+)及び水分の変化(ΔH2O)として報告される。」 (エ)そうすると、発明の詳細な説明には、測定により求めたMR-proADM濃度と体液バランス及び塩分バランスそれぞれとの相関関係と、公知の体液バランス及び塩分バランスそれぞれと細胞外液量との相関関係に基づいて、間接的にMR-proADM濃度と細胞外液量状態との相関関係を求めたことが記載されているといえる。 したがって、細胞外液量状態の決定に係る特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の特許異議申立理由によっては、本件の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 イ 対象について (ア)本件特許明細書等の【0183】には、「除外基準は、年齢<18歳、妊娠及び慢性心不全(NYHA II又はIV)であった。」と、18歳未満の患者、妊娠中の患者及び慢性心不全の患者を、対象から除外したことが記載されている。また、【0186】及び【0187】に輸液に関する記載はあるものの、輸液投与を受けていない対象を除外したことは明記されていない。 (イ)申立人が甲2及び甲3の記載を根拠として主張するように、一般に、除外された対象に係るデータ特性が、除外されない対象のデータ特性と必ずしも一致しない傾向があるとしても、本件特許明細書等で除外された対象に係るMR-proADM濃度の特性が、除外されない対象のMR-proADM濃度の特性と全く異なる特性を有するという技術常識はない。 そうすると、除外された対象について、除外されない対象と比較して精度の差こそあるとしても、MR-proADMの測定値から体液バランス及び塩分バランスを予測できないとはいえない。 したがって、対象に係る特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の特許異議申立理由によっては、本件の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 ウ 試料について 本件訂正により、請求項1及び2において、試料は血液、血漿又は血清に特定された。 本件特許明細書の実施例では、血漿を試料としている。 血液は、血球と血漿からなる。また、血清は、血漿から凝固因子を除去したものに相当する。そして、血球の存在や凝固因子の不存在が、MR-proADM濃度と体液バランス及び塩分バランスそれぞれとの相関関係について、血漿の場合と比較して、異なる傾向を示す程度の影響を与えるという技術常識はない。 したがって、試料に係る特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の特許異議申立理由によっては、本件の請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 2 特許法第29条第2項について (1)申立人の特許異議申立理由 請求項1ないし8及び10ないし15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲1に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)当審の判断 ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 (ア)甲1には、以下の記載がある。 (甲1-ア)「Nothing is known about the association of circulating ADM or related peptide levels as pro-ADM or fragments thereof and the requirements for fluid resuscitation and vasopressors in patients developing shock. This is an unmet medical need as vasopressors are usually given very late when the condition of the patient is very serious. It is an unmet medical need to identify those patients in need of fluid resuscitation and vasopressors before the condition of the patient is very serious. It is an unmet medical need to predict the requirement for fluid resuscitation and vasopressor therapy earlier than by blood pressure measurement applying the cut-off value of 65 mm Hg, as recommended in the guidelines [21]. If blood pressure fells, this leads to diminished oxygen supply, organ dysfunction and death. It is thus an unmet need to early identify patients who are at risk to develop a blood pressure decline. If such patients could be identified earlier, other, e.g. higher cut-off values for mean arterial pressure could be applied to initiate fluid resuscitation and vasopressor therapy. Higher threshold-levels are <70 mmHg, preferably <75 mmHg. This meant that therapy starts already above 65 mmHg. Subject matter of the present invention is an in vitro method for identifying a subject in need of fluid resuscitation or administration of a vasopressor comprising the following steps: ・Determining the level of proADM and/or fragments thereof having at least 6 amino acids in a bodily fluid of said subject ・Correlating said level with the need of said subject or patient for fluid resuscitation or administration of a vasopressor wherein said subject or patient is identified as having such a need if the level of pro ADM and/or fragments thereof having at least 6 amino acids in the bodily fluid of said subject is above a threshold. In one embodiment of the methods according to the invention the subject has a mean arterial pressure > 65 mm Hg. Further, said subject may have a mean arterial pressure < 75 mmg Hg, in another embodiment < 70 mmg Hg. In one embodiment of the invention said method is a method for the early identification of fluid resuscitation or administration of a vasopressor wherein earlier means earlier than by blood pressure measurement applying a cut-off value of 65 mmg Hg or before the blood pressure dropped to 65 mmg Hg. A bodily fluid according to the present invention is in one particular embodiment a blood sample. A blood sample may be selected from the group comprising whole blood, serum and plasma. In a specific embodiment of the invention said pro ADM and/or fragments thereof having at least 6 amino acids is/are selected from the group comprising: SEQ ID No. 1 (proADM): 164 amino acids (22 - 185 of preproADM) ARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVKRYRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL SEQ ID No. 2 (Proadrenomedullin N-20 terminal peptide): Peptides 22 - 41 ARLDVASEF RKKWNKWALS R SEQ ID No. 3 (MidregionalproAdrenomedullin, MR-proADM): Peptides45 - 92 ELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RV SEQ ID No. 4 (mature Adrenomedullin (mature ADM); amidated): Peptides 95 - 146 - CONH2 YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGY - CONH2 SEQ ID No. 5 (Adrenomedullin 1-52-Gly (ADM 1-52-Gly)): Peptides 95 - 147 YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYG SEQ ID No. 6 ( C-terminal proAdrenomedullin, CT-proADM): Peptides 148 - 185 RRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL In a specific embodiment of the invention said proADM and/or fragments thereof having at least 6 amino acids is/are selected from the group comprising mature ADM (SEQ ID No. 4) and/or mature ADM 1-52-Gly (SEQ ID No. 5) and MR-proADM (SEQ ID No. 3) and CT-proADM (SEQ ID No. 6). In a specific embodiment of the invention either the level of mature ADM (SEQ ID No. 4) and/or mature ADM 1-52-Gly (SEQ ID No. 5) - immunoreactivity or the level of MR-proADM (SEQ ID No. 3) immunoreactivity or the level of CT-proADM (SEQ ID No. 6) immunoreactivity is determined and correlated with the need of said patient for fluid resuscitation or administration of a vasopressor wherein said patient is identified as having such a need if the level of mature ADM (SEQ ID No. 4) and/or mature ADM 1-52-Gly (SEQ ID No. 5) - immunoreactivity or the level of MR-proADM (SEQ ID No. 3) immunoreactivity or the level of CT-proADM (SEQ ID No. 6) immunoreactivity in the bodily fluid of said subject is above a threshold.」(4頁21行~7頁9行) (当審訳:循環ADM又はpro-ADM若しくはその断片のような関連ペプチドのレベルと、ショックを発症している患者における輸液蘇生及び昇圧剤の必要要件との関係については、何も知られていない。患者の状態が非常に重篤である場合に、昇圧剤の投与が通常は非常に遅れていることは、満たされていない医学的要求である。患者の状態が非常に重篤になる前に輸液蘇生及び昇圧剤を必要とする患者を確定することは、満たされていない医学的要求である。ガイドライン[21]が推奨するカットオフ値65mmHgを適用する血圧測定によるよりも早く、輸液蘇生及び昇圧剤療法の必要性を予測することは、満たされていない医学的要求である。血圧が降下したならば、これは、減少した酸素供給、臓器不全及び死亡につながる。したがって、血圧降下を発症するリスクのある患者を早期に確定することは、満たされていない要求である。そのような患者がより早く確定されたならば、輸液蘇生及び昇圧剤療法を開始するために、平均動脈圧について、別の、例えばより高いカットオフ値を適用することができる。より高い閾値レベルとは、<70mmHg、好ましくは<75mmHgである。これは、65mmHgを上回る時点で既に治療が始まることを意味する。 本発明の主題は、輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって、以下の工程を含む。 ・該対象の体液中の、proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルを決定する工程。 ・該レベルを、該対象又は患者の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程であって、ここで該対象又は患者は、該対象の体液中のproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される工程。 本発明の方法の一実施態様において、対象は、平均動脈圧>65mmHgを有する。さらに、該対象は、平均動脈圧<75mmgHgを、別の実施態様においては<70mmgHgを有する。 本発明の一実施態様において、該方法は、輸液蘇生又は昇圧剤投与の早期確定の方法であり、ここで、より早期とは、カットオフ値65mmgHgを適用する血圧測定によるよりも早いこと、又は血圧の65mmgHgへの低下以前を意味する。 本発明の体液は、特定の実施態様において、血液試料である。血液試料は、全血、血清及び血漿を含む群から選択され得る。 本発明の具体的実施態様において、該proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片は、下記の配列からなる群から選択される。 配列番号1(proADM):164個のアミノ酸(preproADMの22-185) ARLDVASEF RKKWNKWALS RGKRELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RVRYRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYGRRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL 配列番号2(プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド):ペプチド22-41 ARLDVASEF RKKWNKWALS R 配列番号3(中央領域プロアドレノメデュリン、MR-proADM):ペプチド45-92 ELRMSS SYPTGLADVK AGPAQTLIRP QDMKGASRSP EDSSPDAARI RV 配列番号4(成熟アドレノメデュリン(成熟ADM);アミド化):ペプチド95-146-CONH2 YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGY-CONH2 配列番号5(アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM 1-52-Gly)):ペプチド95-147 YRQSMN NFQGLRSFGC RFGTCTVQKL AHQIYQFTDK DKDNVAPRSK ISPQGYG 配列番号6(C末端プロアドレノメデュリン、CT-proADM):ペプチド148-185 RRR RRSLPEAGPG RTLVSSKPQA HGAPAPPSGS APHFL 本発明の具体的実施態様において、該proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片は、成熟ADM(配列番号4)及び/又は成熟ADM1-52-Gly(配列番号5)及びMR-proADM(配列番号3)及びCT-proADM(配列番号6)からなる群から選択される。 本発明の具体的実施態様において、成熟ADM(配列番号4)及び/若しくは成熟ADM1-52-Gly(配列番号5)の免疫反応性のレベル、又はMR-proADM(配列番号3)の免疫反応性のレベル、又はCT-proADM(配列番号6)の免疫反応性のレベルのいずれかが決定され、該患者の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関され、ここで該患者は、該対象の体液中の成熟ADM(配列番号4)及び/若しくは成熟ADM1-52-Gly(配列番号5)の免疫反応性のレベル、又はMR-proADM(配列番号3)の免疫反応性のレベル、又はCT-proADM(配列番号6)の免疫反応性のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される。) (甲1-イ)「In one embodiment of the invention the concentration of ADM or fragments thereof measured in the sample is in the range between 10-500 pg/ml in plasma or blood. The ADM levels of the present invention or proADM levels or fragments thereof, respectively, have been determined with the described ADM assay, as outlined in the examples (or pro ADM or fragments thereof assays, respectively). The above mentioned values might be different in other ADM assays (or proADM or fragments thereof assays, respectively), depending upon their way of calibration. The above mentioned values shall apply for such differently calibrated ADM assays accordingly, taking into account the differences in calibration. ADM assays could be calibrated by correlation and adjustment via their normal ranges (healthy population). (or proADM or fragments thereof assays, respectively) Alternatively, commercially available control samples could be used for adjustment of different calibrations (ICI Diagnostics, Berlin, Germany). With the described ADM assay, the median of of a normal population has been determined to be 24.7 pg/mL. In a specific embodiment of the invention a threshold for plasma ADM of 90 pg/ml, preferably 70 pg/ml is applied. In a specific embodiment of the invention a threshold for plasma MR-proADM of 0.9 nmol/L, preferably 0.7 nmol/L is applied In a specific embodiment of the invention a threshold for plasma CT-proADM of 1.0 nmol/L, preferably 0.8 nmol/L is applied. If the level of plasma ADM or plasma MR-proADM or plasma CT-proADM is above said threshold the person might be in need of treatment with a vasopressor. In a specific embodiment of the invention said sample is selected from the group comprising human citrate plasma, heparin plasma, EDTA plasma, whole blood. The subject that may be in need of fluid resuscitation or treatment with a vasopressor may suffer from a condition selected from the group comprising: patients at risk to develop physiological shock states, as described in more detail below, but also infections, SIRS, sepsis, heart failure, cardiopulmonary arrest, postoperative cardiac surgery, right ventricular infarction, bradyarrhythmias, polytrauma, burns, kidney injury. This type of shock can be caused by: ・Severe bleeding. ・Pulmonary embolus (a blood clot in the lungs). ・Severe vomiting and diarrhoea. ・Spinal injury. ・Poisoning. There are also specific types of physiological shock, with very particular symptoms.」(11頁18行~13頁1行) (当審訳:本発明の一実施態様において、試料中で測定されたADM又はその断片の濃度は、血漿又は血液中で10~500pg/mlの範囲である。 本発明のADMレベル又はproADMレベル又はその断片のレベルは、それぞれ実施例に概略されるような、記載されたADMアッセイ(又はproADMアッセイ若しくはその断片アッセイのそれぞれ)により決定される。上述の値は、それらの較正の方式に応じて、他のADMアッセイ(又はproADMアッセイ若しくはその断片アッセイのそれぞれ)とは異なることがある。したがって上述の値は、較正における差異を考慮し、当該異なる方式で較正されたADMアッセイに適用されなければならない。ADMアッセイ(又はproADMアッセイ若しくはその断片アッセイのそれぞれ)は、それらの正常範囲(健常集団)による相関及び調節により較正されることができる。あるいは、市販の対照試料を、異なる較正の調節に使用することができる(ICI Diagnostics社、ベルリン、独国)。 記載されたADMアッセイにより、正常集団の中央値は、24.7pg/mLであると決定されている。 本発明の具体的実施態様において、血漿ADM閾値90pg/ml、好ましくは70pg/mlが適用される。 本発明の具体的実施態様において、血漿MR-proADM閾値0.9nmol/L、好ましくは0.7nmol/Lが適用される。 本発明の具体的実施態様において、血漿CT-proADM閾値1.0nmol/L、好ましくは0.8nmol/Lが適用される。 血漿ADM又は血漿MR-proADM又は血漿CT-proADMのレベルが、該閾値を上回る場合、その対象は、昇圧剤による治療を必要とし得る。 本発明の具体的実施態様において、該試料は、ヒトクエン酸血漿、ヘパリン血漿、EDTA血漿、全血を含む群から選択される。 輸液蘇生又は昇圧剤による治療が必要であり得る対象は、以下を含む群から選択される状態に罹患しているかもしれない:以下により詳細に説明する生理的ショック状態、更に、感染症、SIRS、敗血症、心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈、多発性外傷、火傷、腎損傷なども発症するリスクのある患者。 この型のショックは、以下により引き起こされ得る: ・重度の出血。 ・肺塞栓(肺内の血栓)。 ・重度の吐気及び下痢。 ・脊髄損傷。 ・中毒。 また、非常に特定の症状を伴う、生理的ショックの具体的型も存在する。) (甲1-ウ)「Vasopressors and inotropes are clinically applied to treat and prevend various physiological shock types, but also cardiovascular diseases (congestive heart failure, cardiopulmonary arrest, postoperative cardiac surgery, right ventricular infarction, bradyarrhythmias) [7] Since blood pressure is always monitored in patients that present in a critical condition, from a clinical point of view, patients with values above the respective thresholds e.g. high ADM (>70pg/ml) without vasopressor need at presentation should be vasopressor treated by adapting the points of decision from <66 mmHg MAP to e.g. <75 mmHg aiming earlier support of circulation to protect patient from low blood pressure associated organ dysfunctions and subsequent high mortality. Using this rule for patients >70 pg/ml ADM and treating with vasopressors at MAP <=75 mmHg, patients (Group 3) would be treated in average 1,6 days before standard of care treatment (<=66 mmHg). Thus, in a specific embodiment of the present invention said patient is identified as having a need of administration of a vasopressor if the level of proADM and/or fragments thereof having at least 6 amino acids in the bodily fluid of said subject is above a threshold and if the patient has a </=75 mmHg MAP but preferably >66 mmHg, more preferably >70 mmHg MAP. In a specific embodiment of the invention a threshold for plasma ADM of 90 pg/ml, preferably 70 pg/ml is applied and/or the patient has a <=/75 mmHg MAP but preferably >66 mmHg, more preferably >70 mmHg MAP. In a specific embodiment of the invention a threshold for plasma MR-proADM of 0.9 nmol/L, preferably 0.7 nmol/L is applied and/or the patient has a </=75 mmHg MAP but preferably >66 mmHg, more preferably >70 mmHg MAP. In an specific embodiment of the invention a threshold for plasma CT proADM of 1.0 nmol/L preferably 0.8 nmol/Lis applied and/ or the patient has a </=75 mmHg MAP but preferably >66 mmHg, more preferably >70 mmHg MAP. If the level of plasma ADM or plasma MR-proADM or plasma CT proADM is above said threshold and/or if the patient has a </=75 mmHg MAP but preferably >66 mmHg, more preferably >70 mmHg MAP the person might be in need of treatment with a vasopressor. Fluid replacement or fluid resuscitation is the medical practice of replenishing bodily fluid lost through sweating, bleeding, fluid shifts or other pathologic processes as above described. Fluids can be replaced via oral administration (drinking), intravenous administration, rectally, or by hypodermoclysis, the direct injection of fluid into the subcutaneous tissue. Fluids administered by the oral and hypodermic routes are absorbed more slowly than those given intravenously. Oral rehydration therapy (ORT) is a simple treatment for dehydration associated with diarrhea, particularly gastroenteritis/gastroenteropathy, such as that caused by cholera or rotavirus. ORT consists of a solution of salts and sugars which is taken by mouth. In severe dehydration, intravenous fluid replacement is preferred, and may be lifesaving. It is especially useful where there is depletion of fluid both in the intracellular space and the vascular spaces. Fluid replacement is also indicated in fluid depletion due to any of the above described conditions.」(15頁5行~16頁16行) (当審訳:昇圧剤及び変力作用薬は、様々な型の生理的ショックのみではなく、心臓血管疾患(うっ血性心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈)についても、治療及び予防するために、臨床適用される[7]。 臨床の観点から、危篤状態の患者においては、血圧は常にモニタリングされるので、プレゼンテーションでは昇圧剤を必要としないが、各閾値を上回る値の患者、例えば高ADM(>70pg/ml)の患者は、臓器不全及びそれに続く高死亡率に関連した低血圧から患者を保護するために、循環をより早く支援する目的で、決定点をMAP<66mmHgPから例えば<75mmHgに適合させることにより、昇圧剤治療されるべきである。ADM>70pg/mlの患者についてこの規則を用い、MAP≦75mmHgで昇圧剤により治療することにより、患者(第3群)は、標準のケア処置(≦66mmHg)よりも平均1.6日前に、治療されるであろう。 したがって、本発明の具体的実施態様において、患者の体液中のproADM及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するその断片のレベルが閾値を上回り、かつ、該患者が、MAP≦75mmHgであるが、好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する場合に、該患者は、昇圧剤投与の必要性を有するものとして、確定される。 本発明の具体的実施態様において、血漿ADMの閾値90pg/ml、好ましくは70pg/mlが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHgだが、好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する。 本発明の具体的実施態様において、血漿MR-proADMの閾値0.9nmol/L、好ましくは0.7nmol/Lが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHgだが、好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する。 本発明の具体的実施態様において、血漿CT proADMの閾値1.0nmol/L、好ましくは0.8nmol/Lが適用され、及び/又は患者は、MAP≦75mmHgだが、好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する。 血漿ADM又は血漿MR-proADM又は血漿CT proADMのレベルが、該閾値を上回り、及び/又は患者が、MAP≦75mmHgだが、好ましくはMAP>66mmHg、より好ましくは>70mmHgを有する場合、該患者は、昇圧剤による治療が必要である。 補液又は輸液蘇生は、発汗、出血、体液移動、又は、上述のような他の病理学的プロセスにより失われた体液を補充する医療行為である。体液は、経口投与(飲料)、静脈内投与、経直腸的に、又は皮下組織への液体の直接注射である皮下注入により、補給することができる。経口及び皮下経路により投与される液体は、静脈内に投与される液体よりも、より緩徐に吸収される。経口補液療法(ORT)は、コレラ又はロタウイルスにより引き起こされるような、下痢、特に胃腸炎/胃腸障害を伴う脱水のための簡単な処置である。ORTは、経口摂取される塩及び糖質の溶液からなる。 重度の脱水において、静脈内補液が好ましく、かつ救命し得る。これは、細胞内腔及び血管腔の両方の内部の体液が枯渇した場合に、特に有用である。 補液はまた、上述の状態のいずれかによる、体液枯渇においても適応される。) (甲1-エ)「Example 5 Sensitivity The goal of assay sensitivity was to completely cover the ADM concentration of healthy subjects. ADM concentration in healthy subjects: Healthy subjects (n=100, average age 56 years) were measured using the ADM assay. The median value was 24.7 pg/ml, the lowest value 11 pg/ml and the 99th percentile 43 pg/ml. Since the assay sensitivity was 2 pg/ml, 100% of all healthy subjects were detectable using the described ADM assay. A commercial Assay was used to measure MR-proADM (BRAHMS MR-proADM KRYPTOR) (BRAHMS GmbH, Hennigsdorf, Germany) (ClinBiochem. 2009 May;42(7- 8):725-8. doi: 10.1016/j.clinbiochem.2009.01.002. Epub 2009 Jan 23. Homogeneous time-resolved fluoroimmunoassay for the measurement of midregionalproadrenomedullin in plasma on the fully automated system B.R.A.H.M.S KRYPTOR.Caruhel P, Mazier C, Kunde J, Morgenthaler NG, Darbouret B.) Example 6 Clinical Study 101 ED patients fulfilling the definition of sepsis (Dellinger RP, Levy MM, Carlet JM, Bion J, Parker MM, Jaeschke R, Reinhart K, Angus DC, Brun-Buisson C, Beale R et al: Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2008. Critical care medicine 2008, 36(l):296-327.) were subsequently hospitalized (average 5 days of hospitalization) and received a standard of care treatment. EDTA-plasma was generated from day 1 (ED presentation) and one sample each day during hospital stay. The time to freeze samples for later ADM-measurement was less than 4h. Patient characteristics are summarized in table 5 Table 5: [図:0001397183000001.jpg] [図:0001397183000002.jpg] 26.7% of all patients died during hospital stay and are counted as treatment non responder, 73.3% of all patients survived the sepsis and are counted as treatment responder. 66% off all patients presenting with sepsis had a non-normal ADM value >43 pg/ml (99thpercentile), indicating ADM not to be a marker for the infection. Results of Clinical Study Initial ADM is highly prognostic. We correlated the initial ADM value with the in hospital mortality and compared ADM with APACHE 2 score. ADM is highly prognostic for sepsis outcome (see fig. 2) and comparable to APACHE 2 score. There is a significant added information if ADM and APACHE 2 are combined (Fig. 3). ADM in treatment monitoring. Patients were treated based on standard of care treatments (table 5). The average hospitalization time was 5 days. ADM was measured each day in hospital (day 1= admission) and correlated to in hospital mortality (table 6). ADM changed during hospital stay and the change during time improved the prognostic value by 52% from initial Chi2 of 19,2 to 29,2 on day 5 . Using a simple cut off model at 70pg/ml of ADM showed a 68% risk of death for patients starting at ADM concentrations >70 pg/ml and remain all the hospital stay >70 pg/ml (treatment non-responder). Patients having all time an ADM value <70 pg/ml or developing from >70 pg/ml to <70 pg/ml had a mortality of only 11% (well treated/ treatment responder) and patients presenting with ADM values >70 pg/ml and reducing their ADM concentration during hospital treatment to values <70 pg/ml had a 0% mortality. There were no patients developing from <70 pg/ml to >70 pg/ml during hospital treatment. The average time needed to generate responder/nonresponder information for all patients was about 1 day. The >70 pg/ml - patients responding to treatment during hospital stay needed about 2 days to indicate treatment success by ADM. Table 6 [図:0001397183000003.jpg] Relation of Plasma ADM with Mean Arterial Pressure (MAP) and need for vasopressor therapy We found a significant correlation of ADM concentrations with mean arterial pressure (Fig 4) and with the requirement for vasopressor therapy to treat/prevent shock (Fig 5). We also investigated the temporal relationship of ADM concentrations and the requirement for vasopressor therapy (Fig 6): Of the 101 patients investigated, already 18 required vasopressor therapy at admission; the median ADM concentration for these patients at admission was 129 pg/mL. Patients, who never required vasopressor therapy during their hospital stay within the first four days after admission (n=79), had a median ADM concentration of 48.5 pg/mL. Importantly, patients, who required vasopressor therapy during their hospital stay later than on admission had elevated ADM levels already at admission (median 87.2 pg/mL), e.g.: the elevation of plasma ADM concentration was preceding the vasopressor therapy. In the plasma samples also MR-proADM, a stable fragment of the ADM precursor molecule, was measured. MR-proADM has been proposed as a surrogate marker for mature ADM release (Struck J, Tao C, Morgenthaler NG, Bergmann A: Identification of an Adrenomedullin precursor fragment in plasma of sepsis patients. Peptides 2004, 25(8): 1369- 1372, Morgenthaler NG, Struck J, Alonso C, Bergmann A: Measurement of midregional proadrenomedullin in plasma with an immunoluminometric assay. Clinical chemistry 2005, 51(10):1823-1829). A commercial MR-proADM Assay was used (BRAHMS MR-proADM KRYPTOR) according to the instructions of the manufacturer (BRAHMS GmbH, Hennigsdorf, Germany). Median levels for the day of admission were 0.63 nmol/L for patients not requiring vasopressor therapy, and 1.57 nmol/L for patients requiring vasopressor therapy. Concentrations of MR-proADM were significantly correlated with concentrations of ADM (r=0.79). Example 7 Cut off Analysis for Diagnosis and Prediction of Vasopressor need. Patient data see Example 6. The analysis was performed based on the first blood draw taken during emergency unit presentation of the sepsis patient. A cut off value of 70pg/ml was selected, <70pg/ml indicated a low risk of vasopressor need and >70pg/ml indicated a high risk of vasopressor need. Group 1 are patients not needed Vasopressors (MAP<=66 mmHg) nor received Vasopressors at presentation nor during a 4 day follow up period. Group 2 are Patients with Vasopressor need (MAP<=66 mmHg) or received Vasopressors at presentation. Group 3 are Patients without Vasopressor need nor received Vasopressors at presentation but developed Vasopressor need during a 4 day follow up period. Patients (n=2) with missing information about Vasopressor treatment were excluded. Table 7 [図:0001397183000004.jpg] Using a simple cut off analysis at 70 pg/ml 89,5% of all patients needing vasopressors at ED presention were identified by ADM (group 2). There were 20 patients >70 pg/ml having no vasopressor need at presentation (group 1/3), 15 (75%) did not developed vasopressor need during 4 day follow up and 5 (25%) of patients developed Vasopressor need during a 4 day follow up. In contrast, if ADM was <70 pg/ml at patients without vasopressor need at presentation (group 1/3), 56 (96,5%) did not developed vasopressor need during the 4 day follow up and only 2 (3,5%) developed a vasopressor need. The risk of developing vasopressor need during next 4 days of patients with an ADM value above 70 pg/ml is 7,1 times higher then for patients with ADM levels below 70 pg/ml (25% vs 3,5%). Since blood pressure is always monitored, from a clinical point of view, patients with high ADM (>70pg/ml) without vasopressor need at presentation should be vasopressor treated by adapting the points of decision from <66 mmHg MAP to e.g. <75 mmHg aiming earlier support of circulation to protect patient from low blood pressure associated organ dysfunctions and subsequent high mortality. Using this rule for patients >70pg/ml ADM and treating with vasopressors at MAP <=75 mmHg, patients (Group 3) would be treated in average 1,6 days before standard of care treatment (<=66mmHg). Similar results were obtained, when MR-proADM with a cut-off value of 0.78 noml/L(当審注:「noml/L」は「nmol/L」の誤記と認める。) was used in the analysis instead of ADM. Table 8 [図:0001397183000005.jpg] 」(28頁4行~34頁9行) (当審訳:実施例5 感度 アッセイ感度の目的は、健常対象のADM濃度を完全に包含することである。 健常対象におけるADM濃度: 健常対象(n=100、平均年齢56歳)を、ADMアッセイを用いて測定した。中央値は24.7pg/mlであり、最低値は11pg/mlであり、99パーセンタイル値は43pg/mlであった。アッセイ感度は2pg/mlであったので、全健常対象の100%が、記載のADMアッセイを用いて検出可能であった。 MR-proADMの測定に、市販のアッセイを使用した。(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR)(BRAHMS社、へニッヒスドルフ、独国) (ClinBiochem. 2009 May;42(7-8):725-8. doi: 10.1016/j.clinbiochem.2009.01.002. 電子版2009年1月23日 完全に自動化されたシステムB.R.A.H.M.S KRYPTORでの血漿中の中央領域プロアドレノメデュリンの測定に関する均一時間分解蛍光免疫測定(Caruhel P, Mazier C, Kunde J, Morgenthaler NG, Darbouret B.)。 実施例6 臨床試験 敗血症の定義(Dellinger RP, Levy MM, Carlet JM, Bion J, Parker MM, Jaeschke R, Reinhart K, Angus DC, Brun-Buisson C, Beale Rら:敗血症救命キャンペーン:重度敗血症及び敗血症性ショックの管理に関する国際指針:2008. Critical care medicine 2008, 36(1):296-327)を満たす101名の救急診療部(ED)患者は、引き続き入院し(平均5日間の入院)、標準ケア処置を受けた。EDTA-血漿を1日目(EDプレゼンテーション)に作製し、入院中は毎日1試料を作製した。後のADM測定のために試料を凍結する時間は、4時間未満であった。 患者の特徴は、表5にまとめている。 表5 [図:0001397183000006.jpg] [図:0001397183000007.jpg] 全患者の26.7%は、入院期間中に死亡し、治療非反応者としてカウントし、全患者の73.3%は、敗血症を生存し、治療反応者としてカウントした。 敗血症を示す全患者のうち66%を除いて、非正常ADM値>43pg/ml(99パーセンタイル値)を有し、このことは、ADMはこの感染症のマーカーではないことを示している。 臨床試験の結果 初期ADMは、高度に予後診断的である。 本発明者らは、初期ADM値を院内死亡率と相関させ、かつ、ADMをAPACHE2スコアと比較した。ADMは、敗血症の転帰について高度に予後診断的であり(図2参照)、かつ、APACHE2スコアと同等である。ADMとAPACHE2が組合せられた場合、有意な追加情報が存在する(図3)。 治療モニタリングにおけるADM 患者は、標準ケア処置を基に治療した(表5)。平均入院期間は、5日間であった。ADMは、入院中毎日測定し(1日目=入院日)、院内死亡率と相関させた(表6)。入院期間中に変化したADM及び変化した期間は、予後診断値を最初のカイ二乗19.2から5日目の29.2まで、52%改善した。 ADMの70pg/mlでの単純なカットオフモデルを使用した場合、ADM濃度>70pg/mlで始まり、入院中>70pg/mlを維持した患者(治療非反応者)について、68%の死亡リスクを示した。常にADM値<70pg/mlを有する患者又は>70pg/mlから<70pg/mlへと進展する患者は、わずかに11%の死亡率を有し(良好に治療された/治療反応者)、ADM値>70pg/mlを示し、入院治療時にADM濃度が値<70pg/mlまで低下する患者は、死亡率0%であった。入院治療時に<70pg/mlから>70pg/mlまで進展する患者はいなかった。全ての患者について反応者/非反応者の情報を得るのに必要な平均時間は、約1日であった。入院期間中に治療に反応する>70pg/mlの患者が、ADMにより治療の成功を示すために、約2日間必要であった。 表6 [図:0001397183000008.jpg] 血漿ADMと平均動脈圧(MAP)及び昇圧剤療法の必要性との関係 本発明者らは、ADM濃度と平均動脈圧(図4)及びショックを治療/予防するための昇圧剤療法の必要性(図5)との有意な相関関係を認めた。 本発明者らはまた、ADM濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係も調べた(図6):調査した患者101名中、既に18名は、入院時に昇圧剤療法を必要とし;これらの患者の入院時のADM濃度中央値は、129pg/mLであった。入院後最初の4日以内の病院滞在中に昇圧剤療法の必要性を示さなかった患者(n=79)は、ADM濃度中央値48.5pg/mLを有した。重要なことに、入院時よりも病院滞在中に昇圧剤療法を必要とした患者は、既に入院時に上昇したADMレベル(中央値87.2pg/mL)を有し、例えば、血漿ADM濃度の上昇が、昇圧剤療法に先行していた。 血漿試料中に、ADM前駆体分子の安定した断片であるMR-proADMも測定した。MR-proADMは、成熟ADM放出の代理マーカーとして提唱されている(Struck J, Tao C, Morgenthaler NG, Bergmann A:敗血症患者の血漿中のアドレノメデュリン前駆体断片の同定 Peptides 2004, 25(8): 1369-1372,Morgenthaler NG, Struck J, Alonso C, Bergmann A:免疫発光測定による血漿中の中央領域プロアドレノメデュリンの測定Clinical chemistry 2005, 51(10):1823-1829)。市販のMR-proADMアッセイ(BRAHMS MR-proADM KRYPTOR)を、製造業者(BRAHMS社、へニッヒスドルフ、独国)の指示に従い使用した。入院した日の中央値レベルは、昇圧剤療法を必要としない患者について0.63nmol/Lであり、昇圧剤療法を必要とする患者について1.57nmol/Lであった。MR-proADMの濃度は、ADM濃度と有意に相関していた(r=0.79)。 実施例7 昇圧剤必要性の診断及び予測のためのカットオフ分析 患者データは、実施例6参照。この分析は、敗血症患者の救急センターでのプレゼンテーション時の初回採血を基に行った。 カットオフ値70pg/mlが選択され、<70pg/mlは、昇圧剤の必要性の低いリスクを示し、>70pg/mlは、昇圧剤の必要性の高いリスクを示した。第1群は、昇圧剤の必要性(MAP≦66mmHg)がなく、プレゼンテーション時に昇圧剤を投与されておらず、4日間の経過観察期間中にも昇圧剤を投与されなかった患者である。第2群は、昇圧剤の必要性(MAP≦66mmHg)があるか、又はプレゼンテーション時に昇圧剤を投与された患者である。第3群は、プレゼンテーション時に昇圧剤の必要性がなく、昇圧剤を投与されなかったが、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化した患者である。昇圧剤治療に関する情報が失われた患者(n=2)は、除外した。 表7 [図:0001397183000009.jpg] 70pg/mlでの単純なカットオフ分析を使用し、EDプレゼンテーション時に昇圧剤を必要とする全患者の89.5%を、ADMにより確定した(第2群)。>70pg/mlの患者20名は、プレゼンテーション時に昇圧剤の必要性がなく(第1/3群)、15名(75%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化せず、患者5名(25%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化した。対照的に、ADMが<70pg/mlである場合、患者はプレゼンテーション時に昇圧剤の必要性がなく(第1/3群)、56名(96.5%)は、4日間の経過観察期間中に昇圧剤の必要性を顕在化せず、わずかに2名(3.5%)が、昇圧剤の必要性を顕在化した。ADM値が70pg/mlを上回る患者の次の4日間に昇圧剤の必要性を顕在化するリスクは、ADMレベルが70pg/mlを下回る患者よりも、7.1倍高かった(25%対3.5%)。 臨床の観点から、血圧は常にモニタリングされるので、プレゼンテーション時に昇圧剤の必要性のない高ADM(>70pg/ml)を有する患者は、臓器不全及びそれに続く高死亡率に関連した低血圧から患者を保護するために、循環をより早く支援する目的で、決定点をMAP<66mmHgPから例えば<75mmHgに適合させることにより、昇圧剤治療されるべきである。ADM>70pg/mlの患者についてこの規則を用い、MAP≦75mmHgで昇圧剤により治療することにより、患者(第3群)は、標準のケア処置(≦66mmHg)よりも平均1.6日前に、治療されるであろう。 ADMの代わりに、カットオフ値0.78nmol/Lを使用したMR-proADMの分析において、同様の結果が得られた。 表8 [図:0001397183000010.jpg] ) (甲1-オ)「1. An in vitro method for identifying a subject in need of fluid resuscitation or administration of a vasopressor comprising the following steps: ・Determining the level of pro ADM (SEQ ID No. 1) and/or fragments thereof having at least 6 amino acids in a bodily fluid of said subject ・Correlating said level with the need of said subject for fluid resuscitation or administration of a vasopressor wherein said subject is identified as having such a need if the level of pro ADM (SEQ ID No. 1) and/or fragments thereof having at least 6 amino acids in the bodily fluid of said subject is above a threshold. 2. An in vitro method for identifying a subject in need of fluid resuscitation or administration of a vasopressor according to claim 1 wherein said proADM (SEQ ID No. 1) and/or fragments thereof having at least 6 amino acids are selected from the group comprising mature ADM (SEQ ID No. 4) and/or mature ADM 1-52-Gly (SEQ ID No. 5) and MR-proADM (SEQ ID No.3) and CT-ADM (SEQ ID No. 6). 」(43頁4~17行) (当審訳:請求項1 以下の工程を含む、輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法: ・該対象の体液中の、proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するその断片のレベルを決定する工程; ・該レベルを、該対象の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程であって、該対象の体液中のproADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するその断片のレベルが閾値を上回る場合に、該対象は当該必要性を有するものとして確定される工程。 請求項2 請求項1記載の輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって、前記proADM(配列番号:1)及び/又は少なくとも6個のアミノ酸を有するその断片が、成熟ADM(配列番号:4)及び/又は成熟ADM1-52-Gly(配列番号:5)及びMR-proADM(配列番号:3)及びCT-ADM(配列番号:6)からなる群から選択される、方法。) (甲1-カ)「19. An in vitro method for identifying a subject in need of administration of a vasopressor according to any of claims 1 to 18 wherein said subject exhibits the following signs or suffers from the following conditions: Physiological shock states including septic shock, cardiogenic shock and anaphylactic shock; Infections, Sepsis, Heart Failure, cardiopulmonary arrest, postoperative cardiac surgery, right ventricular infarction, bradyarrhythmias, Polytrauma, Burns, Kidney Injury.」(47頁1~6行) (当審訳:請求項19 請求項1ないし18のいずれかに記載の昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって、前記対象が、敗血症性ショック、心原性ショック及びアナフィラキシーショックを含む、生理的ショック状態;感染症、敗血症、心不全、心肺停止、心臓外科術後、右心室梗塞、徐脈性不整脈、多発性外傷、火傷、腎損傷の徴候を示すか又はこれらの状態に罹患している、方法。) (イ)甲1の記載から看取できる事項 上記(甲1-エ)の「実施例6・・・敗血症の定義・・・を満たす101名の救急診療部(ED)患者は、引き続き入院し・・・ADM濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係も調べた・・・・・・MR-proADMも測定した・・・実施例7・・・昇圧剤必要性の診断及び予測のためのカットオフ分析 患者データは、実施例6参照」との記載から、ADMのカットオフ値であるADMの閾値は、実施例6の「ADM濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係」から決定されたものであることが読み取れる。 また、上記実施例6には、「MR-proADMも測定した」と記載されていることから、MR-proADMの閾値も、実施例6の「ADM濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係」から決定されたものであることが読み取れる。 そうすると、上記(甲1-ア)に記載されたproADMや他の断片についての閾値も、ADM閾値と同様の方法により求めたものと解するのが相当である。 したがって、上記甲1の記載から、proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の閾値は、敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名におけるproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係から決定されたものであることが読み取れる。 (ウ)上記(甲1-ア)ないし(甲1-カ)の記載から、甲1には、 「輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法であって、 該対象の体液中の、proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルを決定する工程と、 該レベルを、該対象の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程であって、ここで該対象は、該対象の体液中のproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される工程を含み、 該proADMの少なくとも6個のアミノ酸を有する断片は、プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド、中央領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)、成熟アドレノメデュリン(成熟ADM)、アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM1-52-Gly)及びC末端プロアドレノメデュリン(CT-proADM)からなる群から選択され、 該閾値は、敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名におけるproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係から決定されたものであり、 該体液は血液試料であり、全血、血清及び血漿を含む群から選択される、 方法。」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。 a(a)甲1発明の「対象」は、本件発明1の「対象」に相当する。 (b)甲1発明の「輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする」か否か(必要性)と、本件発明1の「細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランス」は、対象の「身体的状態」で共通する。 (c)甲1発明の「確定するインビトロ方法」は、「対象」が「輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする」か否かを判断するための情報を提供するものであるから、本件発明1の「決定を補助する方法」に相当する。 (d)上記(a)ないし(c)の対比から、甲1発明の「輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法」と、本件発明1の「対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法」は、「対象の身体的状態の決定を補助する方法」で共通する。 b(a)甲1発明の「血液試料であ」る「該対象の体液」は、本件発明1の「前記対象から得られた試料」に相当する。 (b)甲1発明の「proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片」は、本件発明1の「プロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片」に相当する。 (c)甲1発明の「レベル」は、本件発明1の「レベル」に相当する。 (d)上記(a)ないし(c)の対比から、甲1発明の「該対象の体液中の、proADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルを決定する工程」は、本件発明1の「前記対象から得られた試料においてプロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片のレベルを決定すること」に相当する。 c(a)甲1発明の「中央領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)」及び「成熟アドレノメデュリン(成熟ADM)」は、それぞれ本件発明1の「MR-proADM」及び「成熟アドレノメデュリン」に相当する。 (b)甲1発明の「プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド」は、本件発明1の「PAMP」に相当する。 (c)上記(a)及び(b)の対比から、甲1発明の「該proADMの少なくとも6個のアミノ酸を有する断片は、プロアドレノメデュリンN-20末端ペプチド、中央領域プロアドレノメデュリン(MR-proADM)、成熟アドレノメデュリン(成熟ADM)、アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM1-52-Gly)及びC末端プロアドレノメデュリン(CT-proADM)からなる群から選択され」ることと、本件発明1の「前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP、アドレノテンシン及び成熟アドレノメデュリンからなる群から選択され」ることは、「前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリンを含む群から選択され」ることで共通する。 d(a)甲1発明の「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名」は、本件発明1の「参照対象集団」に相当する。 (b)甲1発明の「閾値」は、本件発明1の「参照レベル」に相当する。 (c)そして、甲1発明の「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名におけるproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係から決定された」「閾値」は、本件発明1の「少なくとも1つの」「参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベル」に相当する。 (d)上記(a)ないし(c)の対比から、甲1発明の「該対象の体液中のproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルが」「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者101名におけるproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係から決定された」「閾値を上回る」か否かを判定することは、本件発明1の「(a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象又は参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ」のうち、「(a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ」に相当する。 e(a)甲1発明の「輸液蘇生又は昇圧剤投与の」「必要性を有する」ことと、本件発明1の「正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態」は、「重篤な身体的状態」である点で共通する。 (b)上記(a)の対比から、甲1発明の「該レベルを、該対象の輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性と相関させる工程であって、ここで該対象は、該対象の体液中のproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルが閾値を上回る場合に、かかる必要性を有するものとして確定される」ことと、本件発明1の「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有することを示」すことは、「(i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が重篤な身体的状態を有することを示」すことで共通する。 f 甲1発明の「該体液は血液試料であり、全血、血清及び血漿を含む群から選択される」ことは、本件発明1の「前記試料が血液、血漿、又は血清である」ことに相当する。 (イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「対象の身体的状態の決定を補助する方法であって、前記対象から得られた試料においてプロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片のレベルを決定することを含み、 前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリンを含む群から選択され、 前記方法は、 (a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ を含み、 (i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が重篤な身体的状態を有することを示し、 前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法。」 の発明である点で一致し、次の4点で相違する。 (相違点1) 決定する対象の「身体的状態」が、本件発明1は「細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランス」であるのに対し、甲1発明は「輸液蘇生又は昇圧剤投与の必要性」である点。 (相違点2) proADMの断片を選択するための「MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリンを含む群」が、本件発明1は「MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリン」に「アドレノテンシン」を加えた群であるのに対し、甲1発明は「MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリン」に「アドレノメデュリン1-52-Gly(ADM1-52-Gly)及びC末端プロアドレノメデュリン(CT-proADM)」を加えた群である点。 (相違点3) 「参照対象」が、本件発明1は「健常対象」であるのに対し、甲1発明は「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者」である点。 (相違点4) 「重篤な身体的状態」が、本件発明1は「正の体液バランス、正の塩分バランス、及び/又は重篤な細胞外液量状態を有すること」であるのに対し、甲1発明は「輸液蘇生又は昇圧剤投与の」「必要性を有する」ことである点。 (ウ)相違点1及び4について 相違点1及び4は身体的状態の点で関連することから、合わせて検討することとする。 a 上記(甲1-ア)の「患者の状態が非常に重篤である場合に、昇圧剤の投与が通常は非常に遅れていることは、満たされていない医学的要求である。患者の状態が非常に重篤になる前に輸液蘇生及び昇圧剤を必要とする患者を確定することは、満たされていない医学的要求である。ガイドライン[21]が推奨するカットオフ値65mmHgを適用する血圧測定によるよりも早く、輸液蘇生及び昇圧剤療法の必要性を予測することは、満たされていない医学的要求である。血圧が降下したならば、これは、減少した酸素供給、臓器不全及び死亡につながる。したがって、血圧降下を発症するリスクのある患者を早期に確定することは、満たされていない要求である。そのような患者がより早く確定されたならば、輸液蘇生及び昇圧剤療法を開始するために、平均動脈圧について、別の、例えばより高いカットオフ値を適用することができる。より高い閾値レベルとは、<70mmHg、好ましくは<75mmHgである。これは、65mmHgを上回る時点で既に治療が始まることを意味する。」との記載から理解されるように、甲1発明は、輸液蘇生及び昇圧剤療法を必要とする血圧降下を発症するリスクのある患者を早期に確定することを、その解決しようとする課題とし、血液試料中のproADM及びその断片のレベルと輸液蘇生及び昇圧剤療法の必要性との相関を見いだしたことに基づいている。 b 輸液蘇生及び昇圧剤療法の必要性と、細胞外液量状態、体液バランス及び塩分バランスとは、異なる病理学的意義を有するものであり、同一の身体的状態を意味するものではない。 そして、甲1には、対象の血液試料中のproADM又はその断片のレベルが、対象の細胞外液量状態、体液バランス又は塩分バランスと相関することは、記載されていない。また、対象の血液試料中のproADM又はその断片のレベルが、対象の細胞外液量状態、体液バランス又は塩分バランスと相関することが、本件特許に係る出願の優先日当時の技術常識でもない。 c 上記(甲1-ウ)に「補液又は輸液蘇生は、発汗、出血、体液移動、又は、上述のような他の病理学的プロセスにより失われた体液を補充する医療行為である」と、輸液蘇生が失われた体液を補充するための医療行為である旨の記載があり、当該記載は輸液蘇生と体液バランスとの関係を示している。 しかしながら、甲1全体の記載では、輸液蘇生と昇圧剤投与は血圧低下に対処する医療行為として同列に記載されており、体液が失われた状態であるかを確定するために対象の血液試料中のproADM又はその断片のレベルを指標とすることは記載されておらず、上記(甲1-ウ)の輸液蘇生が失われた体液を補充するための医療行為である旨の記載は、輸液蘇生の一側面を記載したものにすぎないと解される。 d したがって、甲1発明を、輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するインビトロ方法に代えて、又は加えて、対象の細胞外液量状態、体液バランス、及び/又は塩分バランスの決定を補助する方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 e 仮に、甲1発明の輸液蘇生の必要性が、体液が失われた状態、すなわち負の体液バランスを意味するものであると仮定すると、甲1発明は、対象のproADM又はその断片のレベルが閾値を上回る場合に、負の体液バランスを有する(輸液蘇生の必要性を有する)ものとして確定されることになるが、それは、相違点4に係る本件発明1の前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が正の体液バランスを有することを示すことと、逆の結果を示すこととなる。 さらに、本件特許明細書等では、例えば段落【0035】に「少なくとも4Lの正の体液バランスが重篤と見なされる。換言すれば、少なくとも4Lの正の体液バランスは、対象が重篤と見なされる細胞外液量状態を有することを示す。詳細には、添付の実施例において、水分、例えば少なくとも4Lの水分の高い増加が危険信号であり、重篤な細胞外液量状態、従って重篤な対象の指標であることが報告される。」と記載されているように、重篤な細胞外液量状態は正の体液バランスと関連付けられており、負の体液バランスが重篤な細胞外液量状態を表すことは記載されていないから、負の体液バランスに関係する「体液が失われた状態」は、本件発明1の「重篤な細胞外液量状態」には含まれないと解するのが相当である。 そのため、甲1発明が、対象のproADM又はその断片のレベルが閾値を上回る場合に、負の体液バランスを有する(輸液蘇生の必要性を有する)ものとして確定するものであったとしても、それは、本件発明1の前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が重篤な細胞外液量状態を有することを示すことには該当しない。 f したがって、甲1発明を、該対象は、該対象の体液中のproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片のレベルが閾値を上回る場合に、「正の体液バランス、正の塩分バランス、又は重篤な細胞外液量状態を有する」ものとして確定される工程を含んだものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (エ)相違点3について 事案に鑑み、次に相違点3について検討する。 甲1には、閾値を、健常対象におけるproADM及び/又はその少なくとも6個のアミノ酸を有する断片の濃度と昇圧剤療法の必要性の時間的関係から決定することは、記載も示唆もされていない。 そして、甲1発明は、単に患者と健常者とを区別しようとするものではなく、患者の中で輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を早期に確定しようとするものであるから、輸液蘇生又は昇圧剤投与を必要とする対象を確定するための閾値を、健常者のproADM又はその断片のレベルにすると、適切な判別ができないものと解される。 したがって、甲1発明において、閾値を健常者のproADM又はその断片のレベルにすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 (オ)以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2について (ア)本件発明2と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者」と、本件発明2の「動脈瘤、多発外傷、脳傷害、及び/又は頭部傷害など、重篤な細胞外液量状態に関連することが公知の疾患又は障害に罹患している対象」又は「ショックを伴う腹膜炎に罹患している術後対象」は、「特定の病理状体の患者」である点で共通する。 b 本件発明2のその他の特定事項と甲1発明との対比については、上記イ(ア)の本件発明1と甲1発明との対比と同じことがいえる。 (イ)そうすると、本件発明2と甲1発明とは、 「対象の身体的状態の決定を補助する方法であって、前記対象から得られた試料においてプロアドレノメデュリン(proADM)又はその断片のレベルを決定することを含み、 前記proADMの断片が、MR-proADM、PAMP及び成熟アドレノメデュリンを含む群から選択され、 前記方法は、 (a1)前記proADM又はその断片のレベルを、少なくとも1つの参照対象集団のproADM又はその断片の参照レベルと比較するステップ を含み、 前記参照対象が、特定の病理状体の患者であり、 (i)前記参照レベルと比較したときに上昇したレベルの前記対象のproADM又はその断片が、前記対象が重篤な身体的状態を有することを示し、 前記試料が血液、血漿、又は血清である、方法。」 の発明である点で一致し、上記相違点1、2及び4に加え、次の相違点5で相違する。 (相違点5) 参照対象である「特定の病理状体の患者」が、本件発明1は、「動脈瘤、多発外傷、脳傷害、及び/又は頭部傷害など、重篤な細胞外液量状態に関連することが公知の疾患又は障害に罹患している対象」又は「ショックを伴う腹膜炎に罹患している術後対象」であるのに対し、甲1発明は「敗血症の定義を満たす救急診療部(ED)患者」である点。 (ウ)相違点1及び4については、上記イ(ウ)で検討したとおりであるから、相違点2及び5について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件発明3ないし6、8及び10について 本件発明3ないし6、8及び10は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明3ないし6、8及び10は、上記イ及びウで検討した本件発明1又は2と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件訂正により請求項7は削除されたから、請求項7に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。 3 意見書における申立人の主張について (1)細胞外液量状体に係るサポート要件及び実施可能要件について ア 申立人は、本件特許明細書等には、MR-proADMのレベルが全血量の決定に不適当であることが示されているから、そのような全血が約30%を占める細胞外液量状体の決定についても、MR-proADMのレベルは不適当である旨主張する。 イ しかしながら、細胞外液量には血漿量、血球量及び間質液量が含まれるところ、細胞外液量の変化量が細胞外液量の約70%を占める間質液量の変化量に大きく依存するならば、MR-proADMのレベルが間質液量と相関するものであれば、MR-proADMのレベルと細胞外液量が相関するといえる。 そのため、MR-proADMのレベルが全血量の決定に不適当であることが、直ちにMR-proADMのレベルが細胞外液量状体の決定に不適当であることの根拠となるものではない。 したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 (2)進歩性について ア 申立人は、体液バランスの決定と輸液蘇生の必要性の確定は一致する概念であるから、本件発明1の対象の(負の)体液バランスの決定を補助する方法は、甲1発明の輸液蘇生を必要とする患者を確定する方法と一致する旨主張する。 イ しかしながら、甲1発明の輸液蘇生の必要性は本件発明1の(負の)体液バランスに該当せず、仮に該当するとしても、甲1発明と本件発明1では逆の判定結果となることは、上記2ア(ウ)で説示したとおりである。 したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおり、本件請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件請求項1ないし6及び8ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項7及び11ないし15に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項7及び11ないし15に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700289

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