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特許異議申立

2022-700288

バリアフィルム、波長変換シート、及びそれらの製造方法

審判番号
2022-700288
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-079705
登録番号
6946702
請求日
2022年04月05日
審決日
2023年05月31日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】凸版印刷株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】▲高▼木 邦夫
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 亀ヶ谷 明久
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 関根 裕
分類
P1652.113-YAA(C09D) / P1652.121-YAA(C09D) / P1652.16 -YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6946702号発明「バリアフィルム、波長変換シート、及びそれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6946702号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9、12-17〕について訂正することを認める。 特許第6946702号の請求項1、4、5、7-9、12-17に係る特許を維持する。 特許第6946702号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6946702号の請求項1~17に係る特許についての出願は、平成29年4月13日(優先権主張 平成28年4月13日)の出願であって、令和3年9月21日にその特許権の設定登録がされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~5、7~9、12~17に係る特許に対し、令和4年4月5日に特許異議申立人渡辺陽子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年6月14日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年8月18日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。特許権者から訂正請求があったことを、同年9月6日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年9月30日に意見書を提出した。当審は、同年11月16日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和5年1月19日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行った。特許権者から訂正請求があったことを、同年同月25日付けで特許異議申立人に通知し、その指定期間内に特許異議申立人から応答がなかった。 なお、令和4年8月18日付けの訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~13からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する」とあるのを、「前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有し、 前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであり、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4,5,7,8も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2~3を削除する。 (3)訂正事項3 訂正事項2において、特許請求の範囲の請求項2~3を削除したことに伴い、請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるのを、「請求項1に記載のバリアフィルム」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5,7,8も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む」とあるのを、「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5,7,8も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 訂正事項2において、特許請求の範囲の請求項2~3を削除したことに伴い、請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるのを、「請求項1又は4に記載のバリアフィルム」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項7,8も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む」とあるのを、「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項7,8も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6に「前記第2の反応性官能基が、ウレタン結合及びシロキサン結合を介して前記樹脂骨格の側鎖に結合している、請求項1~5のいずれか一項に記載のバリアフィルム。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めることで、「ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、を備えるバリアフィルムであって、前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有し、前記第2の反応性官能基が、ウレタン結合及びシロキサン結合を介して前記樹脂骨格の側鎖に結合している、バリアフィルム。」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7,8も同様に訂正する)。 (8)訂正事項8 訂正事項2において、特許請求の範囲の請求項2~3を削除したことに伴い、請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるのを、「請求項1及び4~6のいずれか一項に記載のバリアフィルム」に訂正する(請求項7の記載を直接的に引用する請求項8も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 訂正事項2において、特許請求の範囲の請求項2~3を削除したことに伴い、請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるのを、「請求項1及び4~7のいずれか一項に記載のバリアフィルム」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項9に「水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有する」とあるのを、「水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有し、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、」に訂正する(請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項12,14~17も同様に訂正する)。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項13に「請求項9~12のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法」とあるのを、「請求項10又は11に記載のバリアフィルムの製造方法」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項14~17も同様に訂正する)。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項14に「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む」とあるのを、「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む」に訂正する(請求項14の記載を直接又は間接的に引用する請求項15~17も同様に訂正する)。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項15に「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む」とあるのを、「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む」に訂正する(請求項15の記載を直接又は間接的に引用する請求項16,17も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~8について、請求項2~8はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 訂正前の請求項9、12~17について、請求項12~17はそれぞれ請求項9を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項8によって記載が訂正される請求項9に連動して請求項12,14~17が訂正されるとともに、訂正事項9によって記載が訂正される請求項13に連動して請求項14~17が訂正されるものである。また、請求項14~17は、訂正事項8および9で共通して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項9、12~17に対応する訂正後の請求項9、12~17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1の記載のうち、「樹脂骨格」について「前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであ」り、「第2の反応性官能基」について「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む」と訂正することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「樹脂骨格」及び「第2の反応性官能基」の種類を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0036]等には、「主鎖又は側鎖に第1の反応性官能基を有する樹脂骨格は、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであることが好ましい」と記載されている。 また、願書に添付した明細書の段落[0038】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が例示されている。 したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項2~3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、請求項2~3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、請求項2~3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるうち、請求項2、3を引用するものを削除するものであるから、全体として含まれる引用関係が減少する。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、請求項4の記載のうち、「第2の反応性官能基」の選択肢からカルボキシル基を削除する訂正により、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、「第2の反応性官能基」の種類を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0038】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が例示されている。 したがって、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるうち、請求項2、3を引用するものを削除するものであるから、全体として含まれる引用関係が減少する。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、請求項5の記載のうち、「第2の反応性官能基」の選択肢からカルボキシル基を削除する訂正により、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、「第2の反応性官能基」の種類を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0040】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基が例示されている。 したがって、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、請求項6が訂正前の請求項1を引用するものについて、独立形式に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、請求項6が訂正前の請求項1を引用する発明を独立形式とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7は、請求項6が訂正前の請求項1を引用する発明を独立形式とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 請求項6に係る特許に対する特許異議の申立てはされていないところ、訂正後の請求項6に係る特許について、申立人が提出した証拠方法や請求項の記載を改めて検討しても、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする事情は見いだせない。したがって、訂正後の請求項6は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるといえる。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、請求項7に「請求項1~6のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるうち、請求項2、3を引用するものを削除するものであるから、全体として含まれる引用関係が減少する。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項8は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項8は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、請求項8に「請求項1~7のいずれか一項に記載のバリアフィルム」とあるうち、請求項2、3を引用するものを削除するものであるから、全体として含まれる引用関係が減少する。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項9は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的について 訂正事項10は、請求項9の記載のうち、「第2の反応性官能基」について「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選一択される少なくとも一種の官能基を含む」と訂正することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項10は、「第2の反応性官能基」の種類を具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0038】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が例示されている。 したがって、訂正事項10は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (11)訂正事項11 ア 訂正の目的について 訂正事項11は、請求項13に「請求項9~12のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法」とあるうち、請求項9、12を引用するものを削除するものであるから、全体として含まれる引用関係が減少する。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項11は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アの理由から明らかなように、訂正事項11は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (12)訂正事項12 ア 訂正の目的について 訂正事項12は、請求項14の記載のうち、「第2の反応性官能基」の選択肢からカルボキシル基を削除する訂正により、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項12は、「第2の反応性官能基」の種類を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0038】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基が例示されている。 したがって、訂正事項12は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (13)訂正事項13 ア 訂正の目的について 訂正事項13は、請求項15の記載のうち、「第2の反応性官能基」の選択肢からカルボキシル基を削除する訂正により、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。よって、当該訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アの理由から明らかなように、訂正事項13は、「第2の反応性官能基」の種類を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の段落【0040】等には、第2の反応性官能基として、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基が例示されている。 したがって、訂正事項13は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第6946702号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕〔9、12-17〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~17に係る発明は、令和5年1月19日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 ガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有し、 前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであり、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、 バリアフィルム。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、 ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む、請求項1のいずれか一項に記載のバリアフィルム。 【請求項5】 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む、請求項1又は4のいずれか一項に記載のバリアフィルム。 【請求項6】 ガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有し、 前記第2の反応性官能基が、ウレタン結合及びシロキサン結合を介して前記樹脂骨格の側鎖に結合している、バリアフィルム。 【請求項7】 前記プライマー層形成用組成物が硬化剤を更に含有する、請求項1及び4~6のいずれか一項に記載のバリアフィルム。 【請求項8】 蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された請求項1及び4~7のいずれか一項に記載のバリアフィルムと、を備え、 前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側の最表面に前記プライマー層を備える、波長変換シート。 【請求項9】 ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法であって、 水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有し、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、 バリアフィルムの製造方法。 【請求項10】 ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法であって、 水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを、前記樹脂(A)及び前記化合物(B)の双方と反応する化合物(C)を介して反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有するバリアフィルムの製造方法。 【請求項11】 前記プライマー層形成用組成物の製造方法が、 前記樹脂(A)としての2以上の水酸基を有する樹脂と、前記化合物(C)としてのイソシアネート基を有するシランカップリング剤とを溶液中で反応させて反応生成物を得る工程と、 前記反応生成物と、前記化合物(B)としての前記第2の反応性官能基を有するシランカップリング剤とを反応させて前記多官能性化合物を得る工程と、 を有する、請求項10に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項12】 前記樹脂(A)が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂である、請求項9~11のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項13】 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、請求項10又は11のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項14】 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される異なる二種以上の官能基を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項15】 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基と、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基とを含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項16】 前記プライマー層形成用組成物の製造方法が、 前記多官能性化合物に、硬化剤を配合する工程を更に有する、請求項9~15のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。 【請求項17】 蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された、前記蛍光体層側の最表面にプライマー層を有するバリアフィルムと、を備える波長変換シートの製造方法であって、 請求項9~16のいずれか一項に記載の方法により前記バリアフィルムを得る工程と、 前記蛍光体層と前記バリアフィルムとを積層する工程と、 を有する波長変換シートの製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 本件特許登録時の請求項1~5、7~9、12~17に係る特許に対して、当審が令和4年6月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~3、7、8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項1~3、7、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~5、7~9、12~17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項1~5、7~9、12~17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第1号証:国際公開第2016/013656号 甲第2号証:特開2015-65158号公報 甲第3号証:色材、1986年 59〔3〕、p.176~184 甲第4号証:「シランカップリング剤」、東レ・ダウコーニング株式会社、2008年10月、p.1~20 甲第5号証:国際公開2015/037733号 理由3(拡大先願)請求項1、3、4、8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第6号証に記載された発明と同一であって、この出願の発明者が先願発明1の発明者と同一でなく、この出願時に、この出願の出願人と上記発明の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、上記の請求項1、3、4、8に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 甲第6号証:特願2015-18860号(特開2016-143562号公報) 2 本件訂正前の請求項1~5、7~9、12~17に係る特許に対して、当審が令和4年11月16日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、次のとおりである。 (明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1、4、5、7~9、12、14~17に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 本件特許発明4は、本件特許発明1を引用し、また、本件特許発明14は、本件特許発明9を引用し、「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む」と特定され、本件特許発明5は、本件特許発明1を引用し、本件特許発明15は、本件特許発明9を引用し、「前記第2の反応性官能基が、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも二種の官能基を含む」と特定されるが、本件特許発明1及び本件特許発明9は「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む」と特定されており、本件特許発明4及び5の第2の反応性官能基は、その選択肢として、本件特許発明4及び5が引用する本件特許発明1の第2の反応性官能基に含まれないカルボキシル基を含んでおり、本件特許発明14及び15の第2の反応性官能基は、その選択肢として、本件特許発明14及び15引用する本件特許発明9の第2の反応性官能基に含まれないカルボキシル基を含んでおり、本件特許発明4及び5の第2の反応性官能基の特定が、本件特許発明4及び5が引用する本件特許発明1の第2の反応性官能基の特定と整合がとれておらず、本件特許発明14及び15の第2の反応性官能基の特定が、本件特許発明14及び15が引用する本件特許発明9の第2の反応性官能基の特定と整合がとれておらず、本件特許発明1、4、5、9、14及び15は、第2の反応性官能基としてカルボキシル基を含むのか否か不明であり、その結果、本件特許発明1、4、5、9、14及び15は不明確である。 本件特許発明4及び5を引用する本件特許発明7及び8、本件特許発明9を引用する本件特許発明12、本件特許発明14及び15を引用する本件特許発明16及び17も不明確である。 第5 前記第4における2 理由(明確性要件)についての判断 本件訂正により、本件特許発明4及び5の第2の反応性官能基の特定が、本件特許発明4及び5が引用する本件特許発明1の第2の反応性官能基の特定と整合がとれており、本件特許発明14及び15の第2の反応性官能基の特定が、本件特許発明14及び15が引用する本件特許発明9の第2の反応性官能基の特定と整合がとれており、本件特許発明1、4、5、9、14及び15は明確である。 本件特許発明4及び5を引用する本件特許発明7及び8、本件特許発明9を引用する本件特許発明12、本件特許発明14及び15を引用する本件特許発明16及び17も明確である。 第6 前記第4における1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)についての判断 1 甲号証について 甲第1号証:国際公開2016/013656号 甲第2号証:特開2015-65158号公報 甲第3号証:色材、1986年 59〔3〕、p.176~184 甲第4号証:「シランカップリング剤」、東レ・ダウコーニング株式会社、2008年10月、p.1~20 甲第5号証:国際公開2015/037733号 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「[請求項1] バリアフィルムと、該バリアフィルム上に形成された易接着層とを備え、 前記易接着層は、反応性炭素炭素二重結合を有する基及び2つ以上の水酸基を含む重合体、並びに、ポリイソシアネートを含有し、 前記易接着層の厚さが0.01μm以上1μm以下である、積層フィルム。 [請求項2] 前記反応性炭素炭素二重結合を有する基がアクリロイル基である、請求項1に記載の積層フィルム。 ・・・ [請求項7] 蛍光体を保護するためのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルム。 ・・・ [請求項9] 波長変換層と、前記波長変換層の両面上に形成された一対の保護フィルムとを備え、前記保護フィルムの少なくとも一方が請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルムの前記易接着層を硬化させて得られる硬化積層フィルムである、波長変換シート。」 1b「[0064] (易接着層10) 易接着層10は第二の高分子フィルム8上(バリアフィルム11上)に形成される。易接着層10は、反応性炭素炭素二重結合を有する基及び2つ以上の水酸基を含む重合体、並びに、ポリイソシアネートを含有する。易接着層10は、さらに後述する反応性炭素炭素二重結合を有する基及び水酸基を含む単量体を含有していてもよい。反応性炭素炭素二重結合とは、ラジカル重合又はカチオン重合可能な炭素炭素二重結合を指す。反応性炭素炭素二重結合を有する基は、エチレン性不飽和二重結合を有する基であることが好ましく、例えば、スチリル基又は(メタ)アクリロイル基等であることがより好ましく、アクリロイル基であることがさらに好ましい。反応性炭素炭素二重結合を有する基がアクリロイル基であることにより、反応性が向上し、より優れた密着性が得られる傾向がある。 ・・・ [0067] また、上記重合体は単量体のみから重合して得られてもよく、予め得られたアクリルプレポリマーと単量体とを重合して得られてもよい。上記アクリルプレポリマーはアクリル酸、メタクリル酸、及びグリシジル(メタ)アクリレート等のアクリル単量体を重合して得られるポリマーであり、水酸基を含むアクリル単量体を少なくとも1種重合して得られる。水酸基を含むアクリル単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びN-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。上記アクリルプレポリマーの重量平均分子量は5000~10000であることが好ましい。」 1c「[0139] [波長変換シートの作製] (実施例3) 図4に示す波長変換シートを作製するために、第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、厚さ100nmのアンカーコート層3aを形成した。 [0140] 電子ビーム加熱式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(キヤノンオプトロン株式会社製)を1.5×10-2Paの圧力下で電子ビーム加熱によって蒸発させ、上記アンカーコート層3a上に厚さ40nmのSiOx膜を形成した。なお、蒸着における加速電圧は40kVであり、エミッション電流は0.2Aであった。 [0141] テトラエトキシシランの加水分解物とポリビニルアルコールを1/1の質量比で混合した混合液を、上記SiOx膜上にバーコート法により塗布し、120℃1分乾燥硬化させることにより、厚さ400nmのSiOx膜を形成した。さらに、同様の手順で真空蒸着による厚さ40nmのSiOx膜と塗布による厚さ400nmのSiOx膜とをこの順で形成した。このようにしてアンカーコート層上に形成された、真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4aとした。 [0142] 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)のコロナ放電処理された面を貼り合わせ、50℃2日間エージングを実施し、第一バリアフィルム11aを得た。貼り合わせ後の接着層6aの厚さは5μmであった。 [0143] アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布した。塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10aを形成した。以上のようにして、第一バリアフィルム11a上に第一易接着層10aが形成された、第一積層フィルム20aを作製した。 [0144] 第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11bを作製した。また、第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、厚さ0.2μmの第二易接着層10bを形成した。以上のようにして、第二バリアフィルム11b上に第二易接着層10bが形成された、第二積層フィルム20bを作製した。 [0145] 第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートした。 [0146] 室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成し、波長変換シート100を作製した。このとき、波長変換層13の厚みは100μmであった。」 1d 「[図1] [図:0001401611000001.jpg] ・・・ [図4] [図:0001401611000002.jpg] 」 (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「【請求項2】 入射する励起光により励起され蛍光を発光する量子ドットを含む光変換層を有する光変換部材であって、 前記光変換層に直接接する密着改良層を有し、かつ 前記密着改良層に直接接する無機層を有し、かつ、 前記密着改良層は密着改良剤を含み、さらに、前記密着改良層が前記光変換層側の表面に前記密着改良層成分と前記光変換層成分との混合領域を有する、光変換部材。」 2b「【0037】 (密着改良剤) 光変換層は、好ましくは塗布法により作製される。具体的には、量子ドットを含む光変換層形成用の重合性組成物(硬化性組成物)を基材上等に塗布し、次いで光照射等により硬化処理を施すことにより光変換層を得ることができる。ここで重合性組成物として、量子ドット、重合性化合物とともに、密着改良剤を含む組成物を用いることにより、密着改 良剤を含む光変換層を形成することができる。密着改良剤を含む重合性組成物から形成される光変換層は、密着改良剤により隣接する層との密着性が強固なものとなるため、優れた耐光性を示すことができる。これは主に、光変換層に含まれる密着改良剤が、加水分解反応や縮合反応に伴う共有結合の生成、あるいは水素結合などの非共有結合の作用により、隣接する層の表面やこの層の構成成分と結合を形成することによるものである。また、密着改良剤がラジカル重合性基等の反応性官能基を有する場合、光変換層を構成するモノマー成分と架橋構造を形成することも、光変換層と隣接する層との密着性向上に寄与し得る。密着改良剤としては、無機層と共有結合を形成可能な、シランカップリング剤が好ましい。なお本発明において、光変換層に含まれる密着改良剤とは、上記のような反応後の形態の密着改良剤も含む意味で用いるものとする。 【0038】 上記密着改良剤の具体例としては、シランカップリング剤などの有機金属カップリング剤、リン酸基を有する重合性化合物、ウレタン結合とウレア結合とイソシアヌル環とから選ばれる構造の少なくとも1つを分子内に有する重合性化合物、イソシアネート基を有する重合性化合物、カルボキシル基を有する重合性化合物、水酸基を含む重合性化合物などが挙げられる。これらの中でも上記密着改良剤は、有機金属カップリング剤、リン酸基を有する重合性化合物、およびウレタン結合とウレア結合とイソシアヌル環とから選ばれる構造の少なくとも1つを分子内に有する重合性化合物の少なくとも1つであることが好ましい。」 (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a 「 [図:0001401611000003.jpg] 」(第178ページ表-2) (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「 [図:0001401611000004.jpg] 」(第7ページ右欄第1~最終行) (5)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「[請求項1] 量子ドットを用いた蛍光体層とバリアフィルムとを積層した波長変換シートであって、 前記バリアフィルムが、酸価25以下のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にバリア層を積層したものである、波長変換シート。 [請求項2] 前記バリア層は無機酸化物薄膜層及びガスバリア性被覆層を含む、請求項1に記載の波長変換シート。 [請求項3] 前記無機酸化物薄膜層が、酸化珪素又は酸化アルミニウムの蒸着膜からなる、請求項2に記載の波長変換シート。 [請求項4] 前記ガスバリア性被覆層が、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物、及び金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも1種類を含有する、請求項2又は3に記載の波長変換シート。 [請求項5] 前記無機酸化物薄膜層と前記ガスバリア性被覆層が、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に2層ずつ以上交互に積層されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の波長変換シート。 [請求項6] 前記バリアフィルム上に、さらにプラスチックフィルムがアクリル樹脂粘着剤にて貼り合せられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の波長変換シート。 [請求項7] LED光源と、導光板と、請求項1~6のいずれか一項に記載の波長変換シートと、を備えるバックライトユニット。」 5b「[0034] 蛍光体層1は、例えば、以下の手順でバリアフィルム5に、積層される。蛍光体は、封止樹脂と混合される。蛍光体が封止樹脂と混合された混合液は、バリアフィルム5に塗布される。封止樹脂としては、感光性樹脂、熱硬化性樹脂、及び化学硬化性樹脂等が挙げられる。封止樹脂が紫外線照射又は加熱により(UV)硬化されることで、蛍光体層1が形成される。また、封止樹脂として、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂を併用してもよい。この場合、封止樹脂をUV硬化の後に熱硬化させることで、蛍光体層が形成される。その結果、バリアフィルム5上には約50μmの蛍光体層1が形成される。 [0035] 感光性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ基及びエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。」 3 甲1号証に記載された発明 (1)甲1発明1 甲1には実施例3として「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、形成した、厚さ100nmのアンカーコート層3a、 上記アンカーコート層3a上に形成された、真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4a、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a、 アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、形成した、厚さ0.2μmの第一易接着層10a、 からなる第一積層フィルム20aであって、 第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11a上に波長変換層13を形成するための、第一積層フィルム20a。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 (2)甲1発明2 甲1には実施例3として「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、形成した、厚さ100nmのアンカーコート層3a、 上記アンカーコート層3a上に形成された、真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4a、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a、 第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布した、アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの塗布し、塗布液を乾燥し、形成した、厚さ0.2μmの第一易接着層10a からなる第一バリアフィルム11a上に第一易接着層10aが形成された、第一積層フィルム20a、 第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11b、 第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、形成した、厚さ0.2μmの第二易接着層10b からなる第二バリアフィルム11b上に第二易接着層10bが形成された、第二積層フィルム20b、 第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成した、図4に示す波長変換シート100。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 (3)甲1発明3 甲1には実施例3として「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、厚さ100nmのアンカーコート層3aを形成し、 上記アンカーコート層3a上に真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4aを形成し、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11aを得て、 アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10aを形成し、 第一バリアフィルム11a上に第一易接着層10aが形成された第一積層フィルム20aの作製方法であって、 第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11a上に波長変換層13を形成するための、第一積層フィルム20aの作製方法。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 (4)甲1発明4 甲1には実施例3として「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、厚さ100nmのアンカーコート層3aを形成し、 上記アンカーコート層3a上に真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4aを形成し、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11aを得て、 アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10aを形成し、第一積層フィルム20aを作製し、 第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11bを作製し、 また、第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、厚さ0.2μmの第二易接着層10bを形成し、 以上のようにして、第二バリアフィルム11b上に第二易接着層10bが形成された、第二積層フィルム20bを作製し、 第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、 室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成する、波長変換シート100を作製する方法。」の発明が記載されているといえる(摘記1c参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲1発明1との対比 甲1発明1の「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、形成した、厚さ100nmのアンカーコート層3a、 上記アンカーコート層3a上に形成された、真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4a、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a」及び「第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11b」は、本件特許発明1の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲1発明1の「アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの塗布し、塗布液を乾燥し、形成した、厚さ0.2μmの第一易接着層10a」は、「塗布液を乾燥」して形成したものであり、「乾燥」する際に、「塗布液」に含まれている「アクリル樹脂」(アクリル酸とヒドロキシエチルアクリレートとノルマルブチルアクリレートの共重合体であるから、カルボキシル基とヒドロキシル基を有している)のヒドロキシル基と「ヘキサメチレンジイソシアネート」のイソシアヌレート体」のイソシアネート基が反応して硬化していると認められる。「第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、形成した、厚さ0.2μmの第二易接着層10b」についても「第一易接着層10a」と同様である。また、甲1発明1の「第一易接着層10a」及び「第二易接着層10b」は、第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであり、波長変換層側の最表面にある。したがって、甲1発明1の「塗布液」は、本件特許発明1の「プライマー層形成用組成物」に相当し、甲1発明1の「第一易接着層10a」及び「第二易接着層10b」は、本件特許発明1の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」、「前記プライマー層形成用組成物が」、「樹脂骨格を有する」、「化合物を含有し」及び「前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであり」に相当する。 甲1発明1の「第一積層フィルム20a」及び「第二積層フィルム20b」は、それぞれ、第一バリアフィルム11a及び第二バリアフィルム11bを含むものであり、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであるから、本件特許発明1の「バリアフィルム」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明1は、「ガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、樹脂骨格を有する化合物を含有する、 を備えるバリアフィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> プライマー層形成用組成物が、本件特許発明1では、「水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する」のに対し、甲1発明1ではそのような特定がない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1では、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるのに対し、甲1発明1ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-2>について検討する。 甲1発明1の第一積層フィルム20aの易接着層の「アクリル樹脂」は、そのモノマー成分からみて、側鎖にヒドロキシエチルアクリレートの水酸基及びアクリル酸のカルボキシル基を有し、さらに、特許異議申立人が令和4年9月30日付けの意見書に添付した「高機能アクリル樹脂の開発と応用」、2011年3月31日 第1刷発行 p.118の図3(後記参照)にあるような不飽和結合を有するするものであり、いずれも、本件特許発明1で特定される第2の反応性官能基として特定される、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基ではないから、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される点は、実質的な相違点である。 [図:0001401611000005.jpg] ここで、甲1には、甲1発明1の第一積層フィルム20aの易接着層には反応性炭素炭素二重結合を有する基である(メタ)アクリロイル基を有する重合体を含むことが、記載されているが(摘記1a、1b参照)、反応性炭素炭素二重結合を有する基は前記の不飽和結合であるから、本件特許発明1で特定される第2の反応性官能基として特定される、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基ではなく、甲1発明1の第一積層フィルム20aの易接着層において(メタ)アクリロイル基を有する重合体の反応性炭素炭素二重結合を有する基として本件特許発明1で特定される第2の反応性官能基として特定される、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を明らかに含まないから、甲1発明1の第一積層フィルム20aにおいて、甲1の前記記載に基づいて、易接着層は反応性炭素炭素二重結合を有する基であるビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する重合体を含むものとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲2には、光変換層とバリアフイルムの無機層との密着性を向上させるために設けられる密着改良層に添加される密着改良剤として、アミノ基を有するシランカップリング剤が記載されており(摘記2b参照)、甲5には、蛍光体と混合される樹脂として(メタ)アクリレート、アミノ基及びエポキシ基を有する化合物が、記載されており(摘記5b参照)、甲3、4には、シランカップリング剤の官能基と、その反応性からみた適応可能な樹脂との組合せが示されているところ、蛍光体層を構成する材料の官能基であるエポキシ基やアミノ基に対して、反応性を有する有機官能基としてアミノ基、エポキシ基やメルカプト基が、記載されている(摘記3a、4a参照)。 しかし、甲2~甲5の前記記載に基づいて、甲1発明1の第一積層フィルム20aの易接着層における「アクリル樹脂」のカルボキシル基や前記不飽和結合に代えて、シランカップリング剤自体の官能基でしかない、あるいは、蛍光体と混合される樹脂化合物の官能基でしかない、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるものとする動機付けがあるとまではいえず、甲1発明1の第一積層フィルム20aの易接着層における「アクリル樹脂」において、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 本件特許発明1の効果について 本件特許明細書の記載からみて、本件特許発明1のバリアフィルムは、優れたガスバリア性を有し、被着体に対する優れた密着性が得られるという効果を奏するものであり、本件特許発明1により奏されるそのような効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 エ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は、令和4年9月30日付けの意見書において、甲1発明1における「第一易接着層10a」に含まれる「アクリル樹脂」は、側鎖に水酸基、カルボキシル基及びアクリロイル基を有するものであり、訂正発明1の「多官能性化合物」に相当し、また、「アクリル樹脂」の水酸基、カルボキシル基は、訂正発明1における「第1の反応性官能基」の水酸基、カルボキシル基に相当し、「アクリル樹脂」のアクリロイル基は、訂正発明1における「第2の反応性官能基」のアクリロイル基に相当するから、本件特許発明1と甲1発明1は相違しないと主張する。 しかし、前記イのとおり、「アクリル樹脂」の不飽和結合はアクリロイル基ではないから、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、<相違点1-1>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明4、5、7、8 本件特許発明4、5、7及び8は本件特許発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲1発明1との<相違点1-2>と同じ相違点を有有するものであるから、本件特許発明4、5、7及び8は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (3)本件特許発明8 ア 甲1発明2との対比 本件特許発明8を、他の請求項を引用せずに、書き下すと「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層されたガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有し 前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであり、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、 、バリアフィルムと、を備え、 前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側の最表面に前記プライマー層を備える、波長変換シート。」である。 そして、甲1発明2の「第一の高分子フィルム2aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:P60、厚さ:12μm、東レ株式会社製)をコロナ放電処理し、その面上にポリエステル樹脂溶液をバーコート法により塗布し、80℃1分乾燥硬化させることにより、形成した、厚さ100nmのアンカーコート層3a、 上記アンカーコート層3a上に形成された、真空蒸着によるSiOx膜と塗布によるSiOx膜とを交互に2層備える多層膜を不透湿層4a、 上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a」及び「第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11b」は、いずれも、本件特許発明8の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲1発明2の「アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの塗布し、塗布液を乾燥し、形成した、厚さ0.2μmの第一易接着層10a」及び「第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、形成した、厚さ0.2μmの第二易接着層10b」は、第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであり、波長変換層側の最表面にあるから、いずれも、本件特許発明8の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」、「前記プライマー層形成用組成物が」、「樹脂骨格を有する」、「化合物を含有し」及び「前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであり」に相当する。 甲1発明2の「第一積層フィルム20a」及び「第二積層フィルム20b」は、それぞれ、第一バリアフィルム11a及び第二バリアフィルム11bを含むものであり、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであるから、いずれも、本件特許発明8の「蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された」及び「バリア性フィルム」に相当する。 甲1発明2の「コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体」及び「熱硬化型エポキシ樹脂」は、本件特許発明8の「蛍光体」及び「封止樹脂」に相当するから、甲1発明2の「コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に」、「形成」した「波長変換層13」は、本件特許発明8の「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層」に相当する。 甲1発明2の「図4に示す波長変換シート100」は、波長変換層13を含むから、本件特許発明8の「波長変換シート」に相当する。 そうすると、本件特許発明8と甲1発明2は「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層されたガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、樹脂骨格を有する化合物を含有し 前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものである、バリアフィルムと、を備え、 前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側の最表面に前記プライマー層を備える、波長変換シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-3> プライマー層形成用組成物が、本件特許発明1では、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有するのに対し、甲1発明2ではそのような特定がない点。 <相違点1-4> 本件特許発明1では、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるのに対し、甲1発明2ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-4>について検討する。 <相違点1-4>は、前記(1)アの<相違点1-2>と同じであり、前記(1)イと同様の理由により、甲1発明2において、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 本件特許発明8の効果について 前記(1)ウと同様の理由により、本件特許発明8により奏される効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 エ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は前記(1)エのとおり主張しているが、前記(1)エと同様の理由により、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明8は、甲1に記載された発明ではなく、<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (4)本件特許発明9 ア 甲1発明3との対比 甲1発明3の「上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a」及び本件特許発明9の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲1発明3の「アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10a」は、第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11a上に波長変換層13を形成するためのものであるから、本件特許発明9の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」に相当する。 甲1発明3の「第一積層フィルム20a」は、第一バリアフィルム11aと第一易接着層10aを含むから、本件特許発明9の「バリアフィルム」に相当し、甲1発明3の「第一積層フィルム20aの作製方法」は、本件特許発明9の「ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法」に相当する。 甲1発明3の「上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11aを得て、 アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10aを形成し」は、そのモノマー成分からみて「第一易接着層10a」が側鎖にヒドロキシエチルアクリレートの水酸基及びアクリル酸のカルボキシル基を有することが明らかであるから、本件特許発明9の「水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程」と「プライマー層形成用組成物を得る工程」及び「前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程」の限りにおいて一致する。 そうすると、本件特許発明9と甲1発明3は「ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法であって、 前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程、 を有するバリアフィルムの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-5> プライマー層形成用組成物を得る工程が、本件特許発明9は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有するのに対し、甲1発明3では、アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、上記第二の高分子フィルム8上に塗布し、塗布液を乾燥する点。 <相違点1-6> 本件特許発明1では、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるのに対し、甲1発明3ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-6>について検討する。 <相違点1-6>は、前記(1)アの<相違点1-2>と同じであり、前記(1)イと同様の理由により、甲1発明2において、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 本件特許発明9の効果について 前記(1)ウと同様の理由により、本件特許発明9により奏される効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 エ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は前記(1)エのとおり主張しているが、前記(1)エと同様の理由により、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明9は、甲1に記載された発明ではなく、<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (5)本件特許発明12、14~16 本件特許発明12、14~16は本件特許発明9を引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と甲1発明1との<相違点1-2>と同じ相違点を有有するものであるから、本件特許発明12、14~16は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (6)本件特許発明13 本件特許発明13は、「前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、請求項10又は11のいずれか一項に記載のバリアフィルムの製造方法。」となり、特許異議が申立てはされていない請求項10、11を引用するものとなったので、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (7)本件特許発明17 ア 甲1発明4との対比 本件特許発明17を、他の請求項を引用せずに、書き下すと「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された、前記蛍光体層側の最表面にプライマー層を有するバリアフィルムと、を備える波長変換シートの製造方法であって、 ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法であって、 水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有し、 前記第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、 バリアフィルムの製造方法により前記バリアフィルムを得る工程と、 前記蛍光体層と前記バリアフィルムとを積層する工程と、 を有する波長変換シートの製造方法。」である。 そして、甲1発明4の「上記不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)を貼り合わせた、第一バリアフィルム11a)」及び「第一バリアフィルム11aと同様の方法で、第一の高分子フィルム2b、アンカーコート層3b、不透湿層4b、接着層6b、及び第二の高分子フィルム8bがこの順に積層された、第二バリアフィルム11b」は、本件特許発明17の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲1発明4の「アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10a」及び「第二易接着層10b」は、第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであり、波長変換層側の最表面にあるから、いずれも、本件特許発明17の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」に相当する。 甲1発明4の「第一積層フィルム20a」及び「第二積層フィルム20b」は、それぞれ、第一バリアフィルム11a及び第二バリアフィルム11bを含むものであり、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成するものであるから、いずれも、本件特許発明17の「蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された」及び「バリア性フィルム」に相当するから、甲1発明4の「第一積層フィルム20aを作製し」及び「第二積層フィルム20bを作製し」は、いずれも、本件特許発明17の「ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法」に相当する。 甲1発明4の「コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体」及び「熱硬化型エポキシ樹脂」は、本件特許発明8の「蛍光体」及び「封止樹脂」に相当するから、甲1発明4の「コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13」は、本件特許発明17の「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層」に相当する。 甲1発明4の「図4に示す波長変換シート100」は、上記波長変換層13、第一易接着層10aを含む第一バリアフィルム11a及び第二易接着層10b第二バリアフィルム11bを含み、本件特許発明17の「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された、前記蛍光体層側の最表面にプライマー層を有するバリアフィルムと、を備える波長変換シート」に相当し、甲1発明4の「図4に示す波長変換シート100を作製する方法」は本件特許発明17の「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された、前記蛍光体層側の最表面にプライマー層を有するバリアフィルムと、を備える波長変換シートの製造方法」に相当する。 甲1発明4の「不透湿層4a上に接着剤(商品名:タケラックA525、三井化学株式会社製)を塗布して粘着層6aとし、上記接着剤を介して上記不透湿層4aと、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(第二の高分子フィルム8a、商品名:FE2001、厚さ:25μm、フタムラ化学株式会社製)のコロナ放電処理された面を貼り合わせたものの上に、アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、第一バリアフィルム11aの第二の高分子フィルム8aの表面上に塗布し、塗布液を乾燥し、厚さ0.2μmの第一易接着層10aを形成し」及び「第二バリアフィルム11bの第二の高分子フィルム8bの表面上に、第一易接着層10aと同様の方法で、厚さ0.2μmの第二易接着層10bを形成し」は、本件特許発明17の「水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有する、前記多官能性化合物を含有するプライマー層形成用組成物の製造方法により前記プライマー層形成用組成物を得る工程」と「プライマー層形成用組成物を得る工程」及び「前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程」の限りにおいて一致する。 甲1発明4の「第一バリアフィルム11a上の第一易接着層10a上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)の量子ドット発光体が熱硬化型エポキシ樹脂に分散した材料を滴下し、第二バリアフィルム11b上の第二易接着層10bを、滴下した材料に接触させ、ラミネーターを用いて、滴下した材料が均一な膜となるように第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとを滴下した材料を介してラミネートし、 室温で24時間エージングすることにより、上記エポキシ樹脂を硬化させ、第一バリアフィルム11aと第二バリアフィルム11bとの間に波長変換層13を形成する」は、本件特許発明17の「前記蛍光体層と前記バリアフィルムとを積層する工程」に相当する。 そうすると、本件特許発明17と甲1発明4は「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層された、前記蛍光体層側の最表面にプライマー層を有するバリアフィルムと、を備える波長変換シートの製造方法であって、 ガスバリア性フィルムと、一方の最表面に配置されたプライマー層と、を備えるバリアフィルムの製造方法であって、 プライマー層形成用組成物を得る工程と、 前記ガスバリア性フィルム上に前記プライマー層形成用組成物を塗布し、硬化させて前記プライマー層を形成する工程と、 を有するバリアフィルムの製造方法により前記バリアフィルムを得る工程と、 前記蛍光体層と前記バリアフィルムとを積層する工程と、 を有する波長変換シートの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-7> プライマー層形成用組成物を得る工程が、本件特許発明17は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂(A)と、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基を有する化合物(B)とを反応させて、前記第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に前記第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を得る工程を有するのに対し、甲1発明4では、アクリル酸35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート35質量部、及びノルマルブチルアクリレート30質量部を重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量:30000)70質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン社製)30質量部との混合溶液を作製し、上記第二の高分子フィルム8上に塗布し、塗布液を乾燥する点。 <相違点1-8> 本件特許発明1では、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるのに対し、甲1発明4ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-8>について検討する。 <相違点1-8>は、前記(1)アの<相違点1-2>と同じであり、前記(1)イと同様の理由により、甲1発明2において、第2の反応性官能基が、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 本件特許発明9の効果について 前記(1)ウと同様の理由により、本件特許発明17により奏される効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるといえる。 エ 特許異議申立人の主張及び当審の判断について 特許異議申立人は前記(1)エのとおり主張しているが、前記(1)エと同様の理由により、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明17は、甲1に記載された発明ではなく、<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第7 前記第4 1における理由3(拡大先願)についての判断 1 甲号証について 甲第6号証:特願2015-18860号(特開2016-143562号公報) 2 甲6号証(以下、「甲6」という。)の記載について 6a「【請求項1】 励起光により励起されて蛍光を発光する少なくとも1種の量子ドットが、有機マトリクス中に分散されて含有されてなる波長変換層と、 該波長変換層の少なくとも一方の主面に隣接して備えられてなる介在層と、 該介在層の前記波長変換層と反対側の主面に隣接して備えられてなる、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を主成分とするバリア層とを備えてなり、 前記有機マトリクスは、少なくとも脂環式エポキシ化合物を含む硬化性組成物が硬化されたものであり、 前記介在層は、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と結合してなる化学構造Aと、前記有機マトリクスと結合してなる化学構造Bとを含む波長変換部材。 【請求項2】 前記介在層が、有機層中に前記化学構造Aと前記化学構造Bとを含んでなる請求項1記載の波長変換部材。 【請求項3】 前記化学構造Aが、前記介在層に化学構造Cを介して結合されて含まれてなる請求項1または2記載の波長変換部材。 【請求項4】 前記化学構造Bが、前記介在層に化学構造Dを介して結合されて含まれてなる請求項1~3いずれか1項記載の波長変換部材。 【請求項5】 前記化学構造Aを有する密着剤と、前記化学構造Bを有する密着剤が、前記介在層中に含まれてなる請求項1または2記載の波長変換部材。 【請求項6】 前記化学構造Aは、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と共有結合してなる構造である請求項1~5いずれか1項記載の波長変換部材。 【請求項7】 前記化学構造Aは、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と水素結合してなる構造である請求項1~5いずれか1項記載の波長変換部材。 【請求項8】 前記化合構造Aは、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素とシロキサン結合してなる構造である請求項6記載の波長変換部材。【請求項9】 前記化学構造Aは、アミノ基,メルカプト基,又はウレタン構造のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する請求項7記載の波長変換部材。 【請求項10】 前記化学構造Bは、前記有機マトリクスと共有結合してなる構造である請求項1~9いずれか1項記載の波長変換部材。 【請求項11】 前記化学構造Bは、前記有機マトリクスと水素結合してなる構造である請求項1~9いずれか1項記載の波長変換部材。【請求項12】 前記化学構造Bは、アミノ基,メルカプト基,又はエポキシ基のうち少なくとも1つに基づく共有結合を有する請求項10記載の波長変換部材。 【請求項13】 前記化学構造Bが、アミノ基,カルボキシル基,又はヒドロキシ基のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する請求項11記載の波長変換部材。」 6b「【0040】 図2、および図3A~Dには、介在層12b内に含まれる密着剤40(40A,40B,40AB)と、波長変換層30とバリア層12aとの結合状態を模式的に示す部分拡大図(図2が第一態様、図3A~Dが第二~第五態様)を示してある。部分拡大図は、波長変換層1Dにおいて、マット層13側の波長変換層30とバリア層12aとの結合状態のみ示してあるが、マット層13と反対側の波長変換層とバリア層22aとの結合状態も同様の構成を有していてもよい。 【0041】 図2の部分拡大図に示される第一態様では、介在層12bに含まれる化学構造Aは、密着剤40A内に含まれてなり、バリア層12aの主成分である窒化ケイ素及び/または酸窒化ケイ素と結合してなるものを含んでいる。また、化学構造Bは、密着剤40B内に含まれてなり、波長変換層30の有機マトリクス30Pと結合してなるものを含んでいる。化学構造Aを含む密着剤40Aは、化学構造Cを介して、また、化学構造Bを含む密着剤40Bは、化学構造Dを介して介在層12bの有機マトリクス12Pと結合している。また、波長変換層30内においては、化学構造A,化合構造B,化合構造C,または化合構造Dを形成せずに波長変換層30内に含まれてなる密着剤40A,40Bを含んでもよい。」 6c「【0120】 介在層12b(22b)の原料液のバリア層上への塗布方法は特に制限されず,後記製造方法の項目において記載した公知の塗布方法を利用することができる。塗膜の硬化方法は特に制限さえず、光硬化や熱硬化、乾燥(風乾等)等を適用することができる。 塗膜の硬化は、成膜後直ちに実施してもよいし、半硬化(ハーフキュア)膜とした段階で、半硬化膜上に波長変換層を形成してから、波長変換層の硬化時に最終的な硬化を実施してもよい。」 6d「【0190】 1.バリアフィルムの作製 (高バリア性フィルムの作製) ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ50μm)基材の片面側に以下の手順でバリア層を形成した。 まず、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、ダイセルサイテック社製)及び光重合開始剤(ランベルティ社製、ESACURE(登録商標) KTO46)を用意し、質量比率として95:5となるように秤量し、これらをメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度15%の塗布液とした。この塗布液を、ダイコーターを用いてロールトウロールで上記PETフィルム上に塗布し、50℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。その後、窒素雰囲気下で紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm2)し、UV硬化で硬化させ、巻き取った。上記PETフィルム基材上に形成された有機バリア層の厚さは、1μmであった。 【0191】 次に、上記有機バリア層付きPETフィルムをロールトウロールの真空製膜装置の送り出し部にセットして真空廃棄した後、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(化学気相成長法)により、CVD装置を用いて、上記PET基材の表面に無機バリア層(窒化ケイ素層)を形成した。 【0192】 原料ガスとして、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、及び窒素ガス(流量240sccm)を用いた。電源として、周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。製膜圧力は40Pa、到達膜厚は50nmであった。このようにして基材の上に有機バリア層及び無機バリア層がこの順に形成された高バリア性フィルムを作製した。このバリアフィルムの透湿度は40℃90%RHの条件下において0.001g/(m2・day・atm)、酸素透過率は、測定温度23℃、90%RHの条件下で、0.02cm3/(m2・day・atm)であった。 ・・・ 【0194】 2.量子ドット含有硬化性組成物の調製 下記の配合比にて、量子ドット含有硬化性組成物を調製し、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過した後30分間減圧乾燥して、各例の塗布液を調製した。下記において、発光極大波長535nmの量子ドット分散液1として、NN-ラボズ社製CZ520-100を用い、また、発光極大波長630nmの量子ドット分散液2として、NN-ラボズ社製CZ620-100を用いた。これらはいずれもコアとしてCdSe、シェルとしてZnS、及び配位子としてオクタデシルアミンを用いた量子ドットであり、ト ルエンに3重量%の濃度で分散されている。また、硬化性化合物は表1に記載の各例の化合物とした。 【0195】 [図:0001401611000006.jpg] 【0196】 3.波長変換部材の作製 (実施例1) -バリアフィルムの作製- ウレタンアクリレート樹脂(大成ファインケミカル社製 アクリット8BR500)と光重合開始剤(チバケミカル社製、Irgacure184)と、密着剤(密着剤40A:トリメトキシシリルプロピルメタクリレートと密着剤40B:グリシジルメタクリレート(以下、GMAと略称にて記載する)との質量比50:50混合物)とを質量比率として94:5:1となるように秤量し、メチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度15%のバリア被覆層(介在層)形成用塗布液を調製した。かかる塗布液を、上記高バリア性フィルムのバリア層の表面にダイコーターを用いてロールトウロールで塗布し、100℃の乾燥ゾーンを3分間通過させてバリア被覆層(介在層)を形成した後巻き取り、実施例1のバリアフィルム1を作製した。支持体上に形成されたバリア被覆層の厚さは、1μmであった。 【0197】 -波長変換部材の作製- 次に、バリアフィルム1を、1m/分、60N/mの張力で連続搬送しながら、バリア被覆層面上に、調製した量子ドット含有重合性組成物をダイコーターにて塗布し、50μmの厚さの塗膜を形成した。次いで、塗膜の形成されたバリアフィルム1をバックアップローラに巻きかけ、塗膜の上に、別のバリアフィルム1をバリア被覆層面が塗膜に接する向きでラミネートし、バリアフィルム1で塗膜を挟持した状態で連続搬送しながら、100℃の加熱ゾーンを3分間通過させた。その後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、紫外線を照射して硬化させ、量子ドットを含有する波長変換層を硬化させて波長変換部材を作製した。紫外線の照射量は2000mJ/cm2であった。 ・・・ 【0199】 (実施例3) バリア被覆層形成用塗布液において、密着剤として、密着剤40A及び密着剤40Bを用いずに、表1に記載の密着剤40AB:リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチルを用いた以外は実施例1と同様にして波長変換部材を作製した。 【0200】 (実施例4) バリア被覆層形成用塗布液において、密着剤ABをジメチルアミノエチルアクリレートとした以外は実施例3と同様にして、実施例4の波長変換部材を作製した。」 6e「【符号の説明】 【0219】 1C 面状光源 1D 波長変換部材 2 バックライトユニット 2A 反射板 2B 再帰反射性部材 3 液晶セルユニット 4 液晶表示装置 10,20 バリアフィルム 11,21 基材 12a,22a バリア層 12b,22b バリア被覆層(介在層) 13 凹凸付与層(マット層、光拡散層) 30 波長変換層 30A,30B 量子ドット 30P 有機マトリックス 40A 化学構造Aを有する密着剤 40B 化学構造Bを有する密着剤 40AB 化学構造A及びBを有する密着剤 LB 励起光(一次光、青色光) LR 赤色光(二次光、蛍光) LG 緑色光(二次光、蛍光) ・・・ 【図2】 [図:0001401611000007.jpg] 」 3 甲6に記載された発明 (1)甲6発明1 甲6には、請求項1~4を引用する請求項7を引用する請求項9を引用する請求項10を引用する請求項12及び請求項1~4を引用する請求項7を引用する請求項9を引用する請求項11を引用する請求項13の記載、並びに、【図2】に示される第一態様及び【0041】の【図2】の説明からみて、「励起光により励起されて蛍光を発光する少なくとも1種の量子ドットが、有機マトリクス中に分散されて含有されてなる波長変換層の少なくとも一方の主面に隣接するための介在層と、 該介在層の前記波長変換層と反対側の主面に隣接して備えられてなる、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を主成分とするバリア層とを備えてなり、 前記介在層は、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と結合してなる化学構造Aと、前記有機マトリクスと結合してなる化学構造Bとを含み、 化学構造Aを含む密着剤40Aは、化学構造Cを介して、また、化学構造Bを含む密着剤40Bは、化学構造Dを介して介在層12bの有機マトリクス12Pと結合しており、 前記化学構造Aは、アミノ基,メルカプト基,又はウレタン構造のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有し、 前記化学構造Bは、アミノ基,メルカプト基,又はエポキシ基のうち少なくとも1つに基づく共有結合を有するか、アミノ基,カルボキシル基,又はヒドロキシ基のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する、 バリアフィルム。」の発明が記載されているといえる(摘記6a、6b、6e参照)。 (2)甲6発明2 甲6には、請求項1~4を引用する請求項7を引用する請求項9を引用する請求項10を引用する請求項12及び請求項1~4を引用する請求項7を引用する請求項9を引用する請求項11を引用する請求項13の記載、並びに、【図2】に示される第一態様及び【0041】の【図2】の説明からみて、「励起光により励起されて蛍光を発光する少なくとも1種の量子ドットが、有機マトリクス中に分散されて含有されてなる波長変換層と、 該波長変換層の少なくとも一方の主面に隣接して備えられてなる介在層と、 該介在層の前記波長変換層と反対側の主面に隣接して備えられてなる、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を主成分とするバリア層とを備えてなり、 前記有機マトリクスは、少なくとも脂環式エポキシ化合物を含む硬化性組成物が硬化されたものであり、 前記介在層は、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と結合してなる化学構造Aと、前記有機マトリクスと結合してなる化学構造Bとを含む波長変換部材であって、 化学構造Aを含む密着剤40Aは、化学構造Cを介して、また、化学構造Bを含む密着剤40Bは、化学構造Dを介して介在層12bの有機マトリクス12Pと結合しており、 前記化学構造Aは、アミノ基,メルカプト基,又はウレタン構造のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有し、 前記化学構造Bは、アミノ基,メルカプト基,又はエポキシ基のうち少なくとも1つに基づく共有結合を有するか、アミノ基,カルボキシル基,又はヒドロキシ基のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する、 長変換部材。」の発明が記載されているといえる(摘記6a、6b、6e参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲6発明1との対比 甲6発明1の「該波長変換層の少なくとも一方の主面に隣接して備えられてなる介在層」は、硬化するものであるから(摘記6c参照)、本件特許発明1の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」に相当する。 甲6発明1の「該介在層の前記波長変換層と反対側の主面に隣接して備えられてなる、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を主成分とするバリア層」は、本件特許発明1の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲6発明1の「介在層」及び「バリア層」は、合わせてバリアフィルムを形成するから(摘記6e参照)、本件特許発明8の「バリアフィルム」に相当する。 甲6発明1の「前記介在層は、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と結合してなる化学構造Aと、前記有機マトリクスと結合してなる化学構造Bとを含み、 化学構造Aを含む密着剤40Aは、化学構造Cを介して、また、化学構造Bを含む密着剤40Bは、化学構造Dを介して介在層12bの有機マトリクス12Pと結合しており、 前記化学構造Aは、アミノ基,メルカプト基,又はウレタン構造のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有し、 前記化学構造Bは、アミノ基,メルカプト基,又はエポキシ基のうち少なくとも1つに基づく共有結合を有するか、アミノ基,カルボキシル基,又はヒドロキシ基のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する」は、本件特許発明1の「前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲6発明1は「ガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する、バリアフィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-1> 本件特許発明1では、前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであるのに対し、甲6発明1ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 <相違点6-1> 相違点6-1は実質的な相違点である。 そして、相違点6-1は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明1は、甲6の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明4 本件特許発明4は、「前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものである」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲6発明1の<相違点6-1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明4は、甲6の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 (4)本件特許発明8 ア 甲6発明2との対比 本件特許発明8を、他の請求項を引用せずに、書き下すと「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層と、前記蛍光体層の少なくとも一方の面上に積層されたガスバリア性フィルムと、 一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層と、 を備えるバリアフィルムであって、 前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する、バリアフィルムと、を備え、 前記バリアフィルムは、前記蛍光体層側の最表面に前記プライマー層を備える、波長変換シート。」である。 そして、甲6発明2の「励起光により励起されて蛍光を発光する少なくとも1種の量子ドット」及び「有機マトリクス」は、それぞれ、本件特許発明8の「蛍光体」及び「封止樹脂」に相当するから、甲6発明2の「励起光により励起されて蛍光を発光する少なくとも1種の量子ドットが、有機マトリクス中に分散されて含有されてなる波長変換層」は、本件特許発明8の「蛍光体及び封止樹脂を含む蛍光体層」に相当する。 甲6発明2の「該波長変換層の少なくとも一方の主面に隣接して備えられてなる介在層」は、硬化するものであるから(摘記6c参照)、本件特許発明1の「一方の最表面に配置された、プライマー層形成用組成物の硬化物からなるプライマー層」に相当する。 甲6発明2の「該介在層の前記波長変換層と反対側の主面に隣接して備えられてなる、窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を主成分とするバリア層」は、本件特許発明8の「ガスバリア性フィルム」に相当する。 甲6発明2の「介在層」及び「バリア層」は、合わせてバリアフィルムを形成するから(摘記6e参照)、本件特許発明8の「バリアフィルム」に相当する。 甲6発明2の「前記介在層は、前記バリア層の主成分である窒化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素と結合してなる化学構造Aと、前記有機マトリクスと結合してなる化学構造Bとを含む」及び「化学構造Aを含む密着剤40Aは、化学構造Cを介して、また、化学構造Bを含む密着剤40Bは、化学構造Dを介して介在層12bの有機マトリクス12Pと結合しており、 前記化学構造Aは、アミノ基,メルカプト基,又はウレタン構造のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有し、 前記化学構造Bは、アミノ基,メルカプト基,又はエポキシ基のうち少なくとも1つに基づく共有結合を有するか、アミノ基,カルボキシル基,又はヒドロキシ基のうち少なくとも1つに基づく水素結合を有する」は、本件特許発明8の「前記プライマー層形成用組成物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の第1の反応性官能基を主鎖又は側鎖に有する樹脂骨格の側鎖に、前記第1の反応性官能基とは異なり且つイソシアネート基以外である第2の反応性官能基が結合した構造を有する多官能性化合物を含有する」に相当する。 そうすると、本件特許発明8と甲6発明2は、以下の点で相違する。 <相違点6-2> 本件特許発明8では、前記樹脂骨格が、ポリエステル系樹脂及び/又はアクリル系樹脂に由来するものであるのに対し、甲6発明2ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 <相違点6-2> 相違点6-2は実質的な相違点である。 そして、相違点6-2は課題解決のための具体化手段における微差、すなわち、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないものとはいえない。 ウ 小括 本件特許発明8は、甲6の出願に記載された発明と同一であるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。 第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人の申立理由は以下のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~3、7、8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項1~3、7、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~5、7~9、12~17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項1~5、7~9、12~17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3(拡大先願)請求項1、3、4、8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第6号証に記載された発明と同一であって、この出願の発明者が先願発明1の発明者と同一でなく、この出願時に、この出願の出願人と上記発明の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、上記の請求項1、3、4、8に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 そして、理由1~3は、前記第4 1 理由1~3として採用されている。 したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、令和4年6月14日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和4年11月16日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4、5、7-9、12~17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、4、5、7-9、12~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 訂正前の請求項2、3は本件訂正により削除されたため、請求項2、3についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700288

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