審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-700212

ウェハ洗浄水供給装置

審判番号
2022-700212
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-129743
登録番号
6939960
請求日
2022年03月11日
審決日
2023年06月07日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】栗田工業株式会社
  • 【権利者代理人】早川 裕司
  • 【権利者代理人】村雨 圭介
  • 【異議申立人】中村 健
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 小田 浩
分類
P1652.537-ZB (H01L) / P1652.856-ZB (H01L) / P1652.121-ZB (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6939960号発明「ウェハ洗浄水供給装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6939960号の請求項1、3に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6939960号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年7月30日に出願され、令和3年9月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。 そして、特許異議申立人中村健(以下「申立人」という。)により、令和4年3月11日に差し出された特許異議申立書によりその請求項1、3に係る特許について特許異議の申立てがされ、当審は、同年6月6日付けで取消理由を通知した。 それに対し、特許権者は、その指定期間内である同年8月5日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「第1訂正請求」という。)を行い、第1訂正請求に対して、申立人は、同年9月6日付けで意見書を提出した。 その後、当審は、同年10月17日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、それに対し、特許権者は、その指定期間内である同年12月14日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「第2訂正請求」という。)を行い、当審は申立人に対して、令和5年1月23日付けで訂正請求があった旨の通知を行ったが、申立人は第2訂正請求に対する意見書を提出しなかった。 その後、当審は、同年3月31日付けで第2訂正請求についての訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は指定期間内に応答しなかった。 第2 第2訂正請求の適否について 1 訂正の内容 令和4年12月14日に提出された訂正請求書による訂正の請求(第2訂正請求)の、訂正の趣旨は、特許第6939960号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正請求書の記載のとおり。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「 前記薬剤が液体であり、該薬剤の超純水への添加機構が、給液ポンプ又は薬剤を充填した密閉タンクと該密閉タンクに不活性ガスを供給する加圧手段とによる圧送手段である、請求項1に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 と記載されているのを、独立形式に改め、 「 超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、 この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽と、 前記ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管と、 前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐して前記洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管と、を備えるウェハ洗浄水供給装置であって、 前記余剰のウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管が、前記洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐しており、 前記返送配管と前記ウェハ洗浄水供給配管との分岐部が、前記洗浄機の内部に配置され、前記貯留槽と前記ウェハ洗浄水供給配管と前記返送配管とで前記ウェハ洗浄水を循環可能となっており、 前記薬剤が液体であり、該薬剤の超純水への添加機構が、給液ポンプ又は薬剤を充填した密閉タンクと該密閉タンクに不活性ガスを供給する加圧手段とによる圧送手段である、ウェハ洗浄水供給装置。」 に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~7も同様に訂正する。) (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「 前記貯留槽に水位を検知する検知手段が設けられているとともに、この検知手段の液位情報に基づいて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造開始・停止を制御する制御手段を備える、請求項1又は2に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 と記載されているのを、請求項1を引用しないものに訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。) (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「 前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量が多段階に調整可能であり、前記貯留槽の水位に応じて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量を多段階に調整する制御手段を備える、請求項1又は2に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 と記載されているのを、請求項1を引用しないものに訂正する。(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。) (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「 前記ウェハ洗浄水製造部と前記貯留槽との間に排出機構が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 と記載されているのを、請求項1を引用しないものに訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する。) (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に、 「 前記ウェハ洗浄水製造部に超純水又はウェハ洗浄水の溶存酸素を除去する機構を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 と記載されているのを、請求項1を引用しないものに訂正する。 (7) 一群の請求項について 訂正前の請求項1~7について、請求項2~7はそれぞれ同一カテゴリーで表現された請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (8) 独立特許要件 本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1、3が特許異議申立の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1、3に係る訂正事項1、3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 2 訂正の適否について 事案に鑑み請求項4についての訂正要件について検討する。 (1) 訂正事項4の訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項1又は2を引用すると規定された請求項4を、請求項2のみを引用すると規定する訂正であって、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2) 訂正事項4に係る独立特許要件 上記(1)のとおり訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、かつ、請求項4に係る特許は、特許異議申立ての対象ではない。 そこで、訂正事項2及び4により訂正された請求項4に係る発明が特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 ア 本件訂正発明 訂正事項2及び4により訂正された、請求項4に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は次の記載により特定されるものである。 「【請求項2】 超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、 この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽と、 前記ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管と、 前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐して前記洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管と、を備えるウェハ洗浄水供給装置であって、 前記余剰のウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管が、前記洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐しており、 前記返送配管と前記ウェハ洗浄水供給配管との分岐部が、前記洗浄機の内部に配置され、前記貯留槽と前記ウェハ洗浄水供給配管と前記返送配管とで前記ウェハ洗浄水を循環可能となっており、 前記薬剤が液体であり、該薬剤の超純水への添加機構が、給液ポンプ又は薬剤を充填した密閉タンクと該密閉タンクに不活性ガスを供給する加圧手段とによる圧送手段である、ウェハ洗浄水供給装置。 【請求項4】 前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量が多段階に調整可能であり、前記貯留槽の水位に応じて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量を多段階に調整する制御手段を備える、請求項2に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 イ 甲第4号証の記載、引用発明 (ア) 甲第4号証の記載 申立人が提出した甲第4号証(特開2018-182099号公報)には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審が付加した。) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、超純水にpH調整剤、酸化還元電位調整剤などを添加して、半導体ウェハ等の洗浄水を製造し、供給する装置に関するものであって、特にpH調整剤、酸化還元電位調整剤等の溶質をごく低濃度にて含むウェハ洗浄水を製造し供給するのに好適な装置に関する。 ・・・<中略>・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、半導体用ウェハ等の洗浄・リンス工程に供給するのに好適な、アルカリ・酸化剤等のごく低濃度の溶質を含む洗浄水を安定供給することができ、しかも余剰水を全く又は殆ど排出させることがない洗浄水供給装置を提供することを目的とする。 ・・・<中略>・・・ 【0014】 本発明では、洗浄水製造部で、一定濃度となった洗浄水が製造される。この一定濃度の洗浄水が貯留槽に貯留され、貯留槽内の洗浄水がウェハ洗浄機に供給される。貯留槽内の安定した水質の洗浄水が洗浄機に供給される。 【0015】 本発明によると、多数のバルブが不規則に開閉する多チャンバー枚葉式洗浄機において、洗浄・リンス工程で極めて重要な液質を所望の値に精度良く安定に保つ供給が実現でき、かつ余剰水の排出をなくし超純水の無駄遣いを防止できる。 ・・・<中略>・・・ 【0018】 図1は本発明の洗浄水供給装置の実施の形態の一例を示す系統図である。 【0019】 この洗浄水供給装置は、超純水にpH調整剤及び/又は酸化還元電位調整剤等を添加して水質調整水を製造し、洗浄機に供給するためのものであり、超純水が定量にて流れる超純水ライン1と、該超純水ラインに溶質を定量添加して洗浄水を製造する製造部2と、製造された洗浄水が配管3を介して導入される貯留槽4と、該貯留槽4から洗浄水が供給される第1ないし第nのn個の洗浄機5A,5B………5N等を有する。配管3にはバルブ3aが設けられている。バルブ3aの上流側において、配管3からドレン配管6が分岐している。配管6にバルブ6aが設けられている。 【0020】 貯留槽4には水位センサ4aが設けられ、該水位センサ4aの検出信号が制御器2aに入力されている。該制御器2aからの信号によって洗浄水製造部2とバルブ3a,6aが制御される。 【0021】 貯留槽4には、酸素をパージするための窒素ガス等の不活性ガス供給配管4bが接続されている。 【0022】 アンモニア水、塩酸などのアルカリや、酸、過酸化水素水などの酸化剤といった、一般的にELグレードの薬液添加で製造される希薄洗浄水の液質は安定である。このため、極端な長時間でなければ作り貯めして貯留槽4に貯留しておいても、洗浄水の溶質濃度は殆ど変化しない。また、この実施の形態では、N2ガス等によって酸素をパージするので、大気中の酸素が洗浄水に溶解することもない。 【0023】 貯留槽4の水位が一定以上のときは、製造部2での洗浄水の製造を停止する。洗浄機5A~5Nでの消費に伴い、貯留槽4の水位が規定の下限レベルまで低下したときは、製造部2での洗浄水の製造及び貯留槽4への供給を開始する。この際の製造流量は、洗浄機5A~5Nでの使用の最大流量(合計流量)より大きく設定しておき、必ず水位が上昇するようにする。水位が規定の上限レベルに達したならば、洗浄水の製造、供給を停止する。以下、これを繰り返すことにより、貯留槽4内には常に上述の下限レベルと上限レベルとの間の水位となるように洗浄水が貯留される。 ・・・<中略>・・・ 【0027】 洗浄機5A,5B,………5Nへは、それぞれ、貯留槽4から分岐配管7、バルブ8、ポンプ9、配管10を介して洗浄水が供給される。配管10にフィルターが設けられてもよい。配管10からはリターン配管11が分岐しており、該リターン配管11の末端側は貯留槽4に接続されている。リターン配管11にバルブ12が設けられている。 【0028】 超純水ライン1には、定量ポンプ、定流量弁、流量制御装置等を備えた定量供給装置によって超純水が一定流量にて流れている。製造部2では溶質が一定供給量にて超純水に添加され、これにより、高精度にて目的濃度となった洗浄水が貯留槽4に供給される。 【0029】 洗浄水製造部2の構成の一例を図3~8に示す。 【0030】 図3では、洗浄水製造部は、薬液タンク15と、薬注ポンプ16と、薬注配管17とで構成されている。薬液タンク15内には、pH調整剤、酸化還元電位調整剤等の1種以上が所定濃度にて溶解した薬液が収容されている。薬注ポンプ16としては定量ポンプ又は流量制御装置付きポンプが用いられる。図4のように、薬液タンク15と、薬注ポンプ16と、薬注配管17とからなる薬注ユニットが2以上設置されてもよい。 【0031】 図3,4では、薬液タンク15内の薬液を薬注ポンプ16によって超純水ライン1に薬注するようにしているが、図5のように薬液タンク15に窒素ガス等の不活性ガスを定量供給して薬液を超純水ライン1に定量添加するよう構成してもよい。図5は図3に関連するものであるが、図4も同様に構成することができる。後述の図6~8においても、薬液タンク15内の薬液を窒素ガス等のガス圧によって薬注するようにしている。 ・・・<中略>・・・ 【0045】 本発明では、精度よく所望濃度の希薄洗浄水を製造できる流量条件を2段階(高流速条件、低流速条件)定めておき、貯留槽4の水位が上昇して所定レベル(例えば、上限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を高流速条件から低流速条件に切り替え、また水位が低下して所定レベル(例えば、下限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を低流速条件から高流速条件に切り替えることもできる。この場合、製造開始時の濃度安定化に要する間の排水が無くなり、より無駄の無いシステムとなる。」 「【図1】 [図:0001400429000001.jpg] 」 「【図3】 [図:0001400429000002.jpg] 」 「【図5】 [図:0001400429000003.jpg] 」 (イ) 引用発明 a 甲第4号証の図1において、配管10とリターン配管11との分岐部が、洗浄機5A,5B,………5Nの外側に配置されていることが見てとれる。 b 以上を踏まえると、甲第4号証には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「pH調整剤、酸化還元電位調整剤等の溶質をごく低濃度にて含むウェハ洗浄水を製造し、洗浄機に供給するのに好適な装置(段落0001、0019)であって、 超純水が定量にて流れる超純水ライン1と、該超純水ラインに溶質を定量添加して洗浄水を製造する製造部2と、製造された洗浄水が配管3を介して導入される貯留槽4と、を有し(段落0019)、 洗浄機5A,5B,………5Nへは、それぞれ、貯留槽4から分岐配管7、バルブ8、ポンプ9、配管10を介して洗浄水が供給され(段落0027)、 配管10からはリターン配管11が分岐しており、該リターン配管11の末端側は貯留槽4に接続され(段落0027)、 配管10とリターン配管11との分岐部が、洗浄機5A,5B,………5Nの外側に配置され(上記a)、 余剰水を全く又は殆ど排出させることがない洗浄水供給装置(段落0007)であって、 洗浄水製造部2が、薬液タンク15内の薬液を薬注ポンプ16によって超純水ライン1に薬注する(段落0029、0031、図3)、又は、薬液タンク15に窒素ガス等の不活性ガスを定量供給して薬液を超純水ライン1に定量添加する(段落0031、図5)よう構成され、 精度よく所望濃度の希薄洗浄水を製造できる流量条件を2段階(高流速条件、低流速条件)定めておき、貯留槽4の水位が上昇して所定レベル(例えば、上限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を高流速条件から低流速条件に切り替え、また水位が低下して所定レベル(例えば、下限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を低流速条件から高流速条件に切り替える(段落0045) 洗浄水供給装置。」 ウ 対比 本件訂正発明と引用発明とを対比する。 (ア) ウェハ洗浄水を製造し、洗浄機に供給する洗浄水供給装置の発明である引用発明は、「ウェハ洗浄水供給装置」の発明といえる点で本件訂正発明と共通する。 (イ) 引用発明の超純水が定量にて流れる「該超純水ラインに溶質を定量添加して洗浄水を製造する製造部2」は、本件訂正発明の「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部」に相当する。 (ウ) 引用発明の「製造された洗浄水が配管3を介して導入される貯留槽4」は、本件訂正発明の「この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽」に相当する。 (エ) 引用発明の、洗浄機5A,5B,………5Nへ、それぞれ、貯留槽4から洗浄水を供給する「分岐配管7、バルブ8、ポンプ9、配管10」は、本件訂正発明の「前記ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管」に相当する。 (オ) 引用発明の、配管10から分岐し、末端側が貯留槽4に接続されるリターン配管11は、洗浄水を貯留層4に返送するものであることが明らかであるから、本件訂正発明の「前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐してウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管」に対応するといえる。 (カ) 引用発明において、「貯留槽4」と「分岐配管7、バルブ8、ポンプ9、配管10」と「リターン配管11」とで洗浄水を循環していることは明らかであるから、引用発明は「前記貯留槽と前記ウェハ洗浄水供給配管と前記返送配管とで前記ウェハ洗浄水を循環可能となっている」といえる点で本件訂正発明と共通する。 (キ) 「洗浄水製造部2が、薬液タンク15内の薬液を薬注ポンプ16によって超純水ライン1に薬注する、又は、薬液タンク15に窒素ガス等の不活性ガスを定量供給して薬液を超純水ライン1に定量添加するよう構成され」る引用発明は、「前記薬剤が液体であり、該薬剤の超純水への添加機構が、給液ポンプ又は薬剤を充填した密閉タンクと該密閉タンクに不活性ガスを供給する加圧手段とによる圧送手段である」といえる点で本件訂正発明と一致する。 (ク) 「精度よく所望濃度の希薄洗浄水を製造できる流量条件を2段階(高流速条件、低流速条件)定めておき、貯留槽4の水位が上昇して所定レベル(例えば、上限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を高流速条件から低流速条件に切り替え、また水位が低下して所定レベル(例えば、下限レベルと中間レベルとの間のレベル)に達したならば、製造流量条件を低流速条件から高流速条件に切り替える」引用発明は、「前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量が多段階に調整可能であり、前記貯留槽の水位に応じて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量を多段階に調整する制御手段を備える」といえる点で本件訂正発明と一致する。 (ケ) 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件訂正発明と引用発明は次の点で一致し、相違する。 a 一致点 「 超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、 この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽と、 前記ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管と、 前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐してウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管と、を備えるウェハ洗浄水供給装置であって、 前記貯留槽と前記ウェハ洗浄水供給配管と前記返送配管とで前記ウェハ洗浄水を循環可能となっており、 前記薬剤が液体であり、該薬剤の超純水への添加機構が、給液ポンプ又は薬剤を充填した密閉タンクと該密閉タンクに不活性ガスを供給する加圧手段とによる圧送手段であり、 前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量が多段階に調整可能であり、前記貯留槽の水位に応じて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造量を多段階に調整する制御手段を備える ウェハ洗浄水供給装置。」 b 相違点1 本件訂正発明の返送配管が「前記洗浄機での余剰の」ウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送するものであるのに対し、 引用発明の「リターン配管11」が返送する洗浄水が「前記洗浄機での余剰の」と特定されていない点。 c 相違点2 本件訂正発明が「前記余剰のウェハ洗浄水を前記貯留槽にまで返送する返送配管が、前記洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐しており、 前記返送配管と前記ウェハ洗浄水供給配管との分岐部が、前記洗浄機の内部に配置され」ることを特定しているのに対し、 引用発明の「分岐部」は、「洗浄機5A,5B,………5Nの外側に配置され」、分岐部と洗浄水の吐出部との距離が特定されていない点。 エ 相違点の検討 (ア) 相違点1について 引用発明の「リターン配管11」が返送する洗浄水は、洗浄機5A,5B,………5Nへは供給されない洗浄水であり、「前記洗浄機での余剰の」洗浄水といえるから、相違点1は実質的なものではない。 (イ) 相違点2について a 甲第5号証の記載、甲第5号証記載の発明 (a) 甲第5号証の記載 申立人が提出した甲第5号証(特開2018-163976号公報)には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審が付加した。) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。 【背景技術】 【0002】 半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。たとえば、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の表面に処理液を供給するノズルとを備えている。ノズルに対し、所定の高温に温度調整された処理液が供給されるものがある(たとえば特許文献1)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2013-172079号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 このような基板処理装置では、ノズルからの吐出停止状態では、ノズルの管壁や処理液配管の管壁が温度低下する。したがって、高温の処理液を用いた前回の処理から長期間が経過した後に、高温の処理液を用いた処理を再開する際には、処理液配管やノズルに送り出された高温の処理液が、温度の低いノズルの管壁や処理液配管の管壁と熱交換して冷却される恐れがある。そのため、高温の処理液を用いた処理の再開時に、温度低下した処理液が基板に供給されるおそれがある。高温の処理液が所望の温度よりも低いと処理レートが低下するなどの問題が発生する。そして、その後に連続して処理が行われる場合には、処理を重ねるごとに管壁が温度上昇し、ノズルからは所期の高温を有する処理液が吐出されるようになる。したがって、このような熱影響に起因して基板間の処理がばらつくおそれがある。 【0005】 すなわち、複数枚の基板に対し高温処理を繰り返し連続的に施す場合に、このような熱影響に起因する基板間の処理のばらつきを抑制または防止することが求められている。 そこで、本発明の目的は、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。 ・・・<中略>・・・ 【0049】 図4は、複数のノズル22を示す模式的な正面図である。図4では、複数のノズル22が基板Wの上面上に設定された処理位置P1に配置されている状態を示す。図4では、複数のノズル22のノズルヘッド26のうち、第2のノズルヘッド26Bのみ内部を詳細に記載しているが、第2のノズルヘッド26B以外の各ノズルヘッド26の内部の構成も同様である。 【0050】 第1のノズル22Aは、1つの吐出口31を有している。第2のノズル22B、第32のノズル22Cおよび第4のノズル22Dは、それぞれ3つの吐出口31を有している。すなわち、複数のノズル22に設けられた吐出口31の総数が10個である。 第1~第4のノズル22A~22Dは、それぞれ吐出バルブ28をさらに含む。各吐出バルブ28はノズルヘッド26内に設けられている。各吐出バルブ28は、2つのチューブ29,30が接続されている。チューブ29,30は、それぞれ処理液を案内する流路を形成している。 【0051】 第1のノズルヘッド26Aの吐出バルブ28には、吐出口部70が結合されている。吐出口部70の内部には、処理液を案内する1つの流路が形成されている。吐出口部70の1つの流路は、各吐出口部70の下面で開口して、1つの吐出口31(31A)を形成している。 第2のノズルヘッド26B~第4のノズルヘッド26Dの各吐出バルブ28には、吐出口ボディ34が結合されている。吐出口ボディ34は、処理液を案内する複数(たとえば3つ)の流路を形成している。第2のノズルヘッド26Bの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31B)を形成している。第3のノズルヘッド26Cの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31C)を形成している。第4のノズルヘッド26Dの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31D)を形成している。 【0052】 各吐出口ボディ34に設けられた3つの吐出口31(31B,31C,31D)は、3つの吐出口31のうちで回転軸線A1に最も近い内側吐出口と、3つの吐出口31のうちで回転軸線A1から最も遠い外側吐出口と、内側吐出口と外側吐出口との間に配置された中間吐出口とを含む。複数の吐出口31は、平面視で略直線状に並んでいる。隣接する2つの吐出口31の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。また、複数の吐出口31は、2つ以上の異なる高さに配置されていてもよいし、同じ高さに配置されていてもよい。 【0053】 各吐出口31は、基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に処理液を吐出する。複数の吐出口31は、基板Wの上面内の複数の着液位置に向けて処理液を吐出する。複数の着液位置は、回転軸線A1からの距離が異なる別々の位置である。 複数のノズルヘッド26が処理位置に配置された状態で、複数の吐出口31は、回転軸線A1からの距離(平面視での最短距離)が異なる複数の位置にそれぞれ配置される。複数の吐出口31は、平面視で基板Wの回転は回転半径方向に沿って一列に配列されている。第1のノズルヘッド26Aに設けられた第1の吐出口31Aは、基板Wの上面中央部に対向するように配置されている。また、第1のノズルヘッド26A以外の各ノズルヘッド26に設けられた第2の吐出口31B、第3の吐出口31Cおよび第4の吐出口31Dは、中央部以外の基板Wの上面に対向するように配置されている。この状態で、複数の吐出口31のうちで回転軸線A1に最も近い最内吐出口(第1の吐出口31A)は、基板Wの中央部の上方に配置され、複数の吐出口31のうちで回転軸線A1から最も遠い最外吐出口(第4の吐出口31D)は、基板Wの周縁部の上方に配置される。 【0054】 チューブ29から各吐出口31に至る流路は、薬液タンク6(図1参照)から供給される処理液を、吐出口31に向けて案内する薬液供給流路32(後述する)の一部に該当する。吐出バルブ28内で薬液供給流路32から分岐してチューブ30に続く流路は、薬液供給流路32を流通している処理液を薬液タンク6に戻す第2の帰還流路33(後述する)の一部に該当する。 【0055】 図5は、吐出バルブ28の一例の内部を示す断面図である。 吐出バルブ28は、処理液を導く流路35が形成された本体36と、流路35を開閉する弁体37と、弁体37を軸方向X1に進退させて流路35を開閉させる空圧アクチュエータ38と、吐出口31とを含む。 本体36は、空圧アクチュエータ38を構成するシリンダ39と、弁体37を進退させる弁室40と、チューブ29と連通して弁室40に至る流路35aと、流路35aの、弁室40よりも上流の位置で、流路35aに接続された、チューブ30と連通する流路35bと、弁室40から吐出口31に至る流路35cとを含む。シリンダ39と弁室40とは、軸方向X1に並んでいる。シリンダ39と弁室40との間は、隔壁41によって隔てられている。 【0056】 流路35cは、吐出口ボディ34の内部を挿通し、かつ吐出口31に連通する連通路69が形成されている。この実施形態では、連通路69は、弁室40側の主連通路69Aと、主連通路69Aと各吐出口31とを接続する複数の分岐路69Bとを含む。 空圧アクチュエータ38は、シリンダ39、ピストン42、バネ43およびロッド44を含む。シリンダ39は、ピストン42によって、隔壁41側の前室と、当該ピストン42を挟んで軸方向X1の反対側の後室とに隔てられている。本体36には、シリンダ39の前室および後室にそれぞれ別個に空気圧を伝達するチューブ(図4に示すチューブ45)を接続するためのジョイント47が、各々接続されている。ピストン42は、チューブ45およびジョイント47を介して、シリンダ39の前室または後室のいずれ一方に空気圧を伝達することにより、シリンダ39内を、軸方向X1に沿って進退される。 【0057】 バネ43は、シリンダ39の後室側において、ピストン42と本体36との間に介挿されて、ピストン42を、隔壁41の方向に押圧している。 ロッド44は、基部がピストン42に連結され、先端部が、隔壁41を貫通して弁室40に突出されている。弁室40に突出されたロッド44の先端部には、弁体37が連結されている。弁体37は円板状に形成され、ロッド44の先端部に、径方向を軸方向X1と直交させて連結されている。弁体37は、シリンダ39内で、ピストン42が軸方向X1に沿って進退されると、ロッド44を介して、弁室40内で、軸方向X1に沿って進退される。 【0058】 弁室40は、隔壁41と対向し、軸方向X1と直交する円環状の弁座面46を含み、弁座面46の中心位置に、流路35aが同心状に開口されている。流路35cは、弁室40の、弁体37の進退方向(軸方向X1)の側方に開口されている。 チューブ29と流路35a、チューブ30と流路35bは、それぞれジョイント48を介して接続される。 【0059】 本体36は、先端に吐出口31が形成され、ノズルヘッド26の下面から下方へ突出される筒部49を含む。第1のノズルヘッド26A以外の各ノズルヘッド26では、図示していないが、筒部49に、処理液を案内する複数の流路が形成された吐出口ボディ34が接続され、吐出口ボディ34の複数の流路が下面で開口されて、複数の吐出口31が形成されている。 【0060】 吐出バルブ28において処理液に接する部分(接液部)は、処理液に対する耐性を有する材料(たとえば、フッ素樹脂等の合成樹脂)によって作製されるか、もしくは処理液に対する耐性を有する材料からなる被膜によって被覆されている。流路35や弁室40の内面、あるいは弁体37やロッド44の外面は、接液部に含まれる。 シリンダ39の前室および後室のいずれにも空気圧を作用させず、空圧アクチュエータ38を作動させない状態では、ピストン42が、バネ43によって、シリンダ39内で前進位置、つまり、図8に示すように、隔壁41側に近接した位置に押圧され、それによって弁室40内で、弁体37が弁座面46に接触されて、流路35aの開口が閉鎖される。そのため、流路35aと流路35cとの間が閉じられて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液は、流路35bとチューブ30とを通して薬液タンク6に帰還させられる(吐出停止状態)。 【0061】 この吐出停止状態において、シリンダ39の前室に空気圧を伝達して、ピストン42を、バネ43の押圧力に抗して、シリンダ39の後室方向に後退させると、弁室40内で、弁体37が弁座面46から離れて、流路35aの開口が弁室40に解放される。そのため、流路35aと流路35cとが、弁室40を介して繋がれて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液が、流路35cを通して、吐出口31から吐出される(吐出状態)。 【0062】 この吐出状態において、シリンダ39の前室への空気圧の伝達を停止し、代わって、シリンダ39の後室に空気圧を伝達して、ピストン42を、バネ43の押圧力とともに、シリンダ39の前室方向、すなわち、隔壁41に近接する方向に前進させると、弁室40内で、弁体37が弁座面46に接触されて、流路35aの開口が閉鎖される。そのため、流路35aと流路35cとの間が閉じられて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液は、流路35bとチューブ30とを通して薬液タンク6(図1参照)に帰還させられる吐出停止状態に復帰する。 ・・・<中略>・・・ 【0068】 次に、図6を参照して、複数の吐出口31からの処理液の吐出が停止された吐出停止状態の処理液供給システムについて説明する。図6では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。 吐出停止状態では、第1の帰還バルブ53が閉じられかつ供給バルブ54が開かれる。これにより、第1の循環流路50を循環している薬液が、複数の薬液供給流路32に流れ、第2の循環流路67を循環する。具体的には、薬液供給流路32に供給された処理液は、第2の循環ヒータ57によって加熱された後、チャンバー9内に配置された吐出口31の近傍の、第2の帰還流路33との接続位置まで送られて、当該接続位置から、第2の帰還流路33を介して、薬液タンク6に帰還させられる。 【0069】 この吐出停止状態においては、複数の薬液供給流路32と、そのそれぞれに接続された第2の帰還流路33とを介して処理液を循環させ続けることにより、それぞれの薬液供給流路32内の処理液を、チャンバー9内の(すなわち吐出口31の近傍の)第2の帰還流路33との接続位置まで、所定の高温に維持することができる。 次に、図7を参照して、複数の吐出口31から処理液が吐出される吐出状態の処理液供給システムについて説明する。図7では、やはり、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。 【0070】 薬液タンク6内の処理液は、ポンプ52によって第1の循環流路50に送られる。ポンプ52によって送られた処理液は、第1の循環ヒータ51によって加熱された後、第1の循環流路50から複数の薬液供給流路32に流れる。薬液供給流路32に供給された処理液は、第2の循環ヒータ57によって加熱された後、チャンバー9内に配置された複数の吐出口31に供給される。 【0071】 第1の薬液供給流路32Aに供給された処理液は、第1のノズルヘッド26Aに設けられた1つの第1の吐出口31Aに供給される。第2の薬液供給流路32Bに供給された処理液は、第2のノズルヘッド26Bに設けられた複数の第2の吐出口31Bに供給される。第3の薬液供給流路32Cおよび第4の薬液供給流路32Dについても、第2の薬液供給流路32Bと同様である。これにより、全ての吐出口31から処理液が吐出される。 【0072】 この吐出状態においては、複数の吐出口31から、基板Wの上面内の異なる複数の位置に処理液を供給することで、処理液の温度の均一性の低下を抑制できる。また、基板Wを回転軸線まわりに回転させながら、当該回転軸線からの距離が異なる複数の位置に、複数の吐出口31から吐出させた処理液を着液させる場合には、基板Wの上面の全域に、速やかに、処理液を行き渡らせることができる。 ・・・<中略>・・・ 【0113】 また、高温の処理液として、高温の薬液を例に挙げたが、高温の処理液が、高温の水であってもよい。この場合、水は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)であるが、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。 また、前述の実施形態では、ノズル22が複数設けられる場合について説明したが、ノズル22が退避位置P2において、温度調整ユニット80によって加熱(温度変更)されるのであれば、温度変更対象のノズル22は複数でなく1つであってもよい。」 「【図4】 [図:0001400429000004.jpg] 」 「【図5】 [図:0001400429000005.jpg] 」 「【図6】 [図:0001400429000006.jpg] 」 「【図7】 [図:0001400429000007.jpg] 」 (b) 甲第5号証記載の発明 上記(a)によると甲第5号証には次の発明(以下「甲第5号証記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「半導体ウエハを処理対象となる基板とする基板処理装置が備える吐出バルブ28(段落0001、0055)であって、 吐出バルブ28は、処理液を導く流路35が形成された本体36と、流路35を開閉する弁体37と、弁体37を軸方向X1に進退させて流路35を開閉させる空圧アクチュエータ38と、基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に処理液を吐出する吐出口31とを含み(段落0053、55)、 空圧アクチュエータ38の作動によって 薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液を、流路35bとチューブ30とを通して薬液タンク6に帰還させる(吐出停止状態)と(段落0060)、 薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液を、流路35cを通して、吐出口31から吐出させる(吐出状態)とを選択し(段落0061)、 高温の処理液は、高温の純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい(段落0113)、 吐出バルブ28。」 b 相違点2の検討 引用発明と甲第5号証記載の発明とは、貯留槽4(甲第5号証記載の発明の薬液タンク6と対応)から、ウェハに対して供給する洗浄水や処理液を、リターン配管11(甲第5号証記載の発明の流路35bとチューブ30と対応)とを通して、貯留槽4(甲第5号証記載の発明の薬液タンク6と対応)に帰還させるという共通する技術分野に属する。 そうすると、引用発明の配管10からリターン配管11が分岐する構成として、技術分野が共通する甲第5号証記載の発明の吐出バルブ28を採用することは、当業者が容易に想到し得る事項といえる。 そして、処理対象の基板の半導体ウエハの大きさからすると、甲第5号証記載の発明の吐出バルブ28における吐出口31と、流路35aと流路35bとの接続点、すなわち分岐部との距離が10m以下であることは明らかである。 また、引用発明に甲第5号証記載の発明の吐出バルブ28を採用した場合、吐出バルブ28が洗浄機5A,5B,………5Nそれぞれの内部に配置され、それにともない、配管10からのリターン配管11の分岐もそれぞれ洗浄機5A,5B,………5Nの内部でなされることになる。 したがって、引用発明に甲第5号証記載の発明を採用することにより相違点2は解消するから、本件訂正発明は、引用発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 オ 特許権者の主張について 特許権者は、訂正事項がすべての訂正要件に適合している事実の説明として、「本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。」(令和4年12月14日提出の訂正請求書10ページ8~11行)と主張しているが、請求項4については特許異議申立ての対象ではないから、特許権者の主張は採用できない。 カ 訂正事項4に係る独立特許要件についての小括 以上のとおり、本件訂正発明は、引用発明及び甲第5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3) 訂正の適否についての結論 上記1(7)のとおり、訂正前の請求項1~7は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、上記(2)のとおり、訂正前の請求項4に対する訂正事項4は特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合しない。 よって、他の訂正事項を検討するまでもなく、一群の請求項である請求項〔1~7〕についての第2訂正請求は認めることができない。 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 本件発明1、3 上記第2のとおり、第2訂正請求は認められない。また、第1訂正請求は、第2訂正請求があったときに取り下げられたとみなされる。 したがって、特許異議申立ての対象である、本件請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明3」という。)は、特許掲載公報に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、 この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽と、 前記ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管と、 前記ウェハ洗浄水供給配管から分岐して洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管と、を備えるウェハ洗浄水供給装置であって、 前記余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管が、前記洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で分岐しており、 前記返送配管が洗浄機側に設けられており、前記貯留槽と前記ウェハ洗浄水供給配管と前記返送配管とで前記ウェハ洗浄水を循環可能となっている、ウェハ洗浄水供給装置。 【請求項3】 前記貯留槽に水位を検知する検知手段が設けられているとともに、この検知手段の液位情報に基づいて前記ウェハ洗浄水製造部におけるウェハ洗浄水の製造開始・停止を制御する制御手段を備える、請求項1又は2に記載のウェハ洗浄水供給装置。」 2 取消理由の概要 当審が令和4年6月6日付けで特許権者に通知した取消理由は、本件特許1、3は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるというものである。 3 当審の判断 請求項1の「前記返送配管が洗浄機側に設けられており、」との記載がどのような技術事項を特定しているのか下記の点で明らかでない。 (1) 「側」とは、「物事の一つの面、方向、立場。また、そのような面、方向、立場などにあるものや人。」(精選版 日本国語大辞典)のことであるが、請求項1の上記記載において「洗浄機側」が何の洗浄機側、または何に対する洗浄機側を意味しているのか明らかでない。 (2) 請求項1に係る発明は、「ウェハ洗浄水製造部」と、「貯留槽」と、「ウェハ洗浄水供給配管」と、「返送配管」と、を備える「ウェハ洗浄水供給装置」の発明であり、「ウェハ洗浄水供給装置」が「洗浄機」を備えることは特定されていない。 そうすると、請求項1に係る発明において、「貯留層」及び「洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管」は、(洗浄機側ではなく)「ウェハ洗浄水供給装置」側に設けられているものと理解するのが自然である。 そして、請求項1の「前記返送配管が洗浄機側に設けられており」とのさらなる記載は、「返送配管」が(ウェハ洗浄水供給装置側ではなく)「洗浄機側」に設けられることを特定すると解し得るが、上記理解と整合しない。 したがって、本件発明1は、「返送配管」と、「洗浄機」及び「貯留槽」との関係が明確とはいえない。 (3) 本件の発明の詳細な説明の段落0010の「上記発明(発明1)においては、前記返送配管が洗浄機側に設けられており、」との記載、また、段落0024の「このウェハ洗浄水供給配管6には、洗浄機4側に洗浄ノズル4Aの先端から距離(t)で分岐して、返送配管7が接続されていて、洗浄機4での余剰のウェハ洗浄水W1を貯留槽3にまで返送可能となっている。」との記載、及び図面を踏まえても、上記(2)の点が明確とはいえない。 したがって、本件発明1は明確ではない。 また、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3も同様の点で明確でない。 4 特許権者の主張について 特許権者は、令和4年8月5日に第1訂正請求に基づく意見書、及び同年12月14日に第2訂正請求に基づく意見書を提出した。 しかしながら、上記第2のとおり、第2訂正請求は認められず、また、第1訂正請求は、第2訂正請求があったときに取り下げられたとみなされるから、第1訂正請求、及び第2訂正請求により訂正された特許請求の範囲の記載を根拠とする、これらの意見書における主張は採用できない。 第4 取消理由通知、及び取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった申立理由について 1 申立理由1(進歩性) 申立人が提出した甲第1号証(特開2013-207076号公報)、甲第2号証(特開2020-88085号公報)、甲第3号証(特開2001-25715号公報)をそれぞれ主引用例とする進歩性について検討する。 (1) 甲第1号証を主引用例とする進歩性について 申立人は甲第1号証について次の主張を行った。 「甲第1号証には、超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部(段落0033、図1)と、この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽(段落0024、図1)と、ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管(段落0024、図1)と、ウェハ洗浄水供給配管から分岐して洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管(段落0025、図1)と、を備えるウェハ洗浄水供給装置(段落0022、0056)であって、返送配管が洗浄機側に設けられており、貯留槽とウェハ洗浄水供給配管と返送配管とでウェハ洗浄水を循環可能となっている(段落0025、図1)、ウェハ洗浄水供給装置が開示されている。」(特許異議申立書10ページ7~15行) そして、甲第1号証には「薬液ノズル5に供給される薬液としては、たとえば、高温(室温以上の温度)にすることで処理能力が向上する薬液である硫酸が用いられている。 また、高温にすることで処理能力が向上する薬液としては、前述の薬液以外に、SC-1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)や、SC-2(塩酸と過酸化水素水との混合液)などを用いることができる。SC-1は、たとえば、パーティクルや各種金属不純物などの不要物を除去する洗浄処理に用いられる薬液であり、SC-2は、たとえば、パーティクルや各種金属不純物などの不要物を除去する洗浄またはエッチング処理に用いられる薬液である。これらの薬液は、たとえば40~60℃に温度調節される。」(段落0056)との記載がある。 ここで、甲第1号証には、洗浄に用いられる薬液として例示されるSC-1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)や、SC-2(塩酸と過酸化水素水との混合液)を、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することについての開示はないから、少なくともこの点で本件発明1と、甲第1号証記載の発明とは相違する。 そして、SC-1や、SC-2を、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解すること」によって、「所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することはない。 また、「pHや酸化還元電位の制御に有効な溶質を超純水にごく低濃度溶解した水」(本件明細書段落0002)による洗浄と、SC-1やSC-2による洗浄とは、洗浄の目的が異なることから、甲第1号証記載の発明においてSC-1やSC-2を、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解すること」によって製造される「所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」と置換する動機付けは認められない。 そうすると、上記「第2の2(2)ウ(イ)」のとおり、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造する」ことが、甲第4号証に開示された公知技術であったとしても、甲第1号証記載の発明におけるSC-1や、SC-2を、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解すること」によって、「所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することは容易想到ではない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、甲第1号証を主引用例として、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3に係る特許についても同様である。 (2) 甲第2号証を主引用例とする進歩性について 申立人は甲第2号証について次の主張を行った。 「甲第2号証には、超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度の処理液を製造するとともに、この製造された処理液を貯留する貯留槽(段落0099、0114、図7)と、処理液を処理ユニットに供給するとともに、処理ユニットでの余剰の処理液を貯留槽にまで返送する返送配管(段落0042、0100、図7)と、を備え、返送配管が処理ユニット側に設けられており、貯留槽と返送配管とで処理液を循環可能となっている(図7)、基板処理装置が開示されている。」(特許異議申立書10ページ16~22行) そして、甲第2号証には次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の基板処理装置では、TMAH中の溶存酸素濃度を調整するために、窒素ガスおよびドライエアーの少なくとも一方をタンク内に供給し、TMAH中に多数の気泡を形成する。これはバブリングと呼ばれる。 TMAH中のガスは、TMAHの液面まで浮上した後、タンク内のガスと共に排気ラインに排出される。タンクから排出された排出ガスには、窒素ガスおよびドライエアーの少なくとも一方だけでなく、TMAHの蒸気やTMAHのミストが含まれる。排出ガスに含まれるTMAHは極僅かではあるが、バブリングを続けると、タンク内のTMAHが排気ラインを通じて徐々に排出される。そのため、新しいTMAHをタンクに供給する頻度が高まり、基板の処理に要するランニングコストが増加する。 【0005】 さらに、タンク内の処理液に複数の成分が含まれる場合は、これらの成分の蒸気圧が互いに異なるので、バブリングを続けると、処理液の濃度が徐々に変化する。特に、気化し易い成分が処理液に含まれる場合は、処理液の濃度が大幅に変化する。処理液の濃度が時間の経過に伴って変化すると、処理液によって処理された基板の品質も時間の経過に伴って変化してしまう。したがって、基板の品質の安定性が損なわれる。 【0006】 そこで、本発明の目的の一つは、溶存酸素濃度の調整に伴うタンク内での処理液の減少量を減らすことができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。」 ここで、甲第2号証には、処理液としてのTMAHを、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することについての開示はないから、少なくともこの点で本件発明1と、甲第2号証記載の発明とは相違する。 そして、TMAHを、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解すること」によって、「所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することはなく、また、上記「第2の2(2)ウ(イ)」のとおり、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造する」ことが、甲第4号証に開示された公知技術であったとしても、甲第2号証の上記「発明が解決しようとする課題」の記載を踏まえれば、甲第2号証には、処理液としてのTMAHを、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解すること」によって製造される「所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」と置換することを阻害する要因が認められる。 したがって、甲第2号証記載の発明におけるTMAHを、「超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水」として製造することは容易想到ではないから、他の相違点を検討するまでもなく、甲第2号証を主引用例として、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3に係る特許についても同様である。 (3) 甲第3号証を主引用例とする進歩性について 申立人は甲第3号証について次の主張を行った。 「甲第3号証には、超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部(段落0034、0035、図2)と、この製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽(段落0035、図2)と、ウェハ洗浄水を洗浄機に供給するウェハ洗浄水供給配管(段落0034、図2)と、ウェハ洗浄水供給配管から分岐して洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を一次純水受入れタンクを介して貯留槽にまで返送する返送配管(段落0034、図2)と、を備えるウェハ洗浄水供給装置であって、返送配管が洗浄機側に設けられており、貯留槽とウェハ洗浄水供給配管と返送配管とでウェハ洗浄水を循環可能となっている(図2)、ウェハ洗浄水供給装置が開示されている。」(特許異議申立書10ページ23行~11ページ2行) そして甲第3号証には次の記載がある。 「【0034】次に、本発明の第2の実施の形態における機能水製造装置について、図2を参照して説明する。図2は第2の実施の形態例の機能水製造装置をブロック図で示す。図2中、機能水製造装置50bは一次純水製造装置7と、一次純水受入れタンク8と、超純水製造装置1と、電解水製造装置6A及びアルカリ添加装置2Bを組み込んだ電解水製造装置ユニット6と、アニオン吸着膜91、カチオン吸着膜21及びキレート膜22を組み込んだ洗浄機ユニット9とからなり、超純水製造装置1と電解水製造装置ユニット6は超純水供給配管4で連接され、電解水製造装置ユニット6と洗浄機ユニット9とは電解水供給配管5a及び洗浄配管5bで連接されている。また、電解水供給配管5aはアニオン吸着膜91の手前で主配管と分岐管とに分かれ、分岐管は一次純水受入れタンク8に連接する戻り配管113となり、戻り配管113中にアニオン交換樹脂塔10を設置している。 【0035】電解水製造装置6Aにおいて、電解槽61は3槽式電解槽であり、陰極62を配する陰極室62aと、陽極63を配する陽極室63aと、陰極室と陽極室の間に更に中間室64aを配し、中間室64aには図示しないイオン交換樹脂が充填されている。各部屋はイオン交換膜で仕切られているため、陰極室62a側から陽極室63a側、また陽極室63a側から陰極室62a側へのイオンの移動は制限されるから、生成した電解水中での塩の生成を防止できる。 ・・・<中略>・・・ 【0037】図2において、超純水は超純水供給配管4を通って、流量計231で流量制御されながら電解槽61に供給される。電解後、陰極室62aには水素を溶解する陰極水(電解水)が得られる。一方、陰極室62aには、例えばアンモニウム等のアルカリ薬液が添加される。すなわち、アルカリ薬液槽25のアルカリ薬液は薬液添加ポンプ213を駆動させることにより、薬液供給管215を通って陰極室62a内へ供給される。薬液の添加量はpH計211によって管理され、薬液添加ポンプ213の吐出量をアルカリ薬液量指示流量計214を監視しつつ調整することで任意の値とすることができる。符号64は両電極に印加する直流電源装置を示し、符号111は電解槽出口圧力計を示す。」 ここで、上記記載によると、本件発明1と甲第3号証記載の発明とは、少なくとも、本件発明1の「返送配管」は、「洗浄機での余剰のウェハ洗浄水を」「製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽」「にまで返送する」ものであるの対し、甲第3号証記載の発明の「戻り配管113」が、電解水製造装置ユニット6の前段に位置する、超純水製造装置1の「一次純水受入れタンク8」に連接するものである点で相違する。 そして、仮に、甲第3号証記載の発明の「電解槽61」が、本件発明1の「製造されたウェハ洗浄水を貯留する貯留槽」に相当するとしても、「一次純水受入れタンク8」に連接する甲第3号証記載の発明の「戻り配管113」を、流量計231で流量制御されながら超純水が供給される、電解水製造装置ユニット6の「電解槽61」に直接連接する動機付けは見いだせない。 したがって、甲第3号証記載の発明の「一次純水受入れタンク8に連接する戻り配管113」を、「一次純水受入れタンク8」ではなく「電解槽61」に連接することは容易想到ではないから、他の相違点を検討するまでもなく、甲第3号証を主引用例として、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3に係る特許についても同様である。 (4) 小括 以上のとおり、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第3号証をそれぞれ主引用例として、本件発明1及び本件発明3に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件) (1) 申立人は次の申立理由2(サポート要件)を主張した。 「請求項1について、「余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管が、洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で分岐しており」と記載されている。そして、本願特許の発明の詳細な説明の段落0074~0080、および図15~図17には、実施例1では、返送配管の分岐位置が吐出部から5mの箇所であることが記載されており、比較例2では、返送配管の分岐位置が吐出部から15mの箇所であることが記載されている。しかしながら、本願特許の発明の詳細な説明には、返送配管の分岐位置を吐出部から10m以下とすることの臨界的意義についての記載がない。その結果、請求項1に記載の発明は、明細書の適切なサポートがない。また、請求項3の発明についても同様に明細書の適切なサポートがない。このため、請求項1および3に記載の発明は、明細書の適切なサポートがなく、特許請求の範囲に記載した特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない。」(特許異議申立書14ページ1~12行) (2) 本件の発明の詳細な説明には、「ウェハ洗浄水でウェハを処理する直前に、ウェハ洗浄水の洗浄機入口からノズル先端に残留した洗浄水をノズルから吐出させ排液し、高清浄度かつ所定液質の洗浄水と入れ替えるプリディスペンスという動作が洗浄機側で必要になる」ところ、「プリディスペンスは洗浄工程ごとに実施され、排出された洗浄水は排水設備に送られるが、返送配管が洗浄機に入る直前に接続されているので、洗浄水の排出量が多くなり、用排水設備への負担が大きく、薬液を過剰に使用する、などの問題点があ」り、「このため、プリディスペンスで排出されるウェハ洗浄水(余剰水)を最低限に抑えることが要望されていた」との課題(段落0006)について、「プリディスペンスで排出される洗浄水をできるだけ回収し、洗浄水として再利用するために、ウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で分岐している構造を採用し」、「これによりプリディスペンス時に排出される洗浄水量の大幅削減が可能になる」発明(段落0009)が記載されているといえる。 そして、当該発明について、発明の詳細な説明には、「本実施形態においては、洗浄ノズル4Aの先端から10m以内の所定の地点に返送配管7を接続して、この返送配管7からウェハ洗浄水W1を貯留槽3に戻しているので、洗浄機4が停止してウェハ洗浄水W1の未使用時でも洗浄機4側のウェハ洗浄水供給配管6に滞留するウェハ洗浄水W1の水量の削減と滞留による洗浄水質の悪化を最低限に抑制することが可能になる。さらに、プリディスペンスが不要もしくは最低限で済むので、用排水設備への負荷低減および薬液の過剰使用の改善にもつながる、という効果も奏する。返送配管7の接続箇所が洗浄ノズル4Aの先端から10m超えると、上述したウェハ洗浄水W1の水量の削減と滞留による洗浄水質の悪化を最低限に抑制する効果が十分でない。」(段落0038)と、その臨界的意義についての記載もある。 以上を踏まえると、「前記余剰のウェハ洗浄水を貯留槽にまで返送する返送配管が、前記洗浄機のウェハ洗浄水の吐出部から10m以下の箇所で分岐しており」と規定される請求項1に係る発明は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものとはいえず、本件の発明の詳細な説明には、返送配管の分岐位置を吐出部から10m以下とすることの臨界的意義についての記載がないとはいえないから、申立理由2(サポート要件)によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明3に係る特許についても同様である。 第5 むすび 上記第2のとおり、第2訂正請求を認めることはできない。 また、上記第3のとおり、本件請求項1、3に係る発明は明確でなく、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700212

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決94件(中村 健、栗田工業株式会社)
  • 2025-700931異議申立 / 2026-02-09 / 維持情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
    同じ当事者: 栗田工業株式会社
  • 2024-700964異議申立 / 2025-12-26 / 訂正認容水系の金属防食処理方法
    同じ当事者: 栗田工業株式会社
  • 2024-700262異議申立 / 2025-12-23 / 訂正認容推測装置、推測システム、推測プログラム及び推測方法
    同じ当事者: 栗田工業株式会社
  • 2024-701164異議申立 / 2025-12-10 / 訂正認容水系の微生物汚染抑制方法
    同じ当事者: 栗田工業株式会社
  • 2025-700558異議申立 / 2025-12-05 / 訂正認容上向流式イオン交換塔の運転方法
    同じ当事者: 栗田工業株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)2,648件(121・H01L、537・H01L、856・H01L)
  • 2016-700881異議申立 / 2017-08-16 / 訂正認容微細構造を有する表面を作製する方法
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L、856・H01L
  • 2018-390169訂正審判 / 2019-02-06 / 訂正認容露光装置、デバイス製造方法、及び露光方法。
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L、856・H01L
  • 2024-700860異議申立 / 2026-06-19 / 訂正認容発光装置
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700045異議申立 / 2025-12-03 / 訂正認容ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルム
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L
  • 2025-700051異議申立 / 2025-11-10 / 訂正認容ウエハ載置台
    共通の審決分類: 121・H01L、537・H01L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存