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特許異議申立

2022-700100

正極活物質の作製方法、及びリチウムイオン二次電池の作製方法

審判番号
2022-700100
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-219059
登録番号
6916262
請求日
2022年02月07日
審決日
2022年10月31日
公報発行日
2023年02月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社半導体エネルギー研究所
  • 【権利者代理人】蟹田 昌之
  • 【異議申立人】浜 俊彦
審判長/審判官
  • 審判長 池渕 立
  • 審判官 宮部 裕一
  • 審判官 粟野 正明
分類
P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
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事件の表示

特許第6916262号発明「正極活物質の作製方法、及びリチウムイオン二次電池の作製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6916262号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第6916262号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第6916262号(請求項の数2。以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願(特願2019-219059号。以下「本願」という。)は、平成29年11月 6日(優先権主張 平成28年11月18日)に出願した特願2017-213417号(以下、「原出願」という。)の一部を令和 1年12月 3日に新たな特許出願としたものであって、令和 3年 7月19日にその特許権の設定登録がされ、同年 8月11日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 4年 2月 7日 :特許異議申立人 浜 俊彦(以下「申立人」 という。)による全ての請求項に対する特許 異議の申立て 令和 4年 5月20日付け:取消理由通知書 令和 4年 7月17日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和 4年 9月12日 :申立人による意見書の提出 2 訂正の適否 (1)訂正請求の趣旨、及び、訂正の内容 令和 4年 7月17日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める、というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は下記(2)のとおりである。 (2)訂正事項 本件訂正請求に係る本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正事項に対応するものであり、訂正特許請求の範囲で付記されたものである。 ア 訂正事項1 訂正前の請求項1における、 「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有する、正極活物質の作製方法。」との記載を、 「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有し、 前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う、正極活物質の作製方法。」 との記載に訂正する。 イ 訂正事項2 訂正前の請求項2における、 「正極活物質を用いて正極を形成する工程と、 前記正極、セパレータ、及び負極を電解質に含浸させる工程と、 前記正極、前記セパレータ、及び前記負極を順に積層する工程と、を有し、 前記正極を形成する工程は、 リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有する、 リチウムイオン二次電池の作製方法。」との記載を、 「正極活物質を用いて正極を形成する工程と、 前記正極、セパレータ、及び負極を電解質に含浸させる工程と、 前記正極、前記セパレータ、及び前記負極を順に積層する工程と、を有し、 前記正極を形成する工程は、 リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有し、 前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う、リチウムイオン二次電池の作製方法。」 との記載に訂正する。 (3)訂正目的、新規事項、実質拡張・変更について ア 訂正事項1について (ア)訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を、さらに「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」との記載により限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (イ)訂正前の請求項1に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」について、「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」ことは、本願の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0020】、【0101】に記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内での訂正である。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項1は、上記のとおり、訂正前の請求項1に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」との記載により限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項2について (ア)訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を、さらに「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」との記載により限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (イ)訂正前の請求項2に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」について、「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」ことは、本件特許明細書の【0020】、【0101】に記載されているから、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正である。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項2は、上記のとおり、訂正前の請求項2に記載された「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」との記載により限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 訂正目的、新規事項、実質拡張・変更についてのまとめ 以上のとおり、訂正事項1及び2に係る本件訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)独立して特許を受けることができるかについて 本件特許についてはすべての請求項(請求項1及び2)が特許異議の申立ての対象とされているので、本件訂正には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定された、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。 (5)本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について、訂正することを認める。 3 本件発明 上記2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1」及び「本件発明2」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。 「【請求項1】 リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有し、 前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う、正極活物質の作製方法。 【請求項2】 正極活物質を用いて正極を形成する工程と、 前記正極、セパレータ、及び負極を電解質に含浸させる工程と、 前記正極、前記セパレータ、及び前記負極を順に積層する工程と、を有し、 前記正極を形成する工程は、 リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、 前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有し、 前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う、リチウムイオン二次電池の作製方法。」 4 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証を提示し、次の理由により本件特許は取り消されるべきものである旨主張している。 以下では、申立理由について、当審が通知した取消理由との関係を括弧書きにて表示した。 申立理由1(進歩性欠如)(一部採用) 本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。 <証拠方法> 甲第1号証:特表2013-503449号公報 なお、以下において、申立人が提出した甲第1号証を「甲1」という。 5 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和 4年 5月20日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(サポート要件:職権により追加された理由) 本件訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当する。 (2)取消理由2(進歩性:申立理由1の一部に対応) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第113条第2号に該当する。 6 本件特許明細書等の記載 (1)本件特許明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。 ア 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 ・・・リチウムイオン二次電池およびそれに用いられる正極活物質には、サイクル特性、容量、さらには充放電特性、信頼性、安全性、又はコストといった様々な面でまだ改善の余地が残されている。 【0009】 本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、高容量の二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、充放電特性の優れた二次電池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。 【0010】 または、本発明の一態様は、新規な物質、活物質、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することを課題の一とする。 【0011】 なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。」 イ 「【0020】 また、本発明の一態様は、アルミニウムアルコキシドをアルコールに溶解する工程と、アルミニウムアルコキシドがアルコールに溶解されたアルミニウムアルコキシドのアルコール溶液に、リチウムと、遷移金属と、マグネシウムと、酸素と、フッ素と、を有する粒子を混合する工程と、アルミニウムアルコキシドのアルコール溶液と、リチウムと、遷移金属と、マグネシウムと、酸素と、フッ素と、を有する粒子と、が混合された混合液を、水蒸気を含む雰囲気下で撹拌する工程と、混合液中から沈殿物を回収する工程と、回収された沈殿物を、酸素を有する雰囲気下で500℃以上1200℃以下、保持時間50時間以下で加熱する工程と、を有する、正極活物質の作製方法である。 【発明の効果】 【0021】 本発明の一態様により、リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することができる。また、高容量の二次電池を提供することができる。また、充放電特性の優れた二次電池を提供することができる。また、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができる。また、新規な物質、活物質、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することができる。」 ウ 「【0030】 (実施の形態1) [正極活物質の構造] まず図1を用いて、本発明の一態様である正極活物質100について説明する。図1(A)および図1(B)に示すように、正極活物質100は、第1の領域101と、第2の領域102と、第3の領域103を有する。第1の領域101は正極活物質100の内部に存在する。第2の領域102は、第1の領域101の少なくとも一部を被覆する。第3の領域103は、第2の領域102の少なくとも一部を被覆する。 ・・・ 【0037】 <第1の領域101> 第1の領域101は、リチウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。第1の領域101はリチウムと遷移金属を含む複合酸化物を有するといってもよい。 ・・・ 【0040】 第1の領域101は、正極活物質100の中でも特に充放電反応に寄与する領域である。正極活物質100を二次電池に用いた際の容量を大きくするために、第1の領域101は、第2の領域102および第3の領域103よりも体積が大きいことが好ましい。 ・・・ 【0044】 <第2の領域102> 第2の領域102はリチウムと、アルミニウムと、遷移金属と、酸素と、を有する。リチウムと遷移金属を有する複合酸化物の、一部の遷移金属サイトがアルミニウムで置換されているといってもよい。 ・・・ 【0046】 第2の領域102がアルミニウムを有することで、正極活物質100のサイクル特性を向上させることができる。 ・・・ 【0047】 一般的に、正極活物質は、充放電を繰り返すにつれ、コバルトやマンガン等の遷移金属が電解液に溶出する、酸素が離脱する、結晶構造が不安定になる、といった副反応が生じ、劣化が進んでゆく。しかしながら本発明の一態様の正極活物質100は、表層部にアルミニウムを有する第2の領域102を有するため、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。そのため正極活物質100を有する二次電池のサイクル特性を向上させることができる。 ・・・ 【0050】 <第3の領域103> 第3の領域103は、マグネシウムと、酸素と、を有する。第3の領域103は酸化マグネシウムを有するといってもよい。 【0051】 また第3の領域103は、第1の領域101および第2の領域102と同じ遷移金属を有していてもよい。さらに、第3の領域103は、フッ素を有していてもよい。第3の領域103がフッ素を有する場合、酸化マグネシウムの酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。 【0052】 第3の領域103が有する酸化マグネシウムは電気化学的に安定な材料であるため、充放電を繰り返しても劣化が生じにくく被覆層として好適である。つまり正極活物質100は、表層部に第2の領域102に加えて第3の領域103を有することで、第1の領域101が有するリチウムと遷移金属を含む複合酸化物の結晶構造をより安定にすることが可能である。そのため正極活物質100を有する二次電池のサイクル特性を向上させることができる。 ・・・ 【0055】 なお第3の領域103は、電気化学的に安定な材料を有することが重要であるため、含まれる元素は、必ずしもマグネシウムでなくともよい。」 エ 「【0077】 [第3の領域の偏析] 第3の領域103は、スパッタリング法、固相法、ゾルゲル法をはじめとする液相法、等の方法でも形成することができる。しかし本発明者らは、マグネシウム源とフッ素源を第1の領域101の材料と混合した後、加熱することで、マグネシウムが正極活物質粒子の最表面に偏析し、第3の領域103を形成することを明らかにした。またこのようにして形成された第3の領域103を有すると、サイクル特性の優れた正極活物質100となることを明らかにした。 【0078】 上記のように加熱することでマグネシウムを正極活物質粒子の最表面に偏析させて第3の領域103を形成する場合、加熱は、リチウム、遷移金属、マグネシウムおよびフッ素を有する複合酸化物の粒子に、アルミニウムを含む材料を被覆した後に行うことが好ましい。意外にもアルミニウムを含む材料を被覆させた後でも、マグネシウムが正極活物質粒子の最表面に偏析するためである。作製方法の詳細については後述する。」 オ 「【0084】 [作製方法] 第1の領域101、第2の領域102および第3の領域103を有する場合の、正極活物質100の作製方法の一例を、図2を用いて説明する。この作製方法の一例では、第1の領域は遷移金属としてコバルトを有し、第2の領域はアルミニウムアルコキシドを用いるゾルゲル法を経て形成するものとする。その後加熱を行い、マグネシウムを表面に偏析させて第3の領域103を形成するものとする。 【0085】 まず、出発原料を準備する(S11)。出発原料としては、リチウム、コバルト、フッ素、マグネシウムを含む複合酸化物の粒子を用いる。 ・・・ 【0088】 次に、秤量した出発原料を混合する。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。 【0089】 次に、混合した出発原料を焼成する。 ・・・ 【0090】 上記の工程で、リチウム、コバルト、フッ素、マグネシウムを含む複合酸化物の粒子を合成することができる。 ・・・ 【0092】 次に、アルミニウムアルコキシドをアルコールに溶解し、該溶液に出発原料の粒子を混合する(S12)。 ・・・ 【0095】 次に、上記混合液を、水蒸気を含む雰囲気下で撹拌する(S13)。この処理により、雰囲気中のH2Oとアルミニウムイソプロポキシドが加水分解および重縮合反応を起こす。そしてマグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子の表面に、ゲル状のアルミニウムを含む層が形成される。 ・・・ 【0098】 上記の処理を終えた混合液から、沈殿物を回収する(S14)。 ・・・ 【0099】 次に、回収した残渣を乾燥する(S15)。本実施の形態では、70℃で1時間、真空乾燥することとする。 【0100】 次に、乾燥させた粉末を加熱する(S16)。該加熱により、出発原料に含まれたマグネシウムとフッ素が表面に偏析し、第3の領域103を形成する。 【0101】 加熱は規定温度での保持時間を50時間以下で行うことが好ましく、1時間以上10時間以下で行うことがより好ましい。ここで、規定温度とは保持を行う温度とする。規定温度としては500℃以上1200℃以下が好ましく、700℃以上1000℃以下がより好ましく、800℃程度がさらに好ましい。また、酸素を含む雰囲気下で加熱することが好ましい。本実施の形態では、規定温度を800℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、乾燥空気の流量は10L/minとする。また冷却は、昇温と同じかそれ以上の時間をかけて行うこととする。 【0102】 次に、加熱した粉末を冷却し、解砕処理を行うことが好ましい(S17)。解砕処理は、たとえばふるいにかけることで行うことができる。 【0103】 上記の工程により、本発明の一態様の正極活物質100を作製することができる。」 カ 「【0288】 本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。 【実施例1】 【0289】 本実施例では、異なる被覆層を有する正極活物質を用いた二次電池を作製し、特性を比較した結果を示す。 【0290】 <正極活物質の作製> サンプル1からサンプル5までの正極活物質を用意した。各サンプルの作製方法は以下の通りとした。 【0291】 ≪サンプル1≫ サンプル1は、内部にコバルト酸リチウムを有し、表層部にアルミニウムとマグネシウムを含む被覆層を有する正極活物質とするため、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子に、ゾルゲル法でアルミニウムを含む被覆層を形成した後、加熱を行って作製した。 【0292】 マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子として、日本化学工業製(製品名;C-20F)を用いた。 【0293】 20mlの2-プロパノールに、トリ-i-プロポキシアルミニウムを0.0348g加え、溶解させた。このトリ-i-プロポキシアルミニウムの2-プロパノール溶液に、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子を5g加えた。 【0294】 この混合液を、マグネチックスターラーで4時間、25℃、湿度90%RHの条件下で撹拌した。この処理により、雰囲気中のH2Oとトリ-i-プロポキシアルミニウムで加水分解および重縮合反応を起こさせ、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子の表面に、アルミニウムを含む層を形成させた。 【0295】 上記の処理を終えた混合液をろ過し、残渣を回収した。ろ過のフィルターには、桐山ろ紙(No.4)を用いた。 【0296】 回収した残渣を、70℃で1時間、真空乾燥した。 【0297】 乾燥させた粉末を加熱した。加熱は、800℃(昇温200℃/時間)、保持時間2時間、乾燥空気雰囲気下で行った。 【0298】 加熱した粉末を冷却し、解砕処理を行った。解砕処理は、ふるいにかけることにより行い、ふるいは目開きが53μmのものを用いた。 【0299】 解砕処理を終えた粒子を、サンプル1の正極活物質とした。 【0300】 ≪サンプル2≫ サンプル2は比較例として、内部にコバルト酸リチウムを有し、表層部にマグネシウムを含む被覆層を有する正極活物質とするため、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子を加熱して作製した。 【0301】 マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子は、日本化学工業製(製品名;C-20F)を用いた。 【0302】 このマグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子を加熱した。加熱は、800℃(昇温200℃/時間)、保持時間2時間、酸素雰囲気下で行った。 【0303】 加熱した粉末を冷却し、目開き53μmのふるいにかけたものを、サンプル2の正極活物質とした。 【0304】 ≪サンプル3≫ サンプル3は、比較例として、マグネシウムとフッ素を含むコバルト酸リチウムであるが、表層部にマグネシウムが十分には偏析していない正極活物質とするため、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子を加熱せずにそのまま用いた。 【0305】 マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子は、日本化学工業製(製品名;C-20F)を用いた。 【0306】 ≪サンプル4≫ サンプル4は、比較例として、内部にコバルト酸リチウムを有し、表層部にアルミニウムを含む被覆層を有する正極活物質とするため、マグネシウムを有さないコバルト酸リチウム粒子に、ゾルゲル法でアルミニウムを含む被覆層を形成した後、加熱を行って作製した。 【0307】 マグネシウムを有さないコバルト酸リチウム粒子として、日本化学工業製(製品名;C-10N)を用いた。これはXPSでマグネシウムが検出されず、フッ素が1原子%程度検出されるコバルト酸リチウム粒子である。 【0308】 このコバルト酸リチウム粒子に対して、サンプル1と同様にゾルゲル法によりアルミニウムを含む被覆層を形成し、加熱し、乾燥し、ふるいにかけた。これをサンプル4の正極活物質とした。 【0309】 ≪サンプル5≫ サンプル5は、比較例として、被覆層をもたない正極活物質とするため、マグネシウムを有さないコバルト酸リチウム粒子を加熱せずにそのまま用いた。 【0310】 マグネシウムを有さないコバルト酸リチウム粒子として、日本化学工業製(製品名;C-10N)を用いた。 【0311】 サンプル1からサンプル5までの条件を表1に示す。 【0312】 【表1】 [図:0001394002000001.jpg] 【0313】 <サイクル特性> 上記で作製したサンプル1からサンプル5の正極活物質を用いて、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の二次電池を作製し、サイクル特性を評価した。 【0314】 正極には、サンプル1~サンプル5の正極活物質(LiCoO2)と、アセチレンブラック(AB)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO2:AB:PVDF=95:2.5:2.5(重量比)で混合したスラリーをアルミニウム箔の集電体に塗工したものを用いた。 【0315】 対極にはリチウム金属を用いた。 【0316】 電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)で混合されたものに、ビニレンカーボネート(VC)を2重量%添加したものを用いた。 【0317】 正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。 【0318】 サイクル特性試験の測定温度は25℃とした。充電は、活物質重量あたりの電流密度68.5mA/gの定電流、上限電圧4.6Vで行い、その後電流密度1.4mA/gとなるまで定電圧充電を行った。放電は、活物質重量あたりの電流密度68.5mA/gの定電流、下限電圧2.5Vで行った。 【0319】 図22(A)および図22(B)に、サンプル1~サンプル5の正極活物質を用いた二次電池のサイクル特性のグラフを示す。図22(A)は4.6V充電時のエネルギー密度、図22(B)は4.6V充電時のエネルギー密度維持率のグラフである。なおエネルギー密度は、放電容量と放電平均電圧の積である。またエネルギー密度維持率は、エネルギー密度のピークトップを100%として求めた。 【0320】 図22(A)および図22(B)から明らかなように、被覆層をもたないコバルト酸リチウムであるサンプル5と比較して、アルミニウムを含む被覆層を形成した正極活物質であるサンプル4は、やや良好なサイクル特性を示した。 【0321】 また、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子であるサンプル2とサンプル3の比較では、加熱を行ったサンプル2の方が、加熱しなかった場合のサンプル3よりもサイクル特性が大幅に向上した。これは、加熱によりマグネシウムがコバルト酸リチウム粒子の表層部に偏析した効果であると考えられる。 【0322】 また、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子に、アルミニウムを含む被覆層を形成した正極活物質であるサンプル1は、極めて良好なサイクル特性を示した。これは、マグネシウムが表層部に偏析したサンプル2、およびアルミニウムを含む被覆層を形成したサンプル4を上回る特性であった。そのためアルミニウムおよびマグネシウムを有する被覆層を設けることで、アルミニウムを有する被覆層のみ、またはマグネシウムを有する被覆層のみを有する場合よりも、良好なサイクル特性を得られることが明らかとなった。 【実施例2】 【0323】 本実施例では、アルミニウムとマグネシウムを含む被覆層を有するコバルト酸リチウム粒子について、各種分析により特徴を明らかにした。 【0324】 <XPS> 実施例1のサンプル1、サンプル2、サンプル3について、表面からXPS分析を行った。また、実施例1のサンプル1の、ゾルゲル処理と乾燥を行った後、加熱前の粒子をサンプル6とし、同様にXPS分析を行った。これらの結果を表2に示す。なお分析結果は小数点第2位を四捨五入して示しているため、合計が100%にならない場合がある。 【0325】 【表2】 [図:0001394002000002.jpg] 【0326】 また、表2の結果を用いて、リチウム、アルミニウム、コバルト、マグネシウム、酸素、およびフッ素の総量を100原子%として計算した場合の原子数比を表3に示す。 【0327】 【表3】 [図:0001394002000003.jpg] 【0328】 XPS分析は、正極活物質の表面から5nmほどを定量的に分析可能である。表2に示したように、加熱を行った正極活物質であるサンプル1およびサンプル2では、加熱を行っていないサンプル6とサンプル3よりもマグネシウムの原子数比が大きく増加していた。つまり加熱を行うことで、表面から5nmほどの領域にマグネシウムが偏析したことが明らかとなった。 【0329】 また、ゾルゲル法によりアルミニウムを有する被覆層を形成したサンプル1とサンプル6では、加熱を行ったサンプル1の方が、加熱を行っていないサンプル6よりもアルミニウムの原子数比が小さかった。そのため加熱を行うことで、表面から5nmほどの領域からアルミニウムが拡散したことが推察された。 【0330】 そのためアルミニウムとマグネシウムを含む被覆層を有するサンプル1の場合、最表面にはマグネシウムが多く存在し、アルミニウムはマグネシウムよりも深い領域に存在していることが推察された。」 キ 「【図1】 [図:0001394002000004.jpg] 」 ク 「【図22】 [図:0001394002000005.jpg] 」 7 甲1の記載事項、及び甲1に記載された発明 (1)甲1の記載事項 ア 甲1には、「金属酸化物でコーティングされたリチウム系電池用正極材料」(発明の名称)に関し、次の記載がある。 (ア)「【請求項24】 リチウムイオン系電池用のコーティングされた正極活物質組成物の形成方法であって、前記活物質をアルミニウム前駆体コーティングとともに約500℃~約800℃の温度に加熱するステップを含む、方法。 【請求項25】 前記アルミニウム前駆体コーティングが水酸化アルミニウムを含む、請求項24に記載の方法。 【請求項26】 前記正極活物質組成物が、式Li1+xM1-xO2-zFz(式中、Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3であり、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウムに富む金属酸化物を含む、請求項24に記載の方法。」 (イ)「【0002】 本発明は、一般に、リチウムイオン電池の正極用活物質に関して、この活物質は、金属/半金属酸化物を含むコーティングを含む。本発明は、さらに、金属/半金属酸化物でコーティングされた活物質の形成方法、およびその活物質を含むリチウムイオン電池に関する。」 (ウ)「【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0005】 第1の態様において、本発明は、式Li1+xM1-xO2-zFz(式中、Mは、非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせであり、0.01≦x≦0.3、0≦z≦0.2である)で近似的に表されるリチウム金属酸化物を含み、約0.1~約0.75重量パーセントの金属/半金属酸化物でコーティングされたリチウムイオン電池正極材料に関する。 ・・・ 【0008】 他の態様においては、本発明は、リチウム系電池用のコーティングされた正極活物質組成物の形成方法であって、活物質をアルミニウム前駆体コーティングとともに約500℃~約800℃の温度に加熱するステップを含む方法に関する。」 (エ)「【0010】 リチウムに富む金属酸化物活物質上の比較的少量の金属酸化物コーティングによって、比放電容量およびサイクルに関してリチウム系電池性能の望ましい改善を得ることができることが分かった。ある実施形態においては、正極の活物質を約2重量パーセント以下の金属酸化物でコーティングすると望ましい場合がある。この結果コーティングされた材料は、コーティングされていない材料よりもはるかに大きい比放電容量を示すことができる。この材料は、妥当なレートでの電池のサイクルにおいて、比放電容量の低下速度の大きな減少を示すこともできる。驚くべきことに、少なくとも比較的少量のコーティング材料まで減少させた量のコーティング材料で、放電特性を改善することができる。中程度の量のコーティングでは、適切な薄さのコーティングでは比放電容量が増加するが、コーティングされていない材料が示すよりも低い比容量の結果が得られることがあるため、比放電容量のコーティング量に対する依存性は、より高い放電率でより顕著となりうる。コーティングは、商業生産に容易に拡張可能な技術を使用して効率的に合成することができる。さらに、コーティングされた活物質は、高いタップ密度で合成できるので、結果として得られる電池は、特定の電池体積においてより効率的な容量を示すことができる。 【0011】 本明細書に記載の電池は、非水性電解質溶液がリチウムイオンを含むリチウム系電池である。充電中の二次リチウムイオン電池では、カソード(正極)において酸化が起こり、リチウムイオンが引き出されて、電子が放出される。放電中は、カソードでは還元が起こり、リチウムイオンが挿入されて電子が消費される。一般に、電池は正極材料中のリチウムイオンで形成され、そのため、電池の初期充電で、かなりの割合のリチウムが正極材料から負極材料に移動し、それによって電池の放電の準備ができる。特に明記しない限り、本明細書において参照される性能値は室温におけるものである。 ・・・ 【0013】 本明細書に記載されるリチウムイオン電池は、金属酸化物コーティングと関連して改善されたサイクル性能が達成され、同時に、高い比容量および高い総容量を示す。リチウムに富む金属酸化物の好適な合成技術としては、たとえば、共沈法またはゾルゲル合成が挙げられる。改善されたサイクル性能、高い比容量、および高い総容量を合わせもつことは、結果として得られるリチウムイオン電池が、特に、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車などの高エネルギー用途の改善された電源として機能できることを示唆している。」 (オ)「【0028】 正極活物質 本発明の正極活物質は、リチウムインターカレーション金属酸化物組成物を含む。ある実施形態においては、リチウムイオン電池は、基準となる均一な電気活性リチウム金属酸化物組成物よりもリチウムに富む正極活物質を含むことができる。一般に、LiMO2をこの基準組成物と見なすことができ、本発明のリチウムに富む組成物は、近似的な式Li1+xM1-yO2(式中、Mは1種類以上の非リチウム金属を表し、yは、金属の平均バランスに基づいてxに関係している)で表すことができる。ある実施形態においては、リチウムに富む組成物は、一般に、層状複合結晶構造を形成すると考えられ、これらの実施形態ではxはyにほぼ等しい。初期カソード材料中の追加されたリチウムによって、充電中に負極に移動することができるリチウムがある程度追加され、それによって特定の重量のカソード活物質の電池容量を増加させることができる。ある実施形態においては、追加のリチウムによってより高い電圧が得られ、それによって初期充電がより高い電圧で行われることで、さらに容量が増加する。 【0029】 特に対象となる正極活物質は、式Li1+bNiαMnβCoγAδO2-zFz(bは約0.05~約0.3の範囲であり、αは0~約0.4の範囲であり、βは約0.2~約0.65の範囲であり、γは0~約0.46の範囲であり、δは0~約0.15の範囲であり、zは0~約0.2の範囲であり、但しαおよびγの両方が0であることはなく、AはMg、Sr、Ba、Cd、Zn、Al、Ga、B、Zr、Ti、Ca、Ce、Y、Nb、Cr、Fe、V、またはそれらの組み合わせである)で近似的に表された。ある実施形態においては、αは約0.1~約0.3の範囲であり、βは約0.3~約0.65の範囲であり、γは約0.05~約0.4の範囲である。b+α+β+γ+δがほぼ1に等しい場合、上記式で表される正極材料は、二成分表記でxLi2M’O3・(1-x)LiMO2(0<x<1、Mは、平均バランスが+3である1種類以上の金属陽イオンであり、少なくとも1つの陽イオンはMnイオンまたはNiイオンであり、M’は、平均バランスが+4である1種類以上の金属陽イオンである)で近似的に表すことができる。適切に形成されたリチウムに富むリチウム金属酸化物は、複合結晶構造を有することができ、過剰のリチウムは、もう1つの別の結晶相の形成を促進すると考えられる。たとえば、リチウムに富む材料のある実施形態においては、Li2MnO3材料は、層状LiMO2成分(式中、Mは選択された非リチウム金属元素またはそれらの組み合わせを表す)のいずれかと構造的に一体化することができる。これらの組成物は、参照により本明細書に援用される、「Lithium Metal Oxide Electrodes for Lithium Cells and Batteries」と題されるThackerayらに付与された米国特許第6,680,143号明細書に一般に記載されている。この項における以下の説明を簡単にするため、場合により使用されるフッ素ドーパントのさらなる議論は行わない。」 (カ)「【0032】 最近になって、正極活物質の性能特性は、組成物の化学量論の特定の設計のあたりで設計できることが分かった。特に対象となる正極活物質は、二成分表記でxLi2MnO3・(1-x)LiMO2(式中、Mは、平均バランスが+3である2種類以上の金属元素であり、1つの金属元素はMnであり、別の金属元素はNiおよび/またはCoである)で近似的に表すことができる。一般に、0<x<1であるが、ある実施形態においては0.03≦x≦0.55、さらなる実施形態においては0.075≦x≦0.50、さらなる実施形態においては0.1≦x≦0.45、別の実施形態においては0.15≦x≦0.425である。上記パラメーターxの明示された範囲内のさらなる範囲が考慮され、それらが本開示の範囲内となることを、当業者は理解されよう。たとえば、Mは、ニッケル、コバルト、およびマンガンの組み合わせであってよく、その場合、たとえば、初期のリチウムマンガン酸化物中の酸化状態がNi+2、Co+3、およびMn+4であってよい。これらの組成物の全体の式は、Li2(1+x)/(2+x)Mn2x/(2+x)M(2-2x)/(2+x)O2と表すことができる。全体の式において、マンガンの総量は、二成分表記における両方の構成要素に寄与する。したがって、ある意味では、組成物はマンガンに富む。 【0033】 一般に、MはNiuMnvCowAyと表すことができる。y=0である実施形態では、これはNiuMnvCowと簡略化される。MがNi、Co、Mn、および場合によりAを含む場合、組成物は、別の二成分表記および一成分表記で以下のように表すこともできる。 xLi2MnO3・(1-x)LiNiuMnvCowAyO2 (1) Li1+bNiαMnβCoγAδO2 (2) ここで、u+v+w+y≒1であり、b+α+β+γ+δ≒1である。これら2つの式を一致させると,以下の関係が得られ: b=x/(2+x)、 α=2u(1-x)/(2+x)、 β=2x/(2+x)+2v(1-x)/(2+x)、 γ=2w(1-x)/(2+x)、 δ=2y(1-x)/(2+x)、 同様に、 x=2b/(1-b)、 u=α/(1-3b)、 v=(β-2b)/(1-3b)、 w=γ/(1-3b)、 y=δ/(1-3b) となる。」 (キ)「【0036】 正極作用組成物の合成 本明細書に記載される合成方法を使用して、高い比容量値および比較的高いタップ密度を有する層状-層状(layered-layered)のリチウムに富む正極活物質などの正極活物質組成物を形成することができる。本発明の合成方法は、式Li1+bNiαMnβCoγAδO2-zFzで表され、前述の所望のパラメーター範囲を有する組成物の合成に適応されている。本発明の合成方法は、商業規模へのスケールアップにも適している。特に、共沈法を使用して、所望の結果が得られる所望のリチウムに富む正極材料を合成することができる。 【0037】 共沈法では、金属塩を精製水などの水性溶媒中に所望のモル比で溶解させる。好適な金属塩としては、たとえば、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。溶液の濃度は一般に1M~3Mの間で選択される。金属塩の相対モル量は、生成材料の所望の式に基づいて選択することができる。同様に、場合により使用されるドーパント元素も、他の金属塩とともに適切なモル量で導入することができ、それによってドーパントが沈殿材料中に混入される。次に、Na2CO3および/または水酸化アンモニウムを加えることなどによって、溶液のpHを調整して、所望の量の金属元素を有する金属水酸化物または金属炭酸塩を沈殿させることができる。一般に、pHは約6.0~約12.0の間の値に調整することができる。水酸化物または炭酸塩の沈殿を促進するために、溶液の加熱および撹拌を行うことができる。沈殿した金属水酸化物または炭酸塩は、次に、溶液から分離し、洗浄し、乾燥させて、さらなる処理を行う前の粉末を形成することができる。たとえば、乾燥はオーブン中約110℃において約4~約12時間行うことができる。当業者であれば、上記の明示された範囲内のプロセスパラメーターのさらなる範囲が考慮され、本開示の範囲内となることが理解されよう。 【0038】 回収した金属水酸化物または炭酸塩の粉末は、次に熱処理を行うことで、水または二酸化炭素を除去して、水酸化物または炭酸塩組成物を対応する酸化物組成物に変換することができる。MgF2などのフッ化物を加えて、フッ化物ドーパントを導入することができる。一般に、熱処理はオーブン、加熱炉などの中で行うことができる。熱処理は、不活性雰囲気中、または酸素が存在する雰囲気中で行うことができる。 ・・・ 【0041】 金属/半金属酸化物コーティング 不活性金属酸化物コーティングは、リチウム金属酸化物正極活物質、特にリチウムに富む活物質組成物に比較的少量で使用した場合に驚くべき改善された性質を得ることができる。リチウムイオン電池の性能は、リチウムのトポタクティック過程中に構造および組成が変化しないことに大きく基づくことがある。リチウムイオン電池の動作のより広い電圧ウィンドウは、より多くの副反応と関連していると考えられ、その一部は、材料の不可逆変化の原因となり得る。副反応を減少させるために使用される種々の技術の中で、ナノコーティングによる表面改質は、電極-電解質界面が改善されるために非常に有効であると考えられている。電極-電解質界面は、この繊細な界面の「特性または性質」によって、全体的な電荷移動が決定されるので、固体電気化学の最も問題のある領域の1つである。より容易にLiを拡散させ、陰イオン(大部分はPF6-)の共インターカレーションを防止し、カソード活性金属イオンの電解質中への不可逆性の溶解を防止するために、コーティングは、活物質組成物の粒子上に配置することができる。したがって、コーティングによって、電極-電解質界面が改善されることで、リチウムイオン電池の性質が向上すると考えられる。本明細書に記載される場合、不活性金属酸化物コーティングは、リチウムに富むリチウム金属酸化物活物質組成物の性能の安定化および改善に効果的となりうる。 ・・・ 【0044】 本明細書に示されるように、正極活物質上の金属酸化物コーティングを適切に調節することで、優れた比容量を得ることができ、これ対応して、適度に高い充電/放電率におけるサイクルで高容量を驚くほどに維持することができる。コーティング厚さは、カソード材料の構造的完全性および電気化学的性能の両方に寄与する重要なパラメーターであることが分かった。・・・ 【0045】 本発明の金属酸化物コーティングは、一般に、セル内の電気化学反応に対して実質的に不活性であると考えられる組成物を含む。好適な金属酸化物としては、たとえば、酸化アルミニウム(Al2O3)、・・・が挙げられる。酸化アルミニウムは、低コストであり比較的環境に優しい性質のために望ましい場合がある。」 (ク)「【0054】 たとえば沈殿または蒸発によって形成された前駆体コーティング粉末は、焼成によって前駆体コーティングが分解して金属酸化物コーティングになる。水酸化物前駆体コーティングの場合、一般に、粉末を約300~約800℃、ある実施形態においては、約350~約700℃、さらなる実施形態においては約400~約600℃で焼成して、金属酸化物でコーティングされたリチウム金属酸化物粉末を形成することができる。最初に金属水酸化物コーティングを有する粉末の焼成は、約1時間~約20時間、さらなる実施形態においては約1.5~約15時間、別の実施形態においては約2時間~約10時間行うことができる。・・・ 【0055】 前述したように、酸化アルミニウムは、種々の結晶構造を有することができる。酸化物コーティングのために、種々の焼成温度で形成した水酸化アルミニウム前駆体コーティングから形成した酸化アルミニウムコーティングに関する結果を、以下の実施例に示している。酸化アルミニウムコーティングの形成の場合、水酸化アルミニウム前駆体コーティングを約500℃~約800℃の温度に加熱することが一般に望ましい。上記の明示される範囲内の酸化アルミニウム焼成温度のさらなる範囲が考慮され、それらは本開示の範囲内となる。」 (ケ)「【実施例】 【0068】 実施例1-リチウム金属酸化物活物質の合成 この実施例では、炭酸塩または水酸化物共沈法を使用した所望の正極活物質の形成を示す。化学量論量の金属前駆体を蒸留水中に溶解させて、所望のモル比で金属塩を有する水溶液を形成した。これとは別に、Na2CO3および/またはNH4OHを含有する水溶液を調整した。サンプル作製のために、一方または両方の溶液を反応容器に徐々に加えて、金属炭酸塩または水酸化物の沈殿物を形成した。反応混合物を撹拌し、反応混合物の温度を室温から80℃の間に維持した。反応混合物のpHは6~12の間であった。一般に、遷移金属水溶液は濃度が1M~3Mであり、Na2CO3/NH4OH水溶液はNa2CO3濃度が1M~4Mおよび/またはNH4OH濃度が0.2~2Mであった。金属炭酸塩または水酸化物の沈殿物を濾過し、蒸留水で複数回洗浄し、110℃で約16時間乾燥させて、金属炭酸塩または水酸化物粉末を形成した。サンプル調製の反応条件の具体的な範囲は、表1にさらに概略を示しており、ここで溶液はNa2CO3およびNH4OHの両方を含まなくてよい。 【0069】 【表1】 [図:0001394002000006.jpg] 【0070】 適切な量のLi2CO3粉末を乾燥した金属炭酸塩または水酸化物粉末と混合し、Jar Mill、二重遊星形ミキサー、または乾燥粉末回転ミキサーによって十分に混合して、均一粉末混合物を形成した。得られた均一粉末の一部、たとえば5グラムを1段階で焼成し手酸化物を軽視し、続いてさらなる混合ステップを行って、さらに粉末を均質化させた。さらに均質化された粉末を再び焼成して、高結晶性リチウム複合酸化物を形成した。焼成条件の具体的な範囲は、表2にさらに概略を示している(scfh=標準立方フィート/時)。 【0071】 【表2】 [図:0001394002000007.jpg] 【0072】 こうして形成されたリチウム金属酸化物(LMO)正極複合材料粒子は、一般に、実質的に球形であり、大きさは比較的均一である。生成物の組成は、組成物の形成に使用した金属反応物の部分に対応して仮定し、全体的に目標の酸化状態となるように酸素で調節した。前述の項で議論したように、これらのLMO組成物の全体の式は、xLi2MnO3・(1-x)LiNiuCowMnvO2(1)またはLi1+bNiαCoγMnβO2(2)で表すことができる。サンプル1~8は、本明細書に概略が示された手順を使用して合成し、対応するu、v、w、およびα、γ、βの値は、2組の組成物を含めて表3に示している。第1の組の組成物の場合、u=vであるサンプル2~8の種々の組成物を合成した。第2の組の組成物の場合、uがvに等しくないサンプル1を合成した。 【0073】 【表3】 [図:0001394002000008.jpg] 【0074】 両方の組の組成物に、以下の実施例2、4、および6に記載されるように安定化組成物としての金属/半金属酸化物をコーティングした。コーティングした組成物およびコーティングしていない組成物を使用して、次に、実施例3に概略を示す手順に従ってコインセル電池を作製した。コインセル電池の試験を行い、結果を以下の実施例3、5、および7に記載している。 【0075】 実施例2-Al2O3によるコーティング この実施例では、表3のサンプル1の式で表される実施例1のリチウムに富む正極活物質上への酸化アルミニウムコーティングの形成を説明する。酸化アルミニウム表面コーティングは、水酸化アルミニウム沈殿反応を使用し、続いて焼成を行って形成した。一般に、コーティングの場合、最初に、選択された量の硝酸アルミニウムを適切な量の水中に溶解させて、硝酸アルミニウムの溶液を形成する。この硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、実施例1のリチウム金属酸化物(LMO)粒子を分散させて、十分分散した混合物を形成した。この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下すると、水酸化アルミニウムが沈殿して、LMO粒子をコーティングされる。水酸化アンモニウムの添加後、混合物を約60℃に2~10時間の範囲の時間加熱した。続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性LMO材料上に有する材料を形成した。 【0076】 次に、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、4~12時間焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされたLMO粉末を形成した。0.5重量パーセントの酸化アルミニウムを有するサンプルの一部を、選択された温度で適度な範囲にわたって焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされた材料を使用した後に得られる電池性能に対する温度の影響を調べた。サンプルの別の一部を、選択された量の酸化アルミニウムコーティングでコーティングし、500~800℃の温度で焼成して、酸化アルミニウムコーティングの量の関数としての電池性能を評価した。酸化アルミニウムをコーティングした材料を、X線回折を使用して調べた。コーティングされていない材料とともに、酸化アルミニウムコーティング材料の量が異なる5サンプルのX線回折図を図3に示している。図3のX線回折図に示されるように、酸化アルミニウムコーティングが、コアのリチウム金属酸化物材料の結晶構造を大きく変化させることはなかった。」 (コ)「【0079】 実施例3-選択された量のコーティングで酸化アルミニウムがコーティングされた材料の電池性能 この実施例では、コインセル電池中の酸化アルミニウムがコーティングされた材料の性能を説明し、酸化アルミニウムコーティング材料の量の関数としての電池性能を評価するために、種々の量のコーティング材料を使用して結果を求めている。 【0080】 材料の性能を試験するために、選択された量のコーティング材料で実施例2の酸化アルミニウムコーティングを有するまたは有さないリチウム金属酸化物(LMO)粉末を、アセチレンブラック(Timcal,Ltd,SwitzerlandのSuper P(商標))および黒鉛(Timcal,LtdのKS 6(商標))と十分に混合して、上記均一粉末混合物を形成した。これとは別に、ポリフッ化ビニリデンPVDF(株式会社クレハ(日本)のKF1300(商標))をN-メチル-ピロリドンNMP(Sigma-Aldrich)と混合し、終夜撹拌して、PVDF-NMP溶液を形成した。次に、上記均一粉末混合物をPVDF-NMP溶液に加え、約2時間混合して、均一スラリーを形成した。このスラリーをアルミニウム箔集電体上に塗布して、未乾燥の薄膜を形成した。 【0081】 未乾燥の薄膜を有するアルミニウム箔集電体を真空オーブン中110℃で約2時間乾燥させて、NMPを除去することによって、正極材料を形成した。シートミルのローラーの間で正極材料をプレスして、所望の厚さの正極を得た。混合物は、少なくとも約75重量パーセントの活性金属酸化物、少なくとも約3重量パーセントのアセチレンブラック、少なくとも約1重量パーセントの黒鉛、および少なくとも約2重量パーセントのポリマーバインダーを含んだ。 【0082】 コインセル電池製造のために、正極をアルゴンを充填したグローブボックスの内側に入れた。厚さ約125ミクロンのリチウム箔(FMC Lithium)を負極として使用した。電解質は高電圧において安定となるように選択し、適切な電解質は、参照により本明細書に援用される、「Lithium Ion Battery With High Voltage Electrolytes and Additives」題され同時係属中のAmiruddinらの米国特許出願第12/630,992号明細書に記載されている。電解質に浸した3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔質セパレーター(Celgard,LLC,NC,USAの2320)を、正極と負極との間の配置した。さらに数滴の電解質を電極の間に加えた。電極を、圧着法を使用して、2032コイン電池ハードウェア(宝泉株式会社、日本)の内部に封止して、コイン電池を形成した。得られたコインセル電池は、Maccorサイクル試験器を使用して試験し、多数のサイクルにわたる充電-放電曲線およびサイクル安定性を求めた。」 (サ)「【0088】 実施例4-ある範囲にわたる温度で焼成したコーティングを有する酸化アルミニウムコーティングした材料の電池性能 この実施例では、コインセル電池中の酸化アルミニウムコーティングされた材料の性能を説明し、これらの結果は、種々の温度で焼成下コーティング材料を使用して得られ、それより酸化アルミニウムコーティング材料の処理温度の関数としての電池性能を評価した。 【0089】 材料の性能を試験するために、コインセル電池は、実施例2の酸化アルミニウムコーティングを有するまたは有さないリチウム金属酸化物(LMO)粉末から作製し、コーティング材料は400、500、600、800、または1000℃で焼成した。サンプルは、0.5重量パーセント酸化アルミニウムコーティングを有した。実施例3に記載のようにしてLMO粉末からコイン電池を作製し、得られた電池について、サイクル1および2はC/10、サイクル3および4はC/5、サイクル5および6はC/3、サイクル7~11は1C、サイクル12~16は2C、サイクル17~21は5C、サイクル22~24はC/5の放電率でサイクルを行った。サイクル番号の関数としての比容量を図9にプロットしている。1000℃で焼成したコーティング材料の比容量結果は、コーティングされていないサンプルよりも全体的に悪かった。500℃および600℃で焼成したコーティングサンプルの比容量は、全体的に非常に良好な比容量であった。第1サイクル比充電および放電容量を、コーティングの焼成温度の関数として図10にプロットしている。第1サイクル不可逆容量損失を、コーティングの焼成温度の関数として図11にプロットしている。電池の性能結果を表5にまとめている。 【0090】 【表5】 [図:0001394002000009.jpg] 」 (シ)「【0097】 実施例7-酸化マグネシウムでコーティングしたリチウム金属酸化物活物質組成物 この実施例では、表3のサンプル2~8の式で表され、実施例1に記載される様にして形成される、高容量のリチウムに富む金属酸化物上の酸化マグネシウムコーティングの形成を説明する。」 (2) 甲1に記載された発明 ア 上記(1)ア(ケ)に摘記した【0072】、【0073】(表3)の記載のとおり、甲1には、組成式「xLi2MnO3・(1-x)LiNiuCowMnvO2(1)」で表されるリチウム金属酸化物(LMO)正極複合材料粒子(以下、単に「リチウム金属酸化物粒子」という。)のサンプル1(表3の組成物1が該当)が記載されており、上記ア(ケ)、及び(シ)に摘記した記載から、上記サンプル1は、「リチウムに富む」リチウム金属酸化物粒子の実施例であると解される。 イ 上記サンプル1のリチウム金属酸化物粒子の具体的な組成式について検討すると、サンプル1の「Mn%遷移金属」の値(リチウム金属酸化物中の遷移金属全体に対するマンガンの原子比を意味すると認められる。)は、65.63(表3参照)であることから、以下の式が立式される。 (x+(1-x)v)/(x+(1-x)(u+v+w))=0.6563 ここで、上記(1)のア(カ)に摘記した【0033】の記載と上記(1)ア(ケ)に摘記した【0073】の記載から、以下の2式を満足する。 x=0.5 u+v+w=1 そうすると、上記3式から、サンプル1のリチウム金属酸化物粒子は、以下の組成式を満たすものと認められる。 「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、ここで、u+w=0.6874を満たす。)」 したがって、甲1には、組成式「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、ここで、u+w=0.6874を満たす。)」で表される、リチウムに富むリチウム金属酸化物粒子を用いることが、具体的な実施例として記載されているということができる。 ウ 上記(1)ア(ケ)に摘記した【0075】、【0076】の記載のとおり、甲1には、リチウムに富む正極活物質上への酸化アルミニウムコーティングの形成について、硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、上記サンプル1のリチウム金属酸化物(LMO)粒子を分散させ、十分分散した混合物を形成し、この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下し、水酸化アルミニウムを沈殿させ、上記リチウム金属酸化物粒子をコーティングされるようにし、水酸化アンモニウムの添加後、混合物を約60℃に2~10時間の範囲の時間加熱し、続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性リチウム金属酸化物上に有する材料を形成し、次に、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされたリチウム金属酸化物粒子を形成することが記載されている。また、上記(1)ア(サ)に摘記した【0089】、【0090】の記載から、甲1には、上記サンプル1の金属酸化物粒子に沈殿水酸化アルミニウムを有する材料をコーティング後、500℃の温度で5時間焼成することも記載されている。 エ そうすると、上記(1)アに摘記した事項、及び上記ア-ウの点から、特にサンプル1のリチウム金属酸化物粒子に対する酸化アルミニウムコーティングの形成方法、及びコインセル電池の製造方法に着目すると、甲1には、次の2つの発明が記載されていると認められる。 「硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、組成式0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、ここで、u+w=0.6874を満たす。)で表されるリチウムに富む複合酸化物であるリチウム金属酸化物粒子を分散させ、十分分散した混合物を形成し、この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下し、水酸化アルミニウムを沈殿させ、上記リチウム金属酸化物粒子をコーティングされるようにし、水酸化アンモニウムの添加後、混合物を60℃に2~10時間の範囲の時間加熱し、続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性リチウム金属酸化物粒子上に有する材料を形成し、次に、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされた、リチウムに富む正極活物質を形成する方法。」(以下「甲1発明A」という。) 「リチウム金属酸化物粉末、アセチレンブラック及び黒鉛を含む混合物と、PVDF-NMP溶液と、を混合してスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体上に塗布後、乾燥、プレスして正極を得る工程と、電解質に浸した3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔質セパレーターを、正極と負極との間に配置し、さらに数滴の電解質を電極の間に加えた後、電極を、圧着法を使用して、2032コイン電池ハードウェアの内部に封止する工程を含む、コインセル電池の製造方法であって、 前記リチウム金属酸化物粉末は、硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、組成式0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、ここで、u+w=0.6874を満たす。)で表されるリチウムに富む複合酸化物であるリチウム金属酸化物粒子を分散させ、十分分散した混合物を形成し、この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下し、水酸化アルミニウムを沈殿させ、上記リチウム金属酸化物粒子をコーティングされるようにし、水酸化アンモニウムの添加後、混合物を60℃に2~10時間の範囲の時間加熱し、続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性リチウム金属酸化物粒子上に有する材料を形成し、次に、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成して、酸化アルミニウムでコーティングされた、リチウムに富む正極活物質として形成される、コインセル電池の製造方法。」(以下「甲1発明B」という。) 8 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 取消理由1(サポート要件:職権により追加された理由)について (ア)本件発明が解決しようとする課題 上記6(1)アに摘記した本件特許明細書等の【0009】、【0010】の記載から、本件発明が解決しようとする課題は、「充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供すること」、「高容量の二次電池を提供すること」、「充放電特性の優れた二次電池を提供すること」、「安全性又は信頼性の高い二次電池を提供すること」、「新規な物質、活物質、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供すること」の少なくともいずれか一つと認められる。 そして、上記6(1)カ、クに摘記した【実施例1】に係る記載から、上記「充放電サイクルにおける容量の低下が抑制」されること、「高容量」であること、「充放電特性」が優れていることを評価する指標として、「エネルギー密度維持率」(エネルギー密度は「放電容量と放電平均電圧の積」であり、エネルギー密度維持率は「エネルギー密度のピークトップを100%」として求められる(【0319】)。)が開示されるのみであることからみて、上記「充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供すること」、上記「高容量の二次電池を提供すること」、及び上記「充放電特性の優れた二次電池を提供すること」との各課題は、エネルギー密度維持率が良好な正極活物質、又は二次電池を提供することにより達成されるものと認められる。 (イ)課題を解決するための手段 a そして、上記6(1)イに摘記した記載、及び上記6(1)オに摘記した【0101】の記載、並びに上記6(1)カ、クに摘記した【実施例1】に係る記載からみて、本件特許明細書等には、リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆後、当該複合酸化物を加熱する工程(以下、単に「前記複合酸化物を加熱する工程」という。)を含む正極活物質の作製方法において、前記複合酸化物を加熱する工程を「酸素を有する雰囲気下で500℃以上1200℃以下、保持時間50時間以下」(【0020】)で行うことにより、正極活物質において充放電サイクルにおける容量の低下が抑制され(【0021】)、上記課題を解決できることが記載されているということができる。 b 特に、上記6(1)ウに摘記した【0050】~【0055】の記載、及び上記6(1)オに摘記した【0100】、【0101】の記載からみて、前記複合酸化物を加熱する工程を酸素を有する雰囲気下で行うと、正極活物質の表層部の第3の領域(103)にマグネシウム及びフッ素が偏析し、この際、特に前記マグネシウムが、充放電の繰り返しによる劣化が生じにくい、電気化学的に安定な酸化マグネシウムの態様であることが、正極活物質のエネルギー密度維持率の向上に寄与するものと解される。 (ウ)本件発明についての特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合することについて そして、本件特許請求の範囲に記載された本件発明は、「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有し、前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」との記載により特定されるものであるから、当業者が発明の詳細な説明に記載により上記課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 (エ)取消理由1(サポート要件)についてのまとめ 以上より、本件発明1及び2についての特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、サポート要件に適合するものである。 したがって、取消理由1(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 イ 取消理由2(進歩性:申立理由1に一部対応)について (ア)対比 本件発明1と甲1発明Aとを対比する。 a 甲1発明Aの、「硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、組成式0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)で表されるリチウムに富む複合酸化物であるリチウム金属酸化物粒子を分散させ、十分分散した混合物を形成し、この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下し、水酸化アルミニウムを沈殿させ、上記リチウム金属酸化物粒子をコーティングされるようにし、水酸化アンモニウムの添加後、混合物を60℃に2~10時間の範囲の時間加熱し、続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性リチウム金属酸化物粒子上に有する材料を形成し、」は、本件発明1の、リチウムを含む「複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する」に相当する。 b 甲1発明Aの「沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成して、」は、本件発明1の「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する」に相当する。 c 甲1発明Aの「酸化アルミニウムでコーティングされた、リチウムに富む正極活物質を形成する方法」は、本件発明1の「正極活物質の作製方法」に相当する。 d そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、「リチウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有する、正極活物質の作製方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> <相違点1> アルミニウムを有する材料が被覆される複合酸化物の組成が、本件発明1では、「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む」と特定されているのに対し、甲1発明Aでは、「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)」で表され、wが0以外であるとは特定されていないことから、「コバルト」を含むかが直ちに明らかでない点(以下「相違点1」という。)。 <相違点2> アルミニウムを有する材料が被覆される複合酸化物の組成が、本件発明1では、「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む」と特定されているのに対し、甲1発明Aでは、「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)」で表され、「フッ素、及びマグネシウム」を含むものでない点(以下「相違点2」という。)。 <相違点3> 「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を、本件発明1では、「酸素を含む雰囲気下で行う」ことが特定されているのに対し、甲1発明Aでは、どのような雰囲気下で行うかが不明な点(以下「相違点3」という。)。 (イ)相違点の検討 事案に鑑み、相違点3について検討する。 a 相違点3の検討 甲1発明Aにおいて、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成する工程が、どのような雰囲気下で行われるものであるかは、甲1の記載及び本願の優先日当時の技術常識を参酌しても不明である。 また、甲1発明Aにおいて、沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成する工程を、「酸素を含む雰囲気下で行う」ことの動機付けも、甲1の記載及び本願の優先日当時の技術常識を参酌しても見いだすことはできない。 したがって、甲1発明Aにおいて、相違点3に係る特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 b 意見書における申立人の主張について 甲1発明Aにおいて、「沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成」することにより、酸化アルミニウムのコーティングが形成される点を踏まえ、申立人は、令和 4年 9月12日提出の意見書において、「焼成により酸化物を得る際に酸素を含む雰囲気下(例えば、空気下)で焼成することは極々一般的なことであり」、「コーティングとして、酸素の欠損が無い安定な酸化アルミニウム(Al2O3)の形成を目指すことは当業者であれば当然」であって、そのために、上記焼成を「酸素の脱離が起こらない雰囲気、言い換えれば、酸素が脱離しても酸素が供給される雰囲気にて沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を焼成することは、設計事項」といえ、さらに、「甲1発明Aの焼成を酸素を含まない雰囲気下とする特段の事情も」ない旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等には、「内部にコバルト酸リチウムを有し、表層部にアルミニウムとマグネシウムを含む被覆層を有する正極活物質とするため、マグネシウムとフッ素を有するコバルト酸リチウム粒子に、ゾルゲル法でアルミニウムを含む被覆層を形成した後、加熱を行って作製した」サンプル1(【0291】)が、「極めて良好なサイクル特性を示し」、「内部にコバルト酸リチウムを有し、表層部にアルミニウムを含む被覆層を有する正極活物質とするため、マグネシウムを有さないコバルト酸リチウム粒子に、ゾルゲル法でアルミニウムを含む被覆層を形成した後、加熱を行って作製した」サンプル4(【0306】)を上回る特性を発揮するとの作用効果を奏することが記載されている(図22も参照)。 そうすると、仮に、甲1発明Aにおいて、前記焼成する工程を「酸素を含む雰囲気下で行う」ことが、当業者にとって容易に想到し得る程度のことであったとしても、相違点3に係る「前記加熱する工程は酸素を含む雰囲気下で行う」ことが、相違点2に係る、複合酸化物に「フッ素、及びマグネシウム」を含むことと相まって奏する本件発明1の上記作用効果を、当業者は予測することができるとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明Aにおいて、上記相違点3に係る特定事項を備えることを想到したとしても、予測し得ない作用効果を奏するものといえるから、相違点3は、甲1発明Aにおける設計的事項であるとはいえない。よって、申立人の意見を採用することはできない。 (ウ)取消理由2(進歩性)についてのまとめ 以上より、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、取消理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 (2)異議申立書に記載された申立理由について ア 申立理由1(進歩性)について (ア)対比 本件発明2と甲1発明Bとを対比する。 a 甲1発明Bの「リチウム金属酸化物粉末」は「リチウムに富む正極活物質として形成される」ものであるから、甲1発明Bの「リチウム金属酸化物粉末、アセチレンブラック及び黒鉛を含む混合物と、PVDF-NMP溶液と、を混合してスラリーを形成し、アルミニウム箔集電体上に塗布後、乾燥、プレスして正極を得る工程」は、本件発明2の「正極活物質を用いて正極を形成する工程」に相当する。 b 甲1発明Bの、「硝酸アルミニウム溶液に、一定の撹拌下で、組成式0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)で表されるリチウムに富む複合酸化物であるリチウム金属酸化物粒子を分散させ、十分分散した混合物を形成し、この十分分散した混合物に、適切な量の水酸化アンモニウムを滴下し、水酸化アルミニウムを沈殿させ、上記リチウム金属酸化物粒子をコーティングされるようにし、水酸化アンモニウムの添加後、混合物を60℃に2~10時間の範囲の時間加熱し、続いて、混合物を濾過し、得られた固体を多くの回数洗浄して、沈殿水酸化アルミニウムを活性リチウム金属酸化物粒子上に有する材料を形成し、」は、本件発明2の、リチウムを含む「複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する」に相当する。 c 甲1発明Bの「沈殿水酸化アルミニウムを有する材料を、500℃の温度で5時間焼成して、」は、本件発明2の「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する」に相当する。 d 甲1発明Bの「コインセル電池」は、正極にリチウムに富む正極活物質を備え、充放電可能な二次リチウムイオン電池である(【0011】、【0089】、【0090】、表5)から、甲1発明Bの「コインセル電池の製造方法」は、本件発明2の「リチウムイオン二次電池の作製方法」に相当する。 e そうすると、本件発明2と甲1発明Bとは、「正極活物質を用いて正極を形成する工程と、を有し、前記正極を形成する工程は、リチウムを含む複合酸化物に、アルミニウムを有する材料を被覆する工程と、前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程と、を有する、リチウムイオン二次電池の作製方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> <相違点4> アルミニウムを有する材料が被覆される複合酸化物の組成が、本件発明2では、「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む」と特定されているのに対し、甲1発明Bでは、「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)」で表され、wが0以外であるとは特定されていないことから、「コバルト」を含むかが直ちに明らかでない点(以下「相違点4」という。)。 <相違点5> 本件発明2は、「前記正極、セパレータ、及び負極を電解質に含浸させる工程と、前記正極、前記セパレータ、及び前記負極を順に積層する工程と、を有し、」と特定されるのに対し、甲1発明Bは、「電解質に浸した3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔質セパレーターを、正極と負極との間に配置し、さらに数滴の電解質を電極の間に加えた後、電極を、圧着法を使用して、2032コイン電池ハードウェアの内部に封止し、コイン電池を形成する工程」を行うものである点(以下「相違点5」という。)。 <相違点6> アルミニウムを有する材料が被覆される複合酸化物の組成が、本件発明2では、「リチウム、コバルト、フッ素、及びマグネシウムを含む」と特定されているのに対し、甲1発明Bでは、「0.5Li2MnO3・0.5LiNiuCowMn0.3126O2(ただし、u+w=0.6874を満たす。)」で表され、「フッ素、及びマグネシウム」を含むものでない点(以下「相違点6」という。)。 <相違点7> 「前記被覆された前記複合酸化物を500℃以上1200℃以下で50時間以下加熱する工程」を、本件発明2では、「酸素を含む雰囲気下で行う」ことが特定されているのに対し、甲1発明Bでは、どのような雰囲気下で行うかが不明な点(以下「相違点7」という。)。 (イ)相違点の検討 事案に鑑み、相違点5、7について検討する。 a 相違点5の検討 甲1発明Bにおいて、「電解質に浸した3層(ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン)微孔質セパレーターを、正極と負極との間に配置し、さらに数滴の電解質を電極の間に加えた後、電極を、圧着法を使用して、2032コイン電池ハードウェアの内部に封止する工程」に替えて、前記正極、3層微多孔質セパレーター、及び負極を電解質に含浸させる工程と、前記正極、前記3層微多孔質セパレーター、及び負極を順に積層する工程を適用し、相違点5に係る特定事項を備えたものとする動機付けは、甲1の記載、及び本願優先日当時の技術常識を参酌しても見いだすことはできない。 したがって、甲1発明Bにおいて、相違点5に係る特定事項を備えたものとすることは、当業者にとって容易になし得たものということはできない。 b 相違点7の検討 相違点7は、上記(1)イ(イ)の「a 相違点3の検討」で検討した相違点3と同じである。したがって、甲1発明Bにおいて、相違点7に係る特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことであるということはできない。 (ウ)申立理由1(進歩性)についてのまとめ 以上より、本件発明2は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、申立理由1(進歩性)によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。 9 むすび 以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700100

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