2022-700076
メタルマスク用素材およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-700076
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-539198外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6909412
- 請求日
- 2022年01月28日
- 審決日
- 2022年04月04日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特許第6909412号(請求項の数5。以下,「本件特許」という。)は,2017年(平成29年)9月15日(優先権主張:平成28年9月15日(2件))を国際出願日とする特許出願(特願2018-539198号)に係るものであって,令和3年7月7日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,令和3年7月28日である。)。
その後,令和4年1月28日に,本件特許の請求項1~5に係る特許に対して,特許異議申立人である森山涼子(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
前記メタルマスク用素材1g当たりにおいて,
面積円相当径が10.0μmを超える酸化物系非金属介在物が2.0個以下であり,
面積円相当径が6.0~10.0μmである酸化物系非金属介在物の個数が20.0個以下であり,
前記素材は板厚0.15mm以下の薄板形状であることを特徴とする,メタルマスク用素材。
【請求項2】
真空溶解により,再溶解用の第一消耗電極を製造する消耗電極製造工程と,
前記第一消耗電極を鋳型内で再溶解して第二再溶解用の第二再溶解用消耗電極を製造する第一再溶解工程と,
前記第二再溶解用消耗電極を鋳型内で再溶解して鋼塊とする第二再溶解工程と,を備え,
前記第二再溶解用消耗電極の径D1の,前記第二再溶解で用いる鋳型の内径D2に対する比D1/D2は,0.80~0.95であり,
前記第二再溶解工程後の鋼塊に熱間圧延,冷間圧延を行い,板厚0.15mm以下の薄板状素材を得ることを特徴とする,メタルマスク用素材の製造方法。
【請求項3】
前記冷間圧延後の素材1g当たりにおける,面積円相当径が10.0μmを超える酸化物系非金属介在物が2.0個以下であり,面積円相当径が6.0~10.0μmである酸化物系非金属介在物の個数が20.0個以下であることを特徴とする,請求項2に記載のメタルマスク用素材の製造方法。
【請求項4】
前記冷間圧延時の総圧下率は,90%以上であることを特徴とする,請求項2または3に記載のメタルマスク用素材の製造方法。
【請求項5】
前記第一再溶解工程および第二再溶解工程を,真空アーク再溶解で行うことを特徴とする,請求項2乃至4のいずれかに記載のメタルマスク用素材の製造方法。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
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本件特許の請求項1~5に係る特許は,下記1~3のとおり,特許法113条2号に該当する。証拠方法は,甲第1号証~甲第14号証(以下,単に「甲1」等という。下記4を参照。)である。
1 申立理由1(進歩性)
本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1に係る特許は,同法113条2号に該当する。
2 申立理由2(進歩性)
本件発明1は,甲3に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1に係る特許は,同法113条2号に該当する。
3 申立理由3(進歩性)
本件発明2~5は,甲1に記載された発明及び甲4~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項2~5に係る特許は,同法113条2号に該当する。
4 証拠方法
・甲1 特開平3-281756号公報
・甲2 特開平4-218644号公報
・甲3 特開平7-179998号公報
・甲4 特開2001-353570号公報
・甲5 特開2003-27189号公報
・甲6 特開平7-3350号公報
・甲7 特開平5-345934号公報
・甲8 特開平11-269609号公報
・甲9 特開2002-69543号公報
・甲10 特開2000-90824号公報
・甲11 特開2001-73089号公報
・甲12 特許第2978089号公報
・甲13 特開2005-156520号公報
・甲14 特許第3501004号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(進歩性),申立理由3(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(特許請求の範囲,2頁右下欄14~19行,5頁左上欄2~16行,5頁左下欄19行~10頁左下欄3行,第1表~第4表,第1図~第4図)によれば,特に,特許請求の範囲の記載,実施例1の記載(5頁右下欄3行~6頁右下欄10行)のほか,合金No.1(第1表,第2表)を用いた供試材a(第3表)に着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「C:0.0019wt%,Si:0.05wt%,Mn:0.28wt%,Ni:35.7wt%,Cr:0.02wt%,P:0.002wt%,S:0.0005wt%,solAl:0.007wt%,N:0.0012wt%,O:0.0010wt%を含有し,残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板であって,板厚は0.25mmであり,介在物組成が,CaO:55wt%,Al2O3:5wt%,MgO:40wt%であり,圧延方向における板厚断面で800倍にて60mm2検鏡し,視野内すべての介在物の厚さ,長さを測定し,(長さ/厚さ)≦3を球状介在物,(長さ/厚さ)>3を線状介在物として分類した,介在物のサイズ別の個数(1mm2当り)が,球状介在物(~3μm)が7個/mm2,球状介在物(3~6μm)が0個/mm2,球状介在物(6~14μm)が0個/mm2,球状介在物(14μm~)が0個/mm2,線状介在物(~3μm)が0個/mm2,線状介在物(3~5μm)が0個/mm2であり,圧延方向における表面粗度Ra(L)が0.50μmであり,圧延方向と垂直な方向における表面粗度Ra(C)が0.60μmであり,圧延方向におけるスキューネスRsk(L)が+0.6であり,圧延方向と垂直な方向におけるスキューネスRsk(C)が+0.7であり,エッチング直前での表面におけるSiの成分偏析率が4%である,シャドウマスク用Fe-Ni合金薄板。」(以下,「甲1発明1」という。)
「C:0.0019wt%,Si:0.05wt%,Mn:0.28wt%,Ni:35.7wt%,Cr:0.02wt%,P:0.002wt%,S:0.0005wt%,solAl:0.007wt%,N:0.0012wt%,O:0.0010wt%を含有し,残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する合金を電気炉にて出鋼し,その後に取鍋精錬を行うことによって7トン鋼塊とし,出鋼後の取鍋精錬は,CaO:40%以下のMgO-CaO系耐火物よりなる取鍋を使用し,溶滓は成分がwt%で(CaO)/(CaO)+(Al2O3)が0.45%以下,MgOが25%以下,SiO2が15%以下,Siより酸化力の弱い金属の酸化物が3%以下であるCaO-Al2O3-MgO系のものであり,上記で得られた鋼塊を手入れの後,1200℃で20時間加熱し,1次分塊にて断面減少率60%で分塊圧延を行い,しかるのち1200℃で20時間加熱し,2次分塊にて断面減少率45%で分塊圧延を行い,徐冷することにより,供試材を得て,スラブを準備し,このスラブを手入れし酸化防止剤を塗布後,加熱温度1100℃で加熱してから熱間圧延を行い,この際,1000℃以上での合計圧下率は82%であり,850℃以上での合計圧下率は98%であって,熱間圧延された熱延コイルの巻取り温度は550~750℃であり,上記のようにして得られた熱延コイルは脱スケール後,冷延,焼鈍を繰返し,最終冷延または調質圧延時にダルロールを用いて圧延することにより,圧延方向における表面粗度Ra(L)が0.50μmであり,圧延方向と垂直な方向における表面粗度Ra(C)が0.60μmであり,圧延方向におけるスキューネスRsk(L)が+0.6であり,圧延方向と垂直な方向におけるスキューネスRsk(C)が+0.7である,表面粗度を有する,板厚0.25mmの合金板を得る,シャドウマスク用Fe-Ni合金薄板の製造方法。」(以下,「甲1発明2」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
本件発明1における「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する」,「薄板形状である」「メタルマスク用素材」と,甲1発明1における「C:0.0019wt%,Si:0.05wt%,Mn:0.28wt%,Ni:35.7wt%,Cr:0.02wt%,P:0.002wt%,S:0.0005wt%,solAl:0.007wt%,N:0.0012wt%,O:0.0010wt%を含有し,残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板」とは,「質量%」と「wt%」とが同視できることから,いずれも,「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,Fe及び不可避的不純物を含有する組成を有する」,「薄板形状である」「素材」である限りで共通する。
以上によれば,本件発明1と甲1発明1とは,
「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,Fe及び不可避的不純物を含有する組成を有する素材であって,前記素材は薄板形状である,素材。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1-1
素材の用途が,本件発明1では,「メタルマスク用」であるのに対して,甲1発明1では,「シャドウマスク用」である点。
・相違点1-2
素材の組成が,本件発明1では,C,Si,Mn,Niのほかは,「残部がFe及び不可避的不純物からなる」のに対して,甲1発明1では,C,Si,Mn,Niのほかに,さらに,「Cr:0.02wt%,P:0.002wt%,S:0.0005wt%,solAl:0.007wt%,N:0.0012wt%,O:0.0010wt%」を含有し,「残部がFeおよび不可避的不純物からなる」点。
・相違点1-3
素材の板厚が,本件発明1では,「0.15mm以下」であるのに対して,甲1発明1では,「0.25mm」である点。
・相違点1-4
本件発明1では,「前記メタルマスク用素材1g当たりにおいて,面積円相当径が10.0μmを超える酸化物系非金属介在物が2.0個以下であり,面積円相当径が6.0~10.0μmである酸化物系非金属介在物の個数が20.0個以下であ」るのに対して,甲1発明1では,「圧延方向における板厚断面で800倍にて60mm2検鏡し,視野内すべての介在物の厚さ,長さを測定し,(長さ/厚さ)≦3を球状介在物,(長さ/厚さ)>3を線状介在物として分類した,介在物のサイズ別の個数(1mm2当り)が,球状介在物(~3μm)が7個/mm2,球状介在物(3~6μm)が0個/mm2,球状介在物(6~14μm)が0個/mm2,球状介在物(14μm~)が0個/mm2,線状介在物(~3μm)が0個/mm2,線状介在物(3~5μm)が0個/mm2であ」る点。
イ 相違点1-1の検討
甲1には,カラーテレビブラウン管のシャドウマスクを製造するためのFe-Ni合金薄板について記載されている(特許請求の範囲,2頁左上欄4~11行,2頁右下欄14~19行,10頁右上欄14行~左下欄3行)。
しかしながら,甲1には,甲1発明1に係るシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板を,メタルマスクを製造するために用いることについては,何ら記載されておらず,また,そのようなことが技術常識であるともいえない。
また,甲2には,高鮮明TVのシャドウマスク材として使用することができるFe-Ni系合金冷延板について記載されているものの(特許請求の範囲,【0001】),甲1発明1に係るシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板を,メタルマスクを製造するために用いることを動機付ける記載は見当たらない。
念のため,甲3~14の記載について検討しても,やはり,甲1発明1に係るシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板を,メタルマスクを製造するために用いることを動機付ける記載は見当たらない。
以上によれば,甲1発明1において,Fe-Ni合金薄板の用途を,「シャドウマスク用」に代えて,「メタルマスク用」とすることは,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は,本件発明1の用途と甲1に記載された発明の用途は一応相違するものの,これらは,発明に係る物品がどのような用途に用いられるかにすぎず,発明に係る素材やFe-Ni合金薄板そのものの特徴ではないこと,また,本件明細書の記載を根拠として,出願人(特許権者)自身が,「シャドウマスク用のFe-Ni系薄板」及び「メタルマスク用素材」は同一又は同等の技術分野であることを認めていること,を指摘して,「メタルマスク用」及び「シャドウマスク用」は実質的に相違しないと主張する。
しかしながら,本件発明1は,出願人(特許権者)がその発明を特定するために必要と認める事項として,素材が「メタルマスク用」であることを明示的に特定したものであり,本件発明1と甲1発明1とが,発明(技術的思想の創作)として,その用途が異なるものであることは明らかである。
よって,申立人の主張は採用できない。
エ 小括
したがって,相違点1-2~1-4について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2について
本件発明2と甲1発明2とを対比すると,上記(2)アと同様に,両者は,少なくとも,相違点1-1と同様の点で相違するところ,この相違点については,上記(2)イで述べたのと同様の理由により,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって,本件発明2は,甲1に記載された発明及び甲4~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明3~5について
本件発明3~5は,本件発明2を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(3)で述べたとおり,本件発明2が,甲1に記載された発明及び甲4~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明3~5についても同様に,甲1に記載された発明及び甲4~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本件発明2~5は,甲1に記載された発明及び甲4~8に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由1(進歩性),申立理由3(進歩性)によっては,本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(進歩性)
(1)甲3に記載された発明
甲3の記載(請求項1,【0008】,【0020】~【0030】,表1,図1,2)によれば,特に,請求項1,【0008】,【0028】の記載のほか,サンプルNo.9(表1)に着目すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。
「Ni:42.3wt%,Mn:0.28wt%,Al:0.014wt%,S:0.0006wt%,残部はFeおよび不可避的不純物からなり,前記不可避的不純物が,Si:0.13wt%,Cr:0.05wt%,C:0.0019wt%,N:0.0012wt%,P:0.002wt%,O:0.0015wt%,および非金属介在物:60wt%のCaOを含むAl2O3-MgO-CaO,で構成され,冷延板中における前記非金属介在物の形態が,介在物径は平均直径にして10μm以下であり,平均直径10μm超の介在物分布が100mm2当たり0個,平均直径6~10μmの介在物分布が100mm2当たり0個,平均直径6μm未満の介在物分布が100mm2当たり41個に制御され,厚さが0.15mmである,リードフレームやシャドウマスクなどの電子部品材料として使用されるFe-Ni系合金冷延板。」(以下,「甲3発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
本件発明1における「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する」,「薄板形状である」「メタルマスク用素材」と,甲3発明における「Ni:42.3wt%,Mn:0.28wt%,Al:0.014wt%,S:0.0006wt%,残部はFeおよび不可避的不純物からなり,前記不可避的不純物が,Si:0.13wt%,Cr:0.05wt%,C:0.0019wt%,N:0.0012wt%,P:0.002wt%,O:0.0015wt%,および非金属介在物:60wt%のCaOを含むAl2O3-MgO-CaO,で構成され」る,「リードフレームやシャドウマスクなどの電子部品材料として使用されるFe-Ni系合金冷延板」とは,「質量%」と「wt%」とが同視できることから,いずれも,「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,Fe及び不可避的不純物を含有する組成を有する」,「薄板形状である」「素材」である限りで共通する。
以上によれば,本件発明1と甲3発明とは,
「質量%で,C:0.01%以下,Si:0.5%以下,Mn:1.0%以下,Ni:30~50%を含有し,Fe及び不可避的不純物を含有する組成を有する素材であって,前記素材は板厚0.15mm以下の薄板形状である,素材。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点3-1
素材の用途が,本件発明1では,「メタルマスク用」であるのに対して,甲3発明では,「リードフレームやシャドウマスクなどの電子部品材料として使用される」ものである点。
・相違点3-2
素材の組成が,本件発明1では,C,Si,Mn,Niのほかは,「残部がFe及び不可避的不純物からなる」のに対して,甲3発明では,C,Si,Mn,Niのほかに,さらに,「Al:0.014wt%,S:0.0006wt%」を含み,「残部はFeおよび不可避的不純物からなり」,「前記不可避的不純物」が,「Cr:0.05wt%」,「N:0.0012wt%,P:0.002wt%,O:0.0015wt%」で構成される点。
・相違点3-3
本件発明1では,「前記メタルマスク用素材1g当たりにおいて,面積円相当径が10.0μmを超える酸化物系非金属介在物が2.0個以下であり,面積円相当径が6.0~10.0μmである酸化物系非金属介在物の個数が20.0個以下であ」るのに対して,甲3発明では,「冷延板中における前記非金属介在物の形態が,介在物径は平均直径にして10μm以下であり,平均直径10μm超の介在物分布が100mm2当たり0個,平均直径6~10μmの介在物分布が100mm2当たり0個,平均直径6μm未満の介在物分布が100mm2当たり41個に制御され」る点。
イ 相違点3-1の検討
甲3には,リードフレームやシャドウマスクなどの電子部品材料として用いるためのFe-Ni系合金冷延板について記載されている(【0008】,【0030】)。
しかしながら,甲3には,甲3発明に係るFe-Ni系合金冷延板を,メタルマスクを製造するために用いることについては,何ら記載されておらず,また,そのようなことが技術常識であるともいえない。
念のため,甲1,2及び4~14の記載について検討しても,甲3発明に係るFe-Ni系合金冷延板を,メタルマスクを製造するために用いることを動機付ける記載は見当たらない。
以上によれば,甲3発明において,Fe-Ni系合金冷延板の用途を,「リードフレームやシャドウマスクなどの電子部品材料として使用される」ものに代えて,「メタルマスク用」とすることは,当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって,相違点3-2,3-3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲3に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件発明1は,甲3に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,申立理由2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2022-700076