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特許異議申立

2022-700052

ポリウレタン樹脂組成物

審判番号
2022-700052
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-163678外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6905135
請求日
2022年01月20日
審決日
2022年09月30日
公報発行日
2023年01月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6905135号発明「ポリウレタン樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6905135号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 特許第6905135号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許異議の申立ての経緯 特許第6905135号(請求項の数3。以下、「本件特許」という。)は、令和2年9月29日を出願日とする特許出願(特願2020-163678号)であって、令和3年6月28日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年7月21日である。)。 その後、令和4年1月20日に、本件特許の請求項1~3に係る特許に対して、特許異議申立人である藤本 一男(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。 手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 1月20日 特許異議申立書 同年 4月25日付け 取消理由通知書 同年 6月24日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 7月 7日付け 通知書(申立人あて) 同年 8月 9日 意見書(申立人) (以下、特許権者が令和4年6月24日に提出した意見書を「特許権者の意見書」、申立人が令和4年8月9日に提出した意見書を「申立人の意見書」ともいう。) 2 証拠方法 (1)申立人が異議申立ての際に提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特許第6012821号公報 甲第2号証:日本曹達株式会社、「NISSO-PB 液状ポリブタジエン」、2012年、[令和4年1月14日検索]、インターネット:<URL: https://www.nippon-soda.co.jp/pb-j/list.html> 甲第3号証:特開平9-67556号公報 甲第4号証:特開2016-104875号公報 甲第5号証:特開2019-182901号公報 甲第6号証:CRAY VALLEY社、「TECHNICAL UPDATE Krasol(R) F 3000 Novel Bio-Based Diol for Polyurethanes」 甲第7号証:疋田淳、渡辺政美、「ポリウレタン樹脂塗料」、色材、1976年、49巻8号、506~513頁、[令和4年1月14日検索]、インターネット:<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/49/8/49_506/_article/-char/ja/> <DOI: 10.4011/shikizai1937.49.506> 甲第8号証:芥子明三、児玉勝久、「ポリオール化合物」、日本ゴム協会誌、1982年、55巻3号、143~150頁、[令和4年1月14日検索]、インターネット:<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/55/3/55_3_143/_pdf/-char/ja> 甲第9号証:新日本理化株式会社、「新日本理化の可塑剤 サンソサイザー(R)」、1982年7月発行 (2)申立人が令和4年8月9日に意見書とともに提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第10号証:特許第5748989号公報 甲第11号証:特開2012-102324号公報 甲第12号証:特許第5568187号公報 (以下、上記甲第1号証~甲第12号証を、「甲1」~「甲12」という。なお、上記書誌事項において、原文の「丸囲いのR」での表記は、「(R)」で代用して記載した。) 第2 訂正の適否 特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和4年6月24日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~3について訂正することを求めた(以下「本件訂正」といい、また、本件設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件明細書等」という。)。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に 「前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、」 とあるのを、 「前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、 前記可塑剤(D)がフタル酸ジウンデシルを含み、」 に訂正する。 (2)一群の請求項 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2~3はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 判断 (1)訂正の目的 訂正事項1による訂正は、可塑剤(D)が含む化合物を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 (2)新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 本件明細書等には、段落0033に「沸点が300℃以上の可塑剤(D)のフタル酸エステルとしては、例えば、・・・、フタル酸ジウンデシル、・・・などが挙げられる。これらのフタル酸エステルはいずれか1種用いても2種以上併用してもよい。」と記載され、本件明細書等の実施例の段落0054、0064の表1には、可塑剤(D)として「d2:フタル酸ジウンデシル」を含むポリウレタン樹脂組成物が記載されている。 してみれば、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に当たらない。 また、訂正事項1は可塑剤(D)に含まれる具体的な化合物を特定したものであり、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 3 まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6905135号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~3に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の明細書を「本件明細書」という。) 「【請求項1】 水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、 前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、前記ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/gであり、 前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、 前記可塑剤(D)がフタル酸ジウンデシルを含み、 前記可塑剤(D)の含有量がポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して10~30質量%であり、 100℃×1000h処理後の質量減少率が1.5%以下であり、 100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が100%以下である、ポリウレタン樹脂組成物。 【請求項2】 100℃×1000h処理後の質量減少率が1.0%以下であり、 100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が50%以下である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。 【請求項3】 電気電子部品用である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。」 第4 特許異議申立理由と当審が通知した取消理由 1 特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性) 訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、請求項1~3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1~3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件)、申立理由4(サポート要件) 訂正前の本件明細書の発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が訂正前の請求項1~3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 また、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、訂正前の請求項1~3に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号又は同法36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 請求項1に係る発明では、水酸基含有化合物(A)、ポリブタジエンポリオール(A1)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)の各成分の含有量の数値範囲が何ら規定されておらず、実施例の含有量以外である場合にも実施例と同様の効果を奏するのか不明であり、硬化することができるのか不明であるため、当業者であっても、過度の試行錯誤を行うことが必要となる。 また、請求項1に係る発明では、イソシアネート基含有化合物(B)の種類、水酸基含有化合物(A)の種類及びその含有量が限定されていないことから、実際に硬化して質量減少率及び弾性率変化率を測定することができるのか、当業者は過度の試行錯誤を行うことが必要となる。 また、請求項1に係る発明では、金属水酸化物(C)の種類について限定されておらず、実施例で使用した水酸化アルミニウム以外を使用した場合に、同様の効果を奏するのか不明である。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及びこれを引用する請求項2~3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 また、請求項1及びこれを引用する請求項2~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 2 当審が通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1~3に係る特許に対して、当審が通知した取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(実施可能要件) 訂正前の請求項1~3に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 請求項1~3に係る発明ではポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の質量減少率及び-40℃の弾性率変化率(10Hz)の数値範囲が規定されているところ、発明の詳細な説明の記載をみても、実施例に記載の個別の樹脂組成物以外に、当該数値範囲を満たす樹脂組成物をどのようにすれば得ることができるのかを当業者が把握することができない。 (2)取消理由2(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、請求項1~3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1~3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 第5 各甲号証に記載された事項 1 甲1 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物とが反応してなるポリウレタン樹脂、無機充填剤及び可塑剤を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、 前記水酸基含有化合物はポリブタジエンポリオールの水素化物を含有し、 前記ポリブタジエンポリオールの水素化物は、ポリブタジエン単位及び水素化ポリブタジエン単位の合計量100モル%に対する1,2-ビニル基を有するポリブタジエン単位の含有量が7モル%以下であり、且つ、数平均分子量が1500~2500であり、 前記ポリブタジエンポリオールの水素化物は、1,2-ポリブタジエンポリオールの水素化物であり、 前記水酸基含有化合物は、更に、ひまし油系ポリオール及びひまし油系ポリオールの水素化物から選択される少なくとも1種を含む、 ことを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。 【請求項2】 前記イソシアネート基含有化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含有する、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物からなる封止材。 【請求項4】 請求項3に記載の封止材を用いて樹脂封止された電気電子部品。」 「【0001】 本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、封止材及び電気電子部品に関する。」 「【0025】 本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられるイソシアネート基含有化合物の量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として1~30質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましい。 ・・・ 【0035】 ポリブタジエンポリオールの水素化物の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して1~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。 ・・・ 【0042】 本発明のポリウレタン樹脂組成物において、用いられる水酸基含有化合物の量は、ポリウレタン樹脂組成物を100質量%として、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。 ・・・ 【0045】 本発明のポリウレタン樹脂組成物において、無機充填剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して50~85質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましい。・・・ ・・・ 【0047】 本発明のポリウレタン樹脂組成物において、可塑剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。」 「【0061】 実施例、及び比較例で使用される原料を下記に示す。 ・GI-1000:ポリブタジエンポリオール水素化物 日本曹達社製、1,2-ビニル基含有量7モル%未満、Mn=1500、粘度105Poise/45℃、Tg-44℃ ・GI-2000:ポリブタジエンポリオール水素化物 日本曹達社製、1,2-ビニル基含有量7モル%未満、Mn=2000、粘度165Poise/45℃、Tg-42℃ ・GI-3000:ポリブタジエンポリオール水素化物 日本曹達社製、1,2-ビニル基含有量7モル%未満、Mn=3100、粘度315Poise/45℃、Tg-37℃ ・G-1000:ポリブタジエンポリオール 日本曹達社製、1,2-ビニル基含有量85モル%、Mn=1400、粘度75Poise/45℃、Tg-25℃ ・G-2000:ポリブタジエンポリオール 日本曹達社製、1,2-ビニル基含有量88モル%、Mn=1900、粘度140Poise/45℃、Tg-19℃ ・ヒマシ油 商品名:ヒマシ油 伊藤製油社製) ・SR-309:水素化ひまし油 伊藤製油株式会社製、水酸基含有量=1.67mol/kg、粘度=2200mPa・s(25℃) 商品名:SR-309 ・DINP:フタル酸ジイソノニル 可塑剤 ジェイプラス社製 商品名:DINP ・H-32:水酸化アルミニウム 昭和電工製 ・H-42I:水酸化アルミニウム 昭和電工製 ・SC-5570:消泡剤 株式会社東レ・ダウコーニング製 ・U-810:ジオクチル錫ジラウレート 重合触媒 日東化成株式会社製 ・MTL:ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系イソシアネート 東ソー社製(商品名:ミリオネートMTL) ・TLA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 旭化成ケミカルズ社製(商品名:デュラネートTLA-100) 【0062】 (ポリウレタン樹脂組成物の調製) 表1に示すポリオール成分の配合の原料を、加熱、冷却、減圧装置を備えた反応釜に投入し、100℃、10mmHg以下の圧力下で2時間かけて脱水し、ポリオール成分を調製した。 【0063】 ポリイソシアネート成分として、表1に示すイソシアネート基含有化合物を用意した。 【0064】 表1に示す配合量で、ポリオール成分にポリイソシアネート成分を加えて攪拌し、脱泡して混合することによりポリウレタン樹脂組成物を得た。ポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合は、ポリオール成分を23℃に調整し、続いて23℃に調整したポリイソシアネート成分を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、回転数2000rpmで1分間撹拌することにより行った。 【0065】 なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合比率は、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基1当量に対してポリオール成分中の活性水素が1当量となるように調製した。 ・・・ 【0073】 【表1】 [図:0001393089000001.jpg] 」 2 甲2 甲2には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001393089000002.jpg] [図:0001393089000003.jpg] 」(1~2頁) 3 甲3 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0023】実施例1 ・・・ポリブタジエンポリオール「G-1000」(日本曹達製、水酸基価71)・・・ 【0024】 実施例2 ・・・ポリブタジエンポリオール「G-1000」(日本曹達製、水酸基価71)・・・」 4 甲4 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0011】 化合物(a)としては、特に制限されないが、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられ、これらの水素化ポリジエンポリオールを用いることもできる。特に耐熱性向上、印刷性向上、絶縁信頼性向上という観点から、水素化ポリジエンポリオールが好ましい。ポリブタジエンポリオールとしては、1,4-結合を主に有する水酸基末端液状ポリブタジエン Poly bd R-45HT、R-15HT(以上 出光興産(株)製)、水酸基末端ポリブタジエン水素化物ポリテールH、ポリテールHA(以上 三菱化学(株)製)、1,2-結合を主に有する水酸基末端ポリブタジエンG-1000、G-2000、G-3000(以上 日本曹達(株)製)、1,2-結合を主に有する水酸基末端ポリブタジエンの水素化物GI-1000、GI-2000、GI-3000(以上 日本曹達(株)製)などが挙げられる。」 「【0057】 <製造例2> ・・・水素化ポリジエンポリオール「G-1000」(日本曹達(株)製、水酸基価73mgKOH/g)・・・」 5 甲5 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)ポリイソシアネート化合物及び(B)ポリオール化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、 前記(B)ポリオール化合物が、(B1)ポリファルネセンポリオール化合物、並びに、 (B2)ポリブタジエン系ポリオール化合物及び/又は(B3)ヒマシ油系ポリオールを含む、ポリウレタン樹脂組成物。」 「【0001】 本発明は、電気絶縁用ポリウレタン樹脂組成物に関する。」 「【0008】 本発明は、相溶性及び作業性に優れ、かつ高い耐熱性、高い耐湿性、及び低温柔軟性を保持できるポリウレタン樹脂を提供することを課題とする。」 「【0039】 (B1)ポリファルネセンポリオール化合物 ポリファルネセンポリオール化合物とは、ファルネセンから誘導(製造)されるポリブタジエンポリオールを意味する。」 「【0071】 ・・・ (B2)ポリブタジエンポリオール (B2)ポリブタジエンポリオールとは、上記(B1)ポリファルネセンポリオール化合物以外のポリブタジエンポリオールを意味する。 【0072】 上記(B2)ポリブタジエンポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、(b2-1)水酸基価60mgKOH/g以下のポリブタジエンポリオール(以下、「(b2-1)ポリブタジエンポリオール」ということもある。)、(b2-2)水酸基価60mgKOH/gを越えるポリブタジエンポリオール(以下、「(b2-2)ポリブタジエンポリオール」ということもある。)等が挙げられる。 【0073】 (B2)ポリブタジエンポリオールの市販品としては、例えば、ポリブタジエンポリオール[日本曹達株式会社製「NISSO-PBGシリーズ」(G-1000、G-2000、G-3000等)、米国ARCO社製「Poly Bd(登録商標)シリーズ」(R-45M、R-15HT、R-45HT、CS-15、CN-15等)]等が挙げられる。 ・・・ 【0079】 (b2-2)ポリブタジエンポリオールの水酸基価としては、好ましくは61~300mgKOH/gであり、より好ましくは70~200mgKOH/gであり、特に好ましくは80~150mgKOH/gである。 ・・・ 【0084】 上記(B2)ポリブタジエンポリオールは、一種単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いることもできる。」 「【0153】 実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。 【0154】 <(A)ポリイソシアネート化合物> а1:MTL 商品名:ミリオネート(登録商標)MTL(カルボジイミド変性MDI)、東ソー社製 【0155】 <(B)ポリオール化合物> b1:ポリファルネセンポリオール 商品名:Krasol F3000 CRAY VALLEY製 b2-1:R-45HT 商品名:Poly bd(登録商標) R-45 HT、出光石油化学社製、数平均分子量 2800、水酸基価46.6mg KOH/g (JIS K 1557)、水酸基含有量0.83mol/kg (JIS K 1557)、ヨウ素価398g/100g (JIS K 0070)、粘度5Pa・S/30℃(JIS K 2283) b2-2:R-15HT 商品名:Poly bd(登録商標) R-15 HT、出光石油化学社製、数平均分子量 1200、水酸基価102.7mg KOH/g (JIS K 1557)、水酸基含有量1.83mol/kg (JIS K 1557)、ヨウ素価420g/100g (JIS K 0070)、粘度1.5Pa・S/30℃(JIS K 2283) b3:H-35(ヒマシ油) 商品名:H-35、伊藤製油株式会社 b4-1(比較ポリオール):ポリカーボネートジオール 商品名:T-5650E、旭化成株式会社 b4-2(比較ポリオール):ポリエーテル系ポリオール 商品名:T-400 株式会社ADEKA 【0156】 <(F)消泡剤> f1:SC-5570 商品名:SC-5570(シリコーン消泡剤)、東レ・ダウコーニング社製 【0157】 ポリウレタン樹脂組成物の調製 <実施例1~7及び比較例1~3> 表1に示す組成及び消泡剤としてSC-5570(シリコーン消泡剤)0.01重量%で各成分を配合し、下記の手順で各種のポリウレタン樹脂組成物を調製した。 【0158】 具体的には、表1に示す(B)ポリオール化合物、及び(F)消泡剤を自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合した。 上記混合成分に、表1に示す(A)ポリイソシアネート化合物を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで1分間混合した。得られた混合物を脱泡し、実施例1~7及び比較例1~3の各ポリウレタン樹脂組成物を得た。」 「【0170】 <耐湿性 PCT(121℃/100%RH)> 試験片Cの耐湿性を、121℃/100%RH・2気圧条件下でプレッシャークッカー試験(PCT試験)を行い、試験片Cが溶解する時間を測定した。測定結果に基づいて、下記評価手順に従って耐湿性を評価した。 ◎:200h以上 〇:100h以上 【表1】 [図:0001393089000004.jpg] 」 6 甲6 甲6には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英文で記載されているので、図・表以外の文章については申立人が提出した翻訳文に基づいて摘記した。 「 [図:0001393089000005.jpg] [図:0001393089000006.jpg] 」(1~2頁) 7 甲7 甲7には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001393089000007.jpg] [図:0001393089000008.jpg] 」(511頁) 8 甲8 甲8には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001393089000009.jpg] 」(147頁) 9 甲9 甲9は、「新日本理化の可塑剤 サンソサイザー(R)」のカタログの写しであって、各種の可塑剤の物性等を示す表が記載され、その中の「揮発減量(ギヤオーブン)」の項目において、 「DINP フタル酸ジイソノニル」では「60分後」が「2.5」、「120分後」が「5.2」、 「DUP フタル酸ウンデシル」では「60分後」が「0.6」、「120分後」が「1.8」、 「DIDA アジピン酸ジイソデシル」では「60分後」が「2.7」、「120分後」が「5.6」 であることが示されている。 10 甲10 甲10には、以下の事項が記載されている。 「【0063】 ・・・ ・Poly bd R-45HT(出光興産社製):水酸基含有ポリブタジエン、分子量2,800、30℃における粘度6,600mPa・s、水酸基含有率:1分子あたり約2個」 11 甲11 甲11には、以下の事項が記載されている。 「【0071】 ・・・ (c-1-2)ポリブタジエン系ポリオール 出光興産社製、Poly bd R-15HT 粘度:1.5Pa・s/30℃、水酸基価:102.7mgKOH/g」 12 甲12 甲12には、以下の事項が記載されている。 「【0011】 本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いることにより、耐湿熱性、難燃性、電気絶縁性、作業性に優れ、かつ樹脂ケースにケミカルストレスクラックが生じにくいポリウレタン樹脂を得ることかできる。」 「【0015】 本発明に用いるポリブタジエンポリオール(A)としてはポリウレタン樹脂に使用される従来公知のものを使用することができ、平均水酸基価が20~120mgKOH/gであることが好ましい。」 「【0043】 <評価方法> ・・・ (耐湿熱性) 1.試験片の作成 上記ポリウレタン樹脂組成物を5cm×5cm、厚み1cmの金型に流し込み、80℃で16時間養生した後、これを脱型することにより、耐湿熱性評価用の試験片を作成した。 2.耐湿熱性の評価 試験片を85℃×85%RH×3000時間処理後、硬度(タイプA)をJIS K6253で測定し、体積固有抵抗値を、東亜電波工業社製SE-10Eを用い、25±5℃、65±5%RHで500Vの測定電圧を印加し、60秒後の数値を測定した。下記の通り評価した。 ○:硬度typeA10以上かつ体積固有抵抗値が10の9乗 Ω・cm以上 ×:硬度または体積固有抵抗値が上記を満たさない。」 第6 当審の判断 当審は、取消理由1~3、申立理由1~4のいずれの理由によっても、本件発明1~3に係る特許を取り消すことができないと判断する。理由は以下のとおりである。 1 取消理由について (1)取消理由1(実施可能要件)について 申立理由3は、実施可能要件違反の理由であるので、取消理由1と併せて判断する。 ア 特許法第36条第4項第1号の考え方について 特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する 具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の特定事項 本件発明を特定する事項は上記第3で示したとおりであり、本件発明1では、ポリウレタン樹脂組成物について、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)の4つの成分を含むことが特定され、特に可塑剤(D)については「沸点300℃以上のフタル酸エステルのみから」なることに加えて「フタル酸ジウンデシルを含」むことが特定され、可塑剤(D)の含有量も特定されるとともに、当該組成物自体の性質として、「100℃×1000h処理後の質量減少率」(以下、「熱処理後の質量減少率」ともいう。)及び「100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)」(以下、「熱処理後の弾性率変化率」ともいう。)の上限が特定されている。 本件の請求項1を引用する本件発明2、3についても同様である。 ウ 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明において、段落0009~0035には、ポリウレタン樹脂組成物が4つの成分(A)~(D)を含有すること、各成分として使用可能な具体例が記載されている。この中で、特に段落0031には、「可塑剤(D)としては、沸点が300℃以上のフタル酸エステルが用いられる。可塑剤(D)として沸点が300℃以上のフタル酸エステルのみを用いることにより、硬化後のポリウレタン樹脂組成物を高温環境下においたときの可塑剤(D)の気化を抑制することができ、長期にわたる使用において柔軟性を維持することができ、耐熱性を向上することができる。」と記載されている。また、段落0037にはポリウレタン樹脂組成物を公知の方法で製造可能であることが記載され、段落0040には「本実施形態においてポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の質量減少率は1.5%以下である。これにより高温環境下での可塑剤(D)の気化が抑制され、長期にわたる使用において柔軟性を維持することができる。」と記載され、段落0042には、「本実施形態においてポリウレタン樹脂組成物の100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)は100%以下である。これにより長期にわたる冷熱サイクルによる柔軟性の低下を抑えることができ、耐熱性を向上することができる。」と記載されている。 そして、段落0047~0063には、実施例について、使用する各成分、ポリウレタン樹脂組成物の調製手順、粘度、質量減少率及び弾性率変化率の測定・評価方法が記載されており、段落0064の表1には、実施例及び比較例の樹脂組成物の組成及び測定・評価結果について、 「 [図:0001393089000010.jpg] 」と記載されている。 エ 判断 上記ウで示した本件明細書の発明の詳細な説明において、段落0010~0021には、ポリブタジエンポリオール(A1)及びそれ以外の水酸基含有化合物(A)の具体例や含有量、段落0022~0028にはイソシアネート基含有化合物(B)の具体例や含有量、段落0029~0030には金属水酸化物(C)の具体例や含有量、段落0031~0034には可塑剤(D)の具体例や含有量が記載されており、さらに、段落0037~0039にはウレタン樹脂組成物を公知の方法で製造可能であること及びその具体的な製造方法も記載されている。 さらに、本件発明でポリウレタン樹脂組成物の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の上限が規定されているので、当該規定について本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみていく。段落0031には、「可塑剤(D)として沸点が300℃以上のフタル酸エステルのみを用いることにより、硬化後のポリウレタン樹脂組成物を高温環境下においたときの可塑剤(D)の気化を抑制することができ」ることが記載されており、沸点が高いほど高温環境下でも蒸気圧が低く気化しにくいという傾向は技術的に見ても妥当なものといえるところ、段落0040、0042には、当該可塑剤の気化の抑制と熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定との関係が示されており、可塑剤の気化は質量の減少に直結するから、それが抑制されれば質量減少率も抑制されることは自明といえるし、熱処理後に可塑剤が多く残存することで柔軟性すなわち弾性率がある程度保たれるという作用機序も理解可能なものといえる。 そして、実施例の記載によれば、本件発明の可塑剤(D)として必須の成分であるフタル酸ジウンデシル(沸点523℃)を単独で、又は他の沸点300℃以上のフタル酸エステルとともに用いたポリウレタン樹脂組成物が、熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすことが具体的に確認できる。 そうすると、本件発明において特定の高沸点の可塑剤(D)のみを用いることによって、可塑剤(D)の気化の抑制という作用機序を通じて、熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たしうることが当業者には理解できるといえる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等というほどまでの必要はなく、本件発明1~3のポリウレタン樹脂組成物を製造することができる。 オ 取消理由1の検討 当審が通知した取消理由1は、概略、上記第4 2(1)のとおりである。 本件訂正により訂正後の請求項1では、可塑剤(D)がフタル酸ジウンデシルを含むことが特定された。 その結果、本件発明の可塑剤(D)として、フタル酸ジウンデシル(沸点523℃)を単独で、又は他の沸点300℃以上のフタル酸エステルとともに用いることが限定されたことで、可塑剤の気化が抑制されて熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすことが実施例に基づいて実証された態様となったので、本件発明を実施しようとする当業者が熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすために、もはや過度の試行錯誤までは要するものではなくなったといえる。 よって、取消理由1で当審より指摘した不備は解消した。 カ 申立人の主張の検討 (ア)特許異議申立書における主張 申立人の特許異議申立書の30~33頁における主張は、概略、上記第4 1(3)に示したとおりである。 当該主張のうち、実施例以外のポリウレタン樹脂組成物が実施例と同様の効果を奏するか不明であるという点は、上記アを踏まえるとそもそも実施可能要件の判断と直接関係するものではない。また、仮に当該主張が、『実施例と同様の効果を奏するか不明である』ということでなく、『本件発明の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすか不明である』ということを意図したものであったとしても、上記エで示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者が過度の試行錯誤等を要することなく当該規定を満たすポリウレタン樹脂組成物を得ることができるといえる。 また、当該主張のうち、実施例以外のポリウレタン樹脂組成物が硬化し、熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率を測定することができるのか不明という点については、本件発明ではイソシアネート基含有化合物(B)と、イソシアネート基と反応可能な水酸基を有するポリブタジエンポリオール(A1)とを必須成分としており、公知の方法で組成物を調製することも記載されている(段落0037)のだから、本件発明について、硬化反応を生じて硬化物を生成し、熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率を測定可能なポリウレタン樹脂組成物を得ることができるように発明の詳細な説明に記載されているといえる。 そして、申立人は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載では本件発明のポリウレタン樹脂組成物を当業者が製造できないことを、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 よって、申立人の当該主張は採用できない。 (イ)申立人の意見書における主張 申立人は当該意見書の3~6頁において、フタル酸エステルの沸点が高いほど、高温環境下で気化しにくくなり高温環境での長期使用における柔軟性維持の効果を向上できるという特許権者の意見書の主張は、本件明細書の記載に基づくものでなく、当業者が理解できない旨主張するとともに、その根拠として、本件明細書の実施例2と3との比較、或いは、実施例5と8との比較から、沸点の高いフタル酸エステルの配合量の多い方が耐熱性に劣ることを挙げている。 しかしながら、技術的にみて、一般に物質の沸点と蒸気圧(すなわち気化のしやすさ)には一定の相関関係があることを踏まえると、フタル酸エステルとして沸点が高いものを採用すれば、高温環境下においてより気化しにくくなる傾向があることは、当業者にとって理解できないとまではいえない。そして、上記エで述べたように、可塑剤(D)として523℃という高い沸点を有するフタル酸ジウンデシルを単独で、又は他の沸点300℃以上のフタル酸エステルとともに用いたポリウレタン樹脂組成物であれば、高温環境下での可塑剤の気化を抑制し、本件発明の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすポリウレタン樹脂組成物を過度の試行錯誤なく製造できるといえる。 なお、申立人が上記主張の根拠として挙げた本件明細書の実施例2,3,5及び8は、可塑剤以外の成分も異なるものであるから、上記実施例を単純に比較しただけで、その耐熱性の差をただちに沸点の高いフタル酸エステルの配合量に起因するものと断定することはできない。 また、申立人は当該意見書の7~15頁において、概略、本件発明の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすために、成分(A)、(B)、(C)の種類及び含有量の選択に当たって過度の試行錯誤を要する旨主張している。 しかしながら、上記エで述べたように、可塑剤(D)として523℃という高い沸点を有するフタル酸ジウンデシルを単独で、又は他の沸点300℃以上のフタル酸エステルとともに用いたポリウレタン樹脂組成物であれば、高温環境下での可塑剤の気化を抑制し、本件発明の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たすことができることは、本件明細書の記載に接した当業者には理解できるといえるし、本件明細書の記載からでは、可塑剤(D)以外の各成分の種類又は含有量が、熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率に大きく影響すると認めるに足りる根拠は見当たらない。 そして、申立人は、可塑剤(D)以外の各成分の種類又は含有量の選択次第では本件発明の熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率の規定を満たせず、本件発明の実施に過度の試行錯誤を要することを、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 また、申立人は当該意見書の15~16頁において、ポリブタジエンポリオール(A1)以外の水酸基含有化合物(A)の種類や含有量と熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率との関係について縷々主張している。 しかしながら、そもそも本件発明ではポリブタジエンポリオール(A1)以外の水酸基含有化合物(A)は必須成分ではなく、本件明細書において段落0014~0018にも当該水酸基含有化合物(A)として(A2)~(A4)が任意成分として記載されており、さらに実施例において、当該水酸基含有化合物(A)が含まれない本件発明の具体例も示されている(実施例3,4,6~8)。そして、ポリブタジエンポリオール(A1)以外の水酸基含有化合物(A)の種類や含有量が熱処理後の質量減少率及び弾性率変化率に大きく影響すると認めるに足りる根拠も見当たらない。 そうすると、ポリブタジエンポリオール(A1)以外の任意成分に過ぎない水酸基含有化合物(A)について、その種類や含有量が具体的に特定されていないからといって、本件発明を実施しようとする当業者に過度の試行錯誤を要求するとまではいえない。 よって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。 キ まとめ よって、取消理由1及び申立理由3は理由がない (2)取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性)について 申立理由1、2は、甲1を主引例とする新規性・進歩性の理由であるので、取消理由2、3と併せて判断する。 ア 甲1に記載された発明 甲1には、ポリウレタン樹脂組成物及びその電気分子部品の封止用途について記載され(特許請求の範囲、【0001】)、樹脂組成物の各成分の配合比率がもっぱら質量%単位で記載され(【0025】、【0035】、【0042】、【0045】、【0047】)、実施例において、表1に示される原料を配合したポリオール成分、イソシアネート成分を混合してポリウレタン樹脂組成物を調製したことが記載されており(【0061】~【0065】、【表1】)、当該表の中の配合量の数値は単位が明示されていないものの、上述のとおり甲1では配合比率が質量基準で特定されていることからみて、組成物ではごく一般的な単位である「質量部」を単位としていると考えるのが自然である。 そこで、表1の比較例2に着目すると、 「G-1000(ポリブタジエンポリオール 日本曹達社製) 15質量部 DINP(フタル酸ジイソノニル 可塑剤 ジェイプラス社製) 15質量部 H-32(水酸化アルミニウム 昭和電工製) 50質量部 H-42I(水酸化アルミニウム 昭和電工製) 20質量部 SC-5570(消泡剤 株式会社東レ・ダウコーニング製) 0.01質量部 U-810(ジオクチル錫ジラウレート 重合触媒 日東化成株式会社製) 0.01質量部 を配合したポリオール成分と、 TLA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 旭化成ケミカルズ社製) 3.5質量部 からなるポリイソシアネート成分と、 を用意し、ポリオール成分にポリイソシアネート成分を加えて攪拌し、脱泡して混合することによって得たポリウレタン樹脂組成物」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 甲1発明の「G-1000(ポリブタジエンポリオール 日本曹達社製)」について、同社のwebサイト内の製品紹介である甲2では、「Gシリーズ/両末端水酸基ポリブタジエン」の項に示された表の中に「銘柄」「G-1000」が「68~78」の「水酸基価(KOHmg/g)」を有する旨が記載されていること(第1頁下から第4行~第2頁上段の表)、甲3には「ポリブタジエンポリオール「G-1000」(日本曹達製、水酸基価71)」と記載されていること(【0024】)を踏まえると、本件発明1の「ポリブタジエンポリオール(A1)」を含有する「水酸基含有化合物(A)」に相当し、「前記ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/g」の条件を満たすといえる。 甲1発明の「TLA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体 旭化成ケミカルズ社製)」は本件発明1の「イソシアネート基含有化合物(B)」に相当し、甲1発明の「H-32(水酸化アルミニウム 昭和電工製)」及び「H-42I(水酸化アルミニウム 昭和電工製)」はいずれも本件発明1の「金属水酸化物(C)」に相当する。 甲1発明の「DINP(フタル酸ジイソノニル 可塑剤 ジェイプラス社製)」は、本件明細書の実施例で用いられた「d1:フタル酸ジイソノニル、沸点403℃(商品名:DINP、株式会社ジェイ・プラス製)」(【0054】)と同じ物質であり、甲1発明では他に可塑剤は含まれていないから、本件発明1の「沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからな」る「可塑剤(D)」と、「沸点300℃以上のフタル酸エステルのみから」なる限りにおいて一致する。そして、甲1発明は、可塑剤であるDINPが15質量部、樹脂組成物の総量が15+15+50+20+0.01+0.01+3.5=103.52質量部であるから、可塑剤の含有量がポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して15/103.52=約14質量%であり、本件発明1の「前記可塑剤(D)の含有量がポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して10~30質量%であ」るとの条件を満たす。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含有するポリウレタン樹脂組成物であって、 前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)を含有し、前記ポリブタジエンポリオール(A1)の平均水酸基価が60~100mgKOH/gであり、 前記可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからなり、 前記可塑剤(D)の含有量がポリウレタン樹脂組成物100質量%に対して10~30質量%である、ポリウレタン樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:可塑剤(D)について、本件発明1では「フタル酸ジウンデシルを含」むと特定されているのに対して、甲1発明ではフタル酸ジウンデシルを含んでいない点。 相違点2:本件発明1では、「100℃×1000h処理後の質量減少率が1.5%以下であり、100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)が100%以下である」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのような特定がされていない点。 b 判断 相違点1について検討する。 相違点1は、特定の化合物を含むか否かという違いであるから実質的な相違点である。 そして、甲1の段落【0046】には「可塑剤」として「ジウンデシルフタレート」は例示されているものの、そもそも甲1発明として着目した甲1記載の比較例2は、甲1の特許請求の範囲に記載の発明の具体的態様である実施例の性能・効果を評価するための比較対象にすぎないから、甲1や他の甲号証の記載に基づいて、その組成を変更する動機付けはないものといえる。 よって、甲1発明において、可塑剤としてフタル酸ジウンデシルを含むように組成を変更することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 したがって、相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明と他の甲号証に記載された事項とから容易に発明をすることができたものでない。 c 申立人の意見書における主張の検討 申立人は当該意見書の16~23頁において、本件発明が甲1発明に基づいて容易に想到し得た旨を縷々主張するものの、上記bで述べたとおり、甲1の比較例に着目して認定した甲1発明には、その組成を変更する動機付けがないため、上記主張は採用することはできない。 また、申立人は当該意見書の17頁において、「甲1の表1には、・・・実施例においてもDINP・・・が記載されていますので、当業者であれば・・・同じフタル酸エステルであるジウンデシルフタレートを採用してみることを容易に思いつくと思料します。」と述べており、甲1の各実施例を新たな引用発明として本件発明の進歩性を否定する旨を主張しているものと解される。 しかしながら、甲1の実施例1~7はポリオール成分としてG-1000(ポリブタジエンポリオール)ではなくGI-1000又はGI-2000(ポリブタジエンポリオール水素化物)を用いており(段落0061)、これは甲1の請求項1の記載からみて当該実施例の組成物における必須成分である。一方、ポリブタジエンポリオール水素化物は、本件明細書ではポリブタジエンポリオール(A1)以外の水酸基含有化合物(A2)ないしは(A3)の1つとして示されている(段落0014~0015)ので、本件発明のポリブタジエンポリオール(A1)には相当しない。 したがって、もし仮に甲1の当該実施例の組成物を引用発明としたとしても、ポリブタジエンポリオールではなくその水素化物を含む点で本件発明と相違するものであり、当該水素化物は甲1の請求項1等の記載からみて甲1における必須成分であるから、当該相違点を解消する組成に変更することは、阻害要因があるといえる。 よって、上記主張は採用することはできない。 (イ)本件発明2、3について 本件発明2、3はいずれも本件の請求項1を引用して発明を特定するものであるから、甲1発明と対比すると、少なくとも上記(ア)aの相違点1と同様の点で相違し、その判断については上記(ア)bで述べたとおりである。 よって、本件発明2、3は甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明と他の甲号証に記載された事項とから容易に発明をすることができたものでない。 ウ まとめ よって、取消理由2、3及び申立理由1、2は理由がない。 2 当審が取消理由通知で採用しなかった申立理由について (1)申立理由4について ア サポート要件の考え方 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の特定事項 本件発明を特定する事項は上記第3で示したとおりである。 ウ 本件発明の課題 本件明細書の段落0005、0006の記載によれば、本件発明は、長期にわたる使用によって可塑剤が気化することにより柔軟性が損なわれることを防ぎ、耐熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とすると認める。 エ 判断 本件明細書の発明の詳細な説明の記載については、上記1(1)ウで示したとおりである。 そして、発明の詳細な説明の記載をみてみると、段落0031、0040、0042の記載から、本件発明の特定事項、特に、「可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからな」ること、「100℃×1000h処理後の質量減少率は1.5%以下であ」ること、「100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)は100%以下である」こと、という事項によって、硬化後のポリウレタン樹脂組成物を高温環境下においたときの可塑剤(D)の気化が抑制され、長期にわたる使用において柔軟性を維持し、耐熱性を向上することができ、本件発明の課題を解決できることが示されているといえる。 そして、表1では、本件発明の具体的態様である実施例1~8について、可塑剤の気化抑制効果、柔軟性及び耐熱性に優れ、本件発明の課題を解決できることが、具体的なデータに基づく評価として記載されている。 以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明が発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 オ 申立人の主張の検討 申立人は、特許異議申立書の30~33頁において、概略、上記第4 1(4)に示したとおり主張しており、また、申立人の意見書の24頁においても、本件発明が実施例1~8以外で本件発明の課題を解決できるのかが本件明細書の記載から読み取れない旨を主張している。 そこで、本件明細書の記載をみるに、段落0010~0030において水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)の各成分について、化合物の具体例や含有量が記載されており、これらはポリウレタンの技術分野で一般的なものであるといえるし、実施例の樹脂組成物で用いられた各成分についても、そのような一般的な化合物及び含有量の中から選択された程度のものといえる。してみると、成分(A)、(B)及び(C)について、実施例以外の化合物や含有量であっても、上記段落に記載されたような、当該分野の一般的な化合物を通常用いうる量で含む組成物であれば、上記課題の解決を特段妨げることはないと理解できる。そして、上記エで示したとおり、本件発明は、「可塑剤(D)が沸点300℃以上のフタル酸エステルのみからな」ること、「100℃×1000h処理後の質量減少率は1.5%以下であ」ること、「100℃×1000h処理後の-40℃の弾性率変化率(10Hz)は100%以下である」こと、という発明事項によって、本件発明の課題を解決できることが理解できるから、本件発明において、成分(A)、(B)及び(C)の種類や含有量の特定が、本件発明の課題解決に必要不可欠であるとまではいえず、これら各成分の種類や含有量が実施例1~8のものに限定されていないからといって、本件発明の課題を解決できないとはいえない。 そして、申立人は、可塑剤(D)以外の各成分の種類又は含有量の選択次第では本件発明の課題を解決できないことを、具体的な反証を挙げて主張しているわけでもない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 カ まとめ よって、申立理由4は理由がない。 第7 むすび 特許第6905135号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申立した申立理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700052

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