商標取消審判
2022-301059
レセラ、リセラ
- 審判番号
- 2022-301059
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2008-086437
- 登録番号
- 5219361
- 請求日
- 2022年12月07日
- 審決日
- 2024年12月17日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 コナミデジタルエンタテインメント
- 【請求人代理人】広瀬 文彦
- 【請求人代理人】末岡 秀文
- 【被請求人】株式会社 ニコン
- 【被請求人代理人】宮嶋 学
- 【被請求人代理人】本宮 照久
- 【被請求人代理人】猿山 純平
- 【被請求人代理人】高田 泰彦
- 【被請求人代理人】柏 延之
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 大山 健
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T132 .1 -Y (X0942)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5219361号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5219361号商標(以下「本件商標」という。)は、「RECELA」の文字を標準文字で書してなり、平成20年10月24日に登録出願、第7類「半導体製造装置」、第9類「光学器械器具,測定機械器具,電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROMその他の光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・その他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同21年4月3日に設定登録され、同31年1月8日に存続期間の更新登録がなされたものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和4年12月21日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年(2019年)12月21日ないし令和4年(2022年)12月20日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROMその他の光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・その他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」(以下「取消請求商品及び役務」という。)について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書、令和5年5月16日付け審判弁駁書、及び同6年7月10日付け第二弁駁書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標は、継続して過去3年以上、取消請求商品及び役務について商標権者が使用していた事実は認められない。したがって、本件商標は、取消請求商品及び役務について、継続して過去3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないから、商標法第50条第1項の規定により本件商標の登録は取り消されるべきものである。
2 審判弁駁書
提出された乙各号証を精査したが、提出された証拠からは需要者に対して商標の付された商品の譲渡等や役務の提供をしていた事実は確認することができず、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号に規定する使用の事実があったと認めることはできない。
(1)取消請求商品について
ア 乙第2号証について
乙第2号証に表示される写真が何であるのかが判然としない。内容物がCD-ROM等のメディア(記憶媒体)であるのか、説明書なのか、単なる資料なのか、明確でない。
また、写真(乙2)には、商標を使用した日付等を示すような表示がない。なお、写真(乙2)に表示された「NSR」のバージョンは乙第3号証に表示されたものと異なるため、乙第3号証に表示された日付で使用されたと評価することはできない。
さらに、写真(乙2)からは、パッケージが現実的に需要者に流通した事実をうかがうことはできず、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号における「商品」に当たると評価することはできない。
イ 乙第3号証について
乙第3号証の左下には「Nikon Confidential」の表示があり、乙第3号証は、被請求人の会社内でのみ用いられる社外秘密文書ではないかと考えられ、社外に流通するいわゆる取引書類ではないと評価されるものである。
また、乙第3号証には、本件商標がソフトウェアを示すものであると評価可能な記載があるとも考えられるが、被請求人が主張するダウンロード可能なソフトウェアであることはどこにも示されておらず、需要者に譲渡等する手段が判然としない。
さらに、乙第3号証には、2022年11月の表示があるものの、商品が実際に需要者に流通したという事実をうかがい知ることはできない。
ウ 需要者に対する譲渡等行為について
被請求人が主張するように、本件商標が付された取消請求商品が、現実的に需要者に譲渡等された事実があるのであれば、売上明細や請求書、納品書等の取引書類など、現実的な流通を証明することが可能な証拠が存在するはずである。また、仮に本件商標が付されたソフトウェアを需要者がダウンロードできるのであれば、ダウンロード手段、ダウンロード数やダウンロード先等、売上げの実体を開示することができるはずである。しかしながら、そのような証拠は全く提出されていない。
また、請求人が本件商標をインターネットで検索したところ、被請求人に係る本件商標の使用の事実は発見できなかった。この事実からすると、現実的に本件商標が付されたソフトウェアが需要者に提供されたという被請求人の主張には疑義が生ずる。
(2)取消請求役務について
取消請求役務に係る「電子計算機用プログラムの提供」は、ユーザがソフトウェアをダウンロードするのではなく、サーバ側でソフトウェアを稼働させて、ユーザが利用する態様を示すものであるところ、このような役務の態様は、乙第2号証及び乙第3号証に示されていない。
3 第二弁駁書
提出された乙各号証を精査したが、提出された証拠からは需要者に対して商標の付された商品の譲渡の事実等や役務の提供をしていた事実は確認することができず、商標法第2条第3項第8号に規定する使用の事実があったと認めることはできない。
(1)取消請求商品について
ア 乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証は、社内文書であって取引先に配布されるような取引書類ではない。また、乙第5号証は、データベースなどから抽出した結果と推察されるが、どのような検索条件で抽出したのか不明であり、出荷区分についての「販売」が何を販売したのか不明であり、的確性を欠くものである。
イ 乙第6号証について
乙第3号証と同様に、乙第6号証の左下には「Nikon Confidential」の表示があり、乙第6号証も被請求人の会社内でのみ用いられる社外秘密文書であって、社外に流通するいわゆる取引書類ではない。
また、Configuration Sheet(乙9)は英語で記載されているのに対し、操作説明書(乙6)は日本語で記載されたものであり、「RECELA」のソフトウェアが日本語圏外に存する、台湾の集積回路や半導体を製造及び販売するPSMC社(Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation。以下「PSMC社」という。)に納品等されたと認定するのは困難である。すなわち、「RECELA」が付されたソフトウェアは、社内でのみ用いられる技術情報に付与された名称であり、商品に商標が付されて需要者に視認可能に付されて流通するいわゆる商品ではない。
ウ 乙第7号証及び乙第8号証について
乙第7号証に表示されたウェブサイトは、外国で運用されているものである。ちなみに、この関連会社「Nikon Precision Inc.」は、ニューヨークに拠点を置く会社であり(乙10)、欧州(ドイツ)等にも関連会社が置かれている。通常、海外ウェブサイトが日本国内からアクセス可能であっても、日本国内の使用と認められることはできない。また、ウェブサイトに掲載された日付も不明である。さらに、乙第7号証は、本件商標が日本国内では需要者に視認可能な態様で使用されている証拠がないことを示唆しているとも評価できる。
エ 乙第9号証について
乙第3号証や乙第6号証と同様に、乙第9号証の左下には「Nikon Confidential」の表示があり、乙第9号証も被請求人の会社内でのみ用いられる社外秘密文書であって、社外に頒布される取引書類ではない。
また、「RECELA」のソフトウェアは、顧客に対して直接納品されるものではなく、被請求人が半導体露光装置を製造する過程において、被請求人が半導体露光装置用に対してインストール作業を行った上で提供するものであり、納品される商品は半導体露光装置であり、その商標は「NSR」である。
さらに、乙第4号証及び乙第5号証に「販売」の用語が表示されているが、「RECELA」のソフトウェアに対して、金銭の支払い等が行われたことが確認できる証拠は存在しない。そもそも、「RECELA」のソフトウェアは半導体露光装置「NSR」にインストールされた付随物であって商取引の目的物ではないため、金銭の支払いがあったとしても、それは、「RECELA」のソフトウェアの購入や更新に対する対価ではなく、半導体露光装置「NSR」の納品及び運用において発生する金銭の支払いに該当すると解するのが妥当である。乙第9号証中の「・・・the software license that you purchased・・・」との記載は、「(NSRを利用する上で)取得したソフトウェアライセンス」程度に理解すべき文章である。半導体露光装置「NSR」と「RECELA」のソフトウェアとの関係や、半導体露光装置「NSR」が被請求人の熊谷製作所にて製造時に「RECELA」のソフトウェアをインストールし顧客に譲渡及び輸出されるという事実から考えると、ソフトウェアを半導体露光装置とは別に独立して購入したと解釈するのは困難である。すなわち、「RECELA」のソフトウェアは、秘匿性の高いものであって、取引対象である半導体露光装置「NSR」の付随物にすぎず、商取引の目的物たる商品ではないと解され、商標法上の「商品」には該当しない。
仮に、「RECELA」のソフトウェアを顧客が選択して購入したのであれば、Configuration Sheetを作成する前に、その事実を示す契約書、注文書、請求書等が存在するはずであるところ、そのような証拠は提出されていない。
オ 乙第11号証及び乙第12号証について
乙第11号証及び乙第12号証はいずれも社内文書であって、社外に開示するいわゆる取引書類ではない。また、顧客であるPSMC社が視認して、内容を認識した上でこのソフトウェアを購買したことを証明するものではなく、CD-ROMの形式で「RECELA」のソフトウェアを輸出したのであれば、注文書や契約書など、PSMC社が視認可能な証拠が存在するはずであるところ、そのような証拠は提出されておらず、PSMC社が「RECELA」のソフトウェアを発注した事実は確認できない。
(2)取消請求役務について
被請求人は、令和6年2月28日付け審判事件答弁書及び同年3月29日付け上申書においては、取消請求役務について、本件商標を使用している旨の主張をしていない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べるとともに、令和5年4月3日付け審判事件答弁書、及び同6年2月28日付け審判事件答弁書並びに同年3月29日付け上申書を提出し要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 令和5年4月3日付け審判事件答弁書
本件商標は要証期間に、被請求人によって取消請求商品及び役務について使用されているものであり、この事実を以下に詳述する。
(1)被請求人について
被請求人である株式会社ニコンは、業として、カメラ用及び画像や映像の編集用など、様々な用途におけるソフトウェアの販売を行う企業である(乙1)。
(2)ソフトウェア「RECELA」についての本件商標の使用について
被請求人は、要証期間に、取消請求商品及び役務中、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROMその他の光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・その他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供」に該当するソフトウェアについて本件商標を使用しており、当該事実を示す証拠として、本件商標が付された商品パッケージの写真、及び本ソフトウェアの技術情報並びに新たなバージョンの変更点を説明する「Technical Information」を提出する(乙2、乙3)。
商品パッケージ写真(乙2)には、被請求人のハウスマーク及び被請求人の登録商標「NSR」(登録第2415683号)が共に表示されていることから、本件商標は、被請求人が販売する「NSR」ブランドの製品に使用されていることを推認できる。
「Technical Information」(乙3)では、対応ソフトウェアのバージョンの名称として本件商標が表示されており、「1.RECELAが対応しているNSR及びMCSWバージョン」において、本件商標が付されたソフトウェアは、「NSR」の名称の装置に対応するものであることが認められる。また、この「装置」欄に「NSR」が表示されているため、商品パッケージに記載されている「NSR」は、被請求人が販売する装置の名称であると捉えることができる。
その下部の「補足」欄には、「MCSWにおいては、バージョン・アップに伴ってRECELAの動作に係わる機能やパラメーターが変更される可能性があります。このような場合には、同時にRECELAをバージョン・アップすることをお勧めします。」との記載から、「RECELA」はバージョン・アップすることができるソフトウェアであること、そして、「RECELA Ver.2xとRECELA Ver.3xは、同一のPCにインストールし、独立に使用することが可能です。」との記載から、本件商標は、ウェブベースで使用されるソフトウェアだけでなく、PCにインストール、すなわちダウンロードをすることができるコンピュータソフトウェアとしても使用されていることを、それぞれ推認できる。
さらに、「RECELA」のソフトウェアに関する「Technical Information」は、2022年11月に発行されていることからも、本件商標が付されたソフトウェアは、要証期間において、需要者に提供されていることを確認できる。
(3)小括
被請求人が、商品パッケージに本件商標を付して譲渡及び引き渡し又は電気通信回線を通じて提供する行為は、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号で規定する使用に該当し、「Technical Information」に本件商標を表示することは、本件商標を付した取引書類の頒布に該当するため、商標法第2条第3項第8号で規定する使用に該当する。
2 令和6年2月28日付け審判事件答弁書
(1)本件商標を付したソフトウェアの販売実績について
被請求人は、「RECELA」のソフトウェアを販売した実績を示す表、及び当該表の根拠となる被請求人のシステムのキャプチャ画面を提出する(乙4、乙5)。
販売実績の表及びその元データとなるキャプチャ画面を見ると、「RECELA」のソフトウェアを、要証期間である2022年8月30日に提供していることが確認でき、また、キャプチャ画面ではPSMC社に納入していることが確認できる。
(2)本件商標を付した操作解説書について
被請求人は、「RECELA」のソフトウェアの操作解説書を提出する(乙6)。
本件商標「RECELA」は、被請求人の半導体露光装置「NSR」に用いる、レチクルの伸縮補正の最適化をシミュレーションするソフトウェアの名称として使用されており、操作解説書(乙6)には、本件商標の名称からなるソフトウェアを被請求人の半導体露光装置に使用する際の操作方法やエラーヘの対処方法が説明されている。
操作解説書(乙6)の1頁に「RECELA(Reticle Elasticity Evaluation Software)」と表示されていること、7頁に「RECELA(Reticle Elasticity Evaluation Software)は、レチクル伸縮補正最適化をシミュレーションするためのソフトウェアです」との記載があることからも、本件商標がソフトウェアの名称であり、上記販売実績において、ソフトウェアを提供する際、操作解説書が使用されていると捉えることができる。
(3)インターネットにおける使用について
本件商標が付されたソフトウェアは、汎用性のある一般消費者向けのソフトウェアではなく、半導体露光装置用のソフトウェアという、需要者が限られているものであることから、広く宣伝及び広告を行っていないため、インターネットで発見し難いだけであり、実際には取引の対象として存在し、需要者に提供されている。
実際のところ、本件商標は、インターネットを確認すると、被請求人の海外関連会社のウェブサイト(乙7)では装置のオプション製品の一つに、「Reticle Elasticity Evaluation Software (RECELA)」と、本件商標が表示されており(乙7)、同ウェブサイトの表の各列には「S635E」といった数字と欧文字の組合せが羅列されているが、被請求人のウェブサイト(乙8)から、被請求人が製造及び販売する半導体露光装置の型番であることが認識できる。
さらに、同ウェブサイトの半導体露光装置には「NSR」の記載があるところ、ソフトウェアの商品パッケージ(乙2)にも「NSR」が付されていることから、本件商標のソフトウェアは、被請求人の「NSR」ブランドの半導体露光装置用のソフトウェアとして取引に対象になっていると認識できる。
なお、登録商標がインターネットで発見可能であるかは商標法上の使用の条件ではない。
3 令和6年3月29日付け上申書
この上申書で、追加の証拠を提出する。
(1)Configuration Sheetについて
被請求人は、被請求人が販売する「NSR」ブランドの半導体露光装置について、需要者であるPSMC社と取り交わした、装置の各構成を記載した「Configuration Sheet」を提出する(乙9)。
Configuration Sheet(乙9)では、1頁の「customer name」欄にPSMC社の社名が記載され、「Customer Information」欄にNSRの構成を確認したことを示す表示として「Signature」とともに「Date」欄に「2021/6/7」が記載されている。
さらに、「Nikon sales reps. Information」欄では、「Nikon」の表示とともに「Date」欄に「2021/6/7」が記載されていることから、被請求人が取引者であり、要証期間に取引されたことを認識できる。
そして、Configuration sheetの3頁の「Software License」欄では、本件商標が、取引の対象となるNSRのソフトウェアのライセンスの対象となっていることが記載されている。さらに、15頁の「Note」欄に、「Nikon will install the software license that you purchased into the server and ship to you」と、ニコン(被請求人)が、顧客が購入したソフトウェアライセンスをサーバにインストールして発送する旨が記載され、「purchased(購入した)」と記載されていることからも、「RECELA」のソフトウェアが取引の対象となっていることは明らかである。
以上の点から、本件商標は要証期間に商品に関する取引書類において頒布されて使用されていたことは明らかである。
なお、Configuration Sheetに記載されているNikonは、被請求人である株式会社ニコンを示している。これは、株式会社ニコンは、日本の埼玉県熊谷市の株式会社ニコン熊谷製作所のみで半導体露光装置の製造していること(乙10)、さらに、2022年11月にリリースした「RECELA」のソフトウェアの変更情報(乙3)及び操作解説書(乙6)において、日本語で書面を作成していることから、明らかである。
(2)出荷指示依頼票及び顧客引き合い審査票について
Configuration Sheet(乙9)の補足資料として、被請求人が作成した出荷指示依頼票及び顧客引き合い審査票を提出する(乙11、乙12)。
出荷指示依頼票及び顧客引き合い審査票は、被請求人が製品の出荷時に作成する社内用書面である。出荷指示依頼票には「機種」欄、顧客引き合い審査票の【用途】欄に「NSR」の記載があることや、納入先や最終需要者にPSMC社が記載されていることから、被請求人が、半導体露光装置「NSR」とともに、CD-ROMの形式で「RECELA」のソフトウェアを輸出していることを推認できる。
CD-ROMについては、写真(乙2)のように、その商品パッケージに「NIKON」のブランドシンボルや、半導体露光装置の「NSR」、そして本件商標「RECELA」が付されていることから、本件商標は、被請求人が日本において取引の対象として使用していることを推認できる。
納入日自体は要証期間外の2023年6月30日であるが、被請求人の半導体露光装置は、売買契約後、製造から出荷までに1年近く要する商品であり、出荷指示依頼票及び顧客引き合い審査票は、いずれもConfiguration Sheetに基づいて製造された半導体露光装置「NSR」及びそのソフトウェアに関する出荷記録であるためである。
(3)本件商標を付した商品の商流について
被請求人は、半導体露光装置「NSR」や「RECELA」のソフトウェアといったオプション製品を譲渡及び輸出等する際には、需要者と売買契約を行い、合わせてConfiguration Sheet(乙9)で商品の構成やオプション製品の購入についても明示し、被請求人及び需要者が署名を行う。
そして、半導体露光装置を被請求人の熊谷製作所にて製造時に「RECELA」のソフトウェアをインストールし、製造後は、出荷指示依頼票(乙11)や顧客引き合い審査票(乙12)等の社内プロセスを経て、顧客に譲渡及び輸出が行われる。そして、顧客への出荷後も、ソフトウェアのアップデートが行われた際には、顧客に変更情報を周知している(乙3)。
上記の商流の下、被請求人は要証期間に取引書類となるConfiguration Sheet(乙9)に本件商標「RECELA」を付して頒布しているため、この行為は商標法第2条第3項第8号に該当する。
第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア Configuration Sheet(乙9)
乙第9号証は、被請求人が、顧客であるPSMC社と取り交わした、装置の各構成を記載したConfiguration Sheetと題する書面(全15頁)であるところ、その全頁の上部には「mayt 2021/06/07・・・」、「Nikon」、「ver.1.7」、「NSR-S322F Configuration」の記載、下部には「Nikon Confidential」の記載があり、さらに透かし文字で「Powerchip・・・」「mayt 2021/06/07・・・」の表示が確認できる。
また、同Configuration Sheetの1葉目には、「NSR-S322F/System Configuration」のタイトル下、「NSR Equipment Information」欄に「customer name:PSMC」の記載、「Customer Information」欄に「Date:2021/6/7」の記載、及び「Nikon sales reps. information」欄に「Department:Nikon」、「Date:2021/6/7」の記載がある。
さらに、同3葉目には、「Software License」のタイトル下、「RECELA(1 license per a terminal PC)」の記載があり、同15葉目には、「Note:1 Nikon will install the software license that you purchased into the server and ship to you.・・・」の記載がある。
イ Technical Information(乙3)
乙第3号証は、被請求人が作成した、装置の各構成を記載したTechnical Informationと題する書面であり、その1葉目の上部には、「Nikon」、「Technical Information」、「NIKON CORPORATION」、「INF22-NSR-14-J」、「November 2022」の記載があり、下部には、「Nikon Confidential」の記載がある。
また、同1葉目には、「RECELA Ver.3.5 変更情報」のタイトル下、「対象マニュアル RECELA Ver.3.2 操作解説」、「対象ソフトウェア・バージョン RECELA Ver.3.5以降」、「本テクニカル・インフォメーションでは、RECELA Ver.3.5で変更された事項について説明します。/『RECELA操作解説』、『RECELAクイック・リファレンス』および『RECELA Ver.3.4 変更情報』と併せて参照してください。」、「補足/・・・/・RECELA Ver.2xとRECELA Ver.3xは、同一のPCにインストールし、独立に使用することが可能です。」との記載があり、表1内には、RECELA Ver.3.5が対応している装置について、「NSR-S322F」が記載されている。
ウ RECELA Ver.3.2 操作解説書(乙6)
乙第6号証は、被請求人が作成した、RECELA(Reticle Elasticity Evaluation Software) Ver.3.2 操作解説書(以下「RECELA Ver.3.2 操作解説書」という。)であり、その1葉目の上部には、「Nikon」、「NIKON CORPORATION」、「RECELA-OP-OPRT-32-J1」、「August 2018」の記載があり、下部には、「Nikon Confidential」の記載がある。
また、同1葉目には、「半導体露光装置/NSR」、「RECELA(Reticle Elasticity Evaluation Software) Ver.3.2 操作解説/1st Edition」のタイトル下、「NSR-S322F」が記載されている。
さらに、同9葉目には、「はじめに」のタイトル下、「RECELA(Reticle Elasticity Evaluation Software)は、レチクル伸縮補正最適化をシミュレーションするためのソフトウェアです。」、「本書では、以下のバージョンのRECELAで提供する機能と、その操作方法について説明します。/RECELA Ver.3.2」、「補足/・・・/・RECELA Ver.2xとRECELA Ver.3xは、同一のPCにインストールし、独立に使用することが可能です。」との記載があり、表1内には、RECELA Ver.3.2が対応している装置について、「NSR-S322F」が記載されている。
エ 商品パッケージの写真(乙2)
乙第2号証は、略長方形の商品パッケージを写したと思われる写真であり、同商品パッケージには、「Nikon」、「NSR」、「RECELA○R」(「○R」は「R」の文字を丸囲みしたもの。以下同様。)、「NSR-S208D/S308F・・・」の表示とともに、イラストと思われる円盤が図示されている。
オ RECELAのソフトウェアの販売実績(乙5、乙11、乙12)
乙第5号証は、RECELAのソフトウェアの販売実績を示す表の出力物であるところ、「品名」「納入先」「納入日」「出荷区分」を項目とする表内に、「SR RECELA Ver.3.5」「PSMC 台」「2022/08/30」「販売」の記載が確認できる。
乙第11号証は、出荷指示依頼票であるところ、「熊谷」、「出荷区分:販売」、「依頼日:2023/06/15・・・」、「納入予定日:2023/06/30」、「出荷予定日:2023/06/26」、「納入先:PSMC 台」、「最終需要者:PSMC 台」、「請求先:PSMC 台」の記載があり、「商品名称(英文)」「数量」を項目に含む表内に、「CD-ROM(RECELA)」「1」の記載がある。なお、「単価」については墨消しとなっている。
乙第12号証は、顧客・引き合い審査票であるところ、「海外ニコングループ会社・認定顧客向け 顧客・引き合い審査票」、「半導体装置事業部 マーケティング部 輸出管理課」、「貨物名:RECELA・・・」、「お客様名:PSMC」、「NSR機種:S322F」、「出荷予定日:2023年6月19日」の記載があり、「Description」「品名(日本語)」「メーカー名」「原産国」「個数」を項目に含む表内に、「CD-ROM(RECELA)」「CD-ROM(RECELAソフト用)」「ニコン」「日本」「1」、及び「RECELA」「SR RECELA Ver.3.5A」「ニコン」「日本」「1」の記載がある。
カ Nikon Precision社のウェブサイト(乙7、乙10)
乙第7号証は、Nikon Precision Inc./Nikon Precision Europe GmbH(以下「Nikon Precision社」という。)のウェブサイトの出力物であるところ、Nikon Precision社は被請求人の海外関連会社である(乙10)。
そして、Nikon Precision社のウェブサイト(乙7)の全頁(全4頁)の上部には、「2024/02/27・・・」、「Stepper and scanner upgrades information.」の記載があり、その4葉目には「○C 2024 Nikon Precision Inc./Nikon Precision Europe GmbH」(「○C」は「C」を○囲みしたもの。)の記載がある。
また、同ウェブサイトの1葉目には、「Options and Upgrades」、「Nikon takes great pride in creating some of the most reliable steppers and scanners in the world.」、「Many of these options and upgrades are compatible with various Nikon model types to provide exciting potential for continuous improvements across your facility.」の記載がある。
そして、同2葉目には、「Option」のタイトル下、「Reticle Elasticity Evaluation Software(RECELA)」の記載がある。
(2)以上(1)アないしカから、以下のことが理解できる。
ア Technical Information(乙3)には、被請求人の提供するソフトウェアについて、「RECELA Ver.3.5」の表示(以下「使用商標1」という。)があるところ、被請求人の提供する「RECELA」のソフトウェア(以下「使用商品」という。)は、被請求人の製造及び販売する半導体露光装置「NSR-322F」で使用されるレチクルの伸縮補正を最適化するためのシミュレーションを行うソフトウェアであって、不定期にその内容が変更されているものであり、2018年8月頃はVer.3.2であり(乙6)、要証期間である2022年11月頃にVer.3.5に変更がなされ、被請求人は、その変更について説明するための資料としてTechnical Informationを作成した(乙3)。
そして、Technical Information(乙3)は、その「本テクニカル・インフォメーションでは、RECELA Ver.3.5で変更された事項について説明します。/『RECELA操作解説』、『RECELAクイック・リファレンス』および『RECELA Ver.3.4 変更情報』と併せて参照してください。」との記載などに鑑みれば、使用商品を購入した顧客に対して、バージョンの変更の際に、被請求人が頒布したと推認できる。
イ 被請求人は、台湾のPSMC社に対して、要証期間である2021年6月頃に、半導体露光装置「NSR-322F」を販売し、販売した半導体露光装置「NSR-322F」についてのConfiguration SheetをPSMC社との間で取り交わした(乙9)。そして、このConfiguration Sheet(乙9)には、「RECELA(1 license per a terminal PC)」の表示(以下「使用商標2」という。)とともに、PSMC社が使用商品(「RECELA」のソフトウェア)を購入した旨の記載がある。
ウ 使用商品は、2018年8月頃はVer.3.2であり、要証期間である2022年11月頃にはVer.3.5に変更がなされたものであることから、少なくとも2018年以降、要証期間を含んで継続的に販売されていたと認められるところ(乙3、乙6)、使用商品はCD-ROMに記録されて出荷され得るものであり(乙11、乙12)、使用商品がCD-ROMに記録されて出荷された際には、「RECELA○R」の表示(以下「使用商標3」という。)を付した商品パッケージ(乙2)に収納されて顧客に送付されたことが推認できる。
エ 被請求人の海外関連会社であるNikon Precision社のウェブサイト(乙7)において、被請求人の製造及び販売する半導体露光装置に対して、使用商品がオプションとして設定されていることや、Configuration Sheet(乙9)に使用商品が購入されたものであることを示す記載があることに鑑みれば、使用商品(「RECELA」のソフトウェア)は被請求人の製造及び販売する半導体露光装置に対してオプションとして設定され、顧客が自己の購入する半導体露光装置にインストールするか否か選択して購入したものであることが推認できる。
オ 使用商品の販売実績を示す表の出力物(乙5)によれば、被請求人は、2022年8月30日に使用商品を台湾のPSMC社へ販売(輸出)したことが確認できる。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品について
使用商品は、「RECELA」のソフトウェアであるところ、CD-ROMに記録されて出荷され得るものであることや、半導体露光装置にインストールされるものであることから、本件商標の取消請求商品及び役務中、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROMその他の光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・その他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品とみて差し支えない。
(2)商標法第2条第3項第8号に基づく使用について
ア Technical Information(乙3)に基づく使用
Technical Information(乙3)には、使用商標1(「RECELA Ver.3.5」の表示)が付されているところ、使用商標1において自他商品識別標識としての機能を発揮する要部は「RECELA」の文字部分である。
ここで、本件商標と使用商標1の要部とは、その文字構成及び称呼が共通し、観念が異なるような事情は見当たらないから、使用商標1は本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
そして、Technical Information(乙3)は、被請求人の提供する使用商品が、要証期間である2022年11月頃にVer.3.5に変更がなされたところ、被請求人がその変更について説明するために作成した資料であり、使用商品を購入した顧客に対して、被請求人が頒布したと推認できるから、被請求人が要証期間に使用商標1を付したTechnical Information(乙3)を顧客に頒布したこと、すなわち、商標権者が要証期間に本件商標と社会通念上同一である使用商標1を付した取引書類を顧客に頒布し商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為を行ったと認められる。
イ Configuration Sheet(乙9)に基づく使用
Configuration Sheet(乙9)には、使用商標2(「RECELA(1 license per a terminal PC)」の表示)が付されているところ、使用商標2において自他商品識別標識としての機能を発揮する要部は「RECELA」の文字部分であり、本件商標と使用商標2の要部とは、その文字構成及び称呼が共通し、観念が異なるような事情は見当たらないから、使用商標2は本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
そして、被請求人が、台湾のPSMC社に対して、要証期間である2021年6月頃に、半導体露光装置「NSR-322F」を販売し、使用商標2が付されたConfiguration SheetをPSMC社との間で取り交わしたこと、すなわち、商標権者が要証期間に本件商標と社会通念上同一である使用商標2を付した取引書類をPSMC社に頒布し商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為を行ったと認められる。
(3)商標法第2条第3項第2号に基づく使用について
被請求人は、要証期間である2022年8月30日に使用商品を台湾のPSMC社へ販売したことが認められる(乙5)ところ、使用商品はCD-ROMに記録されて出荷されることが認められ(上記1(2)ウ)、当該CD-ROMに記録されて出荷された際には、使用商標3(「RECELA○R」の表示)を付した商品パッケージ(乙2)に収納されて顧客に送付(輸出)されたと推認できる。
ここで、使用商標3について、その要部は「RECELA」であるところ、本件商標と使用商標3の要部とは、その文字構成及び称呼が共通し、観念が異なるような事情は見当たらないから、使用商標3は本件商標と社会通念上同一の商標である。
以上から、要証期間に商標権者が、使用商品を記録したCD-ROMを、使用商標3を付した商品パッケージ(乙2)に収納して台湾のPSMC社へ譲渡又は輸出したこと、すなわち、商標法第2条第3項第2号に規定する使用行為を行ったと認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、商標権者は、要証期間に、日本国内において取消請求商品及び役務中、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させたCD-ROMその他の光ディスク・磁気ディスク・光磁気ディスク・その他の記憶媒体,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品についての取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したこと(商標法第2条第3項第8号に該当。)、及び商品の包装に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して譲渡又は輸出したこと(商標法第2条第3項第2号に該当。)を認めることができる。
3 請求人の主張についての検討
(1)請求人の主張
請求人は、審判弁駁書及び第二弁駁書において、おおむね以下の点を主張している。
ア 被請求人の提出した証拠(乙3、乙6、乙9)には「Nikon Confidential」の表示があり、これらは被請求人の会社内でのみ用いられる社外秘密文書であり、社外に流通するいわゆる取引書類ではない。
イ 本件商標が付された取消請求商品が、現実的に需要者に譲渡等された事実があるのであれば、売上明細や請求書、納品書等の取引書類など、現実的な流通を証明することが可能な証拠が存在するはずであり、仮に本件商標が付されたソフトウェアを需要者がダウンロードできるのであれば、ダウンロード手段、ダウンロード数やダウンロード先等、売上げの実体を開示することができるはずであるが、そのような証拠は全く提出されていない。
ウ 「RECELA」が付されたソフトウェアは、社内でのみ用いられる技術情報に付与された名称であり、商品に商標が付されて需要者に視認可能に付されて流通するいわゆる商品ではない。
(2)検討
ア 上記(1)アについて検討すると、乙第3号証及び乙第6号証には、「Nikon Confidential」の表示があるものの、それらの記載事項に鑑みれば、明らかに使用商品を購入した顧客向けに、使用商品の内容(バージョン)の変更や、操作解説を目的とする資料であるから、社内向けの資料ではなく、被請求人が使用商品を購入した顧客向けに作成し頒布した資料であると判断できる。
また、乙第9号証にも、「Nikon Confidential」の表示はあるものの、その内容や、透かし文字で「Powerchip・・・」の記載があることに鑑みれば、PSMC社との間で取り交わされたことについて疑わしい点はない。
イ 上記(1)イについて検討すると、本件商標の使用を証明するために、どのような証拠を提出するかは、被請求人の裁量によるものであるところ、被請求人の提出した証拠によっても、本件商標の使用が認められることについては上記2のとおりである。
ウ 上記(1)ウについて検討すると、使用商品(「RECELA」のソフトウェア)は、Configuration Sheet(乙9)によればPSMC社が購入したものであること、及びNikon Precision社のウェブサイト(乙7、乙10)によればオプションとして示されていること、並びに被請求人がTechnical Information(乙3)及びRECELA Ver.3.2 操作解説書(乙6)を、使用商品を購入した顧客向けに作成し頒布していることなどに鑑みれば、「RECELA」が社内でのみ用いられる技術情報に付与された名称であるということはできない。
(3)以上から、請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、その審判の請求に係る指定商品及び指定役務について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-301059