商標取消審判
2025-300440
ラクティブ
- 審判番号
- 2025-300440
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2000-116649
- 登録番号
- 4517415
- 請求日
- 2025年05月27日
- 審決日
- 2026年05月28日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】水野 翔斗
- 【被請求人】ミヤリサン製薬株式会社
- 【被請求人代理人】IBC一番町弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 真鍋 伸行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 山田 和彦
- 分類
- T131 .1 -Y (Z29)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条、商標法第2条第3項第2号、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第8号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4517415号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4517415号商標(以下「本件商標」という。)は、「ラクティブ」の文字を標準文字で表してなり、平成12年10月26日に登録出願、第29類「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」を指定商品として、同13年10月26日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和7年6月12日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和4年(2022年)6月12日から同7年(2025年)6月11日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和7年8月4日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年9月18日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
なお、以下、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」のように簡略して表記する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」(以下「取消請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人による、「本件商標の通常使用権者である株式会社生物医学研究所(以下「生物医学研究所」という。)」との主張は、認めるに足る証拠が示されていないから、「本件審判請求には理由がない」との主張は失当である。以下にその理由を述べる。
(1)被請求人は、後述の第3の1(2)「被請求人と生物医学研究所について」において、生物医学研究所は、本件商標の使用について、被請求人から黙示の許諾を受けていたとみるのが相当であるから、同社は、本件商標の通常使用権者ということができる旨主張している。
そして、その根拠として、乙第4号証において、生物医学研究所は、「平成12年12月に健康食品の開発・販売を目的とし、ミヤリサン製薬株式会社の100%出資の子会社として設立され、酪酸菌加工食品(ラクティブ)の加工を委託し販売しています。」と記載されていること、「発行済みの全株式(200株)を被請求人が保有していることが明記されている」こと、「酪酸菌加工食品(ラクティブ)」が記載されていることなどを挙げている。
(2)商標法第50条の使用権者とその証明
商標権不使用取消審判を規定する商標法第50条には、第1項において、使用の主体として、商標権者のほか、専用使用権者又は通常使用権者が定められている。専用使用権は設定登録に効力が発生するところ(同法第30条第1項)、通常使用権は許諾により発生し(同法第31条第1項)、登録は第三者対抗要件である(同法第31条第4項)。
(3)本件商標の登録された使用権の不存在
本件商標について使用権は設定登録されていないから、専用使用権の不存在は明らかであり、また、登録された通常使用権が存在しないことも明らかである。
(4)本件商標の通常使用権者の証明
被請求人は、乙第4号証の記載を根拠として、生物医学研究所が本件商標の通常使用権者であると主張している。しかし、乙第4号証には、生物医学研究所が「ミヤリサン製薬株式会社の100%出資の子会社として設立され」たこと、生物医学研究所が「酪酸菌加工食品<ラクティブ>の加工を委託し販売してい」ること、生物医学研究所の発行済みの株式総数が200株でありミヤリサン製薬株式会社(以下「ミヤリサン製薬」又は「商標権者」という場合がある。)が200株(100%)を保有していることが記載されているにとどまり、本件商標の指定商品の範囲内での本件商標の使用について許諾する旨の事実は何ら記載されていない。したがって、本件商標の使用について、被請求人から生物医学研究所に対して、黙示の許諾があったと認めるに足る証拠は何ら示されていない。
けだし、親会社と子会社の関係においても、商標権の使用を許諾するにあたっては、会社の内部統制上、権利関係を明確化することが必須であり、特許庁に対して登録するか、又は、合意事項を明らかにした何らかの書面を取り交わすのが通常である。しかし、本件商標については通常使用権は登録されておらず、また、被請求人と生物医学研究所との間で本件商標の使用を許諾したことを示す明文の証拠は何ら示されていない。そのうえ、通常使用権が登録されていない場合に通常使用権者であることを証明するための方法として特許庁により例示されている使用証明の例として挙げられている「使用契約書」はおろか、それに類する書類は何ら証拠として提出されていない。
以上に鑑みれば、本件商標について通常使用権が許諾されていることは、明文であれ、黙示であれ、証明されていないことは明らかである。
(5)結び
以上説明したとおり、被請求人による、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所との主張は、本件商標には通常使用権は登録されておらず、かつ、通常使用権の許諾について認めるに足る証拠が示されていないから、到底受け入れられるものではない。
したがって、「本件審判請求には理由がない」との主張は失当である。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書及び令和7年12月11日付け審尋(以下「審尋」という。)及び弁駁書に対する同8年1月26日付け審判事件回答書(以下「回答書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書における主張
(1)請求人は、審判請求書において、本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないことから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである旨を主張している。
しかしながら、以下に示すとおり、本件商標の通常使用権者が、本件商標を指定商品中の第29類「酪酸菌を主成分とするカプセル状の加工食品」について、要証期間に使用している事実がある。以下、この点について詳述する。
(2)被請求人と生物医学研究所について
被請求人であるミヤリサン製薬は、本店を長野県におく企業で、主に医薬品、動物用医薬品、飼料添加物等の製造・販売等を行っている(乙1、乙2)。
次に、生物医学研究所(乙3)は、被請求人が100%出資して、平成12年12月に設立した子会社である。生物医学研究所は、被請求人より委託を受け、本件商標に係る商品「ラクティブ」の製造・販売を行っている。
生物医学研究所が被請求人の子会社であることを証明する為、生物医学研究所の第24期報告書(一部抜粋)の写しを提出する(乙4)。当該資料中の「II 会社の概況概要」の「1.主な事業内容」にて、「当社は、平成12年12月に健康食品の開発・販売を目的とし、ミヤリサン製薬株式会社の100%出資の子会社として設立され、酪酸菌加工食品(ラクティブ)の加工を委託し販売しています。」との記載が認められる。さらに、「2.株式の状況」の項目において、発行済みの全株式(200株)を被請求人が保有していることが明記されている。これらの記載より、生物医学研究所が被請求人の子会社であることは明らかであって、両社の間には密接な業務上のつながりが認められる。
また、本件商標の指定商品が「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」であることからすれば、乙第4号証中に記載された「酪酸菌加工食品(ラクティブ)」が、本件商標の標章「ラクティブ」と、その指定商品の範疇に属する商品を指していることは自然に理解可能と考える。
そうすると、生物医学研究所は、本件商標の使用について、被請求人から黙示の許諾を受けていたとみるのが相当であるから、同社は、本件商標の通常使用権者ということができる。
(3)「ラクティブ」の製造・販売について
ア 概要
被請求人の子会社であり、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所は、要証期間内に、本件商標が付された商品「酪酸菌を主成分とするカプセル状の加工食品」を製造し、構造医学研究財団へと販売していた。
より詳しく説明すると、生物医学研究所は、構造医学研究財団との間で、「酪酸菌加工食品(ラクティブ)」に関する取引基本契約書を平成13年3月に締結した(乙5)。契約内容の概要は、同社が、自社製造する酪酸菌加工食品「ラクティブ」の日本における独占的販売権を構造医学研究財団に許諾した上で、当該商品を継続的に供給するというものである。
当該契約に基づき、生物医学研究所は、平成13年3月以降、要証期間内を通じて、本件商標を付した商品「酪酸菌を主成分とするカプセル状の加工食品」を構造医学研究財団に供給していた。
イ 乙第6号証
乙第6号証は、要証期間内に、構造医学研究財団から生物医学研究所へ送付された、酪酸菌加工食品「ラクティブ」に関する発注書の写しである。
これらの発注書には、「発注先 生物医学研究所」と記載され、また、「下記の通り発注いたしますので、宜しくお願いいたします。」との文言とともに、品名には「ラクティブ」と記載され、併せて、単価、発注する商品の数及び発注金額等が記されている。
また、品名である「ラクティブ」は、取引基本契約書(乙5)に記載された「酪酸菌加工食品「ラクティブ」」と一致することから、これらの発注書が当該商品に関するものであることは明白である。
各発注書はいずれも要証期間内に作成・送付されたものである。
したがって、構造医学研究財団が、要証期間内に、生物医学研究所に対して、継続的に商品「ラクティブ」を発注していた事実が明らかである。
ウ 乙第7号証
乙第7号証は、要証期間内に、生物医学研究所が構造医学研究財団に送付した納品書の控え(写し)であり、上記イにて述べた商品「ラクティブ」の発注に応じて、当該商品が納品された事実を裏付ける資料である。
当該納品書には、宛名として「構造医学研究財団 様」と記載され、「下記のとおり納品いたしました」との文言の下に、品名の項目に「ラクティブ」と記載されて、商品の数量、単価、金額が明記されている。これらの記載により、商品「ラクティブ」が、生物医学研究所から構造医学研究財団に納品されていた事実が客観的に確認できる。
各納品書はいずれも要証期間内に作成されたものである。
したがって、生物医学研究所が、要証期間内に、構造医学研究財団に対して、継続的に商品「ラクティブ」を納品していたことは明白といえる。
エ 乙第8号証
乙第8号証は、生物医学研究所が製造し、構造医学研究財団へと販売する商品「ラクティブ」の外観を撮影した5枚の写真である。
1枚目において、手前側に商品「ラクティブ」のパッケージを確認できる。パッケージの天面部及び正面部には、文字「ラクティブ」が横書きされていて、その右横には登録商標であることを示す記号であるRマークが付されている。また、正面下部には「酪酸菌加工食品」と記載されている。
2枚目では、商品「ラクティブ」のパッケージの背面部を確認できるが、中央部に文字「ラクティブ」と横書きされ、その下段に「酪酸菌加工食品」の表示が認められる。文字「ラクティブ」の右横には、1枚目と同様に、Rマークが付されている。
3枚目では、商品「ラクティブ」をまとめて収納可能な外箱を確認することができる。当該外箱内には、商品「ラクティブ」が8個収納されていて、各商品の天面部に横書きされた文字「ラクティブ」を視認可能である。また、外箱の正面部には文字「ラクティブ」が顕著に横書きされ、その右横にRマークが付されており、当該文字の下部には「60カプセル×10」の表記がある。なお、同外箱は、1枚目の奥側においても確認可能である。
4枚目及び5枚目は、商品「ラクティブ」のパッケージの左右側面部を撮影したものである。4枚目では、「名称:酪酸菌加工食品」の表記、「原材料名」に「酪酸菌」と記されていること、「内容量」の項目に「1粒280mg×60カプセル」と明記されていることを確認できる。5枚目には、「お召し上がり方」の項目に「1日1カプセルを目安に、噛まずに水と一緒にお召し上がりください。」と記載されており、また、「開発コンセプト」の項目の最下段には、「「ラクティブ」は、正常な腸内バランスを心がけている方へ酪酸菌を食品化したものです。」と明記されている。
このように、5枚の写真により確認できる商品は、「酪酸菌」を原材料とする「カプセル形状の酪酸菌加工食品」であって、当該商品のパッケージ及び外箱には標章「ラクティブ」が付されている。
また、当該商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」は、本件商標の指定商品「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」の範ちゅうに含まれることは明らかである。
オ 乙第9号証
乙第9号証は、構造医学研究財団のホームページに掲載された「製品紹介」のページの写しである。
当該ページには、「構造医学研究財団が研究開発している製品のうち、医療者(構造医学研究財団の会員・準会員)以外の方にもご提供している製品のご案内をいたします。」との記載がある。
また、当該ページの中段において、商品「ラクティブ」の写真が掲載されている。右側の写真では、当該商品のパッケージ正面が確認できるが、その外観は、乙第8号証にて確認できる商品の外観と一致する。また、左側の写真は、パッケージ内に収納された商品ケースの正面部を撮影したものであるが、文字「ラクティブ」が横書きされていることが視認可能である。
かかる乙第9号証によって、構造医学研究財団が商品「ラクティブ」を販売していることは明らかといえる。
(4)小括
上記(2)にて述べたとおり、生物医学研究所は被請求人の子会社であることから、本件商標の使用について、被請求人から黙示の許諾を受けていたとみるのが相当であり、同社は本件商標の通常使用権者と認められる。
また、乙第5号証ないし乙第8号証によって、要証期間内に、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所が、標章「ラクティブ」を付した商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」を、構造医学研究財団に継続的に販売(譲渡)していたことが客観的に確認できる。商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」は、本件商標の指定商品の範ちゅうに含まれるものである。さらに、乙第8号証にて示されているとおり、商品に付された標章「ラクティブ」は、本件商標と同一又は少なくとも社会通念上同一と認められる。
したがって、上記の譲渡行為は、商標法第2条第3項第2号にいう、商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為に該当する。
(5)結び
以上のとおり、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所は、要証期間内に、本件商標の指定商品「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」の範疇に属する商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことから、本件審判請求には理由がない。
2 審尋に対する回答
(1)通常使用権者による使用について
ア 被請求人は、構造医学研究財団株式会社に対して、本件商標の通常使用権を、平成19年8月3日から現在に至るまで、継続して許諾している。この点を証明するため、商標権使用許諾契約書の写しを提出する(乙10)。
商標権使用許諾契約書の第15条は、契約の有効期間に関して定めたものであるが、「本契約の有効期間は、平成19年8月3日から平成23年10月26日までとする。ただし、期間の満了前3月から1月までの間に甲または乙のいずれからも解約の申し出がない場合は、更に10年ずつ自動延長されるものとし、その後も同様とする。」と明記されている。この点に関して、被請求人及び構造医学研究財団株式会社の双方より、通常使用権の解約の申し出はなされていない。
また、第1条(2)は、通常使用権を許諾する期間について定めたものであり、「期間:商標権存続期間満了まで。」と明記されている。本件商標の存続期間満了日は令和13年10月26日であるから、被請求人が構造医学研究財団株式会社に許諾した通常使用権は、現在も有効に存続しているといえる。
したがって、本件商標について、被請求人が構造医学研究財団株式会社に許諾した通常使用権が、要証期間内を通じて有効に存在していたことは明らかである。
なお、通常使用権者の同一性の観点から付言すると、構造医学研究財団の代表者は構造医学研究財団株式会社の代表取締役を兼務しており(乙11、乙12)、また、両者の住所及び電話番号は共通である。
したがって、両者は実質的に同一の主体とみて差し支えない。構造医学研究財団の住所及び電話番号は乙第11号証に、構造医学研究財団株式会社の住所は乙第12号証に、同社の電話番号は乙第8号証の4枚目の写真に写る箱に、それぞれ記載されている。
イ 要証期間内に乙第9号証のホームページが存在していたことを示す資料として、インターネットアーカイブサービス「Wayback Machine」により保存された画面写しを提出する。当該資料は、2023年11月29日時点及び2024年4月16日時点における乙第9号証と同一のホームページの画面写しである(乙13)。各資料の右上には、それぞれ「NOV\29\2023」(乙13の1)及び「APR\16\2024」(乙13の2)の表示が確認できる。
乙第13号証の1及び2には、乙第9号証と同様に、「構造医学研究財団が研究開発している製品のうち、医療者(構造医学研究財団の会員・準会員)以外の方にもご提供している製品のご案内をいたします。」との記載があり、また、各ページの中段において、商品「ラクティブ」の写真が掲載されている。当該写真の右側には、商品のパッケージ正面が確認可能であり、その外観は、乙第8号証に示された商品の外観と一致する。また、写真の左側には、パッケージ内に収納された商品ケースの正面部が示されており、文字「ラクティブ」が横書きされていることが視認可能である。さらに、これらの商品写真の下部には「構医ラクティブ」と表示されている。
このように、本件商標の通常使用権者である構造医学研究財団は、要証期間内に、商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」に本件商標「ラクティブ」を付して、ホームページ上に掲載していたと認められる。当該行為は、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
ウ 構造医学研究財団が、要証期間内に商品「ラクティブ」を販売していたことを示す請求書及び納品書の写し(乙14)並びに当該商品に関する納品時の発送伝票の写し(乙15)を提出する。
また、乙第14号証の「商品コード/商品名」の項目には「構医ラクティブ」と記載されている。当該記載は、乙第9号証及び乙第13号証において確認できる商品「ラクティブ」の下部に記載された文字「構医ラクティブ」と一致する。なお、乙第9号証及び乙第13号証では、「構医」の右側に登録商標であることを示す記号であるRマークが付されている。したがって、乙第14号証に記載された「構医ラクティブ」が、乙第9号証及び乙第13号証にて確認できる商品「ラクティブ」と同一の商品を指すことは明らかである。さらに、乙第14号証の請求書及び納品書の左上には、納品先の郵便番号である「266-0031」、「453-0844」、「165-0026」が記載されている。
続いて、乙第15号証では、全3通の発送伝票が確認できるところ、受付日が、上から「2025年6月10日」、「2025年6月9日」、「2025年6月6日」と記載されている。また、発送先の郵便番号が、上から「165-0026」、「453-0844」、「266-0031」と記載されている。
これらの受付日及び郵便番号は、乙第14号証中の全3通の「請求書及び納品書」に記載された各日付及び郵便番号と同一である。したがって、日付及び郵便番号が共通する発送伝票と「請求書及び納品書」は、各々が対応するものであることは明らかである。
これらの資料により、本件商標の通常使用権者である構造医学研究財団が、要証期間内に、本件商標「ラクティブ」が付された商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」を販売していたことは明白である。かかる販売行為は、商標法第2条第3項第2号の使用に該当する。
エ 上述の内容より、本件商標の通常使用権者である構造医学研究財団が、要証期間内に、本件商標の指定商品「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」の範ちゅうに属する商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことは明らかである。
(2)弁駁書に対する意見
請求人は、弁駁書の3ページにて、乙第4号証には、生物医学研究所が、ミヤリサン製薬の100%出資の子会社として設立されたこと、生物医学研究所が酪酸菌加工食品<ラクティブ>の加工を委託し販売していること、生物医学研究所の発行済みの株式総数が200株でありミヤリサン製薬が200株(100%)を保有していることが記載されているにとどまり、本件商標の指定商品の範囲内での本件商標の使用について許諾する旨の事実は何ら記載されていないから、本件商標の使用について、被請求人から生物医学研究所に対して、黙示の許諾があったと認めるに足る証拠は何ら示されていない旨述べ、生物医学研究所は本件商標の通常使用権者にはあたらないと主張している。
しかし、ア.株式会社生物医学研究所は、被請求人が全ての議決権を有する子会社であること(乙4)、イ.生物医学研究所の第24期報告書には、「主な事業内容」として、「当社は、平成12年12月に健康食品の開発・販売を目的とし、ミヤリサン製薬株式会社の100%出資の子会社として設立され、酪酸菌加工食品<ラクティブ>の加工を委託し販売しています。」と明記されていることから、商品「ラクティブ」の販売が、生物医学研究所の主たる事業と位置付けられていること(乙4)、ウ.生物医学研究所は、構造医学研究財団との間で、平成13年3月に酪酸菌加工食品「ラクティブ」に関する取引基本契約を締結し、当該商品を構造医学研究財団に対して継続的に供給していたこと(乙5)が認められる。
上記アないしウの事実関係によれば、被請求人と生物医学研究所との間には、密接な事業上の繋がりが認められることに加えて、酪酸菌加工食品「ラクティブ」が生物医学研究所の事業において重要な位置づけを占めていたことが、両者間の共通認識であったことは明らかである。してみれば、被請求人が、生物医学研究所に対して、本件商標の通常使用権を、少なくとも黙示に許諾していたと認めるのが相当である。
また、特許庁の審判事件において、本件のように、商標権者と、商標権者がその議決権の100%を有する子会社との関係においては、両者の間に密接な事業上の繋がりがあるとして、商標権者が子会社に対して対象商標の使用について黙示の許諾を与えていたものと認定した事例が多数存在する。近年の審判事件では、取消2024-300199、取消2024-300064、取消2023-300359等において、上記の判断基準に基づく商標権の黙示の許諾が認められている。なお、これらは同様の基準による認定がなされた審判事件の一部にすぎないことを付言する。
かかる判断基準に照らして、上記アないしウの事実関係を考慮すれば、生物医学研究所は、被請求人から本件商標の使用について黙示の許諾を受けていたものと認められる。
(3)審尋に対する意見
審尋には、生物医学研究所が「ラクティブと称する酪酸菌加工食品」を製造し、構造医学研究財団に供給していることをうかがい知ることはできるが、使用商品の外観を撮影した写真(乙8)には、「販売者:構造医学研究財団KK」と記載されているのに対し、生物医学研究所の名称は見当たらないから、仮に、生物医学研究所が黙示の許諾を受けた通常使用権者であったとしても、提出された証拠からは、通常使用権者が本件商標を使用していることを立証したとはいえない旨の指摘がある。
この点について、生物医学研究所は、資材の製造を請け負う外部の事業者である富山スガキ株式会社(以下「スガキ社」という。)に対して、商品「ラクティブ」のラベル、パッケージ及び外箱等の製造を依頼していた。これらのラベル、パッケージ及び外箱には「ラクティブ」の文字が表示されている。
すなわち、生物医学研究所は、スガキ社に依頼して、文字「ラクティブ」が付されたラベル、パッケージ及び外箱を製造した上で、本件商標に係る商品にラベルを付し、また、当該商品をパッケージに封入し、外箱に箱詰めした上で、構造医学研究財団に納入していたのである。
これらの点を証明する資料として、スガキ社から生物医学研究所宛に発行・送付された請求書の写し(乙16)、スガキ社の社内で使用された商品「ラクティブ」のパッケージ及び外箱に関する作業指示書、仕様書並びに展開図の写し(乙17、乙18)、「ラクティブ」のラベルの仕様書の写し(乙19)を提出する。
以上のとおり、乙第9号証、乙第13号証、乙第16号証ないし乙第19号証によれば、要証期間内に、生物医学研究所は、スガキ社に依頼して、文字「ラクティブ」が付されたラベル、パッケージ及び外箱を製造した上で、本件商標に係る商品にラベルを付し、また、当該商品をパッケージに封入し、外箱に箱詰めしていたことが認められる。
このように、文字「ラクティブ」が記載されたラベルを商品「カプセル形状の酪酸菌加工食品」に付し、また、当該商品を、文字「ラクティブ」が表示されたパッケージに封入し、かつ、文字「ラクティブ」が表示された外箱に箱詰めする行為は、商標法第2条第3項第1号にいう、商品又は商品の包装に標章を付する行為に該当する。
よって、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所が、要証期間内に、本件商標の指定商品「酪酸菌を主成分とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・スティック状の加工食品」の範疇に属する使用商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことは明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙1について
乙1は、令和7年7月3日発行の被請求人(商標権者)の履歴事項全部証明書であり、3ページに代表取締役であるU氏の氏名と「令和5年10月1日就任」及び「令和5年12月19日重任」の記載がある。
(2)乙3について
乙3は、令和7年7月7日発行の生物医学研究所の履歴事項全部証明書であり、2ページに代表取締役であるU氏の氏名と「平成28年12月5日就任」の記載がある。
(3)乙4について
乙4は、生物医学研究所の「第24期報告書」であり、3ページに「I.事業の概況(令和5年10月1日から令和6年9月30日)」の記載、4ページに「当社は、平成12年12月に健康食品の開発・販売を目的とし、ミヤリサン製薬株式会社の100%出資の子会社として設立され、酪酸菌加工食品<ラクティブ>の加工を委託し販売しています。」、「2.株式の状況 (令和5年9月30日現在)」、「大株主/ミヤリサン製薬株式会社 200株(100%)」(審決注:「/」は、改行を表す。)の記載がある。
(4)乙8について
乙8は、被請求人が、生物医学研究所が製造する商品「ラクティブ」の外観を撮影した資料と主張するもので、第一葉の写真には、「ラクティブ」及び「酪酸菌加工食品」の文字が記載された小箱とそれを複数収納できる「ラクティブ」及び「60カプセル×10」の文字が記載された包装箱が写っている。
なお、上記写真の撮影時期は不明である。
(5)乙16について
乙16は、富山県富山市に所在するスガキ社が2024年(令和6年)3月1日付けで発行した請求書であり、宛先の欄に「株式会社生物医学研究所」、納品日の欄に「2024/02/20」、発注No.の欄に「1440-23-1117」、品名の欄に「ラクティブ 10入箱」、数量の欄に「1,500」の記載がある。
(6)乙18について
乙18の1は、「作業指示書」であり、出荷日の欄に「2024/02/16」、受注番号の欄に「1440-23-1117」、得意先名の欄に「(株)生物医学研究所」、製品名の欄に「ラクティブ 10入箱」、受注日の欄に「2024/01/30」、納品数量の欄に「1,500」の記載がある。
乙18の2は、仕様書の「展開図」であり、展開された外箱の天面及び側面に「ラクティブ」及び「60カプセル×10」の記載があり、下部の受注番号の欄に「1440-23-1117」の記載がある。
2 認定事実
(1)被請求人は、通常使用権者の生物医学研究所が、要証期間に「酪酸菌加工食品」(以下「使用商品」という。)の包装(別掲参照)に商標「ラクティブ」(以下「使用商標」という。)を付する行為を行ったとして、これをもって本件商標の使用と主張する。
(2)令和7年7月3日発行の被請求人(商標権者)の履歴事項全部証明書によれば、U氏が代表取締役に就任したのは、同5年10月1日であり、同年12月19日に重任され、それ以降の変更は記録されていない。また、同7年7月7日発行の生物医学研究所の履歴事項全部証明書によれば、U氏が代表取締役に就任したのは、平成28年12月5日であり、それ以降の変更は記録されていない。
そうすると、要証期間の令和5年10月1日以降は、U氏が両社の代表取締役であると認められる。
また、生物医学研究所の「第24期報告書」によれば、同社は、要証期間の令和5年9月30日時点、被請求人(商標権者)の100%子会社であったことが認められる。
(3)生物医学研究所の「第24期報告書」によれば、同社は、「ラクティブ」と称する酪酸菌加工食品を製造していることが認められる。
(4)生物医学研究所は、発注番号を「1440-23-1117」とする「ラクティブ 10入箱」の製造を富山県富山市に所在するスガキ社に発注し、スガキ社は、2024年(令和6年)1月30日に受注の上、それを製造し、当該商品は、同年2月20日に生物医学研究所に納品された。
また、仕様書の「展開図」によれば、発注番号を「1440-23-1117」とする当該商品は、天面と側面に「ラクティブ」の文字が記載されていることが認められる。
さらに、当該商品は、生物医学研究所が製造する商品「ラクティブ」の外観を撮影した資料とされるものに写る包装箱と同一視できるものであるから、「ラクティブ」及び「酪酸菌加工食品」の文字が記載された商品を収納するものと認められる。
3 判断
(1)使用商標
本件商標は、「ラクティブ」の文字を標準文字で表したものであるのに対し、使用商標は、別掲のとおり、同一の文字のつづりからなり、書体のみ変更したものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用商品
使用商品「酪酸菌加工食品」は、本件審判の取消請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用時期及び使用行為
生物医学研究所は、「ラクティブ 10入箱」と称する包装箱の製造を富山県富山市に所在するスガキ社に発注し、スガキ社が2024年(令和6年)1月30日にそれを受注し、同年2月20日に、生物医学研究所はスガキ社から当該包装箱の納品を受けた。
なお、生物医学研究所は、使用商標「ラクティブ」が用いられた使用商品「酪酸菌加工食品」を製造しており、「ラクティブ」の文字が付された当該包装箱は、使用商品の包装箱と認められる。
そうすると、生物医学研究所は、要証期間内である2024年(令和6年)1月30日から同年2月20日の間において、使用商品の包装に使用商標を付する行為を行ったと推認される。
(4)使用者
上記2(1)ないし(3)によれば、生物医学研究所は、要証期間に、本件商標権者の100%子会社であり、同一人が代表取締役に就任していることから、両者は緊密な業務上のつながりがあると認められ、また、そのような関係にある中にあって、本件商標権者が生物医学研究所による使用商標の使用について異議を述べたという事実も見当たらないことからすると、本件商標権者から生物医学研究所に対して、本件商標の使用について黙示の許諾があったものと推認し得る。
そうすると、生物医学研究所は、要証期間において、本件商標の通常使用権者であると認められる。
(5)小括
以上によれば、本件商標の通常使用権者である生物医学研究所が、要証期間内である2024年(令和6年)1月30日から同年2月20日の間において、日本国内において請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品の包装に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付する行為を行ったと認めることができる。
したがって、この行為は、商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
(6)請求人の主張について
請求人は、本件商標について登録された通常使用権が存在せず、通常使用権が許諾されていることが証明されていない旨主張する。
しかしながら、上記3(4)のとおり、被請求人は、答弁書、回答書及び乙1、乙3及び乙4を提出し、生物医学研究所が通常使用権者であることを明らかにした。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
なお、審判長は、請求人に対し、被請求人が提出した回答書の副本を送付すると共に、弁駁書の提出の機会を与えたが、提出期限までに弁駁書は提出されなかった。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、通常使用権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の請求に係る指定商品について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-300440