商標取消審判
2023-300004
イケメン、チメン
- 審判番号
- 2023-300004
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2013-091564
- 登録番号
- 5710894
- 請求日
- 2022年12月29日
- 審決日
- 2025年03月19日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 アイスタイル
- 【請求人代理人】川口 眞輝
- 【被請求人】株式会社 大勝軒
- 【被請求人代理人】藤本 英介
- 【被請求人代理人】神田 正義
- 【被請求人代理人】宮尾 明茂
- 【被請求人代理人】馬場 信幸
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第1号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5710894号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5710894号商標の指定商品中、第30類「ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,べんとう,ラビオリ」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5710894号商標(以下「本件商標」という。)は、「池麺」の文字を標準文字で表してなり、平成25年11月22日に登録出願、第30類「ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,べんとう,ラビオリ」を含む第9類、第16類、第21類、第24類、第25類、第30類及び第33類に属する商品を指定商品として、同26年10月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年1月24日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和2年(2020年)1月24日から同5年(2023年)1月23日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第30類「ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,べんとう,ラビオリ」(以下「請求に係る商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人が商標法第2条第3項第8号所定の登録商標の使用をしていた、との主張について
乙1ないし乙3には、文字「池麺」が麺箱の少なくとも一部の側面に表示されていたこと、及び、当該麺箱は店舗「滝野川大勝軒」の店舗内に積み重ねられていたことが示されている。
「ぎょうざ」が販売されていたことを示す乙4によれば、「東池袋大勝軒本店」及び「東池袋四丁目・・・」との表記が確認できるが、これらの表記から、「ぎょうざ」が販売されていたのは「東池袋大勝軒本店」であることが確認できる(なお、「東池袋大勝軒本店」の現在の住所は「東京都豊島区南池袋・・・」であるが、「東池袋四丁目・・・」は創業当時の住所であり現在の住所への移転前の営業地の住所であると思われる)。
このことから、「ぎょうざ」が販売されていたと主張する店舗(乙4)は、文字「池麺」が表示された麺箱が積み重ねられていた店舗「滝野川大勝軒」(乙1~乙3)ではなく、これとは全く別の店舗「東池袋大勝軒本店」であることが確認できる。
乙4によれば、店内ポスターには文字「池麺」が表示されておらず、さらに、乙4に示されたその他のどの場所を見ても、文字「池麺」の表示を確認することができない。つまり、被請求人が、商品「ぎょうざ」を販売していたと主張する店舗「東池袋 大勝軒 本店」では、そもそも文字「池麺」が一切表示されていない。
また、店舗「東池袋 大勝軒 本店」とは距離的にも離間した別個の店舗であり名称も異なる店舗「滝野川大勝軒」において文字「池麺」が表示された麺箱を展示しても、文字「池麺」が表示された麺箱の展示と商品「ぎょうざ」の間には全く結びつきがないから、当該展示が「ぎょうざに関する広告」として機能することはない。また、麺箱は製麺所で製造した「麺」を入れて店舗に納品する際に使用する運搬箱もしくは通い箱であって「ぎょうざ」とは何の関係もないから、この点からも、当該展示が「ぎょうざに関する広告」として機能することもあり得ない。
以上より、上記行為は、商品(ぎょうざ)に関する「広告」に「池麺」という「標章を付して展示」する行為に該当しない。つまり、乙1ないし乙4に示された行為は、「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当しない。
なお、被請求人は、商標法第2条第3項第1号、及び、同項第2号所定の登録商標の使用について、主張及び立証をしていないことを付言する。
(2)店舗「滝野川大勝軒」における商標使用の主体について
被請求人は、店舗「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体が「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることを証明する証拠を提示していない。
甲2によれば、「東池袋大勝軒のれん分け第一号店である滝野川大勝軒に訪問」という記載がある。また、甲9に示すように、ウィキペディアによれば「大勝軒(たいしょうけん)首都圏を中心に存在する、ラーメン屋、中華料理屋。同じ屋号を使用しているが、大きく分けると以下の3つの源流があり、それぞれはまったく関係ない・・・暖簾分けの店舗が数多く存在する。」と記載されている。
「のれん(暖簾)分け」もしくは「のれん(暖簾)を分ける」は要するに、元従業員等が本店等から許可を受け同じ屋号の店を独立して開くこと、程度を意味すると解される(甲10ほか)。したがって、「のれん分け」された店舗は、一般的には本店等とは独立した経営主体により営業されている、ということが推測される。
また、上述のウィキペディアの記述からすれば、単に「大勝軒」を含む店名を使用していたとしても、被請求人と全く関係がない経営主体による店舗である可能性がある。
以上より、被請求人と住所も店名も異なる「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体が「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることには合理的な疑いがある。
上記の事情に鑑みれば、「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体が、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることを証明する証拠(例えば、「滝野川大勝軒」の経営主体が被請求人である株式会社大勝軒であることを示す証拠、「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体に対する本件商標の通常使用権許諾契約書等)を提示しない限り、被請求人は「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明」(商標法第50条第2項)したことにならない。
(3)店舗「滝野川大勝軒」における麺箱の展示は実質的な展示ではないこと
乙2及び乙3によれば、「麺箱」が重ね置きされている場所は客席であるから、店舗が営業を開始し顧客を受け入れる体制が整った際には、客席に麺箱が重ね置きされたまま放置されているとは考えにくく営業時間内には麺箱は移動されて当該場所には存在しない。
甲3は、webページ「食ベログ」の顧客が記載したロコミ(2021/03訪問)に登録された写真である。また、甲8の1ないし3は、請求人が2023年5月9日に店舗「滝野川大勝軒」を現認した際に撮影した写真である。甲3及び甲8の1によれば、店舗の営業中には、乙3において麺箱が展示されていた場所に麺箱は存在しない。また、甲8の1及び2によれば、麺箱は店舗の隅の、しかもビール箱の後ろに積み重ねられていることが確認できる。したがって、店舗の営業時間中は、当該麺箱は顧客から視認し難い場所に展示されていることが確認できる。
以上のように、甲3及び甲8の1及び2によれば、少なくとも店舗の営業時間中には、顧客から実質的に視認し得る場所に麺箱が配置されていないことが確認できる。
さらに付言すれば、甲8の3に示されるように、店舗の隅に積み重ねられた麺箱には「池麺」の文字が表示されていない。
このような態様では、実際に顧客が麺箱に表示された文字「池麺」を視認することはないので、上記の展示は実質的な「展示」に該当しない。
また、麺箱が店外から視認可能な点について、被請求人は答弁書で「店外の潜在的飲食客が視認しうる場所に」などと主張しているが、「潜在的飲食客」という概念は不明確であり、「潜在的」であるから、少なくともその時点ではいまだ顧客ではないと思料される。顧客でない者が店内をのぞき込んで、隅に置いてある麺箱を視認することは不自然であり想定し難い。したがって、上記のような麺箱の展示は、結局、顧客から認識されることがなく、実質的な「展示」ではない。
以上より、当該麺箱の店舗内における展示は、実際には顧客から視認されないから、実質的な「展示」には該当しない。また、このような展示が「広告」として機能することもない。
したがって、乙1ないし乙4に示された行為は、「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当しない。
(4)商標の同一性について
乙1ないし乙3によると、店舗「滝野川大勝軒」において実際に使用されていた商標は「池麺」ではなく文字「池麺KINGKONG」が、外観上同じ大きさの文字で切れ目なく一連一体不可分にまとまりよく表示される商標である。また、この商標からは、切れ目なくリズミカルで一連一体不可分にまとまりがよい「イケメンキングコング」なる称呼が生じる。
また、「池麺KINGKONG」のうち「池麺」について、「池」は「地を掘って人工的に水をためた所。」等、「麺」は「粉を練ったものを細長く切った食品。うどん・そばなどの総称。」等(広辞苑第六版 岩波書店)を意味するが、「池麺」は辞書にも掲載されていない造語であって、特定の意味をなさず、特定の観念が生じることはない。また、「KINGKONG」(キングコング)は「アメリカ映画の題名。また、その主役の巨大なゴリラの名。1933年作。怪獣映画の先駆。」(広辞苑第六版 岩波書店)等のように説明される。
したがって、「池麺KINGKONG」では意味が全く不明であり、全体として特定の意味をなさない造語であって、特定の槻念が発生しない。よって、乙1ないし乙3に示される商標の使用態様から出所表示機能が発揮されるとすれば、一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」の全体からである。むしろ「KINGKONG」部分の方が著名であり需要者に与える印象が著しく強いから、「池麺」部分が全体から切り離され、独立して出所表示機能を発揮するものではない。したがって、被請求人が実際に使用する商標は「池麺」ではなく、一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」であると認定されるべきである。
以上より、被請求人が実際に使用する商標「池麺KINGKONG」と、請求に係る本件商標「池麺」とは、特定の観念が発生せず、外観、称呼のいずれも異なることから、社会通念上同一の商標に該当しない。
(5)店舗「池麺KINGKONG」の閉店、及び、同店舗の閉店後に同住所(居所)に店舗「滝野川大勝軒」が移転した事を考慮した商標の使用について
甲4の1ないし甲7によれば、2010年5月から、店舗「滝野川大勝軒」と同一住所(居所)において、店名を「池麺KINGKONG」「KINGKONG」「池麺キングコング(KINGKONG)」「キングコング」等とする店舗(以下、店舗「池麺KINGKONG」と称する)が営業していたことが示されている。また、甲4の2、甲4の3、甲5の2の記載から、店舗「池麺KINGKONG」は2015年2月28日をもって閉店したものと思料される。また、甲5の2にはさらに、「またこの場所は3月の半ば頃から滝野川大勝軒がここに引っ越してきますので宜しくお願い致します。」との記載がある。また、甲5の3、甲6の2及び甲7によれば、「池麺KINGKONG」の住所(居所)は、店舗「滝野川大勝軒」と同一の住所(居所)であることが示されている。
これらの状況を考慮すると、商標「池麺KINGKONG」が表記された麺箱は、過去に同じ住所(居所)で営業していた店舗「池麺KINGKONG」において使用されていた麺箱であり、店舗「池麺KINGKONG」の閉店後に同じ住所(居所)に移転した店舗「滝野川大勝軒」にて、当該麺箱が店内に残されていたことをこれ幸いとして再利用していただけである、と考えるのが自然である。したがって、上記麺箱の展示は、実質的な「展示」には該当せず、商標法第2条第3項第8号所定の「展示」には該当しない。
また、仮に、商標「池麺KINGKONG」が表示された麺箱が「滝野川大勝軒」の顧客から視認しうる態様で展示され、「滝野川大勝軒」の顧客が、麺箱に表記された商標「池麺KINGKONG」を実際に視認したとしても、その顧客は「過去に同じ住所(居所)で営業していた店舗「池麺KINGKONG」において使用されていた麺箱を、同住所に移転してきた店舗「滝野川大勝軒」が単に再利用しているだけである」と認識するのが自然である。これは、顧客が当該麺箱を視認した場合、過去に同じ住所(居所)にて営業し現在は閉店している別個の店舗「池麺KINGKONG」を出所として認識する、ということを意味する。
この点、商標法第50条の趣旨に鑑みれば、本件の場合、店舗「滝野川大勝軒」を出所として出所表示機能が発揮されていなければ、商標法第50条第2項所定の「登録商標の使用」にではない。
したがって、店舗「滝野川大勝軒」における商標「池麺KINGKONG」が表記された麺箱の「展示」は、そもそも出所表示機能を発揮しないか、又は、店舗「池麺KINGKONG」を出所とした出所表示機能しか発揮しないのであるから、店舗「滝野川大勝軒」における麺箱の展示は実質的に商標法第2条第3項第8号所定の「展示」ではなく、同法第50条第2項所定の登録商標の使用ではない。
(6)文字「池麺」が麺箱にしか表示されていない商標の使用態様について
被請求人は、麺箱にのみ「池麺」が付されていることを示した上で、店舗「滝野川大勝軒」において当該麺箱の展示がされ、広告として機能していることを主張している。
しかし、そもそも、製麺業者と麺の授受を行う運搬箱もしくは通い箱であって「ぎょうざ」に全く関連しない麺箱に「池麺」を付していることのみを示し、店頭の看板、のれん、店内のメニュー・ポスター、又は、飲食物を包む包装等のような、商品「ぎょうざ」に密接に関連する態様で文字「池麺」を付していることが示されていない状況からすれば、これは不自然かつ不正常な使用態様であって、商標法が予定した「展示」ではない。また、実際に使用される商標は、一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」であり、商標「池麺」と社会通念上同一の商標ではない。さらに、前述のように文字「池麺KINGKONG」が表示された麺箱は、2015年2月に閉店した店舗「池麺KINGKONG」にて使用されていた麺箱を、同住所に移転してきた店舗「滝野川大勝軒」において再利用していたにすぎないという不自然な状況で使用されていることを示すものである。
加えて、被請求人が「ぎょうざ」を販売していたと主張する店舗「東池袋大勝軒本店」は、麺箱が展示されていたと主張する店舗「滝野川大勝軒」とは、名称も異なり距離的にも離間する別個の店舗である。つまり、商標を表示する場所と商品の販売地とが物理的に離間し異なっている。
このような不自然かつ不正常な商標の使用から、出所表示機能や広告機能が発揮されることはなく、営業上の信用が化体することはあり得ない。本件商標を取り消すことなく存続させれば、上記の不使用取消審判の制度趣旨を達成できない。
以上より、被請求人の商標の使用は商標法第50条第2項所定の登録商標の使用に該当せず、本請求に係る登録商標は取り消されるべきものである。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書、令和5年8月15日付け審尋に対する回答書及び同6年3月8日付け上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙21(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁書における主張
(1)被請求人は、乙1に示す形態の「池麺」の文字を側面に表示した麺箱を要証期間前から多数所有している。被請求人は、要証期間中、乙2が示すように、被請求人が直営店として経営する中華料理店(東京都豊島区東池袋1丁目・・・所在の店名「滝野川大勝軒」)の入口などの、店内の飲食客のみならず、店外の潜在的飲食客が視認しうる場所に、この麺箱を相当数、「池麺」の文字がこれらの需要者に視認しうる形で、重ね置きする等して展示し、これは被告の経営する中華料理店の広告として機能していた。乙2は、需要者の一人が2021年12月に撮影しインターネットの飲食店紹介サイト(食ベログ)に登録した写真をダウンロードし印刷したものであるが、このインターネット上の写真の解像度の限界のため、表示文字などが鮮明とまではいえない状態だったので、同じ場所に麺箱の展示の態様を鮮明に再現して乙2の説明をするため、被請求人が2023年3月23日に撮影したものが乙3である。
(2)被請求人は、要証期間中、ぎょうざを、被請求人の経営する中華料理店で需要者に販売し、需要者はこれを「お持ち帰り」していた。乙4は、需要者の一人が、2020年7月に撮影しインターネットの飲食店紹介サイト(食ベログ)に登録した写真をダウンロードし印刷したものである。被請求人が経営する中華料理店で、要証期間中に、ジャンボギョーザを「お持ち帰りできる。」と店内ポスターに表示し、これを販売していたことが分かる。
(3)以上のように、被請求人は、取消請求に係る指定商品(ぎょうざ)について、要証期間中に、日本国内において、本件商標の使用(商標法第2条第3項第8号)をしている。
2 審尋に対する回答書(令和5年9月20日付け)
(1)商標の使用者について
ア 滝野川大勝軒と被請求人の関係
滝野川大勝軒は、被請求人が直接営業する施設である(乙5、乙6)。営業許可証は、滝野川大勝軒の施設内の見やすい場所に掲示する義務があり(この義務は乙5自体にも明記されている。)、被請求人はこれを実施している。
また、被請求人は、滝野川大勝軒を含む、自らが直接営業する直営店を紹介するポスターを店内に貼って公知させており、その様子は、ラーメン愛好家のブログ(一例として乙7の1)で公衆に送信され、滝野川大勝軒の紹介文を含むポスターの写真(一例として乙7の2)も、このブログに含まれている。
なお、現在被請求人の代表取締役であるI個人は、「つけ麺生みの親」「ラーメンの神様」などと言われていたY氏が経営する「東池袋大勝軒」に弟子入りし、1995年にY氏から「大勝軒」の名をつけて独立することを、多くの弟子の中で初めて許され、北区滝野川で「滝野川大勝軒」を開業した。Iは、2003年にはさらに、池袋に「南池袋大勝軒」を開業した。
2007年3月に、健康上の理由と再開発のためY氏は自ら経営する「東池袋大勝軒」は閉店せざるを得なくなり、Y氏は、Iを、自分の後継者、二代目として指名した。そして2007年5月に、被請求人が株式会社として設立され、Y氏、Iなどがその取締役となり、Iが代表取締役となった。2008年には、被請求人は、Y氏経営の「東池袋大勝軒」近くの被請求人本店所在地に店舗を開業し「東池袋大勝軒本店」とした。
このようにIが、被請求人の代表取締役となるに伴い、I個人が経営していた「滝野川大勝軒」と「南池袋大勝軒」は、被請求人会社が直接経営する直営店となった。「滝野川大勝軒」は、建物老朽化などにより、2015年に池袋に移転した。
これにより、池袋には、被請求人が直接営業する3店の大勝軒が並立することになったが、3店は、味の違い、休業日の違いなどで、連携して多くの顧客の需要を満たすような営業をしており、これらの事実は多くの需要者が知るところとなっている(乙8)。
本件商標は、「池袋」所在の「麺店」という観念を生ずるもので、主として被請求人の直営する池袋所在の主要3店の営業活動によって生じる被請求人の名声信用を化体させる商標として用いるのに最適なものの一つである。
イ 東池袋大勝軒本店と被請求人の関係
東池袋大勝軒本店又は「東池袋 大勝軒 本店」は、被請求人が、被請求人の住所地(本店所在地)である東京都豊島区南池袋で施設の営業をする、被請求人の直営店である。
乙4は、「東池袋 大勝軒 本店」に来店した需要者が、撮影しインターネットの飲食店紹介サイト(食ベログ)の「東池袋 大勝軒 本店」URLにリンクして登録した写真をダウンロードし印刷したものである。このインターネット飲食店紹介サイト(食ベログ)には当然「東池袋 大勝軒 本店」の住所が記載されており、その住所は被請求人の住所地である(乙4の2)。東池袋大勝軒本店又は「東池袋 大勝軒 本店」の住所が被請求人の住所地であることは、乙7の1、乙7の2、乙8からも明らかである。
なお、乙4自体には「東池袋四丁目28」の青色の住所プレートが店内に貼り付けられていることが映り込んでいるが、これは、被請求人代表取締役Iが修行した、Y氏創業の「東池袋大勝軒」がかつて存在していた場所の住所プレートで、I氏がその二代目として店を経営している証として店内に貼り付けているもので、「東池袋 大勝軒 本店」の住所地を表すものではない。
(2)商標の使用行為について
ア 麺箱について
(ア)そもそも、新聞、雑誌、パンフレット、テレビコマーシャル等は、「広告」の典型であるが、これらは「一時的なもの」であり、「常時店舗に設置される」ものではない。新聞、雑誌、パンフレット、テレビコマーシャル等に標章を付することが、商標法第2条第3項第8号の広告的使用ではないというのであれば、商標法第2条第3項第8号はほとんど意味をなさなくなり、立法の趣旨を否定するものである。
「一時的なもの」を除外し、「常時店舗に設置される」ものに限定することは、条文上記載はなく、このようにすることに合理性は全くない。
(イ)麺箱は、「業者と店舗の間で麺の受渡し」のみに使われるだけのものではない。麺箱は、店舗において、麺その他の食品を顧客に提供する前に常温保管するための道具でもある。
麺用木箱専門店が、「業務用麺箱一筋! 製麺業者様、ラーメン店様、蕎麦・うどん店様御用達」などと宣伝している例(乙9)がある。これは、ラーメン店、喬麦・うどん店などの飲食物提供業者が麺箱を購入することが多いことを示している。飲食物提供業者が麺箱を自ら購入するのは、「業者と店舗の間で麺の受渡し」のためではなく、麺その他の食品を顧客に提供する前に常温保管するためである。
ラーメン店が購入した麺箱に自ら所有する商標を表示する例は多数ある(乙10、乙11はその一例である。)。この中には、麺箱に商標を表示して「登録商標」であることを明示している例(乙11)もある。また、被請求人が麺箱に表示している「池麺」のみならず「キングコング」(商標登録第5384749号)「滝野川大勝軒」(商標登録第6073364号、商標登録第6600706号)は、いずれも被請求人が所有する登録商標である。そして、店内や店の入口などに置かれた麺箱の側面は、一般需要者が商標の表示場所として注目する場所になっている。
ハコのプロが飲食店のために麺箱を作成し、麺箱の機能構造を説明した上「使い込むほどアジが出てきてその店の歴史・物語をそのハコ自体が語ってくれている」「お客様に愛されて名店と呼ぶにふさわしい歴史を刻んだ麺箱」「お店に置いて積み重なった麺箱の姿がまた、美しい」などとブログに記載している(乙12)。店舗用品の販売業者が麺箱について「飲食店のホールには欠かせない麺箱」と宣伝している(乙13)が、麺箱に乙13に記載されているような印象を持つ需要者が多いからこそ麺箱が「飲食店のホールには欠かせない」ことになっている。需要者にこのような印象を与える麺箱の側面は、一般需要者が商標の表示場所として注目するが故に、商標を表示するのに適した場所だといえる。
それゆえ、事業者としては、麺箱を顧客に展示するために店舗に設置しようとすることが多くなっている。
(3)乙4について
ア 審尋は、「被請求人は、乙4を提出し、被請求人の経営する中華料理店において、商品「ぎょうざ」について、店内ポスターに「お持ち帰りできる。」と表示し、販売したことをもって、本件商標の使用(商標法第2条第3項第8号)をした旨主張している。
しかしながら、乙4中の写真部分において、「ギョーザ」の文字及び「お持ち帰りできます」の文字が表示されたポスターが、飲食店とおぼしき店舗内に掲示されていることはうかがえるものの、ポスター自体はもとより、乙4全体においても、本件商標の表示を確認することができません。」としている。
イ しかしながら、被請求人は、乙4のみをもって商標の使用を主張しているのではなく、乙1ないし乙3により、本件商標の表示を麺箱にし、麺箱を展示することにより、ラーメン店が行うサービスとともに、ラーメン店が行うことが多い、ぎょうざを含む関連食品の販売の広告をしていることを主張し、乙4によってぎょうざの販売が実際に行われていることを示し、被請求人の主張を補完、補強している。そしてこれによって乙1ないし乙4を総合的に判断して、商標の使用を主張しているのである。
サービスの内容や販売商品の内容が広告自体に明示的に記載されなくとも、専門店の広告であれば、当該専門店が通常行うサービスや商品の広告であると認められるというべきである。
(4)以上からすれば、被請求人が、その経営する「滝野川大勝軒」の入口等において、「池麺」の文字を側面に表示した麺箱を設置して、広告として使用したこと、これが商標法第2条第3項第8号に該当する商標の使用行為に該当することは明白である。
3 上申書(令和6年3月8日付け)
(1)東池袋1丁目の直営店「KINGKONG」などについて
ア 被請求人は、2010年(平成22年)6月28日頃、東京都豊島区東池袋の地を、「店舗(業種 飲食店)」として賃借した(乙14。以下この地に存在する店舗を「東池袋1丁目店」という。)。賃貸借契約書で「造作の第三者への譲渡」「賃借権の譲渡、転貸」「名義の如何に関わらず他に使用させること」「賃借人名義以外の者の名義を表示し、又は広告すること」等は禁止されている(賃貸借契約書(乙14)第15条))。被請求人は、東池袋1丁目店の賃借当初その店名を「KINGKONG」又は主として称呼として「キングコング」とした(乙17の2、甲6の3など)。
イ 被請求人は、2008年には、被請求人本店所在地に店舗を開業し、その店名を「東池袋大勝軒本店」としていた。「東池袋大勝軒」とは、「東池袋大勝軒本店」とその被承継者を中心とする「大勝軒」に店名に有する店舗群を意味し、「KINGKONG」は、そのセカンドブランドという位置づけであることが広く知られていたことが分かる(乙17の4、乙20、乙21、甲5の1)。
ウ 被請求人代表者の師匠であり被請求人の取締役であったY(つけめんの考案者として知られている)の発案により池袋の麺店という含意のある言葉「池麺」を「KINGKONG」につけ加えて、「池麺KINGKONG」として、店の性格をより明確にする店名表示をすることもあった。
エ 即席麺業界の著名な老舗であるM社が、被請求人代表者を「池麺 KINGKONG」店主として紹介している(乙18)。この紹介文は、被請求人が伝統の味と守りつつ、店名「KINGKONG」の東池袋1丁目店が直営店ではあるが新たな味に挑戦するセカンドブランドを立ち上げ、新旧バランスのとれた企業イメージを形成しようする姿勢をもっていることをよく表しており、被請求人にとって価値ある広告となっている。
(2)麺箱
ア 被請求人は、乙1に示す形態の本件麺箱を、2010年(平成22年)頃から多数制作し現在に至るまで所有しているが、本件麺箱の形態をより詳細に述べると、本件麺箱の4つの側面は、文字列「黒地木肌色抜きのKINGKONG」と文字列「池麺KINGKONG」が2面ずつ交互に表示されており、「池麺」の文字列は本件麺箱の2面の側面に表示されている(乙15)。
イ 被請求人は、要証期間中、被請求人が直営店として経営する東池袋1丁目店の入口などの、店内の飲食客のみならず店外の潜在的飲食客が視認しうる場所に、本件麺箱を相当数、「池麺」の文字がこれらの需要者に視認しうる形で、重ね置きする等している。このような重ね置きが要証期間中にも多数回にわたりされていたことは、乙2の他、要証期間中である2021年(令和3年)3月16日に撮影しインスタグラムに投稿された写真(乙16の1[写真]及び2[写真のコメント])からも明らかである。
ウ 本件麺箱の4つの側面は、文字列「黒地木肌色抜きのKINGKONG」と文字列「池麺KINGKONG」が2面ずつ交互に表示されており、「池麺」の文字列は本件麺箱の2面の側面に表示されている(乙15)。
また、乙16の1及び2は東池袋1丁目店開店直後に本件麺箱が店内に重ね置きされている様子が写っている写真であるが、乙16の1はこれを店内から写したものであり、乙第16の2はこれを店外から写したものである。いずれも「池麺」の表示が需要者から視認できる形で本件麺箱が重ね置きされている。
甲8の1及び2でも、少なくとも店内の客からは「池麺」が付されていることを視認できる状態であることは明らかである。
乙16の1及び2の写真でも「池麺」の表示は店外から視認できないかもしれないが、少なくとも店内の需要者から視認できる状態であることは明らかである。
エ 麺箱は、店の看板のごとくに用いられており、専門店にあっては、その専門に属する「商品及び役務に関する」広告となるものである。本件においては、被請求人は中華料理・ラーメン専門店である。したがって麺箱の表示は、中華料理の提供の役務に関する広告となるばかりでなく、これに付随するぎょうざ、しゅうまい、べんとう、調理済み麺類、調理済みラーメン等の商品に関する広告にもなっている。
オ 以上、被請求人は、要証期間中、本件各商標と社会通念上同一又は類似する標章を、被請求人の経営する中華料理店特にラーメン店の「飲食物の提供」の役務及び被請求人が中華料理店特にラーメン店として通常販売する「ぎょうざ、しゅうまい、べんとう」等の商品に関する広告に付して展示して本件各商標を使用していることは明らかである。
(3)カップ麺
ア 2011年(平成23年)12月には、被請求人の了解のもと、包装に「池麺」の標章を付し、被請求人代表取締役の写真を付した「トロフルみそ豚骨ラーメン」のカップ麺がM社から発売され、このことはM社のニュースリリースとして、M社のwebページにおいて電磁的方法により提供された(乙18)。このカップ麺は、特段の調理を要せず、容器に入れられた商品であり、「調理済みラーメン」及び「べんとう」(類似群コード32F06)に該当するものである。また、このニュースリリースは、被請求人代表者の、調理技術及び調理監督技術、ひいては被請求人の調理技術への需要者の信頼に基づいたものである。このニュースリリース中で、被請求人代表者を「新進気鋭のラーメン店主」「ラーメン界デビュー後、すぐにラーメンフリークの間で話題を集め、人気店の仲間入りを果たした東池袋の『池麺 KINGKONG』」と記載していること、及び、ニュースリリース中で被請求人代表者を「『南池袋大勝軒』『滝野川大勝軒』の店主をつとめたのち、『東池袋大勝軒』の創業者であるY氏に後継者に指名され、新しい『東池袋大勝軒』の店主となる。『東池袋大勝軒』では伝統の味を守り、2010年8月にオープンした自身の新ブランド『池麺KINGKONG』では新たな味の創造に取り組んでいる。」と紹介していることなどは、飲食物の提供及びこれに関連する商品の販売を行っている被請求人の広告となっている。このようなニュースリリース(乙18)のインターネット公開の継続は、被請求人の役務及び商品に関する広告を内容とする情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供する行為にも該当する。
イ 一般にコンテンツのインターネット等における電磁的方法による提供については、前後の両時点において提供をしている証拠があるときは、提供はその間継続したものと推定すべきである。民法第186条第2項は、「前後の両時点において占有をしている証拠があるときは、占有はその間継続したものと推定する。」と規定しているが、この法理はコンテンツの電磁的方法による提供について類推適用されるべきである。特に、インターネットにおけるニュースリリースの公表は、削除されて再公表されるようなことは通常ないことは広く知られている。
乙18のニュースリリースは、証拠自体に記載された2011年(平成23年)11月1日頃、電磁的方法による提供がなされたこと、また、被請求人がこれを2024年(令和6年)2月7日にダウンロードして印刷したことは証拠により明らかである。明確な反証がない限り、ニュースリリース(乙18)の電磁的方法による提供は2011年(平成23年)11月1日から、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)2月7日まで継続していたというべきである。
ウ また、被請求人は「KINGKONGの閉店」後、店名を「滝野川大勝軒」とした東池袋1丁目店において、要証期間中である2022(令和4)年1月に、「KING KONG」の看板料理であった「トロフルつけめん」の「復刻」をして、需要者に提供することもあった(乙19)。乙19の写真を撮影したラーメン愛好家は、「”KINGKONG”提供麺を復刻とのこと。懐かしくも美味しくいただいてきました」「2015年に閉店された東池袋大勝軒池麺KINGKONGさん。代表メニューのひとつトロフルつけめんは当時何度もいただいたメニューでした。」などと記載している。被請求人は、ニュースリリース(乙18)に関連する役務を、要証期間中も行っていたといえる。
エ M社がこのような、被請求人の信頼に基づき、被請求人代表者の氏名、肖像を使用してそのエンドースメントを伴うニュースリリースを「池麺」の標章を付して継続的に電磁的方法により提供することは、被請求人とM社との間で、少なくとも黙示の使用許諾契約がなければできないことは明らかである。
オ 以上からすると、要証期間中に本件商標の通常使用権者であるM社が、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標の標章を付して電磁的方法により提供をする行為をしていたことになる。
(4)フェイスブック・ツイッター・アメブロ等
ア 被請求人は、2010年(平成22年)の「KINGKONG」の開店に際し、フェイスブック(乙20)、ツイッター(乙21)などにアカウントを持ち、被請求人の提供する役務及び商品を内容とする情報を投稿するとともに、これに「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供した。
この投稿は2015年(平成27年)2月末に、東池袋1丁目店の店名を「KINGKONG」から「滝野川大勝軒」に変更する等をした頃まで継続された。乙21では、2015年(平成27年)3月1日にKINGKONG閉店の挨拶が投稿されている。しかし、回答書及び上記で述べたように、東池袋1丁目店に「移転した」と言われる「滝野川大勝軒」の営業者もまた被請求人であって、同店もまた被請求人の直営店である。法律的には、被請求人の経営する東池袋1丁目店の店名を「KINGKONG」から「滝野川大勝軒」へ変更した「店名の変更」である。
乙20及び乙21に示されるフェイスブック、ツイッター等のアカウントと投稿記事は、上記のような「店名の変更」後も閲覧可能で、少なくとも被請求人が上記をダウンロードして出力をした2024年(令和6年)まで閲覧可能である。
イ フェイスブックやツイッターなど、投稿の削除が表現の自由の侵害を起こしかねないものは、第三者の権利侵害、公共の利益の侵害などの理由がない限り削除されるようなことはまずなく、削除されたものが再公表されることもまずないといえる。また、乙20及び乙21について投稿者たる被請求人が削除するなどして公開を停止したことはない。明確な反証がない限り、フェイスブック、ツイッター等の投稿(乙20、乙21)の電磁的方法による提供は、2010年(平成22年)ないし2015年(平成27年)頃から、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)まで、継続していたというべきである。
ウ 被請求人は、フェイスブック、ツイッター等の投稿(乙20、乙21)に関する商品又は役務を、要証期間中も行っていたといえる(乙19)。
エ 請求人はアメブロ(ameblo)における「池麺キングコングのブログ」と題するブログへの被請求人の投稿を甲5の1ないし3として提出している。これについても上記乙20及び乙21と同様のことがいえる。明確な反証がない限り、被請求人の役務又は商品に関するアメブロの投稿の電磁的方法による提供は、2010年(平成22年)ないし2015年(平成27年)頃から、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)まで、継続していたというべきである。
オ 以上からすると、要証期間中に、被請求人は、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標の標章を付して電磁的方法により提供をする行為をしていたことになる。
(5)結合商標
「池麺KINGKONG」も「池麺 KINGKONG」も、特定の普遍的意味を固定することが困難な漢字2文字と、外国映画等で有名な動物名と同一のアルファベット8文字は、「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもの」ではなく、また、「池麺」の部分は、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える」ものである。
このような場合には「池麺KINGKONG」及び「池麺 KINGKONG」においても「池麺」の分離観察が許されるというべきである。
特に、(i)「池麺」と「KINGKONG」の間に空白がある表示及び(ii)本件麺箱の側面に見られる、「池麺」と「KINGKONG」の間に空白があり、「池麺」「KING」「KONG」の字体が異なる表示においては、「池麺」の分離観察が許されることは一層明白である。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(1)被請求人である商標権者は、平成27年に、東京都豊島区東池袋において「滝野川大勝軒」を名称とする飲食店(以下「本件店舗」という。)の営業許可申請を行い、また、同店舗について、令和4年3月11日から同11年3月31日まで営業許可を受けている(乙5、乙6)。
(2)乙15は、商標権者が制作し所有する麺箱の写真とするものであるところ、当該麺箱(以下「本件麺箱」という。)には、四隅の上部に黒い金具が施され、一方の側面に、別掲のとおり、「池麺」の文字と「KINGKONG」の文字とを、やや空白を設けて「池麺 KINGKONG」と横書きした表示が付され、他の側面に、黒塗りの長方形内に白抜きで「KINGKONG」の文字を横書きした表示が付されている。
(3)乙2は、2021年12月にインターネットの飲食店紹介サイトに登録された写真とするものであるところ、当該写真には、本件店舗の外観が写っており、店舗内には、上部に黒い金具が施され、側面に文字とおぼしき表示が付された麺箱が数個積み上げられており、これらの麺箱の金具や文字の位置や特徴は、本件麺箱のそれと一致する。
(4)乙16は、2021年3月16日にSNSに投稿された写真及びコメントとするものであるところ、このうちの写真には、本件店舗の外観が写っており、店舗内に、上部に黒い金具が施され、側面に黒地に白抜きの文字が付された麺箱が数個積み上げられており、これらの麺箱の金具や文字の位置や特徴は、本件麺箱のそれと一致する。また、同写真には、本件店舗の入口付近に「もりそば」及び「ラーメン」と表示された料理のポスターが掲示されている様子が写っており、さらに、コメントには「本日は大勝軒のつけ麺を食べてきました!」の記載がある。
(5)乙4は、需要者が、「東池袋 大勝軒 本店」を撮影し飲食店紹介サイトに掲載した写真とするものであるところ、当該「東池袋 大勝軒 本店」とおぼしき店内に、「お持ち帰りできます/ジャンボ ギョーザ」の文字及び皿に盛られたぎょうざの写真が掲載されたポスターが掲示されている。なお、当該写真の撮影時期を示す証拠は提出されていない。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商品及び使用行為について
上記1(1)及び(4)によれば、商標権者の経営する本件店舗は、飲食店として営業許可を受けており、本件店舗において、実際にもりそばやラーメン、つけ麺等の飲食物の提供が行われていることがうかがえることから、商標権者は本件店舗において「飲食物の提供」の役務を行っているとはいえるものの、本件店舗において、請求に係る商品が販売されていたことは確認できない。
また、上記1(5)によれば、「東池袋 大勝軒 本店」において、持ち帰り用のぎょうざが販売されていることは推認し得るものの、当該店舗において、持ち帰り用のぎょうざに本件商標(社会通念上同一のものを含む。以下同じ。)が使用されていることは確認できない。
なお、被請求人は、乙1ないし乙3により、本件商標を表示した麺箱を展示することにより、ラーメン店が行うサービスとともに、ラーメン店が行うことが多い、ぎょうざを含む関連食品の販売の広告をしていること、乙4により、ぎょうざの販売が実際に行われていることをそれぞれ示し、これらを総合して商標の使用を主張しているとする。
しかしながら、本件麺箱に付された別掲のとおりの表示のうち、「池麺」の文字が本件商標と同一の文字構成であり、また、ラーメン店がぎょうざ等の商品の販売を行う場合があるとしても、そのことをもって、ぎょうざ等の請求に係る商品が、実際に本件店舗において販売されていたとは認められず、そのことを示す証拠の提出もない。
(2)小括
上記(1)を踏まえると、商標権者が要証期間に、本件店舗において、本件商標と文字構成を同一にする「池麺」の文字を付した麺箱を置いていたとしても、請求に係る商品について使用されているものではなく、また、ぎょうざを販売しているとおぼしき店舗においては、本件商標が使用されていることが確認できないから、商標権者が、要証期間に請求に係る商品について本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと認めることはできない。
したがって、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人は、本件商標の使用をしていることを証明したということはできない。
3 被請求人のその他の主張について
(1)被請求人は、2011年12月に、包装に「池麺」の標章を付し、被請求人(本件商標権者)代表取締役の写真を付したカップ麺がM社から発売され、そのニュースリリースが、M社のwebページにおいて電磁的方法により提供された(乙18)ことが、本件商標権者の商品に関する広告を内容とする情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供する行為に該当する旨主張する。
しかしながら、上記カップ麺に「池麺」の文字及び本件商標権者の代表取締役の写真が付されているとしても、当該カップ麺はM社の製造販売に係るものとみるのが相当であって、本件商標権者の業務に係るものとはいえない。
(2)被請求人は、2010年の「KINGKONG」の店舗開店の際に、フェイスブックやツイッター等にアカウントを持ち、請求人の提供する役務及び商品を内容とする投稿情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供し(乙20、乙21)、これらの情報は当該店舗が「滝野川大勝軒」に店名の変更をした後まで閲覧可能であったことから、被請求人は、要証期間に、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供をしていた旨主張する。
しかしながら、上記のフェイスブックやツイッター等の投稿情報は、つけ麺等の飲食物の提供を行う店舗に関する情報とみるべきものであって、請求に係る商品に関する情報とはいい難い。
(3)したがって、被請求人の上記の主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る商品について、本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-300004