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商標取消審判

2023-300003

イケメン

審判番号
2023-300003
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願2003-030372
登録番号
4741943
請求日
2022年12月29日
審決日
2025年03月19日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【請求人】株式会社 アイスタイル
  • 【請求人代理人】川口 眞輝
  • 【被請求人】株式会社 大勝軒
  • 【被請求人代理人】藤本 英介
  • 【被請求人代理人】神田 正義
  • 【被請求人代理人】宮尾 明茂
  • 【被請求人代理人】馬場 信幸
審判長/審判官
  • 審判長 旦 克昌
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 小林 裕子
分類
T132 .1 -Z (Y43)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第5号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第50条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4741943号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第4741943号商標の指定役務中、第43類「うどんその他の飲食物の提供,うどんを含む飲食物のケータリング,うどん屋その他の飲食店・料理内容・その他の飲食物の提供に関する情報の提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第4741943号商標(以下「本件商標」という。)は、「いけめん」の文字を標準文字で表してなり、平成15年4月15日に登録出願、第43類「うどんその他の飲食物の提供,うどんを含む飲食物のケータリング,うどん屋その他の飲食店・料理内容・その他の飲食物の提供に関する情報の提供」を含む第43類に属する役務を指定役務として、同16年1月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年1月23日である。 なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和2年(2020年)1月23日から同5年(2023年)1月22日までを、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。以下、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、第42類「うどんその他の飲食物の提供,うどんを含む飲食物のケータリング,うどん屋その他の飲食店・料理内容・その他の飲食物の提供に関する情報の提供」(以下「請求に係る役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)商標使用の主体について 被請求人は、店舗「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体が「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることを証明する証拠を提示していない。 甲2によれば、「東池袋大勝軒のれん分け第一号店である滝野川大勝軒に訪問」という記載がある。また、甲9に示すように、ウィキペディアによれば「大勝軒(たいしょうけん)首都圏を中心に存在する、ラーメン屋、中華料理屋。同じ屋号を使用しているが、大きく分けると以下の3つの源流があり、それぞれはまったく関係ない・・・暖簾分けの店舗が数多く存在する。」と記載されている。 「のれん(暖簾)分け」もしくは「のれん(暖簾)を分ける」は、要するに、元従業員等が、本店等から許可を受け、同じ屋号の店を独立して開くこと、程度の意味を有すると解される(甲10ほか)。したがって、「のれん分け」された店舗は、一般的には本店等とは独立した経営主体によって営業されていると推測される。 また、上述のウィキペディアの記述からすれば、単に「大勝軒」を含む店名を使用していたとしても、被請求人と全く関係がない経営主体による店舗である可能性がある。 上記の事情に鑑みれば、被請求人と住所も店名も異なる「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体が、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることを証明する証拠(例えば、「滝野川大勝軒」の経営主体が被請求人である株式会社大勝軒であることを示す証拠、「滝野川大勝軒」もしくはその経営主体に対する本件商標の通常使用権許諾契約書等)を提示しない限り、被請求人は「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明」(商標法第50条第2項)したことにならない。 (2)商標の使用について 本件において被請求人が主張する商標の使用は、「飲食物の提供の用に供する物(飲食物の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを飲食物の提供のために展示する行為」と読み替えられる。 ここで、「麺箱」とは、製麺所で製造した麺類をラーメン店などの店舗に納入する際に使用され、製麺所と店舗との間を行き来する「通い箱」を意味し、製麺所と店舗との間で、専ら製麺業者との麺の授受を目的として使用されるものであり、顧客に対する「飲食物の提供」という「役務」に関連して使用されるものではない。したがって、「麺箱」は「飲食物の提供の用に供する物」ではない。また、飲食物の提供を受ける際に顧客が麺箱を利用するということは想定できないので、「飲食物の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」でもない。麺箱は明らかに調理器具等ではないので、「調理人が麺箱を用いて飲食物の調理等をする」ということは想定できない。したがって、被請求人の「この麺箱は、被請求人が麺類などの飲食物を提供等するにあたって、調理人が飲食物の調理等をするために用いるものである」との主張は妥当ではない。 また、不使用取消審判における商標の使用は、出所表示機能を発揮する態様での使用が必要である(知的財産高等裁判所令和4年2月9日判決 令和3年(行ケ)第10076号審決取消請求事件)。 この点、被請求人は、「麺箱」を店舗内に展示し、客が視認しうる状態に置いている等を主張しているが、乙2及び乙3によれば、「麺箱」が重ね置きされている場所は客席であるから、店舗が営業を開始し顧客を受け入れる体制が整った際には、客席に麺箱が重ね置きされたまま放置されているとは考えにくく、「麺箱」は移動されて、当該場所には存在しない。 甲3は、webページ「食ベログ」の顧客が記載した口コミ(2021/03訪問)に登録された写真である。また、甲8の1ないし3は、請求人が2023年5月9日に店舗「滝野川大勝軒」を現認した際に撮影した写真である。甲3及び甲8の1によれば、店舗の営業中には、乙3において麺箱が展示されていた場所に麺箱は存在しない。甲8の1及び2によれば、麺箱は店舗の隅のビール箱の後ろに積み重ねられていることが確認できる。したがって、店舗の営業中は、当該麺箱は顧客から視認し難い場所に配置されていることが分かる。このような「展示」では、実際に顧客から麺箱を視認することはなく、ましてや出所表示機能を発揮することはあり得ない。 さらに付言すれば、甲8の3に示されるように、店舗の隅に積み重ねられた麺箱には「池麺」の文字が表示されていない。 以上の麺箱の展示状況に鑑みれば、被請求人の主張は疑問であり、信憑性がない。仮に、乙2及び乙3に示されるように一時的な展示があったとしても、開店前の一時的な展示であり、結局、客からは認識されない。 また、麺箱が店外から視認可能な点について、被請求人は「店外の潜在的客が視認しうる場所に」などと主張しているが、「潜在的客」という概念は不明確であり、「潜在的」であるから、少なくともその時点ではいまだ顧客ではない。顧客でない者が店内をのぞき込んで、隅に展示してある麺箱を視認することは不自然であり想定し難い。したがって、上記のような麺箱の展示があったとしても、結局、「潜在的客」からは認識されない態様の展示であり、出所表示機能を発揮することはあり得ない。 以上より、当該麺箱の店舗内における展示は、実際には顧客から視認されず、あるいは、出所表示機能を発揮しないから、商標法第2条第3項第5号所定の「展示」には該当しない。 (3)商標の同一性について(その1) 本件商標は「ひらがな」からなる標準文字「いけめん」であり、この商標からは、「イケメン」なる称呼、及び、「(「いけている」の略「いけ」と顔を表す「面」とをあわせた俗語か。多く片仮名で書く)若い男性の顔かたちがすぐれていること。また、そのような男性。」(広辞苑第六版 岩波書店)等の槻念が生じる。一方、被請求人が主張する商標の使用態様では、乙2及び乙3に示されるように、漢字により表記される商標「池麺」が示されているが、この商標からは「イケメン」もしくは「チメン」なる称呼が発生するものと思料され、更に付言すれば「イケメン」もしくは「チメン」のいずれかに特定することはできない。また、「池」は「地を掘って人工的に水をためた所。自然の土地のくぼみに水のたまった所。」等を、「麺」は「粉を練ったものを細長く切った食品。うどん・そばなどの総称。」等(広辞苑第六版 岩波書店)を意味する。これに対して「池麺」は辞書にも掲載されていない造語であって、意味をなさず、特定の観念が生じることはない。 したがって、「いけめん」及び「池麺」は、これらから発生する称呼及び観念が一致しないので、社会通念上同一とはいえない。被請求人が麺箱が展示されていると主張する店舗の店名は、東京都北区の町名である「滝野川」を含む「滝野川大勝軒」であるから、「池麺」から「池袋の麺」という観念が生じるとするには無理があり、根拠がない。 なお、審判便覧の例示からも、社会通念上同一の商標とはいえない。 したがって、これらの点から、乙1ないし乙3に示される商標は、本件商標「いけめん」の社会通念上同一の商標に該当しない。 (4)商標の同一性について(その2) 乙1ないし乙3によると、店舗「滝野川大勝軒」において実際に使用されている商標は、文字「池麺KINGKONG」が、外観上同じ大きさの文字で切れ目なく一連一体不可分にまとまりよく表示される商標である。また、この商標からは、切れ目なくリズミカルで一連一体不可分にまとまりがよい「イケメンキングコング」なる称呼が生じる。 また、「池麺KINGKONG」のうち、「池麺」は、上記のように造語であって、特定の観念が生じることはない。また、「KINGKONG」(キングコング)は「アメリカ映画の題名。また、その主役の巨大なゴリラの名。1933年作。怪獣映画の先駆。」(広辞苑第六版 岩波書店)等のように説明される。 したがって、「池麺KINGKONG」では意味が全く不明であり、全体として特定の意味をなさない造語であって、特定の観念が発生しない。よって、乙1ないし乙3に示される商標の使用態様から出所表示機能が発揮されるとすれば、一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」の全体からである。むしろ「KINGKONG」部分の方が著名で印象が強いから、「池麺」部分が全体から切り離され、独立して出所表示機能を発揮するものではない。したがって、被請求人が実際に使用する商標は一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」であると認定されるべきである。 以上より、乙1ないし乙3に示され、実際に使用される商標「池麺KINGKONG」と、本件商標「いけめん」とは、外観、称呼、観念のいずれも異なり、社会通念上同一の商標に該当するか否かを検討する必要がないほどかけ離れた異なる商標である。また、仮に、全体から切り離された「池麺」部分が独立して出所表示機能を発揮すると解した場合であっても、前述のように「いけめん」と「池麺」は社会通念上同一の商標ではないので、いずれにせよ、乙1ないし乙3に示された商標は社会通念上同一の商標には該当しない。 (5)店舗「池麺KINGKONG」の閉店、及び、同店舗の閉店後に同住所(居所)に店舗「滝野川大勝軒」が移転した事を考慮した商標の使用について 甲4の1ないし甲7によれば、2010年5月から、店舗「滝野川大勝軒」と同一住所(居所)において、店名を「池麺KINGKONG」「KINGKONG」「池麺キングコング(KINGKONG)」「キングコング」等と称する店舗(以下、店舗「池麺KINGKONG」と称する。)が営業していたことが示されている。また、甲4の2、甲4の3、甲5の2の記載から、店舗「池麺KINGKONG」は2015年2月28日をもって閉店したものと思料される。また、甲5の2にはさらに、「またこの場所は3月の半ば頃から滝野川大勝軒がここに引っ越してきますので宜しくお願い致します。」との記載がある。そして、甲5の3、甲6の2及び甲7によれば、「池麺KINGKONG」の住所(居所)は、店舗「滝野川大勝軒」と同一の住所(居所)であることが示されている。 これらの状況を考慮すると、乙1ないし乙3に示された、商標「池麺KINGKONG」が表記された麺箱は、過去に同じ住所(居所)で営業していた店舗「池麺KINGKONG」において使用されていた麺箱であり、「池麺KINGKONG」の閉店後に同じ住所(居所)に移転した店舗「滝野川大勝軒」にて、商標「池麺KINGKONG」が記載された麺箱が店内に残されていたことをこれ幸いとして、同店舗にてこの麺箱を再利用していたものと考えるのが自然である。 したがって、仮に、商標「池麺KINGKONG」が表示された麺箱が「滝野川大勝軒」の顧客から視認しうる態様で展示されていたとしても、過去に営業していた店舗の商標が付された麺箱を単に再利用したにすぎない展示であって、実質的な商標の使用ではない。したがって、このような形骸化した商標の使用により出所表示機能は発揮されないし、ましてや営業上の信用が化体することはあり得ない。 また、仮に、商標「池麺KINGKONG」が表示された麺箱が「滝野川大勝軒」の顧客から視認しうる態様で展示され、顧客が、麺箱に表記された商標「池麺KINGKONG」を実際に視認したとしても、「過去に同じ住所(居所)で営業していた店舗「池麺KINGKONG」において使用されていた麺箱を、店舗「滝野川大勝軒」が単に再利用している」と認識するのが自然である。このような商標の使用態様からは、そもそも出所表示機能は発揮されない。 また、商標法第50条の趣旨に鑑みれば、本件の場合、店舗「滝野川大勝軒」を出所として出所表示機能が発揮されていなければ、商標法第50条第2項所定の「登録商標の使用」に該当しないと解される。 この点、仮に、出所表示機能が発揮されると解した場合に、店舗「滝野川大勝軒」において、顧客が視認しうる態様で、商標「池麺KINGKONG」が表記された麺箱の展示を行ったとしても、店舗「滝野川大勝軒」の顧客は、過去に同じ住所(居所)にて営業し現在は閉店している別個の店舗「池麺KINGKONG」を出所として出所表示機能が発揮されていると認識するのが自然である。 したがって、店舗「滝野川大勝軒」における商標「池麺KINGKONG」が表記された麺箱の展示は、そもそも出所表示機能を発揮しないか、又は、店舗「滝野川大勝軒」を出所とした出所表示機能であるから、商標法第50条第2項所定の「登録商標の使用」ではない。 (6)文字「池麺」が麺箱にしか表示されていない商標の使用態様について 被請求人は、麺箱にのみ「池麺」が付されていることを示した上で、当該麺箱の展示が登録商標の使用に該当することを主張している。 しかし、そもそも、店頭の看板、のれん、店内のメニュー、飲食物を盛る器、箸、レンゲ、又は、コップ等のように、飲食物の提供という役務に密接に関連した物に文字「池麺」を付することがなく、製麺業者との通い箱であって飲食物の提供という役務に密接に関連しない麺箱にのみ「池麺」を付しているという商標の使用態様は、不自然かつ不正常な使用態様であって、商標法が予定した商標の使用ではない。さらに、実際に使用される商標は、一連一体に表記及び呼称される「池麺KINGKONG」であって、「池麺」ではない。さらに、前述のように文字「池麺KINGKONG」を付した麺箱は、2015年2月に閉店した店舗「池麺KINGKONG」にて使用されていた麺箱を、同住所に移転してきた店舗「滝野川大勝軒」において再利用しているにすぎないという不自然な状況で使用されているものである。 このような不自然かつ不正常な商標の使用から、出所表示機能が発揮されることはなく、営業上の信用が化体することはあり得ない。本件商標を取り消すことなく存続させれば、不使用取消審判の制度趣旨を達成できない。 したがって、この点からも、店舗「滝野川大勝軒」における麺箱の展示は、商標法第50条第2項所定の「登録商標の使用」に該当しない。 (7)まとめ 以上のように、被請求人は、「審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていること」を証明していない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書、令和5年8月15日付け審尋に対する回答書及び同6年3月8日付け上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙21(枝番号を含む。乙4は欠番。)を提出した。 1 答弁書における主張 (1)被請求人は、乙1に示す形態の「池麺」の文字を側面に表示した麺箱を多数所有しており、この麺箱は、被請求人が麺類などの飲食物を提供等するにあたって、調理人が飲食物の調理等をするために用いるものである。被請求人は、要証期間中、乙2が示すように、請求人が直営店として経営する中華料理店(東京都豊島区東池袋1丁目・・・所在の店名「滝野川大勝軒」)の入口などの、店内の客のみならず、店外の潜在的客が視認しうる場所に、この麺箱を相当数、「池麺」の文字がこれらの需要者に視認しうる形で、重ね置きする等して、展示していた。請求人が直営店として経営する中華料理店が「飲食物の提供」などを行っていることはいうまでもない。乙2は、需要者の一人が2021年12月に撮影しインターネットの飲食店紹介サイト(食ベログ)に登録した写真をダウンロードし印刷したものであるが、上記の使用状態を写している。このインターネット上の写真の解像度の限界のため、表示文字などが鮮明とまではいえない状態だったので、同じ場所に麺箱の展示の態様を鮮明に再現して乙2の説明をするため、被請求人が2023年3月23日に撮影したものが乙3である。被請求人が、要証期間中、「役務の用に供する物に標章を付したものを役務提供のために展示する行為」(商標法第2条第3項第5号)をして使用していることは明らかである。 (2)本件商標の「いけめん」と、使用商標の「池麺」は、同一の称呼、観念を生ずる社会通念上同一の商標である。ことに使用場所である東京都豊島区池袋付近では、池袋の麺という観念と「イケメン」という称呼が生じることは一層明らかである。 (3)以上のように、被請求人は、取消請求に係る指定役務について、要証期間中に、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしている。 2 審尋に対する回答書(令和5年9月15日付け) (1)商標の使用者について ア 滝野川大勝軒は、被請求人が直接営業する施設である(乙5、乙6)。営業許可証は、滝野川大勝軒の施設内の見やすい場所に掲示する義務があり(この義務は乙5自体にも明記されている。)、被請求人はこれを実施している。 また、被請求人は、滝野川大勝軒を含む、自らが直接営業する直営店を紹介するポスターを店内に貼って公知させており、その様子は、ラーメン愛好家のブログ(一例として乙7の1)で公衆に送信され、滝野川大勝軒の紹介文を含むポスターの写真(一例として乙7の2)も、このブログに含まれている。 イ なお、現在被請求人の代表取締役であるI個人は、「つけ麺生みの親」「ラーメンの神様」などと言われていたY氏が経営する「東池袋大勝軒」に弟子入りし、1995年にY氏から「大勝軒」の名をつけて独立することを、多くの弟子の中で初めて許され、北区滝野川で「滝野川大勝軒」を開業した。Iは、2003年にはさらに、池袋に「南池袋大勝軒」を開業した。 2007年3月に、健康上の理由と再開発のためY氏は自ら経営する「東池袋大勝軒」は閉店せざるを得なくなり、Y氏は、Iを、自分の後継者、二代目として指名した。そして2007年5月に、被請求人が株式会社として設立され、Y氏、Iなどがその取締役となり、Iが代表取締役となった。2008年には、被請求人は、Y氏経営の「東池袋大勝軒」近くの被請求人本店所在地に店舗を開業し「東池袋大勝軒本店」とした。 このようにIが、被請求人の代表取締役となるに伴い、I個人が経営していた「滝野川大勝軒」と「南池袋大勝軒」は、被請求人会社が直接経営する直営店となった。「滝野川大勝軒」は、建物老朽化などにより、2015年に池袋に移転した。 これにより、池袋には、被請求人が直接営業する3店の大勝軒が並立することになったが、3店は、味の違い、休業日の違いなどで、連携して多くの顧客の需要を満たすような営業をしており、これらの事実は多くの需要者が知るところとなっている(乙8)。 本件商標は、「池袋」所在の「麺店」という観念を生ずるもので、主として被請求人の直営する池袋所在の主要3店の営業活動によって生じる被請求人の名声信用を化体させる商標として用いるのに最適なものの一つである。 (2)商標の使用行為について ア 商標法第2条第3項第5号を、一時的なものを除外して解したり、「客待ちにある状態」に限定したりする、明文の根拠はなく、また、少なくとも、不使用取消審判において、そのように限定する解釈をする合理性はないので、知財高裁平成27年1月29日判決(平成25年(行ケ)10295事件裁判所裁判例検索ページ)のように「役務の提供の用に供する物」を「同役務の取引者・需要者である航空機の乗客や貨物代理店の従業者により、使用商標の表示を含め視認することが可能な状態に置かれていた」のであれば、商標法第2条第3項第5号の使用に該当すると判断すべきである。 イ 麺箱は、「業者と店舗の間で麺の受渡し」のみに使われるだけのものではない。麺箱は、店舗において、麺その他の食品を顧客に提供する前に常温保管するための道具でもある。 麺用木箱専門店が、「業務用麺箱一筋!製麺業者様、ラーメン店様、蕎麦・うどん店様御用達」などと宣伝している例(乙9)がある。これは、ラーメン店、蕎麦・うどん店などの飲食物提供業者が麺箱を購入することが多いことを示している。飲食物提供業者が麺箱を自ら購入するのは、「業者と店舗の間で麺の受渡し」のためではなく、麺その他の食品を顧客に提供する前に常温保管するためである。 ラーメン店が購入した麺箱に自ら所有する商標を表示する例は多数ある(乙10、乙11はその一例である。)。この中には、麺箱に商標を表示して「登録商標」であることを明示している例(乙11)もある。また、被請求人が麺箱に表示している「池麺」のみならず「キングコング」(商標登録第5384749号)「滝野川大勝軒」(商標登録第6073364号、商標登録第6600706号)は、いずれも被請求人が所有する登録商標である。そして、店内や店の入口などに置かれた麺箱の側面は、一般需要者が商標の表示場所として注目する場所になっている。 ハコのプロが飲食店のために麺箱を作成し、麺箱の機能構造を説明した上「使い込むほどアジが出てきてその店の歴史・物語をそのハコ自体が語ってくれている」「お客様に愛されて名店と呼ぶにふさわしい歴史を刻んだ麺箱」「お店に置いて積み重なった麺箱の姿がまた、美しい」などとブログに記載している(乙12)。店舗用品の販売業者が麺箱について「飲食店のホールには欠かせない麺箱」と宣伝している(乙13)が、麺箱に乙13に記載されているような印象を持つ需要者が多いからこそ麺箱が「飲食店のホールには欠かせない」ことになっている。需要者にこのような印象を与える麺箱の側面は、一般需要者が商標の表示場所として注目するが故に、商標を表示するのに適した場所だといえる。 それゆえ、事業者としては、麺箱を顧客に展示するために店舗に設置しようとすることが多くなっている。 (3)以上からすれば、被請求人が、その経営する「滝野川大勝軒」の入口等において、「池麺」の文字を側面に表示した「役務の用に供する物」である麺箱を設置して「展示」し、これが商標法第2条第3項第5号に該当する商標の使用行為に該当することは明白である。 3 上申書(令和6年3月8日付け) (1)東池袋1丁目の直営店「KINGKONG」などについて ア 被請求人は、2010年(平成22年)6月28日頃、東京都豊島区東池袋の地を、「店舗(業種 飲食店)」として賃借した(乙14。以下この地に存在する店舗を「東池袋1丁目店」という。)。賃貸借契約書で「造作の第三者への譲渡」「賃借権の譲渡、転貸」「名義の如何に関わらず他に使用させること」「賃借人名義以外の者の名義を表示し、又は広告すること」等は禁止されている(賃貸借契約書(乙14)第15条))。被請求人は、東池袋1丁目店の賃借当初その店名を「KINGKONG」又は主として称呼として「キングコング」とした(乙17の2、甲6の3など)。 イ 被請求人は、2008年には、被請求人本店所在地に店舗を開業し、その店名を「東池袋大勝軒本店」としていた。「東池袋大勝軒」とは、「東池袋大勝軒本店」とその被承継者を中心とする「大勝軒」に店名に有する店舗群を意味し、「KINGKONG」は、そのセカンドブランドという位置づけであることが広く知られていたことが分かる(乙17の4、乙20、乙21、甲5の1)。 ウ 被請求人代表者の師匠であり被請求人の取締役であったY(つけめんの考案者として知られている)の発案により池袋の麺店という含意のある言葉「池麺」を「KINGKONG」につけ加えて、「池麺KINGKONG」として、店の性格をより明確にする店名表示をすることもあった。 エ 即席麺業界の著名な老舗であるM社が、被請求人代表者を「池麺 KINGKONG」店主として紹介している(乙18)。この紹介文は、被請求人が伝統の味と守りつつ、店名「KINGKONG」の東池袋1丁目店が直営店ではあるが新たな味に挑戦するセカンドブランドを立ち上げ、新旧バランスのとれた企業イメージを形成しようする姿勢をもっていることをよく表しており、被請求人にとって価値ある広告となっている。 (2)麺箱 ア 被請求人は、乙1に示す形態の本件麺箱を、2010年(平成22年)頃から多数制作し現在に至るまで所有しているが、本件麺箱の形態をより詳細に述べると、本件麺箱の4つの側面は、文字列「黒地木肌色抜きのKINGKONG」と文字列「池麺KINGKONG」が2面ずつ交互に表示されており、「池麺」の文字列は本件麺箱の2面の側面に表示されている(乙15)。 イ 被請求人は、要証期間中、被請求人が直営店として経営する東池袋1丁目店の入口などの、店内の飲食客のみならず店外の潜在的飲食客が視認しうる場所に、本件麺箱を相当数、「池麺」の文字がこれらの需要者に視認しうる形で、重ね置きする等している。このような重ね置きが要証期間中にも多数回にわたりされていたことは、乙2の他、要証期間中である2021年(令和3年)3月16日に撮影しインスタグラムに投稿された写真(乙16の1[写真]及び2[写真のコメント])からも明らかである。 ウ 本件麺箱の4つの側面は、文字列「黒地木肌色抜きのKINGKONG」と文字列「池麺KINGKONG」が2面ずつ交互に表示されており、「池麺」の文字列は本件麺箱の2面の側面に表示されている(乙15)。 また、乙16の1及び2は東池袋1丁目店開店直後に本件麺箱が店内に重ね置きされている様子が写っている写真であるが、乙16の1はこれを店内から写したものであり、乙第16号証の2はこれを店外から写したものである。いずれも「池麺」の表示が需要者から視認できる形で本件麺箱が重ね置きされている。 甲8の1及び2でも、少なくとも店内の客からは「池麺」が付されていることを視認できる状態であることは明らかである。 乙16の1及び2の写真でも「池麺」の表示は店外から視認できないかもしれないが、少なくとも店内の需要者から視認できる状態であることは明らかである。 エ 麺箱は、店の看板のごとくに用いられており、専門店にあっては、その専門に属する「商品及び役務に関する」広告となるものである。本件においては、被請求人は中華料理・ラーメン専門店である。したがって麺箱の表示は、中華料理の提供の役務に関する広告となるばかりでなく、これに付随するぎょうざ、しゅうまい、べんとう、調理済み麺類、調理済みラーメン等の商品に関する広告にもなっている。 オ 以上、被請求人は、要証期間中、本件各商標と社会通念上同一又は類似する標章を、被請求人の経営する中華料理店特にラーメン店の「飲食物の提供」の役務及び被請求人が中華料理店特にラーメン店として通常販売する「ぎょうざ、しゅうまい、べんとう」等の商品に関する広告に付して展示して本件各商標を使用していることは明らかである。 (3)カップ麺 ア 2011年(平成23年)12月には、被請求人の了解のもと、包装に「池麺」の標章を付し、被請求人代表取締役の写真を付した「トロフルみそ豚骨ラーメン」のカップ麺がM社から発売され、このことはM社のニュースリリースとして、M社のwebページにおいて電磁的方法により提供された(乙18)。このカップ麺は、特段の調理を要せず、容器に入れられた商品であり、「調理済みラーメン」及び「べんとう」(類似群コード32F06)に該当するものである。また、このニュースリリースは、被請求人代表者の、調理技術及び調理監督技術、ひいては被請求人の調理技術への需要者の信頼に基づいたものである。このニュースリリース中で、被請求人代表者を「新進気鋭のラーメン店主」「ラーメン界デビュー後、すぐにラーメンフリークの間で話題を集め、人気店の仲間入りを果たした東池袋の『池麺 KINGKONG』」と記載していること、及び、ニュースリリース中で被請求人代表者を「『南池袋大勝軒』『滝野川大勝軒』の店主をつとめたのち、『東池袋大勝軒』の創業者であるY氏に後継者に指名され、新しい『東池袋大勝軒』の店主となる。『東池袋大勝軒』では伝統の味を守り、2010年8月にオープンした自身の新ブランド『池麺KINGKONG』では新たな味の創造に取り組んでいる。」と紹介していることなどは、飲食物の提供及びこれに関連する商品の販売を行っている被請求人の広告となっている。このようなニュースリリース(乙18)のインターネット公開の継続は、被請求人の役務及び商品に関する広告を内容とする情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供する行為にも該当する。 イ 一般にコンテンツのインターネット等における電磁的方法による提供については、前後の両時点において提供をしている証拠があるときは、提供はその間継続したものと推定すべきである。民法第186条第2項は、「前後の両時点において占有をしている証拠があるときは、占有はその間継続したものと推定する。」と規定しているが、この法理はコンテンツの電磁的方法による提供について類推適用されるべきである。特に、インターネットにおけるニュースリリースの公表は、削除されて再公表されるようなことは通常ないことは広く知られている。 乙18のニュースリリースは、証拠自体に記載された2011年(平成23年)11月1日頃、電磁的方法による提供がなされたこと、また、被請求人がこれを2024年(令和6年)2月7日にダウンロードして印刷したことは証拠により明らかである。明確な反証がない限り、ニュースリリース(乙18)の電磁的方法による提供は2011年(平成23年)11月1日から、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)2月7日まで継続していたというべきである。 ウ また、被請求人は「KINGKONGの閉店」後、店名を「滝野川大勝軒」とした東池袋1丁目店において、要証期間中である2022(令和4)年1月に、「KING KONG」の看板料理であった「トロフルつけめん」の「復刻」をして、需要者に提供することもあった(乙19)。乙19の写真を撮影したラーメン愛好家は、「”KINGKONG”提供麺を復刻とのこと。懐かしくも美味しくいただいてきました」「2015年に閉店された東池袋大勝軒池麺KINGKONGさん。代表メニューのひとつトロフルつけめんは当時何度もいただいたメニューでした。」などと記載している。被請求人は、ニュースリリース(乙18)に関連する役務を、要証期間中も行っていたといえる。 エ M社がこのような、被請求人の信頼に基づき、被請求人代表者の氏名、肖像を使用してそのエンドースメントを伴うニュースリリースを「池麺」の標章を付して継続的に電磁的方法により提供することは、被請求人とM社との間で、少なくとも黙示の使用許諾契約がなければできないことは明らかである。 オ 以上からすると、要証期間中に本件商標の通常使用権者であるM社が、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標の標章を付して電磁的方法により提供をする行為をしていたことになる。 (4)フェイスブック・ツイッター・アメブロ等 ア 被請求人は、2010年(平成22年)の「KINGKONG」の開店に際し、フェイスブック(乙20)、ツイッター(乙21)などにアカウントを持ち、被請求人の提供する役務及び商品を内容とする情報を投稿するとともに、これに「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供した。 この投稿は2015年(平成27年)2月末に、東池袋1丁目店の店名を「KINGKONG」から「滝野川大勝軒」に変更する等をした頃まで継続された。乙21では、2015年(平成27年)3月1日にKINGKONG閉店の挨拶が投稿されている。しかし、回答書及び上記で述べたように、東池袋1丁目店に「移転した」と言われる「滝野川大勝軒」の営業者もまた被請求人であって、同店もまた被請求人の直営店である。法律的には、被請求人の経営する東池袋1丁目店の店名を「KINGKONG」から「滝野川大勝軒」へ変更した「店名の変更」である。 乙20及び乙21に示されるフェイスブック、ツイッター等のアカウントと投稿記事は、上記のような「店名の変更」後も閲覧可能で、少なくとも被請求人が上記をダウンロードして出力をした2024年(令和6年)まで閲覧可能である。 イ フェイスブックやツイッターなど、投稿の削除が表現の自由の侵害を起こしかねないものは、第三者の権利侵害、公共の利益の侵害などの理由がない限り削除されるようなことはまずなく、削除されたものが再公表されることもまずないといえる。また、乙20及び乙21について投稿者たる被請求人が削除するなどして公開を停止したことはない。明確な反証がない限り、フェイスブック、ツイッター等の投稿(乙20、乙21)の電磁的方法による提供は、2010年(平成22年)ないし2015年(平成27年)頃から、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)まで、継続していたというべきである。 ウ 被請求人は、フェイスブック、ツイッター等の投稿(乙20、乙21)に関する商品又は役務を、要証期間中も行っていたといえる(乙19)。 エ 請求人はアメブロ(ameblo)における「池麺キングコングのブログ」と題するブログへの被請求人の投稿を甲5の1ないし3として提出している。これについても上記乙20及び乙21と同様のことがいえる。明確な反証がない限り、被請求人の役務又は商品に関するアメブロの投稿の電磁的方法による提供は、2010年(平成22年)ないし2015年(平成27年)ころから、要証期間を経て、少なくとも2024年(令和6年)まで、継続していたというべきである。 オ 以上からすると、要証期間中に、被請求人は、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標の標章を付して電磁的方法により提供をする行為をしていたことになる。 (5)結合商標 「池麺KINGKONG」も「池麺 KINGKONG」も、特定の普遍的意味を固定することが困難な漢字2文字と、外国映画等で有名な動物名と同一のアルファベット8文字は、「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもの」ではなく、また、「池麺」の部分は、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える」ものである。 このような場合には「池麺KINGKONG」及び「池麺 KINGKONG」においても「池麺」の分離観察が許されるというべきである。 特に、(i)「池麺」と「KINGKONG」の間に空白がある表示及び(ii)本件麺箱の側面に見られる、「池麺」と「KINGKONG」の間に空白があり、「池麺」「KING」「KONG」の字体が異なる表示においては、「池麺」の分離観察が許されることは一層明白である。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 (1)被請求人である商標権者は、平成27年に、東京都豊島区東池袋において「滝野川大勝軒」を名称とする飲食店(以下「本件店舗」という。)の営業許可申請を行い、また、同店舗について、令和4年3月11日から同11年3月31日まで営業許可を受けている(乙5、乙6)。 (2)乙15は、商標権者が制作し所有する麺箱の写真とするものであるところ、当該麺箱(以下「本件麺箱」という。)には、四隅の上部に黒い金具が施され、一方の側面に、別掲のとおり、「池麺」の文字(以下「本件使用商標」という。)と「KINGKONG」の文字とを、やや空白を設けて「池麺 KINGKONG」と横書きした表示が付され、他の側面に、黒塗りの長方形内に白抜きで「KINGKONG」の文字を横書きした表示が付されている。 (3)乙2は、2021年12月にインターネットの飲食店紹介サイトに登録された写真とするものであるところ、当該写真には、本件店舗の外観が写っており、店舗内には、上部に黒い金具が施され、側面に文字とおぼしき表示が付された麺箱が数個積み上げられており、これらの麺箱の金具や表示の位置や特徴は、本件麺箱のそれと一致する。 (4)乙16は、2021年3月16日にSNSに投稿された写真及びコメントとするものであるところ、このうちの写真には、本件店舗の外観が写っており、店舗内に、上部に黒い金具が施され、側面に黒地に白抜きの文字が付された麺箱が数個積み上げられており、これらの麺箱の金具や文字の位置や特徴は、本件麺箱のそれと一致する。また、同写真には、本件店舗の入口付近に「もりそば」及び「ラーメン」と表示された料理のポスターが掲示されている様子が写っており、さらに、コメントには「本日は大勝軒のつけ麺を食べてきました!」の記載がある。 2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用者について 上記1(1)、(3)及び(4)によれば、商標権者は、店舗内に本件使用商標が付された麺箱が積まれていた本件店舗(滝野川大勝軒)について営業許可申請を行い、営業を許可されていることから、これらの商標権者の業務に係る店舗であることがうかがえる。 そして、上記営業許可申請を行ったのが平成27年であり、営業を許可されている期間が令和4年3月から同11年3月であることに鑑みれば、要証期間を含むこれらの間の期間を通して、本件使用商標の使用者は、商標権者であると推認できる。 (2)使用時期について 上記1(2)ないし(4)によれば、2021年3月頃及び同年12月頃に、本件麺箱と同様の、本件使用商標が付された麺箱が本件店舗内に積まれていたと推認することができ、これらの時期はいずれも要証期間内である。 (3)使用役務について 上記1(1)及び(4)によれば、商標権者の経営する本件店舗は、飲食店として営業許可を受けており、本件店舗において、実際にもりそばやラーメン、つけ麺等の飲食物の提供が行われていることがうかがえる。 そうすると、商標権者は本件店舗において「飲食物の提供」の役務を行っているとみるのが相当であり、当該役務は、請求に係る役務である第43類「うどんその他の飲食物の提供」の範ちゅうの役務である。 (4)使用行為について 麺箱は、ラーメンの麺の接受等に使用されるものであり、使用役務である「飲食物の提供」との関係においては、役務の提供の用に供する物に該当するといえる。 そして、上記1(2)ないし(4)によれば、本件使用商標が付された麺箱が、取引者である製麺業者や需要者である顧客から見える状態で本件店舗内に積まれていたと推認できる。 (5)使用商標について ア 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり「いけめん」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、「若い男性の顔かたちがすぐれていること。」(広辞苑第七版 岩波書店)を意味する「いけ面」と同じ表音を有するものであって、該語が片仮名で表記される場合が多い(前掲書)としても、本件商標が、「いけ面」の語を連想させる場合も少なくないとみるのが相当である。 イ 本件麺箱に係る使用について (ア)本件麺箱に付された別掲の表示は、上記(1)アのとおり「池麺 KINGKONG」の文字を横書きしてなるところ、構成中の「池麺」と「KINGKONG」の文字は間隔を設けて表されていることに加え、「池麺」は筆文字風に表された漢字であるのに対し、「KINGKONG」はゴシック体で表された欧文字であって、文字種及び書体において明らかに異なるものである。そして、「池麺」の文字は一般の辞書類に記載がなく、特定の意味を有しない造語と認識されるのに対し、「KINGKONG」は「アメリカ映画の題名」(広辞苑第七版 株式会社岩波書店)等を意味する語であって、これらに特段の観念的な結びつきも見いだせない。そうすると、「池麺」及び「KINGKONG」の文字は、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど一体不可分に結合しているとはいえないから、両文字はそれぞれ自他役務識別標識として機能しているとみるべきである。 そして、上記の表示中の「池麺」の文字(本件使用商標)は、その構成文字に相応して「イケメン」の称呼が生じ得る。 ウ 本件商標と本件使用商標の比較 本件商標と本件使用商標とを比較してみるに、両者はその構成文字からいずれも「イケメン」の称呼が生じるとしても、本件商標からは上記アのとおり「若い男性の顔かたちがすぐれていること。」の観念が生じ得るのに対し、本件使用商標は特定の意味合いを理解させるとはいえない造語であることからすれば、これらが同一の観念が生じるということはできない。 よって、本件使用商標は、本件商標とは相違するものであって、本件商標と社会通念上同一の商標であると認めることはできない。 (6)小括 上記(1)ないし(5)によれば、商標権者は、要証期間内に、請求に係る役務である「飲食物の提供」を行うに当たり、役務の提供の用に供する物に本件使用商標を付したものを役務の提供のために展示する行為をしたといえるが、本件使用商標は、本件使用商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。 したがって、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人は、本件商標の使用をしていることを証明したということはできない。 3 被請求人の主張について (1)被請求人は、「いけめん」と「池麺」は、「池袋の麺」という同一の観念と「イケメン」の同一の称呼を生じる、社会通念上同一の商標である旨主張する。 しかしながら、本件商標と本件使用商標とは、ともに「イケメン」の称呼を生じるとしても、上記2(5)のとおり、「いけめん」の文字は「若い男性の顔かたちがすぐれていること。」を意味する「いけ面」の語を想起させ得るものであり、「池麺」の文字は一般の辞書類に記載されているものではないから、これらがそれぞれ「池袋の麺」の観念を生じるものとして一般に知られているものとはいい難く、かつ、そのことを客観的に裏付ける証拠の提出もない。 (2)被請求人は、2011年12月に、包装に「池麺」の標章を付し、被請求人(本件商標権者)代表取締役の写真を付したカップ麺がM社から発売され、そのニュースリリースが、M社のwebページにおいて電磁的方法により提供された(乙18)ことが、本件商標権者の商品に関する広告を内容とする情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供する行為に該当する旨、及び、2010年の「KINGKONG」の店舗開店の際に、フェイスブックやツイッター等にアカウントを持ち、請求人の提供する役務及び商品を内容とする投稿情報に「池麺」の標章を付して電磁的方法により提供し(乙20、乙21)、これらの情報は当該店舗が「滝野川大勝軒」に「店名の変更」をした後まで閲覧可能であったことから、被請求人は、要証期間に、本件商標の商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供をしていた旨主張する。 しかしながら、これらの情報において使用されている「池麺」の文字は、上記2(5)と同様に、本件商標と社会通念上同一の商標とは認められないものである。 (3)したがって、被請求人の上記の主張はいずれも採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る役務について、本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。 また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定役務について、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、その指定役務中、「結論掲記の指定役務」について、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-300003

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