商標取消審判
2022-300792
エスイーエス、エスイイエス、セス
- 審判番号
- 2022-300792
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2006-055784
- 登録番号
- 5038404
- 請求日
- 2022年08月25日
- 審決日
- 2023年12月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソリッドエナジー システムズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
- 【請求人代理人】中田 和博
- 【請求人代理人】青木 博通
- 【被請求人】住友化学 株式会社
- 【被請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【被請求人代理人】黒川 朋也
- 【被請求人代理人】魚路 将央
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T132 .1 -Y (Y010203)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第70条第1項、商標法第50条第1項、商標法第72条、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5038404号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5038404号商標(以下「本件商標」という。)は、「SES」の欧文字及び「エスイーエス」の片仮名を二段に表してなり、平成18年6月15日に登録出願、第1類ないし第3類、第5類、第7類、第9類、第10類、第21類及び第37類に属する別掲に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同19年4月6日に設定登録され、同29年1月31日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年9月12日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和元年9月12日から同4年9月11日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第1類「化学品」、第2類「着色料及び腐食防止剤,カナダバルサム,壁紙剥離剤,コパール,サンダラック,セラック,松根油,ダンマール,媒染剤,マスチック,松脂,木材保存剤」、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤」(以下「請求に係る商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)答弁書提出期間
答弁書は法定期間内に提出されていないので、却下されるべきである。
(2)使用者について
本件商標の権利者が本件商標を使用していないことは、被請求人も認めるところである。
商標権者が使用していない場合には、専用使用権者又は通常使用権者の使用が必要である。
本件商標には専用使用権者の設定登録がないので、通常使用権者が使用しているかどうかが問題となる。
被請求人は、住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社(以下「住化エンバイロ社」という。)が通常使用権者であると主張するが、そのことを示す証拠を何ら提出していない。
使用許諾契約書があるのであれば、商標法72条1項による閲覧制限を請求すれば足りることである。これが提出できないのでは、法的に認められた使用権者が使用していることを立証したことにならないので、本件商標の登録は取り消されるべきである。
(3)本件商標の使用
ア 乙第5号証の1ないし3の使用について
被請求人の提出した証拠(乙5)には、成分として「発酵促進剤、シフェノトリン(殺虫剤)、消臭剤、香料」の表示が羅列されているのみであり、何の商品に使用されているのかが不明である。所轄官庁に対しての届出書があるはずなので、使用商品を明確にするためにその届出書を提出されたい。
また、登録商標は、「SES」と「エスイーエス」の二段からなる商標で、要部は、「SES」と「エスイーエス」の2つにあるにも関わらず、「タイヒパウダー」の脇に使用されているのは、「SES」のみであるから、商品の出所標識としての同一性がないことは明らかである。
図案化された「SES」は、2本の青色のラインからなり、「S」、「E」、「S」が連続しており、本件商標と商品の出所標識として同一性がないことは明らかである。
また、図案化された「SES」は、商号及び住所と一緒に使用されており、商号の略称としてみられるのみであり、指定商品の出所を表示する態様(商標的使用)に該当しないことは明らかである。
以上述べたように、商標の使用されている商品が不明であり、また、登録商標と使用商標の同一性も認められず、図案化された「SES」は商標として使用されていないので、本件商標は取り消されるべきである。
イ 乙第11号証の1ないし3
乙第11号証の1ないし3には、「エバーウッド(R)乳剤2040」と表示されており、「エバーウッド」(登録第837403号)が第5類「薬剤(乳剤)」について使用していることを示している。上記登録商標は、「防カビ剤」はカバーしていないので、「木部用防腐防カビ剤」の表示があるものの、本件商標および上記登録商標も使用されていないことになる。
乙第11号証の1ないし3に使用されている図案化された「SES」は、2本の青色のラインからなり、「S」、「E」、「S」が連続しており、本件商標「SES/エスイーエス」と商品の出所標識として同一性がないことは明らかである。
また、図案化された「SES」は、商号及び住所と一緒に使用されており、商号の略称としてみられるのみであり、指定商品の出所を表示する態様(商標的使用)に該当しないことは明らかである。
以上述べたように、乙第11号証の1ないし3によると、使用されている商標は、「エバーウッド」であり、使用されている商品は、「薬剤(乳剤)」である。また、本件商標と同一の商標は使用されておらず、図案化された「SES」は商標として使用されていない。よって、本件商標は取り消されるべきである。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び令和5年6月27日付け審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。なお、以下枝番号を全て含む場合は、枝番号を省略する。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)使用者について
本件商標の使用者は、本件商標の権利者である住友化学株式会社の100%子会社である、住化エンバイロ社である(乙1)。
商標法は、通常使用権の許諾について商標登録原簿への登録を効力発生要件としておらず、商標登録原簿への登録をしないまま、親会社が100%子会社に対して、通常使用権の許諾契約をすることはなんら不自然なことではない(乙2~乙4)。
いずれにしても、住化エンバイロ社が、本件商標の通常使用権者としての地位を有することは明らかである。
(2)商品の写真(乙5)
ア 使用商品と審判請求に係る指定商品の認定
乙第5号証は、住化エンバイロ社が製造・販売する、生ごみの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止用の専用剤である。包装パッケージにおいて、「タイヒパウダー「SES」は、生ゴミ処理(たい肥製造)用に開発されたもので、生ゴミの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止に効果があります。」と書かれていることからもこの点が確認できる。
「生ごみ発酵促進剤」は、特許庁において、第1類の類似群コード「01A01」に分類される商品として認定されているものであり(乙6)、「生ごみ発酵促進剤」は、化学品といい得るものである(乙7)。したがって、これはまさに、本件審判請求に係る指定商品中の「化学品」についての使用といえる。
イ 本件商標の使用
まず、乙第5号証の1及び2において、「タイヒパウダー」という片仮名文字に続き、「SES」と表示されている。
また、製品説明の本文中にも、「タイヒパウダー「SES」は、生ゴミ処理(たい肥製造)用に開発されたもので、生ゴミの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止に効果があります。」と書かれているなど、「SES」部分が、括弧でくくられ、他の言葉とは明確に区別した態様で使用されている。
この使用商標は、本件商標とは外親において若千異なる点があるため、念のため、この使用商標が、いわゆる社会通念上同一と認められる商標である点につき、以下述べる。
まず、本件商標が、アルファベットの「SES」と片仮名「エスイーエス」が二段に書された態様であるのに対して、この使用商標はアルファベット文字のみである点で異なる。しかしながら、不使用取消審判に関する審判便覧53-01において(乙8)、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」については、社会通念上同一と認められる商標と例示されている。
そこで本件商標について検討すると、アルファベットの「SES」は、文字どおり、アルファベットの「SES」であるとの観念以外は生じないものである。そして、片仮名の「エスイーエス」についても、アルファベット文字の「SES」以外の観念は生じ得ない。すなわち、上段に位置するアルファベット文字の「SES」と下段に配される片仮名文字の「エスイーエス」とは、互いに同一の観念を有していることから、その一方の使用については、社会通念上同一といえるものである。
以上のとおり、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められるものであり、本件審判の対象商品について、本件商標が使用されていることがわかる。
ウ 要証期間内における使用
乙第5号証は、本件商標の要証期間以降に、被請求人によって撮影されたものであるため、ここに撮影された使用商標が、要証期間内に既に存在していたことを以下立証する。
(ア)製品ロット番号
まず、乙第5号証の4のとおり、製品底部には、数字及びアルファベット(20901F0)が印字されている。
使用者である住化エンバイロ社は、製品のトレーサビリティを確立するため、一定のルールに基づき、製造商品にロット番号を付与している。ここに乙第9号証として、2019年1月7日付改訂のロット番号付要領を資料として提出する。
乙第9号証のとおり、製品のロット番号は、7桁で表示されており、最初の2桁は製造年を西暦の末尾2桁で示したものである。すなわち、乙第5号証の4における最初の「20」という数字は、2020年に製造された商品であることを示している。
次の数字は、製造月を表す。乙第5号証の4における左から3番目の「9」という数字は、9月に製造された商品であることを示している。
以上により、乙第5号証の製品は、2020年9月に製造された商品であることが確認できる。これにより、要証期間内に製造された商品であることが証明されたといえる。
(イ)顧客からの発注書及び売り上げ明細書について(乙10の1、乙10の2)
また、要証期間内に、タイヒパウダー「SES」が実際に販売されていたことを証明する資料として、顧客からの発注書写しと、それに対する売り上げ明細書についても提出する。
乙第10号証の1によれば、要証期間内である2022年7月27日に、「タイヒパウダー「SES」500g」について、30本の発注があったことが確認できる。
それを受けて、住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社は当該顧客に向けて、2022年7月28日に、「タイヒパウダー「SES」500g」を30本出荷したことが売り上げ明細書にて記録されている(乙10の2)。
エ 小括
以上のとおり、「化学品」である、タイヒパウダー「SES」は、要証期間内である2020年9月には既に製造されており、また、2022年7月には、実際に顧客に販売されていたことも証明されている。
(3)別の商品の写真(乙11)
ア 使用商品と審判請求に係る指定商品の認定
乙第11号証は、住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社が製造・販売する「防カビ剤」であり、包装パッケージにおいて(乙11の1)、「木部用防腐防カビ剤」と書かれていることからもこの点が確認できる。
「防カビ剤」は、特許庁において、第1類の類似群コード「01A01」に分類される商品として認定されているものであり(乙12)、これは、化学品といい得るものである(乙7)。したがって、これはまさに、本件審判請求に係る指定商品中の「化学品」についての使用といえる。
イ 本件商標の使用
まず、乙第11号証の1の下部において、「SES」という英文字と、製造・販売者の名称である「住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社」が表示されている。かかる使用は、乙第11号証の1の製品である「エバーウッド乳剤」の出所を表すものとしての商標の使用である。
この使用商標は、本件商標とは外観において、若干異なる点があるため、この使用商標が、いわゆる社会通念上同一と認められる商標である点につき、以下述べる。
まず、本件商標が、アルファベット文字の「SES」と片仮名「エスイーエス」が二段に書された態様であるのに対して、この使用商標はアルファベット文字のみである点で異なる。しかしながら、上述のとおり、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」については、社会通念上同一と認められており、アルファベット文字「SES」の使用は、社会通念上同一といえる。
次に、本件商標は、黒字のゴシック体の「SES」であるところ、乙第11号証の1における使用態様は、青色の斜体といい得る点に差異があるとも言える。
もっとも、商標法第70条第1項に規定されているとおり、「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとされているため、色彩の違いが問題となることはない。
また、審判便覧53-01において(乙8)、「(ア)書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標」については、登録商標の使用と認められる事例として挙げられており、乙第11号証の1における使用態様は、本件商標と社会通念上同一と認められるものである。
ウ 要証期間内における使用
乙第9号証のとおり、住化エンバイロ社の製品は、製造番号によって、その製造時期が確認できる。
乙第11号証の1は、製造番号として22403E0と印字されているが、乙9のとおり、「22」は、2022年に製造された商品であることを、その次の数字である「4」は、4月に製造されたことを表しており、乙第11号証の1は、2022年4月に製造された商品であることを示している。
エ 小括
以上のとおり、「化学品」である、エバーウッド乳剤は、要証期間内である、2022年4月には既に製造されていたことが証明されている。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標が、要証期間内において、審判請求に係る指定商品「化学品」について使用されていることは明らかである。
2 令和5年7月25日差出の回答書における主張
(1)要証期間に、住化エンバイロ社が本件商標の通常使用権者であったことについて
ア 審判事件答弁書で述べたとおり、請求人は、住化エンバイロ社との間で本件商標にかかる使用許諾契約書を締結しているため、その写しを新たな証拠として提出する(乙13)。
乙第13号証の1は、2015年9月7日付で締結された、被請求人と住化エンバイロ社による商標使用許諾契約書の写しであり、付表1に本件商標が記載されている。その後、被請求人と住化エンバイロ社は、2018年1月18日及び20222年4月1日付で、上記使用許諾契約書の変更契約を締結している(乙13の2、乙13の3)。
乙第13号証の1及び乙第13号証の2は、要証期間外に締結された契約書あるいは覚書であるが、その契約内容は要証期間においても有効であり、契約締結日が要証期間外であることをもって否定されるものではない。
また、要証期間内に締結された乙第13号証の3は、乙第13号証の2の付表1に許諾対象商標を追加するものであるから、元々付表1に含まれていた本件商標については、要証期間内においても使用許諾契約の対象商標であったことは明確である。
イ 以上のとおり、要証期間内における使用許諾契約書及びそれに係る変更覚書が存在することによって、住化エンバイロ社が本件商標の通常使用権者であったことは証明されたものと考える。
(2)審判弁駁書に対する意見
ア 答弁書提出期間について
請求人は、被請求人の答弁書が法定期間内に提出されていないため、却下されるべきである旨主張している。しかしながら、被請求人は、令和4年10月13日付で答弁書の提出期限の猶予を求める上申書を提出し、それに対して、令和4年10月25日付で通知書が発行され、答弁書提出期限については、職権で延長されている。したがって、請求人の主張は当を得たものではない。
イ 乙第5号証
請求人は、乙第5号証に関して、「成分として「発酵促進剤、シフェノトリン(殺虫剤)、消臭剤、香料」の表示が羅列されているのみであり、何の商品に使用されているのかが不明である。」旨主張している。
既に被請求人が答弁書で申し述べており、また、乙第5号証において容易に確認できるが、包装パッケージ中の成分表示の上部には、「タイヒパウダー「SES」は、生ゴミ処理(たい肥製造)用に開発されたもので、生ゴミの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止に効果があります。」との記載がある。一般的な知識を有する取引者及び需要者であれば、この記載によって、本製品が「生ごみの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止用の専用剤」であることは容易に理解し得るものであり、むしろ成分表示より目立つ位置、大きさで記載されているので、乙第5号証は、成分の表示が羅列されているのみとの請求人による主張は失当である。請求人は、このような極めて分かりやすい記載を無いものとして、不必要に商品を明確にするための届出書の提出を要求しているが、まずは乙第5号証のパッケージの記載内容を客観的に確認されたい。
次に、請求人は、本件商標が「SES」と「エスイーエス」の二段からなる商標であるのに対して、「タイヒパウダー」において使用されているのは「SES」のみであるから、同一性がない旨主張している。
既に答弁書で説明したとおり、不使用取消審判に関する審判便覧53-01において(乙8)、「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」については、社会通念上同一と認められる商標と例示されている。
本件商標においては、アルファベットの「SES」は、文字どおり、アルファベットの「SES」であるとの観念以外は生じないものであるし、そして、片仮名の「エスイーエス」についても、アルファベットの「SES」以外の観念は生じ得ない。すなわち、上段に位置するアルファベットの「SES」と下段に配される片仮名の「エスイーエス」とは、互いに同一の観念を有していることから、その一方の使用については、社会通念上同一といえるものであり、請求人の主張は失当である。
また、請求人は、図案化された「SES」は、商号である「住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社」と住所と一緒に使用されており、商号の略称としてみられるのみであり、商標的な使用に該当しない旨主張している。
しかしながら、商号及び住所と一緒に使用されたから商標的な使用ではないとの主張は全く論理的ではないし、むしろ、図案化された態様であれば、商標的な使用態様として把握されるのが自然であるから、請求人の主張が認められる余地はない。
ウ 乙第11号証について
乙第11号証について、請求人は、住化エンバイロ社が所有する登録第837403号の指定商品には、「防カビ剤」が含まれておらず、指定商品が「薬剤」であることから、それを根拠として、「エバーウッド」が「薬剤」に属する商品である旨反論しているものと推認される。
本件で判断されるべきは、乙第11号証から客観的に理解されるものであり、本件の判断において、本件とは直接的に関係がない、登録第837403号の指定商品を考慮に入れる必要性はない。乙第11号証からすれば、「エバーウッド乳剤」が防カビ剤であることは明白であり、「防カビ剤」は、化学品といい得るものであることは、被請求人の答弁書において既に述べたとおりである。請求人は、「防カビ剤」である「エバーウッド乳剤」が、なぜ「薬剤」として把握すべきなのかについて何ら合理的な主張をしておらず、請求人の主張は失当である。
また、請求人は、「図案化された「SES」は、2本の青色ラインからなり、「S」、「E」、「S」が連続しており、本件商標「SES/エスイーエス」と商品の出所標識として同一性がない」旨主張している。
この点についても、既に答弁書にて述べたとおり、審判便覧53-01において(乙8)、「(ア)書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標」については、登録商標の使用と認められる事例として挙げられており、また、商標法第70条第1項に規定されているとおり、「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとされているため、色彩の違いが問題となることはない。そして、上述のとおり、登録商標が二段併記の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用については、社会通念上同一と認められているので、乙第11号証の1における使用態様は、本件商標と社会通念上同一と認められるものであって、請求人の主張が認められる余地はない。
さらに、請求人は、図案化された「SES」が、商号及び住所と一緒に使用されており、商号の略称としてみられるのみであり、商標的な使用に該当しない旨主張しているが、前述のとおり、商号及び住所と一緒に使用されたから商標的な使用ではないとの主張は全く論理的ではなく、むしろ、図案化された態様であれば、商標的な使用態様として把握されるのが自然であるので、請求人の主張は失当である。
エ 小括
以上のとおり、請求人の主張は合理性がなく、また、その主張を裏付ける根拠となるものも何ら提出もされていないから、その主張が認められる余地はない。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標の使用許諾に係る契約について
被請求人である本件商標権者は住化エンバイロ社に対し、2015年9月7日付けの商標使用許諾契約書(乙13の1)により、本件商標をその指定商品について使用することに関する通常使用権を許諾している。
上記契約書においては、通常使用権の許諾の対象は、契約書の付表1に記載の商標(本件商標を含む。)である旨、及び本件商標権者は住化エンバイロ社から当該商標権の更新の意思表明を受けた場合は更新手続きをするが、意思表明を受け取らなかった場合は更新手続きを行わず、当該商標が付表1から除かれる旨が記載されている。
その後、2018年1月18日付け及び2022年4月1日付けで、上記付表1の内容を変更する覚書(乙13の2、乙13の3)が締結されたが、これらの覚書によっても、本件商標が付表1に含まれる(使用許諾の対象である)ことについて変更はない。
(2)本件使用商品について
ア 被請求人が、生ごみの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止用の専用剤と主張する商品(以下「本件使用商品」という。)の縦長円柱状の容器の正面写真(乙5の1、乙5の2)には、上方に、「タイヒパウダー」の文字と、かぎ括弧でくくられた「SES」の文字(以下「使用商標1」という。)とを一連に、「タイヒパウダー「SES」」と横書きした表示があり、その下に「タイヒパウダー「SES」は生ゴミ処理(たい肥製造)用に開発されたもので、生ゴミの発酵促進・消臭及び不快害虫の発生防止に効果があります。」との商品説明があり、下方には、図案化した「SES」の文字(別掲のとおり。以下「使用商標2」という。)とともに、「住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社」の表示がある。
イ 本件使用商品の容器の底面写真(乙5の4)には、住化エンバイロ社の作成に係る「ロット番号付番要領」(乙9)によれば、2020年9月に製造されたことを示す「20901F0」の表示がある。
ウ 2022年7月27日付けの住化エンバイロ社宛ての発注書(乙10の1)の表には、「タイヒパウダー「SES」500g」を30本発注する旨の記載があり、表の下方には「1001759547」及び「7/28出荷手配いたしました」との記載がある。
エ 住化エンバイロ社が発行した、請求締切日を2022年7月31日とする売上出荷明細書(乙10の2)の表の2番目の項目には、伝票No.の欄に、上記ウの発注書の記載と同一の「1001759547」の数字の記載があり、品名の欄には「タイヒパウダー「SES」500g」の記載がある。
2 判断
上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
本件商標権者と住化エンバイロ社は、2015年9月7日から、本件商標をその指定商品について使用することを内容とする商標使用許諾契約を締結しており、その契約内容から、本件商標の商標権が更新されなければ当該契約の対象外となるとみられるが、本件商標が平成29年1月31日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続していることに加え、2022年4月1日時点でも、本件商標が当該契約の対象であったことからすれば、本件商標についての当該契約が、要証期間において継続していたことを疑うべき合理的な理由はない。
そうすると、住化エンバイロ社は、要証期間において、本件商標に係る本件使用商品についての通常使用権者であったと認められる。
(2)本件商標と使用商標の同一性について
ア 本件商標と使用商標1の同一性について
本件商標は、上記第1のとおり、「SES」の文字と「エスイーエス」の文字を二段に横書きしてなるものである。
他方、使用商標1は、上記1(2)アのとおり、本件使用商品の容器に「タイヒパウダー「SES」」の文字を横書きした態様で表示されているところ、このうち「SES」の文字部分(使用商標1)は、かぎ括弧(「」)で強調されて表示されていることからすると、これに接する需要者は、使用商標1をもって、本件使用商品の出所識別標識と認識するというべきである。
そうすると、使用商標1は、本件商標の欧文字部分とつづりを共通にするものであり、これは、本件商標が二段併記の構成からなる場合であって上段及び下段の各部が観念を同一とするときの一方の使用であるから、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
イ 本件商標と使用商標2の同一性について
本件商標は、上記第1のとおり、「SES」の文字と「エスイーエス」の文字を二段に横書きしてなるものである。
他方、使用商標2は、別掲のとおり「SES」の文字を図案化して表したものであるところ、これは、本件商標の欧文字部分の「SES」とつづりを共通にするものであることから、本件商標が二段併記の構成からなる場合であって上段及び下段の各部が観念を同一とするときの一方の使用であり、かつ、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標の使用であるから、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商品について
本件使用商品は、その容器に記載された商品説明から、「生ごみ発酵促進剤」と認められるものであり、これは、請求に係る商品中、第1類「化学品」に含まれるものである。
(4)使用時期及び使用行為について
上記1(2)イによれば、通常使用権者は、要証期間である2020年(令和2年)9月に、本件使用商品に使用商標1及び使用商標2を付したものといえる。
また、上記1(2)ウ及びエによれば、通常使用権者は、要証期間である2022年(令和4年)7月末頃に、本件使用商品を譲渡したものといえる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標権者の通常使用権者である住化エンバイロ社は、要証期間に、請求に係る商品中の第1類「化学品」の範ちゅうに含まれる商品「生ごみ発酵促進剤」と認められる本件使用商品に、本件商標と社会通念上同一の使用商標1及び使用商標2を付したものと認められ、これは、商標法第2条第3項第1号にいう「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
また、住化エンバイロ社は、要証期間に、本件使用商品を譲渡したものと認められ、これは、商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡又は引き渡す行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の通常使用権者が、その請求に係る指定商品に含まれる商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-300792