商標取消審判
2022-300396
ミカネ、オカネ
- 審判番号
- 2022-300396
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2018-030500
- 登録番号
- 6104029
- 請求日
- 2022年04月26日
- 審決日
- 2024年03月08日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】御金神社
- 【請求人代理人】向井 裕美
- 【被請求人】長澤 征治
- 【被請求人代理人】小山 義之
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 大森 友子
- 審判官 板谷 玲子
- 分類
- T131 .1 -Z (W3033) / T131 .11 -Z (W3033)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第50条第3項、商標法第2条第3項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6104029号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6104029号商標の商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6104029号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成30年2月28日に登録出願、第30類「
茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,甘酒,甘酒のもと,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年12月7日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和4年5月18日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和元年(2019年)5月18日ないし同4年(2022年)5月17日である(以下「要証期間」という場合がある。)。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品(以下「請求に係る商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)駆け込み使用について
被請求人が主張する株式会社FLOW VERY(以下「FLOW VERY」という。)が熊野酒造有限会社に清酒の製造委託を発注した日及び納品があったとされる日のうち、発注日を2021年12月2日とし納品日を同月8日とするもの及び発注日を2022年1月14日とし、納品日を同月16日とするものについては、被請求人の主張のみであって、何ら証明がされていない。
また、発注日を2022年6月27日とし、納品日を同月28日とするもの及び発注日を同年8月8日とし、納品日を同月11日とするものについても、被請求人の主張のみであって、何ら証明がされていないことに加え、本件審判の請求の登録日よりも後の日付であり、商標法第50条第1項に規定する使用に該当しないことが明らかである。
ここで、被請求人は、発注日及び納品日を2022年5月17日とするものについては、本件審判請求の登録日より前であると主張する。
しかし、請求人は本件商標権者に対し、令和4年(2022年)3月29日付け内容証明郵便にて、本件審判請求をする旨を通知しており、被請求人はこの内容証明郵便を同月30日に受領している(甲2)。
したがって、当該受領の時点から本件商標権者は本件商標につき不使用取消審判の請求がされることを知っており、発注日及び納品日を2022年5月17日とするものについては、本件審判の請求前3月から本件審判請求の予告登録日までの間で、かつ本件商標権者が本件審判の請求がされることを知った後の使用であることから、商標法第50条第3項の規定に該当し、商標法第50条第1項に規定する本件商標の使用に該当しない。
以上から、被請求人は商標法第50条第1項に規定する使用を何ら証明しておらず、本件商標の使用についての被請求人の主張は認められない。
(2)乙第1号証による証明について
本件商標と乙第1号証に表された商標とは社会通念上同一とは認められない。
ア 乙第1号証の写真には、清酒の酒瓶及びこの酒瓶を収める黒色の包装用箱が撮像されている。清酒の酒瓶の表面には、酒瓶の下半分を覆うようにラベルが貼付されており、このラベルは、赤色に金色の細かな粒が散りばめられた背景素材の中に「御金」の文字が金色に黒色の縁取りをして表示されている。また、包装用箱の表面にも上述した同一のラベルが貼付されている。この酒瓶の背面の下部には成分表が貼付されており、この成分表の上部に「大吟醸 御金 MIKANE」の文字が黒色で表示されている。
この使用態様に鑑みると、乙第1号証において、需要者・取引者の目を引き、自他商品識別力を備える商標として認識される部分は、酒瓶の表面及び包装用箱に貼付されたラベルに記載された「御金」の文字である。
そして、本件商標は同一の称呼「ミカネ」を有する文字である漢字「御金」(上部に「みかね」の振り仮名が付されている。)、片仮名「ミカネ」、平仮名「みかね」及びアルファベット「MIKANE」を4段表記したものであり、乙第1号証に表示された「御金」は、その一部の文字を抜き出したうえふりがなも付していない商標であるため、本件商標と乙第1号証に表示された商標とは、直ちに社会通念上同一と認められるものではない(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10107号、甲3)。
イ 加えて、乙第1号証に表示された商標「御金」は、「オカネ」と称呼するのが通常であるのに対し(甲4)、本件商標は「ミカネ」と称呼するものである(漢字部分には、あえて「みかね」と振り仮名が付されている)。「御金」を「ミカネ」と称呼するのは、請求人たる御金神社(ミカネジンジャ)の名称の一部である「御金」以外には、一般的に見当たらない。
また「御金」は「金」という名詞の接頭に「御」をつけて「金」という言葉を丁寧に表現したものであるため、「御金」からは「金」に関する観念、つまり「(1)金属の総称。金・銀・鉄・銅など。また、金属製品。金具。(2)貨幣としての黄金など。金銭。」(甲5)という観念が生じる。
これに対し、本件商標は、「御金」、「ミカネ」、「みかね」及び「MIKANE」の文字を4段に書してなるものであって、そこからは特定の観念が生じないか、あるいは、請求人の名称の一部である「御金」を表示するものであり、また「ミカネ」の称呼から、あたかも請求人を想起させるような観念が生じる(甲6)。
したがって、本件商標と乙第1号証に表示された商標とは、称呼及び観念が異なり、社会通念上同一とは認められない。
ウ 以上から、被請求人が本件商標の使用の証拠として提出した乙第1号証に表示される商標は、本件商標と社会通念上同一のものではなく、被請求人は本件商標をその指定商品について使用していたことを証明していない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 本件商標の使用状況
本件商標権者及び通常使用権者であるFLOW VERYは、本件商標をその指定商品「清酒」について使用し、現在使用中である(乙1)。
当該清酒は、FLOW VERYが、京都府京丹後市の熊野酒造有限会社に対し、OEM生産を委託し、販売する商品である。
本件商標権者及びFLOW VERYは、熊野酒造有限会社に対して、商標「御金」及び「MIKANE」を付した商品「清酒」をOEMで発注し、その商品を熊野酒造有限会社が、FLOW VERYに対し納品した(宛名は社長宛となっている、乙2)。そして、納品書の日付は、本件審判の請求の登録日前である。
本件商標権者は、FLOW VERYの唯一の取締役であり、かつ代表取締役であり、その法人の所在地も、本件商標権者の住所と一致するから、同社は実質的に本件商標権者が所有する会社である(乙3)。通常、商標権者がその所有する会社と通常使用権許諾契約を結ぶ時は、わざわざ通常使用権許諾契約書を交わすことはないので、FLOW VERYが本件商標の通常使用権者であることは、間違いない。
2 本件商標を付した商品「清酒」の発注、納品数量が、少量となった理由
本件商標権者は、熊野酒造有限会社の社長に対し、本件商標を同社の清酒等の酒類の商標として使用しないかを打診したところ、熊野酒造有限会社の社長からは、清酒に「御金」の商標を付した商品をテスト販売して、ある程度の販売数量が見込まれるならば、その商標の使用許諾契約を結んでもよい旨の話があった。
そこで、極めて小ロットである「6本」づつを、FLOW VERYが熊野酒造有限会社にOEM発注して、FLOW VERYがその商品を小売酒販店及び料飲店に対し、有償でテスト販売を行った。
当該テスト販売に係る商品の発注及び納品は2021年12月2日ないし2022年8月11日に5回ずつ行われているところ、2022年6月以降の2回の発注及び納品の日付は要証期間のものではない。
そしてこれらの発注及び納品の記録は、FLOW VERY内の記録であり、その取引書類の保存がなく、発注日及び納品日を2022年5月17日とする取引のみの取引書類「納品書」(乙2)を提示する。
上記のテスト販売の結果、ある程度の販売数量が見込めると判断したため、熊野酒造有限会社は、本件商標権者との間で、商標「御金」の清酒についての通常使用権許諾契約を結ぶことに合意し、本件審判請求後に契約を締結している。
3 本件商標の商品「清酒」についての使用について
清酒の酒瓶及び包装用箱に貼付したラベルに「御金」の文字が表示してあり(乙1の写真(1)~写真(3))、本件商標のうち「御金」及び「MIKANE」の文字を酒瓶の裏張りのラベルに表示してある(乙1の写真(4))。
これらの商標の表示は、社会通念上、本件商標の使用と認められる表示である。
また、乙第1号証及び乙第2号証に示す本件商標の使用は、有償のテスト販売用商品「清酒」についての使用だから、請求に係る商品についての本件商標の使用であり、令和4年5月17日付けの当該商品の納品書(乙2)で証明されるように、OEM生産の受注会社である熊野酒造有限会社は、少なくとも、令和4年5月17日以前に、商標「御金」を付した商品「清酒」の製造を完了し、その商品に、OEM発注者の依頼により、商標「御金」を付したことは明白であり、「商品に商標を付する行為」が、商標の使用の一形態である以上、本件審判の請求の登録前に、本件商標がその取消審判に係る指定商品について、使用されたことは明らかである。
第4 審尋及び被請求人の回答
1 審尋
審判長は、令和5年6月29日付け審尋において、被請求人に対し、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解に対する回答を求めた。
2 被請求人の回答
被請求人は、上記1の審尋に対し何らの応答もしていない。
第5 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)FLOW VERYは、目的を「飲食業業務の受託、小売業の経営、無店舗販売業」等とする法人であって、その取締役は本件商標権者のみである(乙3)。
(2)被請求人が清酒であると主張する商品(以下「使用商品」という。)の包装箱及び包装瓶の表面には、別掲2のとおりの黒の縁取りがされた金色の縦書きによる「御金」の文字(以下「使用商標1」という。)が表示されている(乙1の写真(1)、写真(2))。
また、当該包装瓶の背面のラベルには「大吟醸原酒」、「御金 MIKANE」の文字(以下「使用商標2」という、使用商標1と使用商標2を併せて「使用商標」という場合がある。)及び「製造年月」として「2022.6」等の文字が表示されている(乙1の写真(3)、写真(4))。
(3)令和4年5月17日付けの熊野酒造有限会社による本件商標権者宛ての納品書には、品名欄に「御金PB」、数量欄に「6」の記載がある(乙2)。
2 判断
被請求人は、本件商標権者及び通常使用権者であるFLOW VERYが、要証期間に本件商標(社会通念上同一のものを含む、以下同じ。)を請求に係る商品に含まれる「清酒」に使用していた旨主張するのでこれについて検討する。
(1)使用商品について
ア 使用商標1について
本件商標は、別掲1のとおり、「御金」の漢字とその振り仮名の様に各漢字の上に「み」及び「かね」の小さな文字を付したもの並びに「ミカネ」、「みかね」及び「MIKANE」の文字を4段に書してなるものであるところ、その構成より「ミカネ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものと認められる。
これに対し、使用商品の包装箱及び包装瓶の表面に付されている使用商標1を構成する「御金」の文字にはふりがな等が付されておらず、また「御金」の文字は「おかね」の見出しの下「金銭を丁寧にいう語。」の意味(大辞林第4版 株式会社三省堂)を有する語として辞書に載録があることから、「オカネ」の称呼及び「お金(金銭)」の観念を生ずるものと認められる。
そうすると、本件商標と使用商標1は称呼及び観念が相違するので、社会通念上同一の商標とは認められない。
イ 使用商標の使用日及び使用者について
使用商品の包装瓶の背面には「大吟醸原酒」及び製造年月として、「2022.6」の表示があることから、使用商品は「大吟醸原酒」と推認できるものの、当該「大吟醸原酒」に係る製造年月は2022年6月であって、要証期間ではない。
したがって、使用商標2が本件商標と社会通念上同一の商標であるとしても、要証期間に使用商標が使用(商品の包装に商標を付す行為)されたものとは認められない。
また、使用商品には、製造・販売者の表示が無いことから、使用商標の使用者は不明であり、さらに、当該「大吟醸原酒」に係る本件商標権者又はFLOW VERYによる取引が立証されていないことから、当該「大吟醸原酒」が請求に係る商品の範ちゅうの商品であり、FLOW VERYが通常使用権者であるとしても、本件商標権者又はFLOW VERYによって業として生産され又は譲渡されているものと認めることはできない。
(2)使用商品の取引書類とされる納品書について
令和4年5月17日付けの熊野酒造有限会社の本件商標権者宛ての納品書は熊野酒造有限会社が作成したものであり、本件商標権者及びFLOW VERYのいずれもが作成したものではないから、本件商標権者及びFLOW VERYのいずれかに係る取引書類と認めることはできない。
また、被請求人は、当該納品書は、商標「御金」を付した「清酒」が令和4年5月17日にFLOW VERYに納品されたことを称する書証である旨主張しているが、当該納品書のみでは、「御金PB」旨の商品が、本件商標権者又はFLOW VERYによって業として譲渡(販売)されたのか不明である。
したがって、当該納品書のみでは、使用商標が、商標法第2条第3項各号に係る使用がされたものと認めることはできない。
(3)小括
上記のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に本件商標権者又は被請求人が通常使用権者と主張するFLOW VERYが本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標を使用したことを証明したものではない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものということはできない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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