2022-020772
プルランカプセル
- 審判番号
- 2022-020772
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-555931外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月22日
- 審決日
- 2024年08月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カプスゲル・ベルギウム・ナムローゼ・フェンノートシャップ
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2018年(平成30年)4月10日(パリ条約による優先権主張 2017年4月14日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であり、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 3年 4月 6日 手続補正書の提出
同年12月23日付け 拒絶理由通知
令和 4年 3月31日 手続補正書・意見書の提出
同年 8月15日付け 拒絶査定
同年12月22日 審判請求書の提出
令和 5年 2月 7日付け 審判請求書の請求の理由についての
手続補正書(方式)の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~24に係る発明は、令和4年3月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項2】カプセルであって、a)前記カプセルの少なくとも70重量%の量のプルラン;b)前記カプセルの少なくとも0.01重量%の量の凝固系;c)前記カプセルの少なくとも0.2重量%の量のスクログリセリド、糖脂肪酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤から本質的になり、前記重量%の量は前記カプセル中に存在する水を除外する、カプセル。」
第3 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由には、請求項2に係る発明(本願発明)に対する、拒絶理由2(進歩性)Aとして、以下の理由が含まれている。
この出願の請求項2に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
引用文献1、4に記載された事項及び引用発明は以下のとおりである。また、特に断りがない場合、下線は当審合議体が付したものである。
1 引用文献1に記載された事項
(摘記1a)
「【特許請求の範囲】・・・【請求項4】経口投与のための調製物であって、少なくともプルラン及び硬化系から構成される容器中に含有される、少なくとも1種の悪い味又は臭いの化合物を包含する液体、半固体又は固体調製物を含んでなる調製物。続きを表示(全14行)【請求項5】請求項2から4に記載の調製物であって、肥料、種子、食品添加物、食物成分、フレーバー付与剤、ビタミン、粉末洗剤、飲料水のための滅菌剤、局所マイクロエマルジョンから選択される調製物。【請求項6】前記請求項のいずれか一項に記載の調製物であって、該容器材料の組成がさらに、金属イオン封鎖剤、可塑剤、着色剤、表面活性剤、フレーバー付与剤の群から選択される1種又はそれより多くの追加の剤を含んでなる調製物。【請求項7】前記請求項のいずれか一項に記載の調製物であって、該容器がカプセルである調製物。【請求項8】請求項7に記載の調製物であって、該容器がハードカプセルであることを特徴とする調製物。【請求項9】請求項8に記載の調製物であって、該容器がソフトカプセルであることを特徴とする調製物。」
(摘記1b)
「【0024】慣用的プルランハードカプセルの別の問題は、それらの乏しい表面滑り性能であり、それは、予備連結(pre-joint)カプセルの高い開口力と高い閉口力を導く。実際、これらは自動高速カプセル充填装置での良好な充填性能のための二つの鍵となるパラメーターである。充填プロセスの間、充填装置は、非常に速い流れでカプセルを開口し、充填しそして再閉口する。高い開口又は閉口力は、非開口、カプセル末端の穴開きなどのような欠陥をもたらし、結果として頻繁な機械停止をもたらし得る。」
(摘記1c)
「【0032】本発明は、プルラン及び硬化系を含んでなるフィルム形成組成物を提供する。【0033】驚いたことに、非常に少量の硬化系、好ましくは、ゲル化剤として働く親水コロイド、最も好ましくは多糖類の添加が、冷却に伴った適切な硬化能力をプルラン溶液に与えて、ハードプルランカプセルの製造を慣用的浸漬成形法でできるようにすることを発見した。プルラン溶液への、好ましくは多糖類に基づいた硬化系の添加は、選択された方法(慣用的浸漬法によるハードプルランカプセルの製造のようなフィルム形成又は浸漬成形)に対して、特異的及び望まれるゲル化特性の適応を可能にする。浸漬成形法によるハードカプセルの製造のためには、浸漬後、成形ピン上に残っているフィルム形成プルラン溶液は、ピンを流れ落ちることから予防されていることが非常に重要である。さもなければ、得られたフィルムは、所望の均一な厚さを有していないであろう。【0034】好ましい態様において、フィルム形成組成物は、好ましくはさらに、少なくとも1種のカチオンを含んでなるカチオン含有塩を含むことができる。場合により、フィルム形成組成物はさらに、少なくとも1種の金属イオン封鎖剤を含んでなることができる。【0035】本発明の一つの側面において、フィルム組成物を、慣用的ハードゼラチンカプセルの製造に普通に使用される、慣用的浸漬成形法によりハードカプセルを製造するために使用する。【0036】本発明の追加の側面において、カプセルの製造のための、本発明のフィルム形成組成物を含んでなる、水性溶液を提供する。硬化系は、溶液を受け取ると浸漬されたピン上で硬化させ、従って、均一なカプセルシェル厚を保証している。硬化系は、好ましくは、前記親水ゲル又は多糖類のようなゲル化剤、及び場合により、塩及び/又は金属イオン封鎖剤から構成される。」
(摘記1d)
「【0037】本組成物中のカチオン含有塩は、ゲル化剤の硬化能力を増強するために働く。好ましくは、塩は、K+、Li+、Na+、NH4+、Ca2+又はMg2+その他のようなカチオンを含んでなり、カラギナンについてはK+、NH4+又はCa2+が好ましい。カチオンの量は、水性プルラン溶液中、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは0.01~1重量%である。フィルム又はカプセル中の、好ましい塩濃度は、1.0~1.5重量%である。好ましい塩は、塩化カリウムである。」
(摘記1e)
「【0061】本発明の好ましい態様において、硬化系は、親水コロイド又は親水コロイドの混合物を含んでなる。【0062】本発明のための相乗的特性を生み出すのに適した親水コロイド又はそれらの混合物は、天然の海草、天然の種子ガム、天然の植物浸出液、天然の果実抽出液、生合成ガム、ゼラチン、生合成加工デンプン又はセルロース系材料を含んでなる群より選択することができ、好ましいのは多糖類である。続きを表示(全17行)【0063】本発明の好ましい態様において、多糖類は、アルギン酸塩、寒天ガム、グァーガム、イナゴマメガム(カロブ)、カラギナン、タラガム、アラビアガム、ガティガム、カーヤ グランジフォリアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビアン(アラバン)、キサンタン、ジェラン、デンプン、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、フノラン、及び他の細胞外多糖類、を含んでなる群より選択される。好ましいのは、細胞外多糖類である。・・・【0066】上に記載した硬化系の中で、カッパ-カラギナンとカチオン、及びジェランガムとカチオンのシステムが特に好ましい。これらは低濃度で高いゲル強度を生み出し、そして、プルランとの良好な適合性を有している。【0067】硬化剤の量は、本発明の水性プルラン溶液中、好ましくは0.01~5重量%、及び特に好ましくは0.03~1.0重量%である。【0068】フィルム又はカプセル中の、硬化剤の好ましい濃度は、0.1~0.4重量%である。好ましい硬化剤はカラギナンである。【0069】硬化系は、親水コロイド又は親水コロイドの混合物から成り、そして追加のカチオン及び/又は金属イオン封鎖剤を含むことができる。【0070】カチオンは、好ましくは、K+、Li+、Na+、NH4+、Ca2+又はMg2+から選択され、特にカラギナンにおいては、K+、NH4+又はCa2+が好ましい。カチオンの量は、水性プルラン溶液中、好ましくは5重量%未満、より好ましくは0.01~3重量%未満、そして特に好ましくは0.01~1重量%である。フィルム又はカプセル中の、好ましい塩濃度は、1.0~1.5重量%である。好ましい塩は、塩化カリウムである。」
(摘記1f)
「【0080】本発明の好ましい態様において、フィルム形成組成物はさらに、1種またはそれより多くの表面活性剤を含んでなる。【0081】組成物中の表面活性剤は、カプセルが慣用的自動化高速カプセル充填装置でうまく働くような様式で、カプセル表面特性を改良する。続きを表示(全13行)【0082】驚くべきことに、薬学的又は食品的品質の選択された表面活性剤を、少量添加すると、プルラン表面滑り性能を劇的に改良でき、充填装置に必要とされる範囲のカプセル開口及び閉口力を得ることを発見した。【0083】それ故、本発明は、プルラン、硬化系及び表面活性剤、及びカプセルを製造するための前記フィルム形成組成物の水性溶液を含む、改良された表面特性を有するハードプルランカプセルのための組成物を提供する。【0084】これらの好ましい水性溶液を用いると、ハードゼラチンカプセルのような慣用的浸漬成形法により、良好な充填性能を有するハードプルランカプセルを製造することが可能である。・・・【0092】組成物中の表面活性剤は、カプセル表面滑り性能、従って充填装置におけるカプセル充填性能を改良することを目的としている。表面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性であることができ、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド(臭化トリメチルテトラデシルアンモニウム)、脂肪酸糖エステル、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ジメチルポリシロキサン、ソルビタンエステル又はレシチンのような薬学的及び食品的品質のものから好ましくは選択される。プルランに基づいたその量は、好ましくは0.01%~3%である。」
(摘記1g)
「【0111】実施例4:プルランカプセル製造及び性能・・・【0117】続きを表示(全17行)好ましいのは、85~90重量%の量のプルラン、1.0~1.5重量%の量の塩化カリウム、0.1~0.4重量%の量のカラギナン、0.1~0.2重量%の量の1種またはそれより多くの表面活性剤、及び10~15重量%の量の水を含んでなるハードカプセルである。【0118】特に好ましいのは、86.3重量%の量のプルラン、1.32重量%の量の塩化カリウム、0.27重量%の量のカラギナン、0.15重量%の量の表面活性剤、及び12重量%の量の水を含んでなるハードカプセルであり、表面活性剤は糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタンから選択される。【0119】驚くべきことに、好ましい組成物に従ったハードカプセルが、改良された崩壊挙動を有することが発見された。【0120】プルランから作製された二片カプセルの、食道通過及びインビボ崩壊時間を、ガンマシンチグラフィーを使用して決定した。【0121】好ましい組成物に従ったプルランカプセルを、慣用的浸漬成形法を使用して製造した。カプセルに、111In標識Amberlite(登録商標)IRP-69樹脂を含有するプラセボ製剤を充填した。8人の絶食健康ボランティアにおいて、カプセルの食道通過及びインビボ崩壊特性をモニターするため、ガンマシンチグラフィーを使用した。【0122】【表4】[図:0001418511000001.jpg]」
(当審合議体注:上記において、【0111】の下線は、原文で付されているものである。)
2 引用文献4に記載された事項
(摘記4a)
「【特許請求の範囲】【請求項1】 プルラン及び硬化系を含む膜形成組成物。・・・【請求項6】 前記硬化系がヒドロコロイドを含む、請求項1~5のいずれか1項記載の膜形成組成物。続きを表示(全17行)【請求項7】 前記硬化系のヒドロコロイドが多糖類から選択される、請求項6記載の膜形成組成物。・・・【請求項9】 プルランの含量が85重量%~95重量%であり、水の含量が5重量%~15重量%である、請求項1~8のいずれか1項記載の膜形成組成物。・・・【請求項12】 前記硬化系のヒドロコロイドが、アルギン酸塩、寒天ゴム、グアーゴム、ロカストビーンゴム(カロブ)、カラゲナン、タラゴム、アラビアゴム、ガッチゴム、カヤグランディフォリアゴム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ペクチン、アラビアン(アラバン)、キサンタン、ゲラン、デンプン、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン又はフノランを含む群から選択される、請求項6~11のいずれか1項記載の膜形成組成物。・・・【請求項14】 前記硬化系のヒドロコロイドが、ゲランゴム又はκ-カラゲナンから選択される、請求項6~11のいずれか1項記載の膜形成組成物。・・・【請求項20】 1種以上の界面活性剤を含む、請求項1~19のいずれか1項記載の膜形成組成物。【請求項21】 前記界面活性剤が、ナトリウムラウリルスルファート(SLS)、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート(DSS)、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、セトリミド(トリメチルテトラデシルアンモニウムブロミド)、脂肪酸糖エステル、グリセリルモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ジメチルポリシロキサン、ソルビタンエステル又はレシチンを含む群から選択される、請求項20記載の膜形成組成物。【請求項22】 界面活性剤の含量が、プルランの量に対して0.01~3重量%である、請求項20又は21記載の膜形成組成物。【請求項23】 請求項1~22のいずれか1項記載の膜形成組成物から製造される、農薬、種子、ハーブ、食品、染料、医薬品又は着香料の単位剤形用容器。【請求項24】 カプセル、好ましくは医薬品カプセルである、請求項23記載の容器。」
(摘記4b)
「【0064】組成物中の界面活性剤は、カプセル表面滑り性能、ひいては充填装置でのカプセル充填性能を改善することを目的とする。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性であることができ、好ましくは、医薬品及び食品品質の、たとえばナトリウムラウリルスルファート(SLS)、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート(DSS)、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、セトリミド(トリメチルテトラデシルアンモニウムブロミド)、脂肪酸糖エステル、グリセリルモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ジメチルポリシロキサン、ソルビタンエステル又はレシチンから選択することができる。その量は、プルランを基準にして、好ましくは0.01%~3%である。」
3 引用文献1に記載された発明(引用発明)
上記1の摘記1gより(特に【0111】、【0118】)、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
(引用発明)
「86.3重量%の量のプルラン、1.32重量%の量の塩化カリウム、0.27重量%の量のカラギナン、0.15重量%の量の表面活性剤、及び12重量%の量の水を含んでなるハードカプセルであり、表面活性剤は糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタンから選択される、ハードカプセル。」
第5 本願発明と引用発明との対比、判断
1 対比
引用文献1には、「硬化系」について、「冷却に伴った適切な硬化能力をプルラン溶液に与えて、ハードプルランカプセルの製造を慣用的浸漬成形法でできるようにする」成分であることが記載されており(摘記1cの【0033】)、他方、本願明細書の【0048】には、本願発明の「凝固系」について、従来の浸漬法による硬質プルランカプセルを生産する際に所望される、特定のゲル化性能を適用することを可能にする成分である旨が記載されているから、引用文献1に記載の「硬化系」は本願発明の「凝固系」と同様の作用の成分であり、引用文献1に記載の「硬化系」は、本願発明の「凝固系」に相当する(本願明細書【0053】、【0054】、【表1】)。
加えて、引用文献1には、カプセルは、「プルラン及び硬化系から構成される」ことが記載され(摘記1a)、「硬化系」は、冷却に伴った適切な硬化能力をプルラン溶液に与えるものであり、多糖類のようなゲル化剤と、その硬化能力を増強する塩化カリウムのような塩から構成されることが記載されていることから(摘記1c、1d)、引用発明の「カラギナン」及び「塩化カリウム」は、引用文献1に記載の「硬化系」を構成するものであり、本願発明の「凝固系」を構成する成分に相当する。
また、引用発明の「表面活性剤」、「ハードカプセル」は、それぞれ、本願発明の「界面活性剤」、「カプセル」に相当する。
そして、引用発明は、水を除外した場合の重量割合に換算すると、98.02重量%のプルラン、1.50重量%の塩化カリウム、0.31重量%のカラギナン、0.17重量%の表面活性剤である糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタンを含むハードカプセルであるから、引用発明の「86.3重量%の量のプルラン」(水除外で98.02重量%相当)は、本願発明の「カプセルの少なくとも70重量%の量のプルラン」に相当し、引用発明の「1.32重量%の量の塩化カリウム」及び「0.27重量%の量のカラギナン」(水除外で塩化カリウムは1.50重量%相当、カラギナンは0.31重量%相当であるから、2成分の和は1.81重量%相当)は、本願発明の「カプセルの少なくとも0.01重量%の量の凝固系」に相当する。
さらに、引用発明は、上述したように「プルラン」、「塩化カリウム」、「カラギナン」、「表面活性剤」、「水」のみからなる「ハードカプセル」であるから、本願発明と「a)前記カプセルの少なくとも70重量%の量のプルラン;b)前記カプセルの少なくとも0.01重量%の量の凝固系」及び「界面活性剤から本質的にな」るものである点で一致している。
以上より、本願発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「カプセルであって、a)前記カプセルの少なくとも70重量%の量のプルラン;b)前記カプセルの少なくとも0.01重量%の量の凝固系;c)界面活性剤から本質的になり、前記重量%の量は前記カプセル中に存在する水を除外する、カプセル。」
(相違点)
「界面活性剤」が、本願発明においては、「カプセルの少なくとも0.2重量%の量のスクログリセリド、糖脂肪酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される」ものであるのに対し、引用発明においては、「糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタン含むもの」であって、カプセル中の水を除外した場合の重量割合が0.17重量%である点。
2 判断
(1)相違点について
ア 引用文献1には、「表面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性であることができ、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド(臭化トリメチルテトラデシルアンモニウム)、脂肪酸糖エステル、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ジメチルポリシロキサン、ソルビタンエステル又はレシチンのような薬学的及び食品的品質のものから好ましくは選択される。」(摘記1fの【0092】)と記載されているから、引用発明の「糖エステル」は、表面活性剤である「脂肪酸糖エステル」を意味するといえる。
イ また、引用文献1には、引用発明のハードカプセルは、従来のプルランハードカプセルで問題とされていたカプセル表面滑り性能を改善し、ひいては充填装置でのカプセル充填性能を改良することを目的として、表面活性剤をプルランに基づいた量で0.01~3%添加できることが記載されている(摘記1a、1b、1f)。
なお、引用文献1の上記の「0.01~3%」が何(重量、体積等)を基準とした割合であるのかは記載されていないが、引用文献1の【0037】、【0067】、【0117】、【0118】等においては、成分割合は重量割合で記載されているから、上記の「0.01~3%」は「0.01~3重量%」を意味するといえる。
ウ さらに、引用文献4にも、引用文献1と同様に、プルラン及び硬化系を含むカプセル等を製造するための膜形成組成物において、カプセル表面滑り性能、ひいては充填装置でのカプセル充填性能を改善することを目的として、プルランの量に対して0.01~3重量%の界面活性剤を添加すること(摘記4a、4b)、及び、前記界面活性剤として脂肪酸糖エステルを使用できることも記載されている(摘記4aの【請求項21】、4b)。
エ そうすると、上記アで説示したとおり、引用発明の「糖エステル」は「脂肪酸糖エステル」を意味するといえるから、引用発明の「表面活性剤」として、脂肪酸糖エステル(本願発明の「糖脂肪酸エステル」に相当(本願明細書【0059】、【0063】))を選択することは当業者が適宜なし得たことにすぎない。
また、上記イ及びウで説示したとおり、引用文献1及び4には、脂肪酸糖エステル等の表面活性剤をプルランに基づいた量で0.01~3重量%添加できることが記載されているから、引用発明の脂肪酸糖エステルを、プルランに基づいた量で0.01~3重量%の範囲で調整することは、当業者が必要に応じてなし得ることであり、そのように調整された引用発明(水を除外した場合に98.02重量%の量のプルランを含む)においては、水を除外した場合に、脂肪酸糖エステルは0.0098~2.94重量%の範囲(プルランに基づいた量で0.01~3重量%相当)で調整することとなる。
そうすると、引用発明において、水を除外した場合には、0.17重量%である脂肪酸エステルを、0.0098~2.94重量%の範囲内の「0.2重量%~2.94重量%」の範囲として、相違点に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
(2) 本願発明の効果について
ア 本願明細書の全体を参酌しても、本願発明の効果を明示する記載はないが、本願明細書の【0004】、【0007】を参照すると、オーガニック発酵工程を使用して製造されたプルランを用いて、オーガニック表示の要件を満たすプルランカプセルを開発したことが、本願発明の効果であるようにも理解できる。
そして、本願明細書には、上記の「オーガニック表示の要件」が具体的にどのようなものであるか記載されていないし、仮に、合成されたものではなく天然に存在する成分のみを含むことが「オーガニックの表示の要件」であるとしても、引用発明の成分も、本願発明と同様に、天然に存在する成分のみを含むことから、本願発明の「オーガニック表示の要件」を満たすという効果は、引用発明に比べて優れたものということはできない。
イ(ア) また、本願明細書の実施例1(【0119】~【0124】)には、具体的に本願発明に包含される浸漬法で製造されたカプセルが記載されており、実施例2(【0125】~【0126】)には、本願発明に包含される実施例1で作製したカプセル(カプセルA)は、「Capsugel, Greenwood, SCからのPlantcaps(登録商標)カプセル」(カプセルB)と比べてMg2+とCa2+の両方の濃度が大きく、一価陽イオン(K+)と二価陽イオン(Mg2+及びCa2+)の比が低い旨が記載されている。
そこで、上記の実施例で確認された効果についても検討する。
(イ) 本願明細書中の実施例1は、上記(ア)で示したとおり、本願発明に包含される浸漬法で製造されたカプセルが記載されているのみであって、その特性については、何ら示していない。
また、本願明細書中の実施例2は、上記(ア)で示したとおり、カプセルBに比して本願発明であるカプセルAのほうが一価陽イオン(K+)と二価陽イオン(Mg2+及びCa2+)の比が低い旨を示すものの、当該結果は、単にカプセルの成分を示すにとどまっており本願発明がカプセルとしてどのような有利な効果があることを期待できるのかが理解できない。
さらに、本願の図面には【図1】、【図2A】及び【図2B】が記載されており、本願明細書の【0036】には、これらの図面の説明が記載されているものの、これらの記載は、実施例1、2で示されるカプセルについて、どのような試験を行った際の試験結果であるのか不明であり、当該【図1】、【図2A】及び【図2B】から、本願発明のカプセルの有利な効果は認識できない。
(ウ) 上記(イ)より、上記(ア)で示した本願明細書の実施例で確認された効果は、引用発明に比較して、有利な効果であると認めることはできない。
ウ 上記ア、イより、本願明細書の記載からは、引用発明において、表面活性剤である「糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタンから選択される」ものから、「糖エステル」(上記2(1)で説示したように「脂肪酸糖エステル」を意味する。)を選択し、その重量割合を少なくとも0.2重量%の量とすることで、他の表面活性剤を選択することと比した特有の効果や、重量割合の数値限定についての臨界的意義は明らかではなく、本願発明が引用文献1及び4の記載から予測できないような格別の効果が奏されていることは理解できない。
なお、本願明細書の【0055】~【0065】には、「界面活性剤」の記載があり、【0065】には、「界面活性剤は、製造時に金型ピンへのフィルム形成を助けるのに十分な量存在する」との記載があるが、実施例1、2では、上記1で示したように浸漬法で製造されたカプセルを製造したことは記載されているものの、「界面活性剤」の種類及び重量割合の違いによるフィルム形成性の点の効果は確認されていない。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献1、4に記載された事項から、本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たといえる。
第6 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和5年2月7日提出の手続補正書(以下、「手続補正書」という。)により補正した審判請求書において、下記1~3の趣旨の主張をしているので、順に検討する。
1 本願発明のカプセルは、カプセルの少なくとも0.2重量%の量のスクログリセリド若しくは糖脂肪酸エステル又はこれらの混合物を含む界面活性剤を含み、かかる界面活性剤を選択することにより、本願発明のカプセルは「オーガニック」なものとなる旨の主張(手続補正書2頁下から17~15行)。
第5の2(1)で説示したとおり、引用発明の表面活性剤として「脂肪酸糖エステル」を選択することは当業者が容易になし得たことであるし、引用発明の他の成分である「プルラン」、「塩化カリウム」、「カラギナン」、「水」は、いずれも、本願明細書中において、含有し得る成分として記載されたものであり(【0041】、【0050】、【0066】、【0123】)、引用発明において表面活性剤として「脂肪酸糖エステル」(本願発明の「糖脂肪酸エステル」に相当)を選択することで、「オーガニック」なものとなることは、当業者が予測し得た程度のことにすぎない。
2 引用文献1は、糖脂肪酸エステルを含む界面活性剤について記載するが、いずれも0.15重量%より多い量の糖脂肪酸エステルを使用することを示唆するものではなく、本願発明者らは、スクログリセリド若しくは糖脂肪酸エステルを界面活性剤として用いた場合、0.2重量%を超える量でこれらを用いることで満足できるオーガニックプルランカプセルが得られることを見いだした旨の主張(手続補正書2頁下から14~10行)。
第5の2(1)で説示した通り、引用発明の「糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタン」は、「脂肪酸糖エステル及び/又はモノラウリン酸ソルビタン」を意味するといえるから、引用発明において、脂肪酸糖エステルを選択することは示唆されているといえるし(特に、第5の2(1)ア参照。)、引用発明は、水を除外した場合に、98.02重量%の量のプルランを含むものであるから、引用発明は引用文献1の記載を考慮すると、0.0098~2.94重量%の表面活性剤を添加し得るものであると理解されるから(特に、第5の2(1)イ~エ参照。)、表面活性剤の重量割合を上記範囲内の「少なくとも0.2%」とする動機付けがある。
そして、第5の2(2)アで説示したとおり、本願発明において、界面活性剤を「少なくとも0.2重量%」とすることにより、引用発明に比べて「満足できる」オーガニックカプセルであることは、具体的に示されていない。
したがって、請求人の上記主張を検討しても、上記第5に示した判断には影響しない。
3 引用文献4の【0064】に記載の広範な界面活性剤のうちから特に「脂肪酸糖エステル」を選択する動機付けは存在しないし、「脂肪酸糖エステル」を選択して、さらにこれを0.2重量%を超える量で用いることの動機付けとなる記載は引用文献4にはなく、引用文献1と引用文献4を組み合わせることは困難である旨の主張(手続補正書2頁下から9行~3頁23行)。
上記第5の2(1)ウに説示したとおり、引用文献4には、プルラン及び硬化系を含むカプセル等を製造するための膜形成組成物において、プルランの量に対して0.01~3重量%の界面活性剤を添加すること、及び、前記界面活性剤として、脂肪酸糖エステルを使用できること(摘記4aの【請求項21】、【請求項22】、摘記4b)が記載されている。
そして、引用発明と引用文献4(特に摘記4a)はプルラン及び硬化系を含むカプセルという同一技術分野のものであり、引用文献1と4を組み合わせることが困難であるとは解されず、上記第5の2(1)イで説示したように、引用文献1の摘記1fの【0092】にも、「表面活性剤」について、引用文献4の摘記4bと同様の記載があることを考慮すると、引用発明における脂肪酸糖エステルの含有量を、引用文献4(及び1)に記載された上記界面活性剤の量を参考に調節することは当業者であれば、容易に想到し得たものといえる。
したがって、審判請求人の上記3の主張は、採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献1、4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-020772