審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-020697

低潤滑剤疎水性シリンジバレルを有するメディカルデリバリーデバイス

審判番号
2022-020697
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-546421外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月21日
審決日
2024年09月24日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-546421号「低潤滑剤疎水性シリンジバレルを有するメディカルデリバリーデバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日国際公開、WO2019/173083、令和 3年 6月17日国内公表、特表2021-514781号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(平成31年) 2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年 3月 6日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。

令和 3年10月21日付け 拒絶理由通知

令和 4年 4月12日提出 意見書及び手続補正書

令和 4年 9月 2日付け 拒絶査定

令和 4年12月21日提出 審判請求書、同時に手続補正書

令和 5年 7月27日付け 拒絶理由通知

令和 5年10月30日提出 意見書及び手続補正書

令和 6年 1月30日付け 拒絶理由通知

令和 6年 4月25日提出 意見書及び手続補正書

第2 本願発明

令和 6年 4月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「潤滑剤を含まないか又は実質的に含まない内面を有するバレルと、
該バレルの該内面の少なくとも一部に接触するストッパーと
を含んでなるメディカルデリバリーデバイスであって、
前記ストッパーは、前記バレルに対して測定して4.5%~7.9%の圧縮率(C%)を有し、該圧縮率(C%)は、非圧縮状態で該ストッパーのシーリング表面を有するリブの最大外直径(v)及び該バレルの該内面の内直径(y)に関して下式で定義され:C%=((v-y)/v)×100、
前記バレルの前記内面は90°を超える水接触角(明細書記載の「水接触角測定」に従う測定値)を有し、
前記ストッパーは複数のシーリングリブを含み、
前記ストッパーは0.3mm~2mmの摺動面を有し、該摺動面(S)は、該ストッパーのシーリング表面を有するすべての部分の接触幅(w)の合計であり、
前記複数のシーリングリブの少なくとも2以上は1以上のフルオロポリマーラミネートで覆われており、かつ、
前記ストッパーは、1ml長シリンジで10mm~28mmの変位で記録される1.0N~3.5Nの平均摺動平衡応力を有する、メディカルデリバリーデバイス。」

第3 拒絶の理由

当審で通知した令和 6年 1月30日付け拒絶理由通知で留保した、令和 5年 7月27日付け拒絶理由通知の理由2は、以下の理由を含むものである。

本願発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧:

1.特開2017-189528号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。)。

(1)「【0003】
しかし、ゴム材質からの溶出物や、ゴム材質との相互作用により影響を受け易いバイオ製剤等もある。また、ブチル系ゴム部材では、ガスケットの摺動性改善、ノズルキャップの固着防止の目的で、シリンジバレルの内壁、ガスケット、ノズルキャップのゴム表面に潤滑剤として、オイルタイプおよび硬化タイプのシリコーンが塗布されることがある。製剤の種類によっては、バレル内壁やゴム部材からシリコーンコート剤が脱落して異物となり、製剤品質に重大な悪影響を与える場合がある。
【0004】
そこで、その対策として、フッ素樹脂フィルム等をゴムに積層することにより、シリコーンを使用しない製品が開発され、硝子製シリンジまたは樹脂製プレフィルドシリンジに適用されている。
ガスケットに使用する積層フィルムとしてのフッ素樹脂フィルムは、耐薬品性に優れ、摩擦係数が最も小さいPTFEが適している。シリコーン潤滑剤が使用可能な場合は、ETFEフィルム材質の積層でも問題はない。PTFEの多くはスカイビング法、キャスティング法等により製造されている。」
(2)「【0008】
しかし、従来のガスケット形状は、いずれのものであっても、気密性および摺動抵抗が完全に解決されているとはいい難かった。
そこで、本発明は、摺動抵抗値を下げ、かつ、液封止性の高い不活性樹脂フィルムで積層されたガスケットを提供することを主たる目的とする。」
(3)「【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係るガスケット10の半断面正面図で、右半分が断面で示されている。
図1を参照して、この発明の一実施形態に係るガスケット10は、弾性体で構成された本体11と、本体11の表面に積層された不活性樹脂フィルム12とを有している。本体11を構成する弾性体は、ゴム材質のものを使用でき、合成ゴム、熱可塑性エラストマまたはこれらをブレンドした材料で形成することができる。より具体的には、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ネオプレンゴム、エチレンプロピレン系ゴム等を用いて作ることができる。
続きを表示(全25行)
【0019】
本体11の表面に積層された不活性樹脂フィルム12は、本体11からの成分の移行を阻止でき、かつ、ゴムよりも摺動性の優れるもの、すなわちゴムより摩擦係数の小さいフィルムであれば、その種類は特に限定されない。一例として、医療用途に実績のある超高分子量ポリエチレンやフッ素系樹脂のフィルムを挙げることができ、より具体的なものとして、次の3種類が挙げられる。
【0020】
(1)ホモPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のスカイビング法フィルム(たとえば日本バルカー工業株式会社製の商品名「バルフロン」)、
(2)変性PTFE(テトラフルオロエチレンモノマーと数%のパーフルオロアルコキシドモノマーとの共重合体)のスカイビング法フィルム(たとえば日本バルカー工業株式会社製の商品名「ニューバルフロン」)、
(3)超高分子量ポリエチレン(たとえば作新工業製のスカイビング
法フィルムの商品名「ニューライトNL-W」)等を使用することができる。
【0021】
再び図1を参照して、ガスケット10は、短い円柱形状をなしており、その先端面17は、たとえば軸中心部が突出する鈍角の山形形状をしている。また、後端面18から軸方向に堀り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部19が形成されている。嵌合凹部19は、ガスケット10を操作する際に用いるプランジャのヘッド部がねじ込まれ得る構成である。
ガスケット10の円柱形状の外側周面(摺動側面部)20には、シリンジの内周面と摺接する3つの環状リブ13、14、15が、ガスケット10の先端面17側から後端面18側に向かって軸方向に所定の間隔をあけて配列されている。このうち、先端の環状リブ13は、シリンジの内周面と摺接する摺接部16を有し、摺接部16の直線長さ(軸方向長さ)H1は、円柱形状の外側周面20の直線長さ(外側周面20の軸方向長さ)H0に対して、1~25%の割合を占めている。
【0022】
すなわち、H1:H0=(1~25):100
の寸法関係を有している。
これがこの実施形態の特徴の1つである。
軸方向に見て、先端の環状リブ13の下方側には第2の環状リブ(中間環状リブ)14が設けられており、さらにその下方側には第3の環状リブ(末端環状リブ)15が設けられている。この実施形態では、中間環状リブ14も末端環状リブ15も、その断面視が円弧状に膨らんだリブであり、シリンジの内周面と摺接する摺接部16は直線長さ(軸方向長さ)を有さずシリンジの内周面とほぼ点接触で摺接する環状リブとして構成されている。
【0023】
より一般的に述べれば、先端環状リブ13を除く残りの環状リブである中間環状リブ14および末端環状リブ15の摺接部16の直線長さ(軸方向長さ)H2およびH3は、外側周面20の直線長さ(外側周面の軸方向長さ)H0に対して、それぞれ、0~15%の割合を占めていればよい。
すなわち、H2:H0=(0~15):100
かつ、
H3:H0=(0~15):100
の寸法関係であることが望ましい。」
(4)「【0029】
凸部21の高さは、2~100μmであることが、局所的に適切な面圧を得る上で、望ましい。
図3は、この発明の一実施形態に係るガスケット10が装着された医療用注射器(プレフィルドシリンジ)30の一例を示す半断面正面図である。
プレフィルドシリンジ30は、円筒形状のシリンジバレル31と、シリンジバレル31の先端に装着された封止キャップ32と、シリンジバレル31の後端から打栓されたガスケット10とを含んでいる。シリンジバレル31内には、所定の薬液が充填されている。
【0030】
使用時には、封止キャップ32が取り外されて注射針が装着され、ガスケット10の後端面からプランジャ(図示せず)が螺合され、プランジャが操作されてガスケット10が摺動されることにより、シリンジバレル31内の薬液が注射針を介して投与される。
かかる構成において、ガスケット10は、先端環状リブ13が適切に薬液の封止を行うとともに、先端環状リブ13の摺動抵抗も比較的少ないので、摺動性に優れ、操作性が良く、しかも封止性(気密性および液密性)の良い医療用注射器30とすることができる。」
(5)「【実施例】
【0031】
実施例1、実施例2、実施例3および比較例2として、図1に示す形態のガスケットを製造した。また、比較例1として、図4に示す形態のガスケットを製造した。製造したガスケットの材料の詳細は、次の通りである。
(1)本体11の材質
続きを表示(全74行)
塩素化ブチルゴム材質(JISA 硬さ58度)
(2)不活性樹脂フィルム12の材質
変性PTFE
スカイビング法フィルム:日本バルカー工業株式会社製 商品名「ニューバルフロン」
フィルム厚さT=70μm 中心線平均粗面粗さ0.11μm
【0032】
(3)製造方法
塩素化ブチルゴム製未加硫ゴムシートに、PTFEスカイビング法、厚さ70μm、片面接着処理したフィルムを重ねて、成型金型上に置き、真空プレスで175℃で10分成型し加硫接着させた。
ガスケットは、1mL用COP樹脂シリンジ(シリンジバレルの内径6.35mm)に適する形態に形成した。
(4)レーザー光による加工
円環溝22の形成を、レーザー光による加工で行った。
使用装置:株式会社キーエンス製3-Axis二酸化炭素LaserMarker ML-Z9550Tを用い、波長9300nmのレーザー光を照射し、円環溝22を形成した。
(5)各実施例、比較例の形態、寸法は、次の通りである。
【0033】
[実施例1]
環状リブの数:3
H0:7.0mm
D1:6.65mm
H1:1.0mm
D2:6.6mm
H2:1.0mm
D3:6.6mm
H3:1.0mm
円環溝22:無
[実施例2]
環状リブの数:3
H0:7.0mm
D1:6.6mm
H1:1.5mm
D2:6.55mm
H2:0.5mm
D3:6.55mm
H3:0.5mm
円環溝22:有
[実施例3]
環状リブの数:3
H0:7.0mm
D1:6.7mm
H1:0.5mm
D2:6.55mm
H2:0mm
D3:6.55mm
H3:0mm
円環溝22:有
[比較例1]
環状リブの数:2
H0:7.0mm
D1:6.6mm
H1:3.0mm
D3:6.6mm
H3:2.0mm
円環溝22:無
[比較例2]
環状リブの数:3
H0:7.0mm
D1:6.6mm
H1:1.5mm
D2:6.6mm
H2:1.0mm
D3:6.6mm
H3:1.0mm
円環溝22:無
【0034】
<試験方法>
(1)摺動性
加工後の製品をシリンジバレルに挿入し、プランジャで100mm/minの速度で押し込む際に要する力を精密万能試験機(AG-X 100kN、株式会社島津製作所製)を用いて計測した。摺動距離10mmから15mmでの摺動に要する力の平均値を摺動抵抗として記録した。
(2)薬液の封止性
成型後の製品をシリンジバレルに打栓後、試験液を充填し、反対側をキャップした。40℃にて1週間静置後、ビデオマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ株式会社製DVM5000)にて対物レンズ50倍で観察し、液漏れの有無を測定した。20個の製品を観察し、試験液がガスケットの最大径D1部分を越えたものは、液漏れと判定し、その個数を記載した。2以下を良好とした。試験液は水に色素(メチレンブルー シグマアルドリッチジャパン合同会社製)0.2g/L、および界面活性剤(ポリソルベート80 日油株式会社製)1.0g/L加えたものを使用し、シリンジバレルはシクロオレフィン樹脂製 内径φ6.35mmを使用した。
<総合評価>
表1に、総合評価を示す。また、表2に、評価基準を示す。」
(6)「【0035】
【表1】
[図:0001419596000001.jpg]
【0036】
【表2】
[図:0001419596000002.jpg]
」
(7)「
[図:0001419596000003.jpg]
」
(8)「
[図:0001419596000004.jpg]
」

2 引用発明

上記(3)~(5)の特に下線部の記載、(6)の【表1】の実施例3に係る記載及び【表2】の記載並びに(7)、(8)の図面の記載から、本願発明の記載に沿って整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「シリンジバレル31と、
該シリンジバレル31の内周面と摺接するガスケット10と、
を含む医療用注射器30であって、
前記ガスケット10は、前記シリンジバレル31に対して5.2%の圧縮率を有し、
前記ガスケット10は、複数の環状リブ13,14,15を含み、
前記ガスケット10は、0.5mmの摺接部の直線長さを有し、該摺接部の直線長さは、該ガスケット10の複数の環状リブ13,14,15の摺接部16の直線長さの合計であり、
前記ガスケット10はPTFEスカイビング法フィルムが加硫接着されており、かつ、
前記ガスケット10は、1mL用COP樹脂シリンジで摺動距離10mmから15mmでの摺動に要する力の平均値である摺動抵抗値が7N以下である、医療用注射器30。」

第5 対比

1 上記第4の1(1)の特に下線部の記載からすれば、引用発明はシリコーン等からなる潤滑剤を用いる代わりにガスケット10にPTFEスカイビング法フィルムを加硫接着しているものであるから、引用発明のシリンジバレル31は潤滑剤を含まないか又は実質的に含まない内面を有するものである。

よって、引用発明の「シリンジバレル31」は、本願発明の「潤滑剤を含まないか又は実質的に含まない内面を有するバレル」に相当する。

2 引用発明の「該シリンジバレル31の内周面と摺接するガスケット10」は、機能及び構造上、本願発明の「該バレルの該内面の少なくとも一部に接触するストッパー」に相当する。

3 引用発明の「医療用注射器30」は、機能及び構造上、本願発明の「メディカルデリバリーデバイス」に相当する。

4 一般に、「シリンジバレル31の内周面と摺接するガスケット10」のシリンジバレルに対する圧縮率という場合に、当該圧縮率が、非圧縮状態でガスケットのシーリング表面を有する環状リブの最大外直径(v)及びシリンジバレルの内面の内直径(y)に関して下式で定義され:C%=((v-y)/v)×100 ることは技術常識である。

よって、引用発明の「前記ガスケット10は、前記シリンジバレル31に対して5.2%の圧縮率を有」する点は、本願発明の「前記ストッパーは、前記バレルに対して測定して4.5%~7.9%の圧縮率(C%)を有し、該圧縮率(C%)は、非圧縮状態で該ストッパーのシーリング表面を有するリブの最大外直径(v)及び該バレルの該内面の内直径(y)に関して下式で定義され:C%=((v-y)/v)×100」る点に相当する。

5 引用発明のガスケット10の「複数の環状リブ13,14,15」は、機能及び構造上、本願発明のストッパーの「複数のシーリングリブ」に相当する。

6 引用発明の「ガスケット10の複数の環状リブ13,14,15の摺接部16の直線長さの合計」である「摺接部16の直線長さ」は、本願発明の「ストッパーのシーリング表面を有するすべての部分の接触幅(w)の合計」である「摺動面(S)」に相当する。

よって、引用発明の「前記ガスケット10は、0.5mmの摺接部の直線長さを有し、該摺接部の直線長さは、該ガスケット10の複数の環状リブ13,14,15の摺接部16の直線長さの合計であ」る点は、本願発明の「前記ストッパーは0.3mm~2mmの摺動面を有し、該摺動面(S)は、該ストッパーのシーリング表面を有するすべての部分の接触幅(w)の合計であ」る点に相当する。

7 上記第4の1(3)、(5)の特に下線部の記載及び(7)の図面の記載からすれば、引用発明のPTFEスカイビング法フィルムはガスケット10の複数の環状リブ13,14,15を覆うように加硫接着されている。

そして、引用発明の「PTFEスカイビング法フィルム」は、機能及び構造上、本願発明の「フルオロポリマーラミネート」に相当する。

よって、引用発明の「前記ガスケット10はPTFEスカイビング法フィルムが加硫接着されて」いる点は、本願発明の「前記複数のシーリングリブの少なくとも2以上は1以上のフルオロポリマーラミネートで覆われて」いる点に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明は、以下の一致点及び相違点を有する。

【一致点】

「潤滑剤を含まないか又は実質的に含まない内面を有するバレルと、
該バレルの該内面の少なくとも一部に接触するストッパーと
を含んでなるメディカルデリバリーデバイスであって、
前記ストッパーは、前記バレルに対して測定して4.5%~7.9%の圧縮率(C%)を有し、該圧縮率(C%)は、非圧縮状態で該ストッパーのシーリング表面を有するリブの最大外直径(v)及び該バレルの該内面の内直径(y)に関して下式で定義され:C%=((v-y)/v)×100、
前記ストッパーは複数のシーリングリブを含み、
前記ストッパーは0.3mm~2mmの摺動面を有し、該摺動面(S)は、該ストッパーのシーリング表面を有するすべての部分の接触幅(w)の合計であり、
前記複数のシーリングリブの少なくとも2以上は1以上のフルオロポリマーラミネートで覆われている、メディカルデリバリーデバイス。」

【相違点】

1 本願発明は、「前記バレルの内面は90°を超える水接触角(明細書記載の「水接触角測定」に従う測定値)を有」するのに対し、引用発明は、シリンジバレル31がそのようになっているか不明である点。

2 本願発明は、「前記ストッパーが1ml長シリンジで10mm~28mmの変位で記録される1.0N~3.5Nの平均摺動平衡応力を有する」のに対して、引用発明は、ガスケット10が1mL用COP樹脂シリンジで摺動距離10mmから15mmでの摺動に要する力の平均値である摺動抵抗値が7N以下である点。

第6 判断

1 相違点1について

引用発明のシリンジバレルはCOP樹脂性である(上記第4の1(5)の段落【0032】参照。)ところ、通常疎水性であるから、具体的にバレルの内面の水接触角が90°を超えるものとすることは当業者であれば容易になし得ることと認められる。

2 相違点2について

引用発明には、摺動抵抗値の下限値についての特定はない。

しかし、摺動抵抗値があまりに低い場合には、気密性や操作性に問題が生じることは当業者にとって明らかであり、また、本願明細書の段落【0087】~【0091】の記載からすれば、低い摺動平滑応力を有する例として、平均摺動平滑応力が2.1~7.6Nのものが例1~10として例示されているのみであり、下限値の特定に格別の意味を見出すことはできないから、平均摺動平衡応力の下限値を1.0Nに具体的に特定することは、設計的事項にすぎない。

また、本願明細書の段落【0089】に、引用発明の摺動抵抗値の上限値である7Nを超える平均摺動平滑応力が7.6Nである例6も、低い平衡応力変動を示すストッパーの例として記載されていることに照らせば、上限値の特定に格別の意味を見出すことはできないから、平均摺動平衡応力の上限値を3.5Nに具体的に特定することは、設計的事項にすぎない。

そして、平均摺動平衡応力は、より低い方が操作性上使用者にとって好ましく、一方、気密性等を考慮すると、ある程度の抵抗が必要であることは技術常識であるから、引用発明において、上記第4の1(2)記載を考慮して、平均摺動平滑応力を最適化することにより、上記相違点2に係る本願発明の構成の採用は当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果を総合的に検討しても、引用発明から当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとはいえない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-020697

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決113件(ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド)
  • 2025-001166拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)ろ材を再生し、煙道ガスを洗浄する方法
    同じ当事者: ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
  • 2024-014799拒絶査定不服審判 / 2026-07-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)拘束システム及び関連方法
    同じ当事者: ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
  • 2024-009126拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)吻合器
    同じ当事者: ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
  • 2024-000880拒絶査定不服審判 / 2026-03-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリエチレンフィルム
    同じ当事者: ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
  • 2025-001112拒絶査定不服審判 / 2026-03-09 / 原査定取消(特許/登録すべき)経皮音センサ
    同じ当事者: ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-004723拒絶査定不服審判 / 2026-04-15 / 請求不成立投与システム、投与装置、および医療機器の状態を知らせるための通知装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-009821拒絶査定不服審判 / 2026-03-25 / 請求不成立呼吸補助装置
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2025-007828拒絶査定不服審判 / 2026-03-23 / 請求不成立患者用インターフェースおよびその態様
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-006089拒絶査定不服審判 / 2026-03-19 / 請求不成立送達された投与量を測定するためのシステムおよび方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-008046拒絶査定不服審判 / 2026-03-03 / 請求不成立制御可能な薬物送達システム及び使用方法
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,372件(121・A61M)
  • 2024-011711拒絶査定不服審判 / 2026-09-01 / 原査定取消(特許/登録すべき)伸縮自在のプランジャーアセンブリ
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-019058拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)鼻マスクシステム
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2025-003125拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)ハイブリッド外層を備えた複合材料医療用バルーン、および関連する生産方法
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-002734拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)累加柔軟性カテーテル支持フレーム
    共通の審決分類: 121・A61M
  • 2024-019025拒絶査定不服審判 / 2026-08-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)カテーテルおよびその製造方法
    共通の審決分類: 121・A61M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存