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特許拒絶査定不服審判

2022-020474

複合トリガーフォトレジスト組成物および方法

審判番号
2022-020474
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-545802外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月16日
審決日
2023年12月25日
公報発行日
2024年06月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G03F) / P18 .575-Z (G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-545802「複合トリガーフォトレジスト組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月30日国際公開、WO2018/156247、令和 2年 4月 2日国内公表、特表2020-510230〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特願2019-545802号(以下「本件出願」という。)は、2018年(平成30年)1月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)2月24日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和3年11月 9日付け:拒絶理由通知書
令和4年 5月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年12月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 2月 8日 :審判請求書の請求の理由を補充する手続補正書(方式)の提出

第2 令和4年12月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年12月16日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

(1)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和4年5月16日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりである。

「 【請求項1】
a.2つ以上の架橋性官能基を含み、本質的にすべての前記官能基の少なくとも90%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマーと、
b.少なくとも1つの酸活性化架橋剤と、
c.少なくとも1つの光酸発生剤と、を含む、複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物。」

(2)本件補正後の請求項1に係る発明

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。

「 【請求項1】
a.2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマーと、
b.少なくとも1つの酸活性化架橋剤と、
c.少なくとも1つの光酸発生剤と、を含む、複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の、発明を特定するために必要な事項である「2つ以上の架橋性官能基を含」む「少なくも1つのポリマー」について、「酸不安定保護基に結合している」「前記官能基」の割合を「少なくとも90%」から「90~99%」に変更して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)とする補正事項を含むものである。

上記補正事項は、「酸不安定保護基に結合している」「前記官能基」の割合を「少なくとも90%」から、その範囲内である「90~99%」に減縮するものである。また、上記補正事項は、本件出願の国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の【0046】の「架橋性官能基はすべて、約90%~約100%ブロックされた酸不安定保護基によってブロックされる。」と記載された事項の範囲内においてしたものといえる。

そうしてみると、本件補正は特許法17条の2第3項に規定する要件(新規事項の追加の禁止)を満たすものであり、また、同条第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とする補正に該当する。

そこで、本件補正発明が特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

3 独立特許要件違反についての判断

(1)引用文献2の記載事項及び引用発明

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ア 引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件出願の優先権主張の日前(以下「本件優先日前」という。)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特表2016-517532号公報(平成28年6月16日公表。以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定又は判断で利用した箇所である。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なメタノフラーレン誘導体、それから製造されるネガ型フォトレジスト組成物、およびそれを使用する方法に関する。その誘導体、そのフォトレジスト組成物およびその方法は、例えば、紫外線、極端紫外線、極端紫外線を超える紫外線、X線および荷電粒子線を使用した微細パターン処理に理想的である。
・・・中略・・・
続きを表示(全12行)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それから分かるように、現在の、かつ更なる要求の必要条件を満たすために、より一層小さな半導体デバイスの製造を可能にする、フォトレジストのより一層微細な解像度を得ることが望まれている。これらのフォトレジストと併せて使用することができる材料であって、例えばエッチング耐性など、現存の半導体デバイスの製造に使用されるプロセスに対してより頑強である材料を製造することも望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
・・・中略・・・
【0021】
また更なる実施形態において、酸不安定性保護基によって保護される架橋性基を含有するネガティブ感光性組成物が本明細書において開示され、かつ請求される。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の開示内容のネガティブトーンフォトレジストに適した光酸発生剤(PAG)としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、エステルスルホネート化合物、キノンジアジド化合物、およびジアゾメタン化合物が挙げられる。これらの酸発生剤の具体的な例が以下に示される。
【0036】
続きを表示(全25行)
オニウム塩化合物の例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩およびピリジニウム塩が挙げられる。オニウム塩化合物の具体的な例としては、ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4'-ビス[ジフェニルスルホニオールフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートおよびその組み合わせ、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムピレンスルホネート、トリフェニルスルホニウムドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10-カンファー-スルホネート、トリフェニルスルホニウムオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、・・・中略・・・が挙げられる。
・・・中略・・・
【0045】
前述の架橋性置換基を有する化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAベースのエポキシ化合物、ビスフェノールFベースのエポキシ化合物、ビスフェノールSベースのエポキシ化合物、ノボラック樹脂ベースのエポキシ化合物、レゾール樹脂ベースのエポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)ベースのエポキシ化合物、・・・中略・・・が挙げられる。
・・・中略・・・
【0051】
シリコンウエハー、または二酸化ケイ素、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、ニッケル、多くの半導体材料または窒化物のいずれかでコーティングされたウエハーなどの基板、あるいは半導体産業で既知の他の基板、あるいは例えばボトム層反射防止フィルム等の有機フィルムをその上に有する基板上に、フォトレジスト組成物をコーティングすることができる。フォトレジスト組成物は、スピンコーティング、カーテンコーティング、スロットコーティング、浸漬塗布、ローラー塗布、ブレード塗布等のプロセスによって塗布される。コーティングした後、コーティングが適切に露光され得るレベルまで溶媒を除去する。場合によっては、溶媒5%の残留物がコーティングに残り得るが、他の場合には、1%未満であることが必要とされる。乾燥は、ホットプレート加熱、対流加熱、赤外線加熱等によって達成することができる。コーティングは、所望のパターンを含むマスクを通してイメージワイズに露光される。
【0052】
記載のフォトレジスト組成物に適した放射線としては、例えば、紫外線(UV)、例えば水銀灯(254nm)の輝線スペクトル、KrFエキシマーレーザー(248nm)、およびArFエキシマーレーザー(193nm)、プラズマ放電およびシンクロトロン光源からの13.5nmなどの極端紫外線(EUV)、6.7nm露光などの極端紫外線を超える紫外線(BEUV)、シンクロトロン放射線などのX線が挙げられる。イオンビーム・リソグラフィーおよび電子ビームなどの荷電粒子線も使用され得る。
【0053】
露光に続いて、露光された被覆基板は任意選択的に、露光後(post exposure)焼付けして、例えば約10~約600秒間、約30~約200℃に加熱して、光酸発生剤の反応が高められる。これは、ホットプレート加熱、対流加熱、赤外線加熱等によって達成される。この加熱は、例えば約2~約5ミリ秒間のCO2レーザーパルス加熱などのレーザー加熱プロセスによっても行われ得る。両方の加熱プロセスを直列に組み合わせてもよい。
【0054】
更なる硬化を助けるために、パターン露光後に、フラッド(flood)露光プロセスが適用され得る。結果から、フラッド露光はネガティブトーンレジストの現像後のパターン崩壊を低減または排除するだけでなく、ラインエッジ粗さを低減することが示されている。例えば、予め露光されたレジストに532nm連続波レーザーを1~2秒間露光し、続いて湿式現像を行う。フラッドプロセスに続いて加熱工程を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0055】
非露光領域は次に、現像剤を使用して移動される。かかる現像剤としては、有機溶媒ならびに水性アルカリ溶液などの水溶液が挙げられる。有機溶媒を使用して非露光領域を除去する場合、一般に溶媒は、フォトレジスト組成物の調製で使用された溶媒よりも攻撃性が低い。水性アルカリ現像溶液の例は、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン、アルカノールアミン、ヘテロ環状アミン、テトラアルキル水酸化アンモニウム、コリン、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデカン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネンなどのアルカリ性化合物のうちの少なくとも1種類を、例えば約2~約5重量%など、約1~約10重量%の濃度で含む。所望の現像特性およびプロセスパラメーターに応じて、メタノールおよびエタノールなどの水溶性有機溶媒および界面活性剤も、アルカリ性水溶液に適切な量で添加され得る。
【0056】
現像後、露光および現像されているパターンの硬化をさらに高めるために、最終焼付け工程が含まれ得る。加熱プロセスは、例えば約30~約600℃で約10~約120秒間行うことができ、ホットプレート加熱、対流加熱、赤外線加熱などによって達成され得る。
【0057】
本発明の開示内容のネガティブ作用感光性組成物は、酸不安定性保護基によって保護される架橋性材料を含有する。かかる架橋剤としては、モノマー、オリゴマーおよびポリマーが挙げられる。かかるポリマーとしては、例えば、フェノール樹脂、クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂、カルボン酸含有樹脂、およびヒドロキシ基含有樹脂が挙げられる。これらの樹脂の反応性部分は、上記に挙げられる酸不安定性保護基によって保護される。この組成物は、上記に示される光酸発生剤、保護架橋性材料、および架橋剤の反応性部分が脱保護されると架橋剤と架橋する他の材料を含有する。例えば、湿潤剤、レベリング剤、着色剤、光増感剤等の感光性コーティングに一般的に存在する他の材料も、組成物中に存在してもよい。したがって、組成物の成分は、溶媒中で混合され、基板上にコーティングされ、適切な乾燥状態まで乾燥させる。コーティングを化学線に露光して、光酸発生剤の一部を酸に転化し、その酸が反応して、保護架橋性材料が脱保護される。架橋性材料はそれ自体で、または光発生した酸の助けを借りて、組成物を架橋する。非露光領域は、現像剤で除去され、イメージが残される。
【0058】
化学線に露光されていない領域に移動し得る酸が、保護材料によって捕捉されることから、フォトレジストに保護材料を含ませることによって、フォトイメージのコントラストが高められることも判明した。」
(ウ)「【実施例】
・・・中略・・・
【0070】
組成物実施例7:
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100mL中に、ポリヒドロスチレン0.50g、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]1.00gおよびトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート0.50gを添加し、室温で1時間撹拌した。組成物をシリコンウエハーに塗布し、500rpmで5秒間、続いて2000rpmで60秒間スピンコーティングした。次いで、被覆されたウエハーをホットプレート上で70℃にて5分間加熱して、およそ80nmの膜が形成された。30keV Eビームに、ウエハーをイメージワイズに露光し、90℃にて2分間、露光後焼付けした。モノクロロベンゼンとイソプロピルアルコールの50:50ブレンド中で20秒間パドル現像によって非露光領域を除去し、続いてイソプロピルアルコールですすぎを行った。ライン線量118pC/cmを適用し、約20nmの孤立したラインが得られた。図7は、実施例7について、その結果得られたラインを示す。
【0071】
組成物実施例8:
そのポリヒドロスチレンの代わりに、t-BOCで95.5%保護された0.5%ポリヒドロスチレンを使用して、実施例7を繰り返した。ライン線量118pC/cmを適用し、約22nmの孤立したラインが得られた。図8は、実施例8について、その結果得られたラインを示す。」

(当合議体注:【0070】、【0071】の「ポリヒドロスチレン」は、技術常識及び【0012】等の記載からみて、「ポリヒドロキシスチレン」の誤記と認められる。)

イ 引用文献2に記載された発明

上記「ア(ウ)」の【0070】~【0071】によれば、実施例8に係る「組成物」は、「プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100mL中に、」「t-BOCで95.5%保護された0.5%ポリヒドロキシスチレン」「0.50g、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]1.00gおよびトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート0.50gを添加し、室温で1時間撹拌」して調製して得られた「組成物」である。なお、【0070】、【0071】の「ポリヒドロスチレン」は、「ポリヒドロキシスチレン」の誤記であるとして訂正した。

そうしてみると、引用文献2には、実施例8として、以下の「組成物」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100mL中に、t-BOCで95.5%保護された0.5%ポリヒドロキシスチレンを0.50g、ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]を1.00g、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを0.50g、を添加し、室温で1時間攪拌して調製した組成物。」

(2)対比

本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

ア 酸活性化架橋剤

引用発明の「ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]」は、技術的にみて、本件補正発明の「酸活性化架橋剤」に相当する。

(当合議体注:「ポリ[(o-クレジルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]」が、「酸活性化架橋剤」であることは、本件出願の明細書の【0058】、【0060】から確認できる事項である。)

したがって、引用発明の「組成物」は、本件補正発明の「b.少なくとも1つの酸活性化架橋剤」「を含む」とする要件を満たす。

イ 光酸発生剤

引用文献2の【0035】~【0036】には、「トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート」が「光酸発生剤(PAG)」であることが記載されていることから、引用発明の「トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート」は、本件補正発明の「光酸発生剤」に相当する。

したがって、引用発明の「組成物」は、本件補正発明の「c.少なくとも1つの光酸発生剤」「を含む」とする要件を満たす。

ウ ポリマー

引用発明の「ポリヒドロキシスチレン」に関して、引用文献2の【0045】には、「架橋性置換基を有する化合物の例」として、「ポリ(ヒドロキシスチレン)」が記載されており、その化学構造からみて架橋性官能基を複数有することは明らかであることから、引用発明の「ポリヒドロキシスチレン」は、本件補正発明の「2つ以上の架橋性官能基を含」む「ポリマー」に相当する。

また、引用発明の「t-BOCで95.5%保護された」「ポリヒドロキシスチレン」の技術的意味に関して、「t-BOC」が「酸不安定保護基」であることは、本件出願の明細書の【0066】からも確認できる事項であり、また、引用文献2には、「本発明の開示内容のネガティブ作用感光性組成物は、酸不安定性保護基によって保護される架橋性材料を含有する。かかる架橋剤としては、モノマー、オリゴマーおよびポリマーが挙げられる。・・・中略・・・これらの樹脂の反応性部分は、上記に挙げられる酸不安定性保護基によって保護される」(【0057】)と記載されていることから、引用発明の「t-BOCで95.5%保護された」「ポリヒドロキシスチレン」は、「ポリヒドロキシスチレン」の架橋性官能基のうち「95.5%」が酸不安定保護基である「t-BOC」により保護されている「ポリヒドロキシスチレン」であると理解できる。

以上総合すると、引用発明の「t-BOCで95.5%保護された」「ポリヒドロキシスチレン」は、本件補正発明の「a.2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマー」に相当し、引用発明の「組成物」は、本件補正発明の「a.2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマー」「を含む」とする要件を満たす。

エ 複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物

(ア)「複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物」における「複合トリガー」の技術的意味

「複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物」における「複合トリガー」の技術的意味に関して、本件出願の明細書の【0054】~【0056】及び【化1】には、光酸発生剤である「PAGが化学線に露光されると、放射線生成酸が架橋官能基の存在下で架橋剤を活性化する場合にのみ架橋剤と架橋するために現在利用可能である架橋官能基を脱保護する酸が生成され」、「保護された架橋性官能基Aは、酸H+の存在下であるときに脱保護され、官能基が-OHである脱保護された化合物Bをもたらす」工程1と、「酸の存在下での架橋剤Cと架橋性官能基とが、ここで一緒に反応して硬化材料Dを得ることができる」工程2の2段階プロセスが記載されていることから、当該明細書の記載を考慮すると、本件補正発明の「複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物」は、上記工程1及び工程2の2段階プロセスを行い得る「ネガ作用フォトレジスト組成物」であると理解される。

(イ)引用発明の「組成物」

上記理解に基づき、引用発明の「組成物」が「複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物」であるか検討する。

引用文献2は、技術分野及び課題が「ネガ型フォトレジスト組成物」における「フォトレジストのより一層微細な解像度を得ること」(【0001】、【0005】)であり、その解決手段として「ネガティブ作用感光性組成物」に関する発明を開示するもの(【0021】、【0057】)であり、その実施例である引用発明の「組成物」は、「非露光領域を除去」して「ライン」を得ていること(【0070】、【0071】)から、引用発明の「組成物」は、本件補正発明の「ネガ作用フォトレジスト組成物」に相当する。

また、引用文献2の【0057】には、「ネガティブ作用感光性組成物」について、「組成物の成分は、溶媒中で混合され、基板上にコーティングされ、適切な乾燥状態まで乾燥させる。コーティングを化学線に露光して、光酸発生剤の一部を酸に転化し、その酸が反応して、保護架橋性材料が脱保護される。架橋性材料はそれ自体で、または光発生した酸の助けを借りて、組成物を架橋する。非露光領域は、現像剤で除去され、イメージが残される」ことが記載されていることから、引用発明の「組成物」は、本件出願の明細書に記載の上記工程1及び工程2の2段階プロセスを行い得るものである。

以上を総合すると、引用発明の「組成物」は、本件補正発明の「複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物」に相当する。

(3)一致点・相違点の認定及び判断

上記(2)によれば、本件発明と引用発明とは、

「 a.2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマーと、
b.少なくとも1つの酸活性化架橋剤と、
c.少なくとも1つの光酸発生剤と、を含む、複合トリガーネガ作用フォトレジスト組成物。」である点で一致し、相違点はない。

すなわち、本件補正発明は引用文献2に記載された発明である。

また、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)審判請求人の主張について

令和5年2月8日に提出された手続補正書(方式)の【請求の理由】4において、審判請求人は概略、次の点を主張する。

(当合議体注:下線は便宜のため当合議体で付与したものである。)。

「 本願発明と引用例1~4とを対比すると、本願発明では、「少なくとも1つのポリマーであって、2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマー」を含むのに対し、引用例1~4では、かかる構成について記載がない点で相違します。・・・引用例1~4には、架橋性官能基中の酸不安定保護基の割合を特定範囲とする必要性及び特定範囲とした場合の作用効果について全く記載も示唆もありません。」

上記主張について検討するに、上記「3(2)ウ」で説示したとおりであり、引用発明の「t-BOCで95.5%保護された」「ポリヒドロキシスチレン」は、本件補正発明の「a.2つ以上の架橋性官能基を含み、前記官能基の90~99%が、酸不安定保護基に結合している、少なくとも1つのポリマー」に相当する。なお、その効果も引用文献2の【0005】、【0058】、【0071】に記載されているように、引用発明が具備する効果である。

以上のとおり、請求人の主張は採用の限りでない。

(5)小括

以上によれば、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

また、本件補正発明は、当業者が引用文献2に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正の却下の決定のむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものである。

したがって、本件補正は同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]に記載のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2」1(1)に記載したとおりである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、

[理由1]本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、又は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、[理由2]本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、又は、引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2015/0241773号明細書

引用文献2.特表2016-517532号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献のうち引用文献2の記載事項は、上記「第2」3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、上記「第2」3で検討した本件補正発明から、上記「第2」2で述べた限定を除いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正発明は、上記「第2」3(2)~(5)で述べたとおり、引用文献2に記載された発明であるか、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された発明であるか、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-020474

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  • 2023-012760拒絶査定不服審判 / 2024-11-19 / 請求不成立複合トリガーモノマー含有フォトレジスト組成物および方法
    同じ当事者: マクレランド,アレキサンドラ、ヤン,ドンシュー、ロス,ジョン,エル.
同じ論点・分野の審決(審決分類)407件(121・G03F、575・G03F)
  • 2024-014947拒絶査定不服審判 / 2026-03-05 / 請求不成立ペリクル、露光原版、露光装置、ペリクルの製造方法及び半導体装置の製造方法
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
  • 2024-001835拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 請求不成立装置、方法、プログラム、感光性樹脂組成物の製造方法および感光性樹脂積層体の製造方…
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
  • 2023-016916拒絶査定不服審判 / 2026-01-19 / 請求不成立複数のレーザビームを発生させるための装置及び方法
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
  • 2024-002326拒絶査定不服審判 / 2025-05-15 / 請求不成立パターンデータ、パターンデータの作製方法およびフォトマスク
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F
  • 2023-014550拒絶査定不服審判 / 2025-02-13 / 請求不成立半導体デバイスの製造方法
    共通の審決分類: 121・G03F、575・G03F

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