2022-019916
複合金属遠赤外線医療用パッチ
- 審判番号
- 2022-019916
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-028156外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月08日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】▲緑▼能奈米科技有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本願は、令和3年2月25日(パリ条約による優先権主張2020年11月5日、台湾)の出願であって、令和4年3月22日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年5月16日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和4年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和4年12月8日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和4年12月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「遠赤外線繊維を含む織物である遠赤外線基層と、前記基層の表面上に形成された粘着層とを含むパッチであって、前記遠赤外線繊維は、ポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材を含み、前記基層の表面の面積の95%以下が前記粘着層で覆われるように、前記粘着層が波模様を有し、前記パッチが、流れ方向及び横断方向の両方で150%~300%の範囲の伸長度を有する、パッチ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年5月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「基層と前記基層の表面上に形成された粘着層とを含むパッチであって、前記基層の表面の面積の95%以下が前記粘着層で覆われるように、前記粘着層が波模様を有し、前記パッチが、流れ方向で150%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で120%~300%の範囲の伸長度を有するか、又は前記パッチが流れ方向で120%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で150%~300%の範囲の伸長度を有する、パッチ。」
2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基層」について、上記1(1)のとおり「遠赤外線繊維を含む織物である遠赤外線基層」という限定及び「前記遠赤外線繊維は、ポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材を含」むという限定を付加するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「流れ方向で150%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で120%~300%の範囲の伸長度を有するか、又は
前記パッチが流れ方向で120%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で150%~300%の範囲の伸長度を有する」という事項について、上記1(1)のとおり「流れ方向及び横断方向の両方で150%~300%の範囲の伸長度を有する」という限定を付加したものであって、補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
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ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-328231号公報(平成10年12月15日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図1及び2とともに、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は粘着シートに関し、詳しくは、絆創膏、粘着包帯、ハップ剤などのような皮膚に貼付する医療用の粘着テープあるいはシートとして好適な粘着シートに関する。」
「【0007】【発明の実施の態様】支持体としては、通気性もしくは透湿性にして、かつ防水性を有するものが使用される。一般的には、水の接触角が大きくて水に濡れ難い材料からなる多孔シート、あるいは水に濡れ易い材料からなる多孔シートであるがそれを撥水処理したもの、などが例示される。水に濡れ難い材料の多孔シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン類、あるいはポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどのその他のプラスチック類などの有機高分子からなる穿孔フィルム、連続気泡を有する発泡シート、織物、編み物、不織布、紙などが例示される。水に濡れ易い材料からなる多孔シートとしては、木綿、セルロース、ポリビニルアルコールなどの有機高分子からなる織物、編み物、不織布、紙、ポリビニルアルコールの穿孔フィルムなどが例示される。水に濡れ易い材料からなる多孔シートは、周知の撥水剤にて撥水処理して使用される。なお、上記の水に濡れ難い材料の多孔シートも必要に応じて撥水処理して使用される。支持体は、非伸縮性であってもよく、また縦方向および/または横方向に伸縮性を有するものであってもよい。」
「【0009】本発明においては、粘着剤は上記した支持体の片面または両面に条状で複数条設けられ、各条間に通気路として機能する空間を設ける。以下該空間を条間空間と称す。条状の粘着剤層は、その厚さは使用する粘着剤の特性や本発明の粘着シートの使用目的によって適宜に決定してよいが、一般的には5~200μm程度、特に10~100μm程度が好ましい。一方、粘着剤層の幅は、0.5~10mm程度である。【0010】粘着剤層は、条間空間が確保し得る限り、直線状、波状、あるいはその他の形状であってよい。しかし、一般的に条間空間の断面積の経時的な変化が少ない波状条が特に好ましい。波状条の形状については、サインカーブ、疑似サインカーブ、三角波、円弧波など、基線に対して対称に上下する波形であってもよく、基線の片側だけで円弧、三角、楕円、あるいはその他の形状で波行する波形などであってもよい。いずれの波形であっても、その波形幅、波の周期については、本発明の使用目的に応じて適宜設定することができる。」
「【0015】以下、本発明を図例などにより一層詳細に説明する。図1は、本発明の実施例の部分平面図であり、図2は図1におけるX-X線に沿った部分拡大断面図である。図1および図2において、1は支持体であり、2はサインカーブ状の粘着剤層であり、3は粘着剤層2、2間に形成された条間空間である。条間空間3も粘着剤層2、2の間に存在する故にサインカーブ状となっており、その断面積、即ち条間空間3の幅Wと粘着剤層2の厚みTとの積は、上記した大きさを有する。」
「【0017】実施例1仮基材シートとして片面をシリコーン処理した剥離紙を使用し、前記した櫛掻法により該剥離紙のシリコーン処理面上に2-ヒドロキシエチルアクリレート10重量部とアクリル酸2-エチルヘキシルエステル90重量部とを共重合させて得られたアクリル酸系粘着剤溶液を使用して図1に示すようなサインカーブ状の条を多数形成し、ついで乾燥して最後に剥離紙上の粘着剤層を厚さ25μmの多孔性ポリウレタンフィルム(大倉工業社製)からなる支持体上に転写し、かくして粘着剤層の幅5mm、粘着剤層の厚み50μm、条間空間の幅1mm、条間空間の断面積0.5×10-3cm2、サインカーブの周期100mm、サインカーブの振幅50mmの粘着シートを得た。」
「【図1】[図:0001418493000001.jpg]」
「【図2】[図:0001418493000002.jpg]」
(イ)これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「織物である支持体と、支持体の片面に設けられた粘着剤層とを有するハップ剤などのような皮膚に貼付する医療用の粘着シートであって、粘着剤層は、条状で複数条設けられ、波状条であり、支持体は、縦方向および横方向に伸縮性を有する粘着シート」
イ 引用例4
本願の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2016/0151300号明細書(2016年(平成28年)6月2日出願公開。以下、「引用例4」という。)には、図1ないし3とともに、次の記載がある。なお、丸括弧内は参考のために当審で付した和訳である。
「[図:0001418493000003.jpg]」
(キネティックテープをはじめとする従来の医療用テープの形態の物品は、様々な用途に使用されているが、遠赤外線を安全に発生させることができる物質群を組み込んで、粘着剤やテープの裏地に配合したテープの形態の物品は販売されていなかった。遠赤外線を発生させる物質を接着剤や裏地に配合することで、血行の改善、ストレス解消、疲労や怪我からの回復の促進、精神的な覚醒や解毒の向上など、さまざまな健康増進効果が得られる。)
「[図:0001418493000004.jpg]」
(好ましくは、接着剤または裏地材は、限定するものではないが、テープ製造において通常使用されるものから作られ、これらに限定されないが、例えば、綿またはポリエステルなどの布、ゴム、紙、酢酸セルロース、ホットメルト接着剤又は、最終製品に応じたアクリルである。微粉砕された遠赤外線発生物質または液体としては、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅、トルマリン、二酸化ケイ素、二酸化アルミニウム、ゲルマニウム、酸化鉄、炭酸カルシウム又はこれらの混合物からなる群で、意図された粒径が0.5ミクロン以上で、最終製品の総重量の95%までを占めるものであってもよい。)
「[図:0001418493000005.jpg]」
(本発明は、新規な粘着剤または裏地の形態の物品に関し、粘着テープの形態で、皮膚との直接接触に適している。遠赤外線発生物質の微粉砕粉又は液体を、そのような材料の処理の前後に接着剤または裏地材に添加又は混合することにより、最終製品は独自の健康増進効果を提供する。このような物質には、マグネシウム、マンガン、ゲルマニウム、鉄、亜鉛、銅、トルマリン、二酸化ケイ素、二酸化アルミニウム、酸化鉄、炭酸カルシウム又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。また、解毒の促進、鎮痛効果、身体の健康維持のサポートなど、健康上の利点も加える成分を添加することができる。)
ウ 引用例5
本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2011-245116号公報(平成23年12月8日出願公開。以下、「引用例5」という。)には、図1ないし4とともに、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、基材シートの一面に有効成分を含む部分を有し、基材シートの他面に、身体に貼り付けて使用するための粘着剤層を有している貼着シートに関するものである。【背景技術】【0002】下肢や上肢の筋腱に、疲労やダメージによっていわゆる筋肉痛であるとか肩こりというような軽度の身体症状が起こることは、日常経験するところであるが、捻挫や慢性症に至ることもあるので、適時に手当てをする必要がある。このため、例えばスポーツ障害として起こる各種症状には関節、筋肉などにテープを巻いて行うテーピングによって患部を固定するなどの処置を施し、肩こりなどにはパップ剤を患部に貼付し、炎症を抑制するなどの処置が施される。【0003】テーピングは患部を保護するための療法であり、パップ剤は患部に薬効成分の作用を及ぼす療法である。筋腱の疲労やダメージのような身体症状が出ている場合、血行の不良や患部の冷え等も生じていると考えられるので、これらに総合的に対処するには、例えば、患部を固定すると同時に血行を促進するというような、複合的な処置を施すことも必要になる。しかし、テーピングで固定されている患部周辺の血行が促進されるとは思われず、望ましい処置とはいえないことになる。」
「【0006】本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、患部を固定するとともに、血行を促進することができる貼着シートを提供することである。また、本発明の他の課題は、通気性が良く、かつ、耐水性を有することによって、水に濡れても使用し続けることができる貼着シートを提供することである。」
「【0011】基材シートとしては、一方向に伸縮性を有し、かつ、上記一方向に対する交差方向には伸縮性を有しない織布を使用することが望ましい。織布を使用することで、通気性を確保し易く、長期間の連続使用でも、蒸れ等の発生をある程度抑制することができる。伸縮性を利用すれば、貼付部分に張力を掛けることができるけれども、負荷を掛けることが望ましくない場合もあるので、交差方向には伸縮性を有しない構成とすれば、下肢又は上肢の動きを固定したくない方向には伸縮性方向を合わせ、動きを固定する方向には伸縮性を有しない方向を合わせる使用方法が可能になる。ただし、交差する両方向に伸縮性を有するもの、或いは、交差する両方向に伸縮性を有しないものも基材シートに使用することができる。なお、上記遠赤外線による作用をより有効にするために、基材シートとして遠赤外線を吸収し、再び放射し易い遠赤外線加工繊維を用いて編織したシートを使用することが得策である。」
エ 引用例6
本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2019-108646号公報(令和元年7月4日出願公開。以下、「引用例6」という。)には、図1aないし22とともに、次の記載がある。
「【0002】本発明は、遠赤外線繊維並びにその成分及び使用に関する。具体的には、本発明は、遠赤外線繊維を製造するためのマスターバッチ、これによって製造された遠赤外線繊維及び遠赤外線繊維の製品に関する。遠赤外線繊維は、男性性機能を改善することができる下着パンツの製造に特に有用である。」
「【0009】本発明の目的は、第1のポリマーマトリックスと、第1のポリマーマトリックス中に分散された第1の遠赤外線充填材と、を含み、第1の遠赤外線充填材が、以下の元素、すなわち、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、及びマグネシウム(Mg)を含有し、かつ第1の遠赤外線充填材が、以下の元素、すなわち、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、及びアンチモン(Sb)を含有しない、遠赤外線繊維を製造するためのマスターバッチを提供することである。」
「【0015】本発明のいくつかの実施形態において、遠赤外線繊維はコアシェル繊維であって、コア層と、コア層を遠赤外線繊維の長軸方向に沿ってコーティングするシェル層と、を有し、コア層はマスターバッチと第2のポリマーとを用いることによって製造され、シェル層は第3のポリマーによって形成されている。遠赤外線繊維のシェル層は、第3のポリマー中に分散された第2の遠赤外線充填材を更に含有する場合があり、第2の遠赤外線充填材は、以下の元素、すなわち、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、及びマグネシウムを含有し、かつ以下の元素、すなわち、スカンジウム、バナジウム、クロム、コバルト、及びアンチモンを含有しない。【0016】本発明のいくつかの実施形態において、第2のポリマー及び第3のポリマーは独立して以下の群、すなわち、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(ビニルクロライド)、ポリプロピレン、ポリアミド、及びシリコーンから選択される。シリコーンが好ましい選択肢である。」
オ 引用例7
本願の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2020/0128977号明細書(2020年(令和2年)4月30日出願公開。以下、「引用例7」という。)には、図1ないし10とともに、次の記載がある。なお、丸括弧内は参考のために当審で付した和訳である。
「[図:0001418493000006.jpg]」
(また、本開示は、本発明によって提供される非動力エネルギー層を有するキルト構造を作製するための生体エネルギー繊維又は遠赤外線繊維も含み、本発明は、第1のポリマーマトリックス及び第1の生体エネルギー充填材又は第1の遠赤外線充填材で構成される。前記第1の生体エネルギー充填材又は前記第1の遠赤外線充填材は、前記第1のポリマーマトリックス中に分散しており、前記第1の生体エネルギー充填材又は前記第1の遠赤外線充填材は、以下の元素、すなわち、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)及びマグネシウム(Mg)を含有し、そして、前記第1の生体エネルギー充填材又は前記第1の遠赤外線充填材は、以下の元素、すなわち、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、アンチモン(Sb)を含有しない。)
カ 引用例8
本願の優先日前に頒布された刊行物である、実願平4-31681号(実開平6-19718号)のCD-ROM(平成6年3月15日出願公開。以下、「引用例8」という。)には、図1及び2とともに、次の記載がある。
「【0003】【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記の縦伸び織物を基布とする伸縮性粘着テープは、長さ方向には伸縮性があっても、幅方向には伸縮性が皆無であるため、関節に貼って屈伸した際に筋肉の太さの変化に上記のテープが追随することができず、そのため上記テープの縁部が剥離して浮き上がり、またスパンデックス糸条を織物用繊維で被覆して経糸に使用するので、スパンデックス糸条の伸縮が被覆層の織物用繊維で制限されて粘着テープの伸度および伸縮弾性が小さくなり、そのため関節の屈伸を助ける力が不足すると共に、関節を屈伸した際に剥離し易いという問題があった。【0004】この考案は、長さ方向および幅方向の双方に大きな伸縮性を有していて関節の屈伸に追随して伸縮し、しかも伸縮弾性が大きくて関節の屈伸を助ける作用に優れた伸縮性粘着テープを提供するものである。【0005】【課題を解決するための手段】この考案の伸縮性粘着テープは、非伸縮性合成繊維糸条と弾性繊維糸条とからなるラッセル編地の片面に粘着剤層を設けた伸縮性粘着布をウエールに沿って切断してなり、上記の非伸縮性合成繊維糸条が鎖編を柱とするネットを形成し、この鎖編に沿って上記の弾性繊維糸条が挿入されており、縦方向および横方向に伸縮性を有することを特徴とする。」
「【0015】上記の実施例1~3に使用したラッセル編地からウエール方向(経方向)に長い試料およびコース方向(緯方向)に長い試料をそれぞれ幅2.54cm、長さ10cmの大きさに切取り、これをインストロン引張り試験機に取付け、300mm/分の速度で長さ方向に引張り、荷重が2.25kgになるまでの荷重と伸度の関係を試験した。その結果を下記の表1に示す。【0016】表1実施例番号 1 2 3荷重1.00kgおける経/緯の伸度(%) 150/89 119/56 87/57荷重1.50kgおける経/緯の伸度(%) 175/105 142/69 116/74荷重2.25kgおける経/緯の伸度(%) 200/120 161/80 140/89」
キ 周知技術
(ア)周知技術1
上記イ及び上記ウに示されるように、次の事項は本願優先日以前に周知の技術的事項である。
「貼着シートにおいて、遠赤外線繊維を含む織物を基層とすること」(以下「周知技術1」という。)
(イ)周知技術2
上記エ及び上記オに示されるように、次の事項は本願優先日以前に周知の技術的事項である。
「遠赤外線繊維の具体的な構成として、ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材と、を含む構成とすること」(以下「周知技術2」という。)
(ウ)周知課題
上記イ及びウに示されるように、次の事項は本願優先日以前に周知の課題である。
「患部に貼付する医療用シートにおいて血行促進を目的として遠赤外線による作用を用いること」(以下「周知課題」という。)
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「支持体」は、本件補正発明の「基層」に相当する。
(イ)引用発明の「織物である支持体」は、本件補正発明の「遠赤外線繊維を含む織物である遠赤外線基層」と、「織物である基層」の限りで一致する。
(ウ)引用発明の「粘着剤層」は、本件補正発明の「粘着層」に相当するから、引用発明の「片面に設けられた粘着剤層」は、本件補正発明の「表面上に形成された粘着層」に相当する。
(エ)引用発明の「ハップ剤などのような皮膚に貼付する医療用の粘着シート」は、本件補正発明の「パッチ」に相当する。
(オ)引用発明の「粘着剤層は、条状で複数条設けられ、波状条であ」ることは、本件補正発明の「前記粘着層が波模様を有」することに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「織物である基層と、前記基層の表面上に形成された粘着層とを含むパッチであって、前記粘着層が波模様を有する、パッチ。」
<相違点1>
織物である基層に関して、本件補正発明は、「遠赤外線繊維を含む織物であ」り、「前記遠赤外線繊維は、ポリマーマトリックス及び前記ポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材を含」むものであるのに対し、引用発明は、「織物である支持体」であって、そのような遠赤外線繊維を含んだ遠赤外線基層ではない点。
<相違点2>
本件補正発明は「前記基層の表面の面積の95%以下が前記粘着層で覆われる」ものであるのに対し、引用発明は、基層の表面の面積のどの程度が粘着剤層で覆われるものであるか、数値が不明である点。
<相違点3>
本件補正発明は「パッチが、流れ方向及び横断方向の両方で150%~300%の範囲の伸長度を有する」ものであるのに対し、引用発明は「支持体」において「縦方向および横方向に伸縮性を有する」ものではあるが、「パッチ」として「流れ方向及び横断方向の両方での伸長度」がどの程度であるか不明である点。
(4)判断
以下、相違点1ないし3について検討する。
ア 相違点1について
上記(2)キ(ウ)のとおり、「患部に貼付する医療用シートにおいて血行促進を目的として遠赤外線による作用を用いること」は周知課題であるから、当該課題は「ハップ剤などのような皮膚に貼付する医療用の粘着シート」である引用発明においても内在する課題である。
そして、上記(2)キ(ア)及び(イ)のとおり、「貼着シートにおいて、遠赤外線繊維を含む織物を基層とすること」や「遠赤外線繊維の具体的な構成として、ポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材と、を含む構成とすること」は周知技術であり、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用は、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎない。
そうすると、引用発明の織物である支持体を周知技術1の遠赤外線繊維を含む遠赤外線基層とし、その際の遠赤外繊維として、周知技術2のポリマーマトリックス及びポリマーマトリックス中に分散された遠赤外線充填材を含む構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
してみると、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、引用発明に周知技術を適用することで、当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2について
引用例1の【0017】には、引用発明の「粘着剤層」の例として、「粘着剤層の幅5mm」、「条間空間の幅1mm」のものが記載されており、このとき、粘着剤の幅方向には、5/(5+1)=5/6で粘着剤が存在していることとなり、幅方向と直交する長手方向には粘着剤が延在していると推認されるから、基層における粘着剤の面積割合は、約83%(=5/6)となる。
引用発明において、支持体の表面の面積のうちどの程度を粘着剤層で覆われるようにするかは、パッチの粘着性、通気性等を考慮して当業者が適宜決め得ることであり、引用例1の上記記載を参考にして、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることに格別の困難性はない。
ウ 相違点3について
粘着性シートにおいて伸縮性の有無は基層に大きく依存することは例示するまでもなく技術常識であるから、基層を構成する支持体として縦方向及び横方向に伸縮性を有する引用発明は、基層に加えて粘着層を含んだパッチとしても、縦方向及び横方向に伸縮性を有するものであることは明らかである。
また、上記(2)カにおける「経/緯の伸度(%)」に100(%)を加算したものが本件補正発明の「流れ方向及び横断方向」の「伸長度」に当たることを踏まえると、伸縮性の粘着布において、流れ方向及び横断方向の両方で150%~300%の範囲の伸長度のものは、従来から当業者が用いていた数値範囲のものといえるし、本件補正発明において「流れ方向及び横断方向の両方で150%~300%の範囲の伸長度」とすることに臨界的意義又は特異な効果はみられない。
そうすると、一般的に数値範囲を好適化することは当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明においても、具現化にあたり、その数値範囲を好適化し、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年5月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-5に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、この出願の請求項6-9に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、そして、この出願の請求項10-11に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、それぞれ、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1、その記載事項及び周知技術は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、遠赤外線に係る限定事項を削除するとともに、流れ方向又は横断方向における一方の伸長度に係る数値範囲を120~300%に拡張したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]2(3)に記載した一致点で一致し、相違点2に加えて、本願発明が「前記パッチが、流れ方向で150%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で120%~300%の範囲の伸長度を有するか、又は
前記パッチが流れ方向で120%~300%の範囲の伸長度を有し、横断方向で150%~300%の範囲の伸長度を有する」ものであるのに対し、引用発明は「パッチ」の「流れ方向及び横断方向の両方での伸長度」がどの程度であるか不明である点(以下、「相違点4」という。)で相違する。
これら相違点について検討するに、上記第2[理由]2(4)イに示したとおり、相違点2に係る本願発明の構成とすることに格別の困難性はない。
また、相違点4に係る本願発明の構成は、相違点3に係る本件補正発明の構成をさらに限定したものであるから、上記第2[理由]2(4)ウと同様の理由により、引用発明において上記相違点4に係る事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-019916