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特許拒絶査定不服審判

2022-019599

スキニング装置

審判番号
2022-019599
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-062820外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月02日
審決日
2024年05月21日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .537-WZ (A61H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 62820「スキニング装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月17日出願公開、特開2022-158125〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 6項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和 3年 4月 1日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

令和 4年 4月12日付け:拒絶理由通知書

同 年 7月19日 :意見書及び手続補正書の提出

同 年 7月26日付け:拒絶査定

同 年12月 2日 :審判請求書及び同時に手続補正書の提出

令和 5年 3月31日 :手続補正書(方式)の提出

同 年 7月11日付け:拒絶理由通知書

同 年12月14日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 当審の判断

1 当審の拒絶理由

当審が令和 5年 7月11日付けで通知した拒絶理由は、この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。

記

発明の詳細な説明の記載(特に、段落【0002】、【0003】を参照。)からみて、発明が解決しようとする課題は、従来のスキニング装置では駆動回路による所定の周波数を有する駆動信号の出力によりブレードが高頻度に振動し、静音の効果が悪くなり、使用者の体験に大きい影響を与えるおそれがあるため、この従来の技術の欠陥と欠点を解決することであると解されるところ、発明の詳細な説明(特に、段落【0023】、【0024】、【0050】を参照。)では、「本発明の実施例に係るスキニング装置中のスキニング装置駆動回路は、目標周波数、目標デューティ比(duty ratio)を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する。それにより、スキニング装置の静音の効果を獲得し、製品の品質と使用者の体験を向上させることができる。」(【0023】)、「前記目標周波数の範囲は24.5~25.5KHzであり、前記目標デューティ比の範囲は37%±2%であり、前記目標駆動電圧の範囲は2.7~4.2Vである。」(【0024】)、「獲得した目標駆動電圧は駆動信号出力インタフェース150によって超音波刃物に出力され、目標駆動電圧により超音波刃物が超音静音振動をするように駆動する。」(【0050】)との記載により、本願の請求項1に係る発明の発明特定事項に対応させた事項の説明がされているものの、「静音」の状態の定義や、上記数値範囲と本願の課題である静音の実現との因果関係が何ら説明されていないから、出願時の技術常識に照らしても、本願の請求項1に係る発明の上記構成により、上記課題のスキニング装置の静音を実現できるとは理解することができない。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決することができると認識し得る範囲のものであるということはできない。また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決することができると認識し得る範囲のものであるということもできない。

よって、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

2 本願発明

令和 5年12月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「超音波刃物と当該超音波刃物に連結されるスキニング装置本体を含み、
前記スキニング装置本体は、
第一ケースと、
前記第一ケースと対向するように結合される第二ケースと、
前記第一ケースと前記第二ケースとの間に取り付けられ、前記第一ケースと前記第二ケースにより包囲され、かつ前記超音波刃物に電気接続されるスキニング装置駆動回路と、
前記第一ケースと前記第二ケースとの間に取り付けられ、前記第一ケースと前記第二ケースにより包囲され、かつ前記スキニング装置駆動回路に電気接続されるバッテリーモジュールとを含み、
前記スキニング装置駆動回路は、目標周波数の範囲が24.5~25.5KHzであり、目標デューティ比の範囲が37%±2%である駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより範囲が2.7~4.2Vである目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動し、
前記スキニング装置駆動回路は、バッテリーモジュールに電気接続される電源回路と、前記電源回路に電気接続される主制御回路と、前記主制御回路と前記電源回路に電気接続される駆動スイッチ回路と、前記電源回路と前記駆動スイッチ回路に電気接続される電圧変換回路と、前記電圧変換回路に電気接続される駆動信号出力インターフェースとを含み、
前記超音波刃物はブレード金属部と前記ブレード金属部上に形成される超音波振動部を含み、前記超音波振動部は前記駆動信号出力インターフェースに連結され、
前記電源回路は電源電圧を供給し、前記主制御回路は、目標周波数、目標デューティ比を具備する前記駆動信号を前記駆動スイッチ回路に送信し、前記駆動スイッチ回路は前記駆動信号により前記電源回路が供給した前記電源電圧を変換させることにより前記目標駆動電圧を獲得し、前記電圧変換回路は前記駆動信号出力インターフェースにより前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することを特徴とするスキニング装置。」

3 特許法第36条第6項第1号についての当審の判断

(1)サポート要件について

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「サポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号。また、知財高裁平成28年(行ケ)第10147号、知財高裁平成28年(行ケ)第10057号、知財高裁平成21年(行ケ)第10296号参照)。

このような観点に立ち、以下、検討する。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について

本願明細書の発明の詳細な説明には、特に本願発明に関連する以下の記載がある。(下線は当審で付したものである。以下同じ。)

ア「【0002】

現在、人々は通常、スキニング装置等のような装置により皮膚上の老化の角質を除去するとともに皮膚を引き上げる。通常、従来のスキニング装置の駆動回路は所定の周波数を有している駆動信号を出力することによりブレードが高頻度に振動するように駆動し、駆動信号の周波数を調節することによりブレードの振動の強弱を調節する。しかしながら、従来のスキニング装置を使用するとき、スキニング装置の振動により静音の効果が悪くなり、使用者の体験に大きい影響を与えるおそれがある。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0003】

従来の技術の一部分の欠陥と欠点を解決するため、本発明の実施例において、スキニング装置駆動回路により目標周波数と目標デューティ比を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する、スキニング装置を提供する。」

イ「【0004】

本発明の実施例において、スキニング装置を提供する。そのスキニング装置は超音波刃物と当該超音波刃物に連結されるスキニング装置本体を含む。前記キニング装置本体は、第一ケースと、前記第一ケースと対向するように結合される第二ケースと、前記第一ケースと前記第二ケースとの間に取り付けられ、前記第一ケースと前記第二ケースにより包囲され、かつ前記超音波刃物に電気接続されるスキニング装置駆動回路と、前記第一ケースと前記第二ケースとの間に取り付けられ、前記第一ケースと前記第二ケースにより包囲され、かつ前記スキニング装置駆動回路に電気接続されるバッテリーモジュールとを含む。前記スキニング装置駆動回路は、目標周波数、目標デューティ比を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する。

【0005】

本発明の実施例において、前記目標周波数の範囲は24.5~25.5KHzであり、前記目標デューティ比の範囲は37%±2%であり、前記目標駆動電圧の範囲は2.7~4.2Vである。」

ウ「【0014】

本発明の前記1つまたは複数の技術的事項により次のような発明の効果を獲得することができる。本発明の実施例に係るスキニング装置は所定のスキニング装置駆動回路を使用することにより、目標周波数、目標デューティ比を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する。それにより、スキニング装置の静音の効果を獲得し、製品の品質と使用者の体験を向上させることができる。」

エ「【0021】

…前記スキニング装置駆動回路10は、前記超音波刃物60に電気接続され、かつ超音波刃物60が振動するように駆動する。超音波刃物60が振動することにより皮膚の汚れをきれいに除去することができる。」

オ「【0023】

本発明の実施例に係るスキニング装置中のスキニング装置駆動回路は、目標周波数、目標デューティ比(duty ratio)を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する。それにより、スキニング装置の静音の効果を獲得し、製品の品質と使用者の体験を向上させることができる。

【0024】

好ましくは、前記目標周波数の範囲は24.5~25.5KHzであり、前記目標デューティ比の範囲は37%±2%であり、前記目標駆動電圧の範囲は2.7~4.2Vである。

【0025】

具体的に、図2を参照すると、前記スキニング装置駆動回路10は例えば、電源回路110、主制御回路(Main control circuit)120、駆動スイッチ回路130、電圧変換回路140および駆動信号出力インターフェース150を含むことができる。主制御回路120は前記電源回路110に電気接続され、駆動スイッチ回路130は前記主制御回路120と前記電源回路110に電気接続され、電圧変換回路140は前記電源回路110と前記駆動スイッチ回路130に電気接続され、駆動信号出力インターフェース150は前記電圧変換回路140に電気接続されることによりスキニング装置の超音波刃物を駆動する。前記電源回路110は電源電圧を供給し、前記主制御回路120は、目標周波数、目標デューティ比を具備するパラス信号を前記駆動スイッチ回路130に送信する。前記駆動スイッチ回路130は前記主制御回路120が出力した前記パルス信号により前記電圧変換回路140を制御し、それにより前記電源回路110が供給した前記電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得する。前記電圧変換回路140は前記駆動信号出力インターフェース150により前記目標駆動電圧を超音波刃物に出力することにより前記超音波刃物が振動するように駆動する。」

カ「【0034】

図1に示すとおり、前記超音波刃物60はブレード金属部610(すなわち図3と図5中のFA)と前記ブレード金属部610上に形成される超音波振動部620を含む。前記超音波振動部620は前記駆動信号出力インターフェース150(すなわち図3中のCN1インターフェース)に連結され、前記ブレード金属部610は前記ブレード金属部接続インタフェースCON3に連結される。

【0035】

注意されたいことは、超音波振動部620を超音波エネルギー変換装置ともいう。超音波振動部620はスキニング装置駆動回路10が供給した目標周波数、目標デューティ比および目標駆動電圧を具備している電気エネルギーを機械的振動に変換させる装置である。超音波振動部620は例えば、エネルギー変換器の圧電効果により電気エネルギーを機械的振動に変換させる装置であることができる。」

キ「【0036】

本発明の実施例において、使用者がスキニング装置900を取って顔の皮膚に対して美容をするとき、手の平の皮膚は取っ手導電部Mと接触し、顏の皮膚はブレード金属部FAと接触することにより、イオン移動制御回路160と手の平、顔の皮膚との間に微小電流回路が形成されるので、化粧品中の栄養イオンの導入、人体内の汚れの導出および皮膚を引き上げる効果等を確保することができる。」

ク「【0050】

…マイクロコントローラーU2のピンP17は、目標周波数、目標デューティ比を具備するパラス信号例えばPWM信号を駆動スイッチ回路130に送信し、駆動スイッチ回路130は電圧変換回路140の変圧器T1を駆動することにより電源回路110を通過しかつ一回目の昇圧がされる電圧に対して昇圧を再びすることにより昇圧後の目標駆動電圧を獲得する。前記目標駆動電圧の範囲は2.7V~4.2Vである。獲得した目標駆動電圧は駆動信号出力インタフェース150によって超音波刃物に出力され、目標駆動電圧により超音波刃物が超音静音振動をするように駆動する。」

ケ「【0060】

以上のとおり、本発明の実施例に係るスキニング装置は所定のスキニング装置駆動回路を使用することにより、目標周波数、目標デューティ比を具備する駆動信号を形成し、前記駆動信号によって前記バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより目標駆動電圧を獲得し、かつ前記目標駆動電圧を前記超音波刃物に出力することによりその超音波刃物が振動するように駆動する。それにより、スキニング装置の静音の効果を獲得し、製品の品質と使用者の体験を向上させることができる。」

(3)本願発明の解決すべき課題について

本願発明の解決すべき課題は、本願明細書の【0002】、【0003】に「従来のスキニング装置の駆動回路は所定の周波数を有している駆動信号を出力することによりブレードが高頻度に振動するように駆動し、駆動信号の周波数を調節することによりブレードの振動の強弱を調節する。しかしながら、従来のスキニング装置を使用するとき、スキニング装置の振動により静音の効果が悪くなり、使用者の体験に大きい影響を与えるおそれがある。…従来の技術の一部分の欠陥と欠点を解決する…」とある(上記(2)ア)とおり、従来のスキニング装置では駆動回路による所定の周波数を有する駆動信号の出力によりブレードが高頻度に振動し、静音の効果が悪くなり、使用者の体験に大きい影響を与えるおそれがあるため、この従来の技術の欠陥と欠点を解決することであると解される。

(4)発明の課題を解決できることについて

ア 本願発明の課題の解決手段に関して、発明の詳細な説明には、上記(2)イの【0004】~【0005】、ウの【0014】、オの【0023】~【0025】、カの【0034】~【0035】、クの【0050】及びケの【0060】の記載がある。

イ これらの記載によると、本願発明の「静音」は、所定範囲の目標周波数及び目標デューティ比を具備する駆動信号によりバッテリ電圧を変換して目標駆動電圧を獲得し、当該目標駆動電圧により超音波刃物を振動させること

で達成すると解される。

そして、本願発明の課題における「静音」とは、請求人が令和 5年12月14日提出の意見書の2.(2)において主張するように、「スキニング装置」が属する美容技術分野において、人間の耳に聞こえる、可聴域(20Hz~20KHz)の範囲の音を小さくすることであると理解できる。

ウ しかし、本願発明は、スキニング装置駆動回路が形成する駆動信号の目標周波数及び目標デューティ比の範囲としての、「24.5~25.5KHz」及び「37%±2%」と、当該駆動信号によって、バッテリーモジュールが出力する電源電圧を変換させることにより獲得される目標駆動電圧の範囲としての、「2.7~4.2V」とが、それぞれ数値範囲として特定されているところ、発明の詳細な説明には、本願発明で特定される上記数値範囲のすべてにおいて本願の課題が解決されること、すなわち、可聴域(20Hz~20KHz)の範囲の音が小さくなることが具体的に示されておらず、当該数値範囲のすべてにおいて本願の課題を解決するとの裏付けがない。

そして、上記数値範囲のすべてにおいて、静音、すなわち、可聴域(20Hz~20KHz)の範囲の音が小さくなることが、本願の出願時において技術常識であったという証拠はない。

エ この点につき、請求人は、令和 5年 3月31日提出の手続補正書(方式)の3.(2)において、本発明に係るスキニング装置のサンプルについての異なる目標周波数と目標デューティ比における動作状態およびブレード金属部610の振幅の測定(測定報告の第1頁の「2.2 項目測定方法」を参照、オシロスコープにより測定)の結果を提示し、テスト実施のサンプルでは目標周波数が25.5~28.5kHzの範囲内で、良好な超音波噴霧の効果を得つつ、ブレード金属部610の振幅も抑えられていることを釈明するとともに、令和 5年12月14日提出の意見書の2.(2)では、テストの結果によれば、目標周波数が24.5KHZ~28.5Kz(当審注:「28.5KHz」の誤記と認められる。)の範囲まで拡張して本発明の効果が証明されたことを釈明した。

しかし、上記「測定報告」において使用された、ブレード金属部610を駆動するための駆動回路の、回路自体の具体構成のみならず、当該回路における目標デューティ比や電圧の範囲等も不明であって、本願発明のスキニング装置を使用したことが確認できない上に、当該測定報告の第2頁「一、サンプル性能テスト」に記載された表における「頻率」と「振幅」の関係をみても、上限値28.17kHzと下限値25.47kHzとの間の「頻率」の範囲においてブレード金属部610の振幅が、抑えられているのか否かを把握することはできず、可聴域の音との関係もわからないし、仮に、kHzをその単位とする当該「頻率」が、本願発明の「目標周波数」に対応するものであると解しても、上記した頻率の数値範囲の上限値及び下限値は、本願発明における目標周波数のそれらとは異なっているのであるから、上記の釈明を伴う請求人の主張は、採用することができない。

オ また、静音は、人によって感じ方が異なるところ、そもそも本願発明は、その解決すべき課題(上記(3))である、静音の状態が得られていない音として、具体的にどのような音に着目したのか明らかでない。

すなわち、従来のスキニング装置において、駆動回路による所定の周波数を有する駆動信号の出力によりブレードが高頻度に振動して生じる音として、具体的にどのようにして生じるどのような音によって静音の状態が得られず、使用者の体験に大きい影響を与えるとしているのか、明らかでない。

より具体的には、従来のスキニング装置を使用するにあたって、上記の静音の状態でない音とは、使用者が装置を自身の顔等において使用する際に発せられるものであると解されるところ、顔の皮膚に化粧水等を塗布した上で使用するのかなど、装置の具体的な使用形態が明らかでない上、駆動信号の出力により高頻度に振動するブレードとして、具体的にどのような材料や形状・寸法のものであるのかも明らかでないから、装置の使用によって発せられる音がどのようなものであって、具体的にどのように静音の状態が得られていないというのか、明らかでない。

そして、本願発明の課題を解決するとされているスキニング装置についても、その具体的な使用形態や、2.7~4.2Vの目標駆動電圧の出力を受ける超音波刃物の具体的な材料や形状・寸法は何ら特定されていない。

よって、2.7~4.2Vの目標駆動電圧を出力する超音波刃物を採用することにより、可聴域(20Hz~20KHz)の範囲の音を小さくでき、もって静音を達成することができたことは、理解することができない。

カ さらに、請求人は、令和 5年12月14日提出の意見書において、「ここで、出願当初明細書の段落「0035」に記載されてあるように、超音波振動部620は超音波エネルギー変換装置ともいえ、スキニング装置駆動回路10が供給した目標周波数、目標デューティ比および目標駆動電圧を具備している電気エネルギーを機械的振動に変換させる装置であります。また、周知技術として、超音波振動部620は、通常、圧電セラミック、磁石およびコイルで構成され、圧電セラミックは超音波振動の動作部であって、コイルに電流が流れると、交番磁界が生じて磁石に作用し、磁界の強さが一定の値を超えると、圧電セラミックが振動します。したがって、磁場の強弱により圧電セラミックの振動の振幅や周波数を制御できるため、圧電セラミックの固有振動数を変えることができます。当然でありながら、圧電セラミックの固有振動数が異なれば、その振動により生じる音の大きさも異なります。そうすると、圧電セラミックの固有振動数を制御することにより、振動により生じる音を上述した可聴域以外の範囲にすることができるため、静音の効果が実現できます。」(意見書2ページ11~22行)と主張する。

しかし、当該主張は、圧電素子と磁歪素子とを混同してされたものと解される上、「圧電セラミックの固有振動数を制御することにより、振動により生じる音を上述した可聴域以外の範囲にすることができる」は、そもそも請求項1の記載に基づかないばかりか、出願当初の明細書及び図面にも記載されていない事項に基づく主張であるから、採用することはできない。

そして、寸法や材質によって変化する圧電セラミックやブレード金属部の固有振動数が請求項1の記載において明らかでない以上、目標周波数を「24.5~25.5KHz」、目標デューティ比を「37%±2%」、目標駆動電圧を「2.7~4.2V」と特定しても、振動により生じる音が上述した可聴域以外の範囲となるとは限らない。

キ したがって、本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決することができると認識し得る範囲のものであるということはできない。また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決することができると認識し得る範囲のものであるということもできない。

よって、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

そして、請求項2~8に係る発明は、いずれも請求項1を引用するものであるから、同様に発明の詳細な説明に記載されたものでない。

第4 むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-019599

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