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特許拒絶査定不服審判

2022-009623

マッサージ用ゲルの作成方法、およびマッサージ用ゲル

審判番号
2022-009623
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-014915外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月22日
審決日
2023年10月24日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (A61H) / P18 .537-WZ (A61H) / P18 .121-WZ (A61H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 14915「マッサージ用ゲルの作成方法、およびマッサージ用ゲル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020-120949〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成31年 1月30日の出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。

令和 3年 9月10日付け:拒絶理由通知書
令和 3年11月15日提出:意見書及び手続補正書
令和 3年11月30日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 4年 3月11日提出:意見書及び手続補正書
令和 4年 4月 8日付け:補正の却下の決定及び拒絶査定
令和 4年 6月22日提出:審判請求書及び手続補正書
令和 5年 1月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月13日提出:意見書及び手続補正書

第2 本願発明

本願の請求項1-4に係る発明は、令和 5年 3月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するためのマッサージ用ゲルであって、
アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有し、
前記アルカリ還元イオン水は、pH11.5~12.5であり、
前記アルカリ還元イオン水は、ミネラルの含有率が0.05%以上0.3%以下であり、
前記アルカリ還元イオン水に含まれる前記ミネラルが負の電荷を帯びており、
前記アルカリ還元イオン水の表面張力は、60mN/m(25°)以下であり、
前記アルカリ還元イオン水の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルの範囲内であり、
施術対象部位に塗布して所定のマッサージ方法を施術することにより当該施術対象部位の筋膜をゆるませる機能を有することを特徴とする
マッサージ用ゲル。」

第3 原査定及び当審が通知した拒絶理由の概要

1 原査定の拒絶理由

原査定の拒絶理由のうち理由2は、概略次のとおりである。

理由2(進歩性)

この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1-4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

この出願の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献3-4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2007-137848号公報
引用文献2:特開2015-86192号公報
引用文献3:特開2001-48742号公報
引用文献4:特開2006-182751号公報

2 当審が通知した拒絶理由

令和 5年 1月 4日付けで当審が通知した拒絶理由のうち理由1-2は、概略次のとおりであり、上記1の原査定の理由2についての判断を留保したものである。

理由1(サポート要件)

この出願は、特許請求の範囲の請求項1-4の記載について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由2(実施可能要件)

この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 発明の詳細な説明の記載

本願の発明の詳細な説明には以下の記載がある。

(ア)「【0003】
特許文献1では、全身の不調を改善するツボが多く集まる上肢に対して施術を行う美容施術方法が提供されている。
【0004】
しかし、筋肉や筋膜が硬くなっている、もしくは骨に固着したような状態になっている患者に対して、筋肉や筋膜を十分にゆるめるものではなかった。このため、痛みを取り切れないといったものが多かった。」

【0005】

また、多くの施術者(エステティシャン)に新たなマッサージ技術を的確に指導し、そして、マッサージの施術に際して施術者を支援する装置はこれまでなかった。

(イ)「【0007】
この発明は、上述した問題点に鑑み、マッサージの施術に用いるマッサージゲルの作成方法、およびマッサージ用ゲルを提供することを目的とする。」
(ウ)「【0012】
<混合ゲル(マッサージ用ゲル)>
本発明では、マッサージの際に施術対象者の施術対象部位に塗布する塗布剤として、混合ゲルを用いる。この混合ゲルは、ゲル混合剤と増粘剤等を混合して作成することができ、そのまま塗布して使用する、あるいは、一般的なマッサージ用のオイルと混合して使用することができる。
ゲル混合剤は、アルカリ還元イオン水であり、詳細は後述する。混合ゲルに混合する他の材料は、保湿成分剤と保水成分剤と増粘剤とすることができる。この実施例では、保湿・保水成分剤としてグリセリンを混合し、保湿成分剤としてヒアルロン酸ナトリウムを混合し、増粘剤としてケイ酸(Na/Mg)とセルロースガムを混合している。ゲル混合剤の配合については、アルカリ還元イオン水を90%以上、すなわち、それ以外の保湿成分剤と保水成分剤と増粘剤を全て合わせても10%未満とすることが好ましい。また、90%以上あるアルカリ還元イオン水は、90%の分量全てすることもできるが、その一部をアルカリ還元イオン水とし残部を水とすることもできる。この実施例では、マッサージ用ゲルとして、90%以上のアルカリ還元イオン水にグリセリンとヒアルロン酸ナトリウムとケイ酸(Na/Mg)とセルロースガムを混合したものでKAI-TMGの名称で発売予定のものを使用する。」
(エ)「【0014】
<ゲル混合剤>
ゲル混合剤は、蒸留水に添加物を加えて電気分解したアルカリ還元イオン水とすることができ、さらに脱酸素工程等を行った電解還元性イオン水(例えば電解還元性イオン水S-100、電解還元性イオン水S-120、電解還元性イオン水S-109、あるいはアルカリ還元性イオン水S100-G)とすることが好ましい。添加物は、例えばケイ素、マグネシウム、または硫酸等、若しくはこれらの複数とすることができ、ミネラルになる添加物とすることができる。また、ゲル混合剤は、アルカリ還元イオン水そのもの、若しくは、アルカリ還元イオン水をアルカリイオン水またはミネラル水あるいは精製水にて希釈した液など、アルカリ還元イオン水により構成される液である。希釈する場合、3倍以下の希釈とすることができ、2倍以下の希釈とすることが好ましい。」
(オ)「【0021】
アルカリ還元イオン水(電解還元性イオン水を含む)は、pH8以上とすることができ、pH9.5以上とすることが好ましく、pH10以上とすることがより好ましく、pH10.5~12.5がより好ましく、pH11.5~12.5がさらに好ましく、pH12程度が好適である。
【0022】
また、アルカリ還元イオン水(電解還元性イオン水を含む)は、法的に水と呼べる程度の少量(0.3%未満)の負の電荷のミネラルイオンを含むことが好ましい。具体的には、アルカリ還元イオン水(電解還元性イオン水を含む)中のミネラルイオンは、0.3%以下とすることができ、0.3%未満とすることが好ましい。また、ミネラルイオンの下限値は0.01%以上とすることが好ましく、0.05%以上とすることがより好ましい。ミネラルイオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン、塩素、珪素のいずれか1つ以上とすることができ、これら全てを含む構成や、これら以外のものも含む構成とすることもできる。
【0023】
アルカリ還元イオン水(電解還元性イオン水を含む)は、水の表面張力である72mN/m(25°)より低いことが好ましく、60mN/m(25°)以下が好ましく、56mN/m(25°)程度とすることが好適である。
アルカリ還元イオン水(電解還元性イオン水を含む)の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルとすることが好ましく、100~110ミリオスモルとすることがより好ましい。」
(カ)「【0069】
「ゲル及びオイル塗布」に用いるゲルは、上述した混合ゲルである。このため、ゲル中の有効成分および塗布されたオイルの有効成分は皮膚内部に浸透しやすくなり、これにより、「ゲル及びオイル塗布」自体による施術効果が高まると共に、前後のステップの他の施術行為との組み合わせによる相乗効果も高まる。」
(キ)「【0072】
このようなマッサージ支援装置を用いたマッサージは、次の[表1]に示す効果を奏することができる。
【表1】
[図:0001405278000001.jpg]
」
(ク)「【0073】
表1における「痛みの変化度合い」は、被験者(施術対象者)が施術対象部位の痛みがどれくらい変化したかを主観で示す項目である。最も痛い状態を10、痛みのない状態を0とした10段階で考えて、どの程度変化したかを数値で示している。
【0074】
表1における「筋肉の型さの変化度合い」は、被験者(施術対象者)が施術対象部位の筋肉の硬さがどれくらい変化したかを主観で示す項目である。最も硬い状態を10、柔らかい状態を0とした10段階で考えて、どの程度変化したかを数値で示している。
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【0075】
表1における「ほぐれ度合い(張りの変化)」は、施術者が施術対象部位の筋肉の硬さがどれくらい変化したかを主観で示す項目である。最も硬い状態を10、柔らかい状態を0とした10段階で考えて、どの程度変化したかを数値で示している。
【0076】
なお、施術対象者による主観の評価は一般人である施術対象者による評価であるため人によって評価基準が変動し得るが、施術者の評価はプロによる評価であるため評価基準が安定している。
【0077】
[表1]に示したように、一般的なオイルのみを用いて本マッサージ方法と同じ方法でマッサージした場合に比べて、本発明の混合ゲルを用いて本マッサージ方法でマッサージをした場合は、顕著な効果が表れている。すなわち、全被験者(施術対象者)において、一般的な「オイル」を用いた場合よりも、「本発明」の混合ゲルを用いた場合の方が、痛みの解消度合い、筋肉の硬さの度合い、ほぐれ度合いの全てにおいて変化の度合いが高いという結果が得られている。
このように、非常に効果的なマッサージを行うことができる。」
(ケ)「【0078】
図7~図10は、本発明による混合ゲルを用いて本発明のマッサージ方法を施術した効果を示すエコー画像の説明図である。各図の左側(A1,B1)は施術前のエコー画像を示し、右側(A2,B2)は施術後のエコー画像を示す。また、図7は、本発明のアルカリ還元イオン水を希釈せずにゲルに混合させた混合ゲルを用いた例であり、図8~図10は、水により本発明のアルカリ還元イオン水を希釈してからゲルに混合させた希釈混合ゲルを用いた例である。
【0079】
図7(A1)は、左肩前における烏口靭帯の施術前のエコー画像であり、図7(A2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印101に示すように、烏口靭帯がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。すなわち、施術前は、筋が張って固くなっており、筋膜が癒着しているので白くスジのように発光して見えるが、施術後は、このようなスジがゆるんで黒く写る部分が増え、また、スジとスジとの間隔が広がっている。
続きを表示(全18行)
【0080】
図7(B1)は、左肩前における僧帽筋および棘上筋の施術前のエコー画像であり、図7(B2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印102に示すように、棘上筋がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。
【0081】
図8(A1)は、左肩横における烏口靭帯の施術前のエコー画像であり、図8(A2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印103に示すように、高いエコーが改善し烏口靭帯がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。
【0082】
図8(B1)は、左肩甲骨上角における僧帽筋および棘上筋の施術前のエコー画像であり、図8(B2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印104に示すように、棘上筋がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。
【0083】
図9(A1)は、左肩甲骨内側上部における棘上筋および菱形筋の施術前のエコー画像であり、図9(A2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印105に示すように、棘上筋および菱形筋がゆるんで(癒着が剥がれて)たわんでいることがわかる。
【0084】
図9(B1)は、左の棘上筋の施術前のエコー画像であり、図9(B2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印106に示すように、筋膜がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。
【0085】
図10(A1)は、左の僧帽筋および棘上筋の施術前のエコー画像であり、図10(A2)は、同部位の施術後のエコー画像である。矢印107に示すように、僧帽筋および棘上筋がゆるんで(癒着が剥がれて)いることがわかる。
【0086】
このように、施術前と施術後のエコー画像からも、本発明により各筋がゆるんでおり、著しく効果的な施術を行えていることがわかる。すなわち、本発明の混合ゲルを用いて、解剖学の知識に基づいた骨格、筋肉、筋膜に対するアプローチを加える本マッサージ方法を施術することで、高ぶった交感神経を鎮め、ストレスを軽減でき、筋肉や筋膜を大きくゆるませることができる。言い換えれば、マッサージ用ゲルである混合ゲルがマッサージ効果を高めてマッサージを支援することができる。」

第5 当審の判断

1 当審が通知した拒絶理由の理由1(サポート要件)について

上記第4(ア)~(イ)の記載を踏まえると、本願発明は、筋肉や筋膜が硬くなっている、もしくは骨に固着したような状態になっている患者に対して、筋肉や筋膜を十分にゆるめ、痛みを取り切ることができるマッサージ方法、マッサージ用ゲル、マッサージ支援装置およびその方法を提供することを課題としている。

しかし、発明の詳細な説明には、具体的に段落【0072】に【表1】として「本発明」を使用した結果が記載されているが、本願発明の「アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有し、前記アルカリ還元イオン水は、pH11.5~12.5であり、前記アルカリ還元イオン水は、ミネラルの含有率が0.05%以上0.3%以下であり、前記アルカリ還元イオン水に含まれる前記ミネラルが負の電荷を帯びており、前記アルカリ還元イオン水の表面張力は、60mN/m(25°)以下であり、前記アルカリ還元イオン水の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルの範囲内であ」る「マッサージ用ゲル」が上記課題を解決することができるとは理解できない。

具体的には、以下の(1)~(5)に示す理由で、発明の詳細な説明の記載からは、本願発明の「マッサージ用ゲル」が上記課題を解決することが理解できない。

(1)上記第4(カ)、(キ)の記載からして、上記第4(キ)の【表1】の「本発明」の混合ゲル(マッサージ用ゲル)は、上記第4(カ)の「上述した混合ゲル」を意味するものと考えられる。また、上記第4(ウ)~(エ)には、アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有するマッサージ用ゲルについて記載され、上記第4(オ)には、本願発明のアルカリ還元イオン水の数値範囲に対応する記載があることから、上記第4(カ)の「上述した混合ゲル」は、上記第4(ウ)~(オ)に記載されたマッサージ用ゲルを指すものと考えられる。そうすると、【表1】の「本発明」の混合ゲル(マッサージ用ゲル)は、上記第4(ウ)~(オ)に示されたマッサージ用ゲルであると推定できる。

しかしながら、【表1】の「本発明」の施術において実際に使用したマッサージ用ゲルは、pH値、ミネラルの含有率等が特定の数値のものであるところ、【表1】の結果からは、本願発明の全ての範囲で課題を解決しているとは理解できないし、本願発明の全ての範囲で同様の効果を奏するとの技術常識もない。

さらに、上記第4(ウ)に、マッサージ用ゲルが「保湿成分剤と保水成分剤」等の他の成分を含有することが記載されているところ、【表1】の「本発明」が「保湿成分剤と保水成分剤」等の他の成分を含むものであるとすると、【表1】の「オイルのみ」の施術と「本発明」の施術の結果の差が、「保湿成分剤と保水成分剤」等の他の成分を含有することによるものであるとも考えられる。したがって、本願発明のマッサージ用ゲルが課題を解決しているとは、理解できない。

(2)上記第4(ク)に記載されているように、【表1】の「痛みの変化度合い」や「筋肉の硬さの変化度合い」、「ほぐれ度合い」の数値は、被験者あるいは施術者の主観であり、効果を示す客観的なデータではない。また、これらの数値は、段落【0043】~【0068】のマッサージ支援装置を用いたマッサージによるものであるところ、被験者の筋肉の状態や施術者の技量によっても変化しうるものと考えられるから、再現性がある客観的なデータとはいえない。

また、上記第4(ク)には、例えば「痛みの変化度合い」に関して、「最も痛い状態を10、痛みのない状態を0とした10段階で考えて、どの程度変化したかを数値で示している」と記載されている。しかし、「痛みを取り切る」という課題を解決したかを判断するには、痛みの変化の度合いではなく、マッサージ後に痛みの段階がどの数値になっているかによって判断すべきと考えられるところ、10段階のうちどの数値になっていれば課題を解決したといえるのか不明である。

仮に、痛みの変化の度合いで、「痛みを取り切る」という課題を解決したかを判断することが妥当といえるとしても、「痛みの変化度合い」に関して、【表1】のNo.1において、「オイルのみ」の施術では「1」、「本発明」の施術では「7」となっているところ、これらがそれぞれ、10段階のうちのどの段階からどの段階に変化したことを示すのかが不明であり、これらの結果を比較することが妥当とはいえない。例えば、同じ「1」の変化度合いであっても、「最も痛い状態」である「10」から「9」の状態への変化と、「1」の状態から痛みのない状態である「0」への変化では意味合いが異なることは明らかである。

また、「筋肉の硬さの変化度合い」や「ほぐれ度合い」についても同様である。

したがって、【表1】の結果を見ても、【表1】の「本発明」の施術において、「筋肉や筋膜を十分にゆるめ、痛みを取り切る」という課題を解決していることは、理解できない。

(3)上記第4(キ)の【表1】のNo.1~6におけるマッサージの施術が具体的に記載されていない。例えば、No.1~6のそれぞれにおいて、「オイルのみ」の施術と「本発明」の施術とで、被験者や施術者が同じであったのかが不明である。仮にこれらが異なる場合、これらの者の主観に依拠したものである「オイルのみ」の施術と「本発明」の施術の結果を比較することは妥当とはいえない。また、No.1~6では何が異なるのか、例えば、被験者が異なるのか、施術者が異なるのか、施術対象部位が異なるのか、それとも、同じ被験者・施術者・施術対象部位について複数回同じ施術を実施しているのかについても不明である。

したがって、【表1】の結果を見ても、【表1】の「本発明」の施術において、「筋肉や筋膜を十分にゆるめ、痛みを取り切る」という課題を解決していることは、理解できない。

(4)上記第4(ケ)の記載について、上記(1)と同様に、「本発明による混合ゲル」が具体的にどのような成分のものかを把握することができない。

(5)上記第4(ケ)には、エコー画像に基づいて、「本発明による混合ゲル」が筋肉や筋膜を大きくゆるませる効果を奏する旨が示されているが、これらは、混合ゲルを用いたマッサージの施術前と施術後の画像を比較したものであり、マッサージの施術後に各筋がゆるんでいることを示すに過ぎず、従来の施術の結果が記載されていないため、従来の施術に比して「筋肉や筋膜を十分にゆるめ」ていることは理解できない。

2 当審が通知した拒絶理由の理由2(実施可能要件)について

上記1で検討したとおり、発明の詳細な説明には、具体的に段落【0072】に【表1】として「本発明」を使用した結果が記載されているが、本願発明の「アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有し、前記アルカリ還元イオン水は、pH11.5~12.5であり、前記アルカリ還元イオン水は、ミネラルの含有率が0.05%以上0.3%以下であり、前記アルカリ還元イオン水に含まれる前記ミネラルが負の電荷を帯びており、前記アルカリ還元イオン水の表面張力は、60mN/m(25°)以下であり、前記アルカリ還元イオン水の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルの範囲内であ」る「マッサージ用ゲル」が、「筋肉や筋膜を十分にゆるめ、痛みを取り切る」という課題を解決することができるとは理解できない。

さらに、発明の詳細な説明には、アルカリ還元イオン水を当該数値範囲とすることの機序が記載されておらず、当該成分のものが上記課題を解決するとの技術常識もない。

そして、発明の詳細な説明には、上記課題を解決するマッサージ用ゲルが具体的に1つも記載されていないから、上記課題を解決できる本願発明のマッサージ用ゲルを当業者が実施することができない。

したがって、発明の詳細な説明は、上記課題を解決するものとしての本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

3 原査定の拒絶理由の理由2(進歩性)について

仮に上記1、2に記載したサポート要件、実施可能要件を満たすとしても、以下のとおり、本願発明は進歩性を有しない。

(1)引用文献の記載事項及び引用発明

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ア 引用文献1(特開2007-137848号公報)

引用文献1には以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様である。)。

(ア)「【0001】
本発明は、炭素数6~10のジカルボン酸のジエステルとα-リポ酸を含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤に関する。」
(イ)「【0013】
本発明の化粧料又は皮膚外用剤には、α-リポ酸と炭素数6~10のジカルボン酸のジエステル以外に、油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類及びその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、水から選ばれる1種又は2種以上を含有させることが望ましい。本発明の化粧料又は皮膚外用剤は、これらから選ばれる1種又は2種以上を含有させることによって、化粧料又は皮膚外用剤に必要な機能をより良く発揮させることができる。これらの配合量は、成分の種類によって変化するが、好ましくは、1成分あたり0.0001重量%~99.9重量%、より好ましくは、1成分あたり0.001重量%~99重量%である。本発明の化粧料及び皮膚外用剤には、その他の化粧品若しくは皮膚外用剤に使用されることが知られている成分を通例2種以上配合するが、その組み合わせ及び配合比・配合量は、公知の組み合わせ及び配合比・配合量で含有させることが可能である。」
(ウ)「【0017】
高分子・増粘剤・ゲル化剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、・・・が好ましいものとして挙げられる。」
(エ)「【0030】
水としては、常水、精製水の他、硬水、軟水、天然水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水が好ましいものとして挙げられる。」
(オ)「【0032】
本発明の化粧料・皮膚外用剤の種類としては、特に制限は無いが、毛髪用化粧料、基礎化粧料、メーキャップ化粧料、芳香化粧料、ボディ化粧料、軟膏等の皮膚外用剤が好ましいものとして挙げられる。本発明の化粧料・皮膚外用剤は、通常の方法に従って製造することができる。」
(カ)「【0034】
基礎化粧料としては、クレンジングフォーム、洗粉、洗顔パウダー、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、クレンジングジェル、クレンジングオイル、クレンジングマスク等の洗顔料;柔軟化粧水、収れん化粧水、洗浄用化粧水、多層式化粧水等の化粧水;エモリエントローション、モイスチャーローション、ミルキィーローション、ナリシングローション、ナリシングミルク、スキンモイスチャー、モイスャーエマルション、マッサージローション、クレンジングローション、プロテクトエマルション、サンプロテクト、サンプロテクター、UVケアミルク、サンスクリーン、メーキャップローション、角質スムーザー、エルボーローション、ハンドローション、ボディローション等の乳液;エモリエントクリーム、栄養クリーム、ナリシングクリーム、バニシングクリーム、モイスチャークリーム、ナイトクリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、メーキャップクリーム、ベースクリーム、プレメーキャップクリーム、サンスクリーンクリーム、サンタンクリーム、除毛クリーム、デオドラントクリーム、シェービングクリーム、角質軟化クリーム等のクリーム;クレンジングジェル、モイスチャージェル等のジェル:化粧石鹸、透明石鹸、薬用石鹸、液状石鹸、ひげそり石鹸、合成化粧石鹸等の石鹸;ピールオフパック、粉末パック、ウォッシングパック、オイルパック、クレンジングマスク等のパック・マスク類;保湿エッセンス、美白エッセンス、紫外線防止エッセンス等のエッセンス;リポソーム美容液、リポソーム化粧水が好ましいものとして挙げられる。」

(キ)上記(ウ)に増粘剤・ゲル化剤が記載され、上記(カ)には、基礎化粧料をマッサージ用とすることが記載されているから、引用文献1には、マッサージ用ゲルが記載されているといえる。

(ク)上記(カ)のマッサージローションやマッサージクリームは、マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するものと認められる。

上記(ア)~(カ)の記載事項及び上記(キ)、(ク)の認定事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するためのマッサージ用ゲルであって、
電解アルカリイオン水と増粘剤・ゲル化剤を含有するマッサージ用ゲル。」

イ 引用文献2(特開2015-86192号公報)

引用文献2には以下の事項が記載されている。

(ア)「【0034】
本発明に係る皮膚外用剤は、上記成分を配合し、剤形に応じた常法により製造することができる。
本発明の皮膚外用剤が乳化組成物である場合、例えば、クリーム、乳液、パック等のスキンケア化粧料、ファンデーション、頬紅等のメーキャップ化粧料、ヘアクリーム、ヘアミルク等の毛髪化粧料などとして製造することができる。特に、マッサージクリームやハンドクリーム等、顔面や手足、全身用のクリーム、パックへの適用は、塗布時の伸び広がり、マッサージのし易さに優れ、高いエモリエント効果と肌効果が得られ好ましい。」
(イ)「【0036】
[揺変剤の製造方法]
次に、本発明において特徴的な揺変剤の製造方法について説明する。
まず、前述の粘土鉱物から選択したフィロケイ酸塩鉱物の粉体を、水系の液相溶媒に分散して混合液を調製する。すなわち、フィロケイ酸塩鉱物を水で膨潤させて層間に水を十分取り込ませ、層間隙が広がったゾル状態とする。フィロケイ酸塩鉱物の粉体は、液相溶媒に分散できる大きさであれば、コロイド結晶の一次粒子の直径はミクロン単位であってもよいが、コロイド結晶の一次粒子の直径を500nm以下に調節したものが望ましい。水系の液相溶媒としては、水だけあるいは水にエタノール等の有機溶剤を配合したものであってもよいが、有機溶剤を含まない水だけとするのが望ましい。水としては、常水、精製水の他、硬水、軟水、天然水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水など選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いられ、特に限定されるものではない。液相溶媒は、常温域、0℃近傍の低温域あるいは100℃近傍の高温域の何れの温度であってもよく、その温度が所定温度に保たれた状態にあっても、特に温度調節を行わない状態にあってもよい。なお、混合液の調製は、液相溶媒を撹拌しつつフィロケイ酸塩鉱物の粉体を液相溶媒に添加する。ここで、混合液の撹拌は、特に特別な装置を必要とせず、ディスパー、ホモジナイザーやメカニカルスターラー、サンドグラインドミル等の一般的な撹拌装置で行うことができる。」
(ウ)「【0046】
前記揺変剤に含まれる変性粘土鉱物の結晶構造の各層は、厚さ約1μmの2次元小板状を形成しており、この小板ユニットに存在するマグネシウム原子やアルミニウム原子などは、より低原子価陽イオンの原子と同型置換して小板ユニットは負に帯電している。乾燥状態においては、この負電荷はプレート面の格子構造外側にある置換可能陽イオンと釣り合っており、固相ではこれらの粒子はファンデルワールス力により、互いに結合し平板の束になっている。このような変性粘土鉱物を水系の液相溶媒中に分散した場合には、層間の置換可能な陽イオンが水和されて粒子が膨潤を起こすので、小板が分離して小板の表面が負電荷となり、互いに反発しあって安定なゾル状態となる。また、変性粘土鉱物は、分散した小板は面部が負に帯電し端部が正に帯電するため、面部と端部が引き合って、水中で小板により構造体(カードハウス構造)が形成されて、ゲル状態となる。
【0047】
前記揺変剤は、層間の金属錯化合物の存在する変性粘土鉱物によって、静止状態において強固な剪断流動性ゲル状となり、この剪断流動性ゲル状態から比較的弱い力の撹拌等により簡単にゾル状になって好適な流動性を示し、また静止すると剪断流動性ゲル状態に短時間で戻るチクソトロピー性を示す。本発明に係る変性粘土鉱物は、フィロケイ酸塩鉱物が本来有するカードハウス構造に加えて、フィロケイ酸塩鉱物の層間で嵩上げ作用を示したり、ばねの如く機能すると考えられる金属錯化合物によって小板の構造破壊および構造回復作用が補強されるので、従来のカードハウス構造からなるチクソトロピー性よりも遙かに高いチクソトロピー性を示す。
【0048】
本発明に係る揺変剤は、外用剤に添加することで、増粘等の粘性、溶質の沈降防止などの分散性、チクソトロピー性など、変性粘土鉱物が示す良好なチクソトロピー性に由来する各種性質を付与することができ、これらの性質を長期間に亘って保持し得る。ここで揺変剤自体が高いチクソトロピー性を有しているので、外用剤に添加する揺変剤の量を減らしても、外用剤の粘性等を改善することができる。また、本発明の揺変剤は、外用剤が油性、油中水型、水溶性など何れの性状であっても配合することができ、外用剤のpH、温度、有機溶媒の有無等に、該外用剤に付加する機能が影響を受け難い。更に、配合時(混合分散時や混合撹拌時など)に加わるせん断等の機械的作用によって付与した粘度等の機能が低下することはない。すなわち、揺変剤を外用剤に添加する時期は、機械的シェア混合前や分散前などの前添加であっても、機械的シェア混合後や分散後などの後添加であっても、同じ粘性等の機能が期待できる。更にまた、本発明の揺変剤は、高い透明度を有しているので、外用剤に色を付けたり、にごらしたりする等の不具合が生じない。
【0049】
このように、本発明の揺変剤は、外用剤の性質の影響を受け難いので、化粧料のチクソトロピー性(揺変性)、分散性、粘性または沈降防止性などを向上させることができる。」

(エ)上記(ア)に、皮膚外用剤をマッサージクリームとすることが記載され、上記(イ)、(ウ)には、皮膚外用剤に揺変剤を添加し増粘することでゲル状とすることが記載されているから、引用文献1には、マッサージ用ゲルが記載されているといえる。

(オ)上記(ア)のマッサージクリームは、マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するものと認められる。

上記(ア)~(ウ)の記載事項及び上記(エ)、(オ)の認定事項を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するためのマッサージ用ゲルであって、
電解アルカリイオン水と、増粘のための揺変剤を含有するマッサージ用ゲル。」

(2)対比

ア 本願発明と引用発明1との対比

本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「電解アルカリイオン水」、「増粘剤・ゲル化剤」は、それぞれ本願発明の「アルカリ還元イオン水」、「増粘剤」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、

「マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するためのマッサージ用ゲルであって、
アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有するマッサージ用ゲル。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

本願発明は、「前記アルカリ還元イオン水は、pH11.5~12.5であり、前記アルカリ還元イオン水は、ミネラルの含有率が0.05%以上0.3%以下であり、前記アルカリ還元イオン水に含まれる前記ミネラルが負の電荷を帯びており、前記アルカリ還元イオン水の表面張力は、60mN/m(25°)以下であり、前記アルカリ還元イオン水の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルの範囲内であ」るのに対して、引用発明1はそのような構成を備えるか明らかでない点。

<相違点2>

本願発明は、マッサージ用ゲルが「施術対象部位に塗布して所定のマッサージ方法を施術することにより当該施術対象部位の筋膜をゆるませる機能を有する」のに対して、引用発明1はそのような構成を備えるか明らかでない点。

イ 本願発明と引用発明2との対比

本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「電解アルカリイオン水」、「増粘のための揺変剤」は、それぞれ本願発明の「アルカリ還元イオン水」、「増粘剤」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明2とは、

「マッサージを行う施術対象者の施術対象部位に塗布するためのマッサージ用ゲルであって、
アルカリ還元イオン水と増粘剤を含有するマッサージ用ゲル。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>

本願発明は、「前記アルカリ還元イオン水は、pH11.5~12.5であり、前記アルカリ還元イオン水は、ミネラルの含有率が0.05%以上0.3%以下であり、前記アルカリ還元イオン水に含まれる前記ミネラルが負の電荷を帯びており、前記アルカリ還元イオン水の表面張力は、60mN/m(25°)以下であり、前記アルカリ還元イオン水の浸透圧は、水1に対して90~120ミリオスモルの範囲内であ」るのに対して、引用発明2はそのような構成を備えるか明らかでない点。

<相違点4>

本願発明は、マッサージ用ゲルが「施術対象部位に塗布して所定のマッサージ方法を施術することにより当該施術対象部位の筋膜をゆるませる機能を有する」のに対して、引用発明2はそのような構成を備えるか明らかでない点。

(3)判断

まず、上記相違点1及び3について検討する。

水道水等を電気分解することで得られるアルカリ還元イオン水がミネラルを含有することは、当業者にとって周知の事項である。また、引用発明1または2に記載されたアルカリ還元イオン水について、使用する目的に応じて、pH、ミネラルの含有量、表面張力や浸透圧を適当な数値範囲のものとすることで、上記相違点1または3に係る事項とすることは、当業者が適宜になし得たことである。そして、本願発明のpH、ミネラルの含有量、表面張力や浸透圧の数値範囲とすることによる、臨界的意義も認められない。

次に、上記相違点2及び4について検討する。

マッサージの実施にあたって筋膜をゆるませるという課題は一般的なものであり、そのために所定のマッサージ方法を施術することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明1または引用発明2から、当業者が容易に想到しうる範囲のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明1または2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 請求人の主張について

1 当審が通知した拒絶理由の理由1(サポート要件)について

令和 5年 3月13日提出の意見書において請求人は、

「そして、このような混合ゲルである「マッサージ用ゲル」が上記課題を解決することができることを示す実施例等、すなわち、当該マッサージ用ゲルの実施例及びその他のマッサージ用ゲルの比較例、当該実施例のマッサージ用ゲルのみを用いたマッサージの試験内容及び試験結果、並びに比較例のマッサージ用ゲルのみを用いたマッサージの試験内容及び試験結果等の記載としては、明細書に次のように記載されています。
「次に、上述した混合ゲルを用いてマッサージを行う方法を施術者に伝えるマッサージ支援装置について説明する。」(段落[0024]参照)という記載より、上述した混合ゲルが当該マッサージ用ゲルの実施例であることが明確です。
そして、この実施例のマッサージ用ゲルのみを用いたマッサージの試験内容及び試験結果として、上述した混合ゲルを用いてマッサージを行う方法を施術者に伝えるマッサージ支援装置を用いたマッサージの効果が「表1」(段落[0072]参照)であることは、明細書の「このようなマッサージ支援装置を用いたマッサージは、次の[表1]に示す効果を奏することができる。」(段落[0072]参照)の記載から明らかです。
また、比較例に関しましては、明細書に「[表1]に示したように、一般的なオイルのみを用いて本マッサージ方法と同じ方法でマッサージした場合に比べて、本発明の混合ゲルを用いて本マッサージ方法でマッサージをした場合は、顕著な効果が表れている。」(段落[0077]参照)と記載されています。
従って、拒絶理由通知にて指摘されている「段落【0072】の【表1】や図7~10で使用される「ゲル」が上記数値範囲のゲルであることの記載」に関しては、上述のように、段落【0072】の【表1】や図7~10で使用される「ゲル」が上記数値範囲内のゲルを用いた実施例と効果であることが明確です。」

と主張している。

しかしながら、上記第5の1(1)に示したように、上記第4(ウ)~(オ)に記載されたマッサージ用ゲルと、上記第4(カ)の「上述した混合ゲル」、上記第4(キ)の【表1】の「本発明」の混合ゲル(マッサージ用ゲル)との関係が定かではなく、【表1】の「本発明」の混合ゲル(マッサージ用ゲル)が具体的にどのような成分のものかを把握することができないから、段落【0024】の「上述した混合ゲル」が「当該マッサージ用ゲルの実施例」であることは当業者が理解できない。また、上記第5の1(2)~(4)に示したように、【表1】に記載された施術結果は、「マッサージ用ゲルのみを用いたマッサージ」の効果を客観的に示す「試験内容及び試験結果」であるとはいえない。図7~10に記載された施術結果についても、上記第5の1(4)~(5)に示したように、「マッサージ用ゲルのみを用いたマッサージ」の効果を客観的に示す「試験内容及び試験結果」であるとはいえない。

よって、出願人の上記主張は採用できない。

2 当審が通知した拒絶理由の理由2(実施可能要件)について

令和 5年 3月13日提出の意見書において請求人は、

「マッサージ用ゲルは、明細書の段落[0012]に「マッサージ用ゲルとして、90%以上のアルカリ還元イオン水にグリセリンとヒアルロン酸ナトリウムとケイ酸(Na/Mg)とセルロースガムを混合したものでKAI-TMGの名称で発売予定のものを使用する。」と明確に記載されています。このことから、マッサージ用ゲルの実施例は明細書に明らかに記載されています。」

と主張している。

しかしながら、明細書の段落【0012】の「90%以上のアルカリ還元イオン水にグリセリンとヒアルロン酸ナトリウムとケイ酸(Na/Mg)とセルロースガムを混合したものでKAI-TMGの名称で発売予定のもの」が具体的にどのような成分比率であって、その中のアルカリ還元イオン水がどのような特性のものなのかが定かではないし、上記課題を解決できるものであることが発明の詳細な説明からは明らかではないから、上記課題を解決できる本願発明のマッサージ用ゲルを当業者が実施することができない。

また、同意見書において請求人が主張する「請求項1~4に係る発明のマッサージ用ゲルは、新しいものですから、技術常識ではありません。そして、請求項1~4に係る発明のマッサージ用ゲルは、明細書に記載されているようなマッサージを行うことによってより効果的に機能するものですが、そのようなマッサージをせずとも塗布するだけでも筋膜を緩ませる効果を得られるものです。」について、「マッサージをせずとも塗布するだけでも筋膜を緩ませる効果を得られる」ことを示す実施例は発明の詳細な説明には記載されておらず、上記主張は根拠がない。

よって、請求人の上記主張は採用することができない。

第7 むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。

また、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。

さらに、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-009623

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