審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2022-017032

多軸触覚センサ

審判番号
2022-017032
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-141549外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年10月25日
審決日
2023年10月04日
公報発行日
2023年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第44条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-141549「多軸触覚センサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 2日出願公開、特開2021-183986〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和3年8月31日に提出された特許法44条1項の規定による特許出願であって、平成30年11月26日に出願された特願2020-557421号の分割出願であるところ、本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和4年 4月14日付け:拒絶理由通知書

同年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出

同年 7月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月26日 :原査定の謄本の送達)

同年10月25日 :審判請求書の提出

同年11月 2日付け:手続補正指令書

同月14日 :手続補正書の提出(代理権を証明する書面の

追加)

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年6月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
3つの軸方向の力と、前記3つの軸のうち、少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントを検出するための多軸触覚センサであって、
基板と、
前記基板の表面と略同一の面内に設けられた複数のセンサ素子と、
続きを表示(全11行)
前記複数のセンサ素子の周囲を覆い、前記複数のセンサ素子に外力を伝達する伝達材と、
を備え、
前記複数のセンサ素子は、
前記基板の表面に対して平行方向の力を検出するように、所定部位に第1の抵抗層および第2の抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも3つのせん断力検出素子と、
前記基板の表面に対して垂直方向の力を検出するように、所定部位に第3の抵抗層および第4の抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも1つの押圧力検出素子と、を含む、少なくとも4つのセンサ素子を含み、
前記4つのセンサ素子の前記梁構造はそれぞれ、その長手方向が放射状となるように前記基板に配置されており、
前記少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントは、前記複数のセンサ素子のうち、前記放射状の配置における中心を基準として回転対称の位置に配置されている、2つ以上のセンサ素子の出力に基づいて検出される、多軸触覚センサ。」

第3 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

(進歩性の欠如)本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1.特開2017-187399号公報

引用文献2.特開2013-68503号公報

第4 引用文献に記載された発明の認定等

1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定

(1) 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献1(特開2017-187399号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は、当合議体によるものであり、以下同様である。

ア 【0010】~【0012】、【図1】

「【実施例1】
【0010】
図1(a)は、実施例1に係るロボットシステム100の全体構成を例示する図である。図1(a)で例示するように、ロボットシステム100は、ロボットハンド10、触覚センサ素子20、検出回路30、制御部40などを備える。触覚センサ素子20および検出回路30が触覚センサとして機能する。
【0011】
ロボットハンド10は、把持部11によって対象物を把持し、離すことで、作業を行う。例えば、ロボットハンド10は、3軸方向への移動、水平旋回、垂直旋回などを行う。なお、図1(a)において、一例として、鉛直上方から見たロボットハンド10が描かれている。
【0012】
触覚センサ素子20は、把持部11の対象物への接触面に配置されている。図1(b)で例示するように、触覚センサ素子20は、接触面21における接触力(Z軸方向の圧力)、X軸方向のせん断力、Y軸方向のせん断力、および回転軸方向のせん断力を検出する。回転軸方向のせん断力とは、Z軸を中心とする回転のせん断力である。ロボットハンド10が対象物を把持する際に、当該対象物の重心から外れた箇所を把持する場合には、回転軸方向のせん断力が働くことになる。したがって、回転軸方向のせん断力の検出が重要となる。検出回路30は、触覚センサ素子20の状態変化を電気信号として検出する回路である。検出回路30の検出結果は、制御部40に送信される。制御部40は、検出回路30の検出結果に基づいて、ロボットハンド10の動作を制御する。」
「【図1】
[図:0001404390000001.jpg]
」

イ 【0013】~【0016】、【図2】、【図3】

「【0013】
図2(a)は、触覚センサ素子20の概略斜視図である。図2(a)で例示するように、触覚センサ素子20の接触面21には、弾性体22が設けられていてもよい。図2(b)は、触覚センサ素子20の概略平面図である。図2(a)および図2(b)では、弾性体22を透過している。図2(c)は、図2(b)の拡大図である。
【0014】
図2(c)で例示するように、触覚センサ素子20の接触面21の中央部が対象物と接触する接触部23である。接触面21は、XY平面に相当する。接触面21において、接触部23を中心にして、複数種からなる1対の力検出素子が放射状に配置されている。
【0015】
ここで、力検出素子の詳細について説明する。図3(a)で例示するように、力検出素子は、1対のピエゾ抵抗素子30a,30bを備える。ピエゾ抵抗素子30a,30bは、例えばY軸方向に長手方向を有する梁を備える。ピエゾ抵抗素子30aの梁には、例えばX軸マイナス側に弾性体31が配置され、X軸プラス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。例えば、弾性体31は、シリコーン樹脂などである。ピエゾ抵抗層32は、例えば、Si単結晶に不純物をイオン注入、熱拡散などでドープしたものである。当該弾性体31とピエゾ抵抗層32とは接合されている。ピエゾ抵抗素子30bの梁には、X軸マイナス側にピエゾ抵抗層32が配置され、X軸プラス側に弾性体31が配置されている。当該ピエゾ抵抗層32と弾性体31とは接合されている。
【0016】
力検出素子にX軸プラス方向の力が加わって梁に歪が生じる場合、図3(b)で例示するように、ピエゾ抵抗素子30aおよびピエゾ抵抗素子30bの梁は、湾曲してX軸プラス側に伸びるように撓む。この場合、ピエゾ抵抗素子30aにおいては、ピエゾ抵抗層32が引っ張られる。一方、ピエゾ抵抗素子30bにおいては、ピエゾ抵抗層32が圧縮する。このように、1対のピエゾ抵抗素子30a,30bにおいて、ピエゾ抵抗層32が、それぞれ引張力と圧縮力を受けることになる。すなわち、各ピエゾ抵抗層32の抵抗値が正負逆方向に増減する。この抵抗値変化を、図3(c)のようなブリッジ回路により計測することで、せん断力を検出することができる。」
「【図2】
[図:0001404390000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001404390000003.jpg]
」

ウ 【0017】~【0023】、【図4】

「【0017】
図4は、図2(c)において、ピエゾ抵抗素子を抜き出して描いた図である。各ピエゾ抵抗素子は、接触面21において、接触部23の周辺に、周方向の異なる位置に配置されている。図4で例示するように、接触面21において、Y軸方向に沿って、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように、X軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xbが配置されている。ピエゾ抵抗素子30xaはY軸プラス側に配置されており、ピエゾ抵抗素子30xbはY軸マイナス側に配置されている。
【0018】
ピエゾ抵抗素子30xaにおいては、X軸マイナス側に弾性体31が配置され、X軸プラス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。ピエゾ抵抗素子30xbにおいては、X軸プラス側に弾性体31が配置され、X軸マイナス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。すなわち、同一の周方向において、1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xbの弾性体31とピエゾ抵抗層32との配置側が同じとなっている。同一の周方向とは、右回りまたは左回りのいずれか一方に統一した場合の周方向のことを意味する。この1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xbにおいては、X軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、X軸方向のせん断力を検出することができる。
続きを表示(全14行)
【0019】
接触面21において、X軸方向に沿って、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように、Y軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30ya,30ybが配置されている。ピエゾ抵抗素子30yaはX軸プラス側に配置されており、ピエゾ抵抗素子30ybはX軸マイナス側に配置されている。
【0020】
ピエゾ抵抗素子30yaにおいては、Y軸プラス側に弾性体31が配置され、Y軸マイナス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。ピエゾ抵抗素子30ybにおいては、Y軸マイナス側に弾性体31が配置され、Y軸プラス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。すなわち、同一の周方向において、1対のピエゾ抵抗素子30ya,30ybの弾性体31とピエゾ抵抗層32との配置側が同じとなっている。この1対のピエゾ抵抗素子30ya,30ybにおいては、Y軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、Y軸方向のせん断力を検出することができる。
【0021】
接触面21において、いずれかの箇所において、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように1対のピエゾ抵抗素子30za,30zbが配置されている。ピエゾ抵抗素子30zaにおいては、Z軸プラス側に弾性体31が配置され、Z軸マイナス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。ピエゾ抵抗素子30zbにおいては、Z軸マイナス側に弾性体31が配置され、Z軸プラス側にピエゾ抵抗層32が配置されている。すなわち、Z軸方向において、1対のピエゾ抵抗素子30za,30zbの弾性体31とピエゾ抵抗層32との配置側が逆となっている。この1対のピエゾ抵抗素子30za,30zbにおいては、Z軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、Z軸方向のせん断力を検出することができる。
【0022】
接触面21において、いずれかの箇所において、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように1対のピエゾ抵抗素子30ra,30rbが配置されている。ピエゾ抵抗素子30ra,30rbのいずれにおいても、接触面21をピエゾ抵抗素子30ra,30rbを結ぶ線で分割した場合に同じ側に弾性体31が配置され、逆側にピエゾ抵抗層32が配置されている。すなわち、同一の周方向において、1対のピエゾ抵抗素子30ra,30rbの弾性体31とピエゾ抵抗層32との配置側が逆となっている。本実施例においては、一例として、ピエゾ抵抗素子30xaとピエゾ抵抗素子30ybとの間にピエゾ抵抗素子30raが配置され、ピエゾ抵抗素子30xbとピエゾ抵抗素子30yaとの間にピエゾ抵抗素子30rbが配置されている。ピエゾ抵抗素子30ra,30rbによるせん断力検出については後述する。
【0023】
なお、図2(c)で例示するように、ピエゾ抵抗素子30xa,30xb,30ya,30yb,30za,30zb,30ra,30rbの接触部23側端は、基準電圧Vsに接続された基準電極24に接続されている。各ピエゾ抵抗素子の他端は、それぞれ個別の電極25に接続されている。」
「【図4】
[図:0001404390000004.jpg]
」

エ 【0027】~【0033】、【図7】

「【0027】
図7(a)および図7(b)は、触覚センサ素子20によるせん断力の検出について例示する図である。図7(a)は、触覚センサ素子20に対して、X軸マイナス側かつY軸マイナス側からX軸プラス側かつY軸プラス側に外力Fが加わる場合を例示する図である。すなわち、外力Fには、X軸プラス側への外力成分Fxと、Y軸プラス側への外力成分Fyとが含まれる。
【0028】
図7(a)で例示するように、外力Fが触覚センサ素子20に加わる場合、ピエゾ抵抗素子30xa,30xbにおいては、外力成分Fxによって、ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受ける。したがって、ピエゾ抵抗素子30xa,30xbは、X軸プラス側へのせん断力を検出する。また、ピエゾ抵抗素子30ya,30ybにおいては、外力成分Fyによって、ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受ける。したがって、ピエゾ抵抗素子30ya,30ybは、Y軸プラス側へのせん断力を検出する。
続きを表示(全14行)
【0029】
なお、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbにおいては、両方のピエゾ抵抗層32が引張力を受けることになる。したがって、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbは、せん断力を検出しない。
【0030】
図7(b)は、Z軸を中心として外力として回転力Rが加わる場合を例示する図である。一例として、接触面21に対する平面視において、時計回りの回転力Rが加わる場合について検討する。
【0031】
図7(b)で例示するように、回転力Rが触覚センサ素子20に加わる場合、ピエゾ抵抗素子30xa,30xbにおいては、回転力Rによって、両方のピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力を受ける。したがって、ピエゾ抵抗素子30xa,30xbは、せん断力を検出しない。ピエゾ抵抗素子30ya,30ybにおいても、回転力Rによって、両方のピエゾ抵抗層32が引張力を受ける。したがって、ピエゾ抵抗素子30ya,30ybもせん断力を検出しない。
【0032】
これに対して、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbにおいては、ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力および圧縮力を受けることになる。したがって、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbは、Z軸回転方向のせん断力を検出する。
【0033】
本実施例によれば、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbが、接触面21の接触部23の周辺において、接触部23の周方向の異なる位置に配置されている。また、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbの状態変化を電気信号として検出する検出回路30が備わっている。検出回路30は、接触部23において接触面21に対する垂直軸(Z軸)の回転方向にせん断力が印加される場合に、上記電気信号の強度を当該せん断力に応じて変化させるように構成されている。それにより、回転軸方向のせん断力を検出することができる。また、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbの抵抗値変化を検出するため、温度変化や他軸との干渉をキャンセルすることが出来、安定した出力値を得ることができる。ピエゾ抵抗素子30xa,30xb,30ya,30yb,30za,30zbについても同様である。」
「【図7】
[図:0001404390000005.jpg]
」

(2) 引用発明の認定

ア 段落【0013】、【0014】、【0017】及び【図2】から、触覚センサ素子20は、XY平面に相当する接触面21を有する基板と、前記接触面21に設けられた弾性体22を備えており、前記接触面21には複数のピエゾ抵抗素子が配置され、前記弾性体22は前記複数のピエゾ抵抗素子が配置された接触面21の全面を覆っている構成が読み取れる。

イ 前記(1)の記載事項及び前記アの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>

「触覚センサとして機能する、触覚センサ素子20および検出回路30であって、(【0010】)
触覚センサ素子20は、接触面21における接触力(Z軸方向の圧力)、X軸方向のせん断力、Y軸方向のせん断力、および回転軸方向のせん断力を検出し、回転軸方向のせん断力とは、Z軸を中心とする回転のせん断力であり、(【0012】)
検出回路30は、触覚センサ素子20の状態変化を電気信号として検出する回路であり、(【0012】)
触覚センサ素子20は、XY平面に相当する接触面21を有する基板と、前記接触面21に設けられた弾性体22を備えており、前記接触面21には複数のピエゾ抵抗素子が配置され、前記弾性体22は前記複数のピエゾ抵抗素子が配置された接触面21の全面を覆っており、(前記アの認定事項)
続きを表示(全14行)
触覚センサ素子20の接触面21の中央部が対象物と接触する接触部23であり、(【0014】)
各ピエゾ抵抗素子は、接触面21において、接触部23の周辺に、周方向の異なる位置に配置され、(【0017】)
接触面21において、Y軸方向に沿って、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように、X軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xbが配置され、(【0017】)
この1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xbにおいては、X軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、X軸方向のせん断力を検出することができ、(【0018】)
接触面21において、X軸方向に沿って、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように、Y軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30ya,30ybが配置され、(【0019】)
この1対のピエゾ抵抗素子30ya,30ybにおいては、Y軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、Y軸方向のせん断力を検出することができ、(【0020】)
接触面21において、いずれかの箇所において、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように1対のピエゾ抵抗素子30za,30zbが配置され、この1対のピエゾ抵抗素子30za,30zbにおいては、Z軸方向のせん断力が加わった場合に各ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力と圧縮力を受けることから、Z軸方向のせん断力を検出することができ、(【0021】)
接触面21において、いずれかの箇所において、接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように1対のピエゾ抵抗素子30ra,30rbが配置され、(【0022】)
回転力Rが触覚センサ素子20に加わる場合、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbにおいては、ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力および圧縮力を受けることになり、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbは、Z軸回転方向のせん断力を検出する、(【0031】、【0032】)
触覚センサとして機能する、触覚センサ素子20および検出回路30。」

2 引用文献2技術事項及び技術常識1の認定

(1) 引用文献2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用された前記引用文献2(特開2013-68503号公報)には、以下の事項が記載されている。

ア 【0023】~【0032】、【図1】、【図2】

「【0023】
(1)第1実施形態(2本の両持ち梁)
(全体構成)
図1に示すように本実施形態に係る多軸触覚センサ1は、異なる方向に配置された複数のセンサ素子を備える。本図の場合、多軸触覚センサ1には、センサ素子としての第1のセンサ素子2、第2のセンサ素子3が基板の表面と略同一の面内に設けられており、センサ素子2、3全体が外装材(本図には図示せず)により覆われている。多軸触覚センサ1は、外装材に加えられたx方向、y方向の力を各センサ素子2、3により計測し得るように構成されている。なお、本明細書では、図中xをx方向、yをy方向、zをz方向と呼ぶ。
続きを表示(全23行)
【0024】
本実施形態の場合、各センサ素子2、3の梁は、外装材に加えられた外力、例えばせん断力により、外装材と共に弾性変形し得るように形成されている。ここでせん断力とは、基板表面に対し水平方向(図中x、y方向)の力をいう。
【0025】
(第1及び第2のセンサ素子)
次に、第1及び第2のセンサ素子2、3の構成について説明する。第1及び第2のセンサ素子2、3は、配置される方向が異なるのみで構成は同じであるため、第1のセンサ素子2についてのみ説明することとする。
【0026】
図2に示すように、第1のセンサ素子2は、基板6上に両端が支持された2本の梁、すなわち、第1の梁7と第2の梁8とを有する。第1及び第2の梁7、8は、略同じ機械的特性を有するようにシリコンで構成され、略同じ長さを有している。第1及び第2の梁7、8は、互いに略平行に、かつ基板6表面に対し略水平に配置されている。第1の梁7と第2の梁8とは、間隔が、例えば10μm程度とされ、極めて近傍に形成されている。
【0027】
第1の梁7は、第2の梁8に面している表面に対向する一表面としての表面(以下、「外側面」ともいう)7Aに第1の抵抗層9が形成されている。同様に、第2の梁8は、第1の梁7に面している表面に対向する他表面としての表面(以下、「外側面」ともいう)8Aに第2の抵抗層10が形成されている。第1及び第2の抵抗層9、10は、表面が基板表面6Aに対し略直角となるように形成されている。
【0028】
また、第1及び第2の梁7、8は、上面の中央部にそれぞれ導電層としての第1の導電層12及び第2の導電層13が形成されている。第1の導電層12は第1の抵抗層9に導通しており、第2の導電層13は第2の抵抗層10に導通している。
【0029】
本実施形態の場合、基板6は矩形状の角穴16が形成されている。第1及び第2の梁7、8は、前記角穴16の短辺間に掛架され、角穴16を挟んで対向する辺17、18において第1~第4の支持部20~23により基板6に支持されている。第1の梁7は第1の支持部20及び第2の支持部21によって、第2の梁8は第3の支持部22及び第4の支持部23によって、基板6に両端において支持されている。第1~第4の支持部20~23は、絶縁層25、梁形成層26、抵抗層27、導電層28を順に積層して形成されている。梁形成層26は、シリコンで構成され、前記第1及び第2の梁7、8を形成する。第1の支持部20に形成された導電層28は電源用電極30を構成し、第2の支持部21に形成された導電層28は第1の出力用電極31を構成する。また、第3の支持部22に形成された導電層28は接地用電極32を構成し、第4の支持部23に形成された導電層28は第2の出力用電極33を構成する。第1の出力用電極31と第2の出力用電極33とは図示しない回路において電気的に接続されている。また、第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10は、第1~第4の支持部20~23に形成された抵抗層27と一体に形成され、ピエゾ抵抗層で構成されている。
【0030】
第1の梁7には第1の変形部としての第1の検出部36と第2の検出部37が形成されている。すなわち、電源用電極30と第1の導電層12の間には導電層が形成されていない第1の検出部36が形成され、第1の出力用電極31と第1の導電層12の間には導電層が形成されていない第2の検出部37が形成されている。同様に第2の梁には、第2の変形部としての第3の検出部38と第4の検出部39が形成されている。すなわち、接地用電極32と第2の導電層13の間には導電層が形成されていない第3の検出部38が形成され、第2の出力用電極33と第2の導電層13の間には導電層が形成されていない第4の検出部39が形成されている。
【0031】
第1及び第2の梁7、8の周囲には空間40が形成されており、第1及び第2の梁7、8が可撓し得るように構成されている。この空間40を含む第1及び第2の梁7、8の周囲は外装材42で覆われている。外装材42は、空間40及び第1及び第2の梁7、8の周囲を埋める充填部43を有する。充填部43は例えばシリコーン(Silicone)樹脂により形成することができる。シリコーン樹脂としては、例えば、PDMS(polydimethylsiloxane;ポリジメチルシロキサン)を用いることができる。また、外装材42は、前記充填部43の表面を覆う表面部(図示しない)をさらに有することとしてもよい。この場合、表面部は、充填部43とは異なる弾性係数を有する材料で構成してもよい。表面部は充填部43より硬質の材料、例えば光硬化樹脂で構成することにより、第1のセンサ素子2へより均一にせん断力を伝達することができる。また、外装材は、上記シリコーン樹脂のほか例えば、金属(アルミニウム)などを用いることができる。
【0032】
このように構成された第1のセンサ素子2は、第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10の抵抗値の比に相当する電圧を測定し得るように回路に接続されている。本実施形態の場合、図3に示すように、第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10は直列に接続され、全体として抵抗比出力回路45を構成する。すなわち、抵抗比出力回路45は、電源用電極30、第1の抵抗層9、第1の出力用電極31、第2の出力用電極33、第2の抵抗層10、接地用電極32の順に直列に接続されている。」
「【図1】
[図:0001404390000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001404390000007.jpg]
」

イ 【0040】~【0047】、【図11】、【図12】

「【0040】
(動作及び効果)
次に上記のように構成された多軸触覚センサ1の動作及び効果について説明する。まず、外装材42にx方向のせん断力が生じた場合について説明する。
【0041】
続きを表示(全17行)
図11に示すように、外装材42に何ら外力が生じていない場合、第1のセンサ素子2の第1及び第2の梁7、8は直線状の形状を保っている。電源用電極30に電源電圧を印加すると、第1の抵抗層9、第1の出力用電極31、第2の出力用電極33、第2の抵抗層10、接地用電極32へと順に電流が流れる。この場合、第1~第4の検出部36~39における第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値をRとし、電源電圧VinをVとすると、第1の出力用電極31及び第2の出力用電極33から得られる出力電圧VoutはV/2となる。出力電圧Voutは第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値の比に相当する電圧となる。
【0042】
これに対し、外装材42にx方向のせん断力が生じた場合、図12に示すように外装材42は力と同じ向き、すなわちx方向に変形する。そして第1のセンサ素子2は、周囲が前記外装材42で埋められているため、外装材42に倣って第1及び第2の梁7、8がx方向に変形する。この場合、第1及び第2の梁7、8は両端が支持されているので、中央部を中心として対称に撓む。これにより、第1の検出部36及び第2の検出部37は、第1の抵抗層9が形成された表面が伸張する方向に曲がる。一方、第3の検出部38及び第4の検出部39は、第2の抵抗層10が形成された表面が、第1の抵抗層9が形成された表面とは逆に圧縮する方向に曲がる。
【0043】
第1と第2の検出部36、37及び第3と第4の検出部38、39の変形はそれぞれ伸張と圧縮の対となり、抵抗値の変化は正負逆の方向に変化する。この場合、第1と第2の検出部36、37及び第3と第4の検出部38、39は、第1及び第2の梁7、8が略同じ機械的特性を有するように構成されていることから、変形量も略同じになるといえる。そうすると、各抵抗値の変化量は絶対値が同じで正負が逆の値、すなわち第1と第2の検出部36、37における第1の抵抗層9の抵抗値の変化量は+dR、第3と第4の検出部38、39における第2の抵抗層10の抵抗値の変化量は-dRとなるといえる。この結果、出力電圧Voutは、変形前に比べdR・V/2Rだけ変化する。したがって、第1のセンサ素子2はこの電圧変化からせん断力を計測することができる。
【0044】
本実施形態では、第1のセンサ素子2が基板6表面に対し略水平に配置した第1及び第2の梁7、8を有し、当該第1及び第2の梁7、8の変形を検出することにより外装材42に生じたせん断力を計測する構成とした。これにより、第1のセンサ素子2は、屹立したカンチレバーを用いた従来に比べ、格段と薄型化することができる。
【0045】
本実施形態の場合、第1のセンサ素子2は、せん断力によって伸張又は圧縮変形する第1及び第2の検出部36、37の第1の抵抗層9と、前記せん断力によって前記第1の抵抗層9と逆に圧縮又は伸張変形する第3及び第4の検出部38、39の第2の抵抗層10との抵抗値の比に相当する電圧を測定する構成とした。そうすると、第1のセンサ素子2は、使用する環境の温度(及び光強度)が変化したとしても、第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値がともに変化するので、同じせん断力に対する第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値の比は略同じになるといえる。したがって第1のセンサ素子2は、使用する環境の温度(及び光強度)に関わらず安定してせん断力を計測することができる。
【0046】
第1のセンサ素子2は、第1及び第2の梁7、8が極めて近傍に配置されており、1回的手順によりドープを行って第1及び第2の抵抗層9、10を構成するピエゾ抵抗層を形成することとした。これにより、第1のセンサ素子2は、ドープ量のバラツキを極力抑えることができるので、初期の抵抗値のバラツキが少ない第1及び第2の抵抗層9、10を容易に形成することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1のセンサ素子2及び第2のセンサ素子3における第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10を第1の梁7及び第2の梁8の外側面7A、8Aにそれぞれ形成する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、互いに対向する表面に第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10をそれぞれ形成することとしてもよい。この場合、一つの矩形状の穴68を梁形成層26にするだけで第1の梁7及び第2の梁8それぞれに第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10を形成することができるので、ドープ量のバラツキをより確実に抑えることができる。」
「【図11】
[図:0001404390000008.jpg]
」
「【図12】
[図:0001404390000009.jpg]
」

(2) 引用文献2技術事項の認定

前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

<引用文献2技術事項>

「外装材に加えられたx方向、y方向の力を計測し得るように構成されているセンサ素子2、3であって、(【0023】)
第1及び第2のセンサ素子2、3は、配置される方向が異なるのみで構成は同じであり、(【0025】)
第1のセンサ素子2は、基板6上に両端が支持された2本の梁、すなわち、第1の梁7と第2の梁8とを有し、第1及び第2の梁7、8は、略同じ機械的特性を有するようにシリコンで構成され、略同じ長さを有し、第1及び第2の梁7、8は、互いに略平行に、かつ基板6表面に対し略水平に配置され、第1の梁7と第2の梁8とは、間隔が、例えば10μm程度とされ、極めて近傍に形成され、(【0026】)
第1の梁7は、第2の梁8に面している表面に対向する一表面としての表面7Aに第1の抵抗層9が形成され、同様に、第2の梁8は、第1の梁7に面している表面に対向する他表面としての表面8Aに第2の抵抗層10が形成されており、(【0027】)
第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10は、ピエゾ抵抗層で構成されており、(【0029】)
第1のセンサ素子2は、せん断力によって伸張又は圧縮変形する第1の抵抗層9と、前記せん断力によって前記第1の抵抗層9と逆に圧縮又は伸張変形する第2の抵抗層10との抵抗値の比に相当する電圧を測定する、(【0045】)
センサ素子2、3。」

(3) 技術常識1の認定

ア 引用文献2の段落【0045】には、使用する環境の温度(及び光強度)が変化したとしても、第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値がともに変化するので、同じせん断力に対する第1及び第2の抵抗層9、10の抵抗値の比は略同じになるから、第1のセンサ素子2は、使用する環境の温度(及び光強度)に関わらず安定してせん断力を計測することができることが記載されている。

イ また、引用文献2の段落【0046】には、第1及び第2の梁7、8が極めて近傍に配置されており、1回的手順によりドープを行って第1及び第2の抵抗層9、10を構成するピエゾ抵抗層を形成することにより、第1のセンサ素子2は、ドープ量のバラツキが極力抑えられた、初期の抵抗値のバラツキが少ない第1及び第2の抵抗層9、10を形成することが記載されている。

ウ 前記ア及びイにおいて摘記した事項を踏まえると、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。

<技術常識1>

「ピエゾ抵抗層を備えた梁構造を有するセンサ素子を用いてせん断力を検出する際には、温度等の使用環境の変化や、製造時に生じる抵抗値のバラツキに影響されることがないように、安定的な検出を行う必要があること。」

第5 対比

1 対比分析

本願発明と引用発明を対比する。

(1)ア 引用発明の「触覚センサとして機能する、触覚センサ素子20および検出回路30」は、「接触面21における接触力(Z軸方向の圧力)、X軸方向のせん断力、Y軸方向のせん断力、および回転軸方向のせん断力を検出」するものである。

イ ここで、引用発明の「X軸方向」、「Y軸方向」及び「Z軸方向」は、本願発明の「3つの軸方向」に相当し、引用発明の「接触面21における接触力(Z軸方向の圧力)、X軸方向のせん断力、Y軸方向のせん断力」は、本願発明の「3つの軸方向の力」に相当する。

また、引用発明の「Z軸方向」は、本願発明の「前記3つの軸のうち、少なくとも1つの軸」に相当し、引用発明の「回転軸方向のせん断力」は、「Z軸を中心とする回転のせん断力」であって、Z軸のまわりに回転を生じさせる力であるといえるから、本願発明の「前記3つの軸のうち、少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメント」に相当する。

ウ 前記イを踏まえると、引用発明の「触覚センサとして機能する、触覚センサ素子20および検出回路30」は、本願発明の「多軸触覚センサ」に相当する。

エ よって、本願発明と引用発明は、「3つの軸方向の力と、前記3つの軸のうち、少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントを検出するための多軸触覚センサ」の発明である点で一致する。

(2)ア 引用発明の「XY平面に相当する接触面21を有する基板」は、本願発明の「基板」に相当する。

イ 引用発明の「基板」の「接触面21」は、本願発明の「前記基板の表面」に相当し、引用発明の「複数のピエゾ抵抗素子」は、本願発明の「複数のセンサ素子」に相当するところ、引用発明では、「前記接触面21には複数のピエゾ抵抗素子が配置され」ているから、引用発明の「前記接触面21」に「配置」された「複数のピエゾ抵抗素子」は、本願発明の「前記基板の表面と略同一の面内に設けられた複数のセンサ素子」に相当する。

ウ 引用発明の「前記接触面21に設けられた弾性体22」は、「前記複数のピエゾ抵抗素子が配置された接触面21の全面を覆って[いる]」ところ、「触覚センサ素子20の接触面21の中央部が対象物と接触」したとき、「対象物」から「接触部23」に外力が作用し、当該外力は、前記弾性体22を介して前記複数のピエゾ抵抗素子に伝達されることは明らかであるから、引用発明の「前記複数のピエゾ抵抗素子が配置された接触面21の全面を覆って[いる]」「弾性体22」は、本願発明の「前記複数のセンサ素子の周囲を覆い、前記複数のセンサ素子に外力を伝達する伝達材」に相当する。

エ 前記ア~ウを踏まえると、本願発明と引用発明は、「基板と、前記基板の表面と略同一の面内に設けられた複数のセンサ素子と、前記複数のセンサ素子の周囲を覆い、前記複数のセンサ素子に外力を伝達する伝達材と、を備え」る点で一致する。

(3)ア 引用発明の「基板」の「接触面21」は、「XY平面に相当する」から、前記(2)イを踏まえると、引用発明の「XY平面」は、本願発明の「基板の表面」に相当する。

そうすると、引用発明の「XY平面」を規定する「X軸」及び「Y軸」にそれぞれ沿った方向である「X軸方向」及び「Y軸方向」は、本願発明の「前記基板の表面に対して平行方向」に相当する。

イ 前記アを踏まえると、引用発明の「X軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xb」及び「Y軸方向のせん断力を検出する1対のピエゾ抵抗素子30ya,30yb」は、いずれも本願発明の「前記基板の表面に対して平行方向の力を検出する」「せん断力検出素子」に相当する。

ウ 引用発明の「回転軸方向のせん断力」は、「Z軸を中心とする回転のせん断力」であり、「XY平面」に対して平行方向の力であるから、引用発明の「Z軸回転方向のせん断力を検出する」「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」は、本願発明の「前記基板の表面に対して平行方向の力を検出する」「せん断力検出素子」に相当する。

エ 引用発明の「1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xb」、「1対のピエゾ抵抗素子30ya,30yb」及び「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」は、いずれも「弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁」を備えているところ、引用発明の「ピエゾ抵抗層32」及び「梁」は、それぞれ本願発明の「抵抗層」及び「梁構造」に相当するから、引用発明の「1対のピエゾ抵抗素子30xa,30xb」、「1対のピエゾ抵抗素子30ya,30yb」及び「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」は、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有するものであるといえる。

オ 前記ア~エを踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記複数のセンサ素子は、前記基板の表面に対して平行方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも3つのせん断力検出素子と、」「を含む、」という点で共通する。

(4)ア 引用発明の「XY平面」を垂直に貫く「Z軸」に沿った方向である「Z軸方向」は、本願発明の「前記基板の表面に対して垂直方向」に相当するところ、引用発明の「Z軸方向のせん断力を検出する」「1対のピエゾ抵抗素子30za,30zb」は、本願発明の「前記基板の表面に対して垂直方向の力を検出する」「少なくとも1つの押圧力検出素子」に相当する。

イ 引用発明の「1対のピエゾ抵抗素子30za,30zb」についても、前記(3)エにおいて説示したことと同様に、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有するものであるといえる。

ウ 前記ア及びイを踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記基板の表面に対して垂直方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも1つの押圧力検出素子と、を含む、」という点で共通する。

(5) 前記(3)及び(4)を踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記複数のセンサ素子は、前記基板の表面に対して平行方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも3つのせん断力検出素子と、前記基板の表面に対して垂直方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも1つの押圧力検出素子と、を含む、少なくとも4つのセンサ素子を含[む]」という点で共通する。

(6) 引用発明の「各ピエゾ抵抗素子」は、「接触面21において、接触部23の周辺に、周方向の異なる位置に配置され」、いずれも「弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように」「配置され」ているから、4つのピエゾ抵抗素子の梁はそれぞれ、その長手方向が放射状となるように基板の接触面21に配置されているといえる。

よって、本願発明と引用発明は、「前記4つのセンサ素子の前記梁構造はそれぞれ、その長手方向が放射状となるように前記基板に配置されて[いる]」点で一致する。

(7)ア 引用発明の「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」においては、「回転力Rが触覚センサ素子20に加わる場合」、「ピエゾ抵抗層32がそれぞれ引張力および圧縮力を受けることになり」、「Z軸回転方向のせん断力を検出する」ところ、この「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」は、「接触部23に対して点対称に、弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁が放射状に延びるように」「配置され」ているものである。

イ ここで、引用発明の「接触部23」は、「放射状」の「配置」の中心にあるといえるから、本願発明の「前記放射状の配置における中心」に相当する。

また、引用発明の「接触部23に対して点対称」の「配置」は、「接触部23」を基準とした180度の回転対称の配置を意味するから、本願発明の「前記放射状の配置における中心を基準として回転対称の位置に配置されている」ことに相当する。

ウ 前記イを踏まえると、引用発明の「接触部23に対して点対称に」、「梁が放射状に延びるように」「配置」された、「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」は、本願発明の「前記放射状の配置における中心を基準として回転対称の位置に配置されている、2つ以上のセンサ素子」に相当する。

エ 引用発明の「Z軸回転方向のせん断力」である「回転軸方向のせん断力」は、前記(1)イにおいて説示したとおり、本願発明の「少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメント」に相当するところ、引用発明において、「ピエゾ抵抗素子30ra,30rb」が「受ける」「引張力及び圧縮力」により、「Z軸回転方向のせん断力を検出する」ことは、本願発明の「前記少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントは」、「2つ以上のセンサ素子の出力に基づいて検出される」ことに相当する。

オ よって、本願発明と引用発明は、「前記少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントは、前記複数のセンサ素子のうち、前記放射状の配置における中心を基準として回転対称の位置に配置されている、2つ以上のセンサ素子の出力に基づいて検出される」点で一致する。

2 一致点及び相違点

前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。

(1) 一致点

3つの軸方向の力と、前記3つの軸のうち、少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントを検出するための多軸触覚センサであって、

基板と、

前記基板の表面と略同一の面内に設けられた複数のセンサ素子と、

前記複数のセンサ素子の周囲を覆い、前記複数のセンサ素子に外力を伝達する伝達材と、

を備え、

前記複数のセンサ素子は、

前記基板の表面に対して平行方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも3つのせん断力検出素子と

前記基板の表面に対して垂直方向の力を検出するように、所定部位に抵抗層を備えた梁構造を有する、少なくとも1つの押圧力検出素子と、を含む、少なくとも4つのセンサ素子を含み、

前記4つのセンサ素子の前記梁構造はそれぞれ、その長手方向が放射状となるように前記基板に配置されており、

前記少なくとも1つの軸の軸まわりのモーメントは、前記複数のセンサ素子のうち、前記放射状の配置における中心を基準として回転対称の位置に配置されている、2つ以上のセンサ素子の出力に基づいて検出される、多軸触覚センサ、である点。

(2) 相違点

本願発明においては、

基板の表面に対して平行方向の力を検出する、少なくとも3つのせん断力検出素子が有する、所定部位に抵抗層を備えた梁構造が、

「所定部位に第1の抵抗層および第2の抵抗層を備えた梁構造」であり、

基板の表面に対して垂直方向の力を検出する、少なくとも1つの押圧力検出素子が有する、所定部位に抵抗層を備えた梁構造が、

「所定部位に第3の抵抗層および第4の抵抗層を備えた梁構造」であり、

いずれの「検出素子」についても、二つの「抵抗層」を備えた「梁構造」を有するのに対して、

引用発明においては、「各ピエゾ抵抗素子」について、一つの「ピエゾ抵抗層32」を備えた梁構造である点。

第6 判断

1 相違点の検討

(1) 前記第4の2(2)において示したように、引用文献2には、

「外装材に加えられたx方向」「の力を計測し得るように構成されているセンサ素子2」において、「基板6上に両端が支持された2本の梁」として、「略同じ機械的特性を有するようにシリコンで構成され、略同じ長さを有し」、「互いに略平行に、かつ基板6表面に対し略水平に配置され」、「間隔が、例えば10μm程度とされ、極めて近傍に形成され」た「第1及び第2の梁7、8」であって、

「第1の梁7は、第2の梁8に面している表面に対向する一表面としての表面7Aに第1の抵抗層9が形成され、同様に、第2の梁8は、第1の梁7に面している表面に対向する他表面としての表面8Aに第2の抵抗層10が形成されており、第1の抵抗層9及び第2の抵抗層10は、ピエゾ抵抗層で構成され」たものが開示されている(前記引用文献2技術事項を参照。)。

(2) ここで、前記第4の2(3)において認定したとおり、「ピエゾ抵抗層を備えた梁構造を有するセンサ素子を用いてせん断力を検出する際には、温度等の使用環境の変化や、製造時に生じる抵抗値のバラツキに影響されることがないように、安定的な検出を行う必要があること」は、当業者にとって技術常識であることを踏まえると(前記技術常識1を参照。)、引用発明においても、「弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁」を備えた「各ピエゾ抵抗素子」を用いて「せん断力を検出」する際に、温度等の使用環境の変化や、製造時に生じる抵抗値のバラツキに影響されることがないように、安定的な検出を行う必要があることは、自明の課題であって、かかる自明の課題を解決するために、引用文献2技術事項に開示された梁構造を引用発明の梁構造として採用する契機はあるというべきである。

(3) そうすると、引用発明及び引用文献2技術事項は、いずれもピエゾ抵抗層を備えた梁構造を有する、せん断力を検出するセンサ素子であるから、引用発明の各ピエゾ抵抗素子の構成として、引用文献2技術事項に開示された、二つの抵抗層を備えた梁構造を有する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4) よって、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 総合検討

前記1において検討したとおり、引用発明において前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について

(1) 請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。

主引用発明としての引用文献1に記載された発明における「せん断力に応じて変化する電気信号を検出するための1対のピエゾ抵抗素子を、所定領域の周方向の異なる位置の梁構造に配置する」という構成は、単なる一手段ではなく、引用文献1に記載された発明の本質的特徴となっている。

引用文献1には、温度に関する課題が記載されている。しかしながら、引用文献1に記載された発明は、課題を解決するために、単なる一手段としてではなく、発明の本質的特徴として、請求項1に記載された構成に対応する、せん断力に応じて変化する電気信号を検出するための1対のピエゾ抵抗素子を、所定領域の周方向の異なる位置の梁構造に配置するという構成を採用している。

よって、主引用発明としての引用文献1に記載された発明においては、この発明の本質的特徴を変更してまで、他の解決手段を採用する積極的な動機はない。

(2) 請求人の主張についての検討

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 「せん断力に応じて変化する電気信号を検出するための1対のピエゾ抵抗素子を、所定領域の周方向の異なる位置の梁構造に配置する」という構成が、引用文献1に記載された発明の本質的特徴であると主張する根拠を請求人は具体的に明示していないため、請求人の主張に与することはできない。

この点に関し、引用文献1に記載された発明の解決しようとする課題は、段落【0004】及び【0005】に記載されているとおり、「しかしながら、上記技術では、回転軸方向のせん断力を検出することができない。1つの側面では、本発明は、回転軸方向のせん断力を検出することができる触覚センサおよびせん断力検出方法を提供することを目的とする。」ということであり、発明の効果は、段落【0007】に記載されているとおり、「回転軸方向のせん断力を検出することができる。」ということである。

上記記載を踏まえると、引用文献1に記載された発明にとって本質的特徴なのは、「回転軸方向のせん断力を検出」できるような構成であって、そのためにピエゾ抵抗層をどのように配置すべきかは、「回転軸方向のせん断力を検出」できるようにするための具体的態様の問題にすぎないというべきである。

イ 仮に、請求人の主張するように、「せん断力に応じて変化する電気信号を検出するための1対のピエゾ抵抗素子を、所定領域の周方向の異なる位置の梁構造に配置する」という構成が、引用文献1に記載された発明にとって本質的特徴であるとして検討しても、以下に詳述するとおり、引用発明に引用文献2技術事項を適用することにより、上記本質的特徴が害されることはないというべきである。

すなわち、前記1において説示したように、引用発明において、「弾性体31およびピエゾ抵抗層32がなす梁」を備えた「各ピエゾ抵抗素子」を用いて「せん断力を検出」する際に、温度等の使用環境の変化や、製造時に生じる抵抗値のバラツキに影響されることがないように、安定的な検出を行う必要があるという自明の課題を解決するために、引用発明に引用文献2技術事項を適用して、ピエゾ抵抗素子を一つの抵抗層から二つの抵抗層を有するように構成にした場合、例えば、Z軸回転方向のせん断力を検出する、周方向に異なる位置にあるピエゾ抵抗素子30ra,30rbのそれぞれのピエゾ抵抗層32について、一つの抵抗層から二つの抵抗層を有する構成になるものの、ピエゾ抵抗素子30ra,30rbの位置については、依然として、周方向に異なる位置にあることに変わりはないのであるから、請求人の主張する本質的特徴が変更されることはないと考えられる。

よって、請求人の主張に沿って検討しても、前記2において述べた結論が左右されることはない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項及び技術常識1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-017032

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決87件(国立大学法人 東京大学)
  • 2024-003887拒絶査定不服審判 / 2026-07-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)ウルトラファインバブル含有溶液、これを含む飲料、及び医薬
    同じ当事者: 国立大学法人 東京大学
  • 2025-005979拒絶査定不服審判 / 2026-07-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)フッ素原子含有化合物
    同じ当事者: 国立大学法人 東京大学
  • 2023-020100拒絶査定不服審判 / 2026-05-12 / 請求不成立液滴吐出装置用の液セット
    同じ当事者: 国立大学法人 東京大学
  • 2024-019928拒絶査定不服審判 / 2026-04-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)筋萎縮を阻害するための組成物
    同じ当事者: 国立大学法人 東京大学
  • 2024-006433拒絶査定不服審判 / 2026-02-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)ビオチン改変二量体とフタロシアニン染料とのコンジュゲート
    同じ当事者: 国立大学法人 東京大学
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)101件(121・G01L)
  • 2024-015312拒絶査定不服審判 / 2026-07-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)センサ
    共通の審決分類: 121・G01L
  • 2025-000351拒絶査定不服審判 / 2026-06-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)センサデバイス、及びモニタリング装置
    共通の審決分類: 121・G01L
  • 2024-011880拒絶査定不服審判 / 2026-02-25 / 請求不成立軸力センサアセンブリ、ロボットグリッパー及びロボット
    共通の審決分類: 121・G01L
  • 2023-020396拒絶査定不服審判 / 2026-02-12 / 請求不成立磁気弾性体に加えられるトルクを測定する方法
    共通の審決分類: 121・G01L
  • 2024-011640拒絶査定不服審判 / 2026-01-14 / 請求不成立センサシステム用の平面状の力センサユニット
    共通の審決分類: 121・G01L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存