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特許拒絶査定不服審判

2022-015239

注腸剤

審判番号
2022-015239
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-253179外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月26日
審決日
2024年08月21日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2017-253179「注腸剤」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日出願公開、特開2018-108993〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年12月28日(国内優先権主張 平成28年12月28日)を出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年10月 4日付け 拒絶理由の通知 令和4年 1月 7日 意見書の提出 同年 5月12日付け 拒絶査定 同年 9月26日 審判請求書及び手続補正書の提出 令和6年 2月22日付け 拒絶理由の通知(当審) 同年 5月27日 意見書、手続補正書及び手続補足書 の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年5月27日提出の手続補正書によってなされた補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。なお、下線は補正された箇所を示す。 「【請求項1】 ブデソニドを有効成分とし、炎症性腸疾患の治療又は再燃予防のための、粘膜を治癒する注腸剤であって、1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、12週間投与するための泡沫状の注腸フォーム剤であり、 1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与された時点において、治療反応が認められたが大腸粘膜治癒(内視鏡所見スコア0点)には至らなかった炎症性腸疾患の患者に対して、さらに1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与されることを特徴とする、注腸剤。」 第3 当審拒絶理由 当審が、令和6年2月22日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本件補正前の請求項1~5に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対する拒絶理由の概要は、補正前発明は、以下の引用例1に記載された発明及び引用例1、2、A~Cに記載された事項、並びに本願優先日当時における周知技術(引用例B~D)に基づき、その本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用例1:国際公開第2016/121147号 引用例2:Scand.J.Gastroenterol、2002年、Vol.37、No.6、p.705-710 引用例A:J.Crohn’s and Colitis、2016年(2015年11月16日公開)、p.828-836、doi:10.1093/ecco-jcc/jjv208 引用例B:Gastroenterology、2012年、Vol.142、No.5、Suppl.1、p.S566-567、Su2088(周知技術を示す文献) 引用例C:American Journal of Gastroenterology、2016年10月、Vol.111、Supp.1、p.S303、664(周知技術を示す文献) 引用例D:Public Assessment Report of the Medicines Evaluation Board in the Netherlands、Budenofalk Schuim 2mg、rectal foam、Dr.Falk Pharma Benelux B.V.、the Netherlands budesonide、2012年、p.1-27(周知技術を示す文献) 第4 引用例 1 引用例1 (1)引用例1に記載された事項 本願優先日前に公開された文献である引用例1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は合議体によって付したものであり、以下、他の文献についても同様である。 (摘記1ア)「請求の範囲 [請求項1] ブデソニドを有効成分とし、炎症性腸疾患の治療又は再燃予防のために、1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与されることを特徴とする、注腸剤。 [請求項2] ブデソニドの投与量が1回あたり2mgである、請求項1に記載の注腸剤。 [請求項3] 潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療又は再燃予防のために投与される、請求項1又は2に記載の注腸剤。 [請求項4] 泡沫状又は液状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の注腸剤。」(請求の範囲) (摘記1イ)「潰瘍性大腸炎は、主に大腸粘膜に潰瘍やびらんができる原因不明の非特異性炎症性腸疾患であり、クローン病は、主として口腔から肛門までの全消化管に、非連続性の慢性肉芽腫性炎症を生じる原因不明の炎症性腸疾患である。いずれも、血便、粘血便、下痢、腹痛等がよくみられる症状であり、症状が酷くなると、一般的な社会生活にも支障がでる。また、これらは根治的治療が確立しておらず、一度発症すると、再燃と寛解を繰り返すことになる。このため、患者のQOL(quality of life)の向上のためには、寛解期をできるだけ長く維持することが重要である。 一般的に、投薬治療は、臨床的寛解に至ることを目的として行われる。このため、例えば潰瘍性大腸炎では、血便がなくなり、排便回数が日常生活に支障がない程度にまで減少するなど、臨床的症状が消失又は日常生活に支障がない程度にまで改善された場合には、腸管の粘膜の炎症が完全に消失しておらず、軽度の炎症が確認される場合であっても、寛解したとされる。しかしながら、近年、投薬治療終了時において、腸管粘膜が正常に回復した(粘膜治癒に至った)患者群では、腸管粘膜に発赤が残っていたり、血管透見像が減少したままであった患者群に比べて、予後が長期間良好であり、寛解維持が有意に改善されているとの報告がなされている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。つまり、寛解期をなるべく長期間維持するためには、活動期の治療時に、臨床的寛解だけではなく、腸管粘膜の治癒を目指すことが重要である。 ブデソニド((+)-[(RS)-16α,17α-Butylidenedioxy-11β,21-dihydroxy-1,4-pregnadiene-3,20-dione])は、潰瘍性大腸炎やクローン病等の炎症性腸疾患の治療剤として適用されているステロイド剤である。ブデソニドは、局所投与に有効であり、一般的に、圧縮ガス充填パックされた医薬泡沫剤や浣腸製剤等の注腸剤として使用されている(例えば、特許文献1参照。)。潰瘍性大腸炎等の治療としては、一般的に、2mgのブデソニドを1日1回、6週間投与することにより行われている。」([0002]~[0004]) (摘記1ウ)「本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ブデソニドを有効成分とする注腸剤を、1日2回、6週間投与することにより、従来の1日1回6週間投与した場合に比べて、粘膜治癒効果が有意に高いことを見出し、本発明を完成させた。」([0008]) (摘記1エ)「[実施例1]プラセボ対照無作為化二重盲検多施設共同並行群間比較試験 活動期潰瘍性大腸炎患者を対象に、プラセボを対照とした二重盲検比較試験によりブデソニド2mgを1日1回又は1日2回、6週間直腸内投与した際の用量反応性、有効性及び安全性について調べた(治験番号:JapicCTI-132294)。 ・・・。 <被験薬及び対照薬> 試験には、被験薬として、1回の噴射でブデソニド2mgを含む25mL(1.35g)の白色のクリーム状の泡沫が放出される定量噴射式の注腸用エアゾール剤(直腸泡沫剤)を用いた。当該注腸用エアゾール剤は、病変が直腸及びS状結腸に限局する活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入治療薬として、ブデソニド2mgを1日1回の用法・用量で欧州において承認されたものである(商品名:Budenofalk 2mg/dose rectal foam、ドクターファルクファーマ社製)。 また、対照薬として、外観、重量等が被験薬と識別不能で、ブデソニドを含有しない定量噴射式注腸用エアゾール剤を用いた。 <被験者> 活動期の潰瘍性大腸炎患者を被験者とし、被験薬を1日1回投与する群(以下、1日1回群、54例)、被験薬を1日2回投与する群(以下、1日2回群、55例)、及び対照薬を投与する群(以下、プラセボ群、56例)に分けた。 <投与量、投与方法及び投与期間> 被験薬又は対照薬を、1日2回(朝1回、及び夜1回)、なるべく排便後に直腸内投与した。ただし、被験薬の1日1回群は、朝に対照薬を、夜に被験薬を投与した。1投与あたりの噴射回数は1回であり、投与期間は6週間とし、評価前日の夜まで投与した。各群のブデソニド投与量は、1日1回群が2mg/日であり、1日2回群が4mg/日であり、プラセボ群が0mg/日であった。 なお、直腸内投与の行為によって症状が改善する患者(プラセボ効果による改善例)や直腸内投与に起因する愁訴を発現する患者を除外するために、本投与前に単盲検下で対照薬を1日2回(朝1回、及び夜1回)、1週間投与する事前観察期間を設定した。 <結果> MMDAIのうち、血便スコアが0点であり、内視鏡所見スコアが1点以下であり、排便回数スコアが0点或いは0週(本投与開始時点)より1点以上減少した患者を、寛解したと評価した。各群の寛解率の平均値(両側95%信頼区間)は、プラセボ群が20.4%(11.8%~32.9%)、1日1回群が50.9%(38.1%~63.6%)(P=0.0015)、及び1日2回群が48.2%(35.7%~61.0%)(P=0.0029)であった。モデルを主効果モデルとし、寛解率を目的変数、投与群及び割付因子を説明変数としたロジスティック回帰モデルにおけるプラセボ群に対するオッズ比の点推定値(両側95%信頼区間)は、1日1回群が3.994(1.734~9.711)であり、1日2回群が3.674(1.594~8.930)であり、両群とも両側95%信頼区間の下限値は1を上回った。 つまり、ブデソニド2mgを1日1回、6週間投与した場合、及びブデソニド2mgを1日2回、6週間投与した場合における寛解率は、プラセボ群と比較し有意に高く、本剤の活動期潰瘍性大腸炎患者に対する有効性が確認された。 MMDAIの内視鏡所見スコア(0=正常又は非活動性所見、1=軽症(発赤、血管透見像の減少)、2=中等症(著明に発赤、血管透見像の消失、脆弱、びらん)、3=重症(自然出血、潰瘍))が1以下の患者を粘膜が寛解したと評価した。各群の粘膜寛解率(内視鏡所見スコア≦1点の被験者の割合)(%)の平均値(両側95%信頼区間)は、プラセボ群が46.3%(33.7%~59.4%)、1日1回群が69.1%(56.0%~79.7%)、及び1日2回群が76.8%(64.2%~85.9%)であった。また、プラセボ群との差の点推定値(両側95%信頼区間)は、1日1回群が22.8%(4.3%~39.3%)であり、1日2回群が30.5%(12.3%~46.0%)であり、1日1回群及び1日2回群は、プラセボ群と比較し有意差が認められた。結果を表1及び図1に示す。図表中、「ブデソニド1日1回投与群」は1日1回群の結果を、「ブデソニド1日2回投与群」は1日2回群の結果を、それぞれ示す。 ・・・ MMDAIの内視鏡所見スコアが0の患者を粘膜が治癒したと評価した。各群の粘膜治癒率(内視鏡所見スコア=0点の被験者の割合)(%)の平均値(両側95%信頼区間)は、プラセボ群が5.6%(1.9%~15.1%)であり、1日1回群が23.6%(14.4%~36.3%)(P=0.0159)であり、1日2回群が46.4%(34.0%~59.3%)(P<0.0001)であった。また、プラセボ群との差の点推定値(両側95%信頼区間)は、1日1回群が18.1%(4.8%~31.3%)であり、1日2回群が40.9%(25.2%~54.2%)であり、1日1回群及び1日2回群は、プラセボ群と比較し有意差が認められた。さらに、1日2回群は、1日1回群と比較して粘膜治癒率が有意に高かった。 粘膜治癒率を目的変数、投与群及び割付因子を説明変数としたロジスティック回帰モデルでの解析の結果、プラセボ群に対する1日1回群及び1日2回群のオッズ比の点推定値(両側95%信頼区間)は、それぞれ5.143(1.516~23.716)であり、15.553(4.850~70.232)であり、両側95%信頼区間の下限値は1を上回った。結果を表2及び図2に示す。図表中、「ブデソニド1日1回投与群」は1日1回群の結果を、「ブデソニド1日2回投与群」は1日2回群の結果を、それぞれ示す。 [表2] [図:0001418442000001.jpg] 一方で、安全性に関しては、被験薬投与により、有害事象として血中コルチゾール減少及び血中コルチコトロピン減少が発現した。1日2回群は1日1回群と比較し、有害事象の発現頻度が高くなることが示されたが、グルココルチコイドに関連する有害事象の発現率の上昇は認められず、重篤な有害事象、又は重度な有害事象の発現はなかった。これらの結果から、潰瘍性大腸炎患者へのブデソニド2mgの1日1回、6週間又は1日2回、6週間、直腸内投与することの忍容性は許容し得るものと考えられた。 実施例1の投薬期間を表3に示す。1日2回投与群は、15~45日間投与が行われ、42日以上投与した群が78.6%であった。投与日程は患者の通院の便を考慮し、±3日間を適合とした。」([0026]~[0038]) (2) 引用例1に記載された発明 上記(1)の(摘記1ア)及び(摘記1イ)に記載されるように、「潰瘍性大腸炎」及び「クローン病」は、「根治的治療が確立しておらず、一度発症すると、再燃と寛解を繰り返す」疾患であり、「寛解期をできるだけ長く維持することが重要」であることが知られ、従来から「潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療又は再燃予防のために投与される」「ブデソニド」は、「医薬泡沫剤や浣腸製剤等の注腸剤として使用され」、「一般的に、2mgのブデソニドを1日1回、6週間投与」されていた。 そして、「一般的に、投薬治療は、臨床的寛解に至ることを目的として行われ」、「腸管の粘膜の炎症が完全に消失しておらず、軽度の炎症が確認される場合であっても、寛解したとされ」ていたところ、「投薬治療終了時において、腸管粘膜が正常に回復した(粘膜治癒に至った)患者群では、腸管粘膜に発赤が残っていたり、血管透見像が減少したままであった患者群に比べて、予後が長期間良好であり、寛解維持が有意に改善されているとの報告がなされ」たことから、引用例1においては、「寛解期をなるべく長期間維持するためには、活動期の治療時に、臨床的寛解だけではなく、腸管粘膜の治癒を目指すことが重要である」という認識のもと、上記(1)(摘記1ア)、(摘記1ウ)及び(摘記1エ)に記載されるように、「活動期潰瘍性大腸炎患者を対象」に「1回の噴射でブデソニド2mgを含む」「注腸用エアゾール剤(直腸泡沫剤)を用い」て、「1日1回又は2回、6週間投与」する臨床試験を実施したところ、「MMDAIの内視鏡所見スコア(0=正常又は非活動性所見、1=軽症(発赤、血管透見像の減少)、2=中等症(著明に発赤、血管透見像の消失、脆弱、びらん)、3=重症(自然出血、潰瘍))」が「0の患者を粘膜が治癒したと評価した」場合、「1日2回群は、1日1回群と比較して粘膜治癒率が有意に高かった」こと、「重篤な有害事象、又は重度な有害事象の発現はな」く、「1日2回、6週間、直腸内投与することの忍容性は許容し得る」ことが示されている。 そうすると、引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「ブデソニドを有効成分とする潰瘍性大腸炎の治療又は再燃予防のために投与される注腸剤であって、活動期の潰瘍性大腸炎患者の腸管粘膜を治癒し、潰瘍性大腸炎患者の寛解期をなるべく長期間維持するために、1回あたり2mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与されることを特徴とする、注腸剤であって、泡沫状である注腸剤。」 2 引用例2 本願優先日前に公開された文献である引用例2には、以下の事項が記載されている。なお、引用例2は外国語の文献であるため、当審による翻訳文で記す。 (摘記2ア)「遠位潰瘍性大腸炎及び直腸炎の寛解及び再発率に対するブデソニド注腸の効果」(標題) (摘記2イ)「背景:グルココルチコステロイド注腸は、活動期の遠位潰瘍性大腸炎(UC)の治療において5-ASA注腸と同様に有効である。ブデソニドの導入により、全身性副作用のリスクが軽減される可能性がある。我々は、ブデソニド注腸、2mg/100mlを1日2回(b.i.d)投与すると、1日1回(o.d.)の標準レジメンと比較して寛解率を高めることができるかどうかを調査した。さらに、ブデソニド2mgを週2回注腸することで再発防止効果があるかどうかを評価した。方法:対照二重盲検多施設共同研究において活動性遠位UC患者149人を処置した。2つの並行群は:朝のプラセボ注腸と夕方のブデソニド注腸(すなわち2mg/日)又はブデソニド注腸(すなわち4mg/日)であり、寛解(臨床症状の消失と内視鏡による治癒)まで、又は最長で8週間の処置であった。寛解中の患者は、24週間又は再発するまで、週に2回、ブデソニド注腸又はプラセボ注腸のいずれかに無作為に割り付けられた。結果:4週間後の寛解率はo.d.レジメンで33%、b.i.dレジメンで41%であり(NS)、8週間後はそれぞれ51%と54%(NS)であった。b.i.d.群では副腎機能障害の頻度が増加しており、32%対4.8%(P = 0.001)であった。ブデソニド注腸とプラセボによる維持療法中の再発率は、8週間後15%対24%、16週間後31%対27%、24週間後41%対51%でした(NS)。結論:活動期の遠位UCでは、ブデソニド注腸2mg o.d.が最適な用量であると考えられる。週に2回のブデソニド注腸が寛解を維持するのに十分であることを示すことはできなかった。」(705頁、要約) (摘記2ウ)「定義 寛解:臨床症状の消失(血便がないこと及び3<便通/24h)又は内視鏡スコア0-1。 再発:臨床症状の発現(血便及び≧3便通/24h)又は内視鏡スコア2-3。 内視鏡スコア:0=目に見える炎症兆候がない;1=粒度、浮腫、正常な血管パターンの欠如;2=充血、脆弱性、点状出血及びスコア1の全て;3=潰瘍及びスコア2の全て。」(706頁右欄4段落) (摘記2エ)「結果 パートI 活動期の遠位UCの処置 研究成績 パートIでは、150人の患者が無作為抽出されたが、1人の患者は処置を開始しなかったため、解析から除外された。残り149人の患者のうち、28人が研究完了前に中止した。詳細は図1を参照。 有効性 4週での寛解率はそれぞれo.d.群33%(95%信頼区間21-44)及びb.i.d.群41%(29-52)であった。8週での寛解率はそれぞれo.d.群51%(38-63)及びb.i.d.群54%(42-66)であった。2群間で統計的な有意差は見られなかった(図2)。・・・ ベースラインの平均内視鏡スコアは、両群で2.4であった。4週後の平均スコアは、o.d.群1.5及びb.i.d群1.3であり、8週後は1.3及び1.1であった。・・・」(707頁右欄1~19行) 3 引用例A 本願優先日前に公開された文献である引用例Aには、以下の事項が記載されている。なお、引用例Aは外国語の文献であるため、当審による翻訳文で記す。 (摘記Aア)「1日2回のブデソニド2mgフォームは遠位潰瘍性大腸炎患者の完全な粘膜治癒を誘導する」(標題) (摘記Aイ)「背景と目的:粘膜治癒は潰瘍性大腸炎の重要な治療目標である。ブデソニド2mgフォームの1日1回投与は、臨床的寛解を誘導するために広く使用されている。潰瘍性大腸炎の粘膜治癒におけるブデソニド2mgフォームの1日2回投与の有用性を評価した研究はなかった。我々は、遠位潰瘍性大腸炎患者におけるブデソニドフォーム1日1回又は2回投与の粘膜治癒に対する有効性を調査した。 方法:本研究は多施設無作為化二重盲検プラセボ対象試験であった。165人全員が活動期の軽度から中等度の遠位潰瘍性大腸炎患者であり、無作為に3つのグループに割り付けられた。:1日1回又は2回ブデソニド2mg/25mlフォーム、又はプラセボフォームを、6週間投与。完全な粘膜治癒[内視鏡サブスコア=0]及び安全性プロファイルは6週目に評価した。事前に指定された解析及び事後解析が使用された。 結果:1日2回ブデソニドフォーム群の完全粘膜治癒率は46.4%であったのに対し、1日1回群では23.6%[p = 0.0097]、又はプラセボ群では5.6%[p < 0.0001]であった。1日2回ブデソニドフォーム群の臨床的寛解の割合及び内視鏡サブスコア1以下の割合は、48.2%及び76.8%であったのに対し、1日1回群はそれぞれ50.9%及び69.1%[有意差なし]、又はプラセボ群はそれぞれ20.4%及び46.3%[p = 0.0029及びp = 0.0007]であった。 以前に5-アミノサリチル酸座剤又は注腸使用した患者のサブグループでは、1日2回ブデソニドフォーム群[32.0%]の方が1日1回群[8.7%、p = 0.0774]又はプラセボ群[4.8%、p = 0.0763]に比べて完全な粘膜治癒率が高かったが、有意差はなかった。重篤な有害事象は発生しなかった。 結論:ブデソニドフォームの1日2回投与を受けた患者は、1日1回又はプラセボ投与と比較して、有意に高い割合で完全な粘膜治癒を達成した。これは、潰瘍性大腸炎に対する6週間のブデソニドフォーム1日2回投与の内視鏡的有効性を評価する最初の研究である。」(828~829頁、要約) (摘記Aウ)「2.3 有効性評価 患者は、0[ベースライン]、2、4及び6週目、又は離脱来院時に評価された。MMDIスコアは0及び6週目の大腸内視鏡検査、及び各来院時の直近3日間の症状記録日誌データにより評価された。・・・完全な粘膜治癒が内視鏡サブスコア0と定義された。臨床寛解は直腸出血サブスコア0、内視鏡サブスコア≦1、及び、排便頻度サブスコア0又はベースラインからの排便頻度サブスコアの1以上の減少として定義された。」(829頁右欄3段落~830頁1段落) (摘記Aエ)「BID(合議体注:1日2回投与)群とQD(合議体注:1日1回投与)群の両方で、直腸出血の除去率はプラセボ群よりも高かった[表2、図4]」(830頁右欄下から3行~最終行) (摘記Aオ)「 [図:0001418442000002.jpg] 図4 各日の直腸出血スコアが0の患者の割合 BID、1日2回;QD、1日1回 」(図4) 4 引用例B 本願優先日前に公開された文献である引用例Bには、以下の事項が記載されている。なお、引用例Bは外国語の文献であるため、当審による翻訳文で記す。 (摘記Bア)「潰瘍性大腸炎患者の寛解維持に使用されるブデソニドMMx6mgの安全性分析:第III相、12ヶ月の安全性と長期使用研究の結果」(標題) (摘記Bイ)「背景:全身性コルチコステロイド(SCS)は活動期のUC(合議体注:潰瘍性大腸炎)の短期間の寛解誘導には有効であるが、現在のガイドライン(ACG2010及びAGA2006)では、副作用の頻度が高く、長期間の治療に伴うリスクが利益を凌ぐので、寛解維持のためにSCSを使用しないことを推奨している。より副作用の少ない代替薬が必要とされている。ブデソニドは、初回通過代謝が高い、非全身性コルチコステロイド(NSCS)であり、直腸に活性薬剤を送達するよう設計されたMMX(登録商標)技術と組み合されたものは、実行可能な治療選択肢となる可能性がある。ブデソニドMMX(B-MMX)9mgの1日1回投与は、軽度から中等度のUC患者における8週間の治療後に、忍容性が良好であり、臨床寛解及び内視鏡的寛解の誘導に有効である。現在、B-MMX6mgを12月にわたって使用する長期間治療の安全性と忍容性を試験した。方法:2つの第3相研究又はB-MMX9mgを用いた非盲検試験の後に臨床及び内視鏡的寛解した患者において、プラセボ(PBO)を対照とした12月の延長使用を通じて、B-MMX6mgの安全性と忍容性を評価した。臨床及び内視鏡的寛解は厳密に定義され、(8週後にUCDAIスコア≦1で直腸出血なし(RB=0)、正常排便頻度(SF=0)及び全大腸内視鏡検査で粘膜脆弱性なし、及びベースラインの内視鏡的スコアから>1ポイントの減少)を臨床及び内視鏡的寛解とした。患者は無作為に(1:1)B-MMX6mgQD又はPBOに割り付けられた。この延長使用療法では、臨床寛解の維持は、RB=0及びSF=0と定義された。B-MMX6mg又はPBOを少なくとも1用量を投与された全ての患者は、安全性分析に含められた。安全性評価は、ベースライン、処置1、3、6、9、12月、及び/又は研究終了時/早期中止来院時に実施された。結果:安全性分析には123人の患者が含まれた。潜在的なグルココルチコイド効果は処置群間で同様の割合で発生した。治療に関連するAE[B-MMX6mg(21.0%)及びPBO(21.3%)]は群間で同様であった(表)。朝の平均コルチゾールレベルは、全ての治療訪問時で正常範囲内であった。SAEの報告は稀であり[各群で患者1人(1.6%)]、試験薬に関連するものはなかった。研究中に死亡や生命を脅かす出来事はなかった。結論:この延長使用研究では、長期寛解維持療法の潜在的なグルココルチコイド効果、TEAE(合議体注:有害事象の緊急処置)及びTREA(合議体注:有害事象に関連する処置)はPBOと同様であった。B-MMX6mgの1日1回投与、最長12月の投与はUC患者において良好な忍容性であり、PBOと同等の安全性プロファイルであった。」(本文) 5 引用例C 本願優先日前に公開された文献である引用例Cには、以下の事項が記載されている。なお、引用例Cは外国語の文献であるため、当審による翻訳文で記す。 (摘記Cア)「遠位潰瘍性大腸炎の治療のためのブデソニドフォーム周期的投与の安全性及び忍容性の分析」(標題) (摘記Cイ)「はじめに:直腸ブデソニドフォームは、初回通過肝代謝が高い第2世代のコルチコステロイドであり、軽度から中等度の遠位潰瘍性大腸炎(UC)の寛解誘導に適応されている。本研究は、周期的に投与されたブデソニドフォームの長期忍容性を前向き評価した。方法:活動期の遠位UC(潰瘍性直腸炎又は肛門縁から40cm以内に広がる潰瘍性直腸S状結腸炎)を有する成人は、以前に、非盲検ブデソニドフォームの6週間のサイクル:2mg/25mLを1日2回(BID)2週間の投与後、疾患再燃の管理の必要に応じて1日1回(QD)を4週間の投与、を以前に受けた。サイクル間は48時間以上離れていた。安全性評価には、定期的な空腹時血液化学的検査、血清コルチゾールレベル、及び治療後1週間を通じた有害事象の記録が含まれた。 結果:114人の患者が1サイクルを受け、65人が2サイクルを受け、41人、22人、12人、5人、3人及び1人がそれぞれ3-8サイクルを受けた。全患者の平均暴露期間は92日間(10-335日間)であった。ベースラインで、平均修正メイヨー疾患活動指数(MMDAI)スコアは7.2であった;57.9%の患者は中等度の遠位UC(MMDAIスコア7-10)であった。平均治療コンプライアンスは8つの処置サイクルの全てで90.5%以上であった。全体として、57.9%の患者がAEを経験し、最も頻度の高いAEは血清コルチゾール濃度の減少(17.5%[11.4%は薬物関連と考えられる])、腹痛(7.9%)、及び頭痛(7.0%)であった。(90.9%の患者が経験した)ほとんどのAEは、軽度又は中程度の強度であり、その頻度は最大集団のサイクル間で同様であった(1サイクル[43.0%]、2サイクル[43.1%]及び3サイクル[41.5%])。重篤なAEは観察されなかった。17人の患者(14.9%)はAEのために研究を中止し、8人(7.0%)は血清コルチゾール濃度低下のために中止した。朝の平均血清コルチゾール濃度はベースラインから15日まで減少したが(BID投与の終了時に-87.8から-25.5nmol/Lまでの範囲)、15人≧の患者のいるサイクル(1-4サイクル)の間で、6週目には回復した(QD投与の終了時に-10.4から0.9nmol/Lまでの範囲)。全ての処置サイクルで、正常な(138nmol/L≧)朝の血清コルチゾール濃度が、15日目には75%以上の患者で、6週目には83.9%以上の患者で観察された。バイタルサイン及び身体的所見に臨床的に関連する変化は観察されなかった。 結論:周期的に投与される直腸ブデソニドフォームの複数回の反復治療については、遠位UC再燃を有する患者の忍容性は良好であった。」(本文) 6 引用例D 本願優先日前に公開された文献である引用例Dには、以下の事項が記載されている。なお、引用例Dは外国語の文献であるため、当審による翻訳文で記す。 (摘記D)「臨床的安全性 全身的に活性なグルココルチコイドはしばしば重大な副作用を引き起こし、その使用が制限される。ブデソニドは広範な初回通過代謝を受けるため、全身的に利用できる活性物質はほんの一部であるため、比較的好ましい安全性と忍容性プロファイルを示す。直腸ブデソニド(2mg注腸)は、活動期の遠位UCにおいて安全で良好な忍容性であることが数多くの臨床研究で証明されている。従来のコルチコステロイドと比較して、副作用はほとんど認められない。報告されている最も頻度の高い事象は、排便回数の増加と直腸出血を含む、消化器系のものである。ブデソニド注腸の処置中に、通常は検査異常は発生せず、重大な副腎抑制の兆候は検出されていない。」(21頁3段落) 7 本願優先日当時における周知技術 引用例Bには、「全身性コルチコステロイド(SCS)は・・・副作用の頻度が高く、長期間の治療に伴うリスクが利益を凌ぐので、・・・より副作用の少ない代替薬が必要とされている。ブデソニドは、初回通過代謝が高い、非全身性コルチコステロイド(NSCS)であ」ることが記載され(上記4(摘記Bイ))、引用例Cには、「直腸ブデソニドフォームは、初回通過肝代謝が高い第2世代のコルチコステロイドであ」ることが記載され(上記5(摘記Cイ))、引用例Dには、「全身的に活性なグルココルチコイドはしばしば重大な副作用を引き起こし、その使用が制限される。ブデソニドは広範な初回通過代謝を受けるため、全身的に利用できる活性物質はほんの一部であるため、比較的好ましい安全性と忍容性プロファイルを示す。・・・従来のコルチコステロイドと比較して、副作用はほとんど認められない。」(上記6(摘記D))と記載されるように、ブデソニドは、従来使用されていた全身性コルチコステロイドとは異なり、初回通過代謝が高い、非全身性コルチコステロイドであり、副作用が少なく、安全性と忍容性の高いコルチコステロイドであることは、本願優先日当時に周知の事項であったものといえる。 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明における「炎症性腸疾患」は、本願の特許請求の範囲、請求項3に記載されるとおり、「潰瘍性大腸炎又はクローン病」を含むものであるから、引用発明における「潰瘍性大腸炎」は、本願発明における「炎症性腸疾患」に相当する。 また、本願発明における「注腸フォーム剤」は、本願明細書の【0020】において「例えば、直腸泡沫(フォーム)剤・・・が挙げられる。」と説明されるように「泡沫剤」と同義であり、また、「ここで泡沫剤は、液剤の水溶液により気泡を形成し、気泡の集合の泡沫を形成する形態などを言う。」(【0020】)と説明されているところ、引用例1には、引用発明の実施例に相当する臨床試験において、「商品名:Budenofalk 2mg/dose rectal foam」という「白色のクリーム状の泡沫が放出される定量噴射式の注腸用エアゾール剤(直腸泡沫剤)を用いた」ことが記載されているから(上記第4の1(1)(摘記1エ))、引用発明における「泡沫状である注腸剤」は、本願発明における「泡沫状の注腸フォーム剤であ」る「注腸剤」に相当する。 さらに、引用発明における「活動期の潰瘍性大腸炎患者の腸管粘膜を治癒し、潰瘍性大腸炎患者の寛解期をなるべく長期間維持する」及び「1回あたり2mgのブデソニド」は、本願発明における「粘膜を治癒する」及び「1回あたり1.5~2mgのブデソニド」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。 <一致点> 「ブデソニドを有効成分とし、炎症性腸疾患の治療又は再燃予防のための、粘膜を治癒する注腸剤であって、1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、投与するための泡沫状の注腸フォーム剤である、注腸剤。」 <相違点> 本願発明は、投与期間が「12週間」であり、「1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与された時点において、治療反応が認められたが大腸粘膜治癒(内視鏡所見スコア0点)には至らなかった炎症性腸疾患の患者に対して、さらに1回あたり1.5~2.5mgのブデソニドを1日あたり2回、6週間投与される」ものであるの対し、引用発明は、投与期間が「6週間」であり、それ以降の投与について特定がない点。 2 判断 上記相違点について検討すると、引用発明は、「活動期の潰瘍性大腸炎患者の腸管粘膜を治癒し、潰瘍性大腸炎患者の寛解期をなるべく長期間維持するため」の治療剤であるところ、引用例1には、ブデソニド2mgを1日1回又は1日2回、6週間直腸内投与するという臨床試験において、「投与期間は6週間とし、評価前日の夜まで投与した」後、「MMDAIの内視鏡所見スコアが0の患者を粘膜が治癒したと評価し」た結果として、1日2回群は、1日1回群と比較して粘膜治癒率が有意に高かったが、その腸管粘膜の治癒率は46.4%であったことが示されており(上記第4の1(1)(摘記1エ))、残りの約半数の患者ではまだ粘膜治癒(内視鏡所見スコア0点)に至っていないことがわかる。 ここで、医療の現場において、患者の症状を見ながら投薬量や投薬期間を調節することは、通常行われていることである。 そして、ブデソニドは、「従来使用されていた全身性コルチコステロイドとは異なり、初回通過代謝が高い、非全身性コルチコステロイドであり、副作用が少なく、安全性と忍容性の高いコルチコステロイドである」ことは本願優先日当時における周知の事項であり(上記第4の7)、本願発明の投与量より多い、ブデソニドを1日あたり6mgという投与量で12月、すなわち48週にわたって投与した臨床試験においても、忍容性が良好であることや(引用例B(上記第4の4(摘記Bイ))、2mgを1日2回を2週間投与後、1日1回を4週間という6週間のサイクルを1~8サイクル投与し、平均暴露期間が92日(10-335日間)、すなわち平均暴露期間が約13週であったという臨床試験においても、忍容性が良好であること(引用例C(上記第4の5(摘記Cイ))も報告されている。 そうすると、引用発明において、ブテソニドを6週間投与後、内視鏡所見スコアを評価した時点において、ブテソニドに反応性は認められるが、まだ粘膜治癒(内視鏡所見スコア0点)に至っていない患者に対しては、ブテソニドに反応性があることから治療薬を変更することなく、長期投与の安全性と忍容性が確認されている範囲で、さらにブデソニドの投与期間を延長して、粘膜治癒(内視鏡所見スコア0点)を目指すことは、当業者が当然に想起することである。 そして、その延長された投与期間を、最初の6週間と同じサイクルを1サイクル追加した「12週間」と設定することに、格別な臨界的な意義も見いだせない。 3 本願発明の効果について 本願明細書に記載される実施例では、6週間投与した場合に粘膜治癒には至らなかった患者20名に対して、さらに6週間投与することで、6名(30%)の患者が粘膜治癒に至ったのに対し、プラセボでは、粘膜治癒に至った患者がいなかったこと、ブデソニドを12週間投与した群においてグルココルチコイドの副作用に該当する有害事象は認められず、忍容性が許容し得るものであったことが示されている。 しかしながら、本願発明のブデソニドは長期投与しても忍容性が良好であることについては、上記2で説示したとおりであり、引用例B及びCの記載並び本願優先日当時における周知技術(上記第4の7)から予測し得る効果である。 次に、本願発明において粘膜治癒率が改善したことについては、一般に、投薬期間を延長したり、投薬量を増やすことで、治療効果を高められることは医療分野における技術常識である。 そして、引用例2には、「ブデソニド注腸、2mg/100mlを1日2回」投与すると、4週間後の寛解率は41%であったのに対し、8週間後では54%となり、投与期間を延長することで、寛解に至る患者の割合が増加することが示されている(上記第4の2(摘記2イ))。 さらに、引用例1の実施例1と同じ臨床試験の結果を示すと認められる引用例Aにおいても、「ブデソニド2mgフォームの1日2回投与」により、6週間後の粘膜治癒率が46.4%であったことが示されるとともに(上記第4の3(摘記Aイ))、投与期間中(0~42日)の「直腸出血スコアが0の患者の割合」が、投与期間が長くなるにつれて徐々に高くなることが示されている(上記第4の3(摘記Aオ))。そして、引用例Aの図4において、42日の時点において増加率が頭打ちになっていないことから見ても、42日を超えて投与期間を延長した場合にも、さらに症状が改善する患者の割合が増加することを期待し得るものといえる。 そうすると、本願発明における6週間で粘膜治癒に至らなかった患者の投与期間を延長することで、粘膜治癒に至る患者が増えるという効果についても、医療分野における技術常識、並びに、引用例2及び引用例Aの記載から予測し得るものといえる。 4 令和6年5月27日提出の意見書における主張について 審判請求人は上記意見書において、参考文献1及び2を提出するとともに以下の点を述べ、本願発明の進歩性を主張しているので、以下に検討する。 主張(1):参考文献1(本願発明の効果について検討した出願人の社内の試験結果)の第14ページの試験結果の要約中の試験結果データに示されるように、「6週」のみ投与した(従来技術に相当)例に対して、「12週」、すなわち6週間の投与で治療反応が認められたが大腸粘膜治癒には至らなかった炎症性腸疾患の患者に対してさらに6週間投与した(本願発明に相当)場合は、多くのスコアが改善しており、特に、内視鏡所見スコア及び血便スコアは顕著に改善していた。したがって、本願発明は従来技術に対して、顕著な効果を示すものである。 主張(2):参考文献2(本願発明のブデソニドを含む注腸剤と同様の成分を用いたフォーム剤、「レクタブル2mg注腸フォーム14回」のカタログ)の第1ページには、「7. 用法及び用量に関連する注意 本剤投与中は患者の病態を十分観察し、投与開始6週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。」と記載されている。ステロイドは一般的に、人体に対する多種の影響があり、漫然と投与してはならないことが技術常識であり、ステロイドの一種であるブデソニドを含む薬剤に関する従来技術のみに立脚すると、投与期間を単純に延長する構成の選択については、阻害的な要因がある。本願発明は従来技術に基づいては容易には選択できない構成について、その治療効果及び安全性を検証し、有利な効果を新たに見出したものである。 まず、上記主張(1)の投与期間を6週間から12週間へ延長することにより、症状が改善するという効果については、上記3で検討したとおりであり、技術常識並びに引用例2及び引用例Aの記載から予測し得るものである。 次に、上記主張(2)の阻害要因については、参考文献2における「漫然と投与を継続しないこと」という注意書きは、例えば、医師が定期的に検査を行うといった、医師の管理下での使用の継続は、漫然と投与を継続するものではないから、これを妨げるものではない。 そして、一般的なステロイドについては、人体に対する多種の影響があり、漫然と投与してはならないという技術常識が存在しても、上記2において説示したとおり、ブテソニドについては、「従来使用されていた全身性コルチコステロイドとは異なり、初回通過代謝が高い、非全身性コルチコステロイドであり、副作用が少なく、安全性と忍容性の高いコルチコステロイドである」ことが周知であった。 さらに、本願発明よりも多い6mgを1日1回投与し、最長12月、すなわち48週にわたってブデソニドを投与した臨床試験において、良好な忍容性であったという引用例B(上記第4の4(摘記Bイ))の報告をも考慮すれば、ステロイド一般に関する技術常識があるとしても、上記周知のブデソニド関する個別の事情を採用できないとする理由はない。 したがって、ブデソニドに関して投与期間を延長する構成を選択することに阻害要因がある、という審判請求人の主張は採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用例1、2、A~Cの記載事項、並びに本願優先日当時における周知技術(引用例B~D)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例1、2、A~Cの記載事項、並びに本願優先日当時における周知技術(引用例B~D)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-015239

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