特許拒絶査定不服審判
2024-006379
毛様体筋活動を測定するためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2024-006379
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-160799
- 請求日
- 2024年04月15日
- 審決日
- 2025年11月26日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルコン インコーポレイティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】渡辺 陽一
- 【請求人代理人】中村 和広
- 【請求人代理人】森本 有一
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 藏田 敦之
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .537-WZ (A61B) / P18 .536-WZ (A61B) / P18 .113-WZ (A61B) / P18 .121-WZ (A61B) / P18 .14 -WZ (A61B) / P18 .55 -WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-160799「毛様体筋活動を測定するためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年12月6日出願公開、特開2022-180630〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年10月17日、米国)を国際出願日とする特願2020-520493号の一部を、令和4年10月5日に新たな特許出願としたものであって、出願と同日に上申書が提出されると共に手続補正がされ、その後、令和5年9月12日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和6年2月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月15日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後さらに、令和6年7月22日付けの前置報告書に対して、同年10月25日に上申書が提出され、令和7年7月14日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)に対し、同年9月29日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされた。
2 本件発明
本願の請求項1~3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 眼科装置の作動方法であって、前記眼科装置は、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を解析するためのものであり、前記作動方法は、
(i)毛様体筋の活動に応答して複数の双極電極によって生成された複数の信号を受信すること、ここで、コンタクトレンズに含まれた前記複数の双極電極は複数の同心リングを含み、前記複数の同心リングの各々は複数のセグメントを含み、
(ii)前記毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために前記受信信号を解析すること、
を含み、前記解析は、
受信した信号の各々を、(a)上部及び下部の閾値、(b)受信した信号の平均値、又は(c)受信した信号の中央値、のうちの1つと比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること、
を含み、
受信した信号の比較は、毛様体筋の活動が毛様体で駆動される眼科装置の利用に好適であるか否かを特定する、方法。」
3 当審にて通知した拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は、本件補正前の請求項1~5について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。
4 当審の判断
(1)本件発明における「解析」
本件発明は、眼科装置の作動方法に係る発明であって、「(ii)前記毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために前記受信信号を解析すること」を含むものである。そして、本件発明における「解析」は、本件補正により、「受信した信号の各々を、(a)上部及び下部の閾値、(b)受信した信号の平均値、又は(c)受信した信号の中央値、のうちの1つと比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」を含むものとなった。なお、本件発明は、補正により、「眼科装置の作動方法」であることが特定されたため、本件発明における「解析」には、「ケア提供者によって手動で」実施される判定動作は含まれないと理解できる。
当該記載に基づけば、本件発明は、令和7年7月14日付けで通知した拒絶理由の理由3(1)において仮定したとおり、「(c)受信した信号の中央値、のうちの1つと比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」を意味するものであって、以下のア~ウのうちの1つにより「解析」を行うことを要件とするものである。
ア 受信した信号の各々を、上部及び下部の閾値と比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること
イ 受信した信号の各々を、受信した信号の平均値と比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること
ウ 受信した信号の各々を、受信した信号の中央値と比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること
(2)本願明細書の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載事項がある。なお、下線は合議体が付した。
「【0010】
或る例において、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために信号を解析することは、患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することと、識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することと、計算された値に基づいて、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することと、を含む。識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することは、識別された信号のサブセットの和を計算することを含んでもよい。計算された値に基づいて患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することは、識別された信号のサブセットの計算された和を所定値と比較することを含んでもよい。
【0011】
或る例において、複数の双極電極は、複数の同心リングを含み、各同心リングは、複数のセグメントを含む。患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することは、第1のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別すること、及び第2のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別することを含んでもよい。
【0012】
或る実施形態において、眼科システムは、患者の目の表面と接触するように構成されたコンタクトレンズを含む。コンタクトレンズは、複数の双極電極を含んでもよく、各双極電極は、患者の毛様体筋に関連する電界を表示する信号を生成するように構成される。システムは、毛様体筋評価手順中に複数の双極電極によって生成された複数の信号を受信するように構成されたプロセッサ及びメモリを含む診断システムを更に含んでもよく、複数の信号のそれぞれは、患者の毛様体筋に関連する電界を表示する。診断システムのプロセッサ及びメモリは、患者の毛様体と整列された双極電極のサブセットに対応する信号のサブセットを識別するために受信信号を解析するように、且つ識別された電極のサブセットに関連する値を計算するように更に構成されてもよい。システムは、プロセッサに通信可能に結合された、且つ識別された電極セットに関連する計算された値を表示するように構成されたディスプレイを更に含んでもよい。
【0013】
或る例において、診断システムのプロセッサ及びメモリは、患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別すること、及び識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することによって、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために、信号を解析するように構成される。
・・・
【0015】
或る実施形態において、複数の双極電極は、複数の同心リングを含み、各同心リングは、複数のセグメントを含んでもよい。患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することは、第1のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別すること、及び第2のリングのセグメントからの少なくとも1つの信号を識別することを含んでもよい。
・・・
【0025】
(例えばIOL移植用の水晶体の切除に先立って)有水晶体眼における毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために利用可能な技術は、現在は存在しない。それに応じて、本開示の実施形態は、患者の毛様体の電気的活動を手術前に評価し、且つ遠近調節する患者の潜在力を評価する非侵襲性のスクリーニング技術及びツールを提供する。これは、本明細書で説明されるように、遠近調節IOLの移植又はあつらえの毛様体筋で駆動される遠近調節コンタクトレンズの適用前に、例えば毛様体筋の電気的活動の感知を介して達成されてもよい。幾つかの実施形態は、かかる装置が、特定の個人に適切かどうかに関する決定を導くために、手術又は購入に先立って、毛様体筋で駆動される遠近調節眼科装置が、意図されるように機能しないであろう目を識別してもよい。以下の説明は、主としてIOLに集中するが、説明される技術はまた、毛様体筋活動によって駆動されるコンタクトレンズ又は眼鏡で用いることが可能である。
・・・
【0028】
それに応じて、ステップ103において、各距離における毛様体筋の電界に応じて電極によって生成された電気信号は、後続の提示及び評価用に、コンピュータ606に向けられ、コンピュータ606によって受信され、処理され、且つ/又は記録されてもよい。幾つかの事例において、電気信号は、レンズの電極からコンピュータ606に、有線又は無線通信を介して送信される。以下で言及されるように、複数の信号が、スクリーニング手順中に、レンズ上の様々な電極から受信されてもよく、受信信号は、毛様体筋活動の最も正確な且つ/又は信頼できる指標を提供する信号を選択するために、(例えば、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズム等を用いて)コンピュータ606によって評価されてもよい。選択された特定の電極信号は、患者の目自体の特徴と同様に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置にも依存し得る。コンピュータ606はまた、信号を処理し、且つ毛様体筋活動、応答性、強度、及び/又は遠近調節能力を特徴付ける数値又は他の測定値にそれらの信号を変換してもよい。生の又は処理された信号データは、コンピュータによって出力され、且つディスプレイ608上で表示されてもよい。
【0029】
ステップ104において、ステップ103の結果が評価される。ステップ103で生成され且つ/又は表示された信号値又は測定値は、患者用の手術上の推奨又は選択(例えば、毛様体で駆動される遠近調節装置を推奨又は提供するべきか否か)を行うために、コンピュータ606及び/又はケア提供者によって検討され評価されてもよい。ステップ104は、ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に実行されてもよい。例えば、ケア提供者は、測定値が、所定の閾値以上か若しくはそれ未満か、又は毛様体で駆動される眼科装置の利用に適していると考えられる所定範囲若しくは目標の結果内かどうかを判定するために、ステップ103で生成された毛様体筋活動の測定値を調査し評価してもよい。他の例において、コンピュータ606は、ステップ103で生成された毛様体筋活動の測定値を自動的に解析し、且つかかる評価を自動的に実行するために、メモリに格納された命令を実行してもよい。比較用の適用可能な閾値、範囲、又は目標は、コンピュータ606のメモリに格納され、且つユーザによって構成されてもよい。
【0030】
ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、満足でき、且つステップ104における評価を通る(例えば、筋肉活動が、閾値以上か、目標通りか、又は所定範囲内である)場合に、ケア提供者は、ステップ106に進んでもよい。かかる場合に、毛様体筋活動は、電気活性遠近調節IOLなどの毛様体で駆動される眼科装置の適切な機能をサポートするのに十分であり得る。ケア提供者は、患者用の推奨を選択又は処方する場合に、毛様体で駆動される眼科装置を考慮し評価してもよい。
【0031】
ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、不満足で、ステップ104における評価を通らない(例えば、筋肉活動が、閾値未満か、目標から遠くにあるか、又は所定範囲外である)場合に、ケア提供者は、ステップ108に進んでもよい。かかる場合に、毛様体筋活動は、電気活性遠近調節IOLなどの毛様体で駆動される眼科装置の適切な機能をサポートするのに不十分であり得、ケア提供者は、患者用の推奨を選択又は処方する場合に、毛様体で駆動される眼科装置の代替を考慮し、評価してもよい。
・・・
【0037】
加えて、或る実施形態は、毛様体の電気的活動のより包括的な地図を生成するために、電極をセグメント又は個別コンポーネントに分割してもよい。かかる例において、相異なるエリアは、真の電気信号をよりよく特徴付けるために(即ち毛様体筋運動に起因する電気的活動の正確な測定値を取得するために)、(例えば、毛様体筋の周囲又は周辺に対する整列及び位置に基づき)必要に応じて、(ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に)選択又は無視することができる。
・・・
【0042】
図3は、或る実施形態に従って、変位によって引き起こされた困難の克服を支援できる毛様体活動検出コンタクトレンズ用の電極配置を例示する。特に、レンズ300は、4つの同心電極リング301~304を含み、各同心電極リングは、グループ310、312、314及び316として示された4つのセグメントに分割される。外側リング電極304及び各より小さなリング302、303及び304は、それぞれ、各セグメント310、312、314及び316における電気的活動を測定し、16の別個のセグメント又はチャネルにおける示度を提供することができる。合計16のセグメント又はチャネルが、図3に示されているが、リング及びそれらの分割の数は、ますます多くのチャネルが、電気設計及び処理要件における複雑さの増加を必要とするにつれて、複雑さを管理しながら性能を最適化するために、必要に応じて変更されてもよい。例えば、或る実施形態は、2~6のグループに分割された2~6の同心電極リングを含み、それによって、4~36のセグメント又はチャネルをどこでも提供してもよい。他の変更が、本開示の範囲内で考えられる。
【0044】
図5は、(図4に示されているレンズ300と同一の)電極リングを含むコンタクトレンズを患者に適用することに由来する可能なシナリオを例示する。図5Aにおいて、レンズ300は、目200の上で中心に置かれ、(図3のリング303に対応する)中心からの第3のリングの4つの全てのセグメントは、毛様体筋202の周囲又は周辺とうまく整列されている。リング303の4つのセグメントのそれぞれによって生成された信号の合計は、図2Aに示されている測定電極206から取得された信号に匹敵する信号を生じる-正確で信頼できると考えられ得る結果である。」
合議体注:図3及び図5は以下のものである。なお、段落【0044】における「図4」は「図3」の誤記である。
[図:0001434620000001.jpg]
「【0045】
対照的に、図5Bのレンズ300は、目200の上で偏心されている(図3Bと類似して、上方へと位置がずれている)。結果として、リング303のセグメントは、図5Bにおいて毛様体202とうまく整列されず、リング303の4つのセグメントのそれぞれによって生成された信号の合計は、図2Bに示されている測定電極206から取得された信号に匹敵する信号を生じることになろう-信頼できず不正確な結果であると思われる。
【0046】
しかしながら、図5Bにおいて、(図3に示されているセグメント314及び316に対応する図5Bの底部の方の)リング304の下部電極は、毛様体202とうまく整列されている。同様に、(図3に示されているセグメント310及び312に対応する図5Bの上部の方の)リング302の上部電極は、毛様体202と適切に整列されている。結果として、リング304の2つの下部電極及びリング302の2つの上部電極によって生成された信号の合計は、図2Aに示されている測定電極206から取得された結果に匹敵する結果を生じる-再び、正確で信頼できると考えられ得る結果である。
【0047】
このように、信号を独立して生成し送信するように構成された複数の電極セグメントを含むレンズは、たとえレンズが、毛様体に対して位置がずれている場合でも、図1の方法に従って、毛様体筋活動を正確に評価するために用いられ得る。これは、毛様体筋とうまく整列された電極からの信号を選択することによって達成することができる。かかる選択は、以下で説明されるように、ケア提供者によって手動で、又はコンピュータ606によって自動的に実行されてもよい。
・・・
【0051】
例えば、コンピュータ606のプロセッサは、更なる処理及び/又は評価用の最良の信号を判定し選択するために、レンズ602の各電極又はチャネルから受信された信号604を比較し評価するための命令を実行してもよい。或る例において、コンピュータ604のプロセッサは、毛様体筋活動の最も正確で且つ/又は信頼できる指標を提供する信号のサブセットを識別し選択するために、受信信号を用いて、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズムを実行してもよい。幾つかの例において、これは、プロセッサによって実行されるアルゴリズムに基づいて、毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択することを含んでもよい。プロセッサによって実行されるアルゴリズムはまた、上部及び下部閾値、平均若しくは中央値(それらは、受信信号に基づいて計算されてもよい)、又は受信信号の品質及び/若しくは信頼性を評価するのに役立つ他の徴候と各受信信号を比較することを含んでもよい。上記で言及したように、選択された電極信号のサブセットは、患者の目自体の特徴と同様に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置に依存し得る。
・・・
【0055】
コンピュータ606のプロセッサが、1つ又は複数のCPU、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、システムオンチップ(SoC)プロセッサ、又は類似のコンポーネントを含んでもよいことが注目される。コンピュータ606のメモリは、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、取り外し可能媒体、若しくは類似のコンポーネントを含む揮発性又は不揮発性メモリを含んでもよい。コンピュータ606のメモリは、上記で説明したように、プロセッサによって実行された場合にレンズ602から受信された信号を解析するソフトウエアプログラム及びアルゴリズム用の命令を格納してもよい。特許請求の範囲で用いられるとき、用語「プロセッサ」、「メモリ」、「命令」などは、当業者に周知の構造クラスを指す。かかるものとして、これらの用語は、開示されるシステムの機能要素ではなく構造要素を表示するものとして理解されるべきである。」
(3)サポート要件について
まず、前記(1)ア~ウの要件が、本願の発明の詳細な説明に記載されているといえるかについて検討する。
ア 整列されたサブセットを特定することについて
本願明細書の段落【0010】には、「患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価するために信号を解析することは、患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別することと、識別された信号のサブセットに基づいて値を計算することと、計算された値に基づいて、患者の毛様体筋の遠近調節の潜在力を評価することと、を含む。」と記載されている。当該記載に基づけば「患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセット」を特定するという目的が記載されているといえるが、その目的を達成するための手段についての記載はない。段落【0011】、【0013】及び【0015】についても同様である。また、段落【0012】には、「診断システムのプロセッサ及びメモリは、患者の毛様体と整列された双極電極のサブセットに対応する信号のサブセットを識別するために受信信号を解析するように、且つ識別された電極のサブセットに関連する値を計算するように更に構成されてもよい。」との記載がある。しかし、受信信号を「患者の毛様体筋の周囲と整列された双極電極の少なくとも1つに対応する信号のサブセットを識別する」ように解析する手段についての記載はない。
イ 平均値との比較によりサブセットを特定する手段について
本願明細書の段落【0028】には、「受信信号は、毛様体筋活動の最も正確な且つ/又は信頼できる指標を提供する信号を選択するために、(例えば、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズム等を用いて)コンピュータ606によって評価されてもよい。」との記載があり、段落【0051】にも、「毛様体筋活動の最も正確で且つ/又は信頼できる指標を提供する信号のサブセットを識別し選択するために、受信信号を用いて、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズムを実行してもよい。」との記載がある。このうち、「平均化アルゴリズム」及び「比較アルゴリズム」は、前記(1)イの要件に関連するといえる。しかし、段落【0028】及び【0051】には、「平均化アルゴリズム」を用いて算出した平均値に「比較アルゴリズム」を適用して、受信した信号の各々と比較したときに、受信した信号を平均化した値と、特定される「前記患者の毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセット」の関係について何も記載がない。受信した信号を平均化した値に基づいて、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセット」を特定するためには、各「信号のサブセット」と「受信した信号を平均化」した値を用いて、要件を満たす「信号のサブセット」を特定するためのアルゴリズムが必要であるところ、「各受信信号」と「平均値」とが、どのような要件を満たした場合に「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号」であるとするのかについて、何ら記載されていない。段落【0028】は、「(例えば、合計アルゴリズム、平均化アルゴリズム、比較アルゴリズム、及び/又は統計処理アルゴリズム等を用いて)コンピュータ606によって評価されてもよい。」と記載するにとどまり、段落【0051】にもアルゴリズムの内容について何ら記載がない。また、他に、前記(1)イの要件に関する記載はない。そうすると、本願の発明の詳細な説明には、「受信した信号の各々を、受信した信号の平均値と比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」が実質的に記載されていたということができない。
したがって、本願の発明の詳細な説明には、前記(1)イの要件が記載されていない。
ウ 閾値との比較によりサブセットを特定する手段について
本願明細書の段落【0051】には、「プロセッサによって実行されるアルゴリズムに基づいて、毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択することを含んでもよい。プロセッサによって実行されるアルゴリズムはまた、上部及び下部閾値、平均若しくは中央値(それらは、受信信号に基づいて計算されてもよい)、又は受信信号の品質及び/若しくは信頼性を評価するのに役立つ他の徴候と各受信信号を比較することを含んでもよい。」との記載がある。このうち、「上部及び下部閾値・・・と各受信信号を比較する」アルゴリズムに基づいて、「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択すること」は、前記(1)アの要件に関連するといえる。しかし、段落【0051】には、「上部及び下部閾値・・・と各受信信号を比較する」アルゴリズムについて、「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択する」ためには、「各受信信号」と「上部及び下部閾値」とが、どのような要件を満たした場合に、その信号が「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号」であるとするのかについて、何ら記載されていない。段落【0051】は、「上部及び下部閾値、・・・と各受信信号を比較することを含んでもよい。」と記載するにとどまり、アルゴリズムの内容について何ら記載がない。また、他に、前記(1)アの要件に関する記載はない。
なお、本願明細書の段落【0029】には、「測定値が、所定の閾値以上か若しくはそれ未満か、又は毛様体で駆動される眼科装置の利用に適していると考えられる所定範囲若しくは目標の結果内かどうかを判定するために、ステップ103で生成された毛様体筋活動の測定値を調査し評価してもよい。」との記載がある。また、段落【0030】にも、「ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、満足でき、且つステップ104における評価を通る(例えば、筋肉活動が、閾値以上か、目標通りか、又は所定範囲内である)場合に、ケア提供者は、ステップ106に進んでもよい。かかる場合に、毛様体筋活動は、電気活性遠近調節IOLなどの毛様体で駆動される眼科装置の適切な機能をサポートするのに十分であり得る。ケア提供者は、患者用の推奨を選択又は処方する場合に、毛様体で駆動される眼科装置を考慮し評価してもよい。」と記載されている。しかし、所定の閾値以上か若しくはそれ未満かによって何が判定されるかを記載していない。なお、上記記載において、「所定範囲若しくは目標の結果内かどうか」によって判定されるのは、「毛様体で駆動される眼科装置の利用に適している」ことであって、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」ではない。
したがって、本願の発明の詳細な説明には、前記(1)アの要件が記載されていない。
エ 中央値との比較によりサブセットを特定する手段について
本願明細書の段落【0051】には、「プロセッサによって実行されるアルゴリズムに基づいて、毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択することを含んでもよい。プロセッサによって実行されるアルゴリズムはまた、上部及び下部閾値、平均若しくは中央値(それらは、受信信号に基づいて計算されてもよい)、又は受信信号の品質及び/若しくは信頼性を評価するのに役立つ他の徴候と各受信信号を比較することを含んでもよい。」との記載がある。このうち、「中央値・・・と各受信信号を比較する」アルゴリズムに基づいて、「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択すること」は、前記(1)ウの要件に関連するといえる。しかし、段落【0051】には、「中央値・・・と各受信信号を比較する」アルゴリズムについて、「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号を識別及び選択する」ためには、「各受信信号」と「中央値」とが、どのような要件を満たした場合に、その信号が「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号」であるとするのかについて、何ら記載されていない。段落【0051】は、「中央値、・・・と各受信信号を比較することを含んでもよい。」と記載するにとどまり、アルゴリズムの内容について何ら記載がない。また、他に、前記(1)ウの要件に関する記載はない。そうすると、本願の発明の詳細な説明には、「受信した信号の各々を、受信した信号の中央値と比較して、毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」が実質的に記載されていたということができない。
したがって、本願の発明の詳細な説明には、前記(1)ウの要件が記載されていない。
オ 各手段が実質的に記載されていたといえるかについて
本願明細書の段落【0028】には、「選択された特定の電極信号は、患者の目自体の特徴と同様に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置にも依存し得る」との記載がある。また、段落【0031】の「ステップ102で生成される測定された毛様体筋活動が、不満足で、ステップ104における評価を通らない(例えば、筋肉活動が、閾値未満か、目標から遠くにあるか、又は所定範囲外である)場合に、ケア提供者は、ステップ108に進んでもよい。」との記載がある。これらの記載に基づけば、受信した信号の各々は、患者の目自体の特徴、つまり、毛様体筋活動が不満足であることの影響と共に、患者の目の上のコンタクトレンズの位置の影響も反映したものであると理解できる。さらに、段落【0037】には、「毛様体の電気的活動のより包括的な地図を生成するために、電極をセグメント又は個別コンポーネントに分割してもよい。」との記載から、毛様体の筋活動は、患者毎のみならず、各患者の毛様体の各領域毎においても、地図が生成される程度に異なると理解できる。
(ア)閾値との比較によりサブセットを特定する手段
本願の発明の詳細な説明の記載は、毛様体筋の活動に応答して複数の双極電極によって生成された複数の信号の各々が、「閾値未満」である場合において、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である場合と、コンタクトレンズの位置が適切でない場合の2つの原因が存在することを想定していると理解できる。そして、前記ウにおいて既に検討したとおり、本願の発明の詳細な説明には、「各受信信号」と「上部及び下部閾値」とが、どのような要件を満たした場合に、その信号が「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号」であるとするのかについて、何ら記載されていないから、2つの原因のいずれかによって「閾値未満」の信号値を示すセグメントについて、2つの原因のいずれであるかを識別することはできない。そうすると、「閾値未満」の信号値を示すセグメントが、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセット」である場合に、当該サブセットから受信した信号を「上部及び下部の閾値と比較」することにより、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセット」であることを特定できないことは明らかである。また、「閾値」と特定の関係にある信号値を示すセグメントが、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である場合に当たらず、コンタクトレンズの位置が適切でないことを原因とするものと判別することが、当業者にとって自明であるとはいえず、技術常識であるということもできない。そうすると、技術常識を勘案したとしても、「受信した信号の各々」を、「上部及び下部の閾値」と比較することにより、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」が、本願の発明の詳細な説明に記載されていたに等しいということはできない。
以上より、技術常識を勘案したとしても、本願の発明の詳細な説明には、前記(1)アの要件が実質的に記載されていたとはいえない。
(イ)平均値又は中央値との比較によりサブセットを特定する手段
また、本願の発明の詳細な説明には、前記イ及びエにおいて既に検討したとおり、「各受信信号」と「平均値」又は「中央値」とが、どのような要件を満たした場合に、その信号が「毛様体筋の周囲又は周辺内に最もよく位置する、且つその周囲又は周辺と整列される信号」であるとするのかについて、何ら記載されていないから、セグメントが示す測定値について、2つの原因のいずれであるかを識別することはできない。また、「平均値」又は「中央値」と、特定の関係にある信号値を示すセグメントが、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である場合に当たらず、コンタクトレンズの位置が適切でないことを原因とするものと判別することが、当業者にとって自明であるとはいえず、技術常識であるということもできない。そうすると、技術常識を勘案したとしても、「受信した信号の各々」を、「受信した信号の平均値」又は「受信した信号の中央値」と比較することにより、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定すること」が、本願の発明の詳細な説明に記載されていたに等しいということはできない。
以上より、技術常識を勘案したとしても、本願の発明の詳細な説明には、前記(1)イ及びウの要件が実質的に記載されていたということができない。
カ 課題を解決できるといえるかについて
仮に、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定する」ことが、信号に対する患者の目自体の特徴に起因する影響がないことを前提とし、サブセットから得られる信号が、コンタクトレンズの位置の影響のみを受けるものとすると、本願の段落【0008】に記載された「毛様体筋における電気的活動を判定し特徴付ける」という課題について、本件発明が解決することができず、「患者が、かかる電気活性眼用レンズを利用するための必須の毛様体筋活動を有するかどうかを判定する」こともできないことは明らかである。
そうすると、本件発明は、発明が解決しようとする課題を解決できるものということができない。
キ まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものということができない。
したがって、本件発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4)実施可能要件について
前記(3)イ~エに記載したとおり、本願の発明の詳細な説明は「各受信信号」と「上部及び下部閾値」、「平均値」又は「中央値」とが、どのような要件を満たした場合に「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号」であるとするのかについて、何ら記載されていない。また、前記(3)オに記載したとおり、「閾値」、「平均値」又は「中央値」と特定の関係にある信号値を示すセグメントが、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である場合に当たらず、コンタクトレンズの位置が適切でないことを原因とするものと判別することが、当業者にとって自明であるとはいえず、技術常識であるということもできない。
そうすると、本願の発明の詳細な説明が、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできない。
したがって、本件発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和7年9月29日に提出した意見書において、本願の段落【0029】~【0031】、【0051】及び【0055】の記載に言及し、「具体的には、ステップ103で生成及び/又は表示された信号値又は測定値は、コンピュータ606及び/又はケア提供者によって検討され評価され、患者に対する外科的推奨又は選択(例えば、毛様体で駆動される遠近調節装置を推奨又は提供するかどうか)が行われます。ステップ104は、ケア提供者によるマニュアル操作、又はコンピュータ606による自動処理で実行可能です。・・・他の例では、コンピュータ606がメモリに格納された指令を実行し、ステップ103で生成された毛様体筋活動測定値を自動的に解析し、このような評価を自動的に実施することができます。比較用の適用可能な閾値、範囲、又は目標値は、コンピュータ606のメモリに格納され、ユーザーによって設定可能です。」と主張している。
しかし、本件発明は「眼科装置の作動方法」である。そうすると、ユーザーによる閾値、範囲、又は目標値は、本願発明の「解析」に含まれない。そして、前記(4)において、既に検討したとおり、本願の発明の詳細な説明は「各受信信号」と「上部及び下部閾値」、「平均値」又は「中央値」とが、どのような要件を満たした場合に「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号」であるとするのかについて、何ら記載されておらず、当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、審判請求人による上記主張は、採用することができない。
イ 審判請求人は、令和7年9月29日に提出した意見書において、「解析の「比較」ステップにおける「閾値」の実装に関して、本願明細書は、主要変数(すなわち、筋活動信号強度閾値)とその目的(すなわち、有効な毛様体筋信号とノイズ/位置ずれ電極信号を区別すること)を明確に記載しており、これは当業者が毛様体筋と位置合わせされた電極セグメントのサブセットを特定するのに十分です。」と主張している。なお、技術的にみて、閾値は変数ではなく、「信号値」(筋活動信号強度値)が変数である。
しかし、前記(3)オ(ア)に記載したとおり、複数の信号の各々が、「閾値未満」である場合において、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である場合と、コンタクトレンズの位置が適切でない場合の2つの原因が存在している。そして、有効な毛様体筋信号とノイズ/位置ずれ電極信号を区別する手段について、本願の発明の詳細な説明には記載されておらず、技術常識であると理解することもできない。そうすると、目的と主要変数が開示されていたとしても、2つの原因の一方に関連する「位置ずれ電極信号」を区別する手段が存在しない限り、信号値に基づいて位置ずれ電極信号を得ることができないから、当業者が毛様体筋と位置合わせされた電極セグメントのサブセットを特定するのに十分であるということはできない。なお、主要変数が「閾値」であったとしても、本願の発明の詳細な説明には、「有効な毛様体筋信号とノイズ/位置ずれ電極信号を区別」することが可能な「閾値」が開示されていない。
したがって、審判請求人による上記主張も、採用することができない。
ウ 審判請求人は、令和7年9月29日に提出した意見書において、「さらに、「比較」ステップにおける受信信号の「平均値」又は「中央値」の実装に関しては、平均値又は中央値を超える受信信号は毛様体筋と整列している可能性が高く、平均値又は中央値を下回る受信信号は毛様体筋と整列していない可能性が高いことを、当業者は直ちに理解することができます。」と主張している。また、審判請求人は、令和6年10月25日に提出した上申書において、「例えば、比較アルゴリズムは、どのセグメントが毛様体筋と最も整列しているかを決定するために行われます。例えば、毛様体筋とよく整列しているセグメントから受信した信号のサブセットは、閾値より大きい大きさを有する可能性があり、毛様体筋とよく整列していないセグメントから受信した信号のサブセットは、閾値より小さい大きさを有する可能性があります。このようにして、異なる信号のサブセットを合計、平均、又は比較することにより、毛様体筋と整列しているセグメントのサブセットに対応する信号のサブセットを特定することができます。」と主張している。
しかし、本願の詳細な説明には、審判請求人が主張する事項が記載されておらず、また、技術常識であるとする根拠も見出せない。そして、前記(3)オに記載したとおり、毛様体の筋活動は、患者毎のみならず、各患者の毛様体の各領域毎においても、地図が生成される程度に異なると理解できる。そうすると、前記(3)オ(ア)及び(3)オ(イ)に記載したとおり、前記(1)ア~ウの要件が実質的に記載されていたということができない。また、「平均値又は中央値を超える受信信号は毛様体筋と整列している」及び「毛様体筋とよく整列しているセグメントから受信した信号のサブセットは、閾値より大きい大きさを有する」という要件は、信号に対する患者の目自体の特徴に起因する影響がない、或いは、少ないことを前提とするものである。そのような前提に基づき、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセット」なるものを特定した場合、患者の目自体の特徴、つまり毛様体筋活動が不満足である毛様体筋と整列しているサブセットは、「毛様体筋と整列された前記同心リングの複数のセグメントのサブセットに対応する信号のサブセット」として特定されることになることは明らかである。そうすると、本件発明は、「毛様体筋における電気的活動を判定し特徴付ける」という課題について、本件発明が解決することができず、「患者が、かかる電気活性眼用レンズを利用するための必須の毛様体筋活動を有するかどうかを判定する」こともできないものであるから、前記(3)カに記載したとおり、発明が解決しようとする課題を解決できるものということができない。
したがって、審判請求人による上記主張も、採用することができない。
5 むすび(結論)
上記のとおりであるから、本件発明は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-006379