特許拒絶査定不服審判
2022-014349
ガンマ-ポリグルタミン酸および亜鉛組成物
- 審判番号
- 2022-014349
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-545868外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月12日
- 審決日
- 2025年04月02日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ジロニックス・ピーティーイー.リミテッド
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】國枝 由紀子
- 分類
- P18 .121-WZ (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-545868「ガンマ-ポリグルタミン酸および亜鉛組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月11日国際公開、WO2018/084805、令和1年11月28日国内公表、特表2019-534046〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)10月31日(パリ条約による優先権主張 2016年11月1日)を国際出願日とする出願であり、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和2年10月29日 手続補正書の提出
令和3年 8月12日付け 拒絶理由通知
令和4年 2月17日 手続補正書・意見書の提出
同年 5月 9日付け 拒絶査定
同年 9月12日 審判請求書・手続補正書の提出
同年 9月21日 手続補正書(方式)の提出
(審判請求書の「請求の理由」の内容を補正するもの)
令和5年 1月30日付け 前置報告
令和6年 7月12日付け 拒絶理由通知(当審)
令和7年 1月16日 手続補正書・意見書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、令和7年1月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
γ-ポリグルタミン酸、亜鉛塩および胃耐性外部コーティングを含む固体剤形として配合された、亜鉛欠乏または亜鉛不足を処置するための医薬を調製するための方法であって、前記の方法が、以下の工程:
(a)5kDa~300kDaの範囲の数平均分子量を有するγ-ポリグルタミン酸、該亜鉛塩(ここで、前記の亜鉛塩の量は、固体剤形あたり1mg~75mgの亜鉛を提供する)、1種類以上の増量剤、1種類以上の結合剤および任意選択で1種類以上の崩壊剤を一緒に混合し;
(b)工程(a)において得られた混合物を、溶媒として水性エタノールを用いる湿式顆粒化プロセスで顆粒化して、湿式顆粒化混合物を得て;
(c)潤滑剤および任意選択で滑剤を工程(b)において得られた顆粒化混合物と混合し;
(d)工程(c)において得られた混合物を錠剤化して錠剤を得て;
(e)工程(d)において得られた錠剤を胃耐性外部コーティングでコートし、それにより該固体剤形が得られる;
を含む方法。」
第3 拒絶の理由
本願発明は、令和4年9月12日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項8(以下「補正前の請求項8」という。)において工程(b)及び(c)を補正した発明に相当する。
そして、補正前の請求項8に対して、当審において令和6年7月12日付けで通知した拒絶理由の要旨は、次のとおりのものである。
補正前の請求項8に係る発明は、引用文献9に記載された発明及び引用文献2、9~11、18の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
2.特開平05-316999号公報
9.中国特許出願公開第101716180号明細書
10.特開平3-30648号公報
11.特開2001-204441号公報
18.特表2013-537182号公報
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
1 引用文献9の記載事項及び引用発明
(1)引用文献9に記載された事項
引用文献9には、以下の事項が記載されている。なお、原文が外国語であるため日本語訳で記載する。下線は当審合議体が付した。以下、同じ。
(摘記9a)
「特許請求の範囲
1.亜鉛とカルシウムの配合サプリメントであって、その特徴は薬剤成分の標的放出である、前記サプリメント。
2.請求項1に記載された亜鉛とカルシウムの配合サプリメントの調合方法について、その特徴は主に以下の手順である、前記調合方法。
(1)グルコン酸亜鉛、ビタミンDにデンプン、微結晶セルロースを加えて混ぜ合わせたものを、16~20メッシュの大きさに成型し、50℃以下で乾燥させた後シリカゲルを均等にまぶし、腸溶性カプセルに充填する。
(2)水溶性酢酸カルシウムを超微粉砕したものを用意する。
(3)デンプン、微結晶セルロースを混ぜ合わせたものを用意する。
(4)(2)に微粒状の(3)を混ぜ合わせたものを、16~20メッシュの大きさに成型し、低温で乾燥させた後シリカゲルを均等にまぶし、ハラルカプセルに充填する。
3.請求項2で述べられた亜鉛、カルシウムの配合サプリメントおよびその調合方法について、その特徴はハラルカプセルに充填する前にビタミンEを加えることが可能である点である。その手順は、ビタミンEをβシクロデキストリンに加え、双方の配合モル比を0.5~1.5:0.75~1.25、包接時間を10~40分、溶剤を45~75%のエタノールとし、その包接化合物を低温乾燥させ微粒状にする。これと上記(2)と(3)の混合物を混ぜ合わせたものを16~20メッシュの大きさに成型し、低温で乾燥させた後シリカゲルを均等にまぶし、ハラルカプセルに充填する。」
(摘記9b)
「[0003] 亜鉛の摂取量は人の食生活の中で不足しがちである。平均的な1日の摂取量は8~12mgであり、男性が女性をわずかに上回る。1日の摂取量は食物とサプリメントを組み合わせて15~25mgとなるのが好ましい。食物中の亜鉛の含有量が少なければ、毎日亜鉛のサプリメントを10~15mg摂取すればよい。亜鉛は炭酸脱水酵素、呼吸酵素、乳酸脱水素酵素、活性酸素除去酵素などの酵素系物質に多く含まれている。アルカリホスファターゼ、DNAポリメラーゼなどは、核酸、タンパク質、炭水化物の合成とビタミンAの利用に必須の物質である。亜鉛には身体の成長や発育を促進し、味覚を改善する作用がある。亜鉛が不足すると味覚や嗅覚が低下し、身体の成長、知能の発達の遅れが発生する。
[0004] 現段階における亜鉛やカルシウムを補足する薬剤は種類が豊富であり、効果もさまざまである。バイオ医薬品もあれば無機の亜鉛塩やカルシウム塩などもあるが、既存の薬剤のあるものは副作用が大きく、またあるものは身体に吸収されず、長期間の服用に適さない。一部の無機塩は体内で代謝されず残留し、病気を発症させてしまう。これらは亜鉛やカルシウムを補う薬剤に適さず、薬の効果を十分に発揮させることは不可能である。
発明の内容
[0005] 本発明の目的は長期間の服用、身体の吸収、薬の効果を十分に発揮させる亜鉛、カルシウムの配合サプリメント及びその調合方法を発明することである。」
(摘記9c)
「[0015] 処方された各成分の様々な理科学的性質と薬剤吸収の特徴から、ビタミンDとグルコン酸亜鉛を混ぜ合わせて造粒したものを腸溶性カプセルに充填することにより、ビタミンDが酸性環境下で損なわれず、グルコン酸亜鉛が胃に刺激を与えることを回避する。ビタミンEをβシクロデキストリンで包接し調合することにより、ビタミンEの酸化を防ぎ、また胃で溶解・吸収されるため、本製品のバイオアベイラビリティをより高める。
[0016] 作られた薬剤は対象者に応じて調合する。まず子供にビタミンDを加えたカルシウムサプリメントを与えると、有機カルシウムの吸収率を高め、有機カルシウムの服用量を減らすことが可能となり、カルシウムの非薬理学的残留を低下させる。処方において亜鉛を適量増加させると、子供の味覚や嗅覚を改善して食欲を増進させ、身体の成長と知能の発達を促進する。次に妊婦に通常よりカルシウムの含有量が多く、さらにビタミンDが補助するサプリメントを与えると、カルシウムの吸収率を高め、使用原料の重金属や有害物質の検出を厳格にコントロールする。製剤工程が必要とする亜鉛とビタミンDの標的放出は、薬剤の副作用を適切に回避し、体内の吸収に役立つ。処方において亜鉛を適量増加させると、妊婦の味覚や嗅覚を改善して食欲を増進させ、胎児の身体の成長と知能の発達を促進する。3つ目は成人の成長期及び40歳以降におこるカルシウム大量流出、とりわけ女性ホルモンの同時減少に対し、ビタミンDを加えたカルシウムは有機カルシウムの吸収率を高め、骨の形成を促進し、神経伝達、筋肉の収縮、毛細血管の正常な浸透圧を維持し、血液のpHのバランスを保ち、酵素の合成と代謝に関与する。
[0017] 臨床の実際の需要と新技術のサポートに基づき、添加剤の種類や用量を自由に調合することが可能であり、先に述べた製品をほかの形状、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤などに製剤することも検討が可能である。需要に応じて2種類のカプセルを服用量に従いセットで包装し、製品として上市する。」
(摘記9d)
「[0028] (3)グルコン酸亜鉛は胃を刺激するため、胃に不快感や吐き気、嘔吐などの消化器官を刺激する症状が現れる。本製品の理化学的性質は安定しているため、ビタミンDと混ぜ合わせて腸溶性カプセルを作り出した。」
(摘記9e)
「[0032] 本発明の方法により、酸性環境下においてビタミンDは破壊されず、グルコン酸亜鉛の胃への刺激が回避され、ビタミンEの酸素との接触が遮断される。強寿薬業グループ株式会社の新薬科学研究力とGMP基準を満たした先進的な生産施設により、原薬の有効成分の変化を防ぐと同時に適切に腸溶性カプセルとハラルカプセルを製剤する。患者は双方のカプセルを同時に服用すると、ビタミンEと酢酸カルシウムの有効成分が胃において速やかに溶解・吸収される。ビタミンDとグルコン酸亜鉛は腸内で溶解・吸収され、薬剤の効果及びバイオアベイラビリティが高く、副作用が少ない特徴がある。特に子供、妊婦、成人と高齢者の亜鉛、カルシウムの長期間にわたる補助的な服用に適している。」
(摘記9f)
「[0033] 実施例1
[0034] 本発明の薬剤の子供への調合は以下の手順で行う。
[0035] (1)Zn2+10gに相当する固形グルコン酸亜鉛、D3 200000IUに相当する固形ビタミンD、薬用デンプン365g、微結晶セルロース10g、シリカゲル10gを秤量する。まずグルコン酸亜鉛とビタミンDを混ぜ合わせて1号混合粉とし、次にデンプン、微結晶セルロースを混ぜ合わせて2号混合粉とする。1号・2号混合粉を等量による漸増法で混ぜ合わせ、10gのシリカゲルをまぶし、腸溶性カプセル2000粒に充填する。
[0036] (2)Ca2+200gに相当する超微粉砕した水溶性酢酸カルシウムを用意する。
[0037] (3)デンプン50g、微結晶セルロース10gを混ぜ合わせたものを用意する。
[0038] (4)(2)と(3)を混ぜ合わせたものに20gのシリカゲルを均等にまぶし、ハラルカプセル4000粒に充填する。
[0039] 2種類の完成したカプセルはそれぞれ包装、又はセットして包装し、製品として上市する。」
(2)引用文献9に記載された発明
摘記9aの「亜鉛とカルシウムの配合サプリメントの調合方法」について、摘記9bの[0003]には、「亜鉛の摂取量は人の食生活の中で不足しがちであること」、[0005]には、「本発明の目的は長期間の服用、身体の吸収、薬の効果を十分に発揮させる亜鉛、カルシウムの配合サプリメント及びその調合方法を発明することである」ことが記載されている。
また、摘記9fの[0035]~[0039]には、その具体的な配合サプリメントの調合方法として、Zn2+10gに相当する固形グルコン酸亜鉛を含む混合粉を腸溶性カプセル2000粒に充填すること、Ca2+200gに相当する超微粉砕した水溶性酢酸カルシウムを含む混合物をハラルカプセル4000粒に充填すること、前記腸溶性カプセル及びハラルカプセルを、それぞれ包装、又はセットして包装し、製品として上市することが記載されている。
そして、前記「Zn2+10gに相当する固形グルコン酸亜鉛を含む混合粉を腸溶性カプセル2000粒に充填すること」に着目すると、引用文献9には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「長期間の服用、身体の吸収、薬の効果を十分に発揮させる亜鉛の配合サプリメントの調合方法であって、Zn2+10gに相当する固形グルコン酸亜鉛を含む混合粉を腸溶性カプセル2000粒に充填することによる、人が摂取するための、前記配合サプリメントの調合方法。」
2 引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(摘記2a)
「【請求項1】ポリーγーグルタミン酸分解物を含有して成るミネラル強化組成物。
【請求項2】ポリーγーグルタミン酸分解物の分子量が1×104~3×105である請求項1記載の組成物。」
(摘記2b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はミネラル吸収促進効果を有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。詳しくは、ミネラル及びミネラル吸収促進材として、ポリーγーグルタミン酸分解物を含有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。」
(摘記2c)
「【0011】納豆の粘質物中に存在する、あるいは納豆菌等のバチルス属が菌体外に分泌するポリーγーグルタミン酸及び合成のポリーαーグルタミン酸も小腸下部でミネラルの可溶化効果を持ち、ミネラルの腸管吸収を促進する。(特開平03-30648)しかし食品素材として用いる場合、ポリーαーグルタミン酸は合成のため安全性に問題がある、生成工程に手間がかかる、またCPPと同様腸管内を移行する間にプロテアーゼにより分解される可能性がある。納豆粘質物中のポリーγーグルタミン酸あるいは納豆菌等のバチルス属が通常の培養条件で分泌するポリーγーグルタミン酸は粘性が高いため、調製時及び食品加工処理時に手間がかかる等の欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】処理工程が比較的簡便であり、溶解性良好で食品加工に適し、はば広く食品に利用でき、かつ小腸内で活性を保持している成分を開発し、これを用いてミネラル吸収促進効果をもち、さらには強化したミネラルの異味がマスクされている組成物を開発することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者らはポリーαーグルタミン酸はα結合なのでプロテアーゼに分解される可能性があるが、ポリーγーグルタミン酸はγ結合なのでプロテアーゼにより分解されないこと、納豆粘質物中に存在する、あるいは通常の培養条件で納豆菌等が分泌するポリーγーグルタミン酸を低分子化すると粘度が低下し、調製処理及び食品加工処理等が容易になることより、分子量1×104~3×105のポリーγーグルタミン酸分解物が小腸内でミネラルを可溶化し、食品に添加しても小腸内でミネラル可溶化活性を失わないことを見いだした。さらに、ポリーγーグルタミン酸が食品にまろやかな味を付与し、強化したミネラルのえぐ味、渋味、から味をマスクすることを見いだし、更に開発研究を行った結果、ミネラルを体内に補給し易い形の組成物の開発に成功し、本発明を完成させたものである。
【0014】すなわち本発明はミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリーγーグルタミン酸の分解物を含有する組成物、及びこれを含有することにより、ミネラルの吸収促進効果をもつ飲食物に関する。
【0015】本発明で用いるミネラルとしてカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体必須ミネラルの一部あるいは全部が対象となる。また、用いるミネラルの形態には制限はないが、例えばカルシウムでは、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどの化学的合成品の食品添加物、及び貝カルシウム、骨カルシウムなどの天然カルシウムが対象となる。鉄では、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄などの化学的合成品の食品添加物、及びヘム鉄などの天然鉄が対象となる。」
3 引用文献10の記載事項
引用文献10には、以下の事項が記載されている。
(摘記10a)
「2.特許請求の範囲
1) ミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリ-α又はγ-グルタミン酸を含有することを特徴とする飲食物
2) ミネラルとしてカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体必須ミネラルの一部あるいは全部を含有することを特徴とする特許請求項第1項記載の飲食物」
(摘記10b)
「一般にミネラルが吸収されるには可溶性の状態で小腸管腔内に存在することが必要であるとされている。」(第1頁右欄下から第2行~第2頁左欄第1行)
(摘記10c)
「〔課題を解決する為の手段〕
発明者らはミネラルを腸管内で可溶化状態に保つにはポリグルタミン酸が最も適しており、これを用いることにより腸管を通してミネラルが体内吸収しやすくなることを見出した結果、更に開発研究を行ないミネラルを体内に補給し易い形の飲食物の開発に成功し、本発明を完成させたものである。
すなわち本発明はミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリ-α又はγ-グルタミン酸とを含有することを特徴とする飲食物である。
本発明で用いるミネラルとしてカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体必須ミネラルの一部あるいは全部が対象となる。」(第2頁左下欄第6行~第19行)
4 引用文献11の記載事項
引用文献11には、以下の事項が記載されている。
(摘記11a)
「【請求項1】納豆粘質物から抽出され又はバチルス属の菌体外に分泌され、かつ、低角度レーザー光散乱計で測定した分子量が3×105を超えるポリ-γ-グルタミン酸を、酸又は酵素により、当該測定による分子量が1×104~3×105にまで分解したものと、カルシウムを30~300mg%及び/又は鉄を0.5~100mg%とを含有してなることを特徴とする飲料。」
(摘記11b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はミネラル吸収促進効果を有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。詳しくは、ミネラル及びミネラル吸収促進材として、ポリ-γ-グルタミン酸分解物を含有する組成物とこれを含有する飲食品に関する。」
(摘記11c)
「【0005】一般にミネラルが吸収されるには可溶性の状態で小腸管腔内に存在することが必要であるとされている。」
(摘記11d)
「【0011】納豆の粘質物中に存在する、あるいは納豆菌等のバチルス属が菌体外に分泌するポリ-γ-グルタミン酸及び合成のポリ-α-グルタミン酸も小腸下部でミネラルの可溶化効果を持ち、ミネラルの腸管吸収を促進する(特開平03-30648号公報)。しかし、食品素材として用いる場合、ポリ-α-グルタミン酸は合成のため安全性に問題がある、生成工程に手間がかかる、またCPPと同様腸管内を移行する間にプロテアーゼにより分解される可能性がある。納豆粘質物中のポリ-γ-グルタミン酸あるいは納豆菌等のバチルス属が通常の培養条件で分泌するポリ-γ-グルタミン酸は粘性が高いため、調製時及び食品加工処理時に手間がかかる等の欠点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】処理工程が比較的簡便であり、溶解性良好で食品加工に適し、はば広く食品に利用でき、かつ小腸内で活性を保持している成分を開発し、これを用いてミネラル吸収促進効果をもち、さらには強化したミネラルの異味がマスクされている組成物を開発することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者らはポリ-α-グルタミン酸はα結合なのでプロテアーゼに分解される可能性があるが、ポリ-γ-グルタミン酸はγ結合なのでプロテアーゼにより分解されないこと、納豆粘質物中に存在する、あるいは通常の培養条件で納豆菌等が分泌するポリ-γ-グルタミン酸を低分子化すると粘度が低下し、調製処理及び食品加工処理等が容易になることより、分子量1×104~3×105のポリ-γ-グルタミン酸分解物が小腸内でミネラルを可溶化し、食品に添加しても小腸内でミネラル可溶化活性を失わないことを見いだした。さらに、ポリ-γ-グルタミン酸が食品にまろやかな味を付与し、強化したミネラルのえぐ味、渋味、から味をマスクすることを見いだし、更に開発研究を行った結果、ミネラルを体内に補給し易い形の組成物の開発に成功し、本発明を完成させたものである。
【0014】すなわち、本発明はミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリ-γ-グルタミン酸の分解物を含有する組成物、及びこれを含有することにより、ミネラルの吸収促進効果をもつ飲食物に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明で用いるミネラルとしてカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅などの生体必須ミネラルの一部あるいは全部が対象となる。また、用いるミネラルの形態には制限はないが、例えばカルシウムでは、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどの化学的合成品の食品添加物、及び貝カルシウム、骨カルシウムなどの天然カルシウムが対象となる。鉄では、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸第一鉄などの化学的合成品の食品添加物、及びヘム鉄などの天然鉄が対象となる。」
5 引用文献18の記載事項
引用文献18には、以下の事項が記載されている。
(摘記18a)
「【0042】
本発明によると、得られるナノ粉砕された顆粒はカプセルに封入されるか、又は圧縮されて・・・。
本発明によると、固体剤形は任意にコーティングすることもできる。より好ましくは、該製剤は、シールコーティングされ、さらに腸溶コーティングされ得る。
・・・
【0045】
本発明の他の実施態様によると、腸溶コートはシールコートの上に存在する。腸溶コートは、EUDRAGIT L 30 D-55、EUDRAGIT L100-55、EUDRAGIT S 100、EASTACRYL 30D、KOLLICOAT MAE 30 DP、KOLLICOAT MAE 100 Pなどの中和されたメタクリル酸コポリマー;酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,及びこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない材料で成り立つ。」
(摘記18b)
「【0071】
(プロセス:)
1.精製水中で、攪拌条件下で、ドキュセートナトリウム、HPMC、ラウリル硫酸ナトリウム、及びスクロースとリファキシミンとの分散体を調製した。
2.上記分散体を均質化し、次いで、ナノ粉砕した。
3.流動床造粒装置において、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、及びクロスポビドンの混合物に噴霧することによって、ナノ粉砕した薬物スラリーを吸着させた。
4.得られた顆粒の大きさを整え、潤滑剤を塗布した。
5.潤滑剤を塗布した顆粒を、最後に圧縮して錠剤へと加工した。
6.得られた錠剤をシールコーティングし、次いで腸溶コーティングした。」
6 周知文献Aの記載事項
周知文献A(特開平9-104632号公報)は、本願優先日当時の周知技術を示す文献である。
そして、周知文献Aには、以下の事項が記載されている。
(摘記Aa)
「【0019】
[図:0001426143000001.jpg]
大麦緑葉青汁の噴霧乾燥粉末、乳糖、結晶セルロース、タルク、結合剤を均一に混合し、顆粒とした後、ステアリン酸マグネシウムを加えて、1錠200mgの錠剤を成型する。
【0020】実施例B(腸溶コーテイング錠)
実施例Aで得た錠剤に下記処方の腸溶性コーテイングを施し、1錠430mgの腸溶錠を製造した。
【0021】
[図:0001426143000002.jpg]
大麦緑葉青汁の噴霧乾燥粉末、乳糖、デンプンを均一に混合し、小量の水で溶かして混合し練合したのち顆粒を作り乾燥する(粒径0.8mm、柱状顆粒)。」
7 周知文献Bの記載事項
周知文献B(特開2002-241304号公報)は、本願優先日当時の周知技術を示す文献である。
そして、周知文献Bには、以下の事項が記載されている。
(摘記Ba)
「【0017】・・・ヒトに経口的に投与される剤型としては、たとえば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤などの固形剤、・・・などが挙げられる。・・・また、粉末、顆粒はカプセル(ゼラチンカプセル、腸溶コーティングカプセル、胃内抵抗性カプセルなど)に充填し、カプセル剤としてもよい。・・・。」
(摘記Bb)
「【0022】
実施例2 錠剤
化合物1 5g
トウモロコシデンプン 12g
乳糖 27.2g
ステアリン酸マグネシウム 0.4g
化合物1、乳糖およびトウモロコシデンプンを加えてよく混和し、湿性錠剤調整法に準じて打錠用顆粒とする。ステアリン酸マグネシウムを加えて打錠し、錠剤400錠とする。錠剤は、腸溶性コーティング剤(メタアクリル酸コポリマー)でコーティングする。」
8 周知文献Cの記載事項
周知文献C(特開平11-199517号公報)は、本願優先日当時の周知技術を示す文献である。
そして、周知文献Cには、以下の事項が記載されている。
(摘記Ca)
「【0043】製造例6
主薬としてシンバスタチン5g、結晶セルロース93.6g、D-マンニトール140.4g、アスパルテーム5g、クエン酸5gを高速撹拌造粒機(ハイスピードミキサー)に仕込み、混合後90%エタノール水溶液を用いて造粒し、熱風乾燥機を用いて十分に乾燥した。造粒した顆粒249gにステアリン酸マグネシウム0.75g、オレンジ香料0.25gを混合後、ロタリー式打錠機を用いて1錠250mg、9mmφ隅角の杵で打錠圧400kgで打錠することにより本発明の口腔内速崩壊性錠剤を得た。」
9 周知文献Dの記載事項
周知文献D(特開2016-50206号公報)は、本願優先日当時の周知技術を示す文献である。
そして、周知文献Dには、以下の事項が記載されている。
(摘記Da)
「【0074】
製剤例3(錠剤)
表3に従い、レボカルニチン(フリー体、LONZA)、水不溶性の添加剤(結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、軽質無水ケイ酸)を、撹拌混合造粒機に投入し混合した。別にポリビニルピロリドン(ポビドン25)あるいはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を水-エタノール溶液に溶解して調製した結合液を、撹拌混合造粒機に投入し、練合し顆粒を得た。得られた顆粒の粒子を真空乾燥機を用いて70~80℃で2~3時間乾燥させ、打錠用顆粒製剤を得た。容器回転式混合機に該打錠用顆粒製剤および表3に記載の後添加成分を入れて混合した。混合組成物をロータリー式打錠機を用いて打錠し、錠剤(素錠)を得た。錠剤には、レボカルニチンが約100mg含まれるようにした。
【0075】
【表3】
[図:0001426143000003.jpg]
」
10 周知文献Eの記載事項
周知文献E(特開2014-196360号公報)は、本願優先日当時の周知技術を示す文献である。
そして、周知文献Eには、以下の事項が記載されている。
(摘記Ea)
「【0079】
実施例6
(1)日本薬局方22メッシュ篩(目開き:710μm)で篩過したD-マンニトール97重量部及びエチルセルロース3重量部の混合物に5重量部の80%(W/W)エタノール水溶液を添加しつつ造粒後、通気式箱型乾燥機中50℃で2時間乾燥することにより、造粒顆粒を得た。
【0080】
(2)上記(1)の造粒顆粒283.5重量部、クロスポビドン15重量部及びステアリン酸マグネシウム1.5重量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり300mgとなるよう、コンパクションアナライザー(菊水製作所製、杵:直径10mm、打錠圧:900kg/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊性錠(硬度:53N、口腔内での崩壊時間:18秒)を得た。
【0081】
(3)打錠圧を1400kg/杵とする以外は上記(2)と同様にして、口腔内速崩壊性錠(重量:300mg、硬度:80N、口腔内での崩壊時間:16秒)を得た。」
第5 本願発明と引用発明の対比
本願発明の「胃耐性外部コーティングを含む固体剤形」について、工程(a)~(e)では、最終的に「胃耐性外部コーティングでコート」した「錠剤」が調製されているから、本願発明の「胃耐性外部コーティングを含む固体剤形」は、「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」を意味するといえる。
また、本願明細書には、「本発明は、剤形が胃を通過して腸に入るまで剤形の内容物が放出されないように胃耐性材料を有する固体または液体剤形を提供することを意図している。」(【0009】)及び「胃耐性材料は、胃耐性外部コーティングとして、あるいは胃耐性結合剤として含まれ、・・・腸溶コーティング及び腸溶結合剤は、胃耐性材料の例である。」(【0026】)という記載があるから、本願発明における「胃耐性」は、引用発明における「腸溶性」を包含すると解される。
そして、引用発明の「カプセル」は固体剤形であるから、引用発明の「腸溶性カプセル」と、本願発明の「胃耐性外部コーティングを含む固体剤形」とは、「胃耐性の固体剤形」である点で共通している。
引用発明の「グルコン酸亜鉛」は、本願発明における「亜鉛塩」に相当する。
引用発明は、「Zn2+10gに相当する固形グルコン酸亜鉛を腸溶性カプセル2000粒に充填」しているから、カプセル1粒あたり5mgのZn2+を含有しており、本願発明の「亜鉛塩の量は、固体剤形あたり1mg~75mgの亜鉛を提供する」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「亜鉛塩および胃耐性の固体剤形として配合された、組成物を調製するための方法であって、亜鉛塩の量は、固体剤形あたり1mg~75mgの亜鉛である方法」
<相違点1>
本願発明では、「胃耐性の固体剤形」が「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」であり、「組成物」が「亜鉛欠乏または亜鉛不足を処置するための医薬」であるのに対し、引用発明では、「胃耐性の固体製剤」が「腸溶性カプセル」であり、「組成物」が「長期間の服用、身体の吸収、薬の効果を十分に発揮させる亜鉛の配合サプリメント」である点。
<相違点2>
本願発明においては、「5kDa~300kDaの範囲の数平均分子量を有するγ-ポリグルタミン酸」を含むことが特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
<相違点3>
本願発明においては、「(a)5kDa~300kDaの範囲の数平均分子量を有するγ-ポリグルタミン酸、該亜鉛塩、1種類以上の増量剤、1種類以上の結合剤および任意選択で1種類以上の崩壊剤を一緒に混合し;
(b)工程(a)において得られた混合物を、溶媒として水性エタノールを用いる湿式顆粒化プロセスで顆粒化して、湿式顆粒化混合物を得て;
(c)潤滑剤および任意選択で滑剤を工程(b)において得られた顆粒化混合物と混合し;
(d)工程(c)において得られた混合物を錠剤化して錠剤を得て;
(e)工程(d)において得られた錠剤を胃耐性外部コーティングでコートし、それにより該固体剤形が得られる」ことが特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。
第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
ア カプセルに腸溶コーティングを施して腸溶性カプセルとすることは本願優先日当時の周知技術であり(摘記18a、摘記Ba)、上記第5で説示した、本願明細書の【0009】及び【0026】の記載から、「腸溶コーティング」は本願発明の「胃耐性外部コーティング」に相当すると解されるところ、摘記9cの[0017]には、「先に述べた製品をほかの形状、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤などに製剤することも検討が可能である。」と記載されているから、引用発明の「腸溶性カプセル」を、形状を「錠剤」に変更し、腸溶コーティング(本願発明の「胃耐性外部コーティング」に相当)を施して「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
イ 引用発明における「長期間の服用、身体の吸収、薬の効果を十分に発揮させる」という記載は、摘記9bの「亜鉛の摂取量は人の食生活の中で不足しがちである。平均的な1日の摂取量は8~12mgであり、男性が女性をわずかに上回る。1日の摂取量は食物とサプリメントを組み合わせて15~25mgとなるのが好ましい。食物中の亜鉛の含有量が少なければ、毎日亜鉛のサプリメントを10~15mg摂取すればよい。・・・亜鉛が不足すると味覚や嗅覚が低下し、身体の成長、知能の発達の遅れが発生する。」との記載、及び摘記9cの「処方において亜鉛を適量増加させると、子供の味覚や嗅覚を改善して食欲を増進させ、身体の成長と知能の発達を促進する。」との記載を併せて考えると、「人の食生活の中で不足しがち」な亜鉛を効率的に「身体に吸収」させ、「薬の効果を十分に発揮させる」ことを意味する記載であるから、本願発明の「亜鉛欠乏または亜鉛不足を処置するため」という用途に相当する。
そして、引用発明は「配合サプリメント」であるが、体に不足しがちな栄養成分を対象に摂取させる形態として配合サプリメントとするか、医薬として対象に摂取させるかは、当業者が適宜選択しうる事項にすぎないから、引用発明の「配合サプリメント」を「医薬」とすることに、格別の創意工夫を要したとはいえない。
ウ 上記ア及びイから、引用発明を相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
ア 引用文献2には、「ポリーγーグルタミン酸分解物を含有して成るミネラル強化組成物。」が記載されており、「ポリーγーグルタミン酸分解物の分子量が1×104~3×105である」ことも記載されている(摘記2a)。また、「ポリーγーグルタミン酸を低分子化」した「分子量1×104~3×105のポリーγーグルタミン酸分解物が小腸内でミネラルを可溶化し、食品に添加しても小腸内でミネラル可溶化活性を失わないことを見いだした」こと(摘記2cの【0013】)、「本発明で用いるミネラルとして・・・亜鉛・・・が対象となる」こと(摘記2cの【0015】)も記載されている。
イ 引用文献10には、「ミネラル及びミネラル吸収促進材としてポリ-α又はγ-グルタミン酸を含有することを特徴とする飲食物」が記載されており、「ミネラルとして・・・亜鉛・・・を含有すること」も記載されている(摘記10a)。また、「ミネラルが吸収されるには可溶性の状態で小腸管腔内に存在することが必要である」こと(摘記10b)、「ミネラルを腸管内で可溶化状態に保つにはポリグルタミン酸が最も適しており、これを用いることにより腸管を通してミネラルが体内吸収しやすくなることを見出した」こと(摘記10c)も記載されている。
ウ 引用文献11には、「ポリーγーグルタミン酸を低分子化」した「分子量1×104~3×105のポリ-γ-グルタミン酸分解物が小腸内でミネラルを可溶化し、食品に添加しても小腸内でミネラル可溶化活性を失わないことを見いだした」こと(摘記11dの【0013】)、「本発明で用いるミネラルとして・・・亜鉛・・・が対象となる」こと(摘記11dの【0015】)が記載されている。
エ 以上のとおり、引用文献2、10、11には、ポリ-γ-ポリグルタミン酸が小腸内でミネラルを可溶化させ、ミネラルの吸収を高めること、ミネラルとして亜鉛が挙げられることが記載されており、引用文献2、11には、ポリ-γ-ポリグルタミン酸として低分子化した分子量が1×104~3×105であるポリ-γ-グルタミン酸分解物が用いられることも記載されている。
ここで、ポリーγーグルタミン酸分解物は低分子化したポリーγーグルタミン酸といえる。
そして、引用発明と引用文献2、10、11は、亜鉛の吸収を高めるという共通の課題を有しているものであるから、引用発明において、さらに亜鉛の「身体の吸収」を高めるために、「分子量が1×104~3×105であるポリ-γ-グルタミン酸」を用いて、引用発明を相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)相違点3について
ア 上記(1)で説示したとおり、引用発明の「腸溶性カプセル」を、形状を「錠剤」に変更し、腸溶コーティングを施して「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
イ そして、「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」の調製方法に関して、例えば、引用文献18の摘記18bには、攪拌条件下でドキュセートナトリウム、HPMC、スクロースとリファキシミンとの分散体を調整した後、流動床造粒装置にて顆粒を調製し、得られた顆粒に潤滑剤を塗布し、圧縮して錠剤に加工し、腸溶コーティングする調製方法が記載されている(当審注:本願明細書【0032】よりスクロースは増量剤に相当し、本願明細書【0033】より、スクロースは、「糖質」でもあるから結合剤にも相当し、本願明細書【0033】より、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、結合剤に相当する。また、ドキュセートナトリウム及びリファキシミンは医薬活性成分であり、腸溶コーティングは「胃耐性外部コーティング」に相当する。)。
また、周知文献Aの摘記Aaには、大麦緑葉青汁の噴霧乾燥粉末、乳糖、結晶セルロース、タルク、結合剤を均一に混合し、顆粒とした後、ステアリン酸マグネシウムを加えて錠剤を成型し、腸溶性コーティングを施した、腸溶錠の調製方法が記載されている(当審注:本願明細書【0032】、【0033】より、乳糖は、「糖類」、「糖質」であるから、増量剤、結合剤に相当し、本願明細書【0032】、【0033】より、結晶セルロースは「微結晶セルロース」であるから増量剤、結合剤に相当し、本願明細書【0032】より、タルクは増量剤に相当し、本願明細書【0036】よりステアリン酸マグネシウムは、「アルカリ土類金属ステアリン酸塩類」であるから潤滑剤に相当する。また、大麦緑葉青汁の噴霧乾燥粉末は医薬活性成分であり、腸溶性コーティングは「胃耐性外部コーティング」に相当する。)。
さらに、周知文献Bの摘記Bbには、化合物1、乳糖およびトウモロコシデンプンを加えて混和し、湿性錠剤調整法に準じて打錠用顆粒とし、ステアリン酸マグネシウムを加えて打錠し、錠剤を調製し、腸溶性コーティング剤でコーティングする調製方法が記載されている(当審注:本願明細書【0032】、【0033】より、乳糖は、「糖類」、「糖質」であるから、増量剤、結合剤に相当し、本願明細書【0032】、【0033】より、トウモロコシデンプンは、「デンプン」、「デンプン類」であるから、増量剤、結合剤に相当し、本願明細書【0036】よりステアリン酸マグネシウムは、アルカリ土類金属ステアリン酸塩類であるから潤滑剤に相当する。また、化合物1は医薬活性成分であり、腸溶性コーティング剤は「胃耐性外部コーティング」に相当する。)。
ウ 以上より、医薬活性成分、1種類以上の増量剤、1種類以上の結合剤および任意選択で1種類以上の崩壊剤を一緒に混合し、湿式顆粒化プロセスで顆粒化して、湿式顆粒化混合物を得て、潤滑剤および任意選択で滑剤を顆粒化混合物と混合し、混合物を錠剤化して錠剤を得て、錠剤を胃耐性外部コーティングでコートし、それにより「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」を得るという調製方法は、本願優先日当時の周知技術であるといえる。
エ さらに、相違点3の工程(b)では「溶媒として水性エタノールを用いる湿式顆粒化プロセスで顆粒化して、湿式顆粒化混合物」を得ていることについて、検討する。
引用文献9では、亜鉛配合サプリメントを調合する際に、ハラルカプセルに充填する混合物を45~75%のエタノールを用いて微粒状にしている(当審注:45~75%のエタノールは「水性エタノール」に相当する。)。
また、周知文献Cには、シンバスタチン、結晶セルロース、マンニトール等を高速撹拌造粒機に仕込み、混合後90%エタノール水溶液を用いて造粒したことが記載されている(摘記Ca)(当審注:90%エタノール水溶液は「水性エタノール」に相当する。)。
周知文献Dには、レボカルニチン、及び結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等の水不溶性の添加剤を撹拌混合造粒機に投入し混合し、別にポリビニルピロリドンあるいはヒドロキシプロピルセルロースを水-エタノール溶液に溶解して調製した結合液を撹拌混合造粒機に投入し、練合し顆粒を得て、乾燥し、打錠用顆粒製剤を得たことが記載されている(摘記Da)(当審注:水-エタノール溶液は「水性エタノール」に相当する。)。
周知文献Eには、D-マンニトール及びエチルセルロースの混合物に80%(w/w)エタノール水溶液を添加しつつ造粒後、乾燥することにより造粒顆粒を得て、ステアリン酸マグネシウムと混合し、打錠用顆粒を得ることが記載されている(摘記Ea)(当審注:80%(w/w)エタノール水溶液は「水性エタノール」に相当する。)。
以上のとおり、引用文献9では、カプセルに封入する微粒状の混合物を製造する際に、「水性エタノール」に相当する「45~75%エタノール」を用いており、周知文献C~Eに示されるとおり、打錠用顆粒を湿式造粒により製造する際に「水性エタノール」を用いることは、本願優先日当時の周知技術である。
オ したがって、「胃耐性外部コーティングを含む錠剤」(上記ア)を調製する際に、上記イ、ウに記載の周知技術を用いて製造することにより、引用発明を相違点3に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
2 本願発明の効果について
本願明細書には、本願発明において、工程(a)~(e)で特定される調製方法で、γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物を胃耐性外部コーティングでコートした錠剤(以下「本願発明の錠剤」という。)を調製したことが記載されている(実施例2、4)。
しかし、本願明細書には、実施例2、4で調製された「γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物を胃耐性外部コーティングでコートした錠剤」について、ポリ-γ-グルタミン酸が亜鉛の吸収をどの程度促進させたのかについて、当業者が確認できるような試験結果は記載されていない。
さらに、本願明細書には、亜鉛の吸収の程度について、「錠剤」と「錠剤以外の剤形」とを比較した試験結果や、「工程(a)~(e)で特定される調製方法で調製した錠剤」と「工程(a)~(e)で特定される調製方法以外の方法で調製した錠剤」とを比較した試験結果も記載されていないのであるから、本願発明の効果が当業者の予測を超えて優れているとはいえない。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年1月16日提出の意見書において、以下の(1)~(3)の趣旨の主張をしているので、順次検討する。
(1)引用文献2、10、11は、胃をバイパスする目的のために腸溶コーティングを含めるための教示または動機づけを欠いており、これらの引用文献はいずれも、すべて内在的に胃に取り込まれるミネラルおよびポリ-γ-グルタミン酸添加物を含む食品製品の通常の摂取に関するものである。
以下、上記主張(1)について検討する。
請求人の主張における「胃をバイパスする目的」とは「胃耐性を付与する目的」を意味すると解されるところ、引用発明の「腸溶性カプセル」は「胃耐性の固体剤形」であり(上記第5)、上記1(1)アで説示したとおり、カプセルに腸溶コーティングを施して腸溶性カプセルとすることは本願優先日当時の周知技術である(摘記18a、摘記Ba)から、引用文献2、10、11には、腸溶コーティングを施すことは記載されていないが、引用発明において腸溶コーティングを施す動機付けはあるといえる。
また、引用文献2、10、11は、食品の摂取に関するものではあるが、引用発明も配合サプリメントという食品の摂取に関する発明であって、上記1(2)で説示したとおり、引用発明と、引用文献2、10、11は、亜鉛の吸収を高めるという共通の課題を有しているものであるから、引用発明と、「ポリ-γ-ポリグルタミン酸」が記載されている引用文献2、10、11とを組み合わせる動機付けは十分に存在する。
(2)引用文献2は、5つのミネラルのリスト内で亜鉛に言及しているが、引用文献2は、2つのミネラル、すなわちカルシウムおよび鉄についての記載およびデータしか提供しておらず、他の3つの金属(マグネシウム、亜鉛、および銅)についてはさらなる記載もデータも何ら提供しておらず、γ-PGA(当審注:ポリ-γ-グルタミン酸)が亜鉛吸収を促進するかどうかは不確かな推測であり、引用文献2によっては明確に裏付けられていない。その上、引用文献2が、図4および5においてカルシウム吸収について提供したデータは、カゼインホスホペプチド(CPP)およびγ-PGAの間にほとんど差がないことを明らかにしており、このことは、当業者が引用文献2から、より小さいキレート剤であるCPPではなく、特にγ-PGAを特定して、引用文献9と組み合わせる動機付けがあったと主張する根拠を弱めるものである。同様に、引用文献10および11もまた、亜鉛についてのデータを開示していない。
以下、上記主張(2)について検討する。
上記1(2)に説示したとおり、引用文献2には、ポリ-γ-グルタミン酸が小腸内でミネラルを可溶化させ、ミネラルの吸収を高めること、ミネラルとして亜鉛が挙げられることが記載されている。そして、引用文献2には、ポリ-γ-グルタミン酸が亜鉛の吸収を高めることがデータにより示されているわけではないが、本願明細書でも、ポリ-γ-グルタミン酸が亜鉛の吸収をどの程度促進させたのかについて、当業者が確認できるような試験結果は記載されていないのであるから、上記2のとおり、本願発明の効果が当業者の予測を超えて優れているということはできない。引用文献10、11についても同様である。
また、引用文献2には、図4および図5が存在しないから、審判請求人の図4および図5に関する主張は採用することができない。
(3)亜鉛およびγ-PGAを組み合わせ、所望の組成物をもたらす湿式顆粒化プロセスにこれを供することに基づく方法は、引用文献のいずれにも記載されていない。
以下、上記主張(3)について検討する。
審判請求人の主張するとおり、亜鉛およびγ-PGAを組み合わせ、所望の組成物をもたらす湿式顆粒化プロセスにこれを供することに基づく方法は、引用文献のいずれにも記載されていないが、引用発明(引用文献9に記載された発明)、及び引用文献2、9~11、18、周知文献A~Eに記載された事項から、本願発明を容易に想到しうることは、上記1、2において説示したとおりである。
4 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明(引用文献9に記載された発明)、及び引用文献2、9~11、18、周知文献A~Eに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献9に記載された発明及び引用文献2、9~11、18、周知文献A~Eに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-014349