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特許拒絶査定不服審判

2022-014301

癌を治療するための免疫調節剤と組み合わせた低酸素活性化型プロドラッグの投与

審判番号
2022-014301
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-506400外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月12日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2025年09月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
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事件の表示

特願2019-506400「癌を治療するための免疫調節剤と組み合わせた低酸素活性化型プロドラッグの投与」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日国際公開、WO2018/026606、令和 1年 9月26日国内公表、特表2019-527236〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続きの経緯

本願は、2017年(平成29年)7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年8月1日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。

平成31年 3月19日 特許協力条約34条補正の翻訳文提出書の提出

令和 3年 6月25日付け 拒絶理由通知書

令和 4年 1月 6日 意見書及び手続補正書の提出

同年 4月19日付け 拒絶査定

同年 9月12日 審判請求書及び手続補正書の提出

令和 6年 7月16日付け 拒絶理由通知書(当審)

令和 7年 1月23日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年1月23日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。なお、下線は補正された箇所を示す。

「【請求項1】
患者の癌を治療するための医薬品組み合わせ物であって、前記癌は、第一、第二または第三選択の治療に対して難治性であり、前記医薬品組み合わせ物は、治療的有効量のTH-302、ならびに、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2の阻害剤、および4-1BBの作動薬から選択される治療的有効量の免疫調節物質を含み、ここで、前記患者は、以前に免疫調節物質またはTH-302で治療されたが、治療にも関わらず癌が進行しているか、または癌の進行のために治療が中断されており、そして、前記TH-302および免疫調節物質の投与が、いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間を延長し、前記TH-302が1もしくは複数の投薬量サイクルにわたって投与されるものであり、それぞれのサイクルが、約320mg/m2未満の用量におけるTH-302の注入を含み、ここで、前記免疫調節物質は、1~3サイクルにわたり、1日目、4日目、7日目および13日目、16日目、19日目に腹腔内(i.p.)で与えられる、医薬品組み合わせ物。」

第3 拒絶の理由

当審が、令和6年7月16日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、「理由1(進歩性)」で通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。

この出願の請求項1~19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項、並びに、本願優先日における技術常識に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.Cancer Research, 2014, 74(19 Supplement), Abstract 629

2.特表2012-506448号公報

3.国際公開第2016/54555号

4.Journal of Immunotoxicology, 2012, Vol.9, No.3, p.241-247

5.Pharmaceutical Society of Japan,1997, Vol.33, No.1, p.46-50

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明

(1)引用文献1の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

当審における拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行された引用文献1(Cancer Research, 2014, 74(19 Supplement), Abstract 629)には、次の事項が記載されている(なお、引用文献1は英文のため、その記載事項は翻訳文で示す。下線は当審が付したものである。以下同様。)。

・記載事項1-1(標題)

「前立腺癌に対する低酸素特異的化学療法と免疫療法の併用」

・記載事項1-2(アブストラクト)

「腫瘍の低酸素状態は化学療法および放射線療法に対する抵抗性に寄与し、転移を促進する。低酸素状態は、腫瘍及び間質における免疫抑制シグナル伝達経路を活性化して抑制性骨髄細胞及びT細胞集団の発達を促進し、免疫エフェクター細胞にとって代謝的に不利な環境を作り出すことで、腫瘍の免疫抵抗性もサポートする可能性がある。TH-302は、腫瘍の低酸素性中心部でのみ活性化し、末梢では無害なままである、低酸素特異的化学療法薬である。TH-302とT細胞チェックポイント阻害薬の同時併用療法は、薬剤が中心部を殺し、抗原を放出し、抑制を減少させ、抗体が結果として活性化されたT細胞の増殖と保護を助けることで、内側から外側への腫瘍破壊を促進するという仮説を立てた。TRAMP-C2前立腺腺癌モデルでは、TH-302投与と併用したCTLA-4やPD-1の抗体阻害により、どちらか一方のみの療法よりもマウスの腫瘍拒絶率が有意に高まることが分かった。この併用療法により、前立腺癌微小環境内において、MDSCに対するエフェクターT細胞の比が比類なく有利になった。この免疫療法と低酸素症特異的化学療法の新たな組み合わせは、化学療法又は免疫療法のいずれか一方のみの場合よりも、はるかに多くの患者に、同等又はより少ない副作用で、強力な抗腫瘍反応をもたらす可能性がある。」

(2)引用文献1に記載された発明

引用文献1の記載事項1-1及び1-2の下線部によれば、前立腺腺癌モデルマウスに対する、TH-302と、T細胞チェックポイント阻害薬である抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体との併用療法により、マウスにおける腫瘍拒絶率が、どちらか一方のみの療法よりも有意に高まることが記載されている。ここで、TH-302と、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体を併用するということは、医薬品であるTH-302と、同じく医薬品である抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体を組み合わせることを意味する。そして、前立腺癌モデルマウスにおいて、腫瘍拒絶率が高まるということは、前立腺癌を拒絶する割合が高いということであるから、引用文献1には、前立腺癌モデルマウスにおいて、前立腺癌が治療されることが記載されているといえる。

そうすると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認める。

「前立腺癌を治療するための医薬品組み合わせ物であって、
前記医薬品組み合わせ物は、TH-302、並びに、抗CTLA-4抗体あるいは抗PD-1抗体を含み、
TH-302、並びに、抗CTLA-4抗体あるいは抗PD-1抗体の投与が、いずれかの一方の療法と比較して腫瘍拒絶率が有意に高まる、医薬品組み合わせ物。」(以下「引用発明1」という。)

2 引用文献2の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

当審における拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行された引用文献2(特表2012-506448号公報)には、次の事項が記載されている。

・記載事項2-1(特許請求の範囲)

「【請求項1】

TH-302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬とを、がん治療を必要とする患者に投与することを含むがんの処置方法であって、

TH-302は200mg/m2~500mg/m2の範囲の量で静脈内投与され、低酸素活性化型プロドラッグでない該抗がん薬の投与は、TH-302の投与が終了してから30分~8時間後に開始される、方法。

【請求項13】

前記TH-302が、各サイクルが週1回で連続3週間のTH-302の投与の後、1週間TH-302投与なしで構成される4週間サイクルで2回以上投与されるか、または各サイクルが週1回で連続2週間のTH-302の投与の後、1週間TH-302投与なしで構成される3週間サイクルで2回以上投与される、請求項1~12いずれかに記載の方法。

・記載事項2-2(【0072】)

「以下により詳細に記載するように、本発明の医薬製剤は、他の薬剤とともに共投与され得る。共投与は、本発明との関連において、1種類より多くの治療用薬剤を、臨床転帰の改善が得られるように、コーディネートされた処置過程で投与することを意味すると定義する。また、かかる共投与は、同延的(coextensive)に投与してもよい、すなわち、重複する期間中に行なってもよい。さらなる投与される薬剤は、任意の慣用的な形態であり得、注入液、治療用化合物、栄養液、抗微生物液、緩衝剤および安定化剤が挙げられ得る。治療用化合物としては、これとの関連において、限定されないが、抗新生物剤、アルキル化剤、レチノイドスーパーファミリーの構成員である薬剤、抗生物質剤、ホルモン剤、植物由来の薬剤、生物製剤、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、免疫調節剤、およびモノクローナル抗体が挙げられる。」

・記載事項2-3(【0104】)

「以下に論考するように、多種多様な充実性腫瘍および進行型充実性腫瘍は、かかる併用療法を用いて処置され得、多種多様な抗がん剤が、治療便益のためにTH-302と併用して投与され得る。例えば、臨床データにより、TH-302とゲムシタビンの併用は、ファーストライン膵臓がんにおいて注目に値する活性を有し、TH-302とドセタキセルまたはペメトレキセドの併用は、抗療性の非小細胞肺がん(NSCLC)において注目に値する活性を有することが示されている。TH-302とドキソルビシンの併用は、軟部組織肉腫において非常に有望である。」

・記載事項2-4(【0108】)

「本発明の併用療法の好ましい実施形態において、TH-302は、通常、IV注入によって、200mg/m2~500mg/m2の用量で投与される。例えば、一部の特定の実施形態では、別の抗がん剤と併用して投与される場合、TH-302は、約120mg/m2、240mg/m2、340mg/m2、400mg/m2、480mg/m2、および560mg/m2の量で投与される。用量は、一部において、どのようなTH-302以外の化学療法剤が使用されるか、ならびに患者の病状および処置対象のがんに依存する。TH-302+ゲムシタビンのMTDは340~400mg/m2であると予想され;TH-302+ドセタキセルのMTDは340mg/m2であり、TH-302+ペメトレキセドのMTDは480mg/m2であり;TH-302+ドキソルビシンのMTDは300mg/m2であると予想される(各々、非HAP薬物が、例えば後述する慣用的な用量で非同時発生的に投与される場合)。」

3 周知技術を示すための参考文献1(再公表特許WO2015/190538号)

本願優先日前である2015年6月10日に発行された参考文献1には、次の事項が記載されている。

・記載事項参1-1

「【0069】
実施例4:乳がん細胞に対する抗CD4抗体+免疫チェックポイント抗体併用での抗腫瘍効果
BALB/c系統マウス(雌、8週齢、n=10)の乳腺脂肪組織にマウス乳がん細胞株4T1(1x105 cells/mouse)を皮下移植した後、下記の通りに抗体投与を行なった(Day0=がん細胞移植日)。免疫チェックポイント抗体として、抗PD-1抗体(J43、アンタゴニスト性抗体、BioXcell社製)、抗PD-L1抗体(10F.9G2、BioXcell社製)を用いた。
【0070】
【表4】
[図:0001426142000001.jpg]
」

4 周知技術を示すための参考文献2(国際公開WO2016/111645号)

本願優先日前である2016年7月14日に発行された参考文献2には、次の事項が記載されている。

・記載事項参2-1(53頁5行~9行)

「 図21は、抗PD-L1抗体(またはアイソタイプ対照)の存在下または非存在下で、PD-1へのPD-L1の結合を調べる実験の結果を提示する(2つ組の平均±SD)。抗PD-L1抗体H12およびC4は、PD-L1のその受容体PD-1への結合をブロッキング可能である。H12およびC4の両方が、アテゾリズマブよりも高い効率で、PD-L1およびPD-1の間の相互作用をブロッキング可能であった。」

・記載事項参2-2(50頁18行~29行)

「 実施例9:H12抗体の予備的in vivo有効性
2つの腫瘍モデル:CT26細胞株を用いた結腸癌モデルおよびB16F10細胞株を用いた黒色腫モデルにおいて、H12を試験した。
Balb/CまたはC57BL/6マウスの左脇腹に、それぞれ、0.5x106 CT26または0.2x106 B16F10腫瘍細胞を第0日に接種し、そして第7日、第11日、第14日、第18日および第21日に、250μgのH12またはアイソタイプIgG1を腹腔内注射した。次いで、腫瘍増殖を分析し、ノギスでサイズを測定し、そして以下のように体積を計算した。V=I2xL/2(I=短い側およびL=長い側)。
図16Aおよび16Bは、両方のモデルにおける腫瘍接種後の腫瘍増殖を示す。H12は、両方のモデルにおいて、腫瘍増殖を阻害した。」

5 周知技術を示すための参考文献3(再公表特許WO2016/021720号)

本願優先日前である2016年2月11日に発行された参考文献3には、次の事項が記載されている。

・記載事項参3-1

「【0132】
〔実施例1:CT-26細胞を腹腔内投与したマウスの生存率に対する、抗CTLA-4抗体およびIL-18を含有する癌治療薬の効果〕
上記実験方法の(1)に記載したCT-26細胞について、細胞濃度5.0×104個/0.25mlの懸濁液を0.25ml、上記BALB/C野生型マウスの腹腔内に注射し、移植した。
【0133】
上記マウスは、治療薬として、対照としてのウサギIgG 100μgを投与する群;IL-18のみ2μgを投与する群;抗CTLA-4抗体のみ100μgを投与する群;抗CTLA-4抗体100μgおよびIL-18 2μgを投与する群、とに分け、各群は5匹のマウスから構成した。上記CT-26細胞を注射した日の3日後、7日後、10日後、14日後に、計4回、上記治療薬を腹腔内注射した。以下、全ての実施例において、実験は3回繰り返して行った。」

第5 当審における判断

1 対比

本願発明と引用発明1を対比すると次のことがいえる。

・引用発明1の「前立腺癌を治療するための医薬品組み合わせ物」は、本願発明の「患者の癌を治療するための医薬品組み合わせ物」に相当する。

・引用発明1の「抗CTLA-4抗体」、「抗PD-1抗体」は、それぞれ本願発明の「CTLA-4」「の阻害剤」、「PD-1」「の阻害剤」に相当する。

・引用発明1の医薬品組み合わせ物は、「腫瘍拒絶率が有意に高まる」という作用を有するものであるから、「抗CTLA-4抗体あるいは抗PD-1抗体」及び「TH-302」がそれぞれ「治療有効量」含まれていることは明らかである。

・引用発明1の医薬品組み合わせ物は、腫瘍拒絶率が有意に高いものであるところ、腫瘍を拒絶する割合が高いということは、「腫瘍体積倍加に必要な時間を延長」することであるともいえるから、引用発明1の「TH-302、並びに、抗CTLA-4抗体あるいは抗PD-1抗体の投与が、いずれかの一方の療法と比較して腫瘍拒絶率が有意に高まる」は、本願発明の「TH-302および免疫調節物質の投与が、いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間を延長し」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明1は、「患者の癌を治療するための医薬品組み合わせ物であって、前記医薬品組み合わせ物は、治療的有効量のTH-302、ならびに、(ii)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2の阻害剤である治療的有効量の免疫調節物質を含み、そして、前記TH-302および免疫調節物質の投与が、いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間を延長する、医薬品組み合わせ物」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>

本願発明では、「患者の癌」は「第一、第二または第三選択の治療に対して難治性であり」、「前記患者は、以前に免疫調節物質またはTH-302で治療されたが、治療にも関わらず癌が進行しているか、または癌の進行のために治療が中断されて」いることが特定されているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点

<相違点2>

本願発明では、「前記TH-302が1もしくは複数の投薬量サイクルにわたって投与されるものであり、それぞれのサイクルが、約320mg/m2未満の用量におけるTH-302の注入を含む」ことが特定されているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点

<相違点3>

本願発明では、「前記免疫調節物質は、1~3サイクルにわたり、1日目、4日目、7日目および13日目、16日目、19日目に腹腔内(i.p.)で与えられる」ことが特定されているのに対し、引用発明1ではそのような特定がない点

2 判断

(1)相違点について

上記相違点について検討する。

(ア)相違点1について

a 「第一、第二または第三選択の治療に対して難治性であり」について

抗腫瘍剤による治療に際しては、通常、承認済みの抗腫瘍剤から順に用い、その承認済みの抗腫瘍剤による効果が認められないときに他の抗腫瘍剤を用いるということが、本願優先日当時の一般的な臨床方針であったことが認められるところ、引用発明1における、TH-302と、T細胞チェックポイント阻害薬である抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体との併用治療を行うに際しても、第一選択~第三選択の治療剤に対して難治性である患者に対して用いることは、臨床現場の当業者がごく通常に行うことであったことである。

b 「前記患者は、以前に免疫調節物質またはTH-302で治療されたが、治療にも関わらず癌が進行しているか、または癌の進行のために治療が中断されて」について

TH-302単独、もしくは抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体といった免疫調節物質単独の処置がそれぞれ抗腫瘍作用を有することは、本願優先日当時における技術常識であるから、癌患者に対して、まず、TH-302単独又は抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体といった免疫調節物質単独による治療を行ったうえで、当該治療にも関わらず癌が進行しているか、または癌の進行のために治療が中断された患者を、一方の治療よりも治療効果が見込める併用療法の対象とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について

引用文献2には、TH-302と、低酸素活性化型プロドラッグでない治療有効用量の抗がん薬との併用療法において、TH-302は200mg/m2~500mg/m2の範囲の量で投与されること、TH-302は、複数サイクルにわたって投与されることが記載されている(記載事項2-1、2-4)。

そして、一般に、医薬品の開発においては、前臨床の動物実験の結果に基づき臨床試験を行うに際し、有害な副作用がなく、かつ治療効果が発揮される用量を、低用量から出発した用量漸増試験により決定することは、当然に行われることであって、引用発明1において、前臨床の動物実験により確認された有効性及び安全性の結果に基づき、患者への適用を試みるに際し、引用文献2に記載されたTH-302の用量を参考にしつつ、用量漸増試験を行って、患者における用量を実験的に最適化し、1回あたりの投与量を「約320未満/m2」と決定すること、そして、当該用量を複数のサイクルにわたって投与することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ)相違点3について

「免疫調整物質」である抗CTLA-4抗体(CTLA-4の阻害剤)、抗PD-1抗体(PD-1の阻害剤)又は抗PD-L1抗体(PD-L1の阻害剤)をマウスに投与するに際し、3~4日の投与頻度で腹腔内投与することは、本願優先日当時における周知技術であることを考慮すれば(要すれば、第4の3~5参照)、引用発明1において、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体の投与頻度、及び投与経路を「1~3サイクルにわたり、1日目、4日目、7日目および13日目、16日目、19日目に腹腔内(i.p.)で与えられる」と設定することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)本願発明の効果について

本願明細書には、本願発明の効果として、「データは、TH-302単独または免疫調節物質単独と共に、増殖遅延を生じたこと、およびTH-302と免疫調節物質の組み合わせにより、いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間が有意に延長されたことを実証した」と定性的に記載されているものの(実施例1参照)、どの程度の延長効果があったのかは具体的な定量的なデータをもって記載されていないところ、本願明細書に記載された「いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間が有意に延長された」という効果は、引用文献1に記載された「TH-302投与と併用したCTLA-4やPD-1の抗体阻害により、どちらか一方のみの療法よりもマウスの腫瘍拒絶率が有意に高まることが分かった」との記載から当業者が予測できるものに過ぎない。そして、上記したように、本願明細書には、どの程度の延長効果があったのかは具体的に記載されていないのであるから、本願発明は引用文献1の記載から予測し得ない程の顕著な効果を奏するものとは認められない。

また、本願明細書には、相違点1のように患者群を特定したことによる効果、相違点2のようにTH-302の用法用量を特定したことによる効果、及び相違点3のように免疫調節物質の用法を特定したことにより奏される効果も示されていない。

したがって、本願発明は、上記相違点1~相違点3に係る構成を採用したことにより、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものとは認められない。

(3)請求人の主張について

令和7年1月23日提出の意見書において、請求人は、本願明細書の実施例1には、本願発明に係る医薬品組み合わせ物により、いずれかの薬物単独と比較して、腫瘍体積倍加に必要な時間が有意に延長されたこと、TH-302活性が免疫調節物質との同時投与により有意に増強されること、及び免疫調節物質の同時投与により、異種移殖片におけるTH-302媒介性抗腫瘍活性が有意に増強されることが実証されており、当該実施例において示されたデータは、免疫調節物質が、TH-302などのHAPと組み合わせて投与されてより効果的な療法を提供する、癌の治療のための新規のアプローチを支持するものであるから、本願発明は進歩性を有する旨主張している。

しかしながら、上記(2)で説示したとおり、請求人の主張する効果は、引用文献1の記載から当業者が予測できるものに過ぎない。

また、請求人は、「当該実施例において示されたデータ」として、あたかも本願明細書の実施例にデータが示されている旨主張するが、本願明細書には、具体的なデータは何ら記載されていないうえ、意見書にも、請求人主張の効果を本願明細書の記載から推論し得ると認めるに足る具体的なデータが示されているわけでもないのであるから、本願発明は引用文献1の記載から予測し得ない程の顕著な効果を奏するものとは認められない。

よって、請求人の主張は採用することはできない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、並びに引用文献2に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-014301

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