特許拒絶査定不服審判
2022-013714
光照射型の美容器具
- 審判番号
- 2022-013714
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-070354外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月01日
- 審決日
- 2023年05月31日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マクセル株式会社
- 分類
- P18 .113-Z (A61N) / P18 .121-Z (A61N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 70354号「光照射型の美容器具」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月26日出願公開、特開2021-104406号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年 6月 6日に出願した特願2017-112018号の一部を、令和 3年 4月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
令和 3年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 5月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 4年 9月 1日 :審判請求書の提出
第2 本願発明について
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
本体ケースに設けられた投光ヘッドの内部に発光源が配置されており、
前記投光ヘッドの外面に設けられた投光部を肌面に密着させた状態で前記発光源を点灯させて、前記投光部から放射された光で肌面にむだ毛処理が施される光照射型の美容器具であって、
前記投光部の近傍に、肌面が接触したことを検知する人体センサが配置されており、
前記人体センサの検知結果に基づいて、前記発光源が自動的に点灯されるように構成されており、
前記人体センサによる肌面の検知後から発光源が点灯されるまでの間にユーザーに前記発光源が点灯することを予め合図する報知構造を備えていることを特徴とする光照射型の美容器具。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献2:特開2002-177405号公報
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ光を皮膚に照射して美肌、脱毛、育毛などのトリートメントを行うレーザ光照射プローブに関する。」
「【0008】図1~3に、本発明を実施したレーザ光照射プローブの正面図と横断面図および一部を切り欠いた側面図を示す。レーザ光照射プローブ1は、レーザ光の照射時間をタイマによって制御する制御回路と電源(図示しない)を内蔵し、ケース2の正面にヘッド部3を突設してその下方にLEDランプ5と押しスイッチ6を配置する。
【0009】押しスイッチ6は、1つのスイッチを操作して電源のオン・オフと照射時間の設定を行う。すなわち、始めに押しスイッチ6を押すと、電源がオンとなり、照射時間1秒が設定される。このときLEDランプ5が緑色点灯する。次に押しスイッチ6を押すと、照射時間2秒が設定され、LEDランプ5が緑色点滅する。さらに押しスイッチ6を押していくと、照射時間3~6秒が順次設定され、LEDランプ5が設定秒数に応じて橙色点灯、橙色点滅、赤色点灯、赤色点滅に切換わる。最後に押しスイッチ6をロングオン(1.5秒)すると、電源がオフとなる。照射時間の設定は、皮膚に一過性のダメージを与えないために、このようにタイマにごく短い1~6秒のカウント値を設定する。
【0010】ヘッド部3は、先端を開口して集光レンズである球レンズ7を挿嵌し、その後方にヘッド部3の先端に内接するヒートシンク8を設置する。ヒートシンク8は、軸心に通孔aを穿ってレーザダイオード9を挿嵌する。また、球レンズ7の外周にスクリューねじbを形成してアジャスタ10を着脱自在に取付ける。
【0011】そして、マイクロスイッチ、圧力センサ、ひずみゲージなどの接触センサ4をアジャスタ10の先端に取付けて皮膚面との接触を検出する。」
「【0016】本発明のレーザ光照射プローブは以上のような構成で、トリートメントを行うときは、まず、押しスイッチ6を押して電源をオンにする。そして、次にアジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てる。アジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯する。そして、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す。
【0017】アジャスタ10の先端を皮膚Aから離すと、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面から外れたことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が消灯し、レーザ光の照射が停止する。」
「【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のレーザ光照射プローブは、レーザ光を照射する皮膚面との接触を検出する接触センサをアジャスタの先端に備え、接触センサが皮膚面との接触を検出したときだけレーザ光を照射する。このレーザ光を照射する際に、アラームで報知してもよい。従って、本発明によれば、アジャスタがレーザ光源と皮膚との間の距離を一定に保ち、集光レンズで集光したレーザ光のビームウエストがちょうど皮膚面にくる。また、接触センサが安全装置として働いて離れた場所へのレーザ光の照射を抑止するので、誤ってレーザ光を目に入れるような事故に対して特に有効である。また、プローブを離すと接触センサが皮膚面との接触を検出せず、照射スイッチがオフになるので、自動的にレーザ光の照射を停止され、とっさの場合に安全である。また、レーザ光を照射するときはアラームを報知して注意を促すので、レーザ光の照射を容易に確認できて便利である。」
引用文献2には、以下の図が記載されている。
【図1】
[図:0001400221000001.jpg]
【図2】
[図:0001400221000002.jpg]
【図3】
[図:0001400221000003.jpg]
2 引用文献2からの認定事項
(1)段落【0010】の「ヘッド部3は、先端を開口して集光レンズである球レンズ7を挿嵌し、その後方にヘッド部3の先端に内接するヒートシンク8を設置する。ヒートシンク8は、軸心に通孔aを穿ってレーザダイオード9を挿嵌する。」なる記載を踏まえて、図3をみると、ヘッド部3の内部にレーザダイオード9が配置されていることが看取できる。
(2)段落【0010】の「また、球レンズ7の外周にスクリューねじbを形成してアジャスタ10を着脱自在に取付ける。」なる記載を踏まえて、図3をみると、アジャスタ10が、ヘッド部3の外面に設けられ、球レンズ7の外周に取付けられていることが看取できる。
3 引用発明
上記1及び2から、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ケース2の正面に突設したヘッド部3の内部にレーザダイオード9が配置されており、
ヘッド部3の外面に設けられ、球レンズ7の外周に取付けられたアジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す、レーザ光を皮膚に照射して脱毛を行うレーザ光照射プローブであって、
接触センサ4をアジャスタ10の先端に取付けて皮膚面との接触を検出し、
レーザ光を照射するときはアラームを報知して注意を促すレーザ光照射プローブ。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「ケース2」は、その作用及び構造から、本願発明の「本体ケース」に相当し、以下同様に、「ヘッド部3」は「投光ヘッド」に、「レーザダイオード9」は「発光源」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「ケース2の正面に突設したヘッド部3の内部にレーザダイオード9が配置されて」いることは、本願発明の「本体ケースに設けられた投光ヘッドの内部に発光源が配置されて」いることに相当する。
2 引用発明の「アジャスタ10」は、「球レンズ7の外周に取付けられた」ものであるから、本願発明の「投光部」に相当し、以下同様に、「皮膚Aに押し当てる」ことは「肌面に密着させた状態」であることに、「レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す」ことは「発光源を点灯させ」ることに、それぞれ相当する。
以上を総合すると、引用発明の「ヘッド部3の外面に設けられ、球レンズ7の外周に取付けられたアジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す」ことは、本願発明の「前記投光ヘッドの外面に設けられた投光部を肌面に密着させた状態で前記発光源を点灯させ」ることに相当する。
3 引用発明の「レーザ光を皮膚に照射して脱毛を行うレーザ光照射プローブ」は、「球レンズ7の外周に取付けられたアジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると」、「レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返」して脱毛を行うから、上記2も踏まえると、本願発明の「前記投光部から放射された光で肌面にむだ毛処理が施される光照射型の美容器具」に相当する。
4 引用発明の「皮膚面に接触したことを検知」する「接触センサ4」は、本願発明の「肌面が接触したことを検知する人体センサ」に相当する。
よって、上記2も踏まえると、引用発明の「接触センサ4をアジャスタ10の先端に取付けて皮膚面との接触を検出」することは、本願発明の「前記投光部の近傍に、肌面が接触したことを検知する人体センサが配置されて」いることに相当する。
5 引用発明の「アジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す」ことは、接触センサ4の検知結果に基づいて、レーザダイオード9が自動的に点灯されるように構成されていることと表現できるから、上記4も踏まえると、本願発明の「前記人体センサの検知結果に基づいて、前記発光源が自動的に点灯されるように構成されて」いることに相当する。
6 引用発明の「アジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す」、「レーザ光を照射するときはアラームを報知して注意を促すレーザ光照射プローブ」であることと、本願発明の「前記人体センサによる肌面の検知後から発光源が点灯されるまでの間にユーザーに前記発光源が点灯することを予め合図する報知構造を備えている」こととは、人体センサによる肌面の検知後にユーザーに発光源が点灯することを合図する報知構造を備えているという限りにおいて一致する。
7 以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「本体ケースに設けられた投光ヘッドの内部に発光源が配置されており、
前記投光ヘッドの外面に設けられた投光部を肌面に密着させた状態で前記発光源を点灯させて、前記投光部から放射された光で肌面にむだ毛処理が施される光照射型の美容器具であって、
前記投光部の近傍に、肌面が接触したことを検知する人体センサが配置されており、
前記人体センサの検知結果に基づいて、前記発光源が自動的に点灯されるように構成されており、
前記人体センサによる肌面の検知後にユーザーに前記発光源が点灯することを合図する報知構造を備えている光照射型の美容器具。」
【相違点】
本願発明は、報知構造による合図が、「前記人体センサによる肌面の検知後から発光源が点灯されるまでの間にユーザーに前記発光源が点灯することを予め合図する」ものであるのに対し、引用発明は、レーザ光が照射されるまでの間に、レーザ光が照射されることを予め合図するものであるか、明らかでない点。
上記相違点について検討する。
引用発明は「接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯」するから、「ピィ音あるいは音声による警告」はアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知した後に行われるものである。
そして、引用発明は「レーザダイオード9が既定の1秒間点灯し、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す」から、上記「ピィ音あるいは音声による警告」は、アジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知した後に、これからレーザダイオード9が繰り返し照射されることを、予め合図するものといえる。
よって、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。
また、そうとまでいえないとしても、一般に、危険な事象が生じる前に、警報を発することで、危険な事象が生じることを予め合図することは、普通に行われていることにすぎない。
そして、引用文献1の段落【0002】には、発明が解決しようとする課題として「レーザ光を直接目に入れたりすると大変危険である。」と、レーザ光の照射が危険な事象であることが記載されており、引用発明は「接触センサ4をアジャスタ10の先端に取付けて皮膚面との接触を検出し、レーザ光を照射するときはアラームを報知して注意を促す」ものであるから、アラームを報知するタイミングを、危険な事象であるレーザ光が照射される前、すなわち、レーザ光が照射されるまでの間に、レーザ光が照射されることを予め合図するようにすることは、当業者が格別の創意を要することなく容易になし得た程度のことである。
8 したがって、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである、又は、本願発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第6 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.本願請求項に係る発明が特許されるべき理由」の「(2)本願発明と引用発明との対比」の項目において、引用文献2には「レーザ光は手動スイッチで照射させるのか、自動的に照射させるのかが一切不明です。」と主張する。
しかしながら、引用文献2の段落【0009】には「押しスイッチ6は、1つのスイッチを操作して電源のオン・オフと照射時間の設定を行う。すなわち、始めに押しスイッチ6を押すと、電源がオンとなり、照射時間1秒が設定される。このときLEDランプ5が緑色点灯する。次に押しスイッチ6を押すと、照射時間2秒が設定され、LEDランプ5が緑色点滅する。さらに押しスイッチ6を押していくと、照射時間3~6秒が順次設定され、LEDランプ5が設定秒数に応じて橙色点灯、橙色点滅、赤色点灯、赤色点滅に切換わる。最後に押しスイッチ6をロングオン(1.5秒)すると、電源がオフとなる。照射時間の設定は、皮膚に一過性のダメージを与えないために、このようにタイマにごく短い1~6秒のカウント値を設定する。」と記載されており、まず、押しスイッチ6により電源のオンと、照射時間の長さの設定を行うことが理解できる。
そして、段落【0016】に「・・・、トリートメントを行うときは、まず、押しスイッチ6を押して電源をオンにする。そして、次にアジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てる。アジャスタ10の先端を皮膚Aに押し当てると、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が点灯し、レーザダイオード9が既定の1秒間点灯する。そして、その後1秒間休止し、以降はこの照射と休止を繰り返す。」と記載され、さらに、段落【0017】に「アジャスタ10の先端を皮膚Aから離すと、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面から外れたことを検知し、ピィ音あるいは音声による警告が表示されてLEDランプ5が消灯し、レーザ光の照射が停止する。」と記載されているから、接触センサ4がアジャスタ10の先端が皮膚面に接触したことを検知して、自動的にレーザダイオード9が点灯すると理解できる。
よって、上記第5の5でも述べたとおり、引用文献2には、接触センサ4(人体センサ)の検知結果に基づいて、レーザダイオード9(発光源)が自動的に点灯されることが記載されているから、上記請求人の主張は採用することができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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