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特許拒絶査定不服審判

2022-012253

封入容器の製造方法及び製造装置

審判番号
2022-012253
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-546252外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月05日
審決日
2023年08月16日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-546252「封入容器の製造方法及び製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日国際公開、WO2018/074261〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、2017年(平成29年)10月 6日(優先権主張 平成28年10月17日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 6月 2日付け:拒絶理由通知書 令和 3年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出 令和 3年11月16日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 4年 1月 7日 :意見書の提出 令和 4年 1月27日付け:拒絶理由通知書 令和 4年 4月 6日 :意見書の提出 令和 4年 4月19日付け:拒絶査定 令和 4年 8月 5日 :審判請求書の提出 令和 4年12月27日付け:拒絶理由通知書 令和 5年 3月 2日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、令和 5年 3月 2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形するとともに、前記蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して接着する封入容器の製造方法であって、 前記シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有し、 前記蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、ポリビニルピロリドン、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを、エタノールまたは水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し、前記接着層に使用される溶媒が前記カップに収めた内容物を変質させたり菌の繁殖を招いたりする問題を回避するために乾燥させることで前記接着層を構成する、方法。」 第3 当審における拒絶の理由 当審が通知した令和 4年12月27日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、次の理由を含むものである。 請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特表2004-537351号公報 引用文献2:国際公開第2008/129730号 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1) 当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である特表2004-537351号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(「…」は省略を表し、下線は当審が付与した。以下同様である。)。 ア 「【0001】 この発明はタブレットのエンロビングに関し、それによって、好適な、摂取可能な材料を伴ったたとえば薬物、ビタミン、食餌サプリメントなどの摂取可能なタブレットを被覆することにより、それらのタブレットは不正に手が加えられるとそれがはっきりとわかるようになり、つまり、タブレットに対してたとえば内容物に対して混入を行なうことによって不正に手を加えようとするどのような試みもそのコーティングに対し容易に視覚的に明らかである損傷を与える結果となるようなタブレットのエンロビングに関する。この発明は他の固形の薬物など、たとえばキャプレッツおよびカプセルなどに対してもタブレットとならんで適用可能であるが、簡潔にするため、すべてのそのような形態を概してここではタブレットと呼ぶことにする。」 イ 「【0006】 …さらなる、一般に好まれる可能性は、熱可塑性材料(たとえば加熱で可塑的に変形する能力がある材料)からなる膜を用いることであり、その膜は、熱により軟化された状態になるように加熱され、その後真空にさらされることによって熱成形される。好適な熱可塑性材料は修飾されたセルロース材料、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ペクチン、アルギナート、でんぷん、および修飾されたでんぷん、ならびにさらにタンパク質膜、たとえば大豆およびホエータンパク質膜などを含む。現在好まれている膜材料はHPMCである。好適な膜材料が市場で入手可能である。」 ウ 「【0017】 図1~図9はタブレットをこの発明に従い熱可塑性膜を真空成形技術において用いながらエンロビングする方法を概略的に示す。実際には、複数のタブレットからなるアレイが一般的に、同時にコーティングされるが、簡単にするため、1つのタブレット10のみをこれらの図面において示す。 【0018】 図1に示されるように、タブレット10は円形の対称形状であり、概ね円形の円筒形側壁部12ならびに2つの同様の部分的に球状の上下部14および16を含む。 【0019】 図1において、タブレット10はプラテンまたは支持部18上にあるように示されているが、これはタブレットの下部16(およびタブレット上部14)に対し相補的であるよう形状化された窪み20を含む。」 エ 「【0021】 支持部18は下側チャンバ部26から上方向にチャンバのキャビティ内に向かって延びる2つの細長い突起34、36上にある。概略的に38で示される加熱可能なプレートが上側チャンバ部24にある。シート40状のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜80ミクロンの厚みが上側チャンバ部と下側チャンバ部との間にあり、適所に封止28とチャンバ部との間に捕捉され固定され、そこから外方向に延びている。このHPMC膜は77重量%のHPMC、23重量%の乳酸可塑剤を含む。 【0022】 装置の使用に際し、プレート38は150~200℃の範囲、典型的には約180℃の温度に加熱される。真空引きを次いで上側チャンバにおいて、真空ポート30を真空ポンプに接続することにより行ない、一方、真空ポート32は大気中に対し開いたままにされる。結果として得られる圧力差は膜40を引いて加熱されたプレート38の下側表面に図3に示されるように接触させるという効果を有する。 【0023】 真空引きを次いで下側チャンバにおいて、真空ポート32を真空ポンプに接続することにより行ない、一方、上側チャンバにおける真空は維持されている。下側チャンバが十分に排気され膜40が(一般的には、加熱されたプレート38との接触状態で約5秒後)プレート38の影響により熱形成するために正しい温度になると、空気を再び上側チャンバに対し、真空ポート30を大気に対して開くことにより入れる。結果として得られる圧力差は、熱軟化状態である膜40を図4に示すようにタブレット10の上面および側面上に引き下ろすという効果を有する。空気が下側チャンバにないため、膜は正確にタブレットの輪郭に一致する。 【0024】 真空成形が完成する(一般には約10秒後)と、空気を再び下側チャンバに入れて真空チャンバを開く。 【0025】 HPMC膜の真空成形ウェブおよびタブレット(ウェブ内に保たれる)をプラテン18上においてチャンバから取除く。 【0026】 タブレットは、図5に示されるように、膜ウェブから、ぴったりと適合する中空の円筒形の刃42を用いて切出される。この結果、半分エンロビングされたタブレットが、図6および図6Aに示されるように、上部14および円筒形の側壁部12の一部が膜44によってタブレットの中央面の僅かに下の点まで覆われる状態で与えられる。」 オ 「【0027】 半分エンロビングされたタブレットは、図7に示されるように、プラテン18上に反転された状態で戻され、エンロビングされた部分は窪み20に接している。 【0028】 プラテン18は真空チャンバに戻され、HPMC膜からなるさらなるシート46が上側チャンバ部と下側チャンバ部との間に、上述したシート40と同様の態様で位置する。真空成形プロセスを上で図3および図4を参照して説明したように繰返し、その結果得られたHPMC膜の真空成形ウェブおよびタブレットをチャンバからプラテン18上において取除く。 【0029】 タブレットは、膜ウェブから、刃42よりも僅かに大きな直径のぴったり適合する中空の円筒形の刃48を用いて図8に示されるように切出される。この結果、タブレットは、図9および図9Aに示されるように、膜からなる2つの層44および46によって、周方向に重なった封止を伴った状態で、十分に封入されエンロビングされる。」 カ 「【0030】 効果的な封止を重なっている膜の層間において達成するために、糊をその重なっている表面のうちの少なくとも一方(たとえばタブレットの側壁部12をコーティングしている膜44の円筒形部の外側表面)に第1の真空成形プロセス後および第2の真空成形プロセス前に塗布する。この糊はHPMC膜と同じ化学組成のものであるが、但しより大きな割合の可塑剤を伴い、HPMC4重量%、乳酸77重量%および水19重量%を含む。糊は好都合にはローラまたは噴霧により塗布される。」 キ 「 [図:0001403291000001.jpg] 」 ク 「 [図:0001403291000002.jpg] 」 ケ 「 [図:0001403291000003.jpg] 」 コ 「 [図:0001403291000004.jpg] 」 サ 「 [図:0001403291000005.jpg] 」 シ 「 [図:0001403291000006.jpg] 」 (2) 上記(1)から、以下の点が理解できる。 ア まず、上記(1)エ、キ、ク及びケによれば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜であるシート40を(段落【0021】)、加熱されたプレート38の下側表面に接触させ(段落【0022】)、その後、真空引きを行いタブレット10の上面及び側面上に引き下ろし、シート40が正確にタブレットの輪郭に一致し(段落【0023】)、真空成形を完成し(段落【0024】)、その後、中空の円筒形の刃42を用いて切出すことにより、上部14及び円筒形の側壁部12の一部が層44に覆われる状態である半分エンロビングされたタブレット10が与えられる(段落【0026】)。 次に、上記(1)エ、オ、コ、サ及びシによれば、前記半分エンロビングされたタブレット10は、エンロビングされた部分が窪み20に接するように、プラテン18上に反転された状態で戻され(段落【0027】)、その後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜からなるシート46を、前記シート40と同様の態様で真空成形し(段落【0028】)、その後、中空の円筒形の刃48を用いて切出した結果、前記タブレット10は、膜からなる2つの層44及び46によって周方向に重なった封止を伴った状態で十分に封入されエンロビングされる(段落【0029】)。 イ 上記(1)イ及びウによれば、タブレット10をエンロビングするのに用いるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜は、熱可塑性である。 ウ 上記(1)カによれば、効果的な封止を重なっている層44及び46の間において達成するために、糊をその重なっている表面のうちの少なくとも一方(たとえばタブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面)に塗布する。 (3) 上記(1)及び(2)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「円筒形側壁部12並びに2つの同様の部分的に球状の上部14及び下部16を含む薬物のタブレット10が、前記下部16及び前記上部14に対し相補的であるよう形状化された窪み20を含むプラテン18上にある状態で、77重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、23重量%の乳酸可塑剤を含む熱可塑性のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜であるシート40を、加熱されたプレート38の下側表面に接触させ、その後、真空引きを行い前記タブレット10の上面及び側面上に引き下ろし、シート40が正確にタブレットの輪郭に一致し、真空成形を完成し、その後、中空の円筒形の刃42を用いて切出すことにより、前記上部14及び前記円筒形側壁部12の一部が層44に覆われる状態である半分エンロビングされたタブレット10が与えられ、次に、前記半分エンロビングされたタブレット10を、エンロビングされた部分が前記窪み20に接するように前記プラテン18上に反転された状態で戻し、その後、熱可塑性のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜からなるシート46を、前記シート40と同様の態様で真空成形し、その後、中空の円筒形の刃48を用いて切出すことにより、前記タブレット10を、膜からなる2つの層44及び46によって周方向に重なった封止を伴った状態で十分に封入しエンロビングする方法であって、効果的な封止を重なっている層44及び46の間において達成するために、糊をその重なっている表面のうちの少なくとも一方(たとえばタブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面)に塗布する方法。」 2 引用文献2 (1) 当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である国際公開第2008/129730号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 ア 「[0021] 本発明の製造方法により得られる経口投与剤の一例の断面図を図1に示す。 図1中、Aは、薬物1と、薬物1の一方の側に直接積層された第一の水膨潤性ゲル形成層2aと、薬物1の他方の側に直接積層された第二の水膨潤性ゲル形成層2bとからなる経口投与剤である。Bは、薬物1と、薬物1の一方の側に直接積層された第一の水膨潤性ゲル形成層2aと、薬物1の他方の側に接着剤層3bを介して積層された第二の水膨潤性ゲル形成層2bとからなる経口投与剤である。Cは、薬物1と、薬物1の一方の側に接着剤層3aを介して積層された第一の水膨潤性ゲル形成層2aと、薬物1の他方の側に直接積層された第二の水膨潤性ゲル形成層2bとからなる経口投与剤である。また、Dは、薬物1と、薬物1の一方の側に接着剤層3aを介して積層された第一の水膨潤性ゲル形成層2aと、薬物1の他方の側に接着剤層3bを介して積層された第二の水膨潤性ゲル形成層2bとからなる経口投与剤である。 [0022](I)経口投与剤A及びBの製造方法 図1の経口投与剤A及びBの製造方法の工程断面図を図2に示す。以下、図2を参照しながら、本発明の経口投与剤A及びBの製造方法を説明する。 [0023][工程(a1)] 工程(a1)では、図2(a1)に示すように、支持体10上に第一の水膨潤性ゲル形成層2aを形成する。」 イ 「[0030] 水膨潤性ゲル形成層には、水膨潤性ゲル形成層のフィルム形成性を向上させるために、フィルム形成剤を含有させることができる。」 ウ 「[0032] これらの中でも、水溶性のフィルム形成剤が好ましい。フィルム形成剤が水溶性であると、水膨潤性ゲル形成層に水分が浸入しやすくなり、口腔内において水膨潤性ゲル形成層の膨潤及びゲル形成を速やかに生じさせることができる。 [0033] 水溶性のフィルム形成剤としては、ポリビニルアルコール;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;メチルセルロース;ポリビニルピロリドン等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコールは、後述するマスキング剤としての役割も果たすので特に好ましい。 [0034] フィルム形成剤の含有量は、特に限定されないが、通常、形成される水膨潤性ゲル形成層の30~85重量%である。」 エ 「[0046][工程(b1)] 工程(b1)では、図2(b1)に示すように、水膨潤性ゲル形成層2aの所定部分に凹部を形成する。」 オ 「[0053][工程(c1)] 工程(c1)では、図2(c1)に示すように、前記形成した凹部内に薬物1を充填することにより薬物充填体を得る。」 カ 「[0061][工程(d1)] 工程(d1)では、前記薬物充填体上に、直接又は接着剤層を介して、水膨潤性ゲル形成層2bを形成し、前記凹部の周縁部を接合する。 [0062] この工程により得られる状態図を、図2(d1-i)、(d1-ii)に示す。図2(d1-i)は、工程(c1)で得られた薬物充填体上に、直接に、水膨潤性ゲル形成層2bを形成し、前記凹部の周縁部を接合して(工程(d1-i))得られた構造体である。 [0063] 図2(d1-ii)は、工程(c1)で得られた薬物充填体上に、接着剤層3bを介して、水膨潤性ゲル形成層2bを形成し、前記凹部の周縁部を接合して(工程(d1-ii))得られた構造体である。 これらの中でも、工程(d1)としては、より接着力が強固となることから、工程(d1-ii)が好ましい。」 キ 「[0068] 工程(d1-ii)において、接着剤層3bの形成に用いる接着剤としては、薬学的に許容され得る接着剤であれば、特に限定されない。例えば、溶媒を含んだ状態で用いることによって接着性を示す接着剤、加熱によって接着性を示す(すなわち熱融着可能な)接着剤等が挙げられる。これらの接着剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。」 ク 「[0070] 熱融着可能な接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン等のホモポリマー;酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマー;等が挙げられる。」 ケ 「[0078]…ここで、水膨潤性ゲル形成層2bの形成に用いる水膨潤性ゲル形成層形成用組成物としては、前記水膨潤性ゲル形成層2aの形成に用いることができるものと同様のものが挙げられる。 [0079] 工程(d1-ii)において、接着剤層3bを介して、水膨潤性ゲル形成層2bを形成し、前記凹部の周縁部を接合する方法としては、以下の(γ)、(δ)の方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 [0080](γ)接着剤層形成用組成物を、前記薬物充填体の薬物が露出している側上に接着剤層形成用組成物の塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥して接着剤層3bを形成し、次いで、形成した接着剤層3b上に水膨潤性ゲル形成層形成用組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥して水膨潤性ゲル形成層2bを形成する方法、 (δ)別途支持体を用意し、該支持体上に、水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した積層体を製造し、該積層体の接着剤層3b側を、前記薬物充填体の薬物が露出している側上に熱ラミネートし、後に支持体を剥離する方法 [0081] これらの方法の中でも、熱履歴がより少なく、薬物の劣化がより少なくてすむ観点から、(δ)の方法が好ましい。」 コ 「[0132](b)接着剤層の形成 精製水300gに、撹拌下、ポリビニルピロリドン(PVP K-90、アイエスピー・ジャパン社製)91.00gをゆっくりと添加し、1時間撹拌した。次に、ここにグリセリン9.00gを添加し、10分間撹拌することにより塗工液Bを調製した。 [0133] 塗工液Bを十分に脱泡し、乾燥後の塗布量が10g/m2となるようにギャップを調整したアプリケーターを用いて、上記で形成した水膨潤性ゲル形成層上に展延塗布し、得られた塗膜を80℃で5分間乾燥して接着剤層を形成した。 この接着剤層上に、保護フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(SP-PET3811、リンテック製)をラミネートした。 [0134](c)エンボス加工 前記(b)で得られたフィルムの保護フィルム上を、図6に示すようなエンボスロールを用いてエンボス加工して、15mmφ、深さ0.5mmの凹部(エンボス)を複数作製した。 [0135](d)薬物充填 前記(c)で得られたフィルムの保護フィルムを剥がし、凹部(エンボス部分)にファモチジン(抗潰瘍薬)の粉末を10mg充填した。 [0136](e)ラミネート 前記(a)及び(b)工程と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に水膨潤性ゲル形成層及び接着剤層が形成されたフィルムを作製した。 このフィルムを、前記(d)で得られた薬物が充填されたフィルム上に、100℃、9.8×kgf/cm2、2秒間、熱ラミネートした。」 サ 「[図1] [図:0001403291000007.jpg] 」 シ 「[図2] [図:0001403291000008.jpg] 」 (2) 上記(1)から、以下の点が理解できる。 ア 上記(1)ア、エ、オ、カ、ケ、サ及びシより、経口投与剤Bは、水膨潤性ゲル形成層2aに形成された凹部内に薬物1を充填することにより薬物充填体を得て(段落[0046]及び[0053])、水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した積層体を製造し、該積層体の接着剤層3b側を、前記薬物充填体の薬物が露出している側上に熱ラミネートする(段落[0080])ことにより製造される。 イ 上記(1)イ、ウ及びケより、水膨潤性ゲル形成層2bは、水溶性のフィルム形成剤として、形成される水膨潤性ゲル形成層2bの30~85重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。 ウ 上記(1)キ及びクより、接着剤層3bの形成に用いる接着剤として、ポリビニルピロリドンが挙げられる。また、ポリビニルピロリドンを用いた接着剤層3bは、上記(1)コによれば、精製水300gに、撹拌下、ポリビニルピロリドン91.00gをゆっくり添加して1時間撹拌し、ここにグリセリン9.00gを添加し、10分間撹拌することにより調製した塗工液Bを、水膨潤性ゲル形成層2b上に展延塗布し、得られた塗膜を80℃で5分間乾燥することにより形成する。 (3) 上記(1)及び(2)を踏まえると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「水膨潤性ゲル形成層2aに形成された凹部内に薬物1を充填することにより薬物充填体を得て、水溶性のフィルム形成剤として、形成される水膨潤性ゲル形成層2bの30~85重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した積層体を製造し、該積層体の接着剤層3b側を、前記薬物充填体の薬物1が露出している側上に熱ラミネートする経口投与剤Bの製造方法において、前記接着剤層3bを、精製水300gに、撹拌下、ポリビニルピロリドン91.00gをゆっくりと添加して1時間撹拌し、ここにグリセリン9.00gを添加し、10分間撹拌することにより調製した塗工液Bを、水膨潤性ゲル形成層2b上に展延塗布し、得られた塗膜を80℃で5分間乾燥することにより形成し、水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した積層体を作製すること。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明との対比 (1) 引用発明の「薬物のタブレット10」であって「前記上部14及び前記円筒形側壁部12の一部が層44に覆われる状態である半分エンロビングされたタブレット10」は、上部14及び円筒形側壁部12の一部が層44に覆われ、下部16及び前記円筒形側壁部12の他部は前記層44に覆われていない状態である。この点は、上記第4の1(1)ケからも看取される。してみると、引用発明の該「薬物のタブレット10」は本願発明の「内容物」に相当し、以下同様に該「層44」は「内容物が収められたカップ」に、「層44の」の「円筒形側壁部12」の他部側の開口は「カップの開口部」にそれぞれ相当する。 (2) 引用発明の「シート46を、前記シート40と同様の態様で真空成形」することは、シート40と同様の態様であるから、シート46を、「加熱されたプレート38の下側表面に接触させ、その後、真空引きを行い」、「上部14及び円筒形側壁部12の一部が層44に覆われる状態である半分エンロビングされたタブレット10」「に引き下ろし」、シート46が「正確にタブレットの輪郭に一致」することである。 また、引用発明において、「前記上部14及び前記円筒形側壁部12の一部が層44に覆われる状態である半分エンロビングされたタブレット10」は、前述のシート46の真空成形及び「その後、中空の円筒形の刃48を用いて切出すこと」を経て、「膜からなる2つの層44及び46によって周方向に重なった封止を伴った状態で十分に封入しエンロビング」された状態となる。そして、前記「膜からなる2つの層44及び46」のうち「層46」は、半分エンロビングされたタブレット10に引き下ろし、正確にタブレットの輪郭に一致したシート46から形成されたものであることは明らかである。 してみると、上記(1)も踏まえると、引用発明の「シート46」は本願発明の「内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料」及び「シート」に相当し、以下同様に「層46」は「蓋」に、「シート46を、前記シート40と同様の態様で真空成形し、その後、中空の円筒形の刃48を用いて切出すこと」は「カップを覆う蓋を成形する」ことに、「2つの層44及び46」は「封入容器」に、「タブレット10を、膜からなる2つの層44及び46によって周方向に重なった封止を伴った状態で十分に封入しエンロビングする方法」は「封入容器の製造方法」にそれぞれ相当する。 (3) 引用発明では、「効果的な封止を重なっている層44及び46の間において達成するために」糊を塗布する「重なっている表面のうちの少なくとも一方」として、「タブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面」が例示されている。また、引用発明の「層44」と「層46」とは、「周方向に重なった封止を伴った状態」である。したがって、引用発明は、糊をタブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面又は前記外側表面に周方向に重なる層46の円筒形部の内側表面の少なくとも一方に塗布し、糊によって、前記層46の円筒形部の内側表面が前記層44の円筒形部の外側表面に対して接着することは明らかである。 してみると、引用発明の「タブレットの側壁部12をコーティングしている膜44の円筒形部の外側表面」は本願発明の「カップの周壁の外面」に相当し、以下同様に「層46」の円筒形部の内側表面は「蓋の周壁の内面」に相当する。また、引用発明の「効果的な封止を重なっている層44及び46の間において達成するために、糊をその重なっている表面のうちの少なくとも一方(たとえばタブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面)に塗布」し「タブレット10を、膜からなる2つの層44及び46によって周方向に重なった封止を伴った状態で十分に封入しエンロビングする」ことは本願発明の「蓋の周壁の内面をカップの周壁の外面に対して接着する」ことに相当する。さらに、上記(2)で述べたように、引用発明の「層46」は「シート46」から形成されたものであることは明らかであるから、引用発明の「シート46」と本願発明の「シート」とは、「カップの周壁の外面に密接する内面となる側を有するシート」の限りで一致する。 (4) 引用発明の「シート46」は、「熱可塑性のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜からなる」ものであり、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)」が水溶性の高分子材料であることは、本願の優先日における技術常識であるから(引用文献2には、上記第4の2(1)ウでも摘記したように、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」が水溶性であることが記載されている。)、引用発明の「シート46」と本願発明の「シート」とは、「熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルム」を有する限りで一致する。 2 一致点 上記1を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 「内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側を有するシートから、カップを覆う蓋を成形するとともに、前記蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して接着する封入容器の製造方法であって、 前記シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムを有する方法。」 3 相違点 上記1及び2を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。 本願発明では、蓋の材料であるシートは、カップの周壁の外面に密接する内面となる側に「予め接着層が設けられて」おり、「接着層とを有し」、「前記蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、ポリビニルピロリドン、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを、エタノールまたは水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し、前記接着層に使用される溶媒が前記カップに収めた内容物を変質させたり菌の繁殖を招いたりする問題を回避するために乾燥させることで前記接着層を構成する」のに対し、引用発明では、「第1の真空成形プロセス後及び第2の真空成形プロセス前に、効果的な封止を重なっている層44及び46の間において達成するために、糊をその重なっている表面のうちの少なくとも一方(たとえばタブレットの側壁部12をコーティングしている層44の円筒形部の外側表面)に塗布する」ものである点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について検討する。 引用文献2には、上記第4の2(3)で述べた引用文献2技術事項が記載されている。ここで、引用文献2技術事項の「水膨潤性ゲル形成層2a」は凹部が形成されているから本願発明の「カップ」に相当し、以下同様に「薬物1」は「内容物」に、「積層体」は「内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料」及び「シート」に、「水溶性のフィルム形成剤として30~85重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む水膨潤性ゲル形成層2b」は「熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルム」に、「接着剤層3b」は「接着層」に、「精製水」は「水」に、「熱ラミネートする」は「接着する」にそれぞれ相当する。 また、引用文献2技術事項の「水膨潤性ゲル形成層2aに形成された凹部内に薬物1を充填することにより薬物充填体を得て」、「水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した積層体を製造し、該積層体の接着剤層3b側を、前記薬物充填体の薬物1が露出している側上に熱ラミネートする経口投与剤Bの製造方法」は本願発明の「内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップに密接する側に予め接着層が設けられているシートを前記カップに対して接着する封入容器の製造方法」に相当し、以下同様に「積層体」は「水溶性のフィルム形成剤として、形成される水膨潤性ゲル形成層2bの30~85重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む水膨潤性ゲル形成層2b及び接着剤層3bを形成した」ものであることは「シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有」することに、「接着剤層3bを、精製水300gに、撹拌下、ポリビニルピロリドン91.00gをゆっくりと添加して1時間撹拌し、ここにグリセリン9.00gを添加し、10分間撹拌することにより調製した塗工液Bを、水膨潤性ゲル形成層2b上に展延塗布し、得られた塗膜を80℃で5分間乾燥することにより形成」することは「ポリビニルピロリドン」を、「水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し、」「乾燥させることで前記接着層を構成する」ことにそれぞれ相当する。 よって、引用文献2技術事項を本願発明の文言で表現すると、次のとおりである。 「内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップに密接する側に予め接着層が設けられているシートを前記カップに対して接着する封入容器の製造方法であって、 前記シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有し、 ポリビニルピロリドンを、水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し乾燥させることで前記接着層を構成する、方法。」 そして、引用発明と引用文献2技術事項とは、薬物である内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋を前記カップに対して接着する封入容器の製造方法であって、前記蓋の材料であるシートが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを素材とする水溶性フィルムを有する点で共通する。また、引用発明における「糊」と引用文献2技術事項における「接着剤層」とは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを素材とする水溶性フィルムを有し蓋の材料となるシートを、薬物である内容物が収められたカップに対して接着するという共通の機能を持つ。 してみると、引用発明において、糊を層46の円筒形部の内側表面に塗布する工程に代えて、引用文献2技術事項を採用することにより、シート46として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜及び接着剤層を形成した積層体を製造し、該シート46の接着剤層側を、半分エンロビングされたタブレット10の層44に覆われていない側上に接着すること、並びに前記接着剤層を、精製水300gに、撹拌下、ポリビニルピロリドン91.00gをゆっくりと添加して1時間撹拌し、ここにグリセリン9.00gを添加し、10分間撹拌することにより調製した塗工液を、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜に展延塗布し、得られた塗膜を80℃で5分間乾燥することにより形成したものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 ここで、80℃で5分間乾燥させて接着剤層を形成した場合に、前記接着剤層に使用される溶媒がタブレット10を変質させたり菌の繁殖を招いたりする問題を回避できることは、当業者にとって明らかである。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)膜及び接着剤層を形成した積層体であるシート46を製造し、該シート46の接着剤層側を、半分エンロビングされたタブレット10の層44に覆われていない側上に接着するから、前記シート46の真空成形による層46の形成に先んじて、予め前記接着剤層を形成することは明らかである。 したがって、引用発明において、引用文献2技術事項を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 本願発明の効果について 上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用文献2技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-012253

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