特許拒絶査定不服審判
2024-006659
注射剤収納用容器、注射剤入り容器、注射剤入り容器の使用方法、および、注射剤収納用容器に注射剤を収納する方法
- 審判番号
- 2024-006659
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-034541外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2025年10月21日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A61J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 34541「注射剤収納用容器、注射剤入り容器、注射剤入り容器の使用方法、および、注射剤収納用容器に注射剤を収納する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月27日出願公開、特開2023- 60223〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成26年 9月26日に出願した特願2014-197322号の一部を令和 元年 6月 5日に新たな特許出願とした特願2019-105421号の一部を令和 2年12月25日に新たな特許出願とした特願2020-217737号の一部を令和 5年 3月 7日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 3月16日 :手続補正書及び上申書の提出
同年10月 5日付け:拒絶理由通知書
同年12月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 6年 1月19日付け:拒絶査定
同年 4月18日 :審判請求書の提出
令和 7年 6月18日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 1日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和 7年 8月 1日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~4の記載事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「一側に注射針の挿入面を有し、他側が開口する容器本体と、
前記一側および前記他側を結ぶ方向に前記容器本体の前記挿入面と向かい合う保護カバーと、
前記保護カバーと前記容器本体とを連結する間隔をあけて複数設けられた連結部と、を備える注射剤収納用容器であって、
前記挿入面は、注射針が貫通可能であり、
前記他側の開口は、密封可能であり、
前記保護カバーは、その周縁部のうち周方向の一部に、径方向外向きに突出する鍔部を有し、
前記一側および前記他側を結ぶ方向における前記保護カバー及び前記容器本体の間に空間が形成され、
前記空間は、前記注射剤収納用容器の外部と、前記一側および前記他側を結ぶ方向と直交する方向に直接通じている、注射剤収納用容器。」
第3 当審が通知した拒絶の理由の概要
当審が通知した令和 7年 6月18日付け拒絶理由通知書に係る拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献1、引用文献2それぞれに例示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:韓国公開特許第10-2014-0022340号公報
引用文献2:特開平8-34466号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(和訳及び下線は、当審で付した。)。
「
[図:0001430610000001.jpg]
」
[0002] 一般的に、注射剤や、滋養強壮剤、内服液剤などのように滅菌状態で密封、保管しなければならない内容物は、主にガラスアンプル(ampoule)という容器に包装され、このような容器は、厚さが薄いガラス管に内容物を注入した後、その上端部を火などで溶融、密封する方法で製造する。
「
[図:0001430610000002.jpg]
」
[0025] 本発明の射出成形されたプラスチックアンプルは、添付図2~図5に示すように、内部に内容物貯蔵空間(S)を有して底面が開放されている胴部(10)と、前記胴部(10)の底面を密閉する下ふた(20)を含んで構成される。前記胴部(10)の断面形状は、特別な制限はないが、円筒形状であることが望ましい。
[0026] 前記胴部(10)の上端には、直径が縮小する傾斜部(11)及び首部(12)と、前記首部(12)で前記胴部(10)の反対方向に拡張された切り取り管(13)を有する。
[0027] 前記切り取り管(13)の内径部又は外径部には、周囲方向に切断溝(14)が形成される。前記切断溝(14)は、将来胴部(10)の中に保存されている内容物を排出する時に、切り取り管(13)を分離、除去する用途で使われる。
[0028] 前記切り取り管(13)の上端部は密閉手段によって遮られるが、前記密閉手段は、図2及び図3に示すように、前記胴部(10)と別体で射出成形した後、切り取り管(13)の中に挿入して熱融着した上段キャップ(30)や、図4及び図5に示すように前記切り取り管(13)の上端部位を両側から平たく押して互いに融着したシーリング部(17)であることもできる。
[0029] 前記プラスチックアンプルは、前記のような胴部(10)と下ふた(20)及び密閉手段の基本的な構成のみで本発明の目的を果たすことができるが、必要に応じて次の第1~第3実施例に示すように前記切り取り管(13)の構造を変更して使用することもできる。
[0030] 図2及び図3は本発明の第1実施例を示したもので、前記切り取り管(13)には、首部(12)で切り取り管(13)の内部を塞いでいる遮断膜(15)と、前記遮断膜(15)から切断溝(14)の位置を通過するように切り取り管(13)内部に拡張された内部管(16)が設けられている。
[0031] 前記遮断膜(15)は、軟質薄膜構造として、切り取り管(13)と内部管(16)の下端内径を全て塞いでおり、貯蔵空間(S)の中に保存されている内容物が切り取り管(13)の中に流れて行くことを防止して、さらに前記切り取り管(13)が損傷されるか除去された状態でも前記内容物の汚染を防止する機能をする。
[0032] そして、前記内部管(16)は、切断溝(14)に沿って切り取り管(13)を切断、除去した時、前記内部管(16)の端部が切断溝(14)外に突出されるように構成されている。それにより前記内部管(16)は、切り取り管(13)を切断する過程で発生する微細なプラスチック破片が貯蔵空間(S)の中に入って行くことを防止する。そして、内容物を排出するために貯蔵空間(S)の中に注射器を挿入する時、前記注射器が切り取り管(13)の切断部位に着かないように案内することで、注射器の汚染をあらかじめ防止する機能を有する。
「
[図:0001430610000003.jpg]
」
[0039] 一方、前記切断溝(14)が切り取り管(13)の中間部位に設置されていると、相対的に切り取り管(13)を切断するのが容易でない。よって、この場合には、図4及び図5に示すように、前記切り取り管(13)の外径部に、切断溝(14)を境界として下端羽部(18a)と上端羽部(18b)を設置するのが望ましい。このような構造のプラスチックアンプルは、片手で下端羽部(18a)を持って、もう一方の手で上端羽部(18b)をねじると、前記切断溝(14)部位を容易に切断できる。
図2「
[図:0001430610000004.jpg]
」
図3「
[図:0001430610000005.jpg]
」
図2、3より、遮断膜(15)は胴部(10)の上端に位置することが看て取れる。
上記記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「上端に遮断膜(15)を有し、内部に内容物貯蔵空間(S)を有して底面が開放されている胴部(10)と、
前記胴部(10)の上端の切り取り管(13)と、切り取り管(13)の中に挿入して熱融着した、密閉手段である上段キャップ(30)と、
将来胴部(10)の中に保存されている内容物を排出する時に、切り取り管(13)を分離、除去する用途で使われる切断溝(14)と、を備えるプラスチックアンプルであって、
内容物を排出するために貯蔵空間(S)の中に注射器が挿入されるものであり、
前記胴部(10)の底面を密閉する下ふた(20)を含む、プラスチックアンプル。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「内容物を排出するために貯蔵空間(S)の中に注射器が挿入される」「プラスチックアンプル」は、内部に内容物貯蔵空間(S)を有しており、段落[0002]より内容物が注射剤であるから、本願発明の「注射剤収納用容器」に相当する。
(2)引用発明は、内容物を排出するために貯蔵空間(S)の中に注射器が挿入されるものであり、段落[0032]よりその際に予め切断溝(14)に沿って切り取り管(13)を切断、除去するものであるから、注射器は、図2、3の上方から遮断膜(15)を通って内容物貯蔵空間(S)に挿入されることが明らかである。よって、引用発明の「遮断膜(15)」は、本願発明の「注射針の挿入面」に相当する。また、引用発明の「底面が開放されている」ことは、本願発明の「他側が開口する」ことに相当する。したがって、引用発明の「上端に遮断膜(15)を有し、内部に内容物貯蔵空間(S)を有して底面が開放されている胴部(10)」は、本願発明の「一側に注射針の挿入面を有し、他側が開口する容器本体」に相当する。
(3)引用発明の「切り取り管(13)」及び「上段キャップ(30)」は、図2、3より上下方向において遮断膜(15)と向かい合っており、密閉手段を構成するものであるから、本願発明の「前記一側および前記他側を結ぶ方向に前記容器本体の前記挿入面と向かい合う保護カバー」に相当する。
(4)引用発明の「切断溝(14)」は、図2、3より切り取り管(13)及び上段キャップ(30)と胴部(10)とを連結していると表現できるから、引用発明の「切断溝(14)」と、本願発明の「前記保護カバーと前記容器本体とを連結する間隔をあけて複数設けられた連結部」とは、前記保護カバーと前記容器本体とを連結する連結部の限りで一致する。
(5)引用発明の「遮断膜(15)」は、上記(2)で述べたとおり、注射針が貫通可能であることが明らかである。
(6)引用発明の「前記胴部(10)の底面を密閉する下ふた(20)を含む」ことは、本願発明の「前記他側の開口は、密封可能であ」ることに相当する。
(7)引用発明は、図2、3より、上下方向において切り取り管(13)及び上段キャップ(30)と胴部(10)の間に空間が形成されていることが明らかである。
したがって、両者は、
「一側に注射針の挿入面を有し、他側が開口する容器本体と、
前記一側および前記他側を結ぶ方向に前記容器本体の前記挿入面と向かい合う保護カバーと、
前記保護カバーと前記容器本体とを連結する連結部と、を備える注射剤収納用容器であって、
前記挿入面は、注射針が貫通可能であり、
前記他側の開口は、密封可能であり、
前記一側および前記他側を結ぶ方向における前記保護カバー及び前記容器本体の間に空間が形成されている、注射剤収納用容器。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、「前記保護カバーは、その周縁部のうち周方向の一部に、径方向外向きに突出する鍔部を有」するのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「連結部」が「間隔をあけて複数設けられ」ており、「前記空間は、前記注射剤収納用容器の外部と、前記一側および前記他側を結ぶ方向と直交する方向に直接通じている」のに対し、引用発明は切断溝である点。
3 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]
カバーの周縁部のうち周方向の一部に、径方向外向きに突出する鍔部を設けることは、例えば引用文献1の段落[0039]、図4、引用文献2の段落0005、図6に示されるように周知技術であり、引用発明において当該周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
[相違点2]
切断される連結部を、間隔を空けて複数設けられたものとすること、すなわち点線で形成することは、例えば引用文献2の段落0008、図2に示されるように周知技術であり、引用発明に当該周知技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、それにより、切り取り管(13)及び上段キャップ(30)と胴部(10)の間の空間の少なくとも一部は、プラスチックアンプルの外部と、上下方向と直交する方向に直接通じているものとなる。
そして、本願発明の効果についてみても、引用発明及び周知技術から格別なものということはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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