特許拒絶査定不服審判
2023-021633
秤量装置
- 審判番号
- 2023-021633
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-159542外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月20日
- 審決日
- 2025年05月15日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社タカゾノ
- 【請求人代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 分類
- P18 .121-WZ (A61J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-159542「秤量装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年12月 2日出願公開、特開2022-179598〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年 9月15日に出願した特願2017-177860号の一部を令和 4年10月 3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略次のとおりである。
令和 5年 7月 3日付け 拒絶理由通知書
同年 9月 5日提出 意見書
同年 9月11日付け 拒絶査定
同年12月20日提出 審判請求書及び手続補正書
令和 6年12月10日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 2月10日提出 意見書及び手続補正書
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和 7年 2月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「各々に散剤が収容可能であって払出口を有する複数の散剤容器、前記複数の散剤容器を着脱可能に保持する複数の保持体、前記保持体に保持された前記複数の散剤容器を移動させる移動機構、前記複数の散剤容器の移動軌道上にある所定の払出位置に移動した前記散剤容器から散剤を払い出させる払出機構、をそれぞれ有する払出部と、
前記払出位置の下方に位置するもので、前記散剤容器から払い出された散剤を受けるトレイを載置し、前記トレイに払い出された散剤を秤量する秤量部と、を備え、
前記払出部には、前記複数の散剤容器が水平方向に配置され、
前記移動機構は、前記複数の散剤容器を水平方向に移動させ、
前記散剤容器は前記移動機構により前記払出位置に移動され、前記払出機構により払い出される散剤は落下して前記秤量部に載置された前記トレイに収容され、
前記複数の保持体は、正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回するように構成され、
前記散剤容器が前記保持体に対して着脱可能な着脱位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲に位置し、
前記払出位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲の1か所にのみ設けられており、しかも前記着脱位置とは水平方向に異なる位置で、かつ、前記着脱位置に近い位置に設けられ、
前記着脱位置が、前記保持体に対して着脱する前記散剤容器から落下する散剤が前記トレイに混入しない位置であり、前記払出位置を基準とした場合、一つから三つ隣の前記保持体にあり、
前記散剤容器は、前記着脱位置以外の位置において前記保持体に対して着脱不能である、秤量装置。」
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審において令和 6年12月10日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由は、概略、次の理由を含む。
本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平7-132135号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
上記引用文献1には、以下の記載がある。(以下「・・・」は記載の省略を表す。)下線は当審にて付したものである。
(1)「【0007】
【実施例】図1~図3はこの発明による散薬供給装置を採用した散薬分包機の一実施例を示したものであり、この散薬分包機1は、手前に配置された分割包装機2と、その背後に配置された散薬収納庫20とから構成されている。」
(2)「【0009】散薬収納庫20は、散薬をカセット21に収容して、このようなカセット21を散薬の種類に応じて多数具えたものであり、どのカセット21に収容された散薬でも分割包装機2の配分/分割装置3に配分するため、左右の配分/分割装置3a、3bに対応した供給位置40a、40bのいずれにもすべてのカセット21を移動させることのできる移動機構41を具えている。
【0010】カセット21は、ストック部22と、排出部23とから構成されている。・・・
【0011】散薬収納庫20内において、各カセット21は、左右の反転輪間に張設したチェーン等の無端条帯42に所定のピッチで設けた各支持体43に着脱可能に装着して配置され、無端条帯42の内側空間に設けたモータ44が無端条帯42を正逆任意の方向に回転させることにより、各カセット21は左右いずれの方向にも循環されるようになっている。この場合、散薬の重量を支えるため、循環路に沿って支持体43またはカセット21を支える手段を設けることが好ましい。支持体43どうしのピッチは、供給位置40a、40bの間隔の整数分の1、すなわち、供給位置40a、40bの間隔が、支持体43に装着されたカセット21のピッチの整数倍となるように配置されている。・・・
【0012】供給位置40a、40bには、配分/分割装置3a、3bに配分する散薬を供給するための散薬フィーダ50a、50bが設けられ、各散薬フィーダ50は、その供給位置40に位置するカセット21と、カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51と、カセット21から排出される散薬を計量する計量装置61とから構成されている。
【0013】作動装置51は、カセット21群の昇降領域および循環領域を避けて、供給位置40に位置するカセット21の後方に配置され、モータ52と、作動部材53とから構成されている。・・・
【0014】計量装置61は、たとえば、秤量器と秤量皿とからなる秤量装置として構成することができるものであるが、その場合、計量時には、供給位置40に位置するカセット21の前方において、その排出部23の正面出口から排出される散薬を受け取るために、排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置される必要がある。・・・また、計量装置61には、配分位置において、配分/分割装置3に対する散薬の配分動作を円滑に行わせるため、散薬を徐々に供給する振動フィーダ63が設けられている。すなわち、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、このトラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支えることによって、計量装置61が構成されている。」
(3)「【0017】左右の供給位置40a、40bの中間には、収容してある散薬が不足したカセット21に散薬を補充するために、そのようなカセット21を散薬収納庫20から取り出すようになった取出位置90が設けられ、この取出位置90と供給位置40a、40bそれぞれとの間隔も、カセット21のピッチの整数倍となるように配置され、また、取出位置90に対応して取出装置91が設けられている。取出装置91は、取出位置90にあるカセット21を移動機構41の支持体43から離脱させたうえ、支持体43に代わってカセット21を保持して、散薬収納庫20の外方に設けた補充位置まで移動させ、この補充位置ではカセット21を離脱させることができるようになっている。また、取出装置91は、散薬補充後、補充位置でカセット21を保持して、取出位置90まで移動させたうえ、その位置にある支持体43にカセツト21(合議体注:「カセット21」の誤記と認められる。)を装着させるようになっている。」
(4)「【図2】
[図:0001425228000001.jpg]
」
(5)「【図3】
[図:0001425228000002.jpg]
」
(6)上記(1)~(3)を踏まえると、上記(4)から、供給位置40a及び40bはカセット21が移動する軌道上にあること、散薬収納庫20にはカセット21が水平方向に配置されること、無端条帯42及びモータ44はカセット21を水平方向に移動させること、支持体43は無端条帯42及びモータ44によって散薬収納庫20の正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回すること、上記(4)及び(5)から、供給位置40a及び40bと取出位置90は散薬収納庫20の正面側に位置することが看取される。
2 引用発明
上記1の事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「散薬の種類に応じて多数具えられ排出部23を有するカセット21、各カセット21を着脱可能に装着する支持体43、支持体43に装着されたカセット21を左右方向に循環させる無端条帯42及びモータ44、カセット21が移動する軌道上にある供給位置40a及び40bに移動した前記カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51、を有する散薬収納庫20と、
供給位置40a及び40bに位置するカセット21の排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置され、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、トラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支える計量装置61を備え、
散薬収納庫20にはカセット21が水平方向に配置され、
無端条帯42及びモータ44はカセット21を水平方向に移動させ、
カセット21は無端条帯42及びモータ44によって供給位置40a及び40bに移動され、供給位置40a及び40bに位置するカセット21の排出部23の正面出口の真下に計量装置61の計量中心が位置し、計量装置61のトラフ64が散薬を受け取り、
支持体43は無端条帯42及びモータ44によって散薬収納庫20の正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回し、
カセット21を支持体43から離脱させ、散薬補充後、支持体43にカセット21を装着させる取出装置91が設けられる取出位置90は散薬収納庫20の正面側に位置し、
供給位置40a、40bは散薬収納庫20の正面側に位置し、
取出位置90と供給位置40a、40bそれぞれとの間隔は、カセット21のピッチの整数倍となるように配置される、散薬供給装置。」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(i)引用発明の「散薬」は、本願発明の「散剤」に相当し、引用発明の「排出部23」は、本願発明の「払出口」に相当するから、引用発明の「散薬の種類に応じて多数具えられ排出部23を有するカセット21」は、本願発明の「各々に散剤が収容可能であって払出口を有する複数の散剤容器」に相当する。
(ii)引用発明の「各カセット21を着脱可能に装着する支持体43」は、その機能及び構成からみて、本願発明の「前記複数の散剤容器を着脱可能に保持する複数の保持体」に相当する。
(iii)引用発明の「支持体43に装着されたカセット21を左右方向に循環させる無端条帯42及びモータ44」は、その機能及び構成からみて、本願発明の「前記保持体に保持された前記複数の散剤容器を移動させる移動機構」に相当する。
(iv)引用発明の「カセット21が移動する軌道上にある供給位置40a及び40b」は、本願発明の「前記複数の散剤容器の移動軌道上にある所定の払出位置」に相当するから、引用発明の「カセット21が移動する軌道上にある供給位置40a及び40bに移動した前記カセット21を作動して散薬を排出させる作動装置51」は、本願発明の「前記複数の散剤容器の移動軌道上にある所定の払出位置に移動した前記散剤容器から散剤を払い出させる払出機構」に相当する。
(v)引用発明の「散薬収納庫20」は、(i)~(iv)の構成を有することから、本願発明の「払出部」に相当する。
(vi)引用発明の「供給位置40a及び40bに位置するカセット21の排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置され」ることは、本願発明の「前記払出位置の下方に位置する」ことに相当し、引用発明の「カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成」される「トラフ64」は、本願発明の「前記散剤容器から払い出された散剤を受ける」「トレイ」に相当するから、引用発明の「供給位置40a及び40bに位置するカセット21の排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置するように配置され、振動フィーダ63のトラフ64を、カセット21から受け取る散薬を載せる秤量皿として構成し、トラフ64を含む振動フィーダ63を秤量器65で支える計量装置61」は、本願発明の「前記払出位置の下方に位置するもので、前記散剤容器から払い出された散剤を受けるトレイを載置し、前記トレイに払い出された散剤を秤量する秤量部」に相当する。
(vii)引用発明の「散薬収納庫20にはカセット21が水平方向に配置され」ることは、本願発明の「前記払出部には、前記複数の散剤容器が水平方向に配置され」ることに相当し、引用発明の「無端条帯42及びモータ44はカセット21を水平方向に移動させ」ることは、本願発明の「前記移動機構は、前記複数の散剤容器を水平方向に移動させ」ることに相当する。
(viii)引用発明の「カセット21は無端条帯42及びモータ44によって供給位置40a及び40bに移動され、供給位置40a及び40bに位置するカセット21の排出部23の正面出口の真下に計量中心が位置する計量装置61のトラフ64が散薬を受け取」ることは、その機能及び構成からみて、本願発明の「前記散剤容器は前記移動機構により前記払出位置に移動され、前記払出機構により払い出される散剤は落下して前記秤量部に載置された前記トレイに収容され」ることに相当する。
(ix)引用発明の「無端条帯42及びモータ44によって散薬収納庫20の正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回」する「支持体43」は、本願発明の「正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回するように構成され」る「複数の保持体」に相当する。
(x)引用発明の「カセット21を支持体43から離脱させ、散薬補充後、支持体43にカセット21を装着させる取出装置91が設けられる取出位置90」は、本願発明の「前記散剤容器が前記保持体に対して着脱可能な着脱位置」に相当するから、引用発明の「カセット21を支持体43から離脱させ、散薬補充後、支持体43にカセット21を装着させる取出装置91が設けられる取出位置90は散薬収納庫20の正面側に位置」することは、本願発明の「前記散剤容器が前記保持体に対して着脱可能な着脱位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲に位置」することに相当する。
(xi)引用発明の「散薬収納庫20の正面側に位置」する「供給位置40a及び40b」は、本願発明の「前記周回軌道における前記正面側の範囲」に設けられた「払出位置」に相当する。
(xii)引用発明の「散薬供給装置」は、散薬を秤量しているから、本願発明の「秤量装置」に相当する。
してみると、両者は、
「各々に散剤が収容可能であって払出口を有する複数の散剤容器、前記複数の散剤容器を着脱可能に保持する複数の保持体、前記保持体に保持された前記複数の散剤容器を移動させる移動機構、前記複数の散剤容器の移動軌道上にある所定の払出位置に移動した前記散剤容器から散剤を払い出させる払出機構、をそれぞれ有する払出部と、
前記払出位置の下方に位置するもので、前記散剤容器から払い出された散剤を受けるトレイを載置し、前記トレイに払い出された散剤を秤量する秤量部と、を備え、
前記払出部には、前記複数の散剤容器が水平方向に配置され、
前記移動機構は、前記複数の散剤容器を水平方向に移動させ、
前記散剤容器は前記移動機構により前記払出位置に移動され、前記払出機構により払い出される散剤は落下して前記秤量部に載置された前記トレイに収容され、
前記複数の保持体は、正面側から背面側にわたる周回軌道上を周回するように構成され、
前記散剤容器が前記保持体に対して着脱可能な着脱位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲に位置し、
前記払出位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲に設けられている、
秤量装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、払出位置は、前記周回軌道における前記正面側の範囲の「1か所にのみ」設けられており、「しかも前記着脱位置とは水平方向に異なる位置で、かつ、前記着脱位置に近い位置に設けられ、前記着脱位置が、前記保持体に対して着脱する前記散剤容器から落下する散剤が前記トレイに混入しない位置であり、前記払出位置を基準とした場合、一つから三つ隣の前記保持体にあ」るのに対し、引用発明は、取出位置90と供給位置40a、40bそれぞれとの間隔は、カセット21のピッチの整数倍となるように配置される点。
(相違点2)
本願発明は、「散剤容器は、前記着脱位置以外の位置において前記保持体に対して着脱不能である」のに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
2 判断
(1)上記相違点1について検討する。
散剤の払出位置を1か所にのみ設ける秤量装置は、例えば特開平5-285200号公報の段落【0007】、図1に記載されているように周知の構成であり、2か所に設けられている供給位置40a、40bを、装置の小型化等の一般的な課題に照らして1か所のみとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、引用発明を実施するに際し、散薬収納庫20やカセット21の大きさをどのように設定するかは、当業者が適宜なし得る設計的事項であり、例えば、引用文献1の図2に示されるよりも散薬収納庫20の大きさを相対的に小さくする、又は、カセット21の大きさを相対的に大きくすることで、取出位置90と上記のとおり1か所のみとした供給位置との間隔を、カセット21のピッチの1~3倍と特定し、上記相違点1に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者であれば容易になし得ることである。
(2)上記相違点2について検討する。
カセット21を離脱及び装着させる取出位置90に関連し、引用文献1には、次の記載がある。
「【0025】カセット21に散薬を補充する場合は、そのカセット21が取出位置90に来るように、移動機構41を作動させて、必要な循環、昇降を行わせる。」
上記記載や図2、3に示された散薬収納庫20における取出位置90、取出装置91の位置から、引用発明において、取出位置90以外の位置においてカセット21が支持体43に対して着脱不能であることは、技術常識を踏まえると当然のことである。
してみれば、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
また、仮に引用発明において、取出位置90以外の位置において、カセット21が支持体43に対して着脱可能であったとしても、引用発明を実施するに際し、カセット21の不本意な誤脱を防止する等の一般的な課題に照らして、カセット21を取出位置90以外の位置で着脱不能にすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
3 効果の検討
本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものではない。
4 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和 7年 2月10日提出の意見書において、「(2-4)本願発明の進歩性について」の中で、概略次の点を主張している。
ア (主張ア)引用発明は、2つの配分/分割装置を有する分割包装機に対して散薬を供給する散薬供給装置であり、本願発明のように、払出位置を1か所にのみ有する構成ではない。本願発明は、払出位置が1つの秤量装置において、迅速かつ安全に散剤の供給を行うことを目的とした発明であるのに対し、引用発明は、2台の配分/分割装置を有する分割包装機に散薬を供給することを目的とした発明であり、2つの供給位置のどちらに対しても都合のよい位置である中央に取出位置を設けるという思想の発明であるから、本願発明のように1つの供給位置に着目して、その供給位置に近い位置に取出位置を設けるという思想はない。
イ (主張イ)本願発明は、払出位置を着脱位置から近い位置に配置し、着脱位置が払出位置を基準として一つから三つ隣の保持体にあるため、払出位置の散剤容器を着脱位置に迅速に移動させて散剤を補充できるとともに、着脱位置と払出位置が水平方向でずれており、着脱に際して散剤容器から落下する散剤がトレイに混入しない。
一方で、引用発明では、供給位置が端に、取出位置が中央に配置されており、支持体43基準で6個分も離れており、供給位置から取出位置へのカセットの迅速な移動ができない。しかも、取出位置は配分/分割装置の上方にあり、カセットの着脱によって落下する散剤が配分/分割装置に落下して、クロスコンタミネーションを引き起こしうる構成となっている。
仮に、動機付けに関する検討を無視して引用発明を本願発明のように変更し、取出位置90を、払出位置40a、40bの一方の1つ隣とすると、他方が取出位置90から遠ざかってしまうため、他方で散薬が切れた場合に補充が非効率となり作業者の負担が増加する。
ウ (主張ウ)移動機構41の幅方向の両端に供給位置40a、40bが配置されている構成から、移動機構41を幅方向に小さくすると、2台の配分/分割装置に対して散薬を供給できなくなり、引用発明の目的を達成できなくなる。
また、カセット21の大きさを大きくして、供給位置と取出位置の間隔をピッチの1倍~3倍とする場合には、カセットの幅方向における大きさを2倍以上にする必要があるが、装置自体の大型化を招くことから現実的でない。
(2)審判請求人の主張に対する見解
審判請求人の上記主張ア~ウについて検討する。
ア 主張アについて
上記2(1)の相違点1の判断にて説示したとおり、2か所に設けられている供給位置を1か所のみとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、引用発明が解決しようとする課題は、引用文献1の段落【0003】~【0006】の記載から、散薬が供給位置において排出され、しかも、その排出量が計量装置により計量されることで、必要量だけ自動的に供給し、薬剤師の負担を軽減することであるから、引用発明の目的を「2台の配分/分割装置を有する分割包装機に散薬を供給すること」とする審判請求人の主張は採用できない。
イ 主張イについて
上記2(1)の相違点1の判断にて説示したとおり、散薬収納庫20やカセット21の大きさをどのように設定するかは当業者が適宜なし得る設計的事項である。審判請求人の主張する「払出位置の散剤容器を着脱位置に迅速に移動させて散剤を補充できる」という効果は、散薬収納庫20やカセット21の大きさに依るところが大きく、払出位置と着脱位置の位置関係は格別な効果を奏するものとはいえない。
そして、散薬を収容するカセットの着脱時に、装置の他の構成への散薬の飛散を防止することは一般的な課題であるから、引用発明を実施するに際し、配分/分割装置の上部にある取出位置90の間に仕切り等を設け、配分/分割装置への散薬の飛散を防止するようにすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、「取出位置90を、払出(供給)位置40a、40bの一方の1つ隣とすると、他方が取出位置90から遠ざかってしまう」という問題は、供給位置40a、40bを2か所にした場合の問題であり、引用発明を実施するに際し、上記相違点1について検討したように供給位置を1か所のみとすれば生じ得ない問題であるから、審判請求人の主張は採用できない。
ウ 主張ウについて
上記2(1)の相違点1の判断にて説示したとおり、カセット21の大きさをどのように設定するかは当業者が適宜なし得る設計的事項である。また、引用文献1には散薬収納庫20が収容するカセット21の数や、カセット21の大きさについて記載されておらず、「カセットの幅方向における大きさを2倍以上にする」ことが直ちに「装置自体の大型化を招く」とまではいえない。
上記アにて説示したとおり、引用発明は、2台の配分/分割装置を有する分割包装機に散薬を供給することを目的とした発明ではなく、「移動機構41を幅方向に小さくすると、2台の配分/分割装置に対して散薬を供給できなくなり、引用発明の目的を達成できなくなる」という審判請求人の主張は採用できない。
(3)小括
以上より、意見書における審判請求人の主張は、上記2の判断を左右するものでなく、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-021633