特許拒絶査定不服審判
2024-006402
薬品払出装置、薬品払出プログラム
- 審判番号
- 2024-006402
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-186855
- 請求日
- 2024年04月15日
- 審決日
- 2025年07月15日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社湯山製作所
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 立花 啓
- 分類
- P18 .121-Z (A61J) / P18 .575-Z (A61J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-186855「薬品払出装置、薬品払出プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 1月20日出願公開、特開2023- 10913〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月 6日に出願した特願2017-196300号の一部を令和 3年12月14日に新たな特許出願とした特願2021-202430号の一部を令和 4年11月22日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 9月 5日付け:拒絶理由通知書
同年11月10日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 6年 1月12日付け:拒絶査定
同年 4月15日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和 6年 4月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 4月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられており当該マスに収容された錠剤をマスごとに払い出す手撒きユニットに投入される錠剤又はカセットに収容される錠剤を払い出す薬品払出処理を実行する制御部を備え、
前記カセットは、錠剤の払出経路の幅の変更により払出可能な錠剤の種類が変更可能な第1のカセットと、予め定められた薬品情報により特定される種類の錠剤を払出可能な幅の払出経路を有する第2のカセットとを含み、
前記制御部は、ユーザー操作に応じて錠剤の供給元を少なくとも前記手撒きユニット及び前記第1のカセットから選択可能である、
薬品払出装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和 5年11月10日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられており当該マスに収容された錠剤をマスごとに払い出す手撒きユニットに投入される錠剤又はカセットに収容される錠剤を払い出す薬品払出処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、ユーザー操作に応じて錠剤の供給元を少なくとも前記手撒きユニット及び前記カセットから選択可能である、
薬品払出装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「カセット」について、「前記カセットは、錠剤の払出経路の幅の変更により払出可能な錠剤の種類が変更可能な第1のカセットと、予め定められた薬品情報により特定される種類の錠剤を払出可能な幅の払出経路を有する第2のカセットとを含」むことを限定するとともに、制御部がユーザー操作に応じて選択可能な錠剤の供給元である「カセット」を「第1のカセット」に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2017/159819号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
「[0013] 図1及び図2に示すように、前記薬品払出装置100は、処方制御ユニット1、錠剤供給ユニット2、散薬供給ユニット3、手撒きユニット4、分包ユニット5、分包制御ユニット6、及びバーコードリーダー7などを備えている。」
「[0015] [錠剤供給ユニット2]
前記錠剤供給ユニット2は、
予め定められた特定種類の錠剤を1錠(単位量)ごとに払出可能な複数の固定カセット21と、駆動条件の変更により任意の種類の錠剤を1錠(単位量)ごとに払出可能な複数の可変カセット22(薬品カセットの一例)とを備える。」
「[0029] 図3に示すように、前記固定カセット21は、多数の錠剤が収容される錠剤収容部212、及び剤前記錠剤収容部212に収容された錠剤を個別に排出する錠剤排出部213を備えている。前記錠排出部213は、前記錠剤収容部212の略中央部に形成された凹部に設けられており、前記錠剤収容部212内の錠剤は前記錠剤排出部213に向けて順次下降する。
[0030] 前記錠剤排出部213は、前記固定カセット21の筐体で回転可能に支持されたローター214と、前記ローター214の外周を覆う内壁214Aとを備えている。前記ローター214は、前記固定カセット21が前記装着部211に装着されたときに、各種のギアなどの駆動伝達系(不図示)を介して前記第1駆動部23の前記駆動モーター231に連結される。また、前記ローター214の外周面には、予め定められた配置間隔でリブ215及びリブ216が形成されている。これにより、前記ローター214の外周には、前記リブ215、前記リブ216、及び前記内壁214Aによって囲まれた間隙217が間欠的に形成されている。前記間隙217の幅は、前記固定カセット21に収容される錠剤として予め定められた錠剤の種類に応じて定められており、前記錠剤の1錠分の幅に相当する。」
「[0038] さらに、図4及び図5に示すように、前記可変カセット22は、前記第2回転体224により前記払出口225まで搬送される前記錠剤の払出経路上に配置された高さ規制部材226及び幅規制部材227を備えている。
[0039] 前記高さ規制部材226は、前記第2回転体224により前記払出口225まで搬送可能な錠剤の高さ方向のサイズを規制し、前記幅規制部材227は、前記第2回転体224により前記払出口225まで搬送可能な錠剤の幅方向のサイズを規制する。」
「[0048] このように、前記可変カセット22を用いれば、前記高さ規制部材226により規制される前記高さh1及び前記幅規制部材227により規制される前記幅w1が変更可能であるため、任意の種類の錠剤を1錠単位で払い出すことが可能である。」
「[0054] [手撒きユニット4]
前記手撒きユニット4は、予め設定された服用時期などの分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられた手撒き収容部と、前記マス各々に収容された前記錠剤を前記マスごとに前記分包ユニット5に払い出す手撒き払出部とを備える。」
「[0138](分包制御ユニット6側:ステップS24)
ステップS24において、前記制御部61は、前記分包動作の開始要求に従って、前記錠剤供給ユニット2、前記散薬供給ユニット3、及び前記手撒きユニット4により必要な薬品を払い出し、前記分包ユニット5により服用時期などの分包単位で分包する分包動作を実行する。ここに、係る処理を実行するときの前記制御部61が払出実行部の一例である。なお、前記散薬供給ユニット3、前記手撒きユニット4、及び前記分包ユニット5の制御については従来と同様であるためここでは説明を省略し、前記錠剤供給ユニット2による錠剤の払い出し動作のみについて説明する。」
図1「
[図:0001427541000001.jpg]
」
図2「
[図:0001427541000002.jpg]
」
図3「
[図:0001427541000003.jpg]
」
イ 引用発明
上記記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられ、前記マス各々に収容された前記錠剤を前記マスごとに払い出す手撒きユニット4、及び錠剤供給ユニット2により必要な薬品を払い出す制御部61を備え、
錠剤供給ユニット2は、固定カセット21と、可変カセット22とを備え、
可変カセット22は、錠剤の払出経路上に配置され、搬送可能な錠剤の幅方向のサイズを規制する幅規制部材227を備え、幅規制部材227により規制される幅が変更可能であり、任意の種類の錠剤を払い出すことが可能であり、
固定カセット21は、錠剤排出部213を備え、錠剤排出部213は、ローター214を備え、ローター214の外周には間隙217が形成されており、間隙217の幅は固定カセット21に収容される錠剤として予め定められた錠剤の種類に応じて定められている、
薬品払出装置100。」
ウ 引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2016-187544号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0055】
本実施形態の散薬分包装置1(薬品払出装置)は、図1で示されるように、本体装置2と、操作表示部3(表示装置,操作装置)、制御部(図示しない)、手動式薬品容器5、薬品秤量装置6、ジャーナルプリンタ7、バーコードリーダー8を備えた構造となっている。
この散薬分包装置1は、操作表示部3を操作することにより、薬品容器(散薬収容容器であり、後述する自動式薬品容器4、又は上記した手動式薬品容器5)に収容された散薬を自動的に取り出して計量し、所定数に分割して分包する装置である。」
「【0115】
薬品の分包形態は、処方された薬品を一服用分ずつ分包する際に、どのような分包動作で分包するのかを選択する項目である。この分包形態は、「つぶし」、「自動カセット」、「手撒きカセット」からなる項目群からいずれかが選択され、入力されることとなる。
・・・
【0117】
「自動カセット」とは、自動式薬品容器4に収容されている散薬を分配皿35に供給して分包する形態である。すなわち、処方された薬品がすでに自動式薬品容器4に収容されており、自動式薬品容器4に収容された薬品を分包動作に使用する場合に選択される項目である。
【0118】
「手撒きカセット」は、手動式薬品容器5に散薬を導入して分包する形態である。すなわち、処方された薬品を薬剤師が手動で手動式薬品容器5に導入して分包動作を実施する場合に選択される項目である。
・・・
【0122】
本実施形態では、使用者が操作表示部3を操作することにより、自動的に選択された分包形態を変更可能となっている。
具体的に説明すると、本実施形態の散薬分包装置1では、形態選択画面(図10参照)を表示させ、「自動カセット」ボタンと「手撒きカセット」ボタンのいずれかを押下することで項目の変更が可能となっている。すなわち、「自動カセット」ボタンを押下すると、「自動カセット」が選択された状態となり、「手撒きカセット」ボタンを押下すると、「手撒きカセット」が選択された状態となる。」
上記記載事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「薬品払出装置において、使用者が操作表示部3を操作することにより、自動式薬品容器4に収容されている散薬を供給して分包する形態と、手動式薬品容器5に散薬を導入して分包する形態のいずれかを選択可能であること。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「錠剤の払出経路上に配置され、搬送可能な錠剤の幅方向のサイズを規制する幅規制部材227を備え、幅規制部材227により規制される幅が変更可能であり、任意の種類の錠剤を払い出すことが可能であ」る「可変カセット22」、及び「錠剤排出部213を備え、錠剤排出部213は、ローター214を備え、ローター214の外周には間隙217が形成されており、間隙217の幅は固定カセット21に収容される錠剤として予め定められた錠剤の種類に応じて定められている」「固定カセット21」は、本件補正発明の「錠剤の払出経路の幅の変更により払出可能な錠剤の種類が変更可能な第1のカセット」、及び「予め定められた薬品情報により特定される種類の錠剤を払出可能な幅の払出経路を有する第2のカセット」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「可変カセット22」と「固定カセット21」とを備える「錠剤供給ユニット2」は、本件補正発明の「カセット」に相当する。
イ 引用発明の「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられ、前記マス各々に収容された前記錠剤を前記マスごとに払い出す手撒きユニット4」「により必要な薬品を払い出す」ことは、本件補正発明の「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられており当該マスに収容された錠剤をマスごとに払い出す手撒きユニットに投入される錠剤」「を払い出す」ことに相当する。また、引用発明の「錠剤供給ユニット2により必要な薬品を払い出す」ことは、「錠剤供給ユニット2」が固定カセット21と可変カセット22とを備えるものであるから、本件補正発明の「カセットに収容される錠剤を払い出す」ことに相当する。
したがって、引用発明の「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられ、前記マス各々に収容された前記錠剤を前記マスごとに払い出す手撒きユニット4、及び錠剤供給ユニット2により必要な薬品を払い出す制御部61」は、本件補正発明の「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられており当該マスに収容された錠剤をマスごとに払い出す手撒きユニットに投入される錠剤又はカセットに収容される錠剤を払い出す薬品払出処理を実行する制御部」に相当する。
したがって、両者は、
「予め設定された分包単位で錠剤が投入されるマスが複数設けられており当該マスに収容された錠剤をマスごとに払い出す手撒きユニットに投入される錠剤又はカセットに収容される錠剤を払い出す薬品払出処理を実行する制御部を備え、
前記カセットは、錠剤の払出経路の幅の変更により払出可能な錠剤の種類が変更可能な第1のカセットと、予め定められた薬品情報により特定される種類の錠剤を払出可能な幅の払出経路を有する第2のカセットとを含む、
薬品払出装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本件補正発明は、「前記制御部は、ユーザー操作に応じて錠剤の供給元を少なくとも前記手撒きユニット及び前記第1のカセットから選択可能である」のに対し、引用発明は、制御部61がそのように特定されていない点。
(4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、手撒きユニット4及び錠剤供給ユニット2により必要な薬品を払い出すものであり、錠剤供給ユニット2は、固定カセット21と、可変カセット22とを備えるから、手撒きユニット4、固定カセット21及び可変カセット22のうちいずれから薬品を払い出すか決定することが必要になる。そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、複数の薬剤供給元を有する薬品払出装置である点で共通しており、引用発明において、手撒きユニット4、固定カセット21及び可変カセット22のうちいずれから薬品を払い出すか決定する際に、引用文献2記載事項を参照し、使用者が操作表示部を操作することにより、手撒きユニット4、固定カセット21及び可変カセット22のうちいずれから薬品を払い出すかを選択可能なものとし、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明の効果についてみても、引用発明及び引用文献2記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものということはできない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和 5年11月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「カセット」について、「前記カセットは、錠剤の払出経路の幅の変更により払出可能な錠剤の種類が変更可能な第1のカセットと、予め定められた薬品情報により特定される種類の錠剤を払出可能な幅の払出経路を有する第2のカセットとを含」むという限定を削除し、制御部がユーザー操作に応じて選択可能な錠剤の供給元である「カセット」を「第1のカセット」とした限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由で、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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