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特許拒絶査定不服審判

2022-012180

光学フィルム、光学フィルムの製造方法および有機発光電子装置の製造方法

審判番号
2022-012180
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-522806外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月04日
審決日
2023年05月29日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-522806「光学フィルム、光学フィルムの製造方法および有機発光電子装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 2日国際公開、WO2019/083255、令和 3年 1月 7日国内公表、特表2021-500617〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特願2020-522806号(以下「本件出願」という。)は、2018年(平成30年)10月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)10月23日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 5月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月11日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 3年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 3月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 3月29日付け:令和 4年 3月 7日にされた手続補正についての却下の決定
令和 4年 3月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 4年 8月 4日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 4年 8月10日 :手続補正書(方式)の提出
令和 5年 1月 6日 :上申書の提出

第2 令和4年8月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[結論]

令和4年8月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

(1)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の令和3年8月11日にされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 基材フィルム、および該基材フィルムの両面にそれぞれ設けられた第1帯電防止層および第2帯電防止層を含む基材層と、
保護フィルム、該保護フィルムの両面にそれぞれ設けられた第3帯電防止層および第4帯電防止層、および前記第3帯電防止層の前記保護フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた離型層を含む保護層とを含み、
前記基材層および保護層は、前記第2帯電防止層と前記離型層が向かい合うように粘着剤層によって接合され、
前記粘着剤層の表面抵抗は、109Ω/sq以上5×1012Ω/sq以下であり、
前記粘着剤層は、100kHz下で比誘電率が3.5以上であり、
前記粘着剤層のガラスに対するウェッティング(wetting)時間が1sec~6secであり、
前記ウェッティング時間は、光学フィルムを幅50mm、長さ150mmとなるように裁断し、前記光学フィルムから保護層を剥離して、ガラスに付着させた後、前記ガラスに粘着剤層がすべてウェッティングされる時間を意味する、光学フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲

本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付与したものであり、補正箇所を示す。

「 基材フィルム、および該基材フィルムの両面にそれぞれ設けられた第1帯電防止層および第2帯電防止層を含む基材層と、
保護フィルム、該保護フィルムの両面にそれぞれ設けられた第3帯電防止層および第4帯電防止層、および前記第3帯電防止層の前記保護フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた離型層を含む保護層とを含み、
前記第2帯電防止層の前記基材フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層の表面抵抗は、109Ω/sq以上5×1012Ω/sq以下であり、
前記粘着剤層は、ウレタン系粘着剤層であり、100kHz下で比誘電率が6以上であり、
前記粘着剤層の厚さは、45μm以上90μm以下であり、
前記粘着剤層のガラスに対するウェッティング(wetting)時間が1sec~6secであり、
前記ウェッティング時間は、光学フィルムを幅50mm、長さ150mmとなるように裁断し、前記光学フィルムから保護層を剥離して、2kgローラーを使用してガラスに付着させた後、前記ガラスに粘着剤層がすべてウェッティングされる時間を意味する、光学フィルム。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された、発明を特定するための必要な事項である「粘着剤層」について、本件出願の出願当初の明細書の実施例の記載に基づき、「ウレタン系粘着剤層」に限定し、当該「粘着剤層」の「比誘電率」を、【0026】の記載に基づき、「3.5以上」から「6以上」に限定し、当該「粘着剤層の厚さ」を、【0058】の記載に基づき、「45μm以上90μm以下」に限定し、当該「粘着剤層」の「ガラスに対するウェッティング(wetting)時間」を、【0094】等の記載に基づき、「光学フィルムを幅50mm、長さ150mmとなるように裁断し、前記光学フィルムから保護層を剥離して、2kgローラーを使用してガラスに付着させた後、前記ガラスに粘着剤層がすべてウェッティングされる時間」に限定することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。

したがって、本件補正のうちの上記補正は、特許法17条の2第3項の規定する要件を満たしているとともに、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正後発明

本件補正後発明は、上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」において本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものと認める。

(2)引用文献及び引用発明

ア 引用文献1の記載事項

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原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された特開2017-39859号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は、当合議体が付与したものであって、引用発明の認定に用いた箇所に付与した。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーター付表面保護フィルムに関する。
・・・省略・・・
続きを表示(全18行)
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電も抑制できる、セパレーター付表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、
基材層A1と粘着剤層A2を含む保護フィルムPと、離型層B1と帯電防止層B2と基材層B3と帯電防止層B4をこの順に含むセパレーターQと、を有する表面保護フィルムであって、
該粘着剤層A2と該離型層B1が直接に積層されており、
該帯電防止層B4が最外層であり、
温度23℃、湿度50%RHにおいて、剥離角度150度、剥離速度10m/分で、該保護フィルムPから該セパレーターQを剥離したときの、該粘着剤層A2の表面の剥離帯電圧が2.0kV以下であり、該離型層B1の表面の剥離帯電圧が2.0kV以下である。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電も抑制できる、セパレーター付表面保護フィルムを提供することができる。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0017】
≪≪A.セパレーター付表面保護フィルム≫≫
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、基材層A1と粘着剤層A2を含む保護フィルムPと、離型層B1と帯電防止層B2と基材層B3と帯電防止層B4をこの順に含むセパレーターQと、を有する表面保護フィルムであって、該粘着剤層A2と該離型層B1が直接に積層されており、該帯電防止層B4が最外層である。本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、このような構成を有することにより、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電も抑制できる。本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい。
続きを表示(全91行)
【0018】
図1は、本発明の一つの実施形態によるセパレーター付表面保護フィルムの概略断面図である。図1に示すセパレーター付表面保護フィルム(1000)は、基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)と離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)をこの順に備える。基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)の積層部分が保護フィルムP(100)であり、離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)の積層部分がセパレーターQ(200)である。
【0019】
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、好ましくは、(i)基材層A1の粘着剤層A2と反対の側に帯電防止層A3を有する、(ii)基材層A1と粘着剤層A2との間に帯電防止層A4を有する、および、(iii)粘着剤層A2が帯電防止剤を含む、から選ばれる少なくとも1種である。本発明のセパレーター付表面保護フィルムが、上記(i)、(ii)、(iii)から選ばれる少なくとも1種であれば、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電をより抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電もより抑制できる。
【0020】
図2は、本発明の別の一つの実施形態によるセパレーター付表面保護フィルムの概略断面図である。図2に示すセパレーター付表面保護フィルム(1000)は、基材層A1の粘着剤層A2と反対の側に帯電防止層A3を有し(上記(i))、帯電防止層A3(70)と基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)と離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)をこの順に備える。帯電防止層A3(70)と基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)の積層部分が保護フィルムP(100)であり、離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)の積層部分がセパレーターQ(200)である。
【0021】
図3は、本発明の別の一つの実施形態によるセパレーター付表面保護フィルムの概略断面図である。図3に示すセパレーター付表面保護フィルム(1000)は、基材層A1と粘着剤層A2との間に帯電防止層A4を有し(上記(ii))、基材層A1(10)と帯電防止層A4(80)と粘着剤層A2(20)と離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)をこの順に備える。基材層A1(10)と帯電防止層A4(80)と粘着剤層A2(20)の積層部分が保護フィルムP(100)であり、離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)の積層部分がセパレーターQ(200)である。
【0022】
図4は、本発明の別の一つの実施形態によるセパレーター付表面保護フィルムの概略断面図である。図4に示すセパレーター付表面保護フィルム(1000)は、粘着剤層A2が帯電防止剤を含み(上記(iii))、基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)と離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)をこの順に備え、粘着剤層A2(20)が帯電防止剤(1)を含む。基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)の積層部分が保護フィルムP(100)であり、離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)の積層部分がセパレーターQ(200)である。
【0023】
図5は、本発明の別の一つの実施形態によるセパレーター付表面保護フィルムの概略断面図である。図5に示すセパレーター付表面保護フィルム(1000)は、基材層A1の粘着剤層A2と反対の側に帯電防止層A3を有し(上記(i))、粘着剤層A2が帯電防止剤を含み(上記(iii))、帯電防止層A3(70)と基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)と離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)をこの順に備え、粘着剤層A2(20)が帯電防止剤(1)を含む。帯電防止層A3(70)と基材層A1(10)と粘着剤層A2(20)の積層部分が保護フィルムP(100)であり、離型層B1(30)と帯電防止層B2(40)と基材層B3(50)と帯電防止層B4(60)の積層部分がセパレーターQ(200)である。
・・・省略・・・
【0029】
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、温度23℃、湿度50%RHにおいて、剥離角度150度、剥離速度10m/分で、保護フィルムPからセパレーターQを剥離したときの、該保護フィルムPの少なくとも一方の表面の表面抵抗値が、好ましくは1.0×104Ω~1.0×1012Ωであり、より好ましくは104Ω~1010Ωであり、さらに好ましくは104Ω~109Ωであり、特に好ましくは104Ω~108Ωである。上記保護フィルムPの少なくとも一方の表面の表面抵抗値が上記範囲内にあれば、本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電をより抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電もより抑制できる。
・・・省略・・・
【0031】≪A-1.保護フィルムP≫
本発明のセパレーター付表面保護フィルムにおいて、保護フィルムPは、基材層A1と粘着剤層A2を含む。保護フィルムPは、〔基材層A1〕/〔粘着剤層A2〕の積層体からなっていてもよいし、他の層をさらに有していてもよい。
【0032】
保護フィルムPは、好ましくは、基材層A1の粘着剤層A2と反対の側に帯電防止層A3を有するか、または、基材層A1と粘着剤層A2との間に帯電防止層A4を有する。保護フィルムPは、〔帯電防止層A3〕/〔基材層A1〕/〔粘着剤層A2〕の積層体からなっていてもよいし、〔基材層A1〕/〔帯電防止層A4〕/〔粘着剤層A2〕の積層体からなっていてもよいし、他の層をさらに有していてもよい。保護フィルムPがこのような構成を有することにより、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電をより抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電もより抑制できる。
【0033】
<A-1-1.基材層A1>
基材層A1は、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。基材層A1は、延伸されたものであってもよい。
・・・省略・・・
【0042】
<A-1-2.粘着剤層A2>
粘着剤層A2は、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよい。
【0043】
粘着剤層A2の厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。本発明の効果を十分に発現させるための観点から、粘着剤層A2の厚みは、好ましくは5μm~125μmであり、より好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは15μm~90μmであり、特に好ましくは20μm~80μmである。
【0044】
粘着剤層A2としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤層を採用し得る。このような粘着剤層A2は、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種の粘着剤を含む。
【0045】
粘着剤層A2中の粘着剤(例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種の粘着剤)の含有割合は、好ましくは96重量%~100重量%であり、より好ましくは97重量%100重量%であり、さらに好ましくは98重量%~100重量%であり、特に好ましくは99重量%~100重量%である。粘着剤層A2中の粘着剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、例えば、糊残り防止性やリワーク性に優れた粘着剤層とすることができる。
【0046】
粘着剤層A2中、または、粘着剤層A2中の粘着剤中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、触媒、ポリウレタン系樹脂以外の他の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などが挙げられる。
【0047】
特に、前述したように、本発明の効果をより発現させるために、粘着剤層A2は、帯電防止剤を含む場合がある。この場合、帯電防止剤は、好ましくは、粘着剤層A2中の粘着剤中に含まれる。この場合、粘着剤層A2中の粘着剤中の帯電防止剤の含有割合は、本発明の効果をより一層発現させるために、好ましくは0.001重量%~1.00重量%であり、より好ましくは0.002重量%~0.50重量%であり、さらに好ましくは0.003重量%~0.10重量%であり、特に好ましくは0.005重量%~0.05重量%である。
・・・省略・・・
【0100】
ウレタン系粘着剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のウレタン系粘着剤など、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。
【0101】
ウレタン系粘着剤としては、特に、ポリウレタン系樹脂を含むことが好ましい。
【0102】
ウレタン系粘着剤中のポリウレタン系樹脂の含有割合は、下限値として、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは55重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%であり、特に好ましくは65重量%であり、最も好ましくは70重量%であり、上限値として、好ましくは99.999重量%以下であり、より好ましくは99.99重量%以下であり、さらに好ましくは99.9重量%以下であり、さらに好ましくは99重量%以下であり、特に好ましくは95重量%以下であり、最も好ましくは90重量%以下である。ウレタン系粘着剤中のポリウレタン系樹脂の含有割合を上記範囲内に調整することにより、例えば、糊残り防止性やリワーク性に優れたウレタン系粘着剤とすることができる。
【0103】
ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂である。
・・・省略・・・
【0148】
ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、脂肪酸エステルを含む。ポリウレタン系樹脂が脂肪酸エステルを含むことにより、濡れ速度が向上し得る。脂肪酸エステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0149】
脂肪酸エステルの含有割合は、ポリオール(A)に対して、好ましくは5重量%~50重量%であり、より好ましくは7重量%~40重量%であり、さらに好ましくは8重量%~35重量%であり、特に好ましくは9重量%~30重量%であり、最も好ましくは10重量%~20重量%である。脂肪酸エステルの含有割合を上記範囲内に調整することによって、濡れ速度が一層向上し得る。脂肪酸エステルの含有割合が少なすぎると、濡れ速度が十分に向上できないおそれがある。脂肪酸エステルの含有割合が多すぎると、コスト的に不利になる問題が生じたり、粘着特性が維持できないという問題が生じたり、被着体が汚染されたりするという問題が生じたりするおそれがある。
【0150】
脂肪酸エステルの数平均分子量Mnは、好ましくは200~400であり、より好ましくは210~395であり、さらに好ましくは230~380であり、特に好ましくは240~360であり、最も好ましくは270~340である。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することによって、濡れ速度がより一層向上し得る。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが小さすぎると、添加部数が多くても濡れ速度が向上しないおそれがある。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが大きすぎると、乾燥時の粘着剤の硬化性が悪化し、濡れ特性に留まらずその他粘着特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0151】
脂肪酸エステルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な脂肪酸エステルを採用し得る。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンビスフェノールAラウリン酸エステル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、べへニン酸モノグリセライド、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸コレステリル、メタクリル酸ラウリル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、ステアリン酸メチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸トリグリセライド、ラウリン酸ブチル、オレイン酸オクチルなどが挙げられる。
・・・省略・・・
【0156】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させるために、好ましくは触媒を用いる。このような触媒としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。
【0157】
有機金属系化合物としては、例えば、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、鉄系化合物、錫系化合物が好ましい。
【0158】
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。
・・・省略・・・
【0166】
触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、触媒と架橋遅延剤などを併用してもよい。触媒の量は、ポリオール(A)に対して、好ましくは0.02重量%~0.10重量%であり、より好ましくは0.02重量%~0.08重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%~0.06重量%であり、特に好ましくは0.02重量%~0.05重量%である。触媒の量を上記範囲内に調整することにより、例えば、帯電防止性により優れ、糊残り防止性やリワーク性にもより優れた、ウレタン系粘着剤を提供することができる。
・・・省略・・・
【0170】
<A-1-3.帯電防止層A3、A4>
帯電防止層A3は、基材層A1の粘着剤層A2と反対の側に配置され得る。帯電防止層A4は、基材層A1と粘着剤層A2との間に配置され得る。
・・・省略・・・
【0178】
≪A-2.セパレーターQ≫
本発明のセパレーター付表面保護フィルムにおいて、セパレーターQは、離型層B1と帯電防止層B2と基材層B3と帯電防止層B4をこの順に含む。セパレーターQは、〔離型層B1〕/〔帯電防止層B2〕/〔基材層B3〕/〔帯電防止層B4〕の積層体からなっていてもよいし、他の層をさらに有していてもよい。セパレーターQがこのような構成を有することにより、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電をより抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電もより抑制できる。
【0179】
<A-2-1.基材層B3>
基材層B3の説明については、項目<A-1-1.基材層A1>で言及した基材層A1の説明がそのまま援用される。
【0180】
<A-2-2.帯電防止層B2、B4>
帯電防止層B2、B4の厚みは、本発明の効果をより発現させ得る点で、それぞれ、好ましくは5nm~100nmであり、より好ましくは10nm~80nmであり、さらに好ましくは15nm~60nmであり、特に好ましくは20nm~50nmである。
・・・省略・・・
【0189】
<A-2-3.離型層B1>
離型層B1は、粘着剤層A2からの剥離性を高めるために設けられる。
・・・省略・・・
【0199】
≪C.用途≫
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、帯電防止性に非常に優れるので、光学部材や電子部材の表面保護に好適に用いることができる。」
(ウ)「【実施例】
【0200】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。また、表中、例えば、1.23E+04とあるのは、1.23×104を意味する。
【0201】
続きを表示(全38行)
<表面抵抗値の測定>
温度23℃、湿度50%RHにおいて、剥離角度150度、剥離速度10m/分で、セパレーター付表面保護フィルムからセパレーターを剥離した。その後、残った保護フィルム部分の基材層側表面および粘着剤層側表面、ならびに、剥離したセパレーター部分の離型層側表面および基材層側表面の表面抵抗値を、TREK社製のMODEL152-1(152P-2Pプローブ)で測定した。測定は電圧10V、時間10sec、温度23℃、湿度50%RHで実施した。
・・・省略・・・
【0208】
[製造例1]
(〔帯電防止層〕/〔基材層〕の積層体(A)の製造)
導電コーティング剤として、S-948(中京油脂株式会社製):100重量部、P-795(中京油脂株式会社製):10重量部を、純水とエキネンF6(日本アルコール販売株式会社製)との混合溶液で0.3重量%に希釈し、導電コート液(a)を得た。得られた導電コート液(a)を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ株式会社製)に、ワイヤーバーで乾燥後の厚みが20nmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間3分の条件でキュアーして乾燥し、〔帯電防止層〕/〔基材層〕の積層体(A)を製造した。
【0209】
[製造例2]
(〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(B)の製造)
製造例1で得られた〔帯電防止層〕/〔基材層〕の積層体(A)の基材層側の表面に、製造例1で調製した導電コート液(a)を、ワイヤーバーで乾燥後の厚みが20nmとなう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間3分の条件でキュアーして乾燥し、〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(B)を製造した。
【0210】
[製造例3]
(〔離型層〕/〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(C)の製造)
シリコーン離型剤(信越化学工業株式会社製、KS-847):100重量部、触媒(信越化学工業株式会社製、CAT PL-50T):1.0重量部をトルエンで1.0重量%に希釈し、Si離型剤処理液を得た。得られたSi離型剤処理液を、製造例2で得られた〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(B)の一方の帯電防止層の表面に、ワイヤーバーで乾燥後の厚みが100nmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間3分の条件でキュアーして乾燥し、〔離型層〕/〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(C)を製造した。
・・・省略・・・
【0212】
[実施例1]
ポリオール(A)として、OH基を3個有するポリオールであるプレミノールS3011(旭硝子株式会社製、Mn=10000):85重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP-3000(三洋化成株式会社製、Mn=3000):13重量部、OH基を3個有するポリオールであるサンニックスGP-1000(三洋化成株式会社製、Mn=1000):2重量部を用い、多官能イソシアネート化合物(B)として多官能脂環族系イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社):18重量部、触媒(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄):0.04重量部、劣化防止剤としてIrganox1010(BASF製):0.50重量部、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、花王製、商品名:エキセパールIPM、Mn=270):30重量部、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド(第一工業製薬社製、AS110):1.5重量部、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF-6004):0.01重量部、希釈溶剤として酢酸エチル:241重量部を配合し、ディスパーで撹拌し、ウレタン系粘着剤組成物(U1)(帯電防止剤を含む)を得た。
得られたウレタン系粘着剤組成物(U1)(帯電防止剤を含む)を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ株式会社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間3分の条件でキュアーして乾燥した。このようにして、〔基材層〕/〔粘着剤層(帯電防止剤を含む)〕の積層体(P1)を得た。 得られた〔基材層〕/〔粘着剤層(帯電防止剤を含む)〕の積層体(P1)と、製造例3で得られた〔離型層〕/〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(C)とを、粘着剤層(帯電防止剤を含む)と離型層が直接に積層されるように貼り合せて、セパレーター付表面保護フィルム(1)を得た。得られたセパレーター付表面保護フィルム(1)は、常温で7日間エージングを行い、その後、各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0213】
[実施例2]
実施例1におけるウレタン系粘着剤組成物(U1)の製造において、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド(第一工業製薬社製、AS110)と両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、KF-6004)を用いなかった以外は、実施例1におけるウレタン系粘着剤組成物(U1)の製造と同様に行い、ウレタン系粘着剤組成物(U2)を得た。
得られたウレタン系粘着剤組成物(U2)を、製造例1で得られた〔帯電防止層〕/〔基材層〕の積層体(A)の帯電防止層の表面にファウンテンロールで乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間3分の条件でキュアーして乾燥した。このようにして、〔基材層〕/〔帯電防止層〕/〔粘着剤層〕の積層体(P2)を得た。
得られた〔基材層〕/〔帯電防止層〕/〔粘着剤層〕の積層体(P2)と、製造例3で得られた〔離型層〕/〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体(C)とを、粘着剤層と離型層が直接に積層されるように貼り合せて、セパレーター付表面保護フィルム(2)を得た。得られたセパレーター付表面保護フィルム(2)は、常温で7日間エージングを行い、その後、各種評価を行った。
結果を表1に示した。
・・・省略・・・
【0223】
【表1】
[図:0001403289000001.jpg]
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、光学部材や電子部材の表面保護に好適に用いることができる。」
(エ)「【符号の説明】
【0225】
1000 セパレーター付表面保護フィルム
100 保護フィルムP
続きを表示(全14行)
200 セパレーターQ
10 基材層A1
20 粘着剤層A2
30 離型層B1
40 帯電防止層B2
50 基材層B3
60 帯電防止層B4
70 帯電防止層A3
80 帯電防止層A4
1 帯電防止剤」

(オ)図1

[図:0001403289000002.jpg]

(カ)図2

[図:0001403289000003.jpg]

(キ)図3

[図:0001403289000004.jpg]

(ク)図4

[図:0001403289000005.jpg]

(ケ)図5

[図:0001403289000006.jpg]

イ 上記アに記載された事項に基づけば、実施例2(【0213】及び【0223】)として記載された「セパレーター付表面保護フィルム」は、【0021】及び図3に記載された「セパレーター付表面保護フィルム」を具体化した実施例であるから、実施例2の「〔基材層〕/〔帯電防止層〕/〔粘着剤層〕の積層体」を、「基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2である保護フィルムP」と、実施例2の「〔離型層〕/〔帯電防止層〕/〔基材層〕/〔帯電防止層〕の積層体」を、「離型層B1/帯電防止層B2/基材層B3/帯電防止層B4であるセパレーターQ」と、それぞれ記載し得る。また、実施例2として記載された「セパレーター付表面保護フィルム」の「保護フィルム」の粘着剤層側表面の表面抵抗値が、1.77×1010Ωであることは、【0023】に示される測定結果から読み取れる。

そうしてみれば、引用文献1には、実施例2として記載された「セパレーター付表面保護フィルム」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ウレタン系粘着剤組成物を、帯電防止層A4/基材層A1の積層体の帯電防止層A4の表面に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、乾燥し、基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2である保護フィルムPを得、
基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2である保護フィルムPと、離型層B1/帯電防止層B2/基材層B3/帯電防止層B4であるセパレーターQとを、粘着剤層A2と離型層B1が直接に積層されるように貼り合せて得たセパレーター付表面保護フィルムであって、
保護フィルムPの粘着剤層A2側表面の表面抵抗値が、1.77×1010Ωである、セパレーター付表面保護フィルム。」

(3)対比

本件補正後発明と引用発明とを対比する。

ア 基材層

引用発明は、「基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2である保護フィルムPと、離型層B1/帯電防止層B2/基材層B3/帯電防止層B4であるセパレーターとを、粘着剤層A2と離型層B1が直接に積層されるように貼り合せて得た」ものである。

かかる構成からみて、引用発明の「基材層A1」がフィルム状であって、「基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2」の積層構造からなる「保護フィルムP」が、基材として機能することは明らかであるところ、引用発明の「基材層A1」及び「保護フィルムP」は、それぞれ、本件補正後発明の「基材フィルム」及び「基材層」に相当する。

また、引用発明は、「保護フィルムP」と「セパレータ-」は、「粘着剤層A2と離型層B1が直接に積層されるように貼り合せて得た」ものであるところ、引用発明の「帯電防止層A4」は、「離型層B1」と向かい合うように「粘着剤層A2」によって接合されているといえる。「離型層B1」と向かい合うように接合されている「帯電防止層A4」の位置関係からみて、引用発明の「帯電防止層A4」は、本件補正後発明の「第2帯電防止層」に相当する。

さらに、引用発明の「保護フィルムP」は、「基材層A1」、及び、該「基材層A1」の片面に設けられた「帯電防止層A4」を含む。してみれば、引用発明の「保護フィルムP」は、本件補正後発明の「基材層」と、「基材フィルム、および該基材フィルムの片面に設けられた第2帯電防止層を含む」点で共通する。

イ 保護層

上記アに示した引用発明の構成からみて、引用発明の「基材層B3」がフィルム状であって、「離型層B1/帯電防止層B2/基材層B3/帯電防止層B4」の積層構造からなる「セパレーターQ」が、セパレーターとして保護フィルムPを保護する機能することは、引用文献1の【0003】の「粘着剤層の表面を保護するためにセパレーターが設けてられている」との記載に照らし明らかである。また、引用発明の「セパレーターQ」は、「離型層B1」を含む。してみれば、引用発明の「離型層B1」、「基材層B3」及び「セパレーターQ」は、それぞれ、本件補正後発明の「離型層」、「保護フィルム」及び「保護層」に相当する。

また、上記アに示した引用発明の構成からみて、引用発明の「セパレーターQ」は、「基材層B3」の両面にそれぞれ設けられた「帯電防止層B2」及び「帯電防止層B4」と、「帯電防止層B2」の「基材層B3」に接する面とは反対の面に接して設けられた「離型層B1」とを含む。ここで、本件補正後発明においては、「離型層」側の「帯電防止層」が「第3帯電防止層」であり、「離型層」とは反対側の「帯電防止層」が「第4帯電防止層」であるところ、引用発明の「帯電防止層B2」及び「帯電防止層B4」は、それぞれ、本件補正後発明の「第3帯電防止層」及び「第4帯電防止層」に相当する。

さらに、上記アに示した引用発明の構成と上記の点からみて、引用発明の「セパレーターQ」は、本件補正後発明の「保護層」の「保護フィルム、該保護フィルムの両面にそれぞれ設けられた第3帯電防止層および第4帯電防止層、および前記第3帯電防止層の前記保護フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた離型層を含む保護層とを含み」との要件を満たす。

ウ 基材層および保護層の接合

引用発明は、「保護フィルムP」と、「セパレーターQ」「とを、粘着剤層A2と離型層B1が直接に積層されるように貼り合せ」たものである。

かかる構成からみて、引用発明は、本件補正後発明の「前記基材層および保護層は、前記第2帯電防止層と前記離型層が向かい合うように粘着剤によって接合され」との要件を満たす。

エ 粘着剤層の離型層と接する面の表面抵抗

引用発明の「保護フィルムPの粘着剤層A2側表面の表面抵抗値は、1.77×1010Ωである」。

ここで、本件補正後発明の「粘着剤層の表面抵抗は、109Ω/sq以上5×1012Ω/sq以下であ」るところ、単位が「Ω」か「Ω/sq」であるかにおいて表現上相違するが、両者はともに、単位面積当たりの「表面抵抗」に係る値であって異なるところはない。

してみれば、引用発明の「粘着剤層A2」は、本件補正後発明の「粘着剤層」の「表面抵抗は、109Ω/sq以上5×1012Ω/sq以下であ」るとの要件を満たす。

オ 粘着剤層

引用発明は、「ウレタン系粘着剤組成物を、帯電防止層A4/基材層A3の積層体の帯電防止層A4の表面に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、乾燥し、基材層A1/帯電防止層A4/粘着剤層A2である保護フィルムPを得」たものである。

かかる構成からみて、引用発明の「粘着剤層A2」は、「ウレタン系粘着剤組成物を」「塗布し、乾燥し」て得たものである。してみれば、引用発明の「粘着剤層A2」は、本件補正後発明の「粘着剤層」の「ウレタン系粘着剤層であり」との要件を満たす。

(4)一致点及び相違点

ア 一致点

以上の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「 基材フィルム、および該基材フィルムの片面に設けられた第2帯電防止層を含む基材層と、
保護フィルム、該保護フィルムの両面にそれぞれ設けられた第3帯電防止層および第4帯電防止層、および前記第3帯電防止層の前記保護フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた離型層を含む保護層とを含み、
前記第2帯電防止層の前記基材フィルムに接する面とは反対の面に接して設けられた粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層の表面抵抗は、105Ω/sq以上5×1012Ω/sq以下であり、
前記粘着剤層は、ウレタン系粘着剤層である、光学フィルム。」

イ 相違点

本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違するか、又は一応相違する。

<相違点1>

「基材層」について、本件補正後発明では、「該基材フィルムの両面にそれぞれ設けられた第1帯電防止層および第2帯電防止層を含む」のに対して、引用発明は、「基材層A1」の片面に「帯電防止層A4」を含むものである点。

<相違点2>

「粘着剤層」について、本件補正後発明では、「100kHz下で比誘電率が6以上であ」るのに対して、引用発明においては、「粘着剤層A2」の比誘電率の値が明らかでない点。

<相違点3>

「粘着剤層」について、本件補正後発明は、「厚さは、45μm以上90μm以下であ」るのに対して、引用発明においては、「粘着剤層A2」の厚さは「25μm」である点

<相違点4>

「粘着剤層」について、本件補正後発明は、「ガラスに対するウェッティング(wetting)時間が1sec~6secであり、前記ウェッティング時間は、光学フィルムを幅50mm、長さ150mmとなるように裁断し、前記光学フィルムから保護層を剥離して、2kgローラーを使用してガラスに付着させた後、前記ガラスに粘着剤層がすべてウェッティングされる時間を意味する」るのに対して、引用発明においては、「粘着剤層A2」のウェッティング時間の値が明らかでない点。

(5)判断

上記相違点について検討する。

ア 相違点1について

引用文献1の【0017】には、「粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電も抑制できる」と記載されたうえで、「本発明のセパレーター付表面保護フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有してもよい。」と記載されている。そして、引用文献1の【0020】及び図2の実施形態並びに【0023】及び図5の実施形態には、現に、保護フィルム100の基材層10の粘着剤層20とは反対側に帯電防止層70が備えた例が示されている。また、基材フィルムの両側に帯電防止層を設けることは、特開2008-280520号公報(以下「引用文献2」という。)の【0009】及び図1、特開2008-255345号公報(以下「引用文献3」という。)の【0028】~【0030】)に記載されているように、本件優先日前に、保護フィルムの帯電防止に係る技術分野において周知の技術的事項である。そうすると、引用発明において、剥離帯電のみならず、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電を抑制すべく、粘着剤層と接する側に加えて、「保護フィルムP」の「粘着剤層A2」が形成されていない側にも帯電防止層を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

粘着剤層の比誘電率は、これを構成する材料に依存するところ、引用発明に係る「粘着剤層A2」は、「ウレタン系粘着剤」から構成され、その表面抵抗は1.77×1010Ωである。この点、本件明細書の【0096】の実施例2及び3には、粘着剤層を構成する樹脂がウレタンであって、その表面抵抗が5.2×1010と4.6×109である粘着剤層の比誘電率が、それぞれ6.4と7.2であることが示されている。

してみれば、引用発明の「粘着剤層A2」は、本件明細書の実施例2及び3と同じ「ウレタン系粘着剤」から構成され、表面抵抗も同程度のものであるから、その「100kHz下で比誘電率」も、上記相違点2に係る数値範囲内にある蓋然性が高く、上記相違点2は、実質的な差異ではない。

仮に、相違するとしても、引用発明は、引用文献1の【0007】に記載されているように「粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じ得る剥離帯電を抑制でき、設備や他のフィルム等との擦れによって生じ得る帯電も抑制できる、セパレーター付表面保護フィルムを提供」すべくなされた発明であって、粘着剤層の表面からセパレーターを剥離する際に生じる帯電を防止することを念頭において設計されたものであるところ、層を構成する材料の比誘電率が高ければ表面抵抗が増加し、その結果、その層の帯電防止能が向上することは物理の原則に照らし明らかである。また、粘着剤層の材料として用いられるウレタン樹脂の比誘電率として、「6以上」という値は、例えば、特開2012-251030号公報の【0132】及び【0150】に記載されているように、ごく普通の値である。

そうすると、引用発明において、ウレタン樹脂接着剤層として、帯電防止能を考慮して、「その100kHz下で比誘電率が6以上」のものを選択することに、格別の技術的困難性を見いだせない。

ウ 相違点3について

引用文献1の【0043】には、「粘着剤層A2の厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。本発明の効果を十分に発現させるための観点から、粘着剤層A2の厚みは、好ましくは5μm~125μmであり、より好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは15μm~90μmであり、特に好ましくは20μm~80μmである。」と記載されている。

そうすると、実施例2に記載の25μmの値の近傍で、上記一般的開示において、効果を十分に発現されるために、特に好ましいとされる範囲に設計変更し、上記相違点3に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について

ウェッティング時間について、確かに、引用文献1には、その明示の記載はない。しかしながら、引用文献1の【0148】~【0150】には、ポリウレタン系樹脂が脂肪酸エステルを含むことにより、濡れ速度が向上し得ること、脂肪酸エステルの含有割合や数平均分子量を調整することも記載されている。また、特開2016-138237号公報(以下「引用文献5」という。)の【0063】及び【0064】の実施例には、ガラスに対する粘着フィルムの濡れ速度を、37~71mm/秒とすることが記載されており、150mmのガラスに付着させた場合、概ね2.1(150/71)秒~4.1(150/37)秒であると算出できる。また、特開2015-151429号公報(以下「引用文献6」という。)の【0164】及び【0166】の実施例3及び6には、100mmの長さのガラスに対する粘着シートの濡れ性は、3秒であることが記載され、150mmのガラスに付着した場合は、概ね、4.5(3×150/100)秒であると算出できる。これらの記載に照らせば、一般に、粘着剤層のウェッティング時間は、概ね数秒程度とすることが技術常識であるといえる。

そして、引用発明も「光学部材や電子部材の表面保護に好適に用いること」(引用文献1の【0224】)を想定したものであるところ、引用発明に係る「粘着剤層A2」を、粘着剤層の分野における技術常識を踏まえ、引用文献1の上記指針に従って、実験的に濡れ速度を最適化して、相違点4に係るウェッティング時間の範囲内に設計することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)効果について

本件補正後発明に関して、本件明細書の【0010】には、「本願発明は、帯電防止性能に優れ、有機発光電子装置の製造工程中、素子の表面から剥離時、静電気によって発生する異物および素子の不良を防止する光学フィルムを提供する。」と記載され、また、本件明細書の表1(【0096】)、表2(【0097】)、表3(【0098】)には、帯電防止性能について、実施例のデータをもって示されている。

しかしながら、これらの効果は、本件出願の優先日当時、本件補正後発明の構成が奏するものとして、引用発明、または、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、当該構成から当業者が予測することができた効果を超える顕著なものではない。

(7)審判請求人の主張について

ア 審判請求人は、令和4年8月10日提出の手続補正書(方式)において、「引用文献1には、ウェッティング時間が具体的に記載されず、また、引用文献1に具体的に記載された粘着剤層の厚さが補正後の本願発明と異なり、さらに、引用文献1、5及び6には、粘着剤層の厚さによる比誘電率、表面抵抗、ウェッティング時間についての技術的効果が記載も示唆もされていないため、比誘電率、表面抵抗及びウェッティング時間の向上を目的として、引用文献1~6に基づいて、補正後の本願発明及び技術的効果を当業者は容易に想到することができません。」(以下「主張1」という。)、令和5年1月6日提出の上申書において、「以上より、引用文献1の実施例2に具体的に記載された粘着剤は、濡れ性向上のために、脂肪酸エステルが配合されているが、本願比較例3を参照すると、長鎖脂肪酸エステルの配合によって、本願発明の課題である帯電防止性能を達成できないことが記載されているため、引用文献1の実施例2に記載される粘着剤が、本願発明の誘電率を達成する蓋然性が高いとは言えないこと、また、引用文献1~6には、比誘電率は記載も示唆もされていないことから、引用文献1~6に触れた当業者であったとしても、ウェッティング性及び比誘電率を所定の範囲で同時に満たす本願発明の技術的効果を容易に想到することはできません。」(以下「主張2」という。)と主張している。

イ 上記主張1についてみると、比誘電率は物質に固有の値を有するものであるところ、層の厚さとは無関係に定まるものであるから、請求人の主張は妥当なものとして採用できない。また、粘着剤層の厚さによる比誘電率、表面抵抗、ウェッティング時間についての技術的効果については、上記(5)イ~オで述べたとおり、引用発明、または引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別なものとはいえない。

上記主張2について、本件明細書の比較例3は、アクリル系の粘着剤を用いたものであって、そもそも、ウレタン系粘着剤を用いた引用発明とは異なるものである。そして、比較例3から、アクリル系の粘着剤に、長鎖脂肪酸エステルを配合したことにより、帯電防止能が低下することが読み取れたとしても、これとは異なる主成分からなるウレタン系粘着剤を用いた場合においても、濡れ性向上のために配合した脂肪酸エステルにより、ただちに帯電防止能が低下するなどとはいえないし、引用文献1には、上記(5)エで述べたとおり、効果を損なわない範囲で、濡れ性を向上させるために脂肪酸エステルを添加することが記載されているのであるから、帯電防止能を損なわずにウエッティング性を所定の範囲に満たす構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

(8)小括

以上のことから、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2、3、5及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正却下の決定のむすび

本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項に規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記「第2 令和4年8月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定」[結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

記

引用文献1:特開2017-39859号公報
引用文献2:特開2008-280520号公報
引用文献3:特開2008-255345号公報
引用文献5:特開2016-138237号公報
引用文献6:特開2015-151429号公報

(当合議体注:引用文献1は、主引用文献であり、引用文献2、3、5及び6は、周知技術を示す文献である。)

3 引用文献及び引用発明

引用文献1の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。

4 対比及び判断

本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記第2[理由]1の補正事項に係る限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定した本件補正後発明も、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2、3、5及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2、3、5及び6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-012180

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