2022-011931
長尺フィルムのレーザ加工方法
- 審判番号
- 2022-011931
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-229846外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月02日
- 審決日
- 2023年05月23日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日東電工株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人まこと国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
本件出願は、平成29年11月30日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 令和4年8月2日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年8月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1~3は、次のとおり補正された。(下線部は、本件補正により記載を変更した個所として本件審判請求人が付したものである。)
「 【請求項1】長尺フィルムを第1の搬送ロールと第2の搬送ロールとの間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノスキャナの偏向動作によって前記長尺フィルムにレーザ光を走査しながら照射することで、前記長尺フィルムを切断する工程を含み、予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御し、前記第1の搬送ロールは搬送方向下流側に位置し、前記第2の搬送ロールは搬送方向上流側に位置し、前記第1の搬送ロールの回転速度を前記第2の搬送ロールの回転速度よりも大きく設定する、続きを表示(全11行)ことを特徴とする長尺フィルムのレーザ加工方法。【請求項2】前記ガルバノスキャナの偏向動作による前記レーザ光の走査速度及び前記長尺フィルムの搬送速度の合成速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とによって決まる前記長尺フィルム上での前記レーザ光の走査位置が、前記所望する前記長尺フィルムの切断形状に合致するように、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の長尺フィルムのレーザ加工方法。【請求項3】前記長尺フィルムの搬送速度を測定し、前記所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記測定した前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺フィルムのレーザ加工方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、すなわち令和3年12月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】長尺フィルムを第1の搬送ロールと第2の搬送ロールとの間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノスキャナの偏向動作によって前記長尺フィルムにレーザ光を走査しながら照射することで、前記長尺フィルムを切断する工程を含み、予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御し、前記第1の搬送ロールは搬送方向下流側に位置し、前記第2の搬送ロールは搬送方向上流側に位置し、前記第1の搬送ロールの回転速度を前記第2の搬送ロールの回転速度よりも大きく設定する、続きを表示(全11行)ことを特徴とする長尺フィルムのレーザ加工方法。【請求項2】前記長尺フィルムの切断形態がハーフカットである、ことを特徴とする請求項1に記載の長尺フィルムのレーザ加工方法。【請求項3】前記長尺フィルムの搬送速度を測定し、前記所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記測定した前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺フィルムのレーザ加工方法。」
(3)本件審判請求人による審判請求書での本件補正についての説明
本件審判請求人は、令和4年8月2日提出の審判請求書の3.(1)において、本件補正の根拠について、以下の旨、説明をしている。
ア 本件補正後の請求項1は、拒絶査定時の請求項1の構成と、出願当初の明細書の段落0034に記載の構成とを組み合わせた構成に相当する。
イ 本件補正後の請求項2の特徴部分は、出願当初の明細書の段落0034に記載の構成に相当する。
ウ 本件補正後の請求項3の特徴部分は、拒絶査定時の請求項3の特徴部分の構成と出願当初の明細書の段落0034の記載の構成とを組み合わせた構成に相当する。
エ 本件補正後の請求項1における構成は、拒絶査定時の請求項1の構成を概念的に下位にしたものである。
本件補正後の請求項2における構成は、拒絶査定時の請求項1の構成を概念的に下位にしたものである。
本件補正後の請求項3における構成は、拒絶査定時の請求項3の構成を概念的に下位にしたものである。
そして、本件補正の前後において、解決すべき課題及び産業上の利用分野は同一であるから、本件補正による特許請求の範囲の補正は、限定的減縮に該当し、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。
2 本件補正の適否
(1)補正の目的要件について(特許法第17条の2第5項)
ア 上記1の(1)と(2)とを比較すれば、本件補正のうちの請求項1に係る補正事項は、本件補正前の請求項1の構成を概念的に下位にするものであるとともに、請求項2に係る補正事項は、本件補正前の請求項2を削除した後に、上記1(3)エの主張のとおり、本件補正前の請求項1の構成を概念的に下位にするものであるといえる。
イ しかしながら、特許法第17条の2第5項第2号の規定は、請求項の発明特定事項を限定して減縮補正する態様により、補正前の請求項と補正後の請求項とは、実質上一対一の対応関係に立つ補正を定めたものである。そして、一つの請求項に記載された発明を複数の請求項に分割し、新たな請求項を追加する態様による補正は、たとえそれが全体として一つの請求項に記載された発明特定事項を限定するものであるとしても、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とするときや、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とするときを除き、同2号の定める「特許請求の範囲の減縮」にはあたらないと解される(例えば、知的財産高等裁判所平成17年4月25日判決(平成17年(行ケ)10192号)、以下のURLのPDFファイルの第6~8ページ第5の2、特に、第7ページ第19~27行を参照(https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/614/009614_hanrei.pdf)。)。
ウ してみると、本件補正のうち請求項2に係る補正事項は、補正前の請求項2を削除した後に、補正前の請求項1を限定するものであるから、補正前の請求項2と補正後の請求項2とは、実質上一対一の対応関係に立っているとはいえないし、請求項1に係る補正事項も考慮すると、請求項1~2に係る補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を請求項1及び2に分割し、新たな請求項を追加する態様に相当する。
そして、請求項1~2に係る補正事項は、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とするときや、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とするときには該当しないから、特許法第17の2第5項第2号に規定される、いわゆる「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものであるとはいえない。
エ また、請求項1~2に係る補正事項は、請求項の削除(同項第1号)、誤記の訂正(同項第3号)又は明瞭でない記載の釈明(同項第4号)を目的とするものであるともいえない。
オ したがって、請求項1~2に係る補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
(2)独立特許要件について(特許法第17条の2第6項)
ア はじめに
特許請求の範囲についてする本件補正は、上記(1)のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。なお、特許請求の範囲の請求項1に係る本件補正についてのみみれば、本件補正前の請求項1における「ガルバノスキャナの偏向動作を制御」する点に関して、「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づ」くと特定していた事項を、本件補正後の請求項1では「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づ」くと限定するものであって、かつ、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明とは、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることに鑑み、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げるいわゆる「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものであったとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される「特許出願の際独立して特許を受けることができるもの」であるか(独立特許要件)について、以下、検討する。
イ 特許法第29条第2項(進歩性)について
(ア)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1(1)の【請求項1】に記載されたとおりのものであると認める。
(イ)引用文献に記載された発明、引用文献に記載された技術的事項、周知技術の認定
A 引用文献1に記載された発明の認定
(A)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2016-107288号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、本項目以降の下線は当審にて付した。)。
(a)背景技術
「【0002】近年、紙やフィルムなどの長尺状の被加工物に対しても、加工自由度の高いレーザー加工装置による加工が一般化してきている。例えば、特許文献1にかかる例が記載されている。【0003】一般的な方式のレーザー加工装置においては、図7に示すように、図示しないレーザー光発射装置より発射されたレーザー光108を集光レンズ(凸レンズ)107により集光させるとともに、その光路に可動可能なミラー106などを配設することにより光路を例えば181~185の各方向に誘導し、焦点192にそれぞれ集光させる。この集光したレーザー光により被加工物9の穴開け、切断などの加工を行う。」
(b)発明を実施するための形態
「【0017】以下に、図1~ 図6を参照し、本発明のレーザー加工装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、図中に記載したように、x方向とは、被加工物である長尺状のフィルムの移動方向を指す。y方向とは、同フィルムの表面上において、x方向に対して垂直な方向、即ちフィルムの幅方向を指す。また、z方向とは、x方向およびy方向に対して垂直な方向、即ち同フィルムの表面に対して垂直な方向を指す。【0018】図1・図2・図3・図4は、それぞれ本実施形態に係るレーザー加工装置の斜視図・正面図・平面図・側面図である。図1および図3からあきらかなように、このレーザー加工装置において、レーザー光を発射するためのレーザー発射部であるレーザー発振器1と、折り返しミラー21,22,23とビームエキスパンダー3および走査部4は略同一平面上に設けられている。図1~図3に示されるように、この平面と略平行な平面、即ちx-y平面に沿って、被加工物である長尺状のフィルム9が、図示しないフィルム供給装置によって、x方向に一定速度で供給される。続きを表示(全29行)【0019】なお、図3に示すように、レーザー発振器1および折り返しミラー21の間や、折り返しミラー21および折り返しミラー22の間などには安全のため、それぞれダクトが設けられているが、説明の便のため他の図では図示していない。また同様に、実際には安全上等の目的で必要となるカバー類も、図示していない。【0020】レーザー発射部であるレーザー発振器1としては、レーザー媒体で分類すると、CO2レーザーやエキシマレーザー等の気体レーザー、ルビーレーザーやNd:YAGレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、レーザーダイオード等を用いる半導体レーザー等が挙げられる。また、励起源としては、放電を用いるもの、フラッシュランプを用いるもの、レーザーダイオードを用いるもの、化学反応を用いるもの等が挙げられる。用途に応じていずれかを組み合わせて使用すれば良い。一般的には、高出力が得られる炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)が好ましい。【0021】折り返しミラー21~23は、レーザー発振器1から発射されたレーザー光をビームエキスパンダー3の入射口に誘導するために用いられる。レーザー発振器1から発射されたレーザー光を折り返しミラー21~23によって順に反射させた後、ビームエキスパンダー3に入射させることにより、レーザー発振器1からビームエキスパンダー3の入射口までに一定の光路長を確保することができる。その間に、レーザー光中の不純な成分を取り除くことができる。【0022】ビームエキスパンダー3はレーザー光を一定の倍率の平行光束に広げるレンズである。入射したレーザー光を走査部4内に設けられたガルバノスキャナのミラーに合った光束に調整するために使用する。また、このビームエキスパンダー3をy方向に移動させることにより、レーザー光の焦点距離を調整することができる。【0023】イメージ図である図5に示すように、走査部4内には、2組のガルバノスキャナ5,6およびfθレンズ7が備えられている。ガルバノスキャナ5は、ミラー51と、ミラー51に取り付けられた回動軸52と、回動軸52を制御する図示しない制御装置を備えている。この制御装置により回動角を制御された回動軸52を回動させることにより、ミラー51の角度を、回動軸を中心とした自在な角度に高速で変化させることができる。よって、ミラー51に照射されたレーザー光8を、1次元方向において自在な角度に反射させ、誘導することができる。【0024】ガルバノスキャナ6は、ミラー61と、ミラー61に取り付けられた回動軸62と、回動軸62を制御する図示しない制御装置を備えている。回動軸62の軸芯方向は、回動軸52の軸芯方向とは異なる方向に向けられている。このガルバノスキャナ6もガルバノスキャナ5と同様に、ミラー61に照射されたレーザー光8を1次元方向に自在に誘導することができる。したがって、2組のガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6を組み合わせることにより、2次元方向、即ちx-y平面上の一定領域を占める加工領域91上の任意の加工点にレーザー光を誘導することが可能となる。つまり、ガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6は誘導部として機能する。【0025】ガルバノスキャナ5およびガルバノスキャナ6により誘導されたレーザー光は、fθレンズ7に照射される。fθレンズとは、入射角度θに比例した像高Yをもち、焦点距離がfである場合にY=fθの関係を有するレンズである。このfθレンズを用いることにより、ガルバノスキャナ6により偏向されたレーザー光の焦点が平面上に分布するように、レーザー光を集光することができる。【0026】具体的には、図6に示すように、ガルバノスキャナ6により偏向されfθレンズ7に入射したレーザー光81~85は、いずれも、加工領域91に略垂直に集光する。つまり、fθレンズ7が集光部として機能する。この加工領域91にフィルムを供給すれば、フィルムの加工が可能となる。このように、入射角にかかわらず、レーザー光が同一平面上に集光するため、加工開始前に一度加工領域91とフィルム表面とを一致させれば、レーザー加工中に集光部であるfθレンズ7を移動させる必要がない。また、フィルム9の表面上に垂直にレーザー光が垂直に集光するため、正確な加工が可能となる。【0027】フィルム9を供給する被加工物供給部としては、図1および図3を参酌し、リールに巻回された加工前のフィルム9を取り付ける巻出し軸と、加工後のフィルムを巻き取るリールを取り付ける巻取り軸とを備えた、図示しないフィルム供給装置が例示される。かかるフィルム供給装置によりフィルム9はx方向に順次供給される。【0028】上述したように、本実施形態のレーザー加工装置においては、加工中に垂直方向、即ち、z軸方向へ焦点距離を調整する必要がないため、フィルム供給装置を加工中に、z軸方向へ移動させる必要がない。また、フィルムの幅方向、即ちy軸方向にもレーザー光は誘導され、フィルム表面に対して略垂直に集光するため、フィルム供給装置を加工中に、y軸方向へ移動させる必要がない。更に、フィルムの進行方向、即ちx軸方向にもレーザー光は誘導され、フィルム表面に対して略垂直に集光するため、フィルム供給速度を加工中に変化させたり、供給の向きを変えたりする必要がない。即ち、フィルムを一定の方向および向きに等速で供給できれば良い。従って、フィルム供給装置を簡素な構造とすることが容易となる。さらには、可動部分が少ないことから、幅広のフィルムを加工する必要があるなどの理由により装置を大型化せざるを得ない場合であっても、対応が容易である。【0029】このレーザー加工装置によるフィルム9の加工は、例えば、以下のように行う。まず、被加工物であるリールに巻回されたフィルム9を巻出し軸に取り付け、巻出し端部を巻き取り軸に取り付けられたリールに巻き付ける。続いて、レーザー光を発射し、安定したら、ビームエキスパンダー3をy方向に移動させることにより焦点をフィルム9の被加工面上に合わせる。この作業はフィルム9を止めた状態で行っても良いが、移動させた状態で行うことにより、より正確に行うことができる。その後加工を開始する。加工終了後、巻き取り軸に巻き取られた加工されたフィルムを回収する。」
(c)効果
「【0031】(1)本実施形態のレーザー加工装置において、被加工物である長尺状フィルムは、加工中において、同一の方向および向きに一定の速度で行われるため、供給の方向や向きを加工に応じて変化させたり供給速度を変化させたりする場合に比べ、被加工物供給部の構造や制御を簡素なものにすることができる。また装置の大型化も容易である。【0032】(2)本実施形態のレーザー加工装置は、互いに軸芯方向が異なる回動軸52,62に取り付けたミラー51,61を2組備えているため、ミラー51,61に順にレーザー光8を反射させることにより、2次元方向、即ち、平面上の領域にレーザー光8を誘導することができる。従って、平面上の一定領域を占める加工領域91上の任意の加工点にレーザー光8を誘導することが可能となる。【0033】(3)本実施形態のレーザー加工装置は、平面上の一定領域を占める加工領域91上の任意の加工点にレーザー光8を集光することができる構成であるため、装置全体を加工中に移動させたり、被加工物であるフィルム9をy軸方向に移動させたりすることなく、加工領域91全体にわたり正確に加工することが可能である。また、x軸方向においても、フィルム9の供給速度を変えたり、移動の向きを反転なさせたりすることなく一定方向に等速で供給するだけで良い。そのため、加工の精度を低下させることなく、高速加工を実現しうる。」
(d)図面
「【図1】[図:0001400172000001.jpg]」
「【図5】[図:0001400172000002.jpg]」
(B)引用文献1に記載された事項からわかること
(a)上記(A)(a)の段落【0002】~【0003】、並びに同(b)の段落【0018】及び【0029】の記載から、引用文献1には、レーザー光により長尺状のフィルム9の切断などの加工を行うレーザー加工装置による加工方法に関する発明が記載されていることがわかる。
(b)上記(A)(b)の段落【0017】~【0018】及び【0027】~【0029】の記載、並びに同(d)の【図1】から、引用文献1に記載のレーザー加工装置は、長尺状のフィルム9を、巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリールと、巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリールとの間で、長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向に一定速度で供給するものであることがわかる。
(c)上記(A)(b)の段落【0023】~【0026】の記載、及び同(d)の【図5】から、引用文献1に記載のレーザー加工装置は、ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62を回動させることによってレーザー光8を誘導し、fθレンズ7を介して長尺状のフィルム9の加工領域91上の任意の加工点にレーザー光8を集光するものであることがわかる。
(d)上記(A)(a)の段落【0003】、同(b)の段落【0028】~【0029】の記載、及び同(c)の段落【0031】~【0033】の記載から、引用文献1に記載のレーザー加工装置による加工方法は、上記(b)のとおり、長尺状のフィルム9をx方向に一定速度で供給しながら、上記(c)のとおり、長尺状のフィルム9にレーザー光8を誘導しながら集光するものであって、それにより、長尺状のフィルム9の切断などの加工を行う工程を含んでいることがわかる。
(e)上記(c)に関し、上記(A)(b)の段落【0023】~【0024】の記載から、引用文献1に記載されたガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動は、制御装置によって制御されるものであることがわかる。また、上記(A)(c)の段落【0032】~【0033】の記載を併せてみれば、引用文献1に記載されたレーザー加工装置による加工方法では、制御装置によってガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御することにより、x方向に一定方向に等速で供給される長尺状のフィルム9に対し、加工領域91全体にわたり正確に加工することを可能とし、言い換えれば、x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために、ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御することがわかる。
(f)上記(b)に関連し、上記(A)(b)の段落【0027】及び【0029】の記載、並びに同(d)の【図1】から、巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリールは、長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向の下流側に位置し、巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリールは、長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向の上流側に位置することがわかる。
(C)引用発明1
上記(A)及び(B)から、引用文献1に記載された事項を本件補正発明の記載にあわせて整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている、といえる。
「長尺状のフィルム9を、巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリールと、巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリールとの間で、長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向に一定速度で供給しながら、ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動によって前記長尺状のフィルム9にレーザー光8を誘導しながら集光することで、前記長尺状のフィルム9を切断する工程を含み、x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御し、前記巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリールはx方向下流側に位置し、前記巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリールはx方向上流側に位置する、長尺状のフィルム9のレーザー加工装置による加工方法。」
B 引用文献2に記載された技術的事項の認定
(A)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2017-111864号公報(平成29年6月22日出願公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)発明を実施するための形態
「【0019】図1は、本実施形態に係る電極切断装置の全体構成を模式的に示す図である。図1に示す電極切断装置1は、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置の製造システムに組み込まれる装置である。具体的には、電極切断装置1は、帯状電極10を搬送しながら、当該帯状電極10を予め定められた電極形状に切断することにより個片電極15に個片化し、当該個片電極15の表面の画像を画像検査のために撮像する。個片電極15の例としては、例えば電極組立体を構成する正極又は負極が挙げられる。・・・【0022】続きを表示(全21行)図1に示すように、電極切断装置1は、第1搬送部2、切断部3、第1撮像部4、第2搬送部5、第2撮像部6、及び第3搬送部7を含んで構成される。図1の例では、電極切断装置1は、水平方向に沿った搬送方向(X軸方向)に帯状電極10を搬送しながら個片電極15に個片化し、個片電極15の鉛直方向(Z軸方向)上側(他方側)の表面及び鉛直方向下側(一方側)の表面の画像を画像検査のために取得するように構成されている。なお、本実施形態では、帯状電極10は上述した正極を作成するための母材であり、個片電極15は正極である場合を例として説明する。・・・【0024】第1搬送部2は、長尺の帯状電極10の下面(一方側の表面)10bに当接して帯状電極10を支持する搬送面(第1搬送面)22aを有する。具体的には、ローラ対21,21によって循環させられる搬送ベルト22の搬送方向に移動する部分の上面が、搬送面22aとして機能する。第1搬送部2は、ローラ対21,21の回転によって搬送ベルト22を循環させ、搬送面22aを搬送方向に移動させることにより、帯状電極10を所定の搬送速度で搬送方向に搬送する。・・・【0026】搬送ベルト22の内側であって搬送面22aの下方の部分には、吸着部(第1吸着部)23が設けられている。吸着部23は、例えば、搬送面22a上の空間に貫通孔22bを介して連通する閉空間を形成するダクトと、当該ダクト内の空間を負圧にするバキュープポンプや負圧ファン等の所定の減圧手段とによって構成される。吸着部23は、所定の減圧手段によってダクト内の空間を負圧にすることにより、搬送面22a上に載置される被搬送物(すなわち、帯状電極10及び後述する切断部3によって個片化された個片電極15)を搬送面22aに吸着させる。これにより、帯状電極10及び個片電極15が搬送面22aに位置決めされ、帯状電極10及び個片電極15の両方の位置ずれの発生が抑制される。・・・【0028】図3及び図4に示すように、帯状電極10において個片電極15のタブT及びタブT側の縁部に対応する部分(すなわち帯状電極10が後述する切断部3によって打ち抜かれることによって個片電極15のタブT及びタブT側の縁部が形成される部分)には、正極活物質層12,13は塗工されておらず、金属箔11が露出した状態となっている。帯状電極10は、例えばロール状に巻かれて所定のリールにセットされており、当該リールから第1搬送部2に供給される。図4に示すように、第1搬送部2に供給される帯状電極10は、当該帯状電極10の長手方向が搬送方向に平行になるように、搬送面22a上の予め定められた幅位置(Y軸方向における予め定められた位置)に載置される。【0029】切断部3は、第1搬送部2によって搬送中の帯状電極10を切断することにより、帯状電極10を個片電極15に個片化する加工装置である。本実施形態では一例として、切断部3は、レーザLを帯状電極10に照射することにより帯状電極10の切断加工を実行する装置である。ただし、帯状電極10の切断加工は、レーザによる切断に限られず、例えば金型を用いた打ち抜き加工等であってもよい。【0030】切断部3は、搬送面22aの上方の所定の移動可能範囲内において、X軸方向及びY軸方向の各々に移動可能に構成されている。図4に示すように、切断部3は、予めプログラムされた所定の移動パターンでX軸方向及びY軸方向に移動することにより、レーザLの照射位置Pを移動させる。これにより、切断部3は、帯状電極10を所定の切断パターンで切断し、個片電極15を得る。【0031】より具体的には、切断部3は、第1搬送部2の搬送速度と等速度でX軸方向に移動しつつ、所定の速度でY軸方向に移動することにより、帯状電極10の幅方向に沿って帯状電極10を切断することができる。また、切断部3は、Y軸方向における所定の位置にレーザLの照射位置Pを固定することにより、帯状電極10の長手方向に沿って帯状電極10を切断することができる。従って、切断部3は、例えば、個片電極15の形状及び第1搬送部2の搬送速度等に応じて予め決定される動作パターンに基づいてレーザLの照射位置Pを移動させることにより、帯状電極10から個片電極15を切り抜くことができる(図4参照)。また、切断部3は、1つの個片電極15を切り抜く際の動作パターンを繰り返し実行することにより、図4に示すように、複数の個片電極15が連続して整列するように切断加工を実行する。」
(b)
「【0052】なお、本実施形態においては、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、個片電極15は、上述した正極及び負極以外に、タブを除いた部分が袋状のセパレータ内に収容された状態となっているセパレータ包み正極であってもよい。ここで、セパレータの形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。・・・【0057】また、個片電極15がセパレータ包み正極である場合、それに対応する帯状電極10は、等間隔に並べられた複数の正極の両面側にシート状のセパレータが重ねられ、個々の正極の周囲(或いは周囲の一部)において一対のセパレータ同士が溶着されたものとなる。この場合、切断部3による切断によって得られる個片電極15は、上述したセパレータ包み電極となり、上述した構成の電極切断装置1によって、セパレータ包み電極の両面(すなわち、セパレータ表面)の画像検査を精度良く実行することができる。」
(c)図面
「【図1】[図:0001400172000003.jpg]」
「【図3】[図:0001400172000004.jpg]」
「【図4】[図:0001400172000005.jpg]」
(B)引用文献2に記載された事項からわかること
(a)上記(A)(a)の段落【0019】、【0022】、【0024】及び【0029】~【0031】の記載から、引用文献2には、長尺の帯状電極10を長手方向に所定の搬送速度で搬送しながら、帯状電極10にレーザLの照射位置Pを移動させながらレーザLを照射することで、長尺の帯状電極10を予め定められた電極形状を有する個片電極15に切断する電極切断装置1による加工方法に関する技術が記載されていることがわかる。また、上記(A)(a)の段落【0024】並びに同(b)の段落【0052】及び【0057】の記載から、個片電極15がタブTを除いた部分が袋状の多孔質フィルムからなるセパレータ内に収容された状態となっているセパレータ包み正極とする例が示され、この場合、個片電極15に切断される前の母材である長尺の帯状電極10も多孔質フィルムに覆われていることがわかる。
(b)上記(A)(b)の段落【0019】及び【0030】~【0031】の記載、並びに同(c)の【図1】及び【図4】から、引用文献2に記載の加工方法では、長尺の帯状電極10を、予め定められた電極形状に切断するために、所定の切断パターンである予め定められた電極形状と、第1搬送部2の搬送速度、言い換えれば、長尺の帯状電極10の搬送速度とに基づき、レーザLの照射位置Pを移動しながら、レーザLを照射する制御を実行していることがわかる。
(C)引用文献2記載の技術的事項
上記(A)及び(B)から、引用文献2に記載された事項を本件補正発明の記載にあわせて整理すると、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されている、といえる。
「多孔質フィルムに覆われる長尺の帯状電極10を長手方向に所定の搬送速度で搬送しながら、長尺の帯状電極10にレーザLの照射位置Pを移動させながらレーザLを照射することで、長尺の帯状電極10を切断する電極切断装置1による加工方法であって、予め定められた電極形状と、長尺の帯状電極10の搬送速度とに基づき、レーザLの照射位置Pを移動しながらレーザLを照射する制御を実行すること。」
C 引用文献7に記載された技術的事項の認定
(A)引用文献7に記載された事項
本審決にて新たに引用する、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2004-298914号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)従来の技術
「【0002】
【従来の技術】
「近年、用紙等の加工媒体に折込線や切取線の形成や、所定形状での抜きを行う加工に際して、型押し刃を使用して行っていたものを、レーザ光を照射してレーザ加工することが盛んになってきている。このようなレーザ加工では加工媒体を加工位置まで搬送して行うことから、当該搬送による傾きや寄りを生じることもあって、加工品質を維持させる必要がある。」
(b)第3実施形態にも配置されるレーザ照射手段15
「【0015】上記レーザ照射手段15は、搬送される加工媒体17に対して、レーザ光を照射することで貫通または非貫通の加工を行うもので、図示しないが、例えばレーザ発生機構およびガルバノ機構等のスキャン機構を備えた既存のシステムを使用することができる。上記レーザ発生機構は、例えば既存のレーザ発生の機構によりCO2レーザ、YAGレーザ等の適宜選択されたレーザ光を発生させるものである。そして、レーザ加工による加工媒体17への貫通または非貫通(ハーフカット)は、上記レーザ発生機構によるレーザパワー(例えば周波数で可変)で設定することができる。例えば、加工形態における切取線や折込線等の加工ラインにおいては断続的な貫通による図示のようなミシン目線や、連続または断続のハーフカット線により形成される。」
(c)第3実施形態
「【0044】次に、図9に、本発明の第3実施形態に係るレーザ加工システムの構成図を示す。図9(A)に示すレーザ加工システム11は、加工対象が連続の加工媒体としたもので、ロール状の媒体供給手段71と媒体巻取手段72との間で、連続加工媒体73が搬送されるもので、当該連続加工媒体73の加工領域毎にタイミングマーク73A(図9(B)参照)が予め設けられている。そして、搬送される連続加工媒体73の加工領域の上方に、上記同様のレーザ照射手段15が配置され、当該レーザ照射手段15の搬送方向前段に寄り検出手段であるセンサ群74が配置される。【0045】上記センサ群74は、図9(B)、(C)に示すように、搬送される連続加工媒体73の端部を上下より挟むように、発光素子群74Aと受光素子群74B(例えば10個の受光素子P1~P10)が配置されたものである。当該センサ群74は固定配置されることから、各受光素子P1~P10の配置位置および間隔が既知であり、例えば搬送される連続加工媒体73に寄りがないときにはP1~P5が検出状態で受光しないものとして基準が設定される。続きを表示(全20行)【0046】ここで、図10に、図9のレーザ加工システムにおける制御処理手段のブロック構成図を示す。図10において、制御処理手段81は、適宜、制御手段82、バス83、IF84、寄り量演算手段85、加工データファイル作成手段86、レーザ照射制御手段87、および巻取制御手段88を備える。上記制御手段82は、このシステムの駆動制御を統括するもので、そのためのプログラムを格納する。上記IF84は、レーザ照射手段15、センサ群74、マークセンサ75および媒体巻取手段72との信号授受の整合性をとるためのものである。【0047】上記寄り量演算手段85は、センサ群74からの検出信号に基づいて搬送される連続加工媒体73の寄り量を演算する。上記加工データファイル作成手段86は、寄り量演算手段85で演算されて特定された寄り量に基づいて本来の加工データを当該寄り量に応じた加工位置データで補正した加工データファイルを作成する。上記レーザ照射制御手段87は、上記同様に、上記作成された加工データファイルに基づいてレーザ照射位置、照射タイミング、レーザパワー等の加工データをレーザ照射手段15に送出する。そして、上記媒体巻取制御手段88は上記媒体巻取手段72への駆動制御信号を生成して送出するものである。【0048】そこで、図11に図9のレーザ加工システムにおける加工処理のフローチャートを示すと共に、図12に図9のレーザ加工システムにおける寄り検出の説明図を示す。図11において、まず、搬送される連続加工媒体73に対して、センサ群74の対応のセンサ(P1~P10)より検出信号を入力すると(S41)、寄り量演算手段85が各センサからの検出信号より、当該検出したセンサを特定し、基準のセンサとの位置関係から搬送される連続加工媒体73の寄り量を演算する(S42)。【0049】すなわち、図12に示すように、連続加工媒体73の端部をセンサ群のセンサ(受光素子)P1~P7が検出してP8~P10では非検出の場合に、当該センサ(受光素子)P1~P7を特定する。ここで、基準センサとして、連続加工媒体73が寄りを生ぜずに搬送されている場合(正規形態)の検出センサ(受光素子)をP5と定めた場合として、上記センサ(受光素子)P7と基準のセンサ(受光素子)P7との位置関係(距離)により寄り量(寄り方向)を演算する。【0050】そこで、加工データファイル作成手段36では、演算した寄り方向と寄り量のデータに基づいて、本来の加工データを当該演算した寄り量(寄り方向)の加工位置データを作成し、本来の加工データに対して当該加工位置データで補正した加工データファイルを作成する(S43)。そして、レーザ照射制御手段87が、作成された加工データファイルに基づいて、レーザ照射位置、照射タイミング、レーザパワー等の加工データをレーザ照射手段15に送出するものである(S44)。レーザ照射手段15では、上記加工データに基づいてレーザ光を照射してレーザ加工を行うことにより、例えば図9(B)の破線で示すような加工ラインが形成されるものである。【0051】このように、レーザ加工の対象が連続加工媒体であっても、搬送時に生じた寄り量に応じて加工位置データで補正することから、寄りを機械的に是正する機構を必要とせずに安価な構成で良好なレーザ加工を行うことができるものである。【0052】なお、図9の実施形態では、連続加工媒体73の寄り量を単一のセンサ群74で構成した場合を示したが、当該連続加工媒体73の対向する端部の位置に同様のセンサ群を配置してもよい。この場合、両方の各センサの検出状態で寄り量を特定することができ、上記のように基準となるセンサを定める必要がなくなるものである。【0053】また、図示しないが、上記センサ群74に代えて、図5に示すような撮像手段を設けて図7のような画像処理で連続加工媒体73の端部の位置関係を認識することによっても寄り量を求めることができるものである。」
(d)図面
「【図9】[図:0001400172000006.jpg]」
「【図10】[図:0001400172000007.jpg]」
「【図11】[図:0001400172000008.jpg]」
「【図12】[図:0001400172000009.jpg]」
(B)引用文献7に記載された事項からわかること
(a)上記(A)(a)の段落【0002】の記載、同(b)の段落【0015】の記載、同(c)の段落【0044】及び【0050】の記載、並びに同(c)の【図9】から、引用文献7には、長尺の連続加工媒体73を媒体巻取手段72と媒体供給手段71との間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノ機構等のスキャン機能によって長尺の連続加工媒体73にレーザ照射位置を制御しながらレーザ光を照射することで、長尺の連続加工媒体73を切断するレーザ加工システム11による加工方法に関する技術が記載されていることがわかる。
(b)上記(A)(b)の段落【0015】、同(c)の段落【0044】及び【0047】~【0051】の記載、並びに同(d)の【図9(B)】及び【図12】から、引用文献7に記載の加工方法では、連続加工媒体73に形成される加工ライン(【図9(B)】の破線を参照。)にて示される所定形状と、連続加工媒体73のエッジ位置(【図9(B)】及び【図12】より明らか。)としてセンサ群74により検出される検出信号より演算される寄り量(段落【0047】~【0050】の記載を参照。)とに基づき、ガルバノ機構等のスキャン機能を制御する(段落【0015】及び【0048】~【0050】の記載からフローチャートによる制御が行われることは明らか。)ことがわかる。
(C)引用文献7記載の技術的事項
上記(A)及び(B)から、引用文献7に記載された事項を本件補正発明の記載にあわせて整理すると、引用文献7には次の技術的事項(以下「引用文献7記載の技術的事項」という。)が記載されている、といえる。
「長尺の連続加工媒体73を媒体巻取手段72と媒体供給手段71との間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノ機構等のスキャン機能によって長尺の連続加工媒体73にレーザ照射位置を制御しながらレーザ光を照射することで、長尺の連続加工媒体73を切断するレーザ加工システム11による加工方法であって、加工ラインの所定形状と、長尺の連続加工媒体73の寄り量とに基づき、ガルバノ機構等のスキャン機能を制御すること。」
D 周知技術の認定
(A)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、周知技術を示す文献である、特開2017-47436号公報(平成29年3月9日出願公開、以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)発明の詳細な説明
「【技術分野】【0001】本発明は、光加工装置に関するものである。【背景技術】【0002】従来、加工対象物を搬送して、光加工装置の加工領域に対して加工対象物の被加工部分を相対移動させ、当該加工対象物に対する加工処理を行う光加工装置が知られている。・・・【0051】巻取モータ62によるワーク巻き取り動作だけでなく、巻出モータ56によるワーク巻き出し動作も行いながら、ロール供給部50からワーク35を巻き出す場合、巻出モータ56と巻取モータ62の回転数は、巻出モータ56によるワーク巻き出し動作によってロール供給部50からワーク35が巻き出される速度よりも、巻取モータ62によるワーク巻き取り動作によってロール排出部60へワーク35が巻き取られる速度の方が僅かに早くなるように設定する。これにより、ロール供給部50とロール排出部60との間のワーク35が副走査方向に緩んだ状態になることが防止される。このとき、ロール供給部50とロール排出部60との間のワーク35に副走査方向への過大な張力が発生しないように、巻出用パウダークラッチ59及び巻取用パウダークラッチ63に流す電流値が適宜設定される。本実施形態によれば、ワーク35に作用する張力を適切な張力に維持できる結果、ワークの緩みや伸びに起因した加工精度の悪化を抑制することができる。」
(b)図面
「【図4】[図:0001400172000010.jpg]」
(B)引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、周知技術を示す文献である、国際公開第2017/119011号(2017年7月13日国際公開、以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)明細書
「[0001]本発明は、リチウム二次電池やリチウムキャパシタ、電気二重層コンデンサ等に用いられるタブ付き電極シートの製造方法その装置に関する。・・・[0005]・・・そこで最近は原反から正または負電極シートをレーザービームで切断する方式が提案されている(特許文献1)。・・・[0044]一方、耳部1b・1b’が分離された電極部分1aの先端は、原反送出用ローラ13j・13kにて送り出され、ローラ13m・13nを経て引取部30に至り、引き取りローラ30a・30bに噛み込まれる。引取ローラ30a・30bは、前述のように電極部分1aの先端を噛み込む前は原反送出用ローラ13j・13kより若干速い速度で回転しているが、電極部分1aの先端を噛み込むと引取用サーボモータ30sの回転軸に対して設定された抵抗をもって空回りし、原反送出用ローラ13j・13kとの間で電極部分1aに送り方向の張力Tを与える。」
(b)図面
「[図2][図:0001400172000011.jpg]」
「[図3][図:0001400172000012.jpg]」
(C)引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、周知技術を示す文献である、特開2012-111637号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(a)発明の詳細な説明
「【0018】前ローラ21、後ローラ22は、加工用紙Wを下流側X2に送るローラである。レーザ加工部23は、各ローラ21,22が送る加工用紙Wに対して、レーザ光Lを発する装置である。レーザ加工の種類は、マーキング、孔開け加工、ミシン目加工、ハーフカット等である。インライン帳票加工システム1は、レーザ加工部23を用いることにより、刃物を利用した機械駆動のような加工位置の制限が少ないので、図形パターンの自由度の高い帳票加工をすることができ、シート毎に可変する図形パターンを連続で高速に加工できる。続きを表示(全12行)なお、図形パターンは、レーザ加工部23によって加工できるものであればいずれの形態でもよく、図形の他に例えば線等も含む概念である。また、レーザ加工は、機械式の刃物とは異なり、加工用紙Wの張力が変化しない。後述するように、インライン帳票加工システム1は、加工用紙Wのレーザ加工装置20内部のテンション(張力)及び装置間テンションを利用して、加工用紙Wの送り制御をするので、加工用紙Wの張力に影響がないことにより、加工用紙Wの安定した送り制御をすることができる。・・・【0029】S7において、加工装置制御部31は、内部テンションピックアップ25の出力に基づいて、レーザ加工装置20内の加工用紙Wの内部テンションの情報を取得する。S8において、加工装置制御部31は、内部テンションピックアップ25の出力に基づいて、内部テンションが設定範囲内であるか否かを判定する。加工装置制御部31は、内部テンションが設定範囲内であると判定した場合には(S8:YES)、S9に進み、一方、設定範囲外であると判定した場合には(S8:NO)、S8aに進む。【0030】S8aにおいて、加工装置制御部31は、内部テンションが設定範囲よりも低いか否かを判定する。加工装置制御部3 1 は、内部テンションが設定範囲よりも低いと判断した場合には(S8a:YES)、S8bに進んで、前ローラ21の回転速度を減少させ、かつ、後ローラ22の回転速度を増加させて、S10に進む。これにより、レーザ加工装置20内の加工用紙Wの内部テンションが高くなる。なお、この場合には、加工用紙Wの装置間テンションの変動を抑制するために、前ローラ21の回転速度の減少のみを行ってもよい。」
(b)図面
「【図3】[図:0001400172000013.jpg]」
(D)周知技術
上記(A)~(C)に示した引用文献4~6の記載に例示されるように、次の技術的事項は、本件出願前において、当業者にとって周知の技術であったといえる。
「長尺の被加工物を、搬送方向下流側に位置する第1の搬送ロールと、搬送方向上流側に位置する第2の搬送ロールとの間で、長手方向に搬送しながら、長尺の被加工物にレーザ光を照射することで、長尺の被加工物を加工するレーザ加工方法において、長尺の被加工物の長手方向に所定の張力を与えるため、搬送方向下流側に位置する第1の搬送ロールの回転速度を、搬送方向上流側に位置する第2の搬送ロールの回転速度よりも大きく設定すること。」(以下、単に「周知技術」という。)
(ウ)本件補正発明と引用発明1との対比
A 本件補正発明と引用発明1との相当関係
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、次の相当関係を有しているといえる。
(A)引用発明1におけるレーザー加工装置によって切断加工される「長尺状のフィルム9」は、その形状・特性・構造からみて、本件補正発明における「長尺フィルム」に相当し、引用発明1におけるレーザー加工装置は長尺状のフィルム9を切断するものであることから、引用発明1における「長尺状のフィルム9のレーザー加工装置による加工方法」は、本件補正発明の「長尺フィルムのレーザ加工方法」に相当する。
(B)引用発明1における長尺状のフィルム9が「長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向に一定速度で供給」される態様は、その作用・機能からみて、本件補正発明における(長尺フィルムの)「長手方向に連続的に搬送」することに相当する。また、引用発明1における「巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリール」が、「x方向下流側に位置」することは、本件補正発明における「第1の搬送ロール」が、「搬送方向下流側に位置」することに相当し、同様に、「巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリール」が、「x方向上流側に位置」することは、本件補正発明における「第2の搬送ロール」が、「搬送方向上流側に位置」することに相当する。
(C)引用発明1における「ガルバノスキャナ5,6」は、引用文献1の段落【0023】~【0024】に記載されるように、2組のガルバノスキャナ5,6を組み合わせることにより、回動軸52,62を回動させてミラー51,61の角度を回動軸を中心とした自在な角度に高速で変化させて、ミラー51に照射されたレーザー光8を、2次元方向、即ちx-y平面上の一定領域を占める加工領域91上の任意の加工点にレーザー光を誘導するものであることから、本件補正発明における「ガルバノスキャナ」に相当し、以下同様に、「ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動」は「ガルバノスキャナの偏向動作」に相当し、「長尺状のフィルム9にレーザー光8を誘導しながら集光すること」は「長尺フィルムにレーザ光を走査しながら照射すること」に相当する。
また、引用発明1における「x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御」することに関して、正確に加工するためには、目標となる切断形状が設定されている上で、当該切断形状となるようにスキャナを制御することを意味するといえるし、また、長尺状のフィルム9がx方向に一定速度で供給される状態下での加工のためには、当然にその一定速度を考慮したスキャナの制御がなされることは自明であることから、引用発明1における、「x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御」することは、「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御」するとの事項の限りにおいて、本件補正発明における「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御」することに相当する。
(D)上記(A)~(C)より、引用発明1における「長尺状のフィルム9を、巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリールと、巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリールとの間で、長尺状のフィルム9の移動方向であるx方向に一定速度で供給しながら、ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動によって前記長尺状のフィルム9にレーザー光8を誘導しながら集光することで、前記長尺状のフィルム9を切断する工程」は、本件補正発明における「長尺フィルムを、第1の搬送ロールと第2の搬送ロールとの間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノスキャナの偏向動作によって前記長尺フィルムにレーザ光を走査しながら照射することで、前記長尺フィルムを切断する工程」に相当する。
B 本件補正発明と引用発明1との一致点
してみると、本件補正発明と引用発明1とは次の点で一致する。
「長尺フィルムを第1の搬送ロールと第2の搬送ロールとの間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノスキャナの偏向動作によって前記長尺フィルムにレーザ光を走査しながら照射することで、前記長尺フィルムを切断する工程を含み、予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御し、前記第1の搬送ロールは搬送方向下流側に位置し、前記第2の搬送ロールは搬送方向上流側に位置する、長尺フィルムのレーザ加工方法。」
C 本件補正発明と引用発明1との相違点
他方、本件補正発明と引用発明1とは、次の相違点1~2にて相違する。
(A)相違点1
ガルバノスキャナの偏向動作を制御するにあたり、
本件補正発明においては、「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づき、前記ガルバノスキャナの偏向動作を制御」しているのに対し、
引用発明1においては、「x方向に一定速度(搬送速度)で供給される長尺状のフィルム9(長尺フィルム)に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6(ガルバノスキャナ)の回動軸52,62の回動(偏向動作)を制御」する点。
(B)相違点2
本件補正発明においては、「前記第1の搬送ロールの回転速度を前記第2の搬送ロールの回転速度よりも大きく設定」しているのに対し、
引用発明に1においては「巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリール」(第1の搬送ロール)の回転速度と「巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリール」(第2の搬送ロール)の回転速度との大小関係が不明である点。
(エ)相違点に対する当審の判断
A 相違点1
(A)Y方向(幅方向)の照射位置制御に関して
上記(ウ)A(C)で説示するとおり、引用発明1において「x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御」することは、実質的には、長尺フィルムの切断形状と、長尺フィルムの搬送速度とに基づき、ガルバノスキャナの偏向動作を制御することを意味するといえるから、上記相違点1は、実質的には、本件補正発明において「長尺フィルムのエッジ位置」に基づいてガルバノスキャナの偏向動作を制御しているのに対して、引用発明1においてそのような制御をしているかどうか不明な点に帰結する。
そこで、長尺フィルムのエッジ位置に基づくガルバノスキャナの偏向動作の制御について検討すると、引用文献7には、上記(イ)C(C)に示したように、次の引用文献7記載の技術的事項が記載されている(再掲)。
「長尺の連続加工媒体73を媒体巻取手段72と媒体供給手段71との間で長手方向に連続的に搬送しながら、ガルバノ機構等のスキャン機能によって長尺の連続加工媒体73にレーザ照射位置を制御しながらレーザ光を照射することで、長尺の連続加工媒体73を切断するレーザ加工システム11による加工方法であって、加工ラインの所定形状と、長尺の連続加工媒体73の寄り量とに基づき、ガルバノ機構等のスキャン機能を制御すること。」
ここで、「加工ラインの所定形状」は、本件補正発明における「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状」と同義であるといえる。
また、「長尺の連続加工媒体73の寄り量」とは、上記(イ)C(B)(b)のとおり、連続加工媒体73のエッジ位置としてセンサ群74により検出される検出信号より演算されるものであることから、引用文献7記載の技術的事項における「長尺の連続加工媒体73の寄り量とに基づき」との事項は、本件補正発明における「長尺フィルムのエッジ位置に基づき」との事項と同義である。
引用文献7記載の技術的事項は、加工媒体に寄りが生じることに対処する手段といえる(上記(イ)C(A)(a))ところ、引用文献7の加工媒体は、ロール状のもの(上記(イ)C(A)(c))であるのに対して、引用発明1のフィルム9もロール状のもの(上記(イ)A(A)(b)の【0029】)であるから、ロール状の加工媒体が寄りを生じてしまう課題は、引用発明1においても内在されているといえる。
そして、引用文献1の例えば段落【0033】には、上記(イ)A(A)(c) にて摘記したように、被加工物であるフィルム9をy方向に移動させたりすることなく、加工領域91全体にわたり正確に加工しようとする技術思想が示唆されているところ、引用発明1において、ロール状のフィルム9に寄りが生じてしまうことに対処するように、引用文献7記載の技術的事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
してみると、引用発明1において、ガルバノスキャナ5,6(ガルバノスキャナ)の回動軸52,62の回動(偏向動作)の制御に際し、予め設定された所望する前記長尺状のフィルム9(長尺フィルム)の切断形状と、前記長尺状のフィルム9(長尺フィルム)のx方向に供給する一定速度(搬送速度)に加え、引用文献7に記載される、前記長尺の連続加工媒体73の寄り量(エッジ位置)にも基づいて制御を行う技術思想を適用することで、上記相違点1に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(B)予備的な見解(X方向(搬送方向)の照射位置制御に関して)
上記(A)では、引用発明1において「x方向に一定速度で供給される長尺状のフィルム9に対して正確に加工するために前記ガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御」することは、実質的には、長尺フィルムの切断形状と、長尺フィルムの搬送速度とに基づき、ガルバノスキャナの偏向動作を制御することを意味することを前提として、長尺フィルムのエッジ位置に基づいてガルバノスキャナの偏向動作を制御することの容易想到性を検討したが、仮に、引用発明1の上記の制御が、本件補正発明のように「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度」とに基づいて行うものとまではいえない場合について、以下予備的な見解を示す。
引用文献2には、上記(イ)B(C)に示したように、次の引用文献2記載の技術的事項が記載されている(再掲)。
「多孔質フィルムに覆われる長尺の帯状電極10を長手方向に所定の搬送速度で搬送しながら、長尺の帯状電極10にレーザLの照射位置Pを移動させながらレーザLを照射することで、長尺の帯状電極10を切断する電極切断装置1による加工方法であって、予め定められた電極形状と、長尺の帯状電極10の搬送速度とに基づき、レーザLの照射位置Pを移動しながらレーザLを照射する制御を実行すること。」
ここで、「予め定められた電極形状」は、本件補正発明における「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状」と同義であるといえ、また、「長尺の帯状電極10の搬送速度」は、本件補正発明における「長尺フィルムの搬送速度」と同義である。
そして、引用文献1の例えば段落【0032】~【0033】には、上記(イ)A(B)(e)に示したように、制御装置によってガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御することにより、x方向に一定方向に等速で供給される長尺状のフィルム9に対し、加工領域91全体にわたり正確に加工しようとする技術思想が示唆されているところ、その具体化手段として、引用文献2記載の技術的事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
してみると、引用発明1において、ガルバノスキャナの偏向動作の制御に際し、引用文献2記載の技術的事項を適用し、予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づいて制御を行うことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(C)相違点1についてのまとめ
したがって、引用発明1において、ガルバノスキャナの偏向動作の制御に際し、引用文献7に記載の技術的事項を適用し(上記(A))、又は、引用文献7に加えて引用文献2に記載の技術的事項を適用し(上記(A)及び(B))、予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度と、前記長尺フィルムのエッジ位置とに基づいて制御を行うことで、上記相違点1に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
B 相違点2
相違点2についてみると、上記(イ)D(D)に周知技術として示したように、次の技術は本件出願の日前において周知であった(再掲)。
「長尺の被加工物を、搬送方向下流側に位置する第1の搬送ロールと、搬送方向上流側に位置する第2の搬送ロールとの間で、長手方向に搬送しながら、長尺の被加工物にレーザ光を照射することで、長尺の被加工物を加工するレーザ加工方法において、長尺の被加工物の長手方向に所定の張力を与えるため、搬送方向下流側に位置する第1の搬送ロールの回転速度を、搬送方向上流側に位置する第2の搬送ロールの回転速度よりも大きく設定すること。」
そして、
引用文献1の例えば段落【0033】には、上記(イ)A(B)(e)に示したように、制御装置によってガルバノスキャナ5,6の回動軸52,62の回動を制御することにより、x方向に一定方向に等速で供給される長尺状のフィルム9に対し、加工領域91全体にわたり正確に加工しようとする技術思想が示唆されている(なお、本(エ)欄において、引用発明1以外に、引用文献1に記載又は示唆されているとして示した事項を総じて、以下「引用文献1記載の技術的事項」という。)ところ、長尺状のフィルムにたるみがある場合には、正確な位置にて切断できないことは技術常識である。
してみると、引用発明1において、長尺状のフィルム9(長尺フィルム)に適切な張力を付与するために、当該周知技術を適用し、x方向(搬送方向)下流側に位置する巻取り軸に取り付けられ加工後のフィルム9が巻き取られたリール(第1の搬送ロール)の回転速度を、x方向(搬送方向)上流側に位置する巻出し軸に取り付けられ加工前のフィルム9が巻回されたリール(第2の搬送ロール)の回転速度よりも、大きく設定することで、上記相違点2に係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(オ)本件審判請求人の意見書及び審判請求書での主張に対する当審の見解
A 本件審判請求人の主張
折りたたみ中(クリックで表示)
本件審判請求人は、上記相違点1~2について、以下のとおり主張する。
(A)相違点2に係る構成そのものが周知技術であるとの認定には首肯できないものの、引用文献4~6に記載の発明を考慮すれば、相違点2に係る構成に想到することが容易であるという点は妥当である(審判請求書第7ページの(a4))。
(B)上記の相違点1に係る構成については、引用文献1~3に開示も示唆も無いのみならず、引用文献4~6にも開示も示唆もない。
本件補正発明は、ガルバノスキャナの偏向動作を制御する際に、所望する長尺フィルムの切断形状と、長尺フィルムの搬送速度とを用いるのみならず、長尺フィルムのエッジ位置も用いるという構成を有することで、長尺フィルムが幅方向に蛇行したとしても、この蛇行の影響が抑制され、切断形状の寸法精度を高めることができる(同第8ページの(a5))。
(C)本件補正発明は、上記の相違点1~2に係る構成を有することで、長尺フィルム搬送時のばたつき及び幅方向の蛇行の影響の双方を同時に抑制できるため、長尺フィルムを停止させずに長手方向に連続的に搬送しながら切断しても、切断形状の寸法精度を非常に高めることができるという、引用文献1~6には開示も示唆も無い効果を奏する(同第8ページの(a5))。
B 当審の見解
(A)上記A(A)の点については、上記(エ)Bのとおりである。すなわち、上記(イ)D(D)に示したように、例えば、引用文献4~6に記載される技術は、本件出願の日前において周知であり、その認定には誤りはない。
(B)また、上記A(B)の点についてみると、上記(エ)A(A)のとおり、引用発明1に引用文献7記載の技術的事項を適用することで当業者であれば容易に想到し得たことである。
(C)さらに、上記A(C)の点についてみると、長尺フィルム搬送時のばたつき(長尺状のフィルムのたるみ)の抑制は、上記の周知技術を適用することで奏される効果といえるし、幅方向の蛇行(長尺フィルムが寄りを生じること)の影響の抑制は、引用文献7記載の技術的事項を適用することで奏される効果といえるから、請求人が主張する上記の効果は、いずれも、引用発明1、引用文献2及び引用文献7記載の技術的事項、並びに周知技術からみて、予測し得ない格別顕著な効果であるとは認められない。
(D)よって、本件審判請求人の主張については採用することができない。
(カ)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用文献1記載の技術的事項、引用文献2記載の技術的事項、引用文献7記載の技術的事項、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 独立特許要件に関するまとめ
上記イのとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであることから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものである。
3 補正却下の決定の[理由]のむすび
よって、本件補正は、上記2(1)のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、また仮に、特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであったとしても、上記2(2)のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明の認定
令和4年8月2日にされた手続補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~3に係る発明は、令和3年12月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)の【請求項1】に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定による拒絶の理由は、本件発明に関して、本件出願の前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1~2に記載された発明、及び例えば引用文献4~6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献に記載された発明、周知技術
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~2に記載された発明及び周知技術は、上記第2の[理由]2(2)イ(イ)に、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び周知技術として示したとおりである。
4 対比・判断
本件発明は、上記第2の[理由]2(2)イで検討した本件補正発明から、上記相違点1に係る本件補正発明の「長尺フィルムのエッジ位置」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明と引用発明1とは、上記第2の[理由]2(2)イ(ウ)に示した上記一致点と同様の点で一致し、上記相違点2と同様の点でのみ相違するところ、引用発明1に周知技術を適用して上記相違点2に係る本件補正発明のようにすることは、上記第2の[理由]2(2)イ(エ)に記載したとおり、当業者であれば容易に想到し得たことであるから、本件発明についても、引用発明1に周知技術を適用することで本件発明とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお仮に、本件発明と引用発明1とが上記相違点1のうち、第2の[理由]2(2)イ(エ)A(B)と同様の点(すなわち、引用発明1が、本件発明のように「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、」制御しているとまではいえない点、以下「相違点A」という。)でも相違したとしても、同欄に記載したとおり、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用して上記相違点Aに係る本件補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであるから、本件発明についても、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することで「予め設定された所望する前記長尺フィルムの切断形状と、前記長尺フィルムの搬送速度とに基づき、」制御することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
よって、本件発明は、原査定のとおり、引用発明1、引用文献1~2記載の技術的事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-011931