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特許拒絶査定不服審判

2022-011869

繊維強化ポリアミド及びその製造方法

審判番号
2022-011869
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-095274外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年08月01日
審決日
2024年10月31日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 95274「繊維強化ポリアミド及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月26日出願公開、特開2021-121686〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成29年6月13日(以下「本願出願日」という。)に出願した特願2017-115787号の一部を、令和3年6月7日に新たな出願としたものであり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年 3月 9日付け 拒絶理由通知書 同年 5月12日 手続補正書及び意見書の提出 同年 6月 1日付け 拒絶査定 同年 8月 1日 審判請求書及び手続補正書の提出 同年 8月17日付け 前置報告書 令和6年 3月14日付け 拒絶理由通知書 同年 4月12日 手続補正書及び意見書の提出 同年 6月28日付け 拒絶理由通知書 同年 8月 2日 手続補正書及び意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~4に係る発明は、令和6年8月2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 融点190~280℃のポリアミドに未修飾のセルロースナノ繊維を添加して溶融混練することによりポリアミド組成物を製造し、100~180℃における前記ポリアミド組成物の成形体の寸法安定性の低下を抑制する方法であって、 前記未修飾のセルロースナノ繊維の割合が、前記融点190~280℃のポリアミド80重量部に対して20重量部以下である方法。」 第3 当審において通知した拒絶の理由 令和6年6月28日付けで当審において通知した拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明(本願発明に対応)についての引用文献8を主引例とする進歩性に関する理由の要旨は、次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 < 引用文献等一覧 > 8.仙場 健,外7名,"セルロースナノファイバーとバイオポリアミドの複合化",成形加工 第26巻 第7号,2014年 (主引用例) 4.伊藤彰浩,外6名,"変性セルロースナノファイバー強化ナイロン樹脂の射出発泡成形",研究報告 No.6,京都市産業技術研究所,2016年 5.国際公開第2013/133093号 第4 引用文献について 1 引用文献8に記載された事項及び引用文献8に記載された発明 (1)引用文献8に記載された事項 「セルロースナノファイバーとバイオポリアミドの複合化」と題する引用文献8には、以下の事項が記載されている。 (摘記8ア)「1.はじめに セルロースは地球上に最も多く存在する持続的再生可能な資源であり,それを極限まで解したセルロースナノファイバー(CNF)は,鋼鉄の5倍以上の強度,石英ガラス並みの線膨張係数など優れた機械特性および熱特性を有している1), 2).植物はこのCNFを複雑に配置した強固な細胞壁を造りだすことにより,生物の中で最も高く成長することを可能にしている.さらにCNFは比重が1.5であり,ポリマー用強化材として使用しているガラス繊維(GF)(比重2.5),炭素繊維(CF)(比重1.7)よりも軽量である.これを強化材として用いることにより,部材の軽量化,ひいては輸送における燃費向上と炭酸ガス排出低減への貢献が期待されている. 京都市産業技術研究所では,平成14年頃よりセルロースミクロファイバーコンポジットの研究開発をスタートし,平成17年からは京都大学生存圏研究所とともにCNFコンポジットの研究開発に取り組んできた.この間CNFコンポジットにおける混練押出成形および射出成形を中心とした多くの経験を得ることができ,幾つかの特徴ある材料の開発を行ってきた.本稿では,開発材料の一つであるCNF/ポリアミド(PA)11コンポジットについて報告する.」(第355ページ左欄第1行~第21行) (摘記8イ)「2.CNFの表面処理 グルコースには3つの水酸基が存在し,それを構成単位とするセルロース分子には多数の水酸基が含まれる.水酸基は,強固な水素結合をもたらすことから,ポリマーとのコンポジット化における脱水時には,凝集により分散不良を引き起こす要因となる. ・・・そこでカチオン性薬剤をCNFにコーティングすることにより水素結合を抑制し,ポリマー中での分散性を向上させることを試みた. ・・・カチオン化処理CNFとPA11の複合化には,二軸押出機を使用し,カチオン化処理CNFの添加量は10%とした.得られたCNF/PA11複合ペレットを射出成形により評価サンプルに加工した.」(第355ページ右欄第1行~第34行) (摘記8ウ)「 [図:0001418415000001.jpg] 」(第356ページ図2) (摘記8エ)「PA11の融点(187℃)は,汎用樹脂より少し高い程度であり,一般的なエンジニアリングプラスチックと比較すると熱特性が不十分である.自動車用構造部材を想定した場合,外板であれば塗装焼付け工程,金属部品との組み合わせにおいて重要な線熱膨張などの特性不足が懸念される.そこでCNF/PA11コンポジット射出成形体の荷重たわみ温度試験を実施した.図4に負荷応力0.45MPaにおけるたわみ-温度曲線を示す.PA11は,試験開始温度30℃から急激にたわみが増加し,60℃付近からたわみ変化が小さくなった後,100℃から再び急激にたわみが増加し,荷重たわみ温度は111.4℃であった.それに対してCNF添加コンポジットでは,たわみ-温度曲線が高温側にシフトした.」(第356ページ右欄第2行~第14行) (摘記8オ)「 [図:0001418415000002.jpg] 」(第356ページ表1) (摘記8カ)「 [図:0001418415000003.jpg] 」(第357ページ図4) (2)引用文献8に記載された発明 引用文献8には、鋼鉄の5倍以上の強度,石英ガラス並みの線膨張係数など優れた機械特性及び熱特性を有しているセルロースナノファイバー(CNF)と、ポリアミドであるPA11(融点187℃)とのコンポジットについて開示されており、図4には、PA11に比べて、PA11に各種の処理をしたCNF又は未処理CNFを加えたコンポジットの方が、たわみ-温度曲線が高温側にシフトしたことが示されている(前記(摘記8ア~カ))。 また、引用文献8には、カチオン化処理CNFとPA11の複合化においてカチオン化処理CNFの添加量を10%として二軸押出機を使用したことが記載されており(前記(摘記8イ))、また、未処理CNF又はカチオン化処理CNF(反応性モノマー処理CNFなど)をPA11を複合化した場合の物性を表1のように比較しているところ(前記(摘記8ウ、オ))、これらの比較ができるということは、未処理CNFとPA11の複合化は、カチオン化処理CNFとPA11の複合化と同様に、未処理CNFの添加量を10%として二軸押出機を使用していると認められる。 そうすると、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリアミドとして融点が187℃のPA11を90%と、未処理セルロースナノファイバー(CNF)10%とを、二軸押出機を使用して複合化してコンポジットを製造する方法。」 2 技術常識 (1)引用文献4に記載された事項 「変性セルロースナノファイバー強化ナイロン樹脂の射出発泡成形」と題する引用文献4には、以下の事項が記載されている(以下、下線は当審で付与した)。 (摘記4ア)「セルロースナノファイバー(CNF)は木材等の植物細胞を構成するセルロース繊維束をナノサイズまで細かくほぐすことで得られる直径10-100nm,長さ数μmを有するセルロース繊維である。CNFは資源が豊富であることに加えて,鋼鉄の1/5の密度で5倍以上の強度1),大きな比表面積,ガラスの1/50の低い線熱膨張率2)という優れた性質を有するといわれる。・・・一方疎水性の高いプラスチックとの複合化には高度な技術が必要になるが,これまでに材料面,装置面で多くの検討が行われ,ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE)についてもCNFを分散させることで機械的,熱的特性が向上するといった効果が示されてきている7-9)。」(第1ページ左欄第2行~右欄第8行) (2)引用文献5に記載された事項 引用文献5には、「変性ミクロフィブリル化植物繊維を含む樹脂組成物の製造方法、及びその樹脂組成物」に関して以下の事項が記載されている。 (摘記5ア)「【0001】 本発明は、アルキル又はアルケニル無水コハク酸によって変性された変性ミクロフィブリル化植物繊維を含む樹脂組成物の製造方法、及び樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ミクロフィブリル化植物繊維は、軽量、高強度、高弾性率、低線熱膨張といった優れた特性を有する為、樹脂等の補強材料として広く知られている。しかしながら、ミクロフィブリル化植物繊維は、非常に親水性が高い為、ポリプロピレンやポリエチレン等の疎水性の高い樹脂とは親和性が乏しく、二軸押出機械等で機械的に混練しただけでは、均一に混合することが出来ず、結果として得られる複合材料の機械的物性も良好とはいえない。」 (3)特開2013-79334号公報(令和4年3月9日付け拒絶理由通知書の引用文献1)に記載された事項 (摘記1ア)「 [図:0001418415000004.jpg] 」 (摘記1イ)「【0099】 表1から明らかなように、実施例1~17で得られたポリアミド樹脂組成物は、繊維径が10μm以下のセルロース繊維の水分散液とポリアミド樹脂を構成するモノマーを混合し、酸触媒を添加せずに重合反応を行うことにより得られたものであったため、ポリアミド樹脂中に微細なセルロース繊維が凝集することなく均一に分散され、酸触媒を添加していないため、セルロース自身の分解着色もなく色調の良いポリアミド樹脂組成物であった。 このため、実施例1~17で得られたポリアミド樹脂組成物は、いずれも色調を示すL値が20以上、a値が10以下、b値が20以下であることを同時に満足し、曲げ弾性率、曲げ強度ともに高く、さらに、MD方向の線膨張係数は低く、機械的特性に優れたものであった。さらには、熱変形温度が高く耐熱性にも優れていた。 【0100】 一方、比較例1~4で得られたポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を含有していないものであったため、実施例1~5のポリアミド樹脂組成物と比較して、曲げ弾性率、曲げ強度、熱変形温度のいずれも低く、線膨張係数は高い値を示しており、機械的特性、耐熱性ともに劣るものであった。」 (4)技術常識として認められる事項 前記(摘記4ア)及び(摘記5ア)によると、CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、疎水性のポリマーであるPP、PEに添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることが把握できる。 また、前記(摘記1ア~イ)によると、親水性ポリマーであるポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12など)にCNFを添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることが把握できる。 そうすると、CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、様々な樹脂に添加することで、その線熱膨張率を低下させることができることは、本願出願日当時の技術常識であったといえる。 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「未処理セルロースナノファイバー(CNF)」は、本願発明の「未修飾のセルロースナノ繊維」に相当する。 また、引用発明においては、二軸押出機を用いてPA11とCNFを混合するものであるから、溶融混練することにより製造されるものと認められ、引用発明の「二軸押出機を使用して複合化」することは、本願発明の「溶融混練すること」に相当する。 さらに、引用発明の「ポリアミド」及び「未処理セルロースナノファイバー(CNF)」を含む「コンポジット」は、本願発明の「ポリアミド組成物」に相当する。 加えて、引用文献8における「%」は、配合組成についての記載であるので、「重量%」であると認められ、引用発明の「ポリアミド」「を90%と、未処理セルロースナノファイバー(CNF)10%」は、本願発明の「未修飾のセルロースナノ繊維の割合が、」「ポリアミド80重量部に対して20重量部以下」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「ポリアミドに未修飾のセルロースナノ繊維を添加して溶融混練することによりポリアミド組成物を製造する工程を有する方法であって、 前記未修飾のセルロースナノ繊維の割合が、前記ポリアミド80重量部に対して20重量部以下である方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> ポリアミドの融点が、本件発明は、「190~280℃」であるのに対し、引用発明は、「187℃」である点。 <相違点2> 本願発明は、「100~180℃」における「ポリアミド組成物の成形体の寸法安定性の低下を抑制する」方法であるのに対し、引用発明は、そのような事項が特定されていない点。 第6 判断 1 相違点1について 相違点1について、以下検討する。 引用文献8には、「1.はじめに」の欄において、CNFは、石英ガラス並みの線膨張係数、鋼鉄の5倍以上の強度、ポリマー強化材であるガラス繊維や炭素繊維よりも軽量であることなどから、部材の強化材として用いると、部材の軽量化が図れることが期待されていることが記載され、引用文献8は、開発材料の一つであるCNF/PA11コンポジットについて、報告する文献であることが記載されている(前記(摘記8ア))。 また、上記したように、CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、様々な樹脂に添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることは技術常識であった(前記第4の2(4))。 そうすると、上記技術常識を前提として、引用文献8の記載に接した当業者であれば、CNFを強化材として用いてコンポジットとするポリアミドとして、融点が187℃のPA11だけでなく、融点が若干高い、190℃程度のポリアミドに対しても、同様にCNFを強化材としてコンポジットとできることを、容易に想到することができるものといえる。 したがって、引用発明の融点が187℃のPA11に代えて、融点が190℃以上のポリアミドを用いて、相違点1に係る本願発明の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 2 相違点2について 相違点2について、以下検討する。 引用文献8には、CNFが優れた線膨張係数を有すること(前記(摘記8ア))、PA11が線熱膨張について特性不足であること(前記(摘記8ウ)が記載されており、また、CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、様々な樹脂に添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることは技術常識であった(前記第4の2(4))。 そして、線熱膨張係数とは、温度の上昇による物体の長さの膨張する割合を示す指標であるから、CNFを含む引用発明に係るコンポジットを成形体としたものは、線熱膨張係数に優れ、加熱した場合の長さの膨張が抑制でき、その結果、加熱した場合の寸法安定性の低下を抑制できるものといえる。 そうすると、上記1において説示したように、引用発明の融点が187℃のPA11に代えて、融点が190℃以上のポリアミドを用いてコンポジットとした場合にも、同様に、当該コンポジットの成形体を加熱した場合の寸法安定性の低下を抑制できるものといえる。 また、引用文献8の図4(前記(摘記8カ))において、約40℃から170℃近辺まで加熱した場合にも、CNFを添加すると、たわみ-温度曲線が高温側にシフトしたことを考慮すると、上記の寸法安定性の低下も、融点190℃より低い、100~180℃の加熱範囲において達成されることを、当業者であれば予測し得るものといえる。 したがって、引用発明において、融点が187℃のPA11に代えて、融点が190℃以上のポリアミドを用いて、100~180℃の成形体の寸法安定性の低下をする方法として、相違点2に係る本願発明の構成を有するものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 3 効果について CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、様々な樹脂に添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることは技術常識であり(前記第4の2(4))、それはCNFの修飾・未修飾にかかわらず発揮されるものであるから、本願発明の、未修飾のセルロースナノ繊維(CNF)を添加することにより、成形体の寸法安定性の低下を抑制できるという効果は予測可能なものである。 また、本願明細書には、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が結合した修飾セルロースナノ繊維でポリアミドを強化することにより、ポリアミドの軽量性及び機械的特性を向上できることを見いだしたことが記載されており(【0009】)、本願発明に対応する未修飾のセルロースナノ繊維を含むポリアミド組成物は、比較例1~5として記載され、上記修飾セルロースナノ繊維を含むポリアミド組成物と比べて、線熱膨張係数が大きくなり、特に180℃以上の温度での寸法安定性に劣ることが確認されている。 このように、あえて「未修飾」のセルロース繊維を用いることにより、修飾セルロースナノ繊維を用いる場合に比べ、寸法安定性が優れているわけではなく、本願発明の効果は、当業者の予測可能な範囲内のものといえる。 そうすると、本願発明において、セルロースナノ繊維として、あえて未修飾のものを用いることにより、顕著な効果を奏することが示されているわけでもない。 また、本願発明において特に「融点190~280℃」のポリアミドを用いたことにより、顕著な効果があるともいえない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、引用文献8では、エンジニアリングプラスチック並みに高温でも変形しない耐熱性として荷重たわみ温度を想定しており、このような耐熱性に関係する特性として線熱膨張は示唆されているだけであって、線熱膨張係数自体は着目されておらず、測定もされていないから、本願発明における特定温度での寸法安定性の低下抑制を引用文献8から容易に類推できない旨を主張する(意見書4頁下から2段落)。 しかしながら、CNFは、ガラスの1/50の低い線熱膨張率を有することから、様々な樹脂に添加すれば、その線熱膨張率を低下させることができることは技術常識であり(前記第4の2(4))、引用文献8においても、CNFは線熱膨張係数が優れていることが記載されている(前記(摘記8ア))。 そうすると、引用発明において、「ポリアミド」に、未修飾CNFを添加してコンポジットを製造すれば、当該コンポジットの成形体の線熱膨張率が低下し、その結果、寸法安定性の低下を抑制できることを当業者が容易に想到できることは、前記1及び2において説示したとおりである。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (2)請求人は、引用文献8では、未修飾CNFを用いることが記載されているものの、評価試験ではPA11に対する配合割合は記載されておらず、また、反応型ポリマーII処理CNFは、未修飾CNFよりも高い曲げ弾性率、曲げ強度、荷重たわみ温度を示しているから、セルロース繊維の中から、効果の高い変性CNFを差し置いて未修飾CNFのみを選択し、ポリアミドに特定の割合で配合することは、容易に類推できない旨を主張する(意見書4頁下から3行~5頁1行、11~14行)。 しかしながら、未処理CNFの配合割合がカチオン化処理CNFと同じと認められることは、前記第4の1(2)に説示したとおりであり、また、その配合割合の単位が重量%であることは前記第5に説示したとおりであるので、未処理CNF10重量%をポリアミドであるPA11に添加した引用発明が引用文献8に記載されているといえる。 そして、反応型ポリマーII処理CNFが、未修飾CNFよりも高い曲げ弾性率を示していることは、本願発明の容易想到性に影響するものではない。 したがって、請求人の上記主張は、上記1及び2に示した判断に影響しない。 (3)請求人は、引用文献8に記載されている発明は、持続的再生可能な材料を目指すためにバイオ材料を使用することが前提であり、ポリアミドの使用は限定され、汎用樹脂より少し高い程度の融点を有するポリアミド11の耐熱性を向上させることが目的の1つであるため、ポリアミドの融点は前提条件である旨を主張する(意見書5頁2~10行)。 しかしながら、引用文献8では、CNFとバイオポリアミドの複合化についての論文であるところ、バイオポリアミドとは、ひまし油等の植物性成分由来のポリアミドであって、特段、融点が特定範囲のものに限定されているわけではないから、開発材料の一つとして紹介されたCNF/PA11コンポジットにおけるPA11の融点(187℃)が前提条件であるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (4)請求人は、引用文献4及び5は、いずれもCNFを変性することが目的の発明であり、これらの文献を引用文献8に適用しても、融点190~280℃のポリアミド80重量部に対して20重量部以下の割合で未修飾CNFを添加して、特定温度における成形体の寸法安定性の低下を抑制する意義を容易に導き出すことはできない旨を主張する(意見書5頁15~18行)。 しかしながら、様々な樹脂にCNFを添加することで、その線熱膨張率を低下させることができることが、本願出願日当時の技術常識であったことを示すための文献として、引用文献4及び5を挙げたのであって、請求人が主張するように、引用文献4及び5に具体的に「発明」として記載されたもののために挙げた文献ではないから、請求人の主張はその前提において誤りがある。 そして、上記技術常識に誤りがあることを、請求人は何ら主張していない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (5)小括 よって、請求人の主張は、いずれも採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-011869

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