特許拒絶査定不服審判
2024-010957
メータカプラ構造
- 審判番号
- 2024-010957
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-069960
- 請求日
- 2024年07月02日
- 審決日
- 2025年12月24日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大阪瓦斯株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人R&C
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 小島 寛史
- 審判官 喜々津 徳胤
- 分類
- P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-69960「メータカプラ構造」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月14日出願公開、特開2021-165717〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年4月8日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年10月27日付け:拒絶理由通知書
同年12月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 3月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 4月 2日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月2日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Iまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明>
「【請求項1】
X ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部と、一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部との連結、又は前記メータ通流端部のうちガスが流出するメータ流出部と、二次側ガス配管の前記ガス管端部であるガス管流入部との連結の少なくとも何れか一方を担うメータカプラ構造であって、
A 対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部の何れか一方に対して、抜け止めされた状態で、前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部が設けられると共に、対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部のうち何れか他方に、前記第1環状螺子部が螺合可能な第2環状螺子部が設けられ、
B 前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするロック機構として働き、
C 前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを近接する側へ付勢する付勢力を付与すると共に、前記ロック状態にない非ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とに対する前記付勢力を解除する付勢手段が設けられ、
D 前記第1環状螺子部は、自身が設けられる前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方に摺動自在に外嵌する環状部位を有し、
E 前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方には、前記環状部位の抜け止めを防止する抜止部が設けられ、
F 前記付勢手段は、一端が前記環状部位に当接すると共に、他端が前記抜止部に当接するコイルバネであり、
G 前記第1環状螺子部は、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを互いに相対回転させることなく接続可能なユニオン式管継手としてのユニオンナットの内周面に設けられ、
H 前記第2環状螺子部は、前記メータ通流端部の外周面に一体的に形成され、
I 前記ロック機構による前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする第1シール部材が、前記メータ通流端部に設けられている
X メータカプラ構造。」
<参考図>
【図3】
[図:0001432620000001.jpg]
(2) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は、当合議体において付したものである。
「【背景技術】
【0002】
ガス配管系統のガス管端部と、ガスメータのメータ流入部及びメータ流出部であるメータ通流端部とを、両者の相対回転を伴わない状態で連結する管継手として、ユニオン式管継手が知られている(特許文献1を参照)。
ユニオン式管継手は、ガス管端部の管外周部位から管径方向で外側へ延設されるユニオン鍔部にて抜け止めされるユニオンナットと、メータ通流端部に設けられユニオンナットが螺合接続可能なユニオンネジとから構成されている。
ガスメータの検定満期時等には、ユニオンナットとユニオンネジとの螺合を解除する形でガス配管系統からガスメータを取り外し、新たなガスメータのガス通流端部に設けられるユニオンネジとユニオンナットとを螺合する形で、メータ交換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-9951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示の技術のユニオン式管継手では、ユニオンナットをユニオンネジに螺合させることで、ガス管端部とメータ通流端部とを連結しているため、両者を確実に連結するためには、締結後に増し締めを行う必要があるが、当該増し締め作業が実行されない虞もあった。
【0005】
更に、国内での労働人口が減少している昨今の状況においては、十分な技術を習得するに至るまでの未習熟施工者がメータ交換施工者として従事することになる場合も考えられ、このような場合には、増し締め作業が行われない虞が大きくなる可能性もあり、新たな技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工コストを十分に抑えることができると共に、施工者の施工技量が低い場合であっても、メータ交換・設置時の増し締め不足が発生する虞がなく、安全性を向上できるメータカプラ構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
…(中略)…
【0008】
上記特徴構成によれば、ロック機構としての第1環状螺子部と第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするから、従来のユニオン式管継手の如く、施工者によるナットの増し締め作業を行うことなく、確実なロック状態が実現できる。
説明を追加すると、上記特徴構成によれば、施工者は、第1環状螺子部と第2環状螺子部とが、所定の相対回転角度だけ回転した後に相対回転許容状態となったことにより、両者がロック状態となったことを感覚的に確認できるから、所定の相対回転角度未満の回転で両者がロック状態へ移行する前に、両者の相対回転を止めてしまうことを防止できる。
以上より、施工コストを十分に抑えることができると共に、施工者の施工技量が低い場合であっても、メータ交換・設置時の増し締め不足が発生する虞がなく、安全性を向上できるメータカプラ構造を実現できる。
更に、本発明のロック状態では、第1環状螺子部と第2環状螺子部とが、相対回転許容状態となっているから、ガス通流軸心方向での両者の間に遊びが生じる場合がある。
上記特徴構成によれば、特に、付勢手段が、ロック状態において、ガス管端部とメータ通流端部とを近接する側へ付勢する付勢力を付与するから、ガス通流軸心方向での第1環状螺子部と第2環状螺子部との間を密着させ気密性を向上させることができる。結果、ガス通流路から外部へのガス漏洩が発生することを効果的に防止できる。
更に、上記特徴構成の如く、ガス管端部とメータ通流端部との何れか一方に、ガス通流軸心方向で摺動自在に外嵌する係止部材としての環状部位を設けると共に、環状部位を抜け止めする抜止部を設け、一端が環状部位に当接し他端が抜止部に当接するコイルバネを付勢手段として備えることで、ロック状態にあっては、第1環状螺子部と第2環状螺子部との間の遊びをなくす方向へ付勢力を働かせることができると共に、ガス管端部とメータ通流端部とを互いに近接する方向へ付勢して、例えば両者の間にシール部材を設ける構成において両者の間の気密性を高めることができる。
尚、上記特徴構成の如く、付勢手段をコイルバネにより実現することで、当該コイルバネを、一般的に環形状であるガス管端部及びメータ通流端部の何れか一方の外周部位に沿う形の付勢手段を容易に実現でき、シンプルな形状を実現できる。
更に、上記特徴構成によれば、特に、第1環状螺子部を、従来のガスメータのメータ通流端部とガス管端部との接続に用いられるユニオンナットを流用して実現できるから、特にガス管端部に関し、従来の接続構造を大きく変えることなく経済的メリットを享受できる。
上記特徴構成によれば、ロック状態において、ガス管端部とメータ通流端部との間をシールする第1シール部材を、メータ通流端部に設けているから、当該第1シール部材の交換は、ガスメータの交換と同時に自動的に実行されることになり、ガスメータ交換時におけるシール部材の交換忘れを予防することができる。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。なお、本願発明は、原査定時の(令和5年12月26日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項2に係る発明に対応するものである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2003-232487号公報(主たる引用文献)
引用文献2.実願昭62-4875号(実開昭63-175383号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2002-276874号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2001-324067号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2003-232487号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記ウの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃焼用ガス等の気体、あるいは液体等の流体が流れる配管およびコックに関し、また、配管同士あるいは配管とガスメータとの接続部に設けられるパッキンに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、配管の接続部(継手部)には接続部を密閉するためにゴム製のパッキンが設けられている。図10は従来のガスメータとガス配管との接続構造および接続部の詳細構造を示している。図10(a)はガスメータとガス配管の従来の接続構造を示し、図10(b)はガスメータとガス配管の従来の接続部の管軸方向の断面を示している。図10(a)に示すように、ガスメータ101のガス流入口側には上流側のガス配管102が接続され、ガスメータ101のガス流出口側には下流側のガス配管103が接続されている。図10(b)に示すように、ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部との間にゴム製の口金パッキン105を設け、口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むことで、ゴム製の口金パッキン105を押圧変形して、口金部104とガス配管102,103との接続部を密閉(シール)している。」
「【図10】
[図:0001432620000002.jpg]
」
イ 引用文献1の記載から読み取れる事項の認定
(ア) 認定事項1
引用文献1の【0002】における「図10(b)に示すように、ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部との間にゴム製の口金パッキン105を設け、口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むことで、ゴム製の口金パッキン105を押圧変形して、口金部104とガス配管102,103との接続部を密閉(シール)している。」等の記載、及び、【図10】(b)に図示された断面図からみて、【図10】(a)に示された「ガスメータとガス配管の接続構造」は、締付金具106を回転することにより締付金具106の内周面に形成されたナット部のねじ部が口金部104の周面に形成されたねじ部と螺合して接続されるものであると認められるところ、このような接続構造は、締付金具106を回すだけで配管を回転させることなく配管の脱着が可能である、いわゆるユニオン継手によるものであることが明らかである。
そうすると、引用文献1には、次の事項(以下「認定事項1」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項1>
「ユニオン継手によるガスメータとガス配管の接続構造」
(イ) 認定事項2
引用文献1の【図10】(b)から、次の事項(以下「認定事項2」という。)を看取することができる。
<認定事項2>
「ガス配管102,103の端部の外周に、締付金具(袋ナット)106がガス配管102,103の軸周りに回転自在、かつ、ガス配管102,103の軸方向に摺動自在に設けられ、
締付金具(袋ナット)106は、ガスメータ101の口金部104から離れた端部に内方に突出する内周突部を有し、
ガス配管102,103の端部近傍に外方に突出する外周突部が設けられ、
締付金具(袋ナット)106の内周突部とガス配管102,103の外周突部が係合していること。」
(ウ) 認定事項3
引用文献1の【0002】には、「ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部との間にゴム製の口金パッキン105を設け」と記載されているところ、前記(イ)において認定した認定事項2も踏まえると、その【図10】(b)に図示された内容から、引用文献1には、次の事項(以下「認定事項3」という。)が記載されていると認められる。
<認定事項3>
「ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部近傍に設けられた外周突部との間にゴム製の口金パッキン105を設けること。」
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、従来の技術(【図10】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「ユニオン継手によるガスメータとガス配管の接続構造であって、(認定事項1)
ガスメータ101のガス流入口側には上流側のガス配管102が接続され、ガスメータ101のガス流出口側には下流側のガス配管103が接続されており、(【0002】)
ガス配管102,103の端部の外周に、締付金具(袋ナット)106がガス配管102,103の軸周りに回転自在、かつ、ガス配管102,103の軸方向に摺動自在に設けられ、(認定事項2)
締付金具(袋ナット)106は、ガスメータ101の口金部104から離れた端部に内方に突出する内周突部を有し、(認定事項2)
ガス配管102,103の端部近傍に外方に突出する外周突部が設けられ、(認定事項2)
締付金具(袋ナット)106の内周突部とガス配管102,103の外周突部が係合しており、(認定事項2)
ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部近傍に設けられた外周突部との間にゴム製の口金パッキン105を設け、(認定事項3)
口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むことで、ゴム製の口金パッキン105を押圧変形して、口金部104とガス配管102,103との接続部を密閉(シール)している、(【0002】)
ガスメータとガス配管の接続構造。(【0002】)」
(2) 引用文献2、6の記載事項及び周知技術1の認定
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である実願昭62-4875号(実開昭63-175383号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 明細書2頁1行~3頁19行、第5図
「(産業上の利用分野)
本考案は、パイプの継手構造に係り、特に自動車用空気調和装置の冷媒配管などにおいて使用されるものに関する。
(従来の技術)
例えば、自動車用空気調和装置には、いわゆる冷房ナイクル系を構成する冷媒配管の他に温水配管等が設けられており、冷媒およびエンジン冷却水等の温水をそれぞれの熱交換器中に導き、空気を冷却及び加熱することにより車室内の冷暖房を行なっていることは周知の通りである。
しかして、この配管を連結し、所定の冷房サイクル系又は温水配管系に組立てるには、パイプ相互を継手によって連結するが、この継手には従来から第5図に示すような継手が用いられている。」
「第5図
[図:0001432620000003.jpg]
」
「このパイプ継手1は、第1パイプP1の尖端側にビード部2を形成し、このビード部2の後端面2aに当接するように設けられたナット3と、第2パイプP2の端部ユニオン4とを螺合し、中間に設けられたOリング5を加圧することによってシールしつつ両パイプP1、P2を連結するようにしている。このようなパイプの継手構造は、実開昭60-16,082号公報にも開示してある。
(考案が解決しようとする問題点)
ところが、このようなパイプ継手1は、一般に比較的軟質の金属(例えばアルミニウム、真鍮等)のナット3とユニオン4とにより構成され、内部にOリング5を介在して締付ける構成であるため、ナット3の締付けトルク値の規制をしないとネジのかみ込みや、ビード部2やOリング5に疲労が発生し、洩れの原因となるという問題がある。
本考案は、このような不都合を解消するためになされたものであり、ナットとユニオンを螺合することによりパイプ相互を接続するパイプの継手構造において、ナットとユニオンとの締付トルクが所定値以上にならず、ネジのかみ込みや、ビード部ないしOリング等のシール部材の疲労が発生し難いパイプの継手構造を提供することを目的とする。」
(イ) 明細書5頁16行~7頁15行、第1~2図
「第1、2図に示すパイプP1、P2は、例えば自動車用冷房サイクル系冷媒配管又は自動車用温水配管等に用いられるものである。一方のパイプP1の端部外周には、フランジ状のビード部2が形成してある。このビード部2の後端面2aには、ナット10の後面に形成した内方突縁10aが係合するようになっている。したがって、ナット10は、パイプP1の先端側に所定距離(第1、2図の状態)以上に移動不能になっている。」
「第1図
[図:0001432620000004.jpg]
第2図
[図:0001432620000005.jpg]
」
「ビード部2とパイプP1先端との間のパイプ外周には、シール部材としてのOリング5が嵌着してある。このOリング5の外周には、他方のパイプP2の先端にロー付等で固定されたユニオン11の先端に形成された内周面11aが圧接するようになっている。
特に本実施例にあっては、ユニオン11の先端側外周面に複条の雄型ねじ山12を形成すると共に、ナット10の内周面に、前記複条の雄型ねじ山12に螺合する一条の雌型ねじ山13を形成してある。しかも、第1図に示すように、複条の雄型ねじ山12が形成されたユニオン11におけるねじ山の基端部には、空転溝14が形成してある。空転溝14は、ここに一条の雌型ねじ山13が螺合した場合に、当該ねじ山13を空転させるためのものである。したがって、この一条の雌型ねじ山13が空転溝14内に位置する程、ナット10とユニオン11とを螺合した場合には、それ以上の締付トルクが発生しないようになっている。
このようなパイプの継手構造20にあっては、一方のパイプP1端部外周に先端方向への所定以上の軸方向移動が制限されるように装着されたナット10と、一方のパイプP2端部に固定されたユニオン11とを螺合すれば、所定の軸方向移動距離以上に螺合させた場合に、ナット10の内周面に形成された一条のねじ山13が、ユニオン11の外周面に形成された空転溝14内に入り込む。したがって、それ以上ナット10とユニオン11とを相対的に回転させても、一条のねじ山13が空転溝14内で空転するため、これらの締付トルクが所定値以上になることはない。」
(ウ) 明細書8頁5~12行、第3図
「また、本考案は、その他の構造のパイプ継手構造にも適用することが可能である。
例えば第3図に示すように、ユニオン11先喘と一方のパイプPlに形成したビード部2との聞でOリング5を押圧するようにした継手にも、上述した実施例と同様に、一条のねじ山13とそれに螺合する一条のねじ山12および空転溝とを形成しても良い。(後略)」
「第3図
[図:0001432620000006.jpg]
」
イ 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2001-329621号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柱の締結具及び締結構造に関する。」
(イ) 【0024】~【0031】、【図1】
「【0024】図1(イ)図に示すように、上下に締結される柱12、柱12は、それぞれの締結端部に、内面に張り出る係合部121、121を備えている。上記締結具1は、この柱12の内部に挿入され、柱12のそれぞれの係合部121に嵌合してそれらの係合部121を挟持することにて、両柱12、12を締結する嵌合体2と、この嵌合体2のための嵌合駆動機構部3とを有している。上記嵌合駆動機構部3は、嵌合体2を両係合部121、121に嵌合せしめるように嵌合体2を外方に押動可能になされ、柱12の上方から挿入された締結工具7により作動されて締結動作し、柱12と柱12とを締結するものである。この嵌合体2と嵌合駆動機構部3とにより、上下の柱12、柱12の係合部121、121を嵌合体2が嵌合挟持して、上下の柱12、柱12を剛接合する。」
「【図1】
[図:0001432620000007.jpg]
」
「【0025】上記嵌合駆動機構部3は、具体的には、ボルト4と、ボルト4の上下端を相対回転自在に挿通された湾曲リング状の板状体5とからなっている。上記板状体5の側部には、前記嵌合体2が溶接して取り付けられ、ボルト4は板状体5の上面板51から遊挿され、下面板52に固着されたナット6に螺着されている。そして、前記締結工具7によるボルト4の回動により、湾曲リング状の板状体5を上下から挟圧変形せしめることにて、板状体5の側部を外方に拡開動作せしめ、嵌合体2を外方に押動可能になされる。
【0026】上記締結工具7は、軸部73の一端に設けられボルト4の頭部を係着する係着部71と、軸部73の他端に設けられた操作部72(ハンドル)と、係着部71をボルト4の頭部に案内するガイド部74とを有している。
【0027】上記ボルト4の軸部は、ナット6に螺合する軸部先端側のネジ部41と、ネジ部41に続いてナット6の内径より小径の小径軸部42とを備えている。
【0028】上記構成になされた締結具1を柱12の内部に挿入し、ボルト4の頭部を締結工具7により回動すると、湾曲リング状の板状体5が上下から挟圧変形せしめられ、板状体5の側部が外方に拡開される。すると、上記板状体5の側部に取り付けられた嵌合体2が、柱12の係合部121に嵌合される。そして、図1(ロ)図に示すように、嵌合体2の柱12の係合部121への嵌合が終了すると、ナット6をボルト4の小径軸部42に位置せしめてボルト4、ナット6間が空回りすることで、嵌合終了を認識できるようになっている。
…(中略)…
【0031】(実施例の作用)本実施例の締結具1によると、嵌合体2の柱12の係合部121への嵌合が終了すると、ナット6を小径軸部42に位置せしめてボルト4、ナット6間が空回りすることで、嵌合終了を認識可能になされているので、板状体5の所定以上の変形を確実に防止でき、想定した柱12間の締結力を維持できる。」
ウ 周知技術1の認定
前記ア及びイに示した引用文献2、6の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
<周知技術1>
「雄ねじとナットとの螺合構造において、雄ねじとナットが所定の回転角度まで螺合すると、雄ねじとナットの間において空転を生じさせて、それ以上螺合させずに両者の軸方向における位置関係を維持させることにより、締結が終了したことを認識可能にして、雄ねじとナットの締付力を適切なものとすること。」
(3) 引用文献4、5に記載された事項及び周知技術2の認定
ア 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2001-324067号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】~【0004】、【図3】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体を移送する配管等に使用されるユニオン継ぎ手に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のユニオン継ぎ手としては、図3に示すものが知られている。すなわち、一端に管との接続口11が形成され、他端側は外周面につば部12が形成された接合面13となる第1連結部材10と、一端に管との接続口21が形成され、他端側は拡径された外周面に雄ネジ22が形成された第2連結部材20と、内周面に雌ネジ32が形成され、一端に内つば部31が形成されたユニオンナット30を有し、前記ユニオンナット30に前記第1連結部材10の接続口11を挿通させ、前記ユニオンナット30の内周面に形成された雌ネジ32を、前記第1連結部材の接合面13とシールパッキン40を介して接合された前記第2連結部材20の雌ネジ22に螺合させたユニオン継ぎ手が開示されている。」
「【図3】
[図:0001432620000008.jpg]
」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術の構造では、通常、ユニオンナットと第1連結部材が同材質で形成されるため、摩擦抵抗が小さい。特に樹脂製のユニオン継ぎ手にあっては軽量なこともあり、管を接続して配管した後に管路に生じる振動により、ユニオンナットが緩んだり、外れたりするおそれがあった。
【0004】本発明は、ユニオンナットの緩み、外れを防止し、確実な管の接続を行うユニオン継ぎ手を提供することを目的とする。」
(イ) 【0007】~【0010】、【図1】
「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の一形態を示すユニオン継ぎ手の断面図である。10は、第1連結部材であり、一端に管(図示せず)との接続口11が形成され、他端側は第2連結部材20との接合面13であり、その端面近傍の外周面につば部12が形成されている。第2連結部材20は、管(図示せず)との接続口21が一端に形成され、他端側は、接合面23の端面近傍が接続口21よりも拡径されており、拡径された部分の外周面には雄ネジ22が形成されている。また、接合面23には溝が形成され、シールパッキン40が嵌着される。このシールパッキン40により、管路内の気密性、水密性が保持される。」
「【図1】
[図:0001432620000009.jpg]
」
「【0008】ユニオン継ぎ手は、この第1連結部材10と第2連結部材20の各々の接合面13、23を合わせ、ユニオンナットでネジ固定することにより構成される。ここでユニオンナット30は、一端部に内つば31が形成され、他端側の内周面には雌ネジ32が形成されている。第1連結部材10の接続口11側を、ユニオンナット30の雌ネジ32が形成されている側の開口から挿通させ、管(図示せず)を第1連結部材10の接続口11を接続する。この接続にあたっては接着剤を用いる。次に、第2連結部材20の接続口21に管(図示せず)を接続する。この接続も接着剤を用いる。そして、第1連結部材10の接合面13と第2連結部材20の接合面23を合わせ、ユニオンナット30の雌ネジと第2連結部材20の雄ネジを螺合させる。ユニオンナット30を締め付けることにより、第1連結部材10のつば部12がユニオンナット30の内つばに係止されるので、第1連結部材10と第2連結部材20とが接続される。
【0009】このような基本構造を有するユニオン継ぎ手において、第1連結部材10とユニオンナット30の接触部分Aに弾性部材50を介在させる。弾性部材50を介在させる方法としては、予め第1連結部材10のつば部12に貼付しておく、又はユニオンナット30の内つば31の内周面に貼付しておけば良い。あるいは第1連結部材10をユニオンナット30に挿通させる際に、第1連結部材10の接続口10に挿通してもよい。
【0010】また、弾性部材50は合成ゴム、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム),NBR(ニトリルゴム),FPM(フッ素ゴム),SBR(スチレンブタジエンゴム)を用いれば良い。」
イ 引用文献5に記載された事項
前置報告書において引用された、本願の出願前に発行された文献である特表2011-503450号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】
「【0001】
本願は、一般に流体シールに関する。より具体的には、本願の実施形態は、例えば、圧力センサ,流量計,ミクロ電子工学プロセスで用いられる液体濾過装置等の装置用の一体型流体フェイスシールに関する。」
(イ) 【0042】、【図13】
「【0042】
図13には、別の実施形態の二つの管状部材用のシール構造が示されている。管状部材90はシール面94を備え、該シール面94は軸線方向面92及び表面96を備える。管状部材91はシール面97を備え、該シール面97は少なくとも一つの環状の湾曲した突出部93及び表面95を備える。シール面97は複数の環状の湾曲した突出部93を備えることもでき、前記湾曲した突出部93は、管状部材91の軸線方向面92に同心に配向される。シール面96は環状の湾曲した突出部93の上面に対して垂直な接線方向にある。軸線方向に沿った圧縮力が二つのシール面94,97上に作用し、環状の湾曲した突出部93が変形し、かつ面96に係合される。さらに、バネ座金、例えば、ベルビル座金またはコイルバネ98は、圧縮ナット99と管状部材90の間に配置される。圧縮ナット99は管状部材90,91に係合し、かつバネ座金98をシール面94,97に向かって付勢し、それによって、バネ座金98は環状の湾曲した突出部93及び垂直な接面96上に圧力を付与し、ひいては、より確実な一体型フェイスシールをもたらす。バネ座金98は、管状部材のプラスチック又はフルオロポリマ材がクリープし得る際に、一体型フェイスシールを保持するために特に有用である。」
「【図13】
[図:0001432620000010.jpg]
」
ウ 周知技術2の認定
前記ア及びイに示した引用文献4、5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。)
<周知技術2>
「第1の管の外周に設けられた雄ねじと第2の管に外嵌されたナットとを螺合させて一対の管を連結する継手構造において、第2の管に形成された外周突部と第2の管に外嵌されたナットの間に弾性部材を介在させて両者を付勢することにより、ねじの緩みを防止するとともに、第2の管の接合部を第1の管に対して圧接させて、確実な管の接続を行うこと。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(メータカプラ構造)
(ア) 構成Xは、「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部と、一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部との連結、又は前記メータ通流端部のうちガスが流出するメータ流出部と、二次側ガス配管の前記ガス管端部であるガス管流入部との連結の少なくとも何れか一方を担うメータカプラ構造」の発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明は、「ガスメータ101のガス流入口側には上流側のガス配管102が接続され、ガスメータ101のガス流出口側には下流側のガス配管103が接続されて[いる]」ものであるところ、「ガスメータ101」が「ガス配管102,103」を通流するガス流量を計測するものであることは自明であるから、引用発明の「ガスメータ101」は、本願発明の「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータ」に相当する。
そして、引用発明の「ガスメータ101のガス流入口」は、本願発明の「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部」に相当する。
(ウ) また、引用発明の「上流側のガス配管102」は、本願発明の「一次側ガス配管」に相当するから、引用発明の「ガス配管102」「の端部」は、本願発明の「一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部」に相当する。
(エ) ここで、引用発明の「ガスメータとガス配管の接続構造」は、「ガスメータ101のガス流入口」と「ガス配管102」「の端部」を接続する構造を含むものといえるから、本願発明の「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部と、一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部との連結」「を担うメータカプラ構造」に相当する。
(オ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Xの観点について、次の点において一致する。
「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部と、一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部との連結、又は前記メータ通流端部のうちガスが流出するメータ流出部と、二次側ガス配管の前記ガス管端部であるガス管流入部との連結の少なくとも何れか一方を担うメータカプラ構造」の発明である点。
イ 構成Aの観点(第1環状螺子部、第2環状螺子部)
(ア) 構成Aは、「対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部の何れか一方に対して、抜け止めされた状態で、前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部が設けられると共に、対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部のうち何れか他方に、前記第1環状螺子部が螺合可能な第2環状螺子部が設けられ[ている]」ことである。
(イ)a 引用発明は、「(ガスメータ101の)口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むこと」ができるものであるから、「締付金具(袋ナット)106」の内周に雌ねじ部が形成されていることは明らかである。
そして、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」は、「ガス配管102,103の端部の外周に、」「ガス配管102,103の軸周りに回転自在」「に設けられ[る]」ものであるところ、引用発明の「ガスメータとガス配管の接続構造」は、「ユニオン継手による」ものであるから、引用発明の「ガス配管102」「の端部」と「ガスメータ101のガス流入口」が同じ軸線上に配置されていることは自明である。
そうすると、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」の内周に形成された雌ねじ部は、本願発明の「前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部」に相当する。
b また、引用発明の「外周突部」は、「ガス配管102,103の端部近傍に設けられた」ものであるところ、引用発明においては、「締付金具(袋ナット)106の内周突部とガス配管102,103の外周突部が係合して[いる]」から、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」は、「ガス配管102」「の端部」に抜け止めされているといえる。
c そうすると、引用発明は、本願発明の「前記ガス管端部」「に対して、抜け止めされた状態で、前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部が設けられる」ことに相当する構成を有する。
(ウ) また、引用発明の「ガスメータ101の口金部104」は、「ガス配管102」との間に「接続部」を形成するものであるから、「ガスメータ101のガス流入口」の周囲に設けられるものであることが明らかである。
そうすると、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」に「螺合」される「口金部104の周面に形成されたねじ部」は、本願発明の「前記メータ通流端部」に「設けられている」「前記第1環状螺子部が螺合可能な第2環状螺子部」に相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点について、次の点において一致する。
「対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部の何れか一方に対して、抜け止めされた状態で、前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部が設けられると共に、対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部のうち何れか他方に、前記第1環状螺子部が螺合可能な第2環状螺子部が設けられている」点。
ウ 構成Bの観点(ロック機構)
(ア) 構成Bは、「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするロック機構として働[く]」ことである。
(イ) 引用発明は、「口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むこと」ができるものであるから、「締付金具(袋ナット)106」の内周に形成された雌ねじ部と「口金部104の周面に形成されたねじ部」は、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合することができることは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明は、「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合することができるものである」点において共通する。
(ウ) その一方で、引用発明は、本願発明の「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするロック機構として働[く]」ことに相当する構成を有しない。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Bの観点における一致点
「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合することができるものである」点。
b 構成Bの観点における相違点
本願発明においては、「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするロック機構として働[く]」のに対して、
引用発明においては、そのような構成を有しない点。
エ 構成Cの観点(付勢手段)
(ア) 構成Cは、「前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを近接する側へ付勢する付勢力を付与すると共に、前記ロック状態にない非ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とに対する前記付勢力を解除する付勢手段が設けられ[ている]」ことである。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。
本願発明においては、「前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを近接する側へ付勢する付勢力を付与すると共に、前記ロック状態にない非ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とに対する前記付勢力を解除する付勢手段が設けられ[ている]」のに対して、
引用発明においては、「付勢手段」に相当する構成を有しない点。
オ 構成Dの観点(環状部位)
(ア) 構成Dは、「前記第1環状螺子部は、自身が設けられる前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方に摺動自在に外嵌する環状部位を有[する]」ことである。
(イ) 引用発明においては、「締付金具(袋ナット)106」は「ガス配管102,103の端部の外周に」「設けられ[る]」ものであるから、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」の内周に形成された雌ねじ部も、「ガス配管102」「の端部」に設けられるものといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記第1環状螺子部」「自身が設けられる前記ガス管端部」に相当する構成を有する。
(ウ) また、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」は、ナットである以上、環状を呈するものであることは明らかである。
そうすると、引用発明の「ガス配管102」「の端部の外周に」「ガス配管102」「の軸方向に摺動自在に設けられ[る]」「締付金具(袋ナット)106」は、本願発明の「前記ガス管端部」「に摺動自在に外嵌する環状部位」に相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの観点について、次の点において一致する。
「前記第1環状螺子部は、自身が設けられる前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方に摺動自在に外嵌する環状部位を有する」点。
カ 構成Eの観点(抜止部)
(ア) 構成Eは、「前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方には、前記環状部位の抜け止めを防止する抜止部が設けられ[ている]」ことである。
ここで、構成Eの「抜け止めを防止する抜止部」とは、「抜けを防止する抜止部」あるいは「抜けを止める抜止部」の明らかな誤記であると解するのが相当である。
(イ) 引用発明においては、「締付金具(袋ナット)106の内周突部とガス配管102,103の外周突部が係合して[いる]」から、引用発明の「ガス配管102,103の外周突部」は、「締付金具(袋ナット)106」を抜け止めしているといえる。
そうすると、引用発明の「ガス配管102」「の端部近傍に外方に突出する外周突部」は、本願発明の「前記ガス管端部」に「設けられている」「前記環状部位の抜け止めを防止する抜止部」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Eの観点について、次の点において一致する。
「前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方には、前記環状部位の抜け止めを防止する抜止部が設けられている」点。
キ 構成Fの観点(コイルバネ)
(ア) 構成Fは、「前記付勢手段は、一端が前記環状部位に当接すると共に、他端が前記抜止部に当接するコイルバネであ[る]」ことである。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。
本願発明においては、「前記付勢手段は、一端が前記環状部位に当接すると共に、他端が前記抜止部に当接するコイルバネであ[る]」のに対して、
引用発明においては、「付勢手段」に相当する構成を有しない点。
ク 構成Gの観点(第1環状螺子部の形成箇所)
(ア) 構成Gは、「前記第1環状螺子部は、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを互いに相対回転させることなく接続可能なユニオン式管継手としてのユニオンナットの内周面に設けられ[ている]」ことである。
(イ) 引用発明は、「ユニオン継手によるガスメータとガス配管の接続構造」に係るものであるから、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」は、本願発明がいうところの「ユニオン式管継手としてのユニオンナット」ということができる。
そして、「ユニオン継手」が、管同士を互いに相対回転させることなく接続可能なものであることは技術常識である。
また、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」の内周に形成された雌ねじ部が本願発明の「第1環状螺子部」に相当することは、前記イ(イ)aにおいて説明したとおりである。
(ウ) したがって、前記アの検討も踏まえると、本願発明と引用発明は、構成Gの観点について、次の点において一致する。
「前記第1環状螺子部は、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを互いに相対回転させることなく接続可能なユニオン式管継手としてのユニオンナットの内周面に設けられている」点。
ケ 構成Hの観点(第2環状螺子部の形成箇所)
(ア) 構成Hは、「前記第2環状螺子部は、前記メータ通流端部の外周面に一体的に形成され[ている]」ことである。
(イ) 前記イ(ウ)において検討したとおり、引用発明の「ガスメータ101の口金部104」は、「ガスメータ101のガス流入口」(本願発明の「メータ通流端部」に相当)の周囲に設けられるものであり、引用発明の「口金部104の周面に形成されたねじ部」は、本願発明の「第2環状螺子部」に相当するものである。
そして、引用発明の「口金部104の周面に形成されたねじ部」が口金部104の周面に一体的に形成されていることは自明であるから、引用発明は、本願発明の「前記第2環状螺子部は、前記メータ通流端部の外周面に一体的に形成されている」ことに相当する構成を有する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Hの観点について、次の点において一致する。
「前記第2環状螺子部は、前記メータ通流端部の外周面に一体的に形成されている」点。
コ 構成Iの観点(第1シール部材)
(ア) 構成Iは、「前記ロック機構による前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする第1シール部材が、前記メータ通流端部に設けられている」ことである。
(イ) 引用発明において、「口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込[んだ]」状態は、本願発明の「前記ロック機構による前記ロック状態」と、「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部の係合状態」である点において共通する。
(ウ) また、引用発明の「押圧変形[されて]」「口金部104とガス配管102」「との接続部を密閉(シール)している」「ゴム製の口金パッキン105」は、本願発明の「前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする第1シール部材」に相当する。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Iの観点にける一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Iの観点における一致点
「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部の係合状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする第1シール部材が設けられている」点。
b 構成Iの観点における相違点
「第1シール部材」が「前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする」「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部の係合状態」について、
本願発明においては、「前記ロック機構による前記ロック状態」であるのに対して、
引用発明においては、「口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込[んだ]」状態である点。
また、「第1シール部材」について、
本願発明においては、「前記メータ通流端部に設けられている」のに対して、
引用発明においては、どのように設けられているのか明らかでない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「ガス管を通流するガス流量を計測するガスメータへガスが流入出するメータ通流端部のうちガスが流入するメータ流入部と、一次側ガス配管のガス管端部であるガス管流出部との連結、又は前記メータ通流端部のうちガスが流出するメータ流出部と、二次側ガス配管の前記ガス管端部であるガス管流入部との連結の少なくとも何れか一方を担うメータカプラ構造であって、
対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部の何れか一方に対して、抜け止めされた状態で、前記ガス管端部及び前記メータ通流端部のガス通流軸心周りで回転自在な第1環状螺子部が設けられると共に、対向する前記ガス管端部と前記メータ通流端部のうち何れか他方に、前記第1環状螺子部が螺合可能な第2環状螺子部が設けられ、
前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合することができるものであり、
前記第1環状螺子部は、自身が設けられる前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方に摺動自在に外嵌する環状部位を有し、
前記ガス管端部と前記メータ通流端部との何れか一方には、前記環状部位の抜け止めを防止する抜止部が設けられ、
前記第1環状螺子部は、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを互いに相対回転させることなく接続可能なユニオン式管継手としてのユニオンナットの内周面に設けられ、
前記第2環状螺子部は、前記メータ通流端部の外周面に一体的に形成され、
前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部の係合状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする第1シール部材が設けられている
メータカプラ構造」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明においては、
「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部とは、所定の相対回転角度だけ回転して互いに螺合した後に、互いの相対回転を許容する相対回転許容状態をとると共にガス通流軸心方向での両者の離間を禁止するロック状態とするロック機構として働き、
前記ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とを近接する側へ付勢する付勢力を付与すると共に、前記ロック状態にない非ロック状態において、前記ガス管端部と前記メータ通流端部とに対する前記付勢力を解除する付勢手段が設けられ、
前記付勢手段は、一端が前記環状部位に当接すると共に、他端が前記抜止部に当接するコイルバネであ[る]」とともに、
「第1シール部材」が「前記ガス管端部と前記メータ通流端部との間をシールする」「前記第1環状螺子部と前記第2環状螺子部の係合状態」が「前記ロック機構による前記ロック状態」であるのに対して、
引用発明においては、そのような構成を有しない点。
(イ) 相違点2
「第1シール部材」について、本願発明においては、「前記メータ通流端部に設けられている」のに対して、引用発明においては、どのように設けられているのか明らかでない点。
6 判断
(1) 相違点1について
ア 引用発明に内在する課題
(ア) 引用発明は、「口金部104の周面に形成されたねじ部に螺合する締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込むことで、ゴム製の口金パッキン105を押圧変形して、口金部104とガス配管102,103との接続部を密閉(シール)している」ものであるところ、密閉(シール)の程度は、締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込む際の締付力の大きさに依存し、締付力が弱い場合には十分な密閉(シール)が期待できない一方で、締付力が強くてもゴム製の口金パッキン105の機能劣化が早まりシール漏れに至ることも想定されることを踏まえると、締付力が弱くても強すぎても口金部104とガス配管102,103との接続部を長期間にわたり密閉(シール)することに支障をきたすことになるから、引用発明は、締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込む際の締付力を適切なものにするという課題を内在するものといえる。
(イ) また、引用発明は、「ガスメータとガス配管の接続構造」に係るものであって、ガスメータ101の口金部104とガス配管102を接続するものであるところ、確実に接続されていないとガス漏れのおそれがあるため、ガスメータ101の口金部104とガス配管102を確実に接続するという課題を内在することも、当業者にとって自明といえる。
イ 周知技術
そして、前記4(2)ウ及び4(3)ウにおいて、それぞれ周知技術1、周知技術2として認定したとおり、次の技術事項は、それぞれ本願の出願前に当業者にとって周知の技術であった。
<周知技術1>
「雄ねじとナットとの螺合構造において、雄ねじとナットが所定の回転角度まで螺合すると、雄ねじとナットの間において空転を生じさせて、それ以上螺合させずに両者の軸方向における位置関係を維持させることにより、締結が終了したことを認識可能にして、雄ねじとナットの締付力を適切なものとすること。」
<周知技術2>
「第1の管の外周に設けられた雄ねじと第2の管に外嵌されたナットとを螺合させて一対の管を連結する継手構造において、第2の管に形成された外周突部と第2の管に外嵌されたナットの間に弾性部材を介在させて両者を付勢することにより、ねじの緩みを防止するとともに、第2の管の接合部を第1の管に対して圧接させて、確実な管の接続を行うこと。」
ウ 相違点1に係る構成の容易想到性
そうすると、引用発明において、前記ア(ア)の内在する課題を解決するべく、締付金具(袋ナット)106を口金部104にねじ込む際の締付力を適切なものにするという観点から周知技術1を適用し、さらに、前記ア(イ)の内在する課題も解決するべく、ガスメータ101の口金部104とガス配管102を確実に接続するという観点から周知技術2を適用することは、当業者にとって格別の困難性はないというべきである。
そして、前記周知技術2の適用に当たり、「締付金具(袋ナット)106」(本願発明の「環状部位」に相当する。)と「ガス配管102」「の端部近傍に外方に突出する外周突部」(本願発明の「抜止部」に相当する。)の間に介在させる弾性部材として、管状体に適用する弾性体として慣用されているコイルバネ(例えば、前記4(3)イ(イ)において摘記した引用文献5の【0042】を参照。)を採用することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
以上により、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 相違点2について
引用発明の「ゴム製の口金パッキン105」は、「ガスメータ101の口金部104の先端とガス配管102,103の端部近傍に設けられた外周突部との間に」「設け」られるものである。
そして、パッキンのような複数の部材間に設けられる消耗部品を、取り替え可能な部材側に設けて交換を容易にすることは常套手段であるから、引用発明においても、消耗部品である口金パッキン105(第1シール部材)を取り替え可能な部材であるガスメータ101側、すなわち、ガスメータ101の口金部104の先端に設けることにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
本願発明の構成A、B、G及びHについて、引用文献1~4のいずれにも、ユニオン式管継手の構造の一部としてのユニオンナットを流用したメータカプラ構造について開示がなく、その示唆すらないから、引用文献1~4に開示の技術では、ガスメータの構造を改変するような過渡的な状況において、ガス管端部の構造の大幅な変更を行わざるを得ず、本願発明のように過渡的な状況での経済的メリットを享受することはできない。
本願発明の構成C~F、Iについて、引用文献2に開示の技術では、相対回転許容状態となったときに、ガス管端部とメータ通流端部との間の緩みを防止するために、「付勢手段としてのコイルバネが、一端が環状部位に当接すると共に他端が抜止部に当接する」構成を有するものではなく、「第1シール部材が、ガス管端部とメータ通流端部との間をシールする」構成を有するものでもない。さらに、引用文献4に開示の技術は、そもそも「相対回転許容状態」に相当する状態をとることはなく、付勢手段としてエチレンプロピレンゴム等からなる弾性部材50を用いているため、その摩擦抵抗により、本願発明のように円滑な相対回転許容状態をとることができない。これに加えて、引用文献4に開示の技術は、本願発明の「コイルバネ」に相当する構成と「シール部材」に相当する構成とを各別に設ける構成ではない。
(2) 請求人の主張についての検討
請求人は、ユニオン式管継手の構造の一部としてのユニオンナットを流用したメータカプラ構造は、いずれの引用文献にも開示されていない旨主張するが、前記5(1)クにおいて説示したとおり、引用発明の「締付金具(袋ナット)106」は、本願発明がいうところの「ユニオン式管継手としてのユニオンナット」ということができるから、請求人の前記主張は採用することができない。
また、請求人は、引用文献2、4に開示の技術は、それぞれ本願発明の構成C~F、Iにおける特定の構成を有しない旨主張するが、相違点1及び2についての当合議体の判断は、前記6(1)及び(2)において説示したとおりであり、本願発明が奏する効果についても、前記6(3)において検討したとおりであるから、請求人の前記主張は採用することができない。
8 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-010957