2022-011821
角結膜のホメオスタシスを確立、回復及び維持するための方法
- 審判番号
- 2022-011821
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-541893外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月29日
- 審決日
- 2025年07月24日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイ.コム メディカル ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】弁理士法人南青山国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 18項目
1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)年10月2日(パリ条約による優先権主張 2016年10月14日 2017年6月8日 いずれも(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
同年 3月23日付け :拒絶査定
同年 7月29日 :審判請求書の提出
同年 8月 1日 :手続補足書(甲第1~3号証)の提出
同年 8月 4日 :手続補足書(甲第1~3号証
の翻訳文)の提出
同年 6月26日付け :拒絶理由通知書
同年12月 2日 :意見書及び手続補足書
(参考文献8~11)の提出
同年 4月28日 :手続補正書及び意見書の提出
2 本願発明
令和7年4月28日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】少なくとも3百万ダルトンの分子量、>2.9m3/kgの固有粘度、及び0.10~0.19%w/vの濃度を有するヒアルロン酸と、水とを含み、6.8~7.6のpHと、240~330mosmol/kgの浸透圧と、7.6~10.5g/lのNaCl濃度と、及び1.0~1.4mmol/lのリン酸塩濃度と、を有し、保存料、洗剤、生物活性剤、疎水性活性成分、免疫調節薬、免疫抑制剤、又は抗生物質を含まない、ヒト又はヒト以外の動物対象の眼の角結膜に局所投与するための、重症ドライアイ治療用の流体。」
3 拒絶の理由
令和7年1月23日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1~7に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下に示す文献に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1. Effectiveness of Comfort Shield(R) MDS-Results of a Clinical Investigation at Beuth Hochschule f◆r Tecnik Berlin, ,GALIFA AUGEN BLICK, 2016年07月,pp.1-8,検索日:2021年7月21日, <URL: https://www.icom-medical.de/upload/15563389-Krzoska-Wirksamkeit-von-Comfort-Shield-Beuth-Studie-GALIFA-AUGENBLICK-2016-EN.pdf>
2.Tear substitutes, Latest information on hyaluronic acid,Aktuelle KONTAKTOLOGIE - Current CONTACTOLOGY,2015年, pp.17-19
3.Therapeutic Effects of Sodium Hyaluronate on Ocular Surface Damage Induced by Benzalkonium Chloride Preserved Anti-glaucoma Medications,Chinese Medical Journal,2015年,128(18),pp.2444-2449
4.Double blind, randomised, placebo controlled, crossover, multicentre study to determine the efficacy of a 0.1 % (w/v) sodium hyaluronate solution (Fermavisc) in the treatment of dry eye syndrome,British Journal of Ophtalmology,1999年,83,pp.1121-1124
6.i.com medical, Munich, Facebook, 2015年3月26日, <URL: https://www.facebook.com/icommedical/>
7.Facebook, i.com medical, 2015年3月26日, <URL: https://www.facebook.com/photo/?fbid=1556781561248541&set=pcb.1556781727915191>
8.Clinical Ophthalmology, 06 Apr 2017, pp.631-638, DOI: 10.2147/OPTH.S131384
(当審注:(R)は、原文では上付きの丸囲みされたRである。以下同じ。◆は、原文ではuのウムラウトである。)
4 パリ条約による優先権主張について
本願明細書において、重症ドライアイ治療用の流体に関する本願発明を具体的に裏付ける記載は、実施例1として記載された「重症ドライアイの患者における多中心、多国籍予想臨床試験-HYLAN M研究」(【0091】~【0094】)のみである。
しかしながら、本願明細書において実施例1として記載された「重症ドライアイの患者における多中心、多国籍予想臨床試験-HYLAN M研究」(【0091】~【0094】)は、本願の優先権主張の基礎となる米国特許出願第62/408,559号(2016年10月14日出願)(以下「優先基礎出願1」という。)の明細書には記載されていない。
そうすると、重症ドライアイ治療用の流体に関する本願発明については、優先基礎出願1の明細書に記載されたものではないから、当該出願を根拠とするパリ条約の優先権の利益を享受することはできない。
一方、本願明細書において実施例1として記載された「重症ドライアイの患者における多中心、多国籍予想臨床試験-HYLAN M研究」(【0091】~【0094】)は、本願の優先権主張の基礎となる米国特許出願第62/516,911号(2017年6月8日出願)(以下「優先基礎出願2」という。)の明細書(18頁25行~19頁最終行)に記載されているものと認められる。
したがって、重症ドライアイ治療用の流体に関する本願発明の進歩性の判断の基準日は、優先基礎出願2の出願日である2017年6月8日である。
なお、請求人は、令和7年4月28日提出の意見書において、優先権主張について何ら意見を述べていない。
5 引用文献の記載事項及び引用発明
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上記3の拒絶理由で引用された引用文献は、原文が外国語であるため日本語訳で記載する。下線は当審合議体が付した。
(1)引用文献1に記載された事項
1a
「研究対象Comfort Shield(R)点眼薬は、等張リン酸緩衝生理食塩水に0.15%のHylan A(高分子ヒアルロン酸)を含有している。防腐剤は使用しておらず、1回使用単位及び10mlボトルで利用可能である。コンタクトレンズ装用者を含む、あらゆるドライアイ症状に使用可能である。この点眼薬は眼に自然に存在する物質のみを含むため、アレルギーのある者にも利用可能である。」(3/8頁の「Study object」の項)
1b
「[図:0001430336000001.jpg]図1 Comfort Shield(R)MDS」(3/8頁の「Figure 1」)
(2)引用文献2に記載された事項
2a
「既に1982年には、ポラックとマクニースが、0.1%の高分子ヒアルロナン溶液が重度のドライアイの治療に効果的であったことを報告している(1)。」(17頁左欄12~15行)
2b
「ヒアルロナン溶液ができるだけ長く目に効率よくとどまり、同時にまばたき時のせん断力が低い状態で均一に分散されるようにするには、可能な限り大きな分子量とする必要がある。」(17頁右欄11~16行)
2c
「Comfort Shield(R)(Hylan A)に含まれるヒアルロン酸は、分子量が3MDaを超えるため、角膜及び結膜上皮のヒアルロナンを置き換えて使用できる。Comfort Shield(R)は、まばたき時のせん断力が低いため、再発性角膜びらんの治療にも効果的に導入されている(Mark Tornaila氏による個人的情報提供)。」(19頁中央欄13~最終行)
(3)引用文献3に記載された事項
3a
「要約背景:塩化ベンザルコニウム(BAC)防腐剤含有薬剤の長期使用は、しばしば眼表面毒性を伴う。眼表面症状は、緑内障患者のQOL(生活の質)と服薬コンプライアンスに大きな影響を与える。本研究は、BAC防腐剤含有緑内障治療薬投与によって誘発される眼表面毒性に対するヒアルロン酸ナトリウム(SH)の効果を調査することを目的とした。方法:BAC防腐剤含有緑内障治療薬の点眼治療を受け、重症ドライアイの基準を満たした58名(101眼)を解析対象とした。全患者は、当初の点眼緑内障治療を継続した。SH投与群(56眼)には、防腐剤不使用の0.3%SH点眼薬を1日3回、90日間点眼した。対照群(55眼)には、リン酸緩衝生理食塩水を1日3回、90日間点眼した。眼表面疾患指数(OSDI)質問票、ブレークアップ時間(BUT)試験、角膜フルオレセイン染色、角膜及び結膜ローズベンガル染色、シルマー試験、結膜印象細胞診を0日目と91日目に順次実施した。結果:対照群と比較して、91日目に、SH投与群はOSDIスコア(Kruskal-Wallis検定:H=38.668、P<0.001)、フルオレセイン及びローズベンガルスコア(Wilcoxon符号順位検定:それぞれz=-3.843、P<0.001、z=-3.508、P<0.001)の減少を示し、涙液膜BUT(t検定:t=-10.994、P<0.001)及び水性涙液産生(t検定:t=-10.328、P<0.001)の増加を示した。SH療法後に、杯細胞密度は増加し(t検定:t=-9.981、P<0.001)、結膜上皮の形態も改善した。結論:SH療法は、BAC防腐剤含有緑内障治療薬投与患者における眼表面障害の症状と徴候の両方を有意に改善した。SH療法は、BAC防腐剤含有緑内障治療薬投与における眼表面毒性を軽減し、眼表面障害の症状を緩和するための新たな試みとして提案できる可能性がある。」(2444頁「Abstract」)
(4)引用文献4に記載された事項
4a
「要約背景/目的:ヒアルロナン(ヒアルロン酸ナトリウム)は、ドライアイ症候群の患者において客観的及び主観的な改善をもたらすことが示されている。本研究では、重症ドライアイ症候群の症状治療において、0.1%ヒアルロナン溶液と0.9%生理食塩水のそれぞれを局所眼投与した場合の有効性と安全性について比較した。方法:無作為化二重盲検クロスオーバー臨床試験において、被験者はヒアルロナン又は生理食塩水のいずれかを投与される群に無作為に割り付けられ、目に対して1又は2滴、1日3回又は4回、あるいは必要に応じて、点眼された。28日間の治療後、被験者はさらに28日間、もう一方の試験薬にクロスオーバーした。結果:有効性の解析には70例が含まれ、ヒアルロナン投与中にシルマースコア(p=0.0006)及びローズベンガル染色スコア(p=0.0001)の有意な改善が認められた。2つの治療法の有効性に関する主観的評価において、被験者の大多数が、灼熱感及びざらつき感の症状緩和において、ヒアルロナンは生理食塩水よりも有効であると感じた(p<0.001)。ヒアルロナン治療に起因する有害事象は報告されなかった。結論:本研究は、ドライアイ症候群の主観的及び客観的評価の両方において、ヒアルロナンが生理食塩水よりも明らかに有益であることを示した。ヒアルロナンは忍容性に優れていることが示された。」(1121頁「Abstract」)
(5)引用文献6に記載された事項
6a
「i.com medical2015年3月26日コンフォートシールド・炎症を起こした目のバランスを取り戻す続きを表示(全14行)・超高分子量ヒアルロン酸・目に自然に存在する物質のみが含まれる。・全てのコンタクトレンズと互換性がある。・防腐剤不使用・開封後は6か月間使用可能・ボトルあたり300滴・単回投与単位でも利用可能http://www.icom-medical.de[図:0001430336000002.jpg]」(12/12頁)
(6)引用文献7に記載された事項
7a
「[図:0001430336000003.jpg]i.com medical2015年3月26日続きを表示(全13行)コンフォートシールドの適応症・乾性角結膜炎(シェーグレン症候群)・角膜の損傷、びらん、角膜手術・以下の原因によるドライアイ-コンタクトレンズ、オルソKレンズ-ホルモン障害、更年期障害-空調、風、寒さ、乾燥した熱、粉塵、煙、大気汚染-コンピュータ画面での作業、長時間の車の運転、長距離のフライト・塩素処理された水での水泳」(1/1頁)
(7)引用文献8に記載された事項及び発明
引用文献8の公開日は、本願の優先基礎出願2の出願日である2017年6月8日よりも前の、2017年4月6日である。
ア 引用文献8に記載された事項
8a
「角膜炎又は角結膜炎を伴う中等度から重度のドライアイ患者におけるヒアルロン酸0.2%点眼薬とヒアルロン酸0.18%点眼薬の比較」(タイトル)
8b
「目的:角膜炎又は角結膜炎を伴う中等度から重度のドライアイ患者を対象に、0.2%及び0.18%のヒアルロン酸(HA)点眼薬を1日3回(tid)投与した場合の有効性と安全性を比較する。患者と方法:84日間にわたる2つの並行群における前向き、多施設、ランダム化、単一盲検、第IIIb相、非劣性試験(0.2%HA対0.18%HA)。N=70の患者が評価された。主要有効性アウトカムは、ベースラインと比較した35日目(D35)の眼表面(OS)染色変化であった。角膜と結膜の染色にはフルオレセインとリサミングリーンが使用された。副次有効性アウトカムは、涙液膜破壊時間、84日目(D84)のOS染色スコア、眼快適度指数、及び患者と医師の評価が含まれた。結果:0日目(D0)と比較して、0.2%HAはD35で染色スコアの47.7%の減少(-3.00±2.81[標準偏差]ポイント、n=38患者)を達成した。0.18%HAは、41.2%の減少(-2.59±2.20[標準偏差]ポイント、n=32患者)を示した。統計解析により、0.18%HAと比較して0.2%HAの有効性において非劣性であることが示された。D84では、染色スコアの減少は、0.2%HAで64.5%、0.18%HAで56.4%にさらに増加した。両方の点眼薬で、涙液膜破壊時間と眼の快適性指数値が改善した。治験責任医師と患者は、両方の治療法を7点満点中5点(リッカート尺度、中央値)と評価した。有害事象(AE)の発生率は、0.2%HAで2.3%、0.18%HAで7.1%であり、重篤なAEはなかった。結論:0.2%HA及び0.18%HA点眼薬は、ドライアイ疾患の徴候及び症状を大幅に改善し、副作用もほとんどなく忍容性も良好であった。OS病変の減少については、0.2%HAが0.18%HAと比較して非劣性であることが実証された。一部のパラメータでは、0.2%HA濃度が有利であるという有意ではない傾向が見られた。」(631頁の要約)
8c
「我々の研究では、染色スコアを用いて、保存料なしの、分子量が2,400,000~2,800,000Daの0.2%HA(Hylo(R)Confort Plus)、Laboratories Ursapharm Sas、Surreguemines、フランス)と0.18%HA(Vismed(R)Multi、TRB Chemedica AG、Haar、ドイツ)の臨床効果を定量化した。」(632頁左欄下から6~最終行)
8d
「患者と方法参加者プロトコル準拠(PP)集団は、中等度から重度のドライアイ及び非感染性、非ウイルス性角膜炎又は角結膜炎を患う70人の患者で構成された。38人の患者が0.18%HAグループに含まれ、32人が0.2%HAグループに含まれていた。」(632頁右欄11~16行)
8e
「治療の研究治験治療:局所眼科用0.2%(2mg/mL)HA滅菌液(Hylo confort Plus/Hylo Gel)、保存料を含まない液剤、10mLボトル入り。比較治療:局所眼科用0.18%(1.8mg/mL)HA滅菌液(Vismed(R)Multi)、保存料を含まない溶液、10mLのマルチドーズボトル入り。両製品の投与量は、罹患した眼に1日3回(tid)1滴ずつであった。」(633頁右欄1~9行)
8f
「議論この研究では、0.2%及び0.18%HA点眼薬による治療後、オックスフォード スケールの角膜及び結膜染色値が有意に低下したことを見いだした。さらに、6項目のOCI(当審注:眼快適指数)は、研究期間中に頻度と強度が減少した。TBUT(当審注:涙液層破壊時間)値は、0.2%HAグループでD0からD84まで1.67秒増加し、0.18%HAグループで1.8秒増加した。この小さいながらも有意な涙液安定性の向上は、Doughtyによる涙液代替物に関する最近のメタ分析で報告された大きさのオーダーである。我々の結果は、HA治療中におけるOSの改善を示唆しており、これは他の臨床所見と一致する。」(635頁右欄「Discussion」の1~11行)
8g
「この研究の両点眼薬は、保存料を使用していなかったが、添加剤(0.2%HA:ソルビトール、クエン酸緩衝液、0.18%HA:塩化ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム)が異なっていた。添加剤が0.2%HAのわずかに高い効能を説明する可能性を排除することはできないが、その差は0.18%と比較して0.02%高いHA濃度によるものである可能性がある。」(637頁左欄下から9~2行)
8h
「結論我々の研究は、0.2%HAと0.18%HAの両方が中等度から重度のDED(ドライアイ)の治療に有効かつ安全であることを示唆している。」(637頁右欄「Conclusion」のパラグラフ)
イ 引用文献8に記載された発明
引用文献8の摘記8a~摘記8hから、引用文献8には、次の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「ソルビトールを含むクエン酸緩衝液中に、分子量が2,400,000~2,800,000Daのヒアルロン酸を0.2%含み、保存料を含まない、角膜炎又は角結膜炎を伴う患者における中等度から重度のドライアイ疾患の徴候及び症状を改善する、罹患した眼に投与される、点眼薬。」
6 当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明8とを対比する。
引用発明8の「ソルビトールを含むクエン酸緩衝液」を含む「角膜炎又は角結膜炎を伴う患者」の「罹患した眼に投与される、点眼薬」は、本願発明の「水」を含む「ヒト又はヒト以外の動物対象」の「眼の角結膜に局所投与するための」「流体」に相当する。
引用発明8の「0.2%」の「分子量が2,400,000~2,800,000Daのヒアルロン酸」と、本願発明の「少なくとも3百万ダルトンの分子量、>2.9m3/kgの固有粘度、及び0.10~0.19%w/vの濃度を有するヒアルロン酸」とは、「ヒアルロン酸」である点に限り、一致する。
引用発明8の「保存料を含まない」は、本願発明の「保存料、洗剤、生物活性剤、疎水性活性成分、免疫調節薬、免疫抑制剤、又は抗生物質を含まない」に相当する。
一般に、ドライアイは、軽度、中等度、重度の順に症状が進行することを考慮すると、引用文献8に記載された「中等度から重度のドライアイ患者」には、中等度のドライアイ患者、重度のドライアイ患者及び中等度と重度の間のドライアイ患者が含まれていると解されるから、引用発明8の「中等度から重度のドライアイ疾患の徴候及び症状を改善する」という用途と、本願発明の「重症ドライアイ治療用」という用途は、「重症ドライアイを含むドライアイ治療用」という用途である点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明8との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「ヒアルロン酸と、水とを含み、保存料、洗剤、生物活性剤、疎水性活性成分、免疫調節薬、免疫抑制剤、又は抗生物質を含まない、ヒト又はヒト以外の動物対象の眼の角結膜に局所投与するための、重症ドライアイを含むドライアイ治療用の流体。」
<相違点>
相違点1 ヒアルロン酸について、本願発明においては、「少なくとも3百万ダルトンの分子量、>2.9m3/kgの固有粘度、及び0.10~0.19%w/vの濃度」を有するものであるのに対し、引用発明8においては、「分子量が2,400,000~2,800,000Da」であって、固有粘度が特定されておらず、濃度が0.2%である点。
相違点2 本願発明は、「6.8~7.6のpHと、240~330mosmol/kgの浸透圧と、7.6~10.5g/lのNaCl濃度と、及び1.0~1.4mmol/lのリン酸塩濃度」を有するものであるのに対し、引用発明8は、「ソルビトールを含むクエン酸緩衝液」を有するものである点。
相違点3 重症ドライアイを含むドライアイ治療用という用途について、本願発明においては、「重症ドライアイ治療用」であるのに対し、引用発明8においては、「中等度から重度のドライアイ疾患の徴候及び症状を改善する」ものである点。
(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点3から検討する。
ア 相違点3について
相違点3については、以下に示すa、bのいずれで考えても、当業者が容易になし得たことである。
a 引用文献8には、0.2%HAが中等度から重度のドライアイの治療に有効であることが記載されている(摘記8h)ものの、中等度から重度の違いによって治療効果に相違があったことは記載されていない。
そうすると、当業者は、引用文献8には、0.2%HAが、中等度のドライアイ患者、重度のドライアイ患者及び中等度と重度の間のドライアイ患者という複数の患者群のいずれに対しても同様に有効であることが開示されていると理解するといえるから、引用発明8において、引用文献8に開示された「中等度から重度」のドライアイ疾患を有する患者の中から「重度のドライアイ患者」を選択し、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
b 引用文献2には、1982年に高分子ヒアルロナンの使用により重症ドライアイ症例の治療が成功したことが報告されたことが記載されている(摘記2a)。
引用文献3には、0.3%SH(ヒアルロン酸ナトリウム)点眼薬が、塩化ベンザルコニウム(BAC)で保存された緑内障治療薬による治療によって引き起こされる眼表面毒性により重症ドライアイ基準(severe dry eye criteria)に適合した患者に対して、症状の改善に有効であったことが記載されている(摘記3a)。
引用文献4には、0.1%ヒアルロナン(ヒアルロン酸ナトリウム)溶液の点眼が、重症ドライアイ症候群(severe dry eye syndrome)の症状の治療に有効であったことが記載されている(摘記4a)。
そうすると、引用文献2~4の記載によれば、本願優先日当時、ヒアルロン酸によって重症ドライアイを治療できることが当業者に知られていた。
そして、引用文献8と引用文献2~4とは、ヒアルロン酸を含むドライアイを治療するための点眼薬という同じ技術分野に属するから、当業者は、引用発明8のヒアルロン酸を含む「中等度から重度」のドライアイの患者を対象とする「点眼薬」を、「重症ドライアイ治療用」として、相違点3に係る本願発明の構成を備えたものとすることに容易に想到し得たといえる。
イ 相違点1及び相違点2について
相違点1及び相違点2を別々に検討する場合と、両者をまとめて検討する場合のそれぞれについて、以下、判断する。
(ア)相違点1及び相違点2を別々に検討する場合についての判断
a 相違点1について
(a)分子量及び固有粘度について
引用文献7には、Comfort Shield(R)の「適応症」として「ドライアイ」が記載され(摘記7a)、引用文献2には、Comfort Shield(R)に含まれるヒアルロン酸は、分子量が3MDa(すなわち3百万ダルトン)を超えることが記載されている(摘記2c)ことから、ドライアイの治療に分子量が3百万ダルトンを超えるヒアルロン酸を用いることは知られていたことといえる。
また、一般に、分子量と固有粘度との間には一定の関係があり(本願明細書【0064】参照)、本願明細書の実施例において、引用文献2、7に記載されたものと同じComfort Shield(R)を用いていることから、引用文献2、7に記載された、ドライアイの治療に用いられるComfort Shield(R)に含まれる分子量が3百万ダルトンを超えるヒアルロン酸は、「>2.9m3/kgの固有粘度」を有するものと認められる。
また、引用文献2には、ヒアルロン酸溶液ができるだけ長く目に効率よくとどまり、同時にまばたき時のせん断力が少ない状態で均一に分散されるようにするには、可能な限り大きな分子量とする必要があること(摘記2b)、Comfort Shield(R)(Hylan A) に含まれるヒアルロン酸は、分子量が3MDaを超えるため、角膜及び結膜上皮のヒアルロン酸を置き換えることができ、まばたき時のせん断力が低いため、再発性角膜びらんの治療にも導入されていること(摘記2c)が記載されている。
そうすると、引用文献2、7に接した当業者は、重症ドライアイ症例の治療における高分子ヒアルロナンにおいても、より分子量が大きいものを使えば、長く目にとどまり、まばたき時のせん断力が少ない状態で均一に分散して治療効果が高まることを理解できるといえるから、引用発明8の「分子量が2,400,000~2,800,000Daのヒアルロン酸」の分子量と固有粘度を好適化して、少なくとも3百万ダルトンの分子量及び>2.9m3/kgの固有粘度に調整することは、当業者が容易になし得たことである。
(b)ヒアルロン酸濃度について
点眼薬に含まれる成分の配合量は、適用対象や条件に合わせて当業者が調整するものである。
ここで、引用文献8には、ヒアルロン酸濃度が0.2%と0.18%とでは、あまり結果が変わらなかったことも記載されているから、ヒアルロン酸の濃度を0.18~0.2%w/vの範囲に含まれる0.18~0.19%w/v程度に調整することは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)小括
したがって、引用発明8の「分子量が2,400,000~2,800,000Daのヒアルロン酸」に代えて、若干大きな分子量であり、ドライアイの治療に用いることが知られていた3百万ダルトンを超えるヒアルロン酸(摘記2c、摘記7a)を採用し、その際に、ヒアルロン酸の分子量と固有粘度を好適化して、少なくとも3百万ダルトンの分子量及び>2.9m3/kgの固有粘度とし、また、配合量を0.2%より若干少ない0.18~0.19%w/v程度として、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
b 相違点2について
引用文献8には、塩化ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムを含むドライアイ治療用の点眼薬が記載されている(摘記8g:0.18%HA点眼薬)ように、点眼薬において、pHを中性付近とすること、NaClを生理的浸透圧の調整に用いること及び緩衝液としてリン酸塩を用いることは、当業界において周知である(必要であれば、特開2014-530904号公報の請求項4、特開2013-213051号公報の請求項1、【0019】~【0022】、【0080】~【0089】)。
そうすると、引用発明8のヒアルロン酸を含む点眼薬を、クエン酸緩衝液ではなく、リン酸塩を用いた緩衝液とし、浸透圧を生理的浸透圧(約280mosmol/kg)付近となる程度のNaClを用い、最終的にpHを中性付近とし、相違点2に係る本願発明のpH、浸透圧、NaCl濃度、リン酸塩濃度とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。
(イ)相違点1及び相違点2をまとめて検討する場合についての判断
a 本願明細書には、実施例が本願発明を実施するための手順を例示するものであることが記載されており(【0090】)、実施例1において、「高分子量ヒアルロン酸目薬(Comfort Shield(R)保存料フリーのヒアルロン酸ナトリウムの目薬(i.com medical GmbH,Munich,Germany))」を用いたことが記載されている(【0091】)ことからみて、本願明細書の実施例1で用いられた「Comfort Shield(R)」という保存料フリーのヒアルロン酸ナトリウムの目薬は、本願発明の「少なくとも3百万ダルトンの分子量、>2.9m3/kgの固有粘度、及び0.10~0.19%w/vの濃度を有するヒアルロン酸と、水とを含み、6.8~7.6のpHと、240~330mosmol/kgの浸透圧と、7.6~10.5g/lのNaCl濃度と、及び1.0~1.4mmol/lのリン酸塩濃度と、を有し、保存料、洗剤、生物活性剤、疎水性活性成分、免疫調節薬、免疫抑制剤、又は抗生物質を含まない」ものであると解される。
このことは、令和6年12月2日提出の意見書において、審判請求人が、Comfort Shieldを用いた参考文献10、11の結果を、本願発明の効果として主張していることとも整合する。
b ここで、引用文献1の図1(摘記1a、「Comfort Shield(R)MDS」と名付けられた点眼薬)、及び、引用文献6、7の記載(摘記6a、摘記7a)からみて、本願優先日前において、「Comfort Shield(R)SD」(当審注:「SD」はsingle-doseを意味すると解される。)及び「Comfort Shield(R)MDS」(当審注:「MDS」はmultiple-dosesを意味すると解される。)という商品名の点眼薬が、一般に販売され容易に入手可能であり、超高分子量ヒアルロン酸を含むこと(摘記6a)、及び、ドライアイの治療に用いられること(摘記7a)は、本願優先日当時において当業者に知られた技術的事項であったといえる。
そうすると、本願明細書の実施例1で用いられている「高分子量ヒアルロン酸目薬(Comfort Shield(R)保存料フリーのヒアルロン酸ナトリウムの目薬)」は、引用文献1、6、7に記載された「Comfort Shield(R)SD」又は「Comfort Shield(R)MDS」という商品名の点眼薬であることが強く推認される。
なお、「2015年3月26日」の記事である引用文献7は、引用文献6の12/12頁「2015年3月26日」の記事中の写真に埋め込まれたURLによってリンクされている(当審注:埋め込まれたURLは、https://www.facebook.com/photo/?fbid=1556781681248529&set=pcb.1556781727915191&__cft__[0]=AZVdr1akpSQgLcEePqN-jIySuyurMLOoXpquudzYvUnqJaADKcD-bd5ubuD-6OAXP8YuEcLcvRK_hBzkPSQqd_cdP0lk8LXrkhIqdFw8XCap4hpEJ540_94ar1d6zRpVnKcAgD5ixXR2nJhZ4tRfpBTkBlz0sXudFK3gMCpW4n7To4WDD-Fz7xtjPWzVdNEFnH5iJSeRhW7PUI5w6iu6-z8Y&__tn__=*bH-Rである。)ことからみて、引用文献6の12/12頁と引用文献7とは、「Comfort Shield(R)」という同じ商品のシリーズを紹介するものであるといえるから、「Comfort Shield(R)SD」の組成と「Comfort Shield(R)MDS」の組成は、同じである蓋然性が高い。
c そして、引用文献8と、引用文献1、6、7とは、ヒアルロン酸を含む点眼薬という同一の技術分野に属するものであり、ドライアイを治療するという課題も共通するものであって、引用発明8のヒアルロン酸と、引用文献1、6、7のヒアルロン酸とは、その分子量(及び固有粘度)や濃度が非常に近く、保存料を含まない点でも共通するものであるし、当業者は、重症ドライアイ症例の治療における高分子ヒアルロナンにおいても、より分子量が大きいものを使えば、長く目にとどまり、まばたき時のせん断力が少ない状態で均一に分散して治療効果が高まることを理解できるといえる(上記イ(ア)a(a)参照)から、当業者には、引用文献8に記載されたヒアルロン酸よりも若干分子量が大きく、かつ、ドライアイを治療するために用いられていた引用文献1、6、7に記載された「Comfort Shield(R)SD」又は「Comfort Shield(R)MDS」を用いる動機付けがある。
また、引用文献1、6、7に記載された「Comfort Shield(R)SD」又は「Comfort Shield(R)MDS」を引用発明8に適用することを妨げる事情は特段見あたらない。
そうすると、引用発明8において、引用文献8に記載された「保存料なしの、分子量が2,400,000~2,800,000Daの0.2%HA(Hylo(R)Confort Plus)」(摘記8c)に代えて、同じく保存料を含まず、ヒアルロン酸の分子量や濃度も近接したものである、引用文献1、6、7に記載された、容易に入手可能な「Comfort Shield(R)SD」又は「Comfort Shield(R)MDS」を採用し、相違点1(ヒアルロン酸の分子量と固有粘度)及び相違点2(pH、浸透圧、NaCl濃度、リン酸塩濃度)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 効果について
(ア)本願明細書の記載
本願明細書には、「重症ドライアイ患者における多中心、多国籍予想臨床試験-HYLAN M研究」というタイトルが付された実施例1(【0091】~【0094】)において、自家血清目薬治療を受けている重症ドライアイ患者から無作為に選ばれた6名に対して、本願発明に対応する流体である「高分子量ヒアルロン酸目薬(Comfort Shield(R)保存料フリーのヒアルロン酸ナトリウムの目薬)」を8週間にわたって用いたところ、2名は症状が十分に軽減しなかったために研究対象から外れ、2名は自家血清による元の治療に戻るのが好ましく、残り2名は自家血清目薬よりもComfort Shield(R)の方が好ましかったことが記載されている。
(イ)効果についての判断
上記(2)アbで説示したように、ヒアルロン酸を含む点眼薬が重症ドライアイの治療に有効であることは、引用文献2~4に記載されているし、引用文献8には、分子量が2.8MDa程度のヒアルロン酸を用いた点眼薬が重度ドライアイを含むドライアイの治療に有効であったことも記載されている(摘記8c、摘記8h)。
また、引用文献8に記載されたヒアルロン酸を含む点眼薬は、ソルビトール、クエン酸緩衝液、塩化ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウムといった添加剤の有無よりも、ヒアルロン酸濃度によってその効果の差が生じる可能性が高いものである(摘記8g)から、ヒアルロン酸以外の添加剤のみが相違することによって、予測できない効果を奏するともいえない。
そして、本願明細書には、上記(ア)に示すように、重症ドライアイ患者6名のうち、2名だけが自家血清目薬よりもComfort Shield(R)の方が好ましかったことが記載されている(実施例1)ものの、Comfort Shield(R)とは異なる分子量や固有粘度のヒアルロン酸を用いた場合との比較はなされていないし、また、本願優先日当時において、分子量が3MDaを超え、固有粘度が2.9m3/kgを超えるヒアルロン酸のドライアイ治療効果と、引用文献8に記載された分子量が2.8MDa程度のヒアルロン酸のドライアイ治療効果とが大きく異なるといった技術常識があったともいえない。
そうすると、本願明細書において示される重症ドライアイの治療に有効であるという効果は、引用発明8と比較して当業者が予測し得ない格別顕著な効果とはいえない。
(ウ)効果についてのまとめ
したがって、本願発明の奏する効果は、引用発明8、引用文献1~4、6、7に記載の技術的事項から予測されるものよりも格別顕著なものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献8に記載された発明、及び、引用文献1~4、6、7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)審判請求人の主張と当審の判断
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ア 審判請求人の主張
審判請求人は、令和7年4月28日提出の意見書「3.出願人の意見」において、概略、以下の主張をしている。なお、下線は当審合議体が付した。
参考文献10(当審注:本願出願後の2023年に公開された文献)には、対照群が、引用文献8で使用されたものと同一又は類似の製剤(HYLO GEL/HYLO COMOD)を含むヒアルロン酸含有点眼薬を投与された6名の重症ドライアイの患者を含むことが示されており、分子量が3MDa以上であり、固有粘度が2.9m3/kgを超えるヒアルロン酸を含有するHylan A(COMFORT SHIELD(R))を含む点眼薬(当審注:本願の実施例に相当)を使用した患者群は、対照群と比較して、OSDIスコアが有意に低く、ドライアイ症状の改善を示したことが記載されている。
したがって、本願発明の効果は、引用文献1~4、6~8から予測できたものではない。
イ 審判請求人の主張に対する当審の判断
(ア)HYLO GEL/HYLO COMODが引用文献8で使用されたものと同一又は類似の製剤であることについて
審判請求人は、引用文献8には、「Hylo confort Plus/Hylo Gel」と記載(摘記8e)されていることを、Hylo confort Plus(分子量2.4~2.8MDa)と、Hylo Gelとが同一の製剤であることの根拠としているが、記号「/」の技術的な意味が説明されておらず、当該記載は、「Hylo confort Plus」と「Hylo Gel」の両者を含むものを意味するとも解されるから、「Hylo confort Plus」と「Hylo Gel」が同じものであることのみを意味しているとはいえない。
また、審判請求人は、参考文献8に記載された、平均分子量が2.026MDa(固有粘度2.21m3/kg)の「HYLO COMOD」が、引用文献8の「Hylo confort Plus(分子量2.4~2.8MDa)」と類似の製剤としているが、分子量が3MDaを超える本願発明との比較において、2.026MDaの「HYLO COMOD」と、引用文献8の「Hylo confort Plus(分子量2.4~2.8MDa)とが、類似の製剤であるとする具体的根拠に欠ける。
したがって、HYLO GEL/HYLO COMODが引用文献8で使用されたものと同一又は類似の製剤であることを前提とする審判請求人の主張は、その前提において適切であるとはいえない。
(イ)仮に、HYLO GEL/HYLO COMODが引用文献8で使用されたものと同一又は類似の製剤であるとの前提に立って、以下検討する。
参考文献10は、重度のドライアイ患者に対する非常に高い分子量のヒアルロン酸を含む点眼薬(HylanAを含むComfort Shield点眼薬)の治療の効果は、より低い分子量のヒアルロン酸を含む対照点眼薬に比べて優れることを示した文献である(以下の表1及び表3参照)。
<表1>
[図:0001430336000004.jpg]
<表3>
[図:0001430336000005.jpg]
しかしながら、参考文献10の表1には、HYLO GELとHYLO COMODを含む15種類の対照点眼薬が使用されことが記載されているものの、「HYLO GEL」や「HYLO COMOD」を投与した患者は合計4名であって(表1の枠囲い部分参照)、審判請求人が主張するように「6名」であることは記載されていない。
また、参考文献10の対照点眼薬を用いた結果は、HYLO GELとHYLO COMODを含む15種類の対照点眼薬全体を平均した結果であって、他の13種類の対照点眼薬に含まれるヒアルロン酸の分子量は不明であるから、Comfort Shield点眼薬が、HYLO GEL又はHYLO COMODの点眼薬よりも優れた治療効果を示すことが、具体的に示されているとはいえない。
したがって、参考文献10の記載を考慮しても、本願発明の効果は、引用文献1~4、6~8から容易に想到できたものではないとする審判請求人の主張は、採用できない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-011821