特許拒絶査定不服審判
2022-011749
定量的免疫組織化学のための方法及びシステム
- 審判番号
- 2022-011749
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-532807外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月28日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-532807「定量的免疫組織化学のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/118786、令和 2年 5月21日国内公表、特表2020-514701〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月19日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年3月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~19に係る発明は、令和3年12月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
a.標的タンパク質バイオマーカーに特異的なバイオマーカー特異的薬剤を試料に適用すること;
b.試料にバイオマーカー特異的薬剤に特異的な第2の結合剤を適用することであって、第2の結合剤は二次酵素とコンジュゲートされる、適用すること;
c.試料に、チラミドハプテンとコンジュゲートしたチラミド分子を含むチラミド剤を適用することであって、二次酵素が第2の結合剤の位置でチラミドハプテンの試料への付着を触媒する、適用すること;
d.試料にチラミドハプテンに特異的な第3の結合剤を適用することであって、第3の結合剤は三次酵素とコンジュゲートされる、適用すること;及び
e.試料に検出可能部分を適用することであって、三次酵素が検出可能部分との反応を触媒して検出可能部分を可視化する、適用すること;
を含む、試料中の標的タンパク質バイオマーカーに対するシグナルを増幅する方法であって、それによって検出可能部分が明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして可視化され、点状ドットが標的タンパク質バイオマーカーを示しており、且つ
検出可能部分がチラミドローダミン染料を含む、方法。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1~19
請求項1に係る発明(本願発明)について、引用文献1に記載された発明(段落0161-0170等参照)において引用文献2に記載されているチラミドローダミン染料を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、チラミドローダミン染料を採用することに、当業者の予測を超える格別顕著な効果も認められないと説示している。
<引用文献等一覧>
1.特表2013-531801号公報
2.特表2015-514214号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)記載事項
本願の優先日前に頒布された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(なお、下線は、以下の(2)で認定する引用発明に関する部分として当審が付与したものである)。
(1ア)「【0002】
(発明の分野)
本開示は、サンプル中における標的の同時の同定及び/又は可視化について、様々な組合せにおいて使用できるハプテン及びハプテンコンジュゲートに関する。
【0003】
(発明の分野)
免疫組織化学、又はIHCは、組織サンプルの細胞中におけるタンパク質等の抗原を位置付け、抗原を使用し、特定抗原への抗体の特異的結合を促進する方法を示す。この検出技術は、任意のタンパク質が組織サンプル内のどこに位置するかを正確に示すことができる利点を有する。組織自体を調べるのにも有効な方法である。
【0004】
組織抗原及び核酸を検出するためのハプテン等の小分子の使用は、IHCにおける卓越した方法となった。ハプテンは、抗ハプテン抗体との組合せにおいて、特定の分子標的を検出するのに有用である。例えば、一次抗体及び核酸プローブ等の特異的結合部分は、一又は複数のハプテン分子で標識でき、一旦これらの特異的結合部分がそれらの分子標的に結合したら、それらは、発色ベース検出システムの一部として酵素、又は蛍光標識等の検出可能な標識を含む抗ハプテン抗体コンジュゲートを使用して検出できる。サンプルへの検出可能な抗ハプテン抗体コンジュゲートの結合は、サンプル中における標的の存在を示す。」
(1イ)「【0018】
標的は、ハプテンが、何れかの適切な手段によって直接的又は間接的に(例えば、検出可能な標識によって)検出される時、サンプル中において位置付けされうる。幾つかの実施態様では、標的は、明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡又は分光法、デジタル画像分析、又はその任意の組合せによって位置付けされる。
【0019】
幾つかの実施態様では、ハプテンは直接的に検出される。例えば、ハプテンが量子ドットにコンジュゲートされている場合、量子ドットは、特性波長でのその蛍光によって検出されうる。他の実施態様では、ハプテンの検出は、サンプルを、抗ハプテン抗体及び検出可能な標識と接触させる工程、及び標識を検出する工程を含む。ある実施態様では、検出可能な標識は抗ハプテン抗体にコンジュゲートされ、抗ハプテン抗体-標識コンジュゲートを形成し、コンジュゲートはハプテンに結合する。他の実施態様では、サンプルを、ハプテンに結合する抗ハプテン抗体と接触させる。次いで、サンプルを、抗ハプテン抗体に結合できる抗体コンジュゲートと接触させ、ここで、抗体コンジュゲートは、検出可能な標識又は検出可能な標識システムの要素を含む。ある実施態様では、検出可能な標識システムの要素は、酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼであり、発色性基質又は基質/色原体複合体と反応し、それによって検出可能な発色性析出を生成する。他の実施態様では、標識は蛍光標識、例えば量子ドットである。」
(1ウ)「【0161】
V.ハプテンコンジュゲートの使用方法
開示のハプテンコンジュゲートの実施態様は、シグナル増幅アッセイにおいて利用できる。シグナル増幅は、固相にペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分を共有結合するために、ペルオキシダーゼ酵素の触媒活性を利用する。固相は、顕微鏡スライド等の基質に固定化されている細胞又は細胞構造のタンパク質成分でありうる。幾つかのペルオキシダーゼ酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)は、過酸化物の存在下において、特定化合物、例えばフェノール化合物の二量体化を、おそらくフリーラジカルの生成によって触媒する。よって、ペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分が、西洋ワサビペルオキシダーゼ及び過酸化物(例えば、過酸化水素)の存在下において、タンパク質含有サンプルに加えられる場合、ペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分はフリーラジカルを形成し、その後、チロシンアミノ酸のフェノール基と二量体を形成する。しかしながら、ペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分を、所望の標的か又はその近位においてサンプルと特異的に結合することが所望される。この目的は、下に記載のように、酵素を標的領域上に固定化することによって達成される。固定化酵素に近位であるペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分のみが、固定化酵素の近傍、又は近位においてチロシン残基と反応し二量体を形成し、酵素自身におけるチロシン残基、酵素がコンジュゲートされている抗体におけるチロシン残基、及び/又は固定化酵素に近位、例えば固定化酵素の約100nm内、約50nm内、約10nm内、又は約5nm内であるサンプルにおけるチロシン残基を含む。例えば、チロシン残基は、固定化酵素から約10オングストローム~約100nm,約10オングストローム~約50nm、約10オングストローム~約10nm、又は約10オングストローム~約5nmの距離内でありうる。このような近位結合は、IHC及び/又はISHと使用される一般的な染色方法と少なくとも同程度の特異性で、標的が検出されることを可能にする。例えば、開示の方法の実施態様は、核膜対核領域、細胞膜対細胞質領域など、サブ細胞構造が区別されることを可能にする。
【0162】
幾つかの実施態様では、ハプテンコンジュゲートは、チラミドシグナル増幅アッセイにおいて活用できるハプテン-チラミドコンジュゲートである。チラミドシグナル増幅は、in situハイブリダイゼーション(ISH)、免疫細胞化学、及び免疫組織化学(IHC)検出スキームと適合性のあるペルオキシダーゼベースのシグナル増幅システムである。チラミドシグナル増幅アッセイは、「直接的」又は「間接的」でありうる。直接的チラミドシグナル増幅アッセイは、標識、例えば蛍光標識がチラミンに結合し、標識-チラミドコンジュゲートを形成する時に実施され、標識は、標識-チラミドコンジュゲートがサンプルに結合された後に検出される。間接的チラミドシグナル増幅アッセイは、ハプテンがチラミンに結合される時に実施される。蛍光又は酵素標識された抗ハプテン抗体は、ハプテンを検出するために使用される。
【0163】
開示の実施態様では、シグナル増幅アッセイは典型的には次の工程を含む:a)サンプル中における標的上に酵素を固定化する工程;b)酵素がハプテンコンジュゲートと反応できるようにサンプルをハプテンコンジュゲートと接触させ、それによって固定化酵素に近位でサンプルへのハプテンコンジュゲートの結合を生じさせる工程;c)サンプルを、ハプテンに結合可能な標識された抗ハプテン抗体と接触させる工程;及びd)任意の適切な手段によって標識された抗ハプテン抗体を検出することによって、サンプル中における標的を位置づけ又は可視化する工程。ある実施態様では、ハプテンコンジュゲートはハプテン-チラミドコンジュゲートである。標的は、その存在、位置及び/又は濃度が決定される任意の興味の分子でありうる。興味の分子の例は、タンパク質及び核酸配列を含む。
【0164】
典型的にはサンプルは、タンパク質、例えば組織サンプルを有する。典型的には、固定化酵素は、ペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分、例えばチラミドと反応できるペルオキシダーゼ酵素である。幾つかの実施態様では、酵素は、サンプルを標的に結合する酵素コンジュゲートでインキュベートすることによって標的上に固定化される。酵素は、標的に結合できる任意の部分にコンジュゲートされうる。適切な部分は、限定するものではないが、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、又はアミノ酸を含む。
【0165】
他の実施態様では、酵素の固定化は複数工程プロセスである。例えば、サンプルは、標的に結合する第一部分(例えば、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、オリゴペプチド、ペプチド、又はアミノ酸)でインキュベートされうる。次いで、サンプルは、第一部分に結合できる部分を含んでなる酵素コンジュゲートでインキュベートされうる。第一部分が標的に対する抗体である幾つかの実施態様では、該2工程プロセスはより多用途であり得、なぜなら使用者が「ユニバーサル」酵素-抗体コンジュゲートを使用することが可能であるからである。例えば、第一抗体がウサギモノクローナル抗体である場合、酵素-抗体コンジュゲートは、任意のウサギモノクローナル抗体に結合できる抗体を含みうる。複数工程プロセスは、各標的に適した酵素-抗体コンジュゲートを生成する必要を排除できる。
【0166】
幾つかの実施態様では、第一部分は、標識されたプローブ、例えば標識されたオリゴヌクレオチドでありうる。プローブがサンプルにハイブリダイズされた後、標識を認識する第一抗体が導入され、標識されたプローブに結合する。第一抗体は酵素-抗体コンジュゲートでありうる。しかしながら、第一抗体が酵素にコンジュゲートされない場合、酵素-抗体コンジュゲートが導入され、ここで、コンジュゲートの抗体部分は、第一抗体を認識し結合する。
【0167】
一旦、酵素がサンプルに固定化されたら、ハプテンコンジュゲートが、酵素がペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分と反応できる適切な条件下で導入される。典型的には、酵素はペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼである。よって、適切な条件は、過酸化物 (例えば、過酸化水素)を含み、また酵素にその所望の機能を実施させる塩濃度及びpHを有する反応バッファー、又は溶液を含む。反応は、酵素に適切な温度で実施される。例えば、酵素が 西洋ワサビペルオキシダーゼである場合、反応は35-40℃で実施されうる。このような条件下で、ペルオキシダーゼ-活性化可能 アリール部分は過酸化物及び酵素と反応し、典型的には、固定化酵素自身内のチロシン残基を含む、固定化酵素に近位にチロシン残基に結合することによって、ペルオキシダーゼ-活性化可能 アリール部分は、サンプルに共有結合する活性形態に転換される。
【0168】
図1は、固定化組織サンプル110に、ハプテンコンジュゲート、例えばハプテン-チラミドコンジュゲート100を結合する方法の一実施態様を示す概要図である。一次抗体120は、固定化組織サンプル110内においてエピトープ130に結合する。二次抗体140が導入され、一次抗体120に結合する。例えば、一次抗体がマウスIgG抗体である場合、二次抗体は、何れかのマウスIgG抗体に結合する抗マウス抗体でありうる。図1では、西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲート140は二次抗体を含む。ハプテン-チラミドコンジュゲート100を加える。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)及び過酸化物(例えば、過酸化水素)の存在中において、ハプテン-チラミドコンジュゲート100は、酵素部位の近位に共有結合する。コンジュゲートは、西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体コンジュゲート140内のチロシン残基、一次抗体120内のチロシン残基、又は例えばサンプル110内のタンパク質150中におけるチロシン残基に結合できる。図1は、チラミンのフェノール基がタンパク質中におけるチロシン残基のフェノール基に結合する時に形成される二量体160を図示する。
【0169】
ハプテンコンジュゲートがサンプルに結合した後、その存在は適切な手段によって検出される。幾つかの実施態様では、ハプテンは直接検出されうる。例えば、量子ドットにコンジュゲートされたハプテンは、特性波長で量子ドットの蛍光によって検出されうる。他の実施態様では、ハプテンは間接的に検出される。例えば、抗ハプテン抗体が導入され、ハプテンに結合されうる。ある実施態様では、抗ハプテン抗体は、抗体及び検出可能な標識を含んでなるコンジュゲートである。他の実施態様では、抗ハプテン抗体を認識する標識-抗体コンジュゲートがその後導入され、抗ハプテン抗体に結合される。標識は適切な手段によって検出される。
【0170】
図2は、ハプテン-チラミド/チロシン二量体160を検出する方法の一実施態様を示す。抗ハプテン抗体170が導入される。抗ハプテン抗体170は典型的には、抗体及び標識(例えば、フルオロフォア又は他の直接検出可能な標識)又はan酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ等)を含んでなるコンジュゲートである。図示する実施態様では、抗ハプテン抗体170はHRP-抗体コンジュゲートである。抗ハプテン抗体170は、ハプテン-チラミド/チロシン二量体160のハプテン部分に結合する。次いで、抗ハプテン抗体170は任意の適切な手段によって検出される。例えば、抗ハプテン抗体がHRP-抗体コンジュゲートである場合、3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)アッセイが、HRPの発色検出に使用されうる。他の実施態様では、抗ハプテン抗体は、フルオロフォア-抗体コンジュゲートであり得、フルオロフォア(例えば、量子ドット)はその蛍光によって検出されうる。」
なお、上記「an酵素は」は、国際出願時の原文では「an enzyme」と記載されていることから、以下単に「酵素」という。
(1エ)「【0179】
組織サンプルが得られ、固定される。興味の特定のRNA標的にハイブリダイズできるハプテン標識されたプローブが調製され、固定化組織サンプルとハイブリダイズされる。各プローブは異なるハプテンで標識され、異なるRNA標的にハイブリダイズされる。幾つかの実施態様では、ハイブリダイゼーションシグナルは、シグナル増幅を使用して増加され、各プローブの近傍に堆積されるハプテンの数を増加する。ハプテンは、互いに異なる波長で蛍光を発することができる量子ドットにコンジュゲートされた抗ハプテン抗体を使用する。マルチプレックスRNA-ISHアッセイは、サンプル中における各標的に点状シグナルを生成し、組織サンプル内の各標的の存在及び相対量の同時評価を可能にする。所望であれば、各プローブは、適切な波長で特定量子ドットからの蛍光を検出するために、波長フィルターを使用して個々に検出できる。幾つかの実施態様では、シグナルは、各画像におけるバックグラウンドより上のピクセルの数を計数することによって定量化される。」
「【0216】
ドットブロットシグナル定量化。ドットブロットスライドを、Spectral Imaging camera (Applied Spectral Imaging (ASI), Vista, CA)を装着したZeiss 蛍光顕微鏡を使用して分析した。ドットブロットスライドあたり、各々3のセンス(実験)及び アンチセンス (ネガティブコントロール)スポットの画像を、40X対物及びASIソフトウェアパッケージを使用して撮った。Qd655コンジュゲート抗体から生成される各ドットの蛍光シグナルの値を、各ピクセルの生の655-nmスペクトルデータを、エクセルスプレッドシートにエクスポートすることによって得た;各ピクセルのシグナルを各々異なるドットについて平均し、95%信頼区間をスポットについて決定した。バックグラウンドを、ネガティブコントロールアンチセンススポットのシグナルを使用して決定した。全スライドにおいて、バックグラウンドは無視でき、実験シグナルへの有意な貢献はなかった。データを、各々のハプテン/天然抗ハプテン対(図34)についてプロットした。シグナルにおける変動性は、天然-抗ハプテン抗体検出効果の範囲を提案し、ここでDCC DNP BF DABSYL NP TS PPT DIG BD ROT NCA HQである。」
(1オ)上記図1及び図2として、以下の図面が記載されている。
【図1】
[図:0001402360000001.jpg]
【図2】
[図:0001402360000002.jpg]
(2)引用発明
上記(1ウ)の【0168】に「図1は、固定化組織サンプル110に、ハプテンコンジュゲート、例えばハプテン-チラミドコンジュゲート100を結合する方法の一実施態様を示す概要図である。・・・・図1では、西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲート140は二次抗体を含む。ハプテン-チラミドコンジュゲート100を加える。」と記載されていることから、「ハプテン-チラミドコンジュゲート100」は「固定化組織サンプル110に」「加え」ているといえる。
そうすると、引用文献1には、上記(1)の記載事項(特に下線部参照)から、以下の発明が記載されていると認められる。
「サンプル中におけるタンパク質である標的を位置づけ又は可視化するために、シグナルを増幅する方法であって、
一次抗体120は、固定化組織サンプル110内においてエピトープ130に結合し、
二次抗体140が導入され、一次抗体120に結合し、西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲート140は二次抗体を含むものであり、
ハプテン-チラミドコンジュゲート100を上記サンプル110に加え、ハプテン-チラミドコンジュゲート100は、西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体コンジュゲート140内のチロシン残基に結合し、
ハプテンコンジュゲートがサンプルに結合した後、抗ハプテン抗体が導入され、ハプテンに結合され、
抗ハプテン抗体170は、抗体及び酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))を含んでなるコンジュゲートであり、3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)アッセイが、HRPの発色検出に使用されうる、方法。」(以下「引用発明」という。)
2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布された上記引用文献2には、次の事項が記載されている(なお、下線は、以下の第6の1の「相違点の判断」に関係する部分として当審が付与したものである)。
(2ア)「【0009】
実例となる実施態様では、生体試料中の標的を検出する方法は、生体試料を検出プローブと接触させることと、生体試料をラベリングコンジュゲートと接触させることと、生体試料をシグナリングコンジュゲートと接触させることとを含む。ラベリングコンジュゲートは酵素を含む。シグナリングコンジュゲートは、潜在的反応性部分及び発色部分を含む。酵素は、潜在的反応性部分の反応性部分への変換を触媒し、反応性部分が生体試料と、標的の近位で又は標的上で直接共有結合する。本方法は、生体試料に光を照射することと、シグナリングコンジュゲートの発色部分による前記光の吸光度を通して標的を検出することとをさらに含む。一実施態様では、反応性部分が、生体試料のチロシン残基、酵素コンジュゲート、検出プローブ又はこれらの組み合わせと反応する。」
(2イ)「【0118】
C.シグナリングコンジュゲート
本明細書に開示される別の型のコンジュゲートはシグナリングコンジュゲートである。シグナリングコンジュゲートは、本明細書に開示される方法にしたがって、標的を検出するために使用する検出可能なシグナルを提供する。特定の開示実施態様では、シグナリングコンジュゲートは、潜在的反応性部分及び発色団部分を含む。
【0119】
本開示の一態様は、シグナリングコンジュゲートが、伝統的に利用可能な発色体よりも選択的に光を吸収するように構成され得るというものである。シグナリングコンジュゲートによる前記光の吸光度により検出が実現し、例えば、入射光の少なくとも約5%の吸光度が標的の検出を促進するだろう。他のより暗い染色では、入射光の少なくとも約20%が吸収されるだろう。可視スペクトル内の光の不均一な吸光度により、着色して見える発色団部分が得られる。本明細書に開示される発色体コンジュゲートは、その吸光度により着色して見え得る。発色体コンジュゲートは、発色団部分に関連するスペクトル吸光度に応じて赤、橙、黄、緑、藍又は紫に見え得る。別の態様によると、発色団部分は、伝統的に使用されている発色体(例えば、DAB、Fast Red、Fast Blue)の吸光度よりも狭いスペクトル吸光度を有し得る。実例となる実施態様では、第1のシグナリングコンジュゲートの第1の発色団部分に関連するスペクトル吸光度は、約30nm~約250nmの間、約30nm~約150nmの間、約30nm~約100nmの間又は約20nm~約60nmの間の半値全幅(FWHM)を有する。
【0120】
狭いスペクトル吸光度により、シグナリングコンジュゲート発色団部分を伝統的な発色体とは異なって分析することが可能になる。伝統的な発色体と比べて増強した特徴を有しながらも、シグナリングコンジュゲートを検出することは単純なままである。実例となる実施態様では、検出することは、明視野顕微鏡又は同等のデジタルスキャナーを使用することを含む。」
(2ウ)「【0134】
本開示の実例となる実施態様では、シグナリングコンジュゲートは、生体試料中の標的の明視野画像化に特に適した吸収極大及び吸収幅を有する。」「【0140】
図17(A~D)は、異なる発色部分を有するシグナリングコンジュゲートにより染色した組織の顕微鏡写真である。図17(E)は、シグナリングコンジュゲートの吸光度に対応するトレース、関連する顕微鏡写真に対応するトレースによるUV-Visスペクトルを示している。よって、図17(E)のトレース(A)は図17(A)に示すシグナリングコンジュゲートに対応する。他のトレースも同様に対応する顕微鏡写真に関連する。スライド上で明らかな青色は、市販の青色発色溶液である。図17(A)及び図17(E)のトレース「A」はマラカイトグリーンシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとI(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図17(B)及び図17(E)のトレース「B」はタートラジンシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとI(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図17(C)及び図17(E)のトレース「C」はスルホローダミンBシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIV(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図17(D)及び図17(E)のトレース「D」はVictoria Blueシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとVI(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。
【0141】
図18(A~D)は、異なる発色部分を有するシグナリングコンジュゲートにより染色した組織の顕微鏡写真である。図18(E)はシグナリングコンジュゲートの吸光度に対応するトレース、関連する顕微鏡写真に対応するトレースによるUV-Visスペクトルを示している。図18(A)及び図18(E)のトレース「A」はクマリン(4-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸)シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとI(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図18(B)及び図18(E)のトレース「B」はDabsyl(ジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸)シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとII(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図18(C)及び図18(E)のトレース「C」はTAMRAシグナリングコンジュゲートを示している。これは、図3によるとIII(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図18(D)及び図18(E)のトレース「D」は5(及び6)-カルボキシローダミン110シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとV(a)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。
【0142】
図19(A~D)は、異なる発色部分を有するシグナリングコンジュゲートにより染色した組織の顕微鏡写真である。図19(E)はシグナリングコンジュゲートの吸光度に対応するトレース、関連する顕微鏡写真に対応するトレースによるUV-Visスペクトルを示している。図19(A)及び図19(E)のトレース「A」はFITC(1-(3’,6’-ジヒドロキシ-3-オキソスピロ(イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-5-イル)シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIII(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図19(B)及び図19(E)のトレース「B」はローダミン6Gシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIII(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図19(C)及び図19(E)のトレース「C」はTexas Red(スルホローダミン101)シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIV(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図19(D)及び図19(E)のトレース「D」はcy5シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとVI(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。
【0143】
図20(A~D)は、異なる発色部分を有するシグナリングコンジュゲートにより染色した組織の顕微鏡写真である。図20(E)はシグナリングコンジュゲートの吸光度に対応するトレース、関連する顕微鏡写真に対応するトレースによるUV-Visスペクトルを示している。図20(A)及び図20(E)のトレース「A」はローダミン110シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIII(b)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図20(B)及び図20(E)のトレース「B」はJOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、スクシンイミジルエステル)シグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIII(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図20(C)及び図20(E)のトレース「C」はガロシアニンシグナリングコンジュゲートを示している。これは、表3によるとIII(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。図19(D)及び図19(E)のトレース「D」はカルボキシローダミンBシグナリングコンジュゲートを示している。これも、表3によるとIII(c)シグナリングコンジュゲートとして分類可能である。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)aについて
本願発明の「バイオマーカー」については、本願明細書の【0036】に「バイオマーカー又は標的分子:本明細書で使用される場合、用語「バイオマーカー」又は「標的分子」とは、生物学的試料を、又は生物学的試料が得られる対象を特徴付けるために使用され得る生物学的試料中に見出される任意の分子又は分子の群を指すものとする。」と記載されている。よって、引用発明の「サンプル中におけるタンパク質である標的」は、上記(1ア)の【0003】の記載を踏まえると、本願発明の「試料中の」「標的タンパク質バイオマーカー」に相当する。
そして、引用発明の「固定化組織サンプル110内において」「タンパク質である標的」の「エピトープ130に結合」する「一次抗体120」は、本願発明の「試料に適用する」「標的タンパク質バイオマーカーに特異的なバイオマーカー特異的薬剤」に相当する。
(2)bについて
引用発明の「一次抗体120に結合」する「二次抗体140が導入され」ることは、本願発明の「試料にバイオマーカー特異的薬剤に特異的な第2の結合剤を適用すること」に相当する。
また、引用発明の「二次抗体を含む」「西洋ワサビペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲート140」は、本願発明の「第2の結合剤」と「二次酵素と」の「コンジュゲート」に相当する。
(3)cについて
引用発明の「サンプル110に」「加え」た「ハプテン-チラミドコンジュゲート100」は、本願発明の「試料に」「チラミド分子を含むチラミド剤を適用」した「チラミドハプテン」の「コンジュゲート」に相当する。
そして、引用発明の「酵素」である「西洋ワサビペルオキシダーゼ」は、上記(1ウ)の【0161】に「ペルオキシダーゼ酵素の触媒活性」と記載されているとおり触媒機能を有するものであるから、引用発明の「酵素」である「西洋ワサビペルオキシダーゼ」により「ハプテン-チラミドコンジュゲート100」が「西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体コンジュゲート140内のチロシン残基に結合」することは、本願発明の「二次酵素」の「触媒」により「チラミドハプテンの」「第2の結合剤の位置で」「試料への付着」することに相当するといえる。
(4)dについて
引用発明の「サンプルに」「導入され」た「ハプテンに結合され」る「抗ハプテン抗体」は、本願発明の「試料に」「適用」された「チラミドハプテンに特異的な第3の結合剤」に相当する。
そして、引用発明の「抗ハプテン抗体170」及び「酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP))を含んでなるコンジュゲート」は、本願発明の「第3の結合剤」と「三次酵素と」の「コンジュゲート」に相当する。
(5)eについて
引用発明の「HRPの発色検出に使用されうる」「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)アッセイ」は、本願発明の「試料に」「適用」される「検出可能部分」に相当し、上記(3)で述べたとおり、「酵素」である「西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)」は触媒機能を有するものであるから、引用発明の「西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)」により「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)アッセイ」が「HRPの発色検出に使用され」「サンプル中におけるタンパク質である標的を」「可視化する」ことは、本願発明の「三次酵素」により「検出可能部分との反応を触媒して検出可能部分を可視化する」ことに相当する。
そして、引用発明の「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)」と、本願発明の「チラミドローダミン染料」とは、「染料」という点で共通する。
(6)引用発明の「サンプル中におけるタンパク質である標的」に対する「シグナルを増幅する方法」は、本願発明の「試料中の標的タンパク質バイオマーカーに対するシグナルを増幅する方法」に相当する。
そして、上記(5)を踏まえると、引用発明の「サンプル中におけるタンパク質である標的」が「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)アッセイ」により「可視化」されることは、本願発明の「標的タンパク質バイオマーカーを示」す「検出可能部分が」「可視化され」ることに相当する。
2 一致点・相違点について
上記1を踏まえると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「a.標的タンパク質バイオマーカーに特異的なバイオマーカー特異的薬剤を試料に適用すること;
b.試料にバイオマーカー特異的薬剤に特異的な第2の結合剤を適用することであって、第2の結合剤は二次酵素とコンジュゲートされる、適用すること;
c.試料に、チラミドハプテンとコンジュゲートしたチラミド分子を含むチラミド剤を適用することであって、二次酵素が第2の結合剤の位置でチラミドハプテンの試料への付着を触媒する、適用すること;
d.試料にチラミドハプテンに特異的な第3の結合剤を適用することであって、第3の結合剤は三次酵素とコンジュゲートされる、適用すること;及び
e.試料に検出可能部分を適用することであって、三次酵素が検出可能部分との反応を触媒して検出可能部分を可視化する、適用すること;
を含む、試料中の標的タンパク質バイオマーカーに対するシグナルを増幅する方法であって、それによって検出可能部分が可視化され、検出可能部分が標的タンパク質バイオマーカーを示しており、且つ
検出可能部分が染料を含む、方法。」
(相違点1)
検出可能部分が、本願発明では「明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして」可視化さるのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。
(相違点2)
検出可能部分が含む染料について、本願発明では「チラミドローダミン染料」であるの対し、引用発明では「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)」である点。
第6 判断
1 相違点の判断
相違点1及び2について検討する。
(1)引用文献1の上記(1エ)に「マルチプレックスRNA-ISHアッセイは、サンプル中における各標的に点状シグナルを生成し、組織サンプル内の各標的の存在及び相対量の同時評価を可能にする。所望であれば、各プローブは、適切な波長で特定量子ドットからの蛍光を検出するために、波長フィルターを使用して個々に検出できる。幾つかの実施態様では、シグナルは、各画像におけるバックグラウンドより上のピクセルの数を計数することによって定量化される。」と記載されてとおり、サンプル中における各標的に点状シグナルを生成し、量子ドットからの蛍光を検出し、ピクセルの数を計数することにより標的の存在を定量化することが示されていることから、引用発明は量子ドットからの蛍光を検出するものでないものの、引用発明においても、ピクセルの数を計数することにより標的の存在を定量化するために「点状ドットとして」可視化しようとするものであり、そして、引用文献1の(1イ)に「標的は、ハプテンが、何れかの適切な手段によって直接的又は間接的に(例えば、検出可能な標識によって)検出される時、サンプル中において位置付けされうる。幾つかの実施態様では、標的は、明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡又は分光法、デジタル画像分析、又はその任意の組合せによって位置付けされる。」と記載されていることから、引用発明を認定した引用文献1には、検出可能部分を「明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして」可視化しようとすることが示されているといえる。
(2)一方、引用文献2には、上記(2ア)~(2ウ)で記載したとおり、生体試料中の標的を検出するシグナリングコンジュゲートの発色団部分を、伝統的なDABに替えて、明視野顕微鏡を使用して検出するために、生体試料中の標的の明視野画像化に特に適した吸収極大及び吸収幅を有するスルホローダミンB、TAMRA、ローダミン6G、ローダミン110等とすることが記載されている。
ここで、本願発明の「チラミドローダミン染料」とは、本願明細書の【0099】に「チラミドローダミン染料は、ローダミン110、ローダミン6G、テトラメチルローダミン(TAMRA)、ローダミン6G、スルホローダミンB、スルホローダミン101(テキサスレッド)等又はこれらの組み合わせを含む。」と記載されているものであるから、上記引用文献2に記載されている「スルホローダミンB」、「TAMRA」、「ローダミン6G」及び「ローダミン110」は、本願発明の「チラミドローダミン染料」に他ならない。
(3)そうすると、引用発明において、検出可能部分を「明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして」可視化しようとするものであり、その際、引用文献2の記載に鑑みて、検出可能部分が含む染料を、伝統的な「3、3’-ジアミノベンジジン(DAB)」に替えて、「チラミドローダミン染料」とすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、上記相違点1及び2は、引用文献1及び2の記載に基づいて当業者が容易になし得たことであるといえる。
2 効果について
本願発明に対応する実施例は、本願明細書の実施例1の実験3であり、
「【0135】
実験3:点状ドットシグナルを発生させるために銀色素原をチラミド-ローダミン染料で置き換える有用性を評価するために実施した実験。V5エピトープタグ4B5抗Her2ウサギモノクローナル抗体+マウス抗V5-HRPコンジュゲート+チラミド-DIG+マウス抗DIG-HRPコンジュゲート+チラミド-ローダミン染料色素原を含む高感度検出システム(本発明の方法)を利用し、扁桃及びHer2 3in1異種移植片スライドを染色した。一次抗体スライドは、陰性コントロールスライドとして役立たたなかった。3つの異なるチラミド-ローダミン染料色素原(チラミド-ローダミン6G、チラミド-テトラメチルローダミン(TAMRA)、及びチラミド-スルホローダミン101(テキサスレッド)について点状ドットシグナルが観察された。点状ドットシグナルを発生させる有用性は、コンピュータアルゴリズムを使用して分解可能な狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料用いて、高感度タンパク質検出システムを多重システムに適合させる能力を示唆する。」と記載され、点状ドットシグナルを発生させる色素原染料としては、狭い吸光度スペクトルを有するものとされている。
(2)一方、狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料については、上記引用文献2の(2ア)の【0120】に「狭いスペクトル吸光度により、シグナリングコンジュゲート発色団部分を伝統的な発色体とは異なって分析することが可能になる。伝統的な発色体と比べて増強した特徴を有しながらも、シグナリングコンジュゲートを検出することは単純なままである。実例となる実施態様では、検出することは、明視野顕微鏡又は同等のデジタルスキャナーを使用することを含む。」と記載されており、狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料を用いることにより、シグナルは伝統的な発色体と比べて増強したものとなることが記載されていることから、上記点状ドットシグナルを発生させることは、チラミド-ローダミン染料に限らず、引用文献2の(2ウ)に記載されているチラミド-ローダミン染料以外の狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料によっても行えることであるといえる。
(3)そうすると、本願明細書では、上記実施例1の実験3でチラミド-ローダミン染料を用いた場合について点状ドットシグナルが発生することを確認はしているものの、その他の狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料に比べて、チラミド-ローダミン染料を用いたことによる優位性(例えば、チラミド-ローダミン染料を用いた場合には、その他の狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料を用いた場合に比べて点状ドットが明確で、よりカウントが正確になる、など)を示す実験結果等が記載されておらず、本願発明において、その他の狭い吸光度スペクトルを有する色素原染料ではなく「チラミド-ローダミン染料」を用いたことによる格別顕著な効果を把握することはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書の請求の理由で、以下の主張をしている。
ア「まず、引用文献2には、引用文献2に記載の発明に対し適用できる可能性のある数多くの染料の一つとしてTAMRAが例示されているにすぎません。 ここで、平成28年(行ケ)10182号(知財高判平成30年4月13日)は、引用発明の適格性について判示したものであり、これによれば、刊行物に膨大な数の選択肢が記載されていた場合、特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り、当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず、引用発明と認定できないことが判示されています。」
イ「審査官殿は、令和3年9月27日付拒絶理由通知書において、「検出可能部分が明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして可視化され」ることが、引用文献1に記載されていると述べられていますが、実際、引用文献1に記載されているのは、「量子ドットにコンジュゲートされたハプテンは、特性波長で量子ドットの蛍光によって検出されうる」ということです(引用文献1、段落[0169])。つまり、引用文献1は、特定の波長を用いた蛍光顕微鏡を使用して量子ドットを検出することを記載しているのであって、明視野顕微鏡を使用して量子ドットを検出することは記載していません。」
(2)請求の主張に対する判断
アについて
引用文献2には、上記(2ウ)において、シグナリングコンジュゲートの発色部分として【0140】では「A」~「D」の4つのうちの1つである「C」としてスルホローダミンBが、【0141】では同じく「A」~「D」の4つのうちの1つである「C」としてTAMRAが、【0142】では同じく「A」~「D」の4つのうちの1つである「B」としてローダミン6Gが、【0143】では同じく「A」~「D」の4つのうちの1つである「A」としてローダミン110が記載されており、これらスルホローダミンB、TAMRA、ローダミン6G及びローダミン110である「チラミドローダミン染料」を選択することは4つうちの1つを選択することであるから、請求人のいう「膨大な数の選択肢」から選択したものとはいえない(なお、平成28年(行ケ)10182号の判決においては2000万通り以上の選択肢にうちの1つとして記載されているものについて、選択すべき事情を見いだすことはできないとしている)。そして、「チラミドローダミン染料」を選択したことにより効果が格別顕著なものとはいえないことは上記2で述べたとおりである。
そうすると、上記1の(2)で、引用文献2に記載されている技術事項として「生体試料中の標的を検出するシグナリングコンジュゲートの発色団部分を、伝統的なDABに替えて、明視野顕微鏡を使用して検出するために、生体試料中の標的の明視野画像化に特に適した吸収極大及び吸収幅を有するスルホローダミンB、TAMRA、ローダミン6G、ローダミン110等とすることが記載されている」と説示したことに誤りはないといえることから、請求人の主張アによって、上記1の「相違点の判断」が覆ることはない。
イについて
上記第4の1(2)で記載したように、引用発明は「明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして」可視化されることについて認定されておらず、本願発明との相違点としている。
そして、引用文献1には、上記(1エ)で摘記したように点状ドットとして観察できれば標的について定量化できることが、さらに、上記(1イ)には、明視野顕微鏡法を用いて標的の位置付けがされることが記載されていることから、上記1(1)で述べたように、引用発明においても、検出可能部分を「明視野顕微鏡法を用いて点状ドットとして」可視化(検出)しようとすると判断したものであり、請求人の主張アによって上記1で述べた判断が左右されるものではない。
4 小括
したがって、本願発明は、引用発明、並びに引用文献1及び2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-011749