2022-011518
印刷装置とその制御方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2022-011518
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-172127外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月25日
- 審決日
- 2023年01月11日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】キヤノン株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H04W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、平成25年3月14日に出願した特願2013-52432号の一部を、平成29年3月3日に新たな特許出願とした特願2017-40924号の一部を、平成29年11月28日に新たな特許出願とした特願2017-228281号の一部を、令和元年11月12日に新たな特許出願とした特願2019-204877号の一部を、令和2年10月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年11月10日 上申書及び手続補正書の提出
令和3年 7月15日付け 拒絶理由通知書
令和3年 9月24日 意見書及び手続補正書の提出
令和3年12月16日付け 拒絶理由通知書(最後)
令和4年 2月16日 意見書及び手続補正書の提出
令和4年 5月 6日付け 補正の却下の決定及び拒絶査定
令和4年 7月25日 審判請求書及び手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和4年5月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項1、16及び17に対して、引用文献1、3及び4
・請求項2ないし4に対して、引用文献1ないし4
・請求項5ないし15に対して、引用文献1ないし5
<引用文献等一覧>
1.特開2012-90026号公報(以下、「引用文献1」という。)
2.特開2012-137979号公報(周知技術を示す文献)(以下、
「引用文献2」という。)
3.特開2012-113349号公報(周知技術を示す文献)(以下、
「引用文献3」という。)
4.特開2006-261852号公報(周知技術を示す文献)(以下、
「引用文献4」という。)
5.特開2013-38724号公報(周知技術を示す文献)(以下、
「引用文献5」という。)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし17に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、令和4年7月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】有線LANインターフェースと、無線LANインターフェースと、前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付けたことに基づいて、前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する手段と、を有し、続きを表示(全44行)前記利用が開始された無線LANインターフェースは、通信端末と直接接続する無線通信に用いられることを特徴とする印刷装置。【請求項2】前記停止する手段は、前記有線LANインターフェースへの電力供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。【請求項3】前記指示をユーザから受け付けたことに従って前記無線LANインターフェースへの電力供給を開始する手段を、更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。【請求項4】前記無線通信は、ダイレクト無線通信であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項5】前記ダイレクト無線通信は、Wi-Fiダイレクトであることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。【請求項6】前記無線通信は、前記印刷装置をアクセスポイントとして動作させる無線通信であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項7】前記印刷装置は、前記直接接続して無線通信を行う状態とは異なる状態であって、前記無線LANインターフェースを用いて外部のアクセスポイントを介して通信端末と無線通信を行う状態を更に取り得ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項8】前記指示は、通信モードの切り替えを実行するか否かを確認する画面において受け付け可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項9】前記確認する画面は、前記指示のための選択項目を備えることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。【請求項10】前記確認する画面は、前記有線LANインターフェースを利用して通信を行う状態から前記無線LANインターフェースを利用して通信端末と直接無線通信を行う状態への切り替えを中止するための選択項目を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の印刷装置。【請求項11】前記確認する画面は、通信完了の待機を指示するための選択項目を備えることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項12】前記確認する画面は、通信状態に関するメッセージを備えることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項13】前記直接接続する無線通信を介して前記通信端末から送信された印刷データを取得する手段を、更に有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項14】前記印刷データに基づきシートに印刷を行う印刷部を、更に有することを特徴とする請求項13に記載の印刷装置。【請求項15】前記印刷装置は、前記直接接続する無線通信を介して利用可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の印刷装置。【請求項16】有線LANインターフェースと無線LANインターフェースを備える印刷装置の制御方法であって、前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程と、を有し、前記利用が開始された無線LANインターフェースは、通信端末と直接接続する無線通信に用いられることを特徴とする制御方法。【請求項17】有線LANインターフェースと無線LANインターフェースを備える印刷装置のコンピュータに制御工程を実行させるプログラムであって、前記制御工程は、前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程と、を有し、前記利用が開始された無線LANインターフェースは、通信端末と直接接続する無線通信に用いられることを特徴とするプログラム。」
第4 引用文献、引用発明及び周知技術
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願日前に公開された引用文献1(特開2012-90026号公報)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0015】図1は、本発明の一実施形態に係るプリンター100の構成図である。同図に示すように、プリンター100は、印刷機構201と、印刷制御部202と、表示部203と、入力部204と、通信I/F205と、通信管理部208と、通信設定情報記憶部209を備えている。そして、通信I/F205は、有線通信装置206と、無線通信装置207とを備えている。」
(2)「【0020】通信I/F205は、有線通信装置206と無線通信装置207とを備え、有線LANまたは無線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う。例えば、通信I/F205は、有線LAN通信または無線LAN通信を介して、ホスト装置であるPCなどを通信相手として、印刷データを受信したり、印刷状況あるいはプリンター100のステータスを示すデータを送信したりする。」
(3)「【0023】通信管理部208は、通信設定情報記憶部209に保存されている情報に基づいて、有線通信装置206を用いた通信と、無線通信装置207を用いた通信との切替制御等を行う。例えば、有線通信装置206を用いて通信を行っている間に、無線通信装置207を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、通信管理部208は、有線通信装置206の通信を停止させて、無線通信装置207に通信を開始させる。また、これとは反対に、無線通信装置207を用いて通信を行っている間に、有線通信装置206を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、通信管理部208は、無線通信装置207の通信を停止させて、有線通信装置206に通信を開始させる。」
(4)「【0064】例えば、上述した実施形態では、無線通信装置がAPとインフラストラクチャ型の通信を行う場合を例にとって説明したが、本発明は無線通信装置同士が直接通信を行うアドホック型通信にも適用可能である。」
引用文献1の上記記載、及び通信装置の分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。
ア 上記(1)の「プリンター100は、・・・(略)・・・通信I/F205と、・・・(略)・・・を備えている。そして、通信I/F205は、有線通信装置206と、無線通信装置207とを備えている。」との記載、及び上記(2)の「通信I/F205は、有線通信装置206と無線通信装置207とを備え、有線LANまたは無線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う。」との記載によれば、引用文献1には、通信I/Fを備え、該通信I/Fは有線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う有線通信装置と、無線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う無線通信装置とを備えるプリンターが記載されている。
イ 上記(1)の「プリンター100は、・・・(略)・・・通信管理部208と、・・・(略)・・・を備えている。」との記載、上記(3)の「有線通信装置206を用いて通信を行っている間に、無線通信装置207を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、通信管理部208は、有線通信装置206の通信を停止させて、無線通信装置207に通信を開始させる。」との記載によれば、引用文献1のプリンターは、有線通信装置を用いて通信を行っている間に、無線通信装置を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、前記有線通信装置の通信を停止させて、前記無線通信装置に通信を開始させる通信管理部を備えている。
ウ 上記(4)の「無線通信装置がAPとインフラストラクチャ型の通信を行う場合を例にとって説明したが、本発明は無線通信装置同士が直接通信を行うアドホック型通信にも適用可能である。」との記載によれば、無線通信装置は、無線通信装置同士が直接通信を行うアドホック型通信を行うことが示唆されている。
したがって、上記「ア」ないし「ウ」を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 通信I/Fを備え、該通信I/Fは有線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う有線通信装置と、無線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う無線通信装置とを備えるとともに、前記有線通信装置を用いて通信を行っている間に、前記無線通信装置を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、前記有線通信装置の通信を停止させて、前記無線通信装置に通信を開始させる通信管理部を備え、前記無線通信装置は、無線通信装置同士が直接通信を行うアドホック型通信を行うプリンター。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願日前に公開された引用文献2(特開2012-137979号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0015】切替回路36は、制御部30の制御の下で駆動する切替スイッチなどであり、通信部37における有線での通信と、無線での通信とを切り替える。」
(2)「【0018】なお、電源部39は、本体と、店員用表示器3や客用表示器4との間の有線の接続が無いことが検知回路38により検知された場合、有線接続部371への電源供給を停止する。」
上記(1)及び(2)の記載によれば、引用文献2には、次の周知技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められる。
「通信部における有線での通信と、無線での通信とを切り替え、有線の接続が無いことが検知された場合、有線接続部への電源供給を停止する。」
3 引用文献3及び引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願日前に公開された引用文献3(特開2012-113349号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
「【0034】(切替印刷の動作)次に、アクセスポイント50とインフラストラクチャモードにて通信可能に設定されたプリンタ10をアドホックモードにてPC30と通信可能な設定に切り替え、PC30から送信される印刷データに基づいて印刷を行う切替印刷の動作について説明する。この切替印刷は、プリンタ10において実行されるプリンタ側切替印刷処理と、PCにおいて実行されるPC側切替印刷処理とによって実現される。【0035】[プリンタ側切替印刷処理]図2は、プリンタ側切替印刷処理のフローチャートである。プリンタ10のCPU11は、図2のプリンタ側切替処理を繰り返し実行する。CPU11は、プリンタ側切替印刷処理を開始すると、まず操作部18においてユーザが所定のボタンを押すことなどにより入力される切替指示を受けたかを判断する(S101)。そして、切替指示を受けていない場合(S101:NO)には、このプリンタ側切替印刷処理を終了する。【0036】また、CPU11は、切替指示を受けた場合(S101:YES)には、現在、(インフラストラクチャモードによる)通信動作中かを判断する(S102)。例えば、ネットワーク回線51に接続された別のPC(図示せず)から印刷データを受信している途中の場合等には、通信動作中であると判断し(S102:YES)、このプリンタ側切替印刷処理を終了する。すなわち、無線LANインターフェース16の動作モードをアドホックモードへの変更を禁止する。なお、通信動作中の場合には、通信動作中のために切替印刷を行うことができない旨をユーザに通知するメッセージを表示部17に表示させてもよい。」
上記記載によれば、引用文献3には、アクセスポイント50とインフラストラクチャモードにて通信可能に設定されたプリンタ10をアドホックモードにてPC30と通信可能な設定に切り替えを行う切替印刷の動作において、切替え指示を受けた場合、現在インフラストラクチャモードによる通信動作中かを判断し、通信動作中であると判断した場合、アドホックモードへの変更を禁止するという技術事項が記載されている。
(2)原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願日前に公開された引用文献4(特開2006-261852号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
ア 「【0003】現在普及しているIEEE802.11方式の無線LANシステムでは、基幹(インフラストラクチャ)モードと、アドホックモードとを切り替えて通信することができる。基幹モードは、アクセスポイントなどの中継ノードを介して通信するネットワーク通信モードである。アドホックモードは、中継ノードを介さずに、端末同士が直接通信するネットワーク通信モードである。」
イ 「【0015】無線通信装置101は、いわゆる無線LANアダプタであり、情報処理装置の一例である画像出力装置102と接続されている。また、無線通信装置101は、基幹モードが適用されている場合は、無線LANアクセスポイント104を介して他の無線通信装置等と通信を行い、一方、アドホックモードが適用されている場合は、無線LANアクセスポイント104を介すことなく、他の無線通信装置等と無線通信を実行する。」
ウ 「【0021】図4は、実施形態に係る無線通信装置の制御方法の例示的なフローチャートである。なお、本フローチャートは、とりわけ、ネットワーク通信モードの切り替えに関するサブルーチンに相当する。・・・(略)・・・【0023】続きを表示(全11行)ステップS402において、制御部205は、入力部209において切り替え指示が入力されているかどうかを判定する。切り替え指示が入力されていなければ、本サブルーチンを終了する。一方、入力されている場合は、ステップS403に進む。【0024】ステップS403において、制御部205は、インターフェース207を介して接続されている画像出力装置102の動作状況を認識する。例えば、他の何れかの無線通信装置から送信されてきた処理要求を画像出力装置102が処理している最中であるかどうかを認識する。処理中(処理未完)であればビジー状態と認識し、すでに処理を完遂していればアイドル状態と認識する。【0025】ステップS404において、制御部205は、認識した状態がビジー状態かどうかを判定する。ビジー状態であれば、ステップS405に進む。そうでなければ、ステップS406に進み、制御部205は、ネットワーク通信モードを現在適用されているモードから他のモードへと変更する。例えば、現在基幹モードが適用されていればアドホックモードに切り替え、一方、現在アドホックモードが適用されていれば基幹モードに切り替える。制御部205は、切り替え後のネットワーク通信モードが何であるかを報知すべく、発光ダイオード302の発光色を変更する。その後、本サブルーチンを終了する。【0026】ステップS405において、制御部205は、ネットワーク通信モードの切り替えを抑制する。例えば、入力部209において切り替え指示が発行されているとしても、それを無視して、切り替えを禁止する。その後、本サブルーチンを終了する。」
上記「ア」ないし「ウ」の記載によれば、引用文献4には、インフラストラクチャモードとアドホックモードとを切り替えて通信することができる無線通信装置において、切り替え指示が入力されている場合、他の何れかの無線通信装置から送信されてきた処理要求を処理している最中であるかどうかを認識し、処理中であればビジー状態と認識し、ネットワーク通信モードの切り替えを禁止するという技術事項が記載されている。
(3)上記(1)及び(2)で説示した引用文献3に記載された技術事項及び引用文献4に記載された技術事項を考慮すれば、次の周知技術(以下、「周知技術2」という。)が記載されていると認められる。
「通信モードの切り替え指示を受けても、通信中や処理中である場合、通信モードの切り替えを禁止する。」
4 引用文献5について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願日前に公開された引用文献5(特開2013-38724号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
「【0006】そこで、無線LAN製品の普及促進を図ることを目的とした業界団体であるWi-Fi Allianceは、2009年10月に、Wi-Fi端末間で直接通信する仕様「Wi-Fi CERTIFIED Wi-Fi Direct」をドラフトとして発表し、その後、2010年10月に、Wi-Fi Peer-to-Peer(P2P)Technical Specification Version 1.15(以下、「Wi-Fi Direct仕様」とする。)として、公式発表された。」
上記記載によれば、引用文献5には、次の周知技術(以下、「周知技術3」という。)が記載されていると認められる。
「Wi-Fi Directは、Wi-Fi端末間で直接通信する無線LANの仕様である。」
第5 対比及び判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「有線通信装置」は、「通信I/F」が備えるものであるから、インターフェースに含まれるものといえる。そうすると、引用発明の「有線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う有線通信装置」は本願発明1の「有線LANインターフェース」に含まれる。
(2)引用発明の「無線通信装置」は、「通信I/F」が備えるものであるから、インターフェースに含まれるものといえる。そうすると、引用発明の「無線LANで他の通信機能を有する装置と所定のデータ通信を行う無線通信装置」は本願発明1の「無線LANインターフェース」に含まれる。
(3)引用発明の「無線通信装置は、無線通信装置同士が直接通信を行うアドホック型通信を行う」ことは、上記「(2)」で説示したことを踏まえれば、本願発明1の「無線LANインターフェースは、通信端末と直接通信する無線通信に用いられること」に含まれる。
そして、引用発明は、「前記有線通信装置を用いて通信を行っている間に、前記無線通信装置を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、・・・(略)・・・前記無線通信装置に通信を開始させる」ものであるから、無線通信装置は、切り替える旨の指示を受けたときに、無線通信装置として利用が開始されるといえる。そうすると、無線通信装置は、切り替える旨の指示を受けたときに、利用が開始された無線通信装置といえるから、本願発明1と引用発明とは、「利用が開始された無線LANインターフェースは、通信端末と直接通信する無線通信に用いられること」である点で共通する。
(4)引用発明の「プリンター」は、本願発明1の「印刷装置」に含まれる。
したがって、上記(1)ないし(4)を総合すれば、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「 有線LANインターフェースと、無線LANインターフェースと、を有し、前記利用が開始された無線LANインターフェースは、通信端末と直接接続する無線通信に用いられることを特徴とする印刷装置。」
<相違点>
本願発明1が「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付けたことに基づいて、前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する手段」という発明特定事項を有するのに対し、引用発明は、有線通信装置を用いて通信を行っている間に、前記無線通信装置を用いた通信に切り替える旨の指示を受けたとき、前記有線通信装置の通信を停止させて、前記無線通信装置に通信を開始させる通信管理部を備えるが、上記発明特定事項については特定されていない点。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付けたことに基づいて、前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する手段」という発明特定事項は、上記「第4」の「1」ないし「4」で説示した引用文献2ないし5には記載も示唆もされておらず、また当該技術分野における周知技術であるともいえない。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付けたことに基づいて、前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する手段」を有するよう構成することは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、並びに引用文献2に記載された周知技術1、引用文献3及び4に記載された周知技術2、引用文献5に記載された周知技術3に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、り、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、並びに引用文献2に記載された周知技術1、引用文献3及び4に記載された周知技術2、引用文献5に記載された周知技術3に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明16について
本願発明16は、「印刷装置」の発明である本願発明1を、方法カテゴリーの発明とした「印刷装置の制御方法」の発明である。そして、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項に対応する「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程」という発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、並びに引用文献2に記載された周知技術1、引用文献3及び4に記載された周知技術2、引用文献5に記載された周知技術3に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本願発明17について
本願発明17は、「印刷装置」の発明である本願発明1を、プログラムの発明とした「印刷装置のコンピュータに制御工程を実行させるプログラム」の発明である。そして、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項に対応する「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程」という発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、並びに引用文献2に記載された周知技術1、引用文献3及び4に記載された周知技術2、引用文献5に記載された周知技術3に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定についての判断
令和4年7月25日にされた手続補正により、本願発明1ないし15は、いずれも「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付けたことに基づいて、前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する手段」という発明特定事項を備えるものとなっている。
同様に、本願発明16は「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程」という発明特定事項を備えるものとなっている。
また、本願発明17は「前記有線LANインターフェースが通信に利用するインターフェースとして設定された状態において前記有線LANインターフェースが通信中の可能性を示唆する情報を通知した後、前記通信に利用するインターフェースを前記無線LANインターフェースに変更する指示であって、前記有線LANインターフェースが通信中であっても変更する指示をユーザから受け付ける工程と、前記指示に基づいて前記無線LANインターフェースの利用を開始し、且つ前記有線LANインターフェースの利用を停止する工程」という発明特定事項を備えるものとなっている。
してみれば、上記「第5」の「1」ないし「4」で説示したとおり、当業者であっても、拒絶査定で引用された引用文献1に記載された発明、並びに引用文献2に記載された周知技術1、引用文献3及び4に記載された周知技術2、引用文献5に記載された周知技術3に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2022-011518