2022-010729
液状のホットメルト接着剤の質量流量を測定するためのセンサー装置
- 審判番号
- 2022-010729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-242313外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月08日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .575-Z (G01F) / P18 .121-Z (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年12月19日(パリ条約による優先権主張2016年12月21日、ドイツ)の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
同年 3月 3日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 8日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月22日 :手続補正書(方式)の提出
同年 9月 5日 :前置報告書
同年12月 7日 :上申書の提出
第2 令和4年7月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年7月8日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和4年7月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】液状のホットメルト接着剤(4)の質量流量を測定するためのセンサー装置(12)であって、前記ホットメルト接着剤(4)のための流路(5)と、前記流路(5)の第1のポジションにおける前記ホットメルト接着剤(4)の温度を測定するために、前記流路(5)の前記第1のポジションに配置されている第1の温度測定器(24)と、前記流路(5)の第2のポジションに配置されている第2の温度測定器(28)と、前記第2の温度測定器(28)に割り当てられており、前記第2の温度測定器(28)を加熱するための加熱器(32)と、前記加熱器(32)を制御し、かつ前記質量流量を測定するコントロールユニット(63)と、を備え、前記第2の温度測定器(28)は、加熱される前記第2の温度測定器(28)における第2の温度を測定するために用いられ、前記コントロールユニット(63)は、前記第2の温度測定器(28)の温度をある値に調節して前記第2の温度測定器(28)を加熱するための加熱出力を決定し、かつ前記流路(5)内の前記質量流量を算出するように構成されていて、前記第1の温度測定器(24)と前記第2の温度測定器(28)は、前記ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦であり、かつ前記流路(5)内に実質的に互いに平行に配置されていることを特徴とする、センサー装置(12)。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】液状のホットメルト接着剤(4)の質量流量を測定するためのセンサー装置(12)であって、前記ホットメルト接着剤(4)のための流路(5)と、前記流路(5)の第1のポジションにおける前記ホットメルト接着剤(4)の温度を測定するために、前記流路(5)の前記第1のポジションに配置されている第1の温度測定器(24)と、前記流路(5)の第2のポジションに配置されている第2の温度測定器(28)と、前記第2の温度測定器(28)に割り当てられており、前記第2の温度測定器(28)を加熱するための加熱器(32)と、前記加熱器(32)を制御し、かつ前記質量流量を測定するコントロールユニット(63)と、を備え、前記第2の温度測定器(28)は、加熱される前記第2の温度測定器(28)における第2の温度を測定するために用いられ、前記コントロールユニット(63)は、前記第2の温度測定器(28)の温度をある値に調節して前記第2の温度測定器(28)を加熱するための加熱出力を決定し、かつ前記流路(5)内の前記質量流量を算出するように構成されていて、前記第1の温度測定器(24)と前記第2の温度測定器(28)は、前記ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦かつ平面状であり、かつ前記流路(5)内に実質的に互いに平行に配置されていることを特徴とする、センサー装置(12)。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「第1の温度測定器(24)」及び「第2の温度測定器(28)」が、「ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦であ[る]」ものとされていたのを、「ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦かつ平面状であ[る]」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に発行された、
Bernward Schoenteich, Elisabeth Stammen, and Klaus Dilger,High-speed Mass Flow Measurement in Highly Viscous Adhesives by Constant Temperature Anemometry,Journal of The Adhesion Society of Japan,Vol.51, No.S1,日本,一般社団法人日本接着学会,2015年6月30日,pp.269~273,https://doi.org/10.11618/adhesion.51.269,ISSN:0916-4812(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。日本語訳及び下線は当合議体によるものであり、以下同様である。
a Abstract
「State-of-the-art measurement cells suitable for highly viscous fluids (mainly gear-measuring cells or Coriolis measuring cell) show several disadvantages which interfere with the precision of a dosing process. These disadvantages are the significant pressure drop, the time gap between occurrence and detection of flow variations and the size and weight of those measurement cells.This paper presents the development of a measuring cell which makes use of the thermal convection-based anemometry. This technique is widely used for the flow measurement of gas flow rates. The authors present a design with a digital PID controller which has been developed to convert a sensor for low viscous fluids to measure the flow rate of highly viscous adhesives. The experiments were carried out with a 1-component epoxy adhesive for structural bonding in automotive industries. This concept was verified with a semi-structural adhesive based on polyurethane.」
(高粘性流体に適した従来技術の測定セル(主に、歯車測定セル又はコリオリ測定セル)は、投与プロセスの精度を妨げるいくつかの欠点を示す。これらの欠点は、著しい圧力降下、流れの変動の発生と検出の間の時間差、及び、これらの測定セルのサイズ及び重量である。
この論文は、熱対流ベースの測定を利用する測定セルの開発を提示している。この技術は、ガス流量の流量測定に広く使用されている。著者らは、高粘性接着剤の流量を測定するために、低粘性流体用のセンサを流用するために開発されたデジタルPIDコントローラーを有する設計を提示している。実験は、自動車産業における構造接着のための一成分エポキシ接着剤を用いて行った。この概念は、ポリウレタンに基づく半構造接着剤を用いて検証された。)
b Introduction
「The precise, quick and correct mass flow measurement of highly viscous fluids is a challenging task due to the lack of suitable technologies which allow a accurate measurement by negligible pressure drops. For the exact dosing of high-viscosity fluids, a closed loop process is required which needs a feedback value to follow the set point. Most highly viscous fluids like adhesives for automobile industries, hot melts, slurries or pastes show non-Newtonian flow properties like shear thinning or thixotropy. Additionally those material characteristics depend largely upon the fluid temperature. This combination leads to the conclusion that the quality of the feedback signal, which is the measured flow rate, determines the quality of the overall dosing process.… (後略)」
(高粘性流体の正確で迅速かつ的確な質量流量測定は、微小な圧力降下によって正確な測定を可能にする適切な技術がないために困難な課題である。高粘度流体の正確な投与のためには、設定点に追従するフィードバック値を必要とする閉ループプロセスが必要である。自動車産業用接着剤、ホットメルト、スラリー又はペーストのような、ほとんどの高粘性の流体は、ずり減粘又はチキソトロピーのような非ニュートン流動特性を示す。さらに、これらの材料特性は、流体温度に大きく依存する。この組み合わせは、測定された流量であるフィードバック信号の品質が、全体的な投与プロセスの品質を決定するという結論につながる。… (後略))
c Sensor platform
「The thermal flow measurement is primarily used for very low viscous fluids like oxygen, air or water. In this field the requirement on the rigidity of the sensor is quite low. Most of these sensors consist of a thin platinum wire with a diameter of ~ 100 μm, which are heater and temperature sensor in one. These constructions are much too weak to resist highly viscous fluids. Therefore a new sensor element had to be found which meets the requirements for this application. The result is a commercial element produced by Innovative Sensor Technologies. The element consists of two temperature-dependent resistors on a thin ceramic platform (0.3 mm thick). Fig. 3 shows the scheme of the platform.The lower resistor (PT45) has a resistance of 45 ohm by 0 ℃ and is used as a heater and powered by current. The higher resistor (PT1200) has a resistance of 1200 ohm by 0 ℃ and is used to measure the sensor temperature.… (後略)」
(熱流量測定は、主に、酸素、空気又は水のような非常に低粘性の流体に使用される。この分野では、センサの剛性に対する要求は極めて低い。これらのセンサの大部分は、約100μmの直径を有する細い白金ワイヤからなり、これらは、一つのヒーター及び温度センサである。これらの構造は、高粘性流体に耐えるには弱すぎる。したがって、この用途の要件を満たす新しいセンサ素子を見出さなければならなかった。その結果は、Innovative Sensor Technologiesによって製造された市販の素子である。この素子は、薄いセラミックプラットフォーム(厚さ0.3mm)の二つの温度依存性抵抗器からなる。図3は、プラットフォームの構造を示す。
低い方の抵抗(PT45)は、0℃で45オームの抵抗を有し、ヒーターとして使用され、電流によって電力供給される。高い方の抵抗(PT1200)は、0℃で1200オームの抵抗を有し、センサ温度を測定するために使用される。… (後略))
「[図:0001402335000001.jpg]」
「[図:0001402335000002.jpg]」
d Measuring cell construction
「The measuring cell consists of two FS5L elements. While the first one is used for being heated up and kept on a constant temperature above the fluid temperature, the second one is used to measure the fluid temperature permanently. Fig. 5 shows the concept with the PID controller which keeps the temperature of the actively heated sensor on a constant level.The setpoint defines the temperature difference between the fluid and the sensor. Due to the permanent measurement of the fluid temperature it is possible to balance variations of the fluid temperature which would lead to inconsistent measurements. The mass flow rate is calculated by the voltage (based on Ohm's law) which is needed to heat up the heater of the actively heated sensor.Both sensing elements are included in a nozzle which is easy to introduce into a dosing machine that is capable of providing constant mass flow rates. Fig. 6 shows the nozzle. The actively healed element (B) is placed in the middle of the pipe to get the optimal flow stream.」
(測定セルは、二つのFS5L素子からなる。第1のFS5L素子は、加熱され、流体温度を上回る一定温度に維持されるために使用されるが、第2のFS5L素子は、流体温度を恒久的に測定するために使用される。図5は、能動的に加熱されるセンサの温度を一定レベルに保つPIDコントローラーを有する概念を示す。
設定点は、流体とセンサとの間の温度差を規定する。流体温度の恒久的な測定により、一貫性のない測定をもたらす流体温度の変動を均衡させることが可能である。質量流量は、能動的に加熱されるセンサのヒーターを加熱するのに必要な電圧(オームの法則に基づく)によって計算される。
両方の感知要素は、一定の質量流量を提供することができる投与機械に導入するのが容易なノズルに含まれる。図6はノズルを示す。能動的に修復される要素(B)は、最適なフローストリームを得るためにパイプの中央に配置される。)
「[図:0001402335000003.jpg]」
「[図:0001402335000004.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
a 前記(ア)a、b及びdの記載から、二つのFS5L素子とPIDコントローラーを有するシステムが、ホットメルトが含まれる高粘性接着剤の流量を測定するために用いられるものであることが読み取れる。
b 前記(ア)cのFig.3には、タイトルとして「Scheme of the FS5L-Sensor by IST-AG」と示されており、FS5L素子の構造が示されていることが認められる。よって、前記(ア)cのFig.3から、FS5L素子の縦のサイズが40mmで、横のサイズが24mmであることが読み取れる。
c(a) 前記(ア)dのFig.5には、二つのFS5L素子が示されているところ、前記(ア)dにおいて摘記した事項を踏まえると、Heater入力を受ける右側のFS5L素子が第1のFS5L素子であり、左側のFS5L素子が第2のFS5L素子であることが読み取れる。
(b) よって、Fig.5から、PIDコントローラーが、第1のFS5L素子の抵抗(PT1200)で検出した温度と、第2のFS5L素子の抵抗(PT1200)で検出した温度との差に基づいて、第1のFS5L素子の抵抗(PT45)に印加する電圧を制御していることが読み取れる。
d 前記(ア)の記載事項及び前記a~cの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「ホットメルトが含まれる高粘性接着剤の流量を測定するために用いられる、二つのFS5L素子とPIDコントローラーを有するシステムであって、(前記aの認定事項)前記FS5L素子は、薄いセラミックプラットフォーム(厚さ0.3mm)の二つの温度依存性抵抗器からなり、低い方の抵抗(PT45)は、ヒーターとして使用され、電流によって電力供給され、高い方の抵抗(PT1200)は、センサ温度を測定するために使用され、(前記(ア)c)前記FS5L素子の縦のサイズが40mmで、横のサイズが24mmであり、(前記bの認定事項)前記二つのFS5L素子のうち、第1のFS5L素子は、加熱され、流体温度を上回る一定温度に維持されるために使用されるが、第2のFS5L素子は、流体温度を恒久的に測定するために使用され、(前記(ア)d)前記PIDコントローラーは、能動的に加熱されるセンサの温度を一定レベルに保ち、設定点は、流体とセンサとの間の温度差を規定し、(前記(ア)d)前記PIDコントローラーは、第1のFS5L素子の抵抗(PT1200)で検出した温度と、第2のFS5L素子の抵抗(PT1200)で検出した温度との差に基づいて、第1のFS5L素子の抵抗(PT45)に印加する電圧を制御し、(前記cの認定事項)質量流量は、能動的に加熱されるセンサのヒーターを加熱するのに必要な電圧(オームの法則に基づく)によって計算され、(前記(ア)d)両方の感知要素は、一定の質量流量を提供することができる投与機械に導入するのが容易なノズルに含まれる、(前記(ア)d)システム。」
イ 引用文献2に記載された事項と周知技術の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に発行された特開平6-3173号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0015】【作用】上記の構成よりなる本発明の熱式流量計は、一定の断面積を有する流体通路中に配設され、流体の流速を計測することにより流体の流量を計測する。ここで、絶縁体の表面に白金で抵抗パターンによるブリッジ回路を形成したセンサである2以上の感温抵抗素子は、1つの発熱抵抗が常時流体温度より一定温度だけ高くなるように加熱されている。そして、流速を増すと奪い去られる熱量が多くなるので、抵抗パターンの温度が下がり、その結果抵抗値が減少する。この抵抗パターンの微小抵抗変化をブリッジ回路により検出して流速を計測する。【0016】感温抵抗素子を覆って形成される絶縁膜は、導電性の流体に接触して抵抗パターンの抵抗値が変化することを防止している。絶縁膜の外側に形成される金属薄膜は、クーラント液等の金属粉により絶縁膜等が損傷することを防止している。また、金属薄膜は1乃至5μと薄いので、流体の温度をきわめて少ない時間遅れで抵抗パターンに熱伝導することができる。【0017】また、金属薄膜は、熱式流量用計全体を覆って形成されているので、モータ等により発生する外部ノイズを遮断して熱式流量計が誤計測することを防止している。流速を計測して流量に換算する前提条件として計測している断面における流れが層流であること、および流量計の周囲の流れが層流であることが必要である。整流板が熱式流量計のセンサ部の周囲の流れを層流状態に維持している。【0018】【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例である熱式流量計7について図面を参照して説明する。図2の(a)に熱式流量計7の構成を断面図で示す。熱式流量計7には、発熱温度の低い流体温度補償抵抗センサ9と発熱温度の高い発熱抵抗センサ8とが流れの方向に平行かつ一列にホルダ10に取り付けられ樹脂6により埋め込まれている。ここで、図4の使用状態に示すように、流体温度補償センサ9が発熱抵抗センサ8の上流側に配設しているのは、流体温度補償センサ9が発熱抵抗センサ8で発熱された熱の影響を受けないようにするためである。【0019】次に、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9の構成を説明する。図1に発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9の構成をセンサ1として断面図で示す。基板5上に、0.3μ以下の膜厚でスパッタ蒸着された白金薄膜パターン2が形成されている。また、基板5と白金薄膜パターン2とを覆って絶縁膜3が形成されている。また、絶縁膜を覆って膜厚1~5μのチタン薄膜4が形成されている。」
「【0023】次に、上記構成を有する熱式流量計7の使用状態を図4に示す。ここで、流体温度補償センサ9が発熱抵抗センサ8の上流側に配設されている。これにより、流体温度補償センサ9が発熱抵抗センサ8で発熱された熱の影響を受けることがない。熱式流量計7は流体の流れの中に装着されている。このとき熱式流量計7が配設されているボディ部13の熱式流量計7を含む流路の断面積は一定に構成されている。また、ボディ部13においてクーラント液Fの流れが層流状態となるように構成されている。【0024】従って、流速を計測すれば、流速と断面積との積を計算することにより容易に流量を計測することができる。ホディ部13の両端には、配管14がネジにより連結されている。熱式流量計7の上部には、熱式流量計7を制御するための制御部12が付設されている。」
「【0026】クーラント液Fが配管14から右方向にボディ部13に流入する。ボディ部13においてクーラント液Fの流れは層流状態となっている。ここで、絶縁体の表面に白金で抵抗パターンによるブリッジ回路を形成したセンサである発熱抵抗センサ8は、常時クーラント液Fの温度より一定温度だけ高くなるように加熱されている。そして、クーラント液Fの流速が増すと奪い去られる熱量が多くなり、発熱抵抗センサ8の抵抗パターンの温度が下がり、その結果発熱抵抗センサ8の抵抗値が減少する。この抵抗パターンの微小抵抗変化を図7に示すブリッジ回路により検出して流速を計測する。【0027】すなわち、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9の各々の抵抗と2つの固定抵抗R1,R2とによりブリッジ回路が構成されている。また、チタン薄膜4は1乃至5μと薄いので、流体の温度をきわめて少ない時間遅れで抵抗パターンに熱伝導することができるので、チタン薄膜4が流速の計測に与える影響はほとんどない。。そして、流体温度補償センサ9が発熱抵抗センサ8と共にクーラント液F中に配設されているので、クーラント液F本体の温度変化による影響を正確に排除できるため、熱式流量計の精度を高めることができる。」
「【0030】次に、第二の実施例について説明する。図3に示すように、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並列に配置し、クーラント液Fに対して同時に接触するようにしたものである。使用方法等は、第一の実施例と同様であり、詳細な説明は省略する。ここで、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並列に配置し、クーラント液Fに対して同時に接触させると、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とがクーラント液Fから受ける影響が同一となるため、より正確に流速および流量を計測することができる。」
「【0036】図6に第四の実施例として、第二の実施例に整流板を配設した場合を示す。クーラント液Fの流れに対して並列に配置されている発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9の上流側に2枚の上流整流板16が配設され、それらの両側に一組の側面整流板15が配設されている。また、上流整流板16の長さは図に示すように上流整流板16と側面整流板15との間の隙間Cの5倍以上の長さとしている。」
「【図2】[図:0001402335000005.jpg]」
「【図3】[図:0001402335000006.jpg]」
「【図4】[図:0001402335000007.jpg]」
「【図6】[図:0001402335000008.jpg]」
(イ) 周知技術の認定
a 引用文献2の【0015】、【0023】、【0024】及び【図4】の記載に例示されるように、次に示す事項は周知技術であると認める(以下「周知技術A」という。)。
<周知技術A>
「流体の流量を計測する熱式流量計が、流路を有するボディ部を備えており、当該ボディ部を配管に連結して、熱式流量計を前記配管の流体通路中に配設すること。」
b(a) 引用文献2の【0036】には、「図6に第四の実施例として、第二の実施例に整流板を配設した場合を示す。クーラント液Fの流れに対して並列に配置されている発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9の上流側に2枚の上流整流板16が配設され」と記載されている。
また、引用文献2の【0030】には、「次に、第二の実施例について説明する。図3に示すように、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並列に配置し、クーラント液Fに対して同時に接触するようにしたものである。」と記載されている。
そうすると、引用文献2の【図3】に示された第二の実施例に関する構成は、【図6】に示された第四の実施例に関する構成から、上流側にある二枚の上流整流板16を除いたものであるから、【図3】には、熱抵抗センサの抵抗と流体温度補償センサの抵抗を、流体の流れの方向に沿って平坦かつ平面状となるように、互いに平行に配置する構成について示されているものと認められる。
(b) よって、前記(a)の検討を踏まえると、引用文献2の【0015】、【0027】、【0030】及び【図3】の記載に例示されるように、次に示す事項は周知技術であると認める(以下「周知技術B」という。)。
<周知技術B>
「流体の流量を計測する熱式流量計において、発熱抵抗センサの抵抗と、流体の温度変化による影響を正確に排除できる流体温度補償センサの抵抗を、流体の流れの方向に沿って平坦かつ平面状となるように、互いに平行に配置すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a 引用発明の「システム」は、ホットメルトが含まれる高粘性接着剤の質量流量を測定するために用いられるものであり、また、その測定対象となる接着剤が液状であることは明らかである。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「液状のホットメルト接着剤の質量流量を測定するためのセンサー」の発明である点で共通する。
(イ)a 引用発明の「第2のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」は、ホットメルトが含まれる高粘性接着剤の流体温度を測定するものであるから、本件補正発明の「第1の温度測定器(24)」に相当する。
b また、流体温度を測定するためには、「第2のFS5L素子」が流路内に配置されていることは明らかであるところ、この流路内の配置箇所が、本件補正発明の「流路(5)の第1のポジション」に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「流路の第1のポジションにおける前記ホットメルト接着剤の温度を測定するために、前記流路の前記第1のポジションに配置されている第1の温度測定器」を備える点で一致する。
(ウ)a 引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」は、本件補正発明の「第2の温度測定器(28)」に相当する。
b また、引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT45)」は、加熱され、流体温度を上回る一定温度に維持するものであるが、それは、流体の流量に応じて、「第1のFS5L素子」が奪われる熱量と同じ熱量を、加熱により供給することにより維持されるものであるから、「第1のFS5L素子」が、流路内に配置されていることが明らかであるところ、この流路内の配置箇所が、本件補正発明の「流路(5)の第2のポジション」に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記流路の第2のポジションに配置されている第2の温度測定器」を備える点で一致する。
(エ)a 引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT45)」は、ヒーターとして使用されているから、本件補正発明の「加熱器(32)」に相当する。
b また、前記(ウ)のとおり、引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」は、本件補正発明の「第2の温度測定器(28)」に相当するところ、「抵抗(PT45)」と「抵抗(PT1200)」は、同じ「第1のFS5L素子」に設けられているから、「抵抗(PT45)」が、「抵抗(PT1200)」に割り当てられ、「抵抗(PT1200)」を加熱するものであることは明らかである。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記第2の温度測定器に割り当てられており、前記第2の温度測定器を加熱するための加熱器」を備える点で一致する。
(オ)a 引用発明において、「PIDコントローラー」を含む制御機構を有することは自明であって、当該制御機構は、本件補正発明の「コントロールユニット(63)」に相当する。
b また、引用発明の「PIDコントローラー」は、能動的に加熱されるセンサの温度を一定レベルに保つものであり、「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」が検出した温度に基づいて、その温度を一定レベルに保つのに必要な電圧を「抵抗(PT45)」に供給しているところ、このことは、「抵抗(PT45)」の加熱量を制御しているものといえる。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記加熱器を制御するコントロールユニット」を備える点で共通する。
(カ)a 前記(ウ)及び(エ)で検討したとおり、引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」が、「抵抗(PT1200)」を含む「第1のFS5L素子」の温度を測定し、引用発明の「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT45)」が、同じFS5L素子の「抵抗(PT1200)」を加熱するものであることは明らかである。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「前記第2の温度測定器は、加熱される前記第2の温度測定器における第2の温度を測定するために用いられ[る]」点で一致する。
(キ)a 前記(オ)で検討したとおり、引用発明の「PIDコントローラー」は、「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」が検出した温度に基づいて、その温度を一定レベルに保つのに必要な電圧を「抵抗(PT45)」に供給しているものである。
b よって、本件補正発明と引用発明は、「前記コントロールユニットは、前記第2の温度測定器の温度をある値に調節して前記第2の温度測定器を加熱するための加熱出力を決定するように構成されている」点で共通する。
(ク)a 引用発明の「FS5L素子」は、縦のサイズが40mmで、横のサイズが24mmで、薄いセラミックプラットフォーム(厚さ0.3mm)の2つの温度依存性抵抗器からなるものであるから、前記2つの温度依存性抵抗器の形状は、いずれも平坦かつ平面状であるといえる。
b そして、前記(イ)及び(ウ)で検討したとおり、引用発明の「第2のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」、及び、「第1のFS5L素子」の「抵抗(PT1200)」は、それぞれ本件補正発明の「第1の温度測定器(24)」及び「第2の温度測定器(28)」に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記第1の温度測定器と前記第2の温度測定器は、平坦かつ平面状である」点で共通する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
液状のホットメルト接着剤の質量流量を測定するためのセンサーであって、
流路の第1のポジションにおける前記ホットメルト接着剤の温度を測定するために、前記流路の前記第1のポジションに配置されている第1の温度測定器と、
前記流路の第2のポジションに配置されている第2の温度測定器と、
前記第2の温度測定器に割り当てられており、前記第2の温度測定器を加熱するための加熱器と、
前記加熱器を制御するコントロールユニットと、を備え、
前記第2の温度測定器は、加熱される前記第2の温度測定器における第2の温度を測定するために用いられ
前記コントロールユニットは、前記第2の温度測定器の温度をある値に調節して前記第2の温度測定器を加熱するための加熱出力を決定するように構成されていて、
前記第1の温度測定器と前記第2の温度測定器は、平坦かつ平面状である、
センサー、である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明は、「ホットメルト接着剤のための流路」を備えている「センサー装置」であるのに対して、
引用発明においては、2個のFS5L素子と、PIDコントローラーを有するシステムが一つの装置を構成しているかどうか、また流路を備えているかどうか不明な点。
b 相違点2
本件補正発明においては、「前記加熱器を制御し、かつ前記質量流量を測定するコントロールユニット」を備え、「前記コントロールユニット(63)は、前記第2の温度測定器の温度をある値に調節して前記第2の温度測定器を加熱するための加熱出力を決定し、かつ前記流路内の前記質量流量を算出するように構成されて[いる]」のに対して、
引用発明においては、「PIDコントローラー」が、ヒーターを加熱するのに必要な電圧を供給しており、さらに、その電圧から質量流量が計算されるものであるものの、その質量流量の計算を、どこで行っているか不明な点。
c 相違点3
本件補正発明においては、「前記第1の温度測定器と前記第2の温度測定器は、前記ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦かつ平面状であり、かつ前記流路内に実質的に互いに平行に配置されている」のに対して、
引用発明においては、第1及び第2のFS5L素子の抵抗(PT1200)が、いずれも平坦かつ平面状であるものの、流体の流れの方向に沿って平坦かつ平面状となるように、流路内に、実質的に互いに平行に配置されているものではない点。
(4) 当審の判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
引用発明において、二つのFS5L素子とPIDコントローラーを一つの装置とするか否かは、当業者が適宜選択すべき事項にすぎない。
また、前記(2)イ(イ)aにおいて周知技術Aとして示したとおり、流体の流量を計測する熱式流量計が、流路を有するボディ部を備えており、当該ボディ部を配管に連結して、熱式流量計を前記配管の流体通路中に配設することは、本願優先日前に周知であるところ、引用発明と周知技術Aは、いずれも熱式流量計に関するものであるから、引用発明に周知技術Aを適用して、ホットメルト接着剤の流路を備えるようにすることに、格別の困難性は認められない。
よって、引用発明において、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
引用発明において、ヒーターを加熱する制御をPIDコントローラーで行っているところ、ヒーターに印加する電圧から質量流量を計算する処理を、前記PIDコントローラーを含む制御機構とは異なるユニットで行わせる必要性は見当たらないから、引用発明においても、PIDコントローラーを含む制御機構において、質量流量を計算しているものと理解される。
よって、前記相違点2は実質的な相違点ではない。
なお仮に、引用発明において異なるユニットで質量流量を計算する処理を行っているとしても、これらのユニットを、一つのユニットにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点3について
前記相違点3について検討する。
前記(2)イ(イ)bにおいて周知技術Bとして示したとおり、流体の流量を計測する熱式流量計において、発熱抵抗センサの抵抗と、流体の温度変化による影響を正確に排除できる流体温度補償センサの抵抗を、流体の流れの方向に沿って平坦かつ平面状となるように、互いに平行に配置することは、本願優先日前に周知である。
そして、引用発明と周知技術Bは、いずれも二つの抵抗を用いる熱式流量計であるから、引用発明に周知技術Bを適用して、第1及び第2のFS5L素子の抵抗(PT1200)が、流体の流れの方向に沿って平坦かつ平面状となるように、流路内に互いに平行に配置するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、引用発明において、前記相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 総合検討
前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1から相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1から相違点3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果としては、引用発明並びに周知技術A及びBから予測されるものを超え、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
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請求人は、令和4年8月22日に提出された手続補正書(方式)により、追って補充された審判請求の理由において、概略次の主張をしている。
a 本願発明は、「前記第1の温度測定器(24)と前記第2の温度測定器(28)は、前記ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦かつ平面状であり、かつ前記流路(5)内に実質的に互いに平行に配置されている」という構成を採用することにより、測定器によって誘発される流れ抵抗が低減され、質量流量における乱流の発生を減少させることができ、測定精度を改善することができるという格別の効果を奏する。
b 引例2の段落[0030]には、「図3に示すように、発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並列に配置し、クーラント液Fに対して同時に接触するようにしたものである。」という記載がある。ここで用語「並列」とは、「(同種類のものが左右に)並ぶこと。また並べること。」(岩波国語辞典)を意味するものである。この点において、本願明細書においては、「第1の温度測定器24と第2の温度測定器28は並んで配置されており、互いに平行になっている。」(段落[0013])と記載されているように、「第1の温度測定器24と第2の温度測定器28は並んで配置されて」いる構成だけではなく、更に、「第1の温度測定器24と第2の温度測定器28は…、互いに平行になっている。」と明確に限定を付している。
従って、引例2に記載されているクーラント液の流量を計測する熱式流量計においては、「発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並べて配置する」構成を示しているにすぎず、「前記第1の温度測定器(24)と前記第2の温度測定器(28)は、…前記流路(5)内に実質的に互いに平行に配置されている」という本願発明の構成とは相違する。
c 更に、引例2に記載された熱式流量計はクーラント液の流量を計測するものであり、クーラント液に対して少なくとも数十倍の粘度を有する液状のホットメルト材料の流量を計測することはできないか又は不明であり、引例2に記載された発明と本願発明とは機能において相違するものであり、引例2に記載された発明を引例1に記載された発明に適用する動機付けはないものと思料する。
(イ) 請求人の主張についての検討
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a 請求人の主張は、要するに、引用文献2は、「発熱抵抗センサ8と流体温度補償センサ9とを並べて配置する」構成を示しているにすぎず、「流路(5)内に実質的に互いに平行に配置されている」構成とは異なるというものである。
しかしながら、前記(2)イ(イ)bにおいて示したとおり、二つの抵抗を、流路内に互いに平行に配置する構成は、引用文献2に記載されているように、本願優先日前に周知である。
また、請求人が主張する「測定器によって誘発される流れ抵抗が低減され[る]」という効果についても、周知技術Bで示した、流体に流れに沿って互いに平行に配置された構成から、自明に導き出せる効果にすぎない。
b また、請求人は、引用文献2に記載された熱式流量計はクーラント液の流量を計測するものであり、クーラント液に対して少なくとも数十倍の粘度を有する液状のホットメルト材料の流量を計測することはできないか又は不明であり、引用文献2に例示される周知技術Bを引用発明に適用する動機付けはないと主張しているが、引用発明と引用文献2に例示される周知技術Bはいずれも二つの抵抗を用いる熱式流量計の技術分野に属し、密接に関連しているから、動機付けは十分に存在し、請求人の動機付けはないとの主張は採用できない。
なお、前記(ア)aにおいて請求人の主張する、温度測定器を互いに平行に配置することによる、「測定器によって誘発される流れ抵抗が低減され、質量流量における乱流の発生を減少させることができ、測定精度を改善することができるという格別の効果」なるものが、粘度の高い流体においてより高く得られるものであることを考慮しても、引用文献2に例示される周知技術Bを高粘度ホットメルト材料の流量計測に適用できないと考える理由は認められない。
c よって、請求人の主張は、いずれも前記エの結論を左右するものではない。
カ 上申書における補正案について
(ア) 補正案の内容
a 請求人は、令和4年12月7日に提出された上申書において、本願の対応EP出願であるEP3339815において特許された発明をベースに限定を付加して補正を行う用意があることを主張している。
b そこで、本件補正発明と、EP3339815の請求項1に記載された発明を対比すると、EP3339815の請求項1に記載された発明の構成にあって、本件補正発明の構成にないものは、「第1の温度測定器及び第2の温度測定器が、センサブロックに取り付けられる」という構成である。
(イ) 補正案についての検討
しかしながら、引用文献2の【0018】及び【図2(a)】には、流体温度補償抵抗センサ9と発熱抵抗センサ8が、ホルダ10に取り付けられ樹脂6により埋め込まれている構成が示されているところ、当該構成の「ホルダ10」及び「樹脂6」は、前記(ア)bで示した構成の「センサブロック」に相当するものであるから、請求人が限定しようとしている構成は、本願優先日前に知られたものである。
よって、EP3339815において特許された発明をベースに限定を付加して補正を行ったとしても、拒絶理由を解消するものではない。
(5) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年1月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、下記引用文献1に記載された発明、並びに、下記引用文献2及び3に示された周知技術に基づいて、本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1 Bernward Schoenteich, Elisabeth Stammen, and Klaus Dilger,High-speed Mass Flow Measurement in Highly Viscous Adhesives by Constant Temperature Anemometry,Journal of The Adhesion Society of Japan,Vol.51, No.S1,日本,一般社団法人日本接着学会,2015年6月30日,pp.269~273,https://doi.org/10.11618/adhesion.51.269,ISSN:0916-4812
引用文献2 特開平6-3173号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3 米国特許第4735086号明細書(周知技術を示す文献)
3 引用文献1、2に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定
引用文献1、2に記載された事項、引用発明並びに周知技術A及びBの認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「前記第1の温度測定器(24)と前記第2の温度測定器(28)は、前記ホットメルト接着剤の流れの方向に沿って平坦かつ平面状であ[る]」構成から、「平面状」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)、(4)において説示したとおり、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-010729