特許拒絶査定不服審判
2022-010582
電気化学エネルギー貯蔵装置
- 審判番号
- 2022-010582
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-517481外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月07日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】寧徳新能源科技有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-517481「電気化学エネルギー貯蔵装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月17日国際公開、WO2020/182191、令和 3年 7月29日国内公表、特表2021-518032〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年3月12日(パリ条約による優先権主張2019年3月14日、中国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月24日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月12日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2年25日付け:拒絶査定
令和4年 7年 7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 9月28日 :上申書の提出
令和5年 6月29日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和5年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和5年9月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ケーシングを備え、前記ケーシングが対向する第一の側壁及び第二の側壁を含み、且つ電池セルを収容するための内部キャビティが設けられ、前記内部キャビティが前記第一の側壁及び第二の側壁の間に位置する電気化学エネルギー貯蔵装置であって、
前記第一の側壁及び前記第二の側壁の少なくとも一方における前記内部キャビティに近い表面に補強層が設けられ、前記補強層は、高分子層であり、前記高分子層は、接着力を有し、かつ、前記高分子層の物理的に熱を受けたかまたは化学的に重合された後の粘性が、物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前の粘性よりも大きく、
前記ケーシングはポケットであり、前記電気化学エネルギー貯蔵装置はさらに電解液を含み、前記電解液は前記ケーシング内に設置されることを特徴とする電気化学エネルギー貯蔵装置。」
3 当審における拒絶の理由
当審が令和5年6月29日付けで通知した拒絶理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1.特表2018-505517号公報
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1には、「電気化学エネルギー貯蔵装置」について、図面とともに以下の各記載がある(下線は当審で付与した。)。
「【0003】
落下試験はリチウムイオン二次電池における厳格な安全性試験である。リチウムイオン二次電池は、落下後、トップシールの突き破り、液体漏れ、セパレータのしわ、内部短絡、タブの断裂等の問題が非常に発生し易い。今まで、粘着テープでバッテリーセルを縛ること又はトップシールの領域のサイズを増大させることにより、トップシールの突き破り、液体漏れ、タブの断裂等の問題を解決しているが、当該方法では、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を低減させ、且つリチウムイオン二次電池の落下時に発生したセパレータの収縮、しわ、内部短絡等の問題を解決することができない。バッテリーセルとパッケージシェルとの間に従来の両面粘着紙を粘着することにより、リチウムイオン二次電池の落下時に発生した様々な問題を解決することができるが、粘着紙の両面にはいずれも粘着性層が設けられるため、シェルに入る過程において、粘着紙がパッケージシェルに接着してしまい、バッテリーセルをシェルに入れる(すなわち、パッケージシェルに入る)プロセスの困難度は高くなった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
背景技術に記載された問題に鑑み、本発明は電気化学エネルギー貯蔵装置を提供することを目的とする。前記電気化学エネルギー貯蔵装置により、バッテリーセルとパッケージシェルとの間の固定接続が実現され、落下試験中に発生した様々な問題が解決され、且つ接着材の両面の粘着性によりバッテリーセルをシェルに入れ難いという問題も回避することができると共に、優れたサイクル特性及び高倍率の充放電性能を有する。」
「【0009】
図1~3をもとに、まず、本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置を説明する。前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、バッテリーセル1、電解液及びパッケージシェル2を備える。バッテリーセル1は、正極シート、負極シート、及び正極シートと負極シートとの間に介在するセパレータを備え、電解液にバッテリーセル1が含浸されており、パッケージシェル2にバッテリーセル1が封入され、電解液が収納されている。前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、さらに、バッテリーセル1とパッケージシェル2との間に位置する接着材3を備える。接着材3は、粘着性層31と保護層32を備える。粘着性層31は、直接的に又は間接的にバッテリーセル1の外面に粘着して設けられ、且つ、粘着性層31における、バッテリーセル1から遠い面が接着面である。保護層32は、粘着性層31の接着面に設けられ、保護層32は、全部又は部分的に溶解又は膨張して電解液に分散することで、粘着性層31の接着面を露出させ、さらに、粘着性層31によりバッテリーセル1とパッケージシェル2を粘着させる。保護層32は極性分子であり、前記極性分子には-F、-CO-NH-、-NH-CO-NH-、及び-NH-CO-O-の1種又は複数種を含む。
【0010】
一実施例において、保護層32が全部又は部分的に溶解又は膨潤して電解液に分散し、粘着性層31の接着面を露出させた後、外部からパッケージシェル2に圧力を与えるか又はパッケージシェル2を加熱することにより、粘着性層31によりバッテリーセル1とパッケージシェル2を粘着させることができる。」
「【0018】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置は、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、スーパーコンデンサ、燃料電池、太陽電池からなる群より選ばれる1種であってもよい。」
「【0020】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、接着材3は、バッテリーセル1とパッケージシェル2との間における任意の位置に設けられることができる。例えば、接着材3は、巻回型バッテリーセル1の巻回の終了部11、又はバッテリーセル1の表面における、パッケージシェル2に対向する任意の位置に粘着して設けられることができ、接着材3は、バッテリーセル1の幅方向に直交してバッテリーセル1を迂回する頂部と底部に同時に粘着して設けられることもでき、バッテリーセル1のいずれ一つのエッジと角位置に粘着して設けられることもでき、又はいくつかの位置に同時に粘着されることもできる。接着材3の面積は、バッテリーセル1の表面積を超えておらず、接着材3の形状は、長方形、円形、菱形、三角形、リング形、回字形状、及び多孔形状の1種又は複数種であってもよい。
【0021】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、パッケージシェル2は、軟パッケージシェル又は硬パッケージシェルから選択することができる。
【0022】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、図4に示すように、前記電気化学エネルギー貯蔵装置は、さらに、バッテリーセル1と接着材3との間に位置し、片面又は両面に粘着性を有する粘着紙4を備える。接着材3が間接的にバッテリーセル1の外面に粘着して設けられるように、粘着紙4は、接着面がバッテリーセル1の外面に粘着して設けられ、他方の面が接着材3に粘着してている。
【0023】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、粘着紙4の基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、配向ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)からなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい。粘着紙4の接着剤は、アクリル樹脂接着剤、熱硬化性ポリウレタン接着剤、シリコーン接着剤、天然ゴム及び合成ゴムからなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい。」
「【0026】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、粘着性層31は、感温性接着剤及び感圧接着剤からなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい。
【0027】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、前記感温性接着剤は、テルペン樹脂、石油樹脂、ナフテン油、ポリオレフィン、ポリビニルブチラール、ポリアミド類、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、及びポリエステル類からなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい。ここで、ナフテン油は単独で使用することができない。
【0028】
本発明に係る電気化学エネルギー貯蔵装置において、前記感圧接着剤は、エチレン-ブチレン-ポリスチレン線状トリブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SEPS)、エポキシ化スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(ESIS)、アクリル樹脂接着剤、熱硬化性ポリウレタン接着剤、シリコーン接着剤、天然ゴム、及び合成ゴムからなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい。」
「【図1】
[図:0001411680000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001411680000002.jpg]
」
(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 段落【0009】によれば、引用文献1には「バッテリーセル1、電解液及びパッケージシェル2を備える」「電気化学エネルギー貯蔵装置」が記載されている。
イ 段落【0009】によれば、「パッケージシェル2にバッテリーセル1が封入され、電解液が収納されている」。
ウ 図1、2及び段落【0009】の記載を参照すると、バッテリーセル1は、幅狭の接着材3(図1、2において下側に記載された接着材3)が設けられた、対向する2つの側面を有することが見てとれる。そして、段落【0009】に「接着材3は、粘着性層31と保護層32を備え」、「保護層32は、粘着性層31の接着面に設けられ、保護層32は、全部又は部分的に溶解又は膨張して電解液に分散することで、粘着性層31の接着面を露出させ、さらに、粘着性層31によりバッテリーセル1とパッケージシェル2を粘着させる」と記載されているから、バッテリーセル1とパッケージシェル2は粘着性層31により粘着し、バッテリーセル1は対向する2つの側面を有し、パッケージシェル2は、バッテリーセル1の対向する2つの側面と粘着する部分において、対向する2つの側面を備えるといえる。
エ 段落【0003】に「リチウムイオン二次電池は、落下後、トップシールの突き破り、液体漏れ、セパレータのしわ、内部短絡、タブの断裂等の問題が非常に発生し易い」、「バッテリーセルとパッケージシェルとの間に従来の両面粘着紙を粘着することにより、リチウムイオン二次電池の落下時に発生した様々な問題を解決することができる」と記載されているところ、電気化学エネルギー貯蔵装置に関して、段落【0009】に「粘着性層31によりバッテリーセル1とパッケージシェル2を粘着させる」こと、及び段落【0004】に「バッテリーセルとパッケージシェルとの間の固定接続が実現され、落下試験中に発生した様々な問題が解決され」ることが記載されており、粘着性層31は、バッテリーセル1とパッケージシェル2との間の固定接続を実現し、液体漏れ等の落下試験中に発生した様々な問題を解決するための構成といえる。
オ 段落【0026】に「粘着性層31は、感温性接着剤及び感圧接着剤からなる群より選ばれる1種又は複数種であってもよい」と記載され、段落【0027】に「ポリオレフィン、ポリビニルブチラール、ポリアミド類」等の「感温性接着剤」が列挙され、段落【0028】に「アクリル樹脂接着剤、熱硬化性ポリウレタン接着剤」等の「感圧接着剤」が列挙されている。ここで、「ポリオレフィン、ポリビニルブチラール、ポリアミド類」や「アクリル樹脂接着剤、熱硬化性ポリウレタン接着剤」は、単量体を重合して得られる合成高分子であるから、引用文献1には、「粘着性層31」は、熱硬化性ポリウレタン等の合成高分子の接着剤で構成されることが記載されていると認められる。
カ 段落【0021】によれば、「パッケージシェル2は、軟パッケージシェル」である。
(3)上記(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「バッテリーセル1、電解液及びパッケージシェル2を備える電気化学エネルギー貯蔵装置であって、(上記(2)ア)
パッケージシェル2にバッテリーセル1が封入され、電解液が収納されており、(上記(2)イ)
バッテリーセル1とパッケージシェル2は粘着性層31により粘着し、バッテリーセル1は対向する2つの側面を有し、パッケージシェル2は、バッテリーセル1の対向する2つの側面と粘着する部分において、対向する2つの側面を備え、(上記(2)ウ)
粘着性層31は、バッテリーセル1とパッケージシェル2との間の固定接続を実現し、液体漏れ等の落下試験中に発生した様々な問題を解決するための構成であり、(上記(2)エ)
粘着性層31は、熱硬化性ポリウレタン等の合成高分子の接着剤で構成され、(上記(2)オ)
パッケージシェル2は、軟パッケージシェルである、(上記(2)カ)
電気化学エネルギー貯蔵装置。」
5 対比、判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「バッテリーセル1」、「電解液」は、それぞれ、本願発明の「電池セル」、「電解液」に相当する。
イ 引用発明は、「パッケージシェル2にバッテリーセル1が封入され」、「パッケージシェル2は、バッテリーセル1の対向する2つの側面と粘着する部分において、対向する2つの側面を備え」るから、パッケージシェル2の対向する2つの側面の間に、バッテリーセル1を封入する内部空間が存在することは明らかである。そして、上記アの対比を考慮すると、引用発明の「パッケージシェル2」は、本願発明の「対向する第一の側壁及び第二の側壁を含み、且つ電池セルを収容するための内部キャビティが設けられ、前記内部キャビティが前記第一の側壁及び第二の側壁の間に位置する」ことに相当する構成を有し、本願発明の「ケーシング」に相当する。
ウ 引用発明の「電気化学エネルギー貯蔵装置」は、上記ア、イの対比を考慮すると、本願発明の「ケーシングを備え、前記ケーシングが対向する第一の側壁及び第二の側壁を含み、且つ電池セルを収容するための内部キャビティが設けられ、前記内部キャビティが前記第一の側壁及び第二の側壁の間に位置する電気化学エネルギー貯蔵装置」に相当する。
エ 本願明細書の段落【0022】に「補強層2は第一の側壁11の内部キャビティ14に近い面に設けられる。これにより、第一の側壁11の内部キャビティ14に近い側の構造強度を高め、電解液の衝撃に対抗する第一の側壁11の能力を向上させる」と記載され、本願発明の「補強層」は電解液の衝撃に対抗する能力を向上させるための構成と認められるところ、引用発明の「粘着性層31」は、「バッテリーセル1とパッケージシェル2との間の固定接続を実現し、液体漏れ等の落下試験中に発生した様々な問題を解決するための構成」であるから、本願発明における電解液の衝撃に対抗する能力を向上させるための「補強層」である点で一致する。
オ 引用発明において、「パッケージシェル2にバッテリーセル1が封入され」、「バッテリーセル1とパッケージシェル2は粘着性層31により粘着」するから、粘着性層31はパッケージシェル2の内側に粘着するといえる。そして、引用発明において「パッケージシェル2は、バッテリーセル1の対向する2つの側面と粘着する部分において、対向する2つの側面を備え」るから、粘着性層31はパッケージシェル2の対向する2つの側面の内側に粘着するといえ、このことは、上記エの対比を考慮すると、本願発明の「前記第一の側壁及び前記第二の側壁の少なくとも一方における前記内部キャビティに近い表面に補強層が設けられ」ることに相当する。
カ 引用発明の「粘着性層31」は、「高分子の接着剤で構成され」るから接着力を有する高分子で構成されるといえ、上記エの対比を考慮すると、本願発明の「高分子層であり、前記高分子層は、接着力を有」する「補強層」と一致する。
キ 引用発明の「粘着性層31」は「合成高分子の接着剤で構成され」るところ、合成高分子は、単量体を重合して得られるものであり、重合前の単量体よりも重合後の合成高分子は分子量が大きく粘性が大きいものであるということが技術常識であるから、引用発明の「合成高分子の接着剤」は、「化学的に重合された後の粘性が、」「化学的に重合される前の粘性よりも大きく」なった合成高分子で構成されたものといえる。そうすると、引用発明の「合成高分子の接着剤で構成され」る「粘着性層31」は、化学的に重合された後の粘性が、化学的に重合される前の粘性よりも大きくなった合成高分子で構成される点で、本願発明の「補強層は、高分子層であり」、「前記高分子層の」「化学的に重合された後の粘性が、」「化学的に重合される前の粘性よりも大き」いことと一致する。
また、引用発明は「合成高分子」として「熱硬化性ポリウレタン」が例示されるところ、熱硬化性ポリウレタンは、熱を受けて硬化し、硬化前よりも硬化後は粘性が大きくなることが技術常識であるから、引用発明の「合成高分子の接着剤」は、「物理的に熱を受けた」「後の粘性が、物理的に熱を受ける」「前の粘性よりも大きく」なる合成高分子で構成されたものといえる。そうすると、引用発明の「合成高分子の接着剤で構成され」る「粘着性層31」は、物理的に熱を受けた後の粘性が、物理的に熱を受ける前の粘性よりも大きくなる合成高分子で構成される点で、本願発明の「補強層は、高分子層であり」、「前記高分子層の物理的に熱を受けた」「後の粘性が、物理的に熱を受ける」「前の粘性よりも大き」いことと一致する。
ク 上記エないしキの対比によれば、引用発明の「粘着性層31」は、本願発明の「補強層」に相当し、「前記第一の側壁及び前記第二の側壁の少なくとも一方における前記内部キャビティに近い表面に補強層が設けられ、前記補強層は高分子層であり、前記高分子層は、接着力を有し、かつ、前記高分子層の物理的に熱を受けたかまたは化学的に重合された後の粘性が、物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前の粘性よりも大き」いことに相当する構成を有する。
ケ 本願明細書の段落【0002】によれば、電気化学エネルギー貯蔵装置のポケットとは「包装袋」であるところ、引用発明の「パッケージシェル2」は「バッテリーセル1が封入され、電解液が収納され」る「軟パッケージシェルであ」るから、中に物を入れて封止される軟らかい容器であるといえ、このことは本願発明の「前記ケーシングはポケットであ」ることに相当する。
コ 引用発明において、「電気化学エネルギー貯蔵装置」は「電解液」「を備え」、電解液が「パッケージシェル2に」「収納されて」いることは、上記アないしウの対比を考慮すると、本願発明の「前記電気化学エネルギー貯蔵装置はさらに電解液を含み、前記電解液は前記ケーシング内に設置されること」に相当する。
以上のとおり、上記アないしコによれば、本願発明と引用発明とは相違するところがない。
(2)請求人の主張について
請求人は、令和5年9月28日付け意見書において、概略、「本願の補正後の請求項1に記載の発明によれば、前記高分子層の物理的に熱を受けたかまたは化学的に重合された後の粘性が、物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前の粘性よりも大きくなっており」(第2頁第12~15行)、「物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前においては、粘性が高くないので、バッテリーセルをシェルに入れ難いという問題は生じず」(第2頁第7~8行)、「したがって、引用文献1に開示された発明の技術思想と、本出願の補正後の請求項1に記載の発明の技術思想とは異なるものであ」り(第2頁第15~16行)、「引用文献1には、上記した補正後の請求項1に記載の発明の特徴の開示がない」(第2頁第20~21頁)旨主張している。
上記主張について検討すると、請求項1には「前記高分子層の物理的に熱を受けたかまたは化学的に重合された後の粘性が、物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前の粘性よりも大きく」と特定されているのみであり、バッテリーセルをシェルに入れる前の内部キャビティに設けられる高分子層が「物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前」のものであることは特定されていない。また、本願明細書には、段落【0044】~【0046】に補強層が高分子層であることについて記載され、段落【0047】~【0048】に高分子層の形成について、「第1の側壁11の内部キャビティ14に近い面に接着剤を塗布」すること(段落【0047】)、「第2の側壁12の内部キャビティ14に近い面に接着剤を塗布」すること(段落【0048】)が記載されているものの、バッテリーセルをシェルに入れる前の内部キャビティに塗布される接着剤が「物理的に熱を受けるかまたは化学的に重合される前」のものであることは特定されていない。そうすると、上記「バッテリーセルをシェルに入れ難いという問題は生じず」という主張は、本願明細書及び特許請求の範囲に基づく主張ではない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)まとめ
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。
7 むすび
上記のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-010582