特許拒絶査定不服審判
2022-009649
未乾燥のペースト製茶
- 審判番号
- 2022-009649
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-139228外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月31日
- 審決日
- 2023年09月21日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】中戸 賢
- 分類
- P18 .121-Z (A23F) / P18 .113-Z (A23F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-139228「未乾燥のペースト製茶」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月 7日出願公開、特開2021- 71〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年6月24日の出願であって、令和3年12月15日付けで拒絶理由が通知され、令和4年1月31日に意見書が提出され、同年5月6日付けで拒絶査定がされ、同年同月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年5月31日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月31日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の明細書における記載
本件補正により、明細書は、次のとおり補正された。なお、下線は補正箇所を示すものである。
「【実施例】
0001
従来の乾燥製茶工程
茶摘み、生芽養生、蒸し上げ、露取り、揉捻、乾燥、揚げ火、梱包。
0002
本発明の未乾燥のペースト製茶工程
茶摘み、生芽養生、じく取り、蒸し上げ、ペースト加工、ボトル詰め、冷凍。
【実施例その2】
お茶の新芽の1心2葉を収穫→平なべに水を入れ小なべを浮かせ その中に新芽を入れ沸騰済みの湯を注ぎ 蓋をして100℃~80℃で保温のまま5分~10分待つ→内容物をそのまま全部ミキサー等にいれて15秒~30秒加工する→冷凍庫でゆっくり冷凍する。」
(2)本件補正前の明細書における記載
本件補正前の明細書における記載は次のとおりである。
「【実施例】
0001
従来の乾燥製茶工程
茶摘み、生芽養生、蒸し上げ、露取り、揉捻、乾燥、揚げ火、梱包。
0002
本発明の未乾燥のペースト製茶工程
茶摘み、生芽養生、じく取り、蒸し上げ、ペースト加工、ボトル詰め、冷凍。」
2 補正の適否
(1)新規事項の追加
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「【実施例その2】
お茶の新芽の1心2葉を収穫→平なべに水を入れ小なべを浮かせ その中に新芽を入れ沸騰済みの湯を注ぎ 蓋をして100℃~80℃で保温のまま5分~10分待つ→内容物をそのまま全部ミキサー等にいれて15秒~30秒加工する→冷凍庫でゆっくり冷凍する。」という事項は記載されていないし、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、その請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認められる。
<本願発明1>
「【請求項1】
未乾燥のペースト製茶」
<本願発明2>
「【請求項2】
未乾燥の冷凍製茶」
2 原査定の拒絶の理由
令和4年5月6日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の拒絶の理由の概要は、おおむね、次の理由を含むものである。
本願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、引用文献1又は2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
引用文献1:特開2011-217641号公報
引用文献2:特開平9-163930号公報
3 当審の判断
(1)引用文献1に基づく新規性・進歩性について
ア 引用文献1に記載された事項等
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、「茶葉の加工方法およびそれによって得られた茶葉加工品」に関して、おおむね次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「【0007】
また、本発明の茶葉加工品は、所定の水分を含む茶葉が、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理され、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
すなわち、本発明は、所定の水分を含む茶葉を、過熱水蒸気で水分が乾燥しないように加熱処理した後、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕加工を行う。
このように、水分を含む茶葉を過熱水蒸気で水分が乾燥しないように加熱処理することにより、茶葉に含まれる栄養価であるグルタミン酸およびポリフェノールが増加する。その茶葉を、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕加工を行う。このような水分を含んだピューレ状もしくはペースト状の茶葉加工品は、わざわざ急須を使用する手間をかけないでも、そのままお湯で薄めるだけで飲用に供することができる。また、そのまま食用に供することもできるうえ、お菓子等への添加用にそのまま使用することもできる。また、過熱水蒸気による殺菌効果で茶葉表面のほとんどの一般生菌等を死滅させることができる。したがって、柔らかくて流動性が高いピューレ状もしくはペースト状の破砕後の茶葉加工品でも、保存性が極めて良好で、酸化防止剤の添加等をする必要性が極めて低くなり、十分な品質保持期限が確保できるようになる。さらに、過熱水蒸気は、通常の水蒸気よりエネルギー量が多く短時間で加熱殺菌が可能となるうえ、無酸素状態で加熱殺菌ができるので、色、香り、味等の茶葉の品質の変化が極めて少ない。」
・「【0014】
図1は、本発明の茶葉の加工方法を示す工程図である。この方法は、所定の水分を含む茶葉を、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理した後、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕加工を行うものである。
【0015】
(A)は第1例であり、上記所定の水分を含む茶葉として、生茶葉を使用するものである。生茶葉は、収穫した状態のものをそのまま使用することができる。
【0016】
まず、上記生茶葉について、荒洗浄を行って付着した塵埃やゴミなどの除去を行う。
【0017】
ついで、上記所定の水分を含む生茶葉を、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理する加熱処理を行う。この生茶葉を過熱水蒸気で加熱処理する際、過熱水蒸気が直接茶葉に接触しないよう、布状シートで茶葉を覆うことが行われる。
【0018】
つぎに、加熱処理した生茶葉を、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕加工を行う(破砕処理)。
【0019】
その後、ピューレ状もしくはペースト状に破砕された生茶葉を、袋詰め、冷却、冷凍を行う。
【0020】
(B)は第2例であり、上記所定の水分を含む茶葉として、揉み上げ乾燥した茶葉を水に浸漬して戻した茶葉を使用するものである。
【0021】
まず、揉み上げ乾燥した茶葉について、荒洗浄を行って付着した塵埃やゴミなどの除去を行う。
【0022】
つぎに、上記茶葉を水に浸漬して膨潤させ、所定量の水分を含んだ状態にする。
【0023】
ついで、膨潤により所定の水分を含んだ茶葉を、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理する加熱処理を行う。この茶葉を過熱水蒸気で加熱処理する際、過熱水蒸気が直接茶葉に接触しないよう、布状シートで茶葉を覆うことが行われる。
【0024】
つぎに、加熱処理した茶葉を、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕加工を行う(破砕処理)。
【0025】
その後、ピューレ状もしくはペースト状に破砕した茶葉を、袋詰め、冷却、冷凍を行う。」
・「【実施例1】
【0051】
つぎに、実施例について説明する。
【0052】
まず、原料として22.3kgの生茶葉(八女茶)を準備し、荒洗浄ののち、250℃の過熱水蒸気で7分間の加熱処理を行った。この加熱処理により、茶葉の重量は14.68kgに減量した。
【0053】
その後、図3および図4に示す破砕装置により破砕処理を行った。破砕処理条件は、1100rpm×180秒とした。破砕処理によりストレーナ14を通過してピューレ状もしくはペースト状に破砕された茶葉の重量は、8.72kgであり、ストレーナ14を通過しなかった残渣は5.50kgであった。
【0054】
原料の生茶葉からの歩留まりは、39.1%、加熱処理後の茶葉からの歩留まりは59.4%であった。
【0055】
図5は、上述のようにピューレ状もしくはペースト状に破砕した茶葉(図示の左側)および、残渣である。
図6は、ピューレ状もしくはペースト状に破砕した茶葉を袋詰めにした状態である。」
(イ)引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、順に「引用発明1-1」及び「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1-1>
「所定の水分を含む茶葉が、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理され、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕された茶葉加工品。」
<引用発明1-2>
「所定の水分を含む茶葉が、水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理され、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕された茶葉を、袋詰め、冷却、冷凍を行った茶葉加工品。」
イ 本願発明1と引用発明1-1との対比・判断について
本願発明1と引用発明1-1を対比する。
引用発明1-1における「茶葉加工品」は、「水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理され、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕された」ものであり、【0008】より、「わざわざ急須を使用する手間をかけないでも、そのままお湯で薄めるだけで飲用に供することができる」ものであるから、本願発明1における「未乾燥のペースト製茶」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1とは一致し、相違点はない。
よって、本願発明1は引用発明1-1であるか、引用発明1-1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本願発明2と引用発明1-2との対比・判断について
本願発明2と引用発明1-2を対比する。
引用発明1-2における「茶葉加工品」は、「水分が乾燥しないように過熱水蒸気で加熱処理され、乾燥させないままストレーナを通過させることによりピューレ状もしくはペースト状に破砕された茶葉を、袋詰め、冷却、冷凍を行った」ものであるから、本願発明2における「未乾燥の冷凍製茶」に相当する。
そうすると、本願発明2と引用発明1-2とは一致し、相違点はない。
よって、本願発明2は引用発明1-2であるか、引用発明1-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)引用文献2に基づく新規性・進歩性について
ア 引用文献2に記載された事項等
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、「ペースト茶、粉末茶及びシート状茶の製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。
・「【0017】
【作用】蒸熱した茶葉にペースト状となるに適した量の水を加えて50℃までの低温で湿式粉砕機で切断、磨砕、衝撃を与えて粉砕し、粉砕されにくい茎や葉脈を2mm以下の網目状の篩に裏ごしや遠心篩機にかけることにより取り除くことができる。
【0018】又、蒸熱した茶葉に、ペースト状となるに適した量の水を加え、さらに細胞壁分解酵素を加えて上記の湿式粉砕機で粉砕し、あるいは、蒸熱した茶葉を細かく裁断し、ペースト状となるに適した量の水を加え、さらに細胞壁分解酵素を加えて攪拌しながら葉肉部の酵素分解を促し、粉砕や酵素分解されにくい繊維質の多い茎や葉脈を2mm以下の網目状の篩に裏ごしや遠心篩機にかけることにより取り除くことができる。
【0019】できたペースト茶は、瞬間凍結機にかけて冷凍保存を行って食品加工用原料として商品化される。」
・「【0022】
【実施例】以下、この発明の好適な実施例について説明する。
【0023】請求項1の実施例を次に示す。露天葉の1番茶の茶生葉500gを30秒間蒸熱した。これを中部工機(株)製PS3000A型フードプロセッサーに入れ、水を300ml加えて1時間粉砕を行った。終了時の茶温は、47℃であった。これを目開き1mmの標準篩にあけ、ゴムベラで裏ごしを行い、483gの濃緑色のペースト茶を得た。次にカテキンや香気成分の抽出をよくするために残った残さに熱湯を300ml加え、フードプロセッサーに入れ15分間粉砕抽出を行った。これを目開き1mmの標準篩にあけ、ゴムベラで裏ごしを行い243gのやや赤緑色のペースト茶を得た。この2段階に抽出したペースト茶を混合して726gのペースト茶サンプルAを得た。残った残さは174gであった。」
(イ)引用文献2に記載された発明
引用文献2に記載された事項を整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、順に「引用発明2-1」及び「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2-1>
「蒸熱した茶葉にペースト状となるに適した量の水を加えて50℃までの低温で湿式粉砕機で切断、磨砕、衝撃を与えて粉砕してできたペースト茶。」
<引用発明2-2>
「蒸熱した茶葉にペースト状となるに適した量の水を加えて50℃までの低温で湿式粉砕機で切断、磨砕、衝撃を与えて粉砕してできたペースト茶を瞬間凍結機にかけて冷凍保存を行った食品加工用原料。」
イ 本願発明1と引用発明2-1との対比・判断について
本願発明1と引用発明2-1を対比する。
引用発明2-1における「ペースト茶」は、乾燥工程を経ることなくペースト状であるから、本願発明1における「未乾燥のペースト製茶」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明2-1とは一致し、相違点はない。
よって、本願発明1は引用発明2-1であるか、引用発明2-1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本願発明2と引用発明2-2との対比・判断について
本願発明2と引用発明2-2を対比する。
引用発明2-2における「食品加工用原料」は、乾燥工程を経ることなく「ペースト茶を瞬間凍結機にかけて冷凍保存を行った」ものであるから、本願発明2における「未乾燥の冷凍製茶」に相当する。
そうすると、本願発明2と引用発明2-2とは一致し、相違点はない。
よって、本願発明2は引用発明2-2であるか、引用発明2-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「まず第一に本願発明は特許法第29条に該当するとの判断は混同によるものである 又本願発明者の中戸 賢は当業者には該当しないものであり 特許法第29条は適用できない つまり 特許法施行の昭和35年4月1日以降 及び本願出願者の昭和22年5月1日出生以降 本願出願者は普通の日本国民である 次に第29条1項は特許庁の外には出ていない また引用文献は概ねブロークン発明で有り本願発明とはレベルが違う 本査定は手続きの経緯にも記載した通り事件で有る
3 立証の趣旨 1 拒絶査定の引用文献は茶外茶であり紅茶やコーヒー以下の さくら茶及びハブ茶等と同類の 下等レベルのもので有る
2 引用文献は総じてブロークン発明で有り目的に準じて試行錯誤により開発されたもので無い 当業者が容易に発明できたものである
3 拒絶査定は混同により生じたもので瑕疵がある」と主張するが、当該主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるので、採用できない。
第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明1及び2、すなわち請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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