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特許拒絶査定不服審判

2022-008057

放送信号の受信装置

審判番号
2022-008057
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-132497外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月30日
審決日
2023年04月24日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .572-Z (H04N) / P18 .575-Z (H04N) / P18 .4 -Z (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法39条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第39条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-132497「放送信号の受信装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 10293〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成30年7月12日の出願であって、令和3年1月4日に手続補正書が提出され、令和4年1月31日付けで拒絶の理由が通知されると同時に指令書により、同日出願人による同日出願の発明と同一と認められるため、いずれか一の出願を定めて届け出るべき旨を出願人に命じ、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

なお、上記令和4年1月31日付け指令書の通知に対して、協議結果の届出はなされていない。

第2 令和4年5月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年5月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の概要

本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の段落【0007】についてするもので、そのうち、特許請求の範囲については、本件補正前に

「【請求項1】
放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためにアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信装置において、
前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、かつ前記アプリケーションサービス記述子設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
前記放送信号を受信する受信手段と、
前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
前記アプリケーション符号化方式が0x10である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段と、
取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する制御手段と、
を有する受信装置。」

とあったものを、本件補正後に

「【請求項1】
放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためにアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信装置において、
前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、かつ前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
前記放送信号を受信する受信手段と、
前記放送信号に含まれる前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段と、
取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する制御手段と、
を有する受信装置。」

と補正しようとするものである(下線部は、補正箇所を示す。)。

2 補正の適否について

(1)補正事項

本件補正後の請求項1に係る上記補正は、以下の補正事項からなる。

ア 補正事項1

本件補正前の請求項1に記載した発明の「前記アプリケーションサービス記述子設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子」を、「前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子」とする補正(以下「補正事項1」という。)。

イ 補正事項2

本件補正前の請求項1に記載した発明の「前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、」を、「前記放送信号に含まれる前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、」とする補正(以下「補正事項2」という。)。

ウ 補正事項3

本件補正前の請求項1に記載した発明の「前記アプリケーション符号化方式が0x10である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段」を、「前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段」とする補正(以下「補正事項3」という。)。

(2)補正の目的について

ア 補正事項1

補正事項1は誤記の訂正、または明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

イ 補正事項2

補正事項2は、本件補正前の請求項1に記載した発明の「前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」することについて、「前記放送信号に含まれる前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」することに限定するものである。

また、本件補正前の請求項1に記載した発明と、本件補正後の請求項1に記載した発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 補正事項3

補正事項3は、明細書の発明の詳細な説明を参照すると、設定された値が“0x1”である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を所望の拡張アプリケーションサービス記述子と判定すること(【0063】、【0085】、【0091】)の記載があるのみであって、設定された値が“0x10”のときの記載がないことから、誤記の訂正を目的とするものである。

(3)新規事項について

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0034】、【0060】、【0063】、図8等の記載に基づくものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

(4)独立特許要件について

上記(2)イのとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むことから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明

本件補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。符号AないしEは、分説するため当審にて付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。

「A 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためにアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信装置において、
B1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、
B2 かつ前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
C 前記放送信号を受信する受信手段と、
D1 前記放送信号に含まれる前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
D2 前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段と、
E 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する制御手段と、
A を有する受信装置。」

イ 同一出願人が同日出願した発明

本願と同一出願人による同日の出願である特願2018-132498号の請求項1に係る発明(以下、「同日発明」という。)は、令和4年5月30日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。符号a等は、本願補正発明の構成A等に対応させて当審で付与した。以下、符号a等を付した事項を「構成a」等という。

「a 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信方法において、
b1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、
b2 かつ前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
c 前記放送信号を受信し、
d1 前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し
d2 前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得し、
e 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する
a 受信方法。」

ウ 対比

本件補正発明と同日発明とを対比する。

(ア)構成Aについて

発明のカテゴリーに関して、本件補正発明は「受信装置」の発明であるのに対して、同日発明は「受信方法」の発明である点で相違する。

また、本件補正発明の構成Aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。

そうすると、同日発明と本件補正発明とは「放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する」点で共通するといえる。

ただし、アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本件補正発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するために」アプリケーション機能を付与した制御情報であるのに対して、同日発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報である点で相違する。

(イ)構成B1及びB2について

同日発明の構成b1及びb2と本件補正発明の構成B1及びB2とは、それぞれ文言上一致しており、同日発明の構成b1及びb2は、本件補正発明の構成B1及びB2にそれぞれ相当する。

(ウ)構成C、D2及びEについて

上記(ア)のとおり、本件補正発明と同日発明とは発明のカテゴリーが異なり、それに伴い、本件補正発明は「・・・を受信する受信手段」(構成C)、「・・・を取得する制御情報解析手段」(構成D2)、「・・・を制御する制御手段」(構成E)といった手段を有するものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信し、」(構成c)、「・・・を取得し、」(構成d2)、「・・・を制御する」(構成e)処理を行うものとして表現されている以外は、文言上一致している。

(エ)構成D1について

本件補正発明の構成D1は、上記(2)イの補正事項2で述べたとおり、本件補正前の請求項1に記載した発明の「前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」することをさらに限定したものであるから、同日発明と本件補正発明とは「前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」する点で共通する。

ただし、制御情報からの拡張アプリケーションサービス記述子の解析に関して、本件補正発明は「前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」するのに対して、同日発明はその旨の特定がない点で相違する。

したがって、本件補正発明と同日発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

<相違点1>

発明のカテゴリーに関して、本件補正発明は「受信装置」の発明であるのに対して、同日発明は「受信方法」の発明であり、それに伴い、本件補正発明は「・・・を受信する受信手段」、「・・・を取得する制御情報解析手段」、「・・・を制御する制御手段」といった手段を有するものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信し、」、「・・・を取得し、」、「・・・を制御する」処理を行うものとして表現されている点。

<相違点2>

アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本件補正発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するために」アプリケーション機能を付与した制御情報であるに対して、同日発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報である点。

<相違点3>

制御情報からの拡張アプリケーションサービス記述子の解析に関して、本件補正発明は「前記制御情報のMPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析」するのに対して、同日発明はその旨の特定がない点。

エ 判断

(ア)同日発明を先願とし、本件補正発明を後願とした場合について判断する。

a 相違点1について

上記相違点1の差異は「受信方法」と「受信装置」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、相違点1に係る両発明の構成に実質的な差異はない。

b 相違点2について

(a)本願明細書の【0004】及び特願2018-132498号の明細書の【0004】において、ともに先行技術文献の非特許文献2としてあげている「『高度広帯域衛星デジタル放送運用規定 技術資料』 ARIB TR-B39 1.7版 2018年4月12日改定、一般社団法人 電波産業会」(以下「非特許文献2」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付与。)。

「6.1 データコンテンツサービスの概要と運用
6.1.1 データコンテンツサービスとは
データコンテンツサービスとは、service_type=0x01で示されるデジタルTVサービスに付随し、映像・音声によるTVサービスに、HTML等のアプリケーション機能を同時に提供する、放送サービスの構成要素である。MPTにアプリケーションサービス記述子が配置されていることによりデータコンテンツサービスが当該サービスに付加されていることを示す。service_idで識別されservice_typeで分類される放送サービスの種類を意味するものではない。」(3・31頁)
「6.2 データコンテンツサービスに関わる制御情報の運用
本節では、データコンテンツサービスに関するメッセージ、テーブルなどの制御情報の運用について規定する。ただし、本節にメッセージ、テーブルなどの制御情報に関する、高度広帯域衛星デジタル放送における共通する運用については、TR-B39第一部第四編6章を参照のこと。
6.2.1 MPTの運用
データコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTにおいては以下の記述子を運用する。
6.2.1.1 アプリケーションサービス記述子
データコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域にアプリケーションサービス記述子を1つのみ必ず配置する。ただし、将来、本記述子が複数配置された場合でも、受信機は本版の運用に準拠した記述子を適用して動作すること。表6-3にアプリケーションサービス記述子の運用の詳細を示す。」(3・39頁)

(b)一方、制御情報のMPTに関して、本願明細書の【0005】には、発明が解決しようとする課題について「アプリケーションサービス記述子は、非特許文献2にあるようにデータコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域に、1つのみ必ず配置する運用になっている。しかし将来、・・・テレビジョン受信装置の能力に応じたデータコンテンツサービスを提供するためには、MPTのMPT記述子領域には、アプリケーションサービス記述子を複数配置することが考えられる。」と記載されており、【0034】には「MPTに複数の拡張アプリケーションサービス記述子を配置可能とする拡張MPTを生成する機能、および解析する機能を備える。」と記載されている。

同様に、特願2018-132498号の明細書の【0005】には、発明が解決しようとする課題について「アプリケーションサービス記述子は、非特許文献2にあるようにデータコンテンツサービスが付随する放送サービスのMPTのMPT記述子領域に、1つのみ必ず配置する運用になっている。しかし将来、・・・テレビジョン受信装置の能力に応じたデータコンテンツサービスを提供するためには、MPTのMPT記述子領域には、アプリケーションサービス記述子を複数配置することが考えられる。」と記載されており、【0034】には「MPTに複数の拡張アプリケーションサービス記述子を配置可能とする拡張MPTを生成する機能、および解析する機能を備える。」と記載されている。

(c)上記(a)、(b)の記載及び技術常識を考慮すると、本件補正発明及び同日発明における制御情報のMPTは、上記非特許文献2の「ただし、将来、本記述子が複数配置された場合でも、受信機は本版の運用に準拠した記述子を適用して動作すること。」という内容に沿ったものであり、本件補正発明及び同日発明は、いずれも「MPT」に複数の「アプリケーションサービス記述子」を配置可能とする運用を採用したものといえる。

(d)また、そのような運用を採用した本件補正発明及び同日発明においては「アプリケーションサービス記述子」及び「MTP」を、それぞれ、「拡張アプリケーションサービス記述子」及び「拡張MPT」と言い換えることができるものと認められる。

(e)ここで、上記(a)の記載によれば、MPTへの「アプリケーションサービス記述子」の配置は、「放送サービス」に付随する「データコンテンツサービス」を提供するためのものといえる。

また、技術常識を考慮すると、「放送サービス」は「放送番組」を放送信号で送信するものであるから、上記(a)において「放送サービス」に付随する「データコンテンツサービス」は、「放送番組」に付随する「データコンテンツサービス」ともいえる。

そうすると、同日発明(先願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」は、少なくとも構成b1において「アプリケーションサービス記述子」を「MPT」に含めている以上、放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためのものと認められ、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

c 相違点3について

上記bの(c)、(d)で述べたとおり、同日発明は、制御情報の「MPT」に複数の「アプリケーションサービス記述子」を配置可能とする運用を採用したものであるから、「アプリケーションサービス記述子」及び「MTP」を、それぞれ、「拡張アプリケーションサービス記述子」及び「拡張MPT」と言い換えできるものである。

また、そのような運用を採用した同日発明は、受信側において「拡張アプリケーションサービス記述子」を解析する際には、「MPT」を解析して「拡張アプリケーションサービス記述子」を取得することが必須の構成といえる。このことは、同日発明の構成b2の「拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され」という事項からも裏付けられる。

そうすると、同日発明(先願)において制御情報から「拡張アプリケーションサービス記述子」を解析することは、制御情報のMPTを解析して、MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合の「拡張アプリケーションサービス記述子」を解析するといえるものであり、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、本件補正発明(後願)は同日発明(先願)と実質的に同一である。

(イ)本件補正発明を先願とし、同日発明を後願とした場合について判断する。

a 相違点1について

上記相違点1の差異は「受信装置」と「受信方法」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、相違点1に係る両発明の構成に実質的な差異はない。

b 相違点2について

上記ウ(ア)で述べたとおり、本件補正発明の構成Aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。

したがって、本件補正発明(先願)の「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、同日発明(後願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」に相当し、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

c 相違点3について

上記相違点3の差異は、本件補正発明(先願)の発明特定事項である「前記放送信号に含まれる前記制御情報の前記MPTを解析し、前記MPTに拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、配置されている前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し」を、同日発明(後願)において「前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し」と上位概念として表現したことによる差異であり、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、同日発明(後願)は本件補正発明(先願)と実質的に同一である。

オ 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正発明と同日発明とは、どちらの発明に着目しても、他の発明と実質的に同一であるといえるから、本件補正発明は同日発明と同一である。

したがって、本件補正発明は、特許法第39条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定についてのむすび

本件補正は、上記2(4)のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の請求項1に記載されたものであるところ、本願発明を再掲すると、次のとおりのものである。符号AないしEは、分説するため当審にて付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。

「A 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためにアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信装置において、
B1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、
B2’かつ前記アプリケーションサービス記述子設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
C 前記放送信号を受信する受信手段と、
D1’前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し、
D2’前記アプリケーション符号化方式が0x10である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得する制御情報解析手段と、
E 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する制御手段と、
A’を有する受信装置。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

1.(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1

・引用文献等 1

<引用文献等一覧>

1.特願2018-132498号(特開2020-010294号)

3 引用された同一出願人が同日出願した発明

原査定の拒絶の理由に引用された特願2018-132498号(特開2020-010294号)の請求項1係る発明は、上記「第2」「2(4)イ」に「同日発明」として記載したとおりのものであって、再掲すると次のとおりである。

「a 放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する受信方法において、
b1 前記放送信号は、前記アプリケーションのAIT(アプリケーション制御情報テーブル)を取得可能なロケーション情報、前記アプリケーション機能で使用されるアプリケーション符号化方式、前記アプリケーション機能で使用されるデータコンテンツの解像度の情報を含むアプリケーションサービス記述子をMPT(MMTPackageTable)に含めて生成した前記制御情報を含め、
b2 かつ前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値を拡張するための拡張アプリケーションサービス記述子を拡張MPT(MMTPackageTable)に含めて送信され、
c 前記放送信号を受信し、
d1 前記制御情報の中に拡張アプリケーションサービス記述子が配置されている場合には、前記放送信号に含まれる前記制御情報から前記拡張アプリケーションサービス記述子を解析し
d2 前記アプリケーション符号化方式が0x1である拡張アプリケーションサービス記述子のうち最初に配置された拡張アプリケーションサービス記述子を取得し、
e 取得した拡張アプリケーションサービス記述子の前記ロケーション情報、前記アプリケーション符号化方式および前データコンテンツの解像度を用いて、前記アプリケーション機能を制御する
a 受信方法。」

4 対比

本願発明と同日発明とを対比する。

(1)構成Aについて

発明のカテゴリーに関して、本願発明は「受信装置」の発明であるのに対して、同日発明は「受信方法」の発明である点で相違する。

また、本願発明の構成Aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。

そうすると、同日発明と本願発明とは「放送番組の映像信号と音声信号と、前記放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報とをMMT・TLV方式で多重した放送信号を受信する」点で共通する。

ただし、アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本願発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するために」アプリケーション機能を付与した制御情報であるに対して、同日発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報である点で相違する。

(2)構成B1について

同日発明の構成b1と本願発明の構成B1とは、文言上一致しており、同日発明の構成b1は本願発明の構成B1に相当する。

(3)構成B2’について

上記「第2」「2」で補正事項1について述べたとおり、本願発明の構成B2’の「前記アプリケーションサービス記述子設定可能な値」は、誤記の訂正、または明りょうでない記載の釈明を目的として「前記アプリケーションサービス記述子に設定可能な値」に訂正されるべきものである。

そして、同日発明の構成b2と本願発明の構成B2’とは、上記の箇所以外は文言上一致しており、同日発明の構成b2は本願発明の構成B2’に相当する。

(4)構成CないしEについて

上記「第2」「2」で補正事項3について述べたとおり、本願発明の構成D2’中の「0x10」は「0x1」の誤記である。

そうすると、上記(1)のとおり、本願発明と同日発明とは発明のカテゴリーが異なり、それに伴い、本願発明は「・・・を受信する受信手段」(構成C)、「・・・を取得する制御情報解析手段」(構成D2’)、「・・・を制御する制御手段」(構成E)といった手段を有するものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信し、」(構成c)、「・・・を取得し、」(構成d2)、「・・・を制御する」(構成e)処理を行うものとして表現されている以外は、文言上一致している。

したがって、本願発明と同日発明とは、以下の2点で相違し、その余の点で一致している。

<相違点1>

発明のカテゴリーに関して、本願発明は「受信装置」の発明であるのに対して、同日発明は「受信方法」の発明であり、それに伴い、本願発明は「・・・を受信する受信手段」、「・・・を取得する制御情報解析手段」、「・・・を制御する制御手段」といった手段を有するものとして表現されているのに対して、同日発明は「・・・を受信し、」、「・・・を取得し、」、「・・・を制御する」処理を行うものとして表現されている点。

<相違点2>

アプリケーション機能を付与した制御情報に関して、本願発明は「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するために」アプリケーション機能を付与した制御情報であるに対して、同日発明は「放送番組に」アプリケーション機能を付与した制御情報である点。

5 判断

(1)同日発明を先願とし、本願発明を後願とした場合について判断する。

ア 相違点1について

上記相違点1の差異は「受信方法」と「受信装置」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、相違点1に係る両発明の構成に実質的な差異はない。

イ 相違点2について

上記「第2」「2(4)エ(ア)b」で検討した相違点2と同様に、同日発明(先願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」は、少なくとも構成b1において「アプリケーションサービス記述子」を「MPT」に含めている以上、放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するためのものと認められ、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、本願発明(後願)は同日発明(先願)と実質的に同一である。

(2)本願発明を先願とし、同日発明を後願とした場合について判断する。

ア 相違点1について

上記相違点1の差異は「受信装置」と「受信方法」というカテゴリーの差のみによって一応の相違が存在するのみで、単なるカテゴリー表現上の差異であり、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について

上記「第2」「(4)エ(イ)b」で検討した相違点2と同様に、本願発明の構成Aの「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、「放送番組に付随するデータコンテンツサービスを提供するため」のものであるから、当該「放送番組」に「アプリケーション機能」を付与するものといえる。

したがって、本願発明(先願)の「アプリケーション機能を付与した制御情報」は、同日発明(後願)の「放送番組にアプリケーション機能を付与した制御情報」に相当し、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

以上のとおりであるから、同日発明(後願)は本願発明(先願)と実質的に同一である。

(3)まとめ

以上のように、本願発明と同日発明とは、どちらの発明に着目しても、他の発明と実質的に同一であるといえるから、本願発明は同日発明と同一である。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-008057

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