特許拒絶査定不服審判
2023-014231
カプロラクタム製剤
- 審判番号
- 2023-014231
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-110866
- 請求日
- 2023年08月24日
- 審決日
- 2025年06月11日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】永島 秀郎
- 【請求人代理人】上島 類
- 【請求人代理人】江藤 聡明
- 【請求人代理人】倉脇 明子
- 【請求人代理人】山口 修
- 【請求人代理人】稲垣 謙司
- 【請求人代理人】長山 弘典
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 岸 智之
- 分類
- P18 .121-Z (C08G) / P18 .4 -Z (C08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法39条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第39条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第50条の2、特許法第17条第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-110866「カプロラクタム製剤」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月28日出願公開、特開2021-169612〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)5月10日(パリ条約による優先権主張 2015年5月12日、2016年1月29日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願である特願2017-559328号の一部を令和3年7月2日に新たな特許出願とした特願2021-110866号であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年7月14日付け:拒絶理由通知(特許法第50条の2の通知を伴
う拒絶理由通知)
同日付:協議指令
令和5年1月25日 :意見書、手続補正書の提出
同年4月20日付け:拒絶査定
同年8月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年8月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年8月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び14の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料
を含む重合可能な混合物(pM)の製造方法であって、
押出機中で、少なくとも800s-1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法。」
「【請求項14】
ポリアミド(P)の製造方法であって、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品であって、成分(D)の均一な分布を示す、成形品。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年1月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び14の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料
を含む重合可能な混合物(pM)の製造方法であって、
押出機中で、少なくとも500s-1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法。」
「【請求項14】
ポリアミド(P)の製造方法であって、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品。」
2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ずり速度」について、「少なくとも500s-1」から「少なくとも800s-1」と数値範囲を狭めるものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正の請求項14に係る補正は、本件補正前の請求項14に記載された発明を特定するために必要な事項である「請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品。」について、「成分(D)の均一な分布を示す」事項を特定するものであって、補正前の請求項14に記載された発明と補正後の請求項14に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)独立特許要件
本件補正後の請求項1及び14に記載される発明(以下、各々「本件補正発明1」、及び「本件補正発明14」、またこれらをまとめて「本件補正発明」という。)が特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
イ 特許法第39条第2項(同日出願)について
(ア)同日出願発明
原査定における同日出願3(特願2017-559328号(特表2018-518562号))は、本願の原出願であり、令和6年1月12日に特許第7418946号として登録されており、その請求項1に係る発明(以下、「同日出願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料
を含む重合可能な混合物(pM)の製造方法であって、
押出機中で、少なくとも500s -1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法。」
(イ)対比・判断
本件補正発明1と、同日出願発明1を対比すると、両者は、以下の点で一致し、以下の点でのみ一応相違する。
<一致点>
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料
を含む重合可能な混合物(pM)の製造方法であって、
押出機中で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法。
<相違点1>
押出機中で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合する際のずり速度が、本件補正発明1は「少なくとも800s -1」であるのに対し、同日出願発明1は「少なくとも500s -1」である点
そこで、上記相違点1について検討する。
両者は、ずり速度が「500~800未満s -1」の範囲では異なっているものの、「800s -1以上」の範囲においては重複一致している。
次いで、本件補正発明1が、ずり速度が「少なくとも800s -1」という数値範囲に臨界的意義を有することにより、同日出願発明1と実質的に異なるものであるか検討する。
本願明細書には、その段落【0051】に「本発明において、押出機のずり速度は、少なくとも500s-1、好ましくは少なくとも800s-1、特に好ましくは少なくとも1000s-1である。」と記載されてはいるものの、どのような点で好ましいのかについて具体的な説明はなく、実際に、ずり速度を「500~800未満s -1」と「少なくとも800s -1」とした実施例・比較例もないから、ずり速度を「少なくとも800s -1」とすることにより、「500~800未満s -1」としたものに比べて格別顕著な効果を奏するとはいえない。
そうすると、本件補正発明1の「少なくとも800s -1」という範囲に臨界的意義は認めることはできず、相違点1は、実質的な相違点ではない。
よって、本件補正発明1は、同日出願発明1と同一である。
(ウ)請求人の主張の検討
請求人は、審判請求書の第9ページにおいて、「(7)理由4(特許法第39条第2項)」について、「補正後の本願請求項1に係る発明、及び当該請求項1を引用する請求項2~15に係る発明は、同日出願3の請求項1~15に係る発明と同一ではないものと思料致します。」とのみ主張している。
しかしながら、上記(イ)で説示したとおり、本件補正発明1は、同日出願発明1と同一であるから、請求人の主張を首肯することができない。
(エ)小括
以上のとおり、本件補正発明1は、同日出願発明1と同一であるから、特許法第39条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
ウ 特許法第29条第1項第3号(新規性欠如)について
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に公開された引用文献1である、特表2013-538928号公報(公表日 平成25年10月17日)には、次の記載がある。なお、下線は当審により付与した。
「【請求項7】
重合のために、ラクタム及びラクトンから選ばれる、少なくとも1種のモノマー(M1)が使用され、
該少なくとも1種のモノマー(M1)は、重合の前に、少なくとも1種の添加剤(X1)と一緒に、粒状化物質に処理され、及び少なくとも1種のモノマー(M1)を含む粒状化物質が重合に使用され、
モノマー(M1)の混合物が、添加剤(X1)と一緒に、任意に、固体状態、又は融解した状態で、重合の前、又は重合中に、ラクタム及びラクトンから選ばれる、少なくとも1種の更なるモノマー(M2)、及び/又は少なくとも1種の更なる添加剤(X2)と混合されることを特徴とするアニオン重合によってポリアミド成形物を製造する方法。
【請求項8】
少なくとも1種のモノマー(M1)及び任意に更なるモノマー(M2)がそれぞれ相互に独立して、環に6~16個の炭素原子を有するラクタムを含む群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のモノマー(M1)の、少なくとも1種の添加剤(X1)と一緒にした、粒状化物質への処理は、乾燥した状態で成分を混合することによって行われることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~6の何れか1項に記載の方法によって得られる組成物(C)が、120~250℃の温度に加熱することによって重合されることを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の工程:
i)組成物(C)を、50℃~200℃の温度で融解させる工程;
j)融解した組成物(C)を、成形型の空洞部に導入する工程;
k)組成物(C)を、120℃~250℃の温度で重合する工程、
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリアミド成形物は、充填剤、及び/又は補強剤を、30~90質量%の範囲で有することを特徴とする請求項7~11の何れか1項に記載の方法。
・・・
【請求項14】
請求項7~12の何れか1項に記載の方法によって得ることができるポリアミド成形物。」
「【0013】
本発明の課題は、(触媒、及び/又は活性剤を更に加えることなく重合することができる)ラクタム及び/又はラクトンを含むモノマー-組成物を製造するための方法を提供することにある。更に、本発明の課題は、従来の単純な成形法を使用して、単純に及び安価に行われ、及び高い品質を有し及び残留するモノマーの含有量が低いポリアミド成形物を得ることができるポリアミド成形物を製造するための方法を提供することにある。」
「【0019】
使用されるモノマー組成物の、処理温度(モノマー融解)における低い粘性に基づいて、型内に存在するマトリックス材料の、非常に良好な充填性(空間内にいきわたること)(例えば、充填剤、又はファイバーマット)を達成することができる。これにより、本発明に従う方法を使用して製造されたポリアミド成分は、充填剤、ないしはファーバー材料の非常に高い含有量、例えば50~90質量%を有することができる。」
「【0058】
本発明は、ポリアミド成形物、特にキャストポリアミド成形物を、アニオン重合によって製造するための方法であって、重合のために、ラクタム及びラクトンから選ばれる(好ましくは環式ラクタム)、少なくとも1種のモノマー(M1)が使用され、該少なくとも1種のモノマー(M1)は、重合の前に、少なくとも1種の添加剤(X1)と一緒に、粒状化物質に処理され、及び少なくとも1種のモノマー(M1)を含む粒状化物質が重合に使用され、モノマー(M1)の混合物が、添加剤(X1)と一緒に、固体状態、又は融解した状態で、重合の前、又は重合中に、ラクタム及びラクトンから選ばれる(好ましくは環式ラクタム)、少なくとも1種の更なるモノマー(M2)、及び/又は少なくとも1種の更なる添加剤(X2)と混合されることを特徴とする方法に関する。
【0059】
ここで、本発明の好ましい一実施の形態では、ラクタム及びラクトンから選ばれる(好ましくは環式ラクタム(M1))、少なくとも1種のモノマー(M1)を含む粒状化物質を重合する工程は、ラクタム及びラクトンから選ばれる(好ましくは環式ラクタム(M1))、少なくとも1種のモノマー(M1)及び少なくとも1種の添加剤(X1)の粒状化物質の製造に直接的に続く。ここで、少なくとも1種のモノマー(M1)(好ましくは環式ラクタム)及び少なくとも1種の添加剤(X1)の粒状化物質の製造は、「既成化(複合化;compounding)」又は「予備既成化」と称される。
【0060】
少なくとも1種の添加剤(X1)が与えられた、少なくとも1種のモノマー(M1)(好ましくは環式ラクタム)は、従って、ラクタム製造設備内で、直接的に粒状化物質(又は相当する固体粒子)に加工処理することができる。これらの粒状化物質は、例えばキャストポリアミド成形物を製造するために、処理機に導入することができ、そして従来から公知の方法とは異なり、改めて添加剤を供給する必要がない。しかしながら、更なる添加剤を混合することは、任意のものとして保持される。
【0061】
ここで「粒状化物質」は、サイズが1mm~20mm、好ましくは平均サイズが2~15mmの粒子の他の「予備既成化」粒子、及び特に好ましくは平均サイズが4mm~10mmの粒子をも意味する。ここで、粒子は種々の形状を有することができる。これらは例えば、バレル形状、球形状、又はフレーク形状であることもできる。
【0062】
本発明の一実施の形態では、ラクタム及びラクトン(好ましくはラクタム)から選ばれる更なるモノマー(M2)及び/又は少なくとも1種の更なる添加剤(X2)との混合のための任意の工程が行われる。
【0063】
更なる一実施の形態では、更なるモノマー(M2)及び/又は少なくとも一種の更なる添加剤(X2)との混合のための任意の工程は行われない。
【0064】
本発明に従う好ましい一実施の形態では、少なくとも一種の添加剤(X1)及び任意の更なる添加剤(X2)は、それぞれ相互に独立して、触媒及び活性剤を含む群から選ばれる。触媒(K)及び活性剤(A)として、更に、組成物(C)を製造するための方法に関して上記に記載した化合物を使用することもできる。
【0065】
更に、本発明の対象は、本発明の方法によって製造することができるキャストポリアミド成形物にも関し、及び添加剤(X1)を<90質量%の量、好ましくは<60質量%の量、及び特に好ましくは<40質量%の量で含む固体状のカプロラクタム-調合物にも関する。
【0066】
添加剤及び/又は添加物質(Z)、例えば、上述した添加物質(Z)、触媒(K)、及び活性剤(A)、特にファイバー材料、乾燥剤、活性剤、又は触媒、鎖延長剤、安定化剤、又は衝撃改質剤を、既成化工程(複合化工程)の間に、単純な方法でラクタム、例えばε(イプシロン)-カプロラクタムに加えることができる。
【0067】
同様に、他の組成物を選ぶこともでき、例えば、予備既成化した活性剤-、及び触媒融解物を、ラクタム融解物に加えることができ、及びこれに、更なる工程で更なる添加剤を加えることもできる。
【0068】
本発明に従う方法の好ましい一実施の形態では、ラクタム及びラクトン(好ましくは少なくとも1種の環式ラクタム)の、少なくとも1種の添加剤(X1)と一緒にした、粒状化物質への処理は、成分を乾燥した状態で混合することによって行われる。
【0069】
アニオン重合はしばしば次のように行われる。各モノマー-成分(通常、2成分(M1)及び(M2))を、湿分を除去した状態で融解する。その内の一方の成分に触媒(例えばラクタマート)を、及び他の成分に活性剤(例えばイソシアネート誘導体)を加える。そして、通常の攪拌器を使用して、又は適切な混合機を使用して攪拌し、両方の成分が混合される。ここで、更なる添加剤、例えば3~50質量%、好ましくは8~18質量%の衝撃改質剤、安定化剤、難燃剤、又は他の添加剤を加えることもできる。
【0070】
好ましくは、キャスト重合装置は、各融解物のために、キャスティングトップまでの融解循環を有し、これによりホース及び管内の融解物が、常にポンプ駆動によって運動状態が保持されるべきである。本発明に従う実施の形態のために、これらの循環は、必ずしも必要ではない。
【0071】
モノマー(M1)及び/又は(M2)として、上述したモノマー(M)、好ましくは6~16個の炭素原子を有する環式ラクタム、特に好ましくはラウロラクタム、及び特に好ましくはε(イプシロン)-カプロラクタムが使用可能である。ここで、モノマー(M1)及びモノマー(M2)は、同一であっても良く、又は異なっていても良い。
【0072】
同様に、添加剤(X1)及び添加剤(X2)も、同一であっても良く、又は異なっていても良い。
【0073】
追加的に、上述した添加物質(Z)も使用可能である。特に、上述した充填剤、及び/又は補強剤(F)を使用することができ、ここで、充填剤、及び/又は補強剤(F)は、それぞれ相互に独立して、重合の前に更なる添加剤として、又は重合の間に加えることができる。
【0074】
上述したように充填剤、及び/又は補強剤(F)を使用することができる。好ましくは、充填剤、及び/又は補強剤(F)は、熱可塑性物質へ適用するためには通常の粒子サイズを有する材料、例えばカオリン、チョーク、珪灰石、又はタルク、カーボンファイバー、又はガラスファイバー、例えばグランドガラスファイバー、及び一方向のファイバー、好ましくはガラスファイバー、及びカーボンファイバーから形成されるテキスタイル構造体(織、及びレイドスクリム)を含む群から選ばれる。充填剤、及び/又は補強剤のための「のり(size)」として、熱可塑性物質のために使用される方法によって処理されるポリアミドに使用される「のり」を使用することができる。
【0075】
触媒(K)として、成分(K)について上述した化合物の少なくとも1種を使用することができる。これらには好ましくは、アルカリ金属ラクタメート、又はアルカリ土類金属ラクタメートが含まれ、そしてこれらは、ラクタム中の溶液の状態、特に好ましくはε(イプシロン)-カプロラクタム中のナトリウムカプロラクタメートである。
【0076】
使用する活性剤(A)として、上記に成分(A)のために記載した化合物の、少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、活性剤(A)は、N-アクリルラクタム、又はアクリルクロリド、又は好ましくは、脂肪族イソシアネート、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーを含む。活性剤(A)として、純粋な物質も、又は好ましくは溶液、例えばN-メチルピロリドン中のものも使用することができる。
【0077】
更なる添加物質(Z)、及び/又は添加剤(X)は、更に組成物(C)を製造するための方法に関して上述した添加物質(Z)であることができる。例えば、添加物質(Z)は、衝撃改質剤、難燃剤、核形成助剤、染料、充填オイル、安定化剤、界面改良剤、乾燥剤、及び離型剤を含む。」
「【0117】
・・・
実施例5.6:既成化(複合化)における短ガラスファイバーの添加
1.5gの触媒を既に含んでいる、101.5gの固体のフレーク状のε(イプシロン)-カプロラクタムに、1.0gの活性剤、及び40gの市販されている短ガラスファイバーを既に含み、ポリアミド用の「のり」(OCV社)を有する141.0gの固体のε(イプシロン)-カプロラクタムを混合し、融解し、及び5秒間にわたり攪拌した。
【0118】
この融解物を90℃で、150℃に予備加熱した鋼鉄製の工具に注ぎ込んだ。5分後、離型した。均一なブロックが得られた。
【0119】
外観:良好、残留カプロラクタム1.2%
実施例5.7:処理の前の短ガラスファイバーの添加
1.5gの触媒を既に含んでいる、101.5gの固体のフレーク状のε(イプシロン)-カプロラクタムに、1.0gの活性剤を含む101.0gの固体のε(イプシロン)-カプロラクタム、
ポリアミド用の「のり」(OCV社)を有する40gの市販されている短ガラスファイバーを混合し、融解し、及び5秒間にわたり攪拌した。
【0120】
この融解物を90℃で、150℃に予備加熱した鋼鉄製の工具(成形型)に注ぎ込んだ。5分後、離型した。均一なブロックが得られた。
【0121】
外観:良好、残留カプロラクタム1.6%
・・・」
(イ)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「高い品質を有し及び残留するモノマーの含有量が低いポリアミド成形物を得ることができるポリアミド成形物を製造するための方法を提供すること」(段落【0013】)を課題とする「【請求項7】
重合のために、ラクタム及びラクトンから選ばれる、少なくとも1種のモノマー(M1)が使用され、
該少なくとも1種のモノマー(M1)は、重合の前に、少なくとも1種の添加剤(X1)と一緒に、粒状化物質に処理され、及び少なくとも1種のモノマー(M1)を含む粒状化物質が重合に使用され、
モノマー(M1)の混合物が、添加剤(X1)と一緒に、任意に、固体状態、又は融解した状態で、重合の前、又は重合中に、ラクタム及びラクトンから選ばれる、少なくとも1種の更なるモノマー(M2)、及び/又は少なくとも1種の更なる添加剤(X2)と混合されることを特徴とするアニオン重合によってポリアミド成形物を製造する方法。
・・・
【請求項12】
ポリアミド成形物は、充填剤、及び/又は補強剤を、30~90質量%の範囲で有することを特徴とする請求項7~11の何れか1項に記載の方法。」及び
「【請求項14】
請求項7~12の何れか1項に記載の方法によって得ることができるポリアミド成形物。」に関する技術が開示されている。そして、当該請求項14の実施態様である実施例5.6に着目すると、以下の発明が記載されているものと認められる。
「1.5gの触媒を既に含んでいる、101.5gの固体のフレーク状のε(イプシロン)-カプロラクタムに、1.0gの活性剤、及び40gの市販されている短ガラスファイバーを既に含み、ポリアミド用の「のり」(OCV社)を有する141.0gの固体のε(イプシロン)-カプロラクタムを混合し、融解し、及び5秒間にわたり攪拌し、この融解物を90℃で、150℃に予備加熱した鋼鉄製の工具に注ぎ込み5分後、離型して得られた、外観が良好で、残留カプロラクタムが1.2%である、均一なブロック。」(以下、「引用発明」という。)
(ウ)対比・判断
a 本件補正発明14
本件補正発明14は、本件補正発明1を引用しているところ、引用された事項を書き下すと以下のようになる。
「ポリアミド(P)の製造方法であって、以下に記載の方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品であって、成分(D)の均一な分布を示す、成形品。
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料
を含む重合可能な混合物(pM)の製造方法であって、
押出機中で、少なくとも800s-1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法。」
b 対比
本件補正発明14と引用発明とを対比する。
引用発明の「ε(イプシロン)-カプロラクタム」、「触媒」、「活性剤」及び「短ガラスファイバー」は、各々本件補正発明14の「(A)少なくとも1種のラクタム」、「(B)少なくとも1種の触媒」、「(C)少なくとも1種の活性剤」、及び「(D)少なくとも1種の繊維材料」に相当する。また、引用発明の「融解物」は、ε(イプシロン)-カプロラクタム、触媒、活性剤及び短ガラスファイバーを含むものであるから、本件補正発明14の「重合可能な混合物(pM)」に相当し、引用発明の「ブロック」は、当該融解物を90℃で、150℃に予備加熱した鋼鉄製の工具に注ぎ込ん」でいることから、「融解物」が重合して「ポリアミド成形物」となっているといえるから、本件補正発明14の「ポリアミド(P)の製造方法であって、以下に記載の方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品であって、成分(D)の均一な分布を示す、成形品」における「重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品」である限りにおいて相当する。
そうすると、両者は以下の一致点で一致し、以下の相違点で一応相違する。
<一致点>
以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料を含む、重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られるポリアミド(P)製の成形品。
<相違点A>
ポリアミド(P)製の成形品が、本件補正発明14が「押出機中で、少なくとも800s-1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む、方法により得られる重合可能な混合物(pM)を重合させることを含む方法により得られる」と共に、「成分(D)の均一な分布を示す」ことが特定されているのに対し、引用発明は「1.5gの触媒を既に含んでいる、101.5gの固体のフレーク状のε(イプシロン)-カプロラクタムに、1.0gの活性剤、及び40gの市販されている短ガラスファイバーを既に含み、ポリアミド用の「のり」(OCV社)を有する141.0gの固体のε(イプシロン)-カプロラクタムを混合し、融解し、及び5秒間にわたり攪拌し、この融解物を90℃で、150℃に予備加熱した鋼鉄製の工具に注ぎ込み5分後、離型して得られた」ものであり、「成分(D)の均一な分布を示す」ことが不明な点
c <相違点A>の検討
(a)プロダクト・バイ・プロセス・クレームに係る新規性欠如の判断手法について
最高裁判所において、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。」(最高裁判所平成24年(受)第1204号同27年6月5日第二小法廷判決・民集69巻4号700頁)と判示されている。
すなわち、「物」に係る発明において、引用発明との相違点が、「製造方法」による特定であったとしても、「物」としては、最終的に得られた「生産物」自体を意味しているものと解釈し、最終的に得られた「生産物」として引用発明と区別できない場合、その発明は新規性を欠如するものと判断するのが相当である。
(b)判断
そこで、以下、上記判断手法に従って、本件補正発明14について判断する。
本件補正発明14は、製造方法により「物」に係る発明を特定しようとするところ、「物」として、「以下の成分:
(A)少なくとも1種のラクタム、
(B)少なくとも1種の触媒、
(C)少なくとも1種の活性剤、及び
(D)少なくとも1種の繊維材料を含む」「重合可能な混合物(pM)を重合させ」た「ポリアミド(P)製の成形品」であって、「成分(D)の均一な分布を示す」ことまでは特定されているものの、「押出機中で、少なくとも800s-1のずり速度で、成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することを含み、
前記押出機中で成分(A)、(B)、(C)及び成分(D)を混合することが、以下の工程:
a)前記押出機中に、成分(A)及び(D)を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
b)前記押出機中の前記第1の混合物(M1)に成分(C)を添加して、前記押出機中で第2の混合物(M2)を得る工程と、
c)前記押出機中の前記第2の混合物(M2)に成分(B)を添加して、前記押出機中で重合可能な混合物(pM)を得る工程と
を含む」「製造方法」に由来する「物」の「構造、特性」までは定かではない。
そこで、「製造方法」に由来する「物」の「構造、特性」が具体的にどのようなものであるのか、本願明細書の記載を参酌してみる。
本願明細書には、以下の記載がある。
「本発明で製造される重合可能な混合物(pM)を用いて製造されるポリアミド(P)、及びそれら製の成形品は、さらに、少なくとも1種の繊維材料(成分(D))の特に均一な分布を示し、これは、成形品の特に良好な機械的安定性及び強化を提供する。」(段落【0014】)
「本発明で製造される重合可能な混合物(pM)は、射出成形プロセスに特に適している。当該射出成形プロセスにおいて、驚いたことに、少なくとも1種の繊維材料(成分(D))が重合可能な混合物(pM)中に含まれているが、しかし、射出成形プロセスの間にノズルは塞がれない。さらに、重合可能な混合物(pM)の重合は特に完全であり、これは、得られるポリアミド(P)中に低い残留モノマー含量をもたらす。」(段落【0015】)
また、本願明細書には、どの程度の成分(D)の均一な分布を示すか、ポリアミド(P)中の残留モノマーの含量がどの程度のものかについて具体的な記載はなく、本件補正発明14に係る「ポリアミド(P)製の成形品」を具体的に製造した実施例は一切開示されていない。
そうすると、本件補正発明14である「ポリアミド(P)製の成形品」の製造方法に由来する「構造、特性」は、上記記載より、「少なくとも1種の繊維材料(成分(D))の特に均一な分布を示し」、「低い残留モノマー含量をもたらす」ものと理解するのが相当である。
そこで、引用発明をみてみる。
引用発明は、「残留カプロラクタムが1.2%」という特性を有するものである。ここで、引用文献1の段落【0014】によれば、課題の一つが「最終製品中のモノマーの含有量は、(例えば匂いが少なくなるように)可能な限り少ないものであるべきである。」というものなので、引用発明の課題が、最終製品中のモノマーの含有量を可能な限り少ないものとすることであるから、引用発明は、本願明細書に記載されていた「得られるポリアミド(P)中に低い残留モノマー含量をもたらす」という特性を有するものといえる。
ところで、本件補正発明14は、「成分(D)の均一な分布を示す」ものであるところ、「均一な分布」がどの程度均一なのか「定量的」には特定されていない。一方、引用発明は、その外観が「良好」なものであるところ、引用文献1の段落【0019】には、「使用されるモノマー組成物の、処理温度(モノマー融解)における低い粘性に基づいて、型内に存在するマトリックス材料の、非常に良好な充填性(空間内にいきわたること)(例えば、充填剤、又はファイバーマット)を達成することができる。」ことが記載されていることから、外観が「良好」であることは、短ガラスファイバーを含んだ融解物が非常に良好な充填性を示すものといえる。ここで、充填剤がマトリックス材料中に不均質に分散すると、充填性が悪くなることは本願優先日時の技術常識(例えば、特開2003-277477号公報の段落【0031】、特開2013-039773号公報の段落【0010】等を参照。)であることを参酌すると、引用発明においても、融解物中の短ガラスファイバーがマトリックス材料中に分散され、成形品中の短ガラスファイバーが、ある程度「均一な分布」となっている蓋然性が高いといえる。
してみると、引用発明は、本件補正発明14である「ポリアミド(P)製の成形品」の製造方法に由来する「構造、特性」を有するといえ、本件補正発明14を最終的に得られた「生産物」として引用発明と区別することができないため、相違点Aは実質的な相違点ではない。
したがって、本件補正発明14は引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明である。
(エ)請求人の主張の検討
請求人は、審判請求書の第5~8ページにおいて、「(5)理由1及び2(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)」について、
引用文献1は、本件補正発明14における
(i)成分 (A)、(B)、(C)、及び(D)は、少なくとも少なくとも800s-1のずり速度にて押出機中で混合されて、重合可能な混合物(pM)が得られる点
(ii)成形品が成分(D)の均一な分布を示すものである点
を記載しておらず、このような製造方法の相違によって、低い残留モノマー含量を示す、成分(D)の特に均一な分布を示し成形品の特に良好な機械的安定性及び強化を持たすという優れた特性を示す旨、
さらに、当該重合可能な混合物(pM)の重合によって得ることができるポリアミド(P)は、従来技術に記載されているポリアミドよりも、低い残留モノマー含量を示すという優れた特性をも示し、当該重合可能な混合物(pM)を用いて製造されるポリアミド(P)、及びそれらの成形品は、さらに、少なくとも1種の繊維材料(成分(D))の特に均一な分布を示し、つまり、成形品の特に良好な機械的安定性及び強化をもたらすという優れた特性を示す旨、主張している。
しかしながら、上記(ウ)で説示したとおり、本件補正発明14を、最終的に得られた「生産物」として引用発明と区別することができないため、(i)の点は実質的な相違点とならない。
また、上記(ウ)で説示したとおり、引用発明においても、融解物中の短ガラスファイバーがマトリックス材料中に分散され、成形品中の短ガラスファイバーが、ある程度「均一な分布」となっている蓋然性が高いといえるから、(ii)の点も実質的な相違点とならない。
さらに、上記(ウ)で説示したとおり、引用発明は、本願明細書に記載されていた「得られるポリアミド(P)中に低い残留モノマー含量をもたらす」という特性を有するものといえる。
このため、請求人の主張を首肯することができない。
(オ)小括
以上のとおり、本件補正発明14は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年8月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年1月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び14に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明14」という。)は、その請求項1及び14に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項14についての引用文献1に基づく理由(理由1:新規性欠如)、及び、請求項1についての理由(理由4:同日出願)の要旨は、
理由1(新規性欠如):この出願の請求項14に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明(又は引用文献2に記載された発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
理由4(同日出願):この出願の請求項1に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の同日出願3に係る請求項1に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。
引用文献1:特表2013-538928号公報
同日出願3:特願2017-559328号(特表2018-518562号、特許第7418946号)
3 理由1(新規性欠如)
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)ウ(ア)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明1を引用する本願発明14は、前記第2の[理由]2(2)ウ(ウ)で検討した本件補正発明14から、「成分(D)の均一な分布を示す」に係る限定事項を削除したものである。
また、本願発明14が引用する本願発明1は、前記第2の[理由]2(2)ウ(ウ)で検討した本件補正発明1のずり速度「少なくとも800s-1」が「少なくとも500s-1」と範囲が広くなったものである。
そうすると、本願発明14の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明14が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明であるから、本願発明14も、引用文献1に記載された発明である。
4 理由4(同日出願)
(1)同日出願
原査定の拒絶の理由で引用された同日出願3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)イ(ア)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明1は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明1のずり速度「少なくとも800s-1」が「少なくとも500s-1」と、「少なくとも800s-1」の範囲を含んだ上、範囲が広くなったものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含む本件補正発明1が、前記第2の[理由]2(2)イ(イ)に記載したとおり、同日出願3に係る請求項1に係る発明と同一であるから、本願発明1も、同日出願3に係る請求項1に係る発明と同一である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができず、また、本願発明14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-014231