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特許拒絶査定不服審判

2022-007841

回路基板、半導体装置、電力変換装置及び移動体

審判番号
2022-007841
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-501393外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月25日
審決日
2023年11月08日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H05K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-501393「回路基板、半導体装置、電力変換装置及び移動体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月 3日国際公開、WO2020/174535〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(平成31年)2月25日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和 3年10月12日付け:拒絶理由通知
令和 3年11月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 3月28日付け:拒絶査定
令和 4年 5月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 8月 2日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 5年 8月31日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和5年8月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項より特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「プリント基板(10)と、
前記プリント基板(10)上に実装される第1の電子部品(101)と、
前記プリント基板(10)上に実装される第2の電子部品(102)と、
前記第1の電子部品(101)に接触する、温度が上昇した場合に視覚的な変化が生じる示温性樹脂(12)とを備え、
前記第2の電子部品(102)に接触する示温性樹脂は存在せず、
前記第1の電子部品(101)は、正常動作時に発熱しない電子部品であり、
前記第2の電子部品(102)は、正常動作時に発熱する電子部品である
回路基板(1)。」

第3 令和5年8月2日付け拒絶理由通知の概要

本願の請求項1に対して令和5年8月2日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2(進歩性)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明又は引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

1.実願昭57-126742号(実開昭59-31268号)のマイクロフィルム

2.特開平9-283307号公報

3.特開2002-117689号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献の記載及び引用発明

(1)当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(実願昭57-126742号(実開昭59-31268号)のマイクロフィルム)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。

ア 「1.考案の名称
プリント基板装置
2.実用新案登録請求の範囲
(1) プリント基板にチップ形電子部品を実装したものであって、少なくとも前記チップ形電子部品の表面に所定温度以上で変色する絶縁性ペイントを塗着したことを特徴とするプリント基板装置。
続きを表示(全11行)
3.考案の詳細な説明
技術分野
この考案はチップ形電子部品をプリント基板に半田接続したプリント基板装置に関する。
背景技術
テレビ用チューナや小形ラジオ、テープレコーダなどの電気機器に使用されるプリント基板に実装される抵抗やコンデンサ等の電子部品はミリ単位の大きさでチップ化される傾向にあり、この傾向は特に消費電力の極めて小さい抵抗に著しい。チップ形電子部品(以下単にチップ部品と称す)を実装したプリント基板装置の製造はプリント基板の要所にチップ部品を接着剤で接着して仮止めする工程、仮止めされた複数のチップ部品を半田浸漬にてプリント基板に一括して半田接続する工程、半田付けされた各チップ部品の実装状態をチェックする工程で行われるのが一般的である。
・・・中略・・・。最後の実装チェック工程はプリント基板に半田付けされたチップ部品の位置ずれや姿勢不良、半田付け不良、半田によるチップ部品電極間のショートなどの実装形態の不良や、チップ部品自体の内部不良を目視検査や通電試験でチェックする工程で行われる。チップ部品がインピーダンスの低い回路に用いる抵抗のような場合、例えばバイアス回路のショートが、チップ抵抗に過電流を流すことになり、過電流による発熱でチップ抵抗の変質特に、抵抗値の高化現象が発生する。これは、通常使用状態で発生するおそれもあり、過電流発熱は、チップ部品の信頼性を極度に低下させる。
ところで、プリント基板に実装されたチップ形抵抗を含むチップ部品の表面は半田やアルミニウムなどの金属による電極の地肌やセラミックなどの部品素材の地肌、単なる絶縁皮膜の地肌が露出しているだけで、通電時に加熱しても表面の色が大きく変化することが無く、変色状況を見分けることが極めて難しく、通電検査でも信頼性判定は、不可能であった。」

(1頁2行ないし3頁16行)

イ 「本考案の特徴はチップ部品の表面に所定温度以上で変色する絶縁性サーモペイントを塗着し、このサーモペイントの変色状況の目視判断で、チップ部品の実装チェックを行うことである。サーモペイントのチップ部品への塗着はプリント基板にチップ部品を実装する前段階で行う場合や、プリント基板にチップ部品を実装した後にチップ部品だけに選択的に行う場合、或いはチップ部品を実装したプリント基板の実装面全域に行う場合などが可能である。」

(4頁6ないし15行)

ウ 「考案を実施するための最良の形態
第1図及び第2図の第1実施例において、(1)はプリント基板、(2)はプリント基板(1)に半田付けされた複数のチップ部品である。プリント基板(1)は絶縁基板(3)の片面に銅箔等の導電パターン(4)を印刷配線し、導電パターン(4)のチップ部品半田付け予定部分(4)’を残して導電パターン(4)と絶縁基板(3)上に半田レジスト膜(5)を被着形成したものである。チップ備品(1)は例えば角形の抵抗であって、両端部に半田付着などの手段で電極(6)が形成される。この第1実施例の特徴はチップ部品(2)の中央部表面上にサーモペイント膜(7)を予め被着形成して、このチップ部品(2)を従来要領でプリント基板(1)に仮固定し、電極(6)を導電パターン(4)の半田付け予定部分に(4)’上に半田(8)で接続固定する。」(5頁2行ないし17行)

エ

[図:0001405250000001.jpg]

(2)引用文献1の上記記載によれば、次の事項が記載されている。

ア 上記(1)アによれば、引用文献1にはプリント基板装置が記載されている。

イ 上記(1)ウによれば、プリント基板装置は、絶縁基板に導電パターンを印刷配線したプリント基板を有する。

ウ 上記(1)アの「プリント基板にチップ形電子部品を実装した」、上記(1)ウの「プリント基板(1)に半田付けされた複数のチップ部品」との記載によれば、プリント基板にはチップ部品が実装される。

また、上記(1)アの「プリント基板に実装される抵抗やコンデンサ等の電子部品はミリ単位の大きさでチップ化される傾向にあり、この傾向は特に消費電力の極めて小さい抵抗に著しい。」、「プリント基板に実装されたチップ形抵抗を含むチップ部品の表面は・・・、通電時に加熱しても表面の色が大きく変化することが無く、変色状況を見分けることが極めて難しく、通電検査でも信頼性判定は、不可能であった。」との記載によれば、引用文献1には、チップ部品が抵抗であることも記載されているといえる。

よって、引用文献1に記載されたプリント基板装置は、プリント基板に実装される抵抗であるチップ部品を有するといえる。

エ 上記(1)アの「チップ形電子部品の表面に所定温度以上で変色する絶縁性ペイントを塗着した」、上記(1)イの「チップ部品の表面に所定温度以上で変色する絶縁性サーモペイントを塗着し」、上記(1)ウの「チップ部品(2)の中央部表面上にサーモペイント膜(7)を予め被着形成して」との記載によれば、引用文献1には、チップ部品の表面上に所定温度以上で変色するサーモペイント膜を形成することが記載されている。

よって、引用文献1に記載されたプリント基板装置は、チップ部品の表面上に形成され、所定温度以上で変色するサーモペイント膜を有するといえる。

(3)上記(2)によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「絶縁基板に導電パターンを印刷配線したプリント基板と、
前記プリント基板に実装される抵抗であるチップ部品と、
前記チップ部品の表面上に形成され、所定温度以上で変色するサーモペイント膜とを有する、プリント基板装置。」

第5 対比・判断

1 対比

(1)本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「プリント基板」は、本願発明の「プリント基板(10)」に相当する。

イ 引用発明の「抵抗であるチップ部品」は、電子部品であり、「プリント基板に実装される」から、本願発明の「プリント基板(10)上に実装される第1の電子部品(101)」に相当する。

ウ 引用発明の「サーモペイント膜」は、「前記チップ部品の表面上に形成され、所定温度以上で変色する」ことから示温性部材といえ、本願発明の「示温性樹脂(12)」とは「前記第1の電子部品(101)に接触する、温度が上昇した場合に視覚的な変化が生じる示温性部材」である点で一致する。

ただし、示温性部材に関し、本願発明は「示温性樹脂(12)」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

エ 上記第4の1(1)アによれば、引用文献1には、チップ部品の不良を通電試験の際の発熱状態によりチェックすることや、通電試験により加熱が発生しても表面の変色状況を見分けることが極めて難しいこと、等が記載されていることからみて、引用発明のチップ部品は、異常動作時に発熱することが前提であって、当該異常動作時の発熱を、チップ部品に塗着したサーモペイント膜の変色により検出することが、引用文献1により開示された技術思想であると認められる。

そうすると、仮にチップ部品が正常動作時においてまで発熱し、サーモペイント膜を変色させるものであれば、引用文献1に開示される技術思想自体が成り立たないと解される。

したがって、引用発明の「抵抗であるチップ部品」は、正常動作時には、サーモペイント膜の変色との関係においては、発熱しないものと解すべきであるから、本願発明の「第1の電子部品(101)」とは、少なくとも「温度が上昇した場合に視覚的な変化が生じる示温性部材」との関係においては、「正常動作時に発熱しない電子部品であ」る点で共通するといえる。

オ 本願発明は、「プリント基板(10)上に実装され」、「正常動作時に発熱する電子部品である」「第2の電子部品(102)」を備え、「第2の電子部品(102)に接触する示温性樹脂は存在」しないのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

カ 引用発明の「プリント基板装置」は、「導電パターンを印刷配線したプリント基板」と「チップ部品」を有することから、本願発明の「回路基板(1)」に相当する。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明との一致点、及び、相違点は以下のとおりである。

(一致点)

「プリント基板(10)と、
前記プリント基板(10)上に実装される第1の電子部品(101)と、
前記第1の電子部品(101)に接触する、温度が上昇した場合に視覚的な変化が生じる示温性部材とを備え、
前記第1の電子部品(101)は、正常動作時に発熱しない電子部品である、
回路基板(1)。」

(相違点1)

示温性部材に関し、本願発明は「示温性樹脂(12)」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

(相違点2)

本願発明は、「プリント基板(10)上に実装され」、「正常動作時に発熱する電子部品である」「第2の電子部品(102)」を備え、「第2の電子部品(102)に接触する示温性樹脂は存在」しないのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

2 相違点に対する判断

(1)相違点1について

サーモペイントに見られるような示温性塗料に樹脂が含有されていることは、文献を挙げるまでもなく技術常識であるから、当業者であれば、引用発明における「サーモペイント膜」においても樹脂が含有されていると理解するといえる。

してみると、相違点1は実質的な相違ではない。

また、仮に相違点1が実質的な相違であるとしても、樹脂を含んだサーモペイント膜を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について

一般に、パワートランジスタとチップ抵抗を実装したプリント基板は周知技術である(例えば、実願昭58-136073号(実開昭60-42759号)のマイクロフィルムの1頁13ないし19行、2頁13行ないし3頁9行、第1図、第2図、特開2008-166310号公報の段落【0011】、図1、特開平9-232748号公報の段落【0015】、【0020】、【0022】、図1を参照。)ことから、引用発明のプリント基板として該周知技術に係るプリント基板を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、引用発明は、抵抗であるチップ部品にサーモペイント膜を形成するものであるから、引用発明のプリント基板として該周知技術に係るプリント基板を採用した場合に、チップ抵抗のみにサーモペイント膜を形成することは、当然に想定し得た事項に過ぎない。

なお、上記第4の1(1)アによれば、引用文献1には、過電流による発熱でチップ部品の変質が発生する場合があるところ、チップ部品の表面は通電時に過熱しても表面の色が大きく変色することが無く、変色状況を見分けることが極めて難しく、通電検査でも信頼性判定が不可能である(3頁4ないし16行)ことから、チップ部品の表面に所定温度以上で変色する絶縁性サーモペイントを塗着し、サーモペイントの変色状況の目視判断で、チップ部品の実装チェックを行うこと(4頁6ないし10行)が記載されている。ここで、引用発明のプリント基板に前記周知のプリント基板を採用した場合、チップ抵抗に形成されたサーモペイント膜をさらにパワートランジスタまで形成すると、パワートランジスタの発熱によりチップ抵抗上のサーモペイント膜に影響があることは当業者であれば当然予測し得たことであり、チップ抵抗に対する目視判断における信頼性を高める上では、通常動作時に発熱するパワートランジスタにまで、あえてサーモペイント膜を形成する必要性はなく、むしろパワートランジスタの発熱を感知しないように配慮すべきものであることは明らかである。

してみれば、引用発明のプリント基板に上記周知技術に係るプリント基板を採用した場合、パワートランジスタにサーモペイント膜が接触しないようにすることは格別なことではない。

よって、相違点2に係る構成は、引用発明と上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、これらの相違点に係る構成を総合的に勘案しても、本願発明の作用効果が、当業者の予測を超える格別顕著なものということもできない。

(3)まとめ

以上から、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第6 審判請求人の主張について

1 請求人は、令和5年8月31日提出の意見書において以下の点のとおり主張する。

(ア)引例1に開示のチップ部品2に関し、正常動作時の発熱の有無は何ら述べられていない。(2頁下から16ないし15行)

(イ)複数のチップ部品に対し、正常動作時の発熱の有無に基づき、サーモペイントの塗着を選択的に行うことに関し、引例1では開示も示唆もなされていない。(2頁下から10ないし8行)

(ウ)また、「チップ部品の全てが正常動作時に発熱しない」こと、及び「リード部品の全てが正常動作時に発熱する」ことに関し、引例1では開示も示唆もなされていない。(2頁下から3ないし1行)

(エ)「正常動作時に発熱するリード部品等にサーモペイントを塗着しない」ことに関し、引例1では開示も示唆もなされていない。(3頁1ないし2行)

2 上記主張について検討する。

・上記(ア)について

上記「第5 1(1)エ」で述べたとおり、引用発明の「抵抗であるチップ部品」は、サーモペイント膜の変色との関係において、正常動作時には発熱しないことは、当業者にとって明らかであるといえる。

・上記(イ)及び(エ)について

一般に、パワートランジスタとチップ抵抗を表面上に実装したプリント基板は周知技術であって、このような周知技術に係るプリント基板を引用発明のプリント基板として採用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その場合、パワートランジスタにサーモペイント膜が接触しないようにすることは格別なことではないことは、上記「第5 2(2)」で述べたとおりであり、引用文献1に記載のプリント基板において、「正常動作時に発熱する電子部品」の実装の有無が明らかでないことは、上記した相違点2についての判断を左右するものではない。

・上記(ウ)について

本願発明は、「回路基板」が「第1の電子部品(101)」と「第2の電子部品(102)」とを備え、「前記第1の電子部品(101)は、正常動作時に発熱しない電子部品であり、前記第2の電子部品(102)は、正常動作時に発熱する電子部品である」と規定するのみであって、「第1の電子部品」の全てが「正常動作時に発熱しない電子部品であり」、「第2の電子部品」の全てが「正常動作時に発熱する電子部品である」ことは何ら記載されていないから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲に基づくものとはいえない。

3 まとめ

上記2によれば、審判請求人の主張は採用できない。

第7 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007841

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