2022-007701
回転電機
- 審判番号
- 2022-007701
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-140738外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2023年05月24日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .55 -WZ (H02K) / P18 .121-WZ (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成30年7月26日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである
令和 3年 8月31日付け 拒絶理由通知書
令和 3年10月18日 意見書、手続補正書の提出
令和 4年 3月 2日付け 拒絶査定
令和 4年 5月23日 審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年5月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】周方向に極性が交互となる複数の磁極を含む磁石部(42,239)を有する界磁子(40,204,234)と、多相の電機子巻線(51,202)を有する電機子(50,203,237)と、を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかを回転子とする回転電機(10,200,230)において、前記磁石部は、磁石磁路が径方向に沿うように設けられた複数の第1磁石(1131)と、磁石磁路が周方向に沿うように設けられた複数の第2磁石(1132)とを有しており、複数の前記第1磁石は、前記周方向に所定間隔で配置されるとともに、複数の前記第2磁石は、前記周方向において隣り合う前記第1磁石の間となる位置に配置されており、前記界磁子は、前記磁石部よりも反電機子側に、軟磁性体である円環状の界磁子コア部材(43)を備え、径方向において、前記界磁子コア部材及び前記磁石部は積層されており、前記磁石部の残留磁束密度をBr、前記界磁子コア部材の飽和磁束密度をBsc、前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離をMa、前記界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法をWsc、とした場合に、Br×Ma≦Bsc×Wscの関係を満たす磁石部及び界磁子コア部材が用いられ、径方向において前記第1磁石の反電機子側であって、前記界磁子コア部材との間には、軟磁性材料よりなる磁性体(133)が配置されており、前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離Maは、Ma/2≦Wsc<Maの条件を満たすように設定されている回転電機。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】周方向に極性が交互となる複数の磁極を含む磁石部(42,239)を有する界磁子(40,204,234)と、多相の電機子巻線(51,202)を有する電機子(50,203,237)と、を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかを回転子とする回転電機(10,200,230)において、前記磁石部は、磁石磁路が径方向に沿うように設けられた複数の第1磁石(1131)と、磁石磁路が周方向に沿うように設けられた複数の第2磁石(1132)とを有しており、複数の前記第1磁石は、前記周方向に所定間隔で配置されるとともに、複数の前記第2磁石は、前記周方向において隣り合う前記第1磁石の間となる位置に配置されており、前記界磁子は、前記磁石部よりも反電機子側に、軟磁性体である円環状の界磁子コア部材(43)を備え、径方向において、前記界磁子コア部材及び前記磁石部は積層されており、前記磁石部の残留磁束密度をBr、前記界磁子コア部材の飽和磁束密度をBsc、前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離をMa、前記界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法をWsc、とした場合に、Br×Ma≦Bsc×Wscの関係を満たす磁石部及び界磁子コア部材が用いられる回転電機。」
2 補正の適否
(1)新規事項の追加について
本件補正により、請求項1には、「前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離Maは、Ma/2≦Wsc<Maの条件を満たすように設定されている」という事項が追加された。
上記追加された事項のうち、「Wsc<Ma」との条件については、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には記載されていない。
これに関して、請求人は、審判請求書において、「補正後の請求項1に記載された補正事項「前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離Maは、Ma/2≦Wsc<Maの条件を満たすように設定されている回転電機。」は、出願当初の明細書の段落[0216]、[0217]の記載や図26等を根拠としています。特に、段落[0216]、[0217]の記載から、第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離MaをMa/2≦Wscとすることが好ましいことが記載されています。また、図26や、界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法Wscを薄くするという趣旨から、第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離MaをWsc<Maとすることが好ましいことが記載されているに等しいと思料します。」と主張している。
しかし、当初明細書等の段落0216~0217を参照しても、Ma/2≦Wscとすることが開示されるものの、Wscの上限に関し、Wsc<Maにすることについて何ら記載されていない。また、当初明細書等の図26をみても、Wscの上限に関し、Wsc<Maとの技術的事項を読み取ることはできない。さらに、当初明細書等の、例えば、段落0012~0013に、「磁石部に界磁子コア部材を積層する場合、回転電機を小型化するため、若しくは回転子の径方向内側における容積を拡大させるためには、径方向の厚さが薄い方が望ましいが、薄くし過ぎると、磁束漏れが生じることとなる。そこで、Br×Ma≦Bsc×Wscの関係を満たす磁石及び界磁子コア部材が用いられるようにした。これにより、適切に磁束漏れを抑制しつつ、径方向の厚さを薄くすることができる。」と記載されているものの、界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法Wscの具体的な上限については何ら記載されておらず、単に「薄くすることができる」等との記載から、「Wsc<Maとすることが好ましいことが記載されているに等しい」と理解することはできない。
さらに、当初明細書等の上記箇所以外をみても、「Wsc<Ma」とすることについては記載されておらず、当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではないから、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(2)に記載されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、以下の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等>
1.特開2015-142484号公報
2.特開2008-245475号公報
3.特開2011-24379号公報
4.特開2013-51765号公報
3 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は理解の一助のために当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】【0001】この発明は、表面磁石型回転電機、すなわち、表面磁石型回転電動機又は表面磁石型発電機における永久磁石を固定する構造に関するものである。」
(イ)「【背景技術】【0002】永久磁石を用いた電動機又は発電機である永久磁石式回転電機は、磁石をロータあるいはステータ表面に配置する表面磁石型(SPM)と、磁石をロータの鉄心内部に組み込む埋込磁石型(IPM)とに大別される。【0003】続きを表示(全16行)この種の永久磁石式回転電機において、埋込磁石型の場合は、ロータの鉄心に磁石が挿入されるためのポケットが形成されており、このポケットに磁石を挿入することで磁石を容易に配置固定でき、ロータが回転した際に磁石の飛散などが生じる虞はない。【0004】一方、表面磁石型の場合、ロータあるいはステータ表面に磁石を貼付けるような構造となるため、特に、インナーロータとして回転させた場合、遠心力による磁石の飛散や剥離、破損等が懸念される。さらに、磁石配置がハルバッハ型配列のように強い反発力を受けながら固定される場合は、より堅牢性を考慮する必要がある。【0005】表面磁石型の永久磁石の固定方法が、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、シャフトへロータ磁石を固定後、磁石外径部の表面全体を円管状のカーボンリングにより覆うことで磁石の飛散防止を図っている。また、隣接する磁石間にくさび形の金具を挿入することで、さらなる固定強度の向上を図っていた。【0006】また、特許文献2では、ロータコア外径側に予め磁石を嵌め込むスリットを設け、その突起部を磁石配置した後に、変形させて磁石を押え込む手法をとっていた。【先行技術文献】【特許文献】【0007】【特許文献1】特開2005-312250号公報【特許文献2】特開2004-23944号公報」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】【0008】上記したように、表面磁石型における磁石の飛散や剥離、破損等を防ぐためには、磁石外径側や隣接する磁石間を利用して機械的に磁石を押え込む構造が有効である。しかし、特許文献1のようなロータ磁石外径部にリング部材を設ける構造では、磁石(界磁)表面から電機子コイルまでの距離(モータギャップ)をリング部材の厚み分大きくする必要があり、これはモータ出力、モータ効率の低下を招くことになる。【0009】また、磁石間部をくさび型部材で押える構造においても、磁石を隙間なく敷き詰めた構成に比べ、くさび部材の体積分、磁石体積を減少させることになり、界磁磁束の低下によりモータ出力、モータ効率の低下を招くことになる。【0010】また、特許文献2では、コアを変形させる手法をとっているが、通常、ロータコア(鉄心) には積層鋼板や圧粉磁心を使用するため、このように無理に変形させると積層鋼板の場合は積層部分が剥離したり、残留応力により磁気特性の低下を招くことになる。また、圧粉磁心の場合、変形はほぼ不可能で粉砕する可能性が高い。一方で積層鋼板や圧粉磁心を使用せず無垢材を用いれば、回転中の鉄損が増加し性能の低下を招くことになる。また、これらの手段はロータ磁石側面部に磁性体が回り込む形状になり、界磁磁束への影響も懸念され、さらに磁極数が多い場合はその工数も問題になる。【0011】そこで、この発明は、表面磁石型回転電機において、性能低下や工数の増加なく、安価でシンプルな方法で永久磁石を固定できる構造を提供することを課題とするものである。」
(エ)「【課題を解決するための手段】【0012】前記の課題を解決するために、この発明は、複数の永久磁石からなるロータ磁石を取り付けたロータと、コイルを巻回したステータとからなる表面磁石型回転電機において、前記永久磁石の端部に設けられた切り欠き部と、この切り欠き部に対応する大きさに形成された磁石固定用のリング部材とを備え、前記切り欠き部に前記リング部材を嵌め込み、ロータに永久磁石を固定したことを特徴とする。【0013】また、前記ロータは、ロータコアの外周に複数の永久磁石を取り付けたインナーロータであり、前記永久磁石の軸方向の両端部に設けられた切り欠き部を有するように構成することができる。【0014】また、前記ロータは、バックヨーク又は筺体部材の内周に複数の永久磁石を取り付けたアウターロータであり、前記永久磁石の軸方向の内周側の両端部に切り欠き部を設けるように構成することができる。・・・【0017】また、前記ロータ磁極にハルバッハ型配列を適用することができる。」
(オ)「【0021】以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。第1の実施形態は、表面磁石型回転電機の一例である表面磁石型のインナーロータ型電動機に、この発明を適用したものである。図1は、この発明の第1の実施形態を示す表面磁石型インナーロータ型電動機のロータを示す分解斜視図、図2は、この発明の第1の実施形態を示す表面磁石型インナーロータ型電動機を示す概略断面図である。【0022】図1及び図2に示すように、ロータ1は、シャフト2にロータコア2aが設けられている。ロータコア2aは、シャフト2よりも径が大きくなっている。このロータコア2aの外周にロータ磁石3が配置される。続きを表示(全14行)【0023】このロータ磁石3の各永久磁石30は、軸方向の両端部の外径側にそれぞれ切り欠き部31を設けている。この実施形態においては、断面矩形形状の切り欠き部31が設けられている。【0024】このロータコア2aの外周に全ての永久磁石30を固定し、ロータ磁石3を配置するとロータ磁石3の両端部には、切り欠き部31が設けられる。この切り欠き部31に対応する大きさに形成された磁石固定用のリング部材4を嵌め込み、ロータ磁石3が固定される。この実施形態では、断面形状が矩形のリング部材4が用いられ、切り欠き部31にリング部材4を嵌め込むと、ロータ磁石3の両端部に段差が無い状態に一体化される。このリング部材4は、例えば、非磁性体で形成されている。尚、磁性体でリング部材4を形成してもよい。【0025】ロータ1へのロータ磁石3の固定は、ロータコア2aの周囲に、全ての永久磁石30…を接着剤で仮固定した後、ロータ磁石3の両端部の切り欠き部31に磁石固定用のリング部材4を嵌めることにより行われる。【0026】そして、ロータ1の外周にモータギャップを有してステータコア5aにコイル5bが巻回されたステータ5を配置して、表面磁石型のインナーロータ型電動機が構成される。【0027】このような構造にすることで、回転時の遠心力や磁気的作用力における永久磁石30の飛散や剥離、破損等を容易に防ぐことができる。また、この形状であれば、モータギャップ部や永久磁石30、30の間には、何も挿入しないため、モータギャップの増加や磁石体積の減少等による性能の低下はほぼ無い。さらに永久磁石30、30の間へくさび型部材をネジ固定したり、部材を変形させて固定する等の方法と比較すると、切り欠き部31にリング部材4を嵌め込むだけで良いので、工数やコストも極めて小さい。」
(カ)「【0028】図3にロータ磁石3の磁石配列を示す。磁石配列は、図3(a)に示す通常磁石配列以外に、(b)に示すハルバッハ型配列でもよい。図3において、磁石の周囲のハッチングは磁場エリアを示している。図3(a)に示す通常磁石配列は、永久磁石30aが径方向着磁され、これらをS極、N極が交互になるように配列されている。これに対して、ハルバッハ型配列は永久磁石30aが径方向着磁、永久磁石30bが周方向着磁となる。【0029】このハルバッハ型配列、図3(b)に示すように、磁石の配列方向に対し片側のみに強磁界を生成することが可能であり、さらに磁極の切替わり方が正弦波状となる特徴も持っている。図3(a)に示すN極とS極を交互に配置した通常磁石配列のものと比べ、より遠方まで強力な磁場を生成することが可能である。【0030】しかし、一方で、この配列は磁石が互いに強い反発力を受け、常に図4に示す矢印方向へずれようとする力が働いている。そのため磁石を強固に固定する必要があり、表面磁石型に用いる場合は特に磁石の飛散や剥離、破損等の防止を意識しなければならいが、この発明の磁石固定方法であれば、シンプルで容易、かつ安価に堅牢な構造が可能となる。」
(キ)「【0031】第2の実施形態は、表面磁石型回転電機の一例である表面磁石型アウターロータ型電動機に、この発明を用いたものである。図5及び図6に示すように、ロータ1は、筒型のバックヨーク1bの内周にロータ磁石3が配置される。バックヨーク1bの代わりに、筺体部材を用いる場合もある。【0032】このロータ磁石3の各永久磁石30は、軸方向の両端部の内周側に切り欠き部31を設けている。この実施形態においては、断面矩形形状の切り欠き部31が設けられている。続きを表示(全12行)【0033】このバックヨーク10の内周に全ての永久磁石30を固定し、ロータ磁石3を配置するとロータ磁石3の内周側の両端部には、切り欠き部31が設けられる。この切り欠き部31に対応する大きさに形成された磁石固定用のリング部材4を嵌め込み、ロータ磁石3が固定される。この実施形態では、断面形状が矩形のリング部材4が用いられ、切り欠き部31にリング部材4を嵌め込むと、ロータ磁石3の両端部に段差が無い状態に一体化される。【0034】ロータ1へのロータ磁石3の固定は、バックヨーク10の内周に、全ての永久磁石30…を接着剤で仮固定した後、ロータ磁石3の両端部の切り欠き部31に磁石固定用のリング部材4を嵌めることにより行われる。【0035】そして、ロータ1の内周にモータギャップを有してステータコア5aにコイル5bが巻回されたステータ5を配置して、表面磁石型のアウターロータ型電動機が構成される。【0036】ところで、アウターロータ型電動機の場合は、遠心力が加わってもロータ磁石3の外周部のバックヨーク1b(または筐体部材)で機械的に抑えられるため堅牢性は比較的確保しやすい。しかし、ハルバッハ型配列を用いる場合は、先に述べたように互いの強い反発力で磁石が剥離する可能性があるため、この発明の固定方法は有効である。」
(ク)引用文献1には、以下の図面が示されている。
「【図3】[図:0001400055000001.jpg]【図5】[図:0001400055000002.jpg]【図6】[図:0001400055000003.jpg]」
(ケ)上記(カ)には、ロータ磁石3の磁石配列は、ハルバッハ型配列でもよい旨の記載、及び、ハルバッハ型配列は永久磁石30aが径方向着磁、永久磁石30bが周方向着磁となる旨の記載があることから、ロータ磁石3は周方向に極性が交互となる複数の磁極を含むことは明らかである。
(コ)上記(カ)及び(キ)並びに図3(b)及び図5の記載から、複数の永久磁石30aは、周方向に所定間隔で配置されるとともに、複数の永久磁石30bは、前記周方向において隣り合う前記永久磁石30aの間となる位置に配置されることが明らかである。
イ 引用発明
上記ア(ア)ないし(コ)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「周方向に極性が交互となる複数の磁極を含むロータ磁石3を有するロータ1と、ステータコア5aに巻回されたコイル5bを有するステータ5と、を備え、前記ロータ1及び前記ステータ5のうちロータ1を回転子とする表面磁石型回転電機において、前記ロータ磁石3は、径方向着磁となる複数の永久磁石30aと、周方向着磁となる複数の永久磁石30bとを有しており、複数の前記永久磁石30aは、前記周方向に所定間隔で配置されるとともに、複数の前記永久磁石30bは、前記周方向において隣り合う前記永久磁石30aの間となる位置に配置されており、前記ロータ1は、前記ロータ磁石3よりも反ステータ5側に、筒型のバックヨーク10を備え、筒型のバックヨーク10の内周にロータ磁石3が配置された、表面磁石型回転電機。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
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引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0004】また通常の磁気回路では、磁束の飽和を防止するために必要以上に厚みの大なるヨークを使用するので、磁気回路の重量が増大するとともに、ヨークが外気に露出しているので、磁束の漏洩が発生しやすい。そこで固定子を構成するヨークを塑性加工によってU字状に形成し、このヨークをU字状の非磁性材料(例えばアルミ)からなるフレームの中に収容した構造が提案されている(特許文献2参照)。【0005】【特許文献1】特開平9-308218号公報(第2~3頁、図1)【特許文献2】特開2000-299973号公報(第4~5頁、図1)」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0006】しかしながら特許文献1に記載されたように、いわゆるハルバッハ形磁気回路を備えたリニアモータとした場合には、ヨークを薄くできるので、幾分かは固定子を軽量化できるが、それだけでは軽量化が十分でなくまた磁気回路の小型化(特に可動子の移動方向と直交する方向の幅寸法の低減)という点では十分とはいえない。また特許文献2に記載されているようにU字状アルミフレームの内部に磁気回路を収容することにより、固定子の軽量化を図ることができるが、アルミフレーム内にハルバッハ形磁気回路を形成するために多大な工数を要するという問題がある。これは、ハルバッハ形磁気回路においては、同極性の磁極が隣接するような磁極配置となるので、磁気的反発力により総ての永久磁石をヨークに固着することが極めて困難となるからである。【0007】従って本発明の目的は、小型かつ軽量で、固定子の組立てが容易な可動コイル型リニアモータを提供することである。」
(ウ)「【0019】上記の永久磁石部材は、いわゆるハルバッハ形磁気回路を形成するので、永久磁石の厚さに対してヨークの厚さをその半分以下と薄くしても、磁気空隙gに高い(例えば0.8~0.9Tの)磁束密度を得ることができ、高い推力を得ることができる。またこの磁気回路によれば、単純な直方体状の永久磁石を使用しても、磁気空隙gに正弦波に近似した磁束密度分布を得ることができる。なお、一端側の永久磁石の長さを他の永久磁石よりも短くしてもよく、これにより磁気空隙gにおける磁束密度分布(X軸方向)を正弦波により近づけることができる。」
(エ)「【図2】[図:0001400055000004.jpg]」
(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載事項
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引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、発生磁界の方向に磁化された主磁極永久磁石と該主磁極永久磁石の磁極の向きと異なるように磁化された副磁極永久磁石とを交互に隣り合わせになるように直線状もしくは円周上に並べて配置したハルバッハ磁石配列構造の界磁極を備えた周期磁界発生装置およびそれを用いたリニアモータ、回転型モータに関する。」
(イ)「【背景技術】【0002】従来、リニアモータ、回転型モータなどに用いるハルバッハ磁石配列構造の永久磁石で構成される界磁極を備えた周期磁界発生装置として、発生磁界の方向に磁化された主磁極永久磁石と該主磁極永久磁石の磁極の向きと異なるように磁化された副磁極永久磁石を有するハルバッハ磁石配列のうち、主磁極永久磁石の磁界発生側の一部を軟磁性材料で置き換えた構造のものが提案されている(特許文献1参照)。【0003】続きを表示(全18行)図11は従来の周期磁界発生装置の断面図である。図11において、102は磁化の方向、103はバックヨーク、111は発生磁界方向(Z方向)に磁化された主磁極永久磁石、112は主磁極永久磁石111の磁極の向きと異なるように磁化された副磁極永久磁石、104は主磁極永久磁石111の磁界発生側に配置された軟磁性材料であり、上記の主磁極永久磁石111と副磁極永久磁石112は交互に隣り合わせになるように直線状に並べて配置されている。【0004】このような構成にしたことにより、バックヨーク103の反対側(図の上側)の面に、正弦波またはそれに近い磁束密度波形を有する周期的な磁界を発生させることができる。この周期磁界発生装置は、主磁極永久磁石111の磁界発生側の一部を軟磁性材料104で置き換えたことで、ハルバッハ磁石配列のみで構成された周期磁界発生装置に比べ、磁気回路の磁気飽和の影響を緩和することができ、発生磁界を高めることができる。【0005】また、図12は従来のハルバッハ磁石配列構造の永久磁石で構成される界磁極を備えた周期磁界発生装置を用いたリニアモータの推力発生原理図である。図12において、103はバックヨーク、104は軟磁性材料、111は主磁極永久磁石、112は副磁極永久磁石、105はコイル、106は主磁極永久磁石111、副磁極永久磁石112およびコイル105との間で鎖交する磁束線、107は推力方向を表している。このような周期磁界発生装置を用いたリニアモータは、周期的な発生磁界中にコイル105を配置し、コイル105に通電することによって、コイル105に発生する磁界と周期磁界発生装置の発生磁界との吸引力と反発力により、コイル105を固定子とした場合は可動子となる周期磁界発生装置を、周期磁界発生装置を固定子とした場合は可動子となるコイル105を直線的に移動させることができる。【0006】また、その他、従来のハルバッハ磁石配列構造の永久磁石で構成される界磁極を備えた従来の周期磁界発生装置として、発生磁界の方向に磁化された主磁極永久磁石とそれ以外の磁極である副磁極永久磁石を有するハルバッハ磁石配列を固定するバックヨークの形状を凸凹構造にし、副磁極永久磁石の高さを主磁極永久磁石の高さより低くした構造のものが提案されている(特許文献2参照)。【0007】このような構成にしたことにより、永久磁石の耐減磁性を高め、発生磁界を大きくすることができる。【先行技術文献】【特許文献】【0008】【特許文献1】特開2007-006545号公報(第8頁、図1)【特許文献2】特開2007-110822号公報(第7頁、図1)」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】【0009】しかし、従来のハルバッハ磁石配列構造の永久磁石で構成される界磁極を備えた周期磁界発生装置は、軟磁性材料そのものの飽和磁束密度に限界があり、昨今の永久磁石の特性向上などにより磁気回路中の磁束密度が高まり、磁気回路の磁気飽和により周期磁界発生装置の発生磁界に限界がみられるという問題があった。また、当該周期磁界発生装置を用いたリニアモータ、回転型モータは、周期磁界発生装置の発生磁界を大きくできないため、推力やトルクを大きくできないという問題があった。また、当該周期磁界発生装置に用いられるハルバッハ磁石配列はその構造によって、発生磁界を正弦波分布にできるが、リニアモータなどの推力向上や推力リプルの低減に向けた、発生磁界のさらなる正弦波化に限界があり、改善の余地があった。【0010】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ハルバッハ磁石配列を有する周期磁界発生装置内の軟磁性材料の形状もしくは主磁極永久磁石と副磁極永久磁石の形状を変更することによって、発生磁界を大きく、より正弦波化した周期磁界発生装置およびそれを用いたリニアモータ、回転型モータを提供することを目的とする。」
(エ)「【実施例2】【0021】次に本発明の第2の実施形態について説明する。図2は本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置の断面図である。続きを表示(全17行)図2において、周期磁界発生装置がバックヨーク103と、磁化方向が上向き(↑)と下向き(↓)の主磁極永久磁石111と、磁化方向が右向き(→)と左向き(←)の副磁極永久磁石112と、主磁極永久磁石111の磁界発生側に配置された軟磁性材料104とで構成されると共に、発生磁界方向が上方向(Z方向)となっている点は、基本的に図11に示した第1実施形態と同じである。図中のA、Bはそれぞれ、軟磁性材料104の発生磁界側の長さ、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さを表しており、ここでは一例として、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAは副磁極永久磁石112のバックヨーク103側の長さB´と同じ長さである。なお、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAと主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBの合計は30mmとしている。【0022】本発明の第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、軟磁性材料104の発生磁界側の移動方向長さAと主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の移動方向長さBとの関係を、A<Bとなるように形成し、かつ、軟磁性材料104のバックヨーク103側の移動方向長さと主磁極永久磁石111の発生磁界側の移動方向の長さを異ならしめた点である。具体的には、軟磁性材料104における発生磁界側の移動方向長さAとバックヨーク103側の移動方向長さを等しくすると共に、主磁極永久磁石111における発生磁界側の移動方向長さとバックヨーク103側の移動方向長さBを等しくしたことを特徴としている。【0023】ここで、本発明の各実施形態と従来技術における周期磁界発生装置の特性を比較した図4に示すように、図4(a)中の第2の実施形態のグラフ(○印)は、一例として、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAを10mm、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBを20mmとした場合である。図4に示したように、従来の周期磁界発生装置が発生する磁束密度が、主磁極磁石中心上のP、Qの位置において0.4Tであるのに対し、本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置では、0.6Tと大きくなっており、本発明は有効であることがわかる。以上より、軟磁性材料104の発生磁界側の長さをA、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さをBとし、A<Bとなるように形成するとともに、副磁極永久磁石112を、主磁極永久磁石111と軟磁性材料104のそれぞれと同じ厚みの2種類の幅の磁石で構成した構造とし、従来例と比べ軟磁性材料104の発生磁界側の面を狭くすることで、発生磁界を大きくした周期磁界発生装置を提供することができる。【0024】図6は本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置のZ=5mm地点でのB/Aに対するギャップ磁束密度最大値分布を示している。図において、横軸は主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBと軟磁性材料104の発生磁界側の長さAの比、縦軸は磁束密度値である。図6に示したように、本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置ではB/A=5.2付近において最もギャップ磁束密度値が大きくなり、B/A=2以下になるとギャップ磁束密度値が急激に小さくなることがわかる。以上より、本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置では2≦B/Aの領域において周期磁界発生装置を作成することにより、より発生磁界を大きくした周期磁界発生装置を提供することができる。【0025】ここで、本発明の各実施形態と従来技術における周期磁界発生装置のZ=5mm地点でのギャップ磁束密度分布波形の調波解析結果を比較した図8に示したように、本発明の第2の実施形態を示す周期磁界発生装置(軟磁性材料104の発生磁界側の長さAを10mm、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBを20mm)では、1次の成分を大きく出来、3次、5次の成分を従来例より小さく出来る。よって、従来例より発生磁界を大きくし、正弦波化した周期磁界発生装置を提供することができる。」
(オ)「【実施例3】【0026】次に本発明の第3の実施形態について説明する。図3は本発明の第3の実施形態を示す周期磁界発生装置の断面図である。続きを表示(全12行)図3において、102は磁化の方向である。発生磁界方向は上方向であり、磁化方向が上向き(↑)と下向き(↓)の111は主磁極永久磁石、磁化方向が右向き(→)と左向き(←)と斜め向きの矢印112は副磁極永久磁石、103はバックヨーク、104は主磁極永久磁石111の磁界発生側に配置された軟磁性材料である。図中のA、Bはそれぞれ、軟磁性材料104の発生磁界側の長さ、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さを表しており、ここでは一例として、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAは副磁極永久磁石112のバックヨーク103側の長さと同じ長さである。なお、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAと主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBの合計は30mmとしている。【0027】本発明の第3実施形態が第2実施形態と異なる点は、軟磁性材料104の発生界側の長さをA、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さをBとし、A<Bとなるように形成すると共に、第2の実施形態における主磁極永久磁石111と隣り合う副磁極永久磁石112を、発生磁界側を2分割し、斜め方向(45°)に磁化させた2個の永久磁石と、バックヨーク103側の1個の永久磁石とより構成した点である。【0028】ここで、本発明の各実施形態と従来技術における周期磁界発生装置の特性を比較した図4に示すように、図4(a)中の第3の実施形態のグラフ(◇印)は、一例として、軟磁性材料104の発生磁界側の長さAを10mm、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さBを20mmとした場合である。図4に示したように、従来の周期磁界発生装置が発生する磁束密度が、主磁極磁石中心上のP、Qの位置において0.4Tであるのに対し、本発明の第3の実施形態を示す周期磁界発生装置では、0.5Tと大きくなっており、本発明は有効であることがわかる。以上より、軟磁性材料104の発生磁界側の長さをA、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さをBとし、A<Bとなるように形成するとともに、第2の実施形態において、発生磁界側の副磁極永久磁石112を2分割し、斜めに磁化させ、副磁極永久磁石112を3つの磁石で構成した永久磁石で構成した構造とし、従来例と比べ軟磁性材料104の発生磁界側の面を狭くすることで、発生磁界を大きくした周期磁界発生装置を提供することができる。」
(カ)「【実施例5】【0034】次に本発明の第5の実施形態について説明する。図10は本発明の第5の実施形態を示す回転型モータの断面図である。続きを表示(全11行)図10は、本発明の周期磁界発生装置(図2)を磁界発生方向が円形状の内側となるように配置し、その内側にコイル105を配置して回転型モータを構成したものである。このような構成にしたことにより、コイル105に通電することによって、コイル105に発生する磁界と周期磁界発生装置の発生磁界との吸引力と反発力により、コイル105を固定子とした場合は回転子となる周期磁界発生装置を、周期磁界発生装置を固定子とした場合は回転子となるコイル105を回転させることができる。【0035】回転型モータにおいては、第1~第3の実施形態で規定したA、Bを軟磁性材料104の発生磁界側の長さ、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さとせず、それぞれ、軟磁性材料104の発生磁界側の長さに対する中心角、主磁極永久磁石111のバックヨーク103側の長さに対する中心角で規定する。【0036】従来の周期磁界発生装置が発生する磁束密度に対し、本発明の第3の実施形態を示す周期磁界発生装置が発生する磁束密度が50%(0.4T→0.6T)増加したことによって、回転型モータのトルクが周期磁界発生装置の発生磁界の増大にほぼ比例して大きくなる。以上より、本発明は有効である。【0037】ここで、図10に示した回転型モータの構成はあくまで一例に過ぎず、本発明の周期磁界発生装置(第1~第3の実施形態)のどの周期磁界発生装置を用いても同様の結果が得られる。また、全ての回転型モータの構造においても有効であり、回転型モータの構造に限定されるものではない。」
(キ)「【図2】[図:0001400055000005.jpg]【図3】[図:0001400055000006.jpg]続きを表示(全11行)【図4】[図:0001400055000007.jpg]【図10】[図:0001400055000008.jpg]【図11】[図:0001400055000009.jpg]」
(4)引用文献4
ア 引用文献4の記載事項
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引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0001】この発明は、DCモータに関し、特に、回転軸に垂直な断面において略多角形の外形を有する角型のDCモータに関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0006】ところで、特に上記のような角型のDCモータにおいては、次のような問題がある。【0007】続きを表示(全11行)第1には、製造コストの問題がある。すなわち、DCモータのマグネットとして、より高エネルギー積のものを使用できるようになり、DCモータの小型化が進んでいる。高エネルギー積のマグネットには、例えばNd(ネオジム)やSm(サマリウム)のような、希土類材料が用いられている。しかしながら、近年、希土類材料の価格高騰のため、このようなマグネットの製造コストが高騰し、DCモータの製造コストに大きく影響している。そのため、DCモータにおいてマグネットの使用量を減らすことにより、DCモータの製造コストを低減させることが望まれている。【0008】第2に、マグネットのエネルギー積が向上しても、DCモータにおいてバックヨークとなるモータケースの板厚を確保する必要があり、DCモータの小型化が困難であるという問題もある。すなわち、DCモータを小型化するためにモータケースを薄型化すると、マグネットとモータケースとで磁気回路を構成するための十分な板厚を確保することができなくなる。この場合、磁気飽和状態が発生し、マグネットのエネルギーを有効に活用することができなくなることがある。【0009】このような第2の問題は、特に、上記のような、角部に磁極を配した角型のモータにおいて顕著である。すなわち、磁極の切替え部分に位置しバックヨークとなる部分においては、磁気飽和状態にならないようにモータケースの板厚を確保することが重要である。しかしながら、磁極の切替え部分がモータケースの平板状の部分に位置する場合、この部分のモータケースの厚みを増加させると、モータが全体として大型化してしまう。【0010】この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、高い性能を有し、かつ、小型化可能であって製造コストを低減できるDCモータを提供することを目的としている。」
(ウ)「【0035】以上説明したように、本実施の形態では、円筒形状のマグネット50が、モータケース10の平面部11の中央に磁極51の中心が一致するように配置されている。そして、モータケース10の角部12とマグネット50との間の部位に、磁性材料からなるバックヨーク70が配置されている。すなわち、磁極51は、側周部10aの肉厚が薄い部分に向き合うように配置されている。したがって、DCモータ1は、磁束が集中する磁極切替え部において、モータケース10の角部12とバックヨーク70とが配置されていることで、磁性材料部分が肉厚となった構造を有している。この角部12とバックヨーク70とが全体として肉厚のバックヨークとして働くので、磁気飽和が回避される。マグネット50の本来の特性を有効に使用し、DCモータ1の効率を向上させることが可能となるので、マグネット50の使用量(使用される体積)を低減し、かつ、DCモータの性能を確保することができる。高価なマグネット50の使用量を最小限にすることが可能でき、DCモータ1の製造コストを低減できる。」
(エ)「【図2】[図:0001400055000010.jpg]」
4 引用発明との対比、判断
(1)本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ロータ磁石3」は本願発明の「磁石部」に相当し、以下同様に、「ロータ1」は「界磁子」に、「ステータコア5aに巻回されたコイル5b」は「電機子巻線」に、「ステータ5」は「電機子」に、「表面磁石型回転電機」は「回転電機」に、それぞれ相当する。
そして、界磁子に相当する「ロータ1」は、回転子であるから、引用発明の「前記ロータ1及び前記ステータ5のうちロータ1を回転子とする」は本願発明の「前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかを回転子とする」に相当する。
また、引用発明の「径方向着磁となる」は本願発明の「磁石磁路が径方向に沿うように設けられた」に相当し、以下同様に、「永久磁石30a」は「第1磁石」に、「周方向着磁となる」は「磁石磁路が周方向に沿うように設けられた」に、「永久磁石30b」は「第2磁石」に、それぞれ相当する。
さらに、磁気ヨークに軟磁性材料が用いられていることは技術常識であるから、引用発明の「筒型のバックヨーク10」は本願発明の「軟磁性体である円環状の界磁子コア部材」に相当する。
加えて、引用発明における筒型のバックヨーク10の内周にロータ磁石3が配置された構成は、バックヨーク10とロータ磁石3とが、径方向において積層された構成に他ならないから、引用発明の「筒型のバックヨーク10の内周にロータ磁石3が配置され」は本願発明の「径方向において、前記界磁子コア部材及び前記磁石部は積層され」に相当する。
(2)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「周方向に極性が交互となる複数の磁極を含む磁石部を有する界磁子と、電機子巻線を有する電機子と、を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかを回転子とする回転電機において、前記磁石部は、磁石磁路が径方向に沿うように設けられた複数の第1磁石と、磁石磁路が周方向に沿うように設けられた複数の第2磁石とを有しており、複数の前記第1磁石は、前記周方向に所定間隔で配置されるとともに、複数の前記第2磁石は、前記周方向において隣り合う前記第1磁石の間となる位置に配置されており、前記界磁子は、前記磁石部よりも反電機子側に、軟磁性体である円環状の界磁子コア部材を備え、径方向において、前記界磁子コア部材及び前記磁石部は積層された回転電機。」
[相違点1]
電機子巻線について、本願発明では、「多相」で構成されるものであるのに対し、引用発明では、多相で構成されるものであるか明らかでない点。
[相違点2]
本願発明では、「前記磁石部の残留磁束密度をBr、前記界磁子コア部材の飽和磁束密度をBsc、前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離をMa、前記界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法をWsc、とした場合に、Br×Ma≦Bsc×Wscの関係を満たす磁石部及び界磁子コア部材が用いられる」のに対し、引用発明では、ロータ磁石3及びバックヨーク10がそのように構成されるか明らかでない点。
(3)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
回転電機において、電機子巻線を多相に構成することは、本願出願前から慣用されている技術(例えば、特開2017-60274号公報の請求項1及び6並びに段落0008及び0011を、また、特開2017-163716号公報の段落0020、0026及び0093を参照。)である。
そして、電機子巻線を多相に構成するか単相に構成するかは、使用用途に応じ、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎず、引用発明の電機子巻線を多相に構成することも当業者が普通に採用し得るものである。
イ 相違点2について
モータにおいて、磁気回路の磁気飽和状態を抑制することが好ましいことは、上記引用文献2~4に記載された技術事項から明らかであるところ、バックヨークの磁気飽和状態を抑制するためには、バックヨークの「飽和磁束」と、バックヨークに流れ込む磁束(以下、「入力磁束」という。)とを「(入力磁束)≦(飽和磁束)」の関係にすればよいことは、技術常識から明らかである。
そして、引用発明においても、磁気回路の磁気飽和状態を抑制すべきことは当業者が当然考慮する事項であり、そのために、「(入力磁束)≦(飽和磁束)」とすればよいことは上記したとおり技術常識であるところ、ハルバッハ型配列のロータ磁石3を備えた引用発明については、磁束の経路を考慮して、バックヨークの径方向の厚さを、「(磁石磁路が径方向に沿うように設けられた磁石の残留磁束密度)×(磁石のバックヨークとの周方向の接触長さ)≦(バックヨークの飽和磁束密度)×(バックヨークの径方向の厚さ)」となるような厚さとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用文献1に記載された表面磁石型回転電機における、「磁石磁路が径方向に沿うように設けられた磁石の残留磁束密度」、「磁石のバックヨークとの周方向の接触長さ」、「バックヨークの飽和磁束密度」及び「バックヨークの径方向の厚さ」は、本願発明の「前記磁石部の残留磁束密度をBr」、「前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離をMa」、「前記界磁子コア部材の飽和磁束密度をBsc」及び「界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法をWsc」にそれぞれ相当するから、引用発明において、バックヨークの径方向の厚さを、「(磁石磁路が径方向に沿うように設けられた磁石の残留磁束密度)×(磁石のバックヨークとの周方向の接触長さ)≦(バックヨークの飽和磁束密度)×(バックヨークの径方向の厚さ)」となる厚さとすれば、本願発明における「前記磁石部の残留磁束密度をBr、前記界磁子コア部材の飽和磁束密度をBsc、前記第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離をMa、前記界磁子コア部材の径方向における厚さ寸法をWsc、とした場合に、Br×Ma≦Bsc×Wscの関係を満たす磁石部及び界磁子コア部材が用いられる」との構成が得られることは明らかである。
以上のとおり、引用発明において、引用文献2~4に記載された技術事項及び技術常識を踏まえて、バックヨークの径方向の厚さについて、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(4)請求人の主張に対して
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審判請求人は審判請求書で、「引用文献1~4や技術常識から、界磁子コア部材の磁気飽和を防止するために、飽和磁束≧入力磁束となるように構成することを導き出すことは可能ですが、引用文献1~4には、入力磁束が、磁石部の残留磁束密度Brと、第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離Maとの積に相当すると考えても(あるいは置き換えても)、磁気飽和を防止するための条件として問題ないことについての記載や示唆もなく、また、それが当時の技術常識だったとは考えられません。」(4頁10~16行)と主張し、また、「引用文献1~4では、磁気回路を構成してから磁束飽和しているか否かを実測するなど手間がかかり、設計が容易でないという問題があり、本願とは異なります。」(4頁20~22行)と主張する。
しかしながら、審判請求人も認めているように、磁気飽和を防止するための条件として「(入力磁束)≦(飽和磁束)」を導き出すことは可能であり、上記(3)で検討したとおり、これを引用発明のハルバッハ型配列のロータ磁石3を備えた引用発明に適用する場合には、「(磁石の残留磁束密度)×(磁石磁路が径方向に沿うように設けられた磁石のバックヨークとの周方向の接触長さ)≦(バックヨークの飽和磁束密度)×(バックヨークの径方向の厚さ)」とすればよいことは当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、審判請求人は、引用文献1~4には、入力磁束が、磁石部の残留磁束密度Brと、第1磁石の周面のうち反電機子側周面の周方向における距離Maとの積に相当すると考えても(あるいは置き換えても)、磁気飽和を防止するための条件として問題ないことについての記載や示唆もなく、また、それが当時の技術常識だったともいえず、さらに、引用文献1~4では、磁気回路を構成してから磁束飽和しているか否かを実測するなど手間がかかり、設計が容易でないという問題がある旨主張しているが、理論的に導き出された条件に関して、それを実際の設計に用いることに問題ないことが文献に記載されていないとしても、実測に代えて理論的に求められた条件を用いて設計を試みることは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
以上によれば、上記請求人の主張は、採用できない。
(5)作用効果について
上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(6)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2~4に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-007701