特許拒絶査定不服審判
2024-015272
熱交換器
- 審判番号
- 2024-015272
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-074064
- 請求日
- 2024年09月25日
- 審決日
- 2026年05月07日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社デンソー
- 【請求人代理人】野々部 泰平
- 【請求人代理人】久保 貴則
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 高橋 学
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P18 .113-Z (F28F) / P18 .121-Z (F28F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-74064号「熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔令和3年10月28日出願公開、特開2021-169907号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願は,令和2年4月17日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 6月30日 :手続補正書、上申書の提出
令和6年 3月21日付け:拒絶理由通知書
同年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月24日付け:拒絶査定
同年 9月25日 :審判請求書の提出
第2 本願発明(本願発明の認定)
本願の請求項1~15に係る発明は、令和6年5月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項5】
内部を流れる熱媒体と、外部を流れる空気との間で熱交換を行う熱交換器であって、
空気の流れ方向において互いに対向して配置され、前記熱媒体が相互に流通可能に接続される第1熱交換部(10)及び第2熱交換部(20)を備え、
前記第1熱交換部は、
前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第1コア部(12)と、
前記第1コア部の端部に接続され、前記熱媒体が流入する流入部(110)を有する第1ヘッダタンク(11)と、を備え、
前記第2熱交換部は、
前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第2コア部(22)と、
前記第2コア部の端部に接続され、前記熱媒体を流出させる流出部(210)を有する第2ヘッダタンク(21)と、を備え、
前記第1ヘッダタンクには、気相の熱媒体が流れ、
前記第2ヘッダタンクには、前記第1ヘッダタンクを流れる気相の熱媒体よりも低温の液相の熱媒体が流れ、
前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは連結部(30)を介して互いに連結されており、
前記連結部には、当該連結部を貫通するようにスリット(31)が形成され、
前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている
熱交換器。」
第3 拒絶査定の拒絶の理由の概要
拒絶査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりのものを含むものである。
理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(特許法第29条第2項)
請求項2-5、7、9に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、依然として、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2019-002609号公報
第4 当審の判断
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
拒絶査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2019-002609号公報:平成31年1月10日出願公開)には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
ア 「【0016】
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフルオロカーボン系冷媒(具体的にはR1234yf)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。」
イ 「【0019】
放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン13から送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮器である。・・・」
ウ 「【0026】
図2に示すように、放熱器12は、複数の熱交換部としての風上側放熱器17および風下側放熱器18を有している。風上側放熱器17および風下側放熱器18は、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器で構成されている。風上側放熱器17および風下側放熱器18の基本構成は互いに同等である。
【0027】
風上側放熱器17は、複数本の風上側チューブ171、風上側上部タンク172および風上側下部タンク173を有している。図2では、図示の都合上、風上側チューブ171、風上側上部タンク172および風上側下部タンク173については、風下側放熱器18の風下側チューブ181、風下側上部タンク182および風下側下部タンク183に括弧付きの符号を付して示している。
【0028】
複数本の風上側チューブ171は、冷媒を流通させる管状部材である。風上側上部タンク172は、複数本の風上側チューブ171の一端部に接続されている。風上側上部タンク172は、複数本の風上側チューブ171に対して冷媒の分配および集合を行うヘッダタンクである。」
エ 「【0032】
風上側放熱器17の各風上側チューブ171は、外表面の平坦面(すなわち扁平面)同士が互いに平行となるように、一定の間隔を開けて積層配置されている。これにより、隣り合う風上側チューブ171同士の間に、送風空気が流通する空気通路が形成される。つまり、風上側放熱器17では、複数本の風上側チューブ171が積層配置されることによって、冷媒と送風空気とを熱交換させる熱交換部が形成されている。」
オ 「【0035】
図2では、フィン19を風下側放熱器18の一部にのみ図示しているが、フィン19は、風上側放熱器17においては隣り合う風上側チューブ171間の略全域に渡って配置されている。さらに、フィン19は、風下側放熱器18においては隣り合う風下側チューブ181間の略全域に渡って配置されている。風上側チューブ171およびフィン19は、風上側コア部17aを構成している。」
カ 「【0038】
風下側放熱器18は、風上側放熱器17と同様に、冷媒を流通させる複数本の風下側チューブ181、風下側上部タンク182および風下側下部タンク183を有している。
【0039】
風下側チューブ181は、風上側チューブ171と同じ扁平チューブが採用されている。隣り合う風下側チューブ181同士の間に形成される空気通路には、フィン19が配置されている。
【0040】
風下側チューブ181およびフィン19は、風下側コア部18aを構成している。風下側コア部18aは、風上側コア部17aを通過した空気と冷媒とを熱交換させる。
【0041】
風下側上部タンク182は、複数本の風下側チューブ181に対して冷媒の分配を行うヘッダタンクである。風下側下部タンク183は、複数本の風下側チューブ181に対して冷媒の集合を行うヘッダタンクである。」
キ 「【0059】
図8に示すように、風上側タンク31は、複数の風上側チューブ171が挿入した状態で接合される風上側チューブ接合部31aと、風上側チューブ接合部31aとともにタンク内空間を構成する風上側タンク本体部31bと、を有している。風下側タンク32は、複数の風下側チューブ181が挿入した状態で接合される風下側チューブ接合部32aと、風下側チューブ接合部32aとともにタンク内空間を構成する風下側タンク本体部32bと、を有している。
【0060】
風上側チューブ接合部31aおよび風下側チューブ接合部32aは、1つのコアプレート40により一体に構成されている。すなわち、コアプレート40は、風上側チューブ接合部31aと、風下側チューブ接合部32aとを有している。」
ク 「【0072】
図12に示すように、コアプレート40において、風下側チューブ接合部32aと、風上側チューブ接合部31aとは、空気流れ方向A1に直列に配置されている。風下側チューブ接合部32aおよび風上側チューブ接合部31aには、それぞれ、チューブ171、181の長手方向端部が挿入されるチューブ挿入穴41が複数形成されている。
【0073】
コアプレート40には、風上側爪部31cおよび風下側爪部32cのそれぞれと嵌合する孔部42が設けられている。そして、風上側爪部31cおよび風下側爪部32cのそれぞれが孔部42に嵌合された状態で、風上側タンク本体部31bおよび風下側タンク本体部32bがコアプレート40に対して固定されている。」
ケ 「【0075】
ところで、孔部42は、コアプレート40において、風上側チューブ接合部31aよりも空気流れ上流側の部位、風下側チューブ接合部32aよりも空気流れ下流側の部位、および風上側チューブ接合部31aと風下側チューブ接合部32aとの間の部位に配置されている。以下、コアプレート40における風上側チューブ接合部31aと風下側チューブ接合部32aとの間の部位を、境界部43という。
【0076】
境界部43には、コアプレート40の表裏を貫通するスリット44が形成されている。スリット44は、境界部43における孔部42を除く部位に複数設けられている。スリット44は、チューブ171、181の積層方向に延びるように形成されている。」
コ 「【0089】
また、本実施形態では、風上側タンク本体部31bと風下側タンク本体部32bとを別体として構成している。これにより、風上側タンク31と風下側タンク32との間の熱移動を抑制できる。このため、風上側タンク31内の冷媒および風下側タンク32内の冷媒のうち、一方の高温冷媒の熱により他方の低温冷媒が加熱されるという熱害が発生することを抑制できる。」
サ 「【0112】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図20および図21に基づいて説明する。本実施形態は、上記第1実施形態と比較して、放熱器12内の冷媒の流れ方が異なるものである。なお、図20では、図示の都合上、風上側チューブ171、風上側上部タンク172、風上側下部タンク173および風上側コア部17aについては、風下側放熱器18の風下側チューブ181、風下側上部タンク182、風下側下部タンク183および風下側コア部18aに括弧付きの符号を付して示している。
【0113】
図20に示すように、本実施形態の放熱器12は、ジョイント213を有している。ジョイント213は、冷媒流入口21aおよび冷媒流出口21bが設けられた接続用部材である。ジョイント213は、風下側上部タンク182および風上側上部タンク172の一端側の側面にろう付け接合されている。
【0114】
ジョイント213の内部には、図示しない冷媒流入通路および冷媒流出通路が形成されている。冷媒流入通路は、冷媒流入口21aから風下側上部タンク182の内部空間へ冷媒を導く冷媒通路である。冷媒流出通路は、風上側上部タンク172から冷媒流出口21bへ冷媒を導く冷媒通路である。
【0115】
図21に示すように、本実施形態における風上側下部タンク173の内部には、仕切部材は設けられていない。また、本実施形態の連通部材20は、風上側下部タンク173と風下側下部タンク183とを連通させる。
【0116】
続いて、本実施形態の放熱器12内に形成される冷媒流路を、図20を用いて説明する。風下側下部タンク183へ流入した冷媒は、図20の矢印R30に示すように、連通部材20を流れ、風上側下部タンク173へ流入する。
【0117】
風上側下部タンク173のへ流入(当審注:「風上側下部タンク173へ流入」の誤記と認める。)した冷媒は、矢印R40に示すように、風上側コア部17aの風上側チューブ171を下方側から上方側へ流れて風上側上部タンク172へ流入する。風上側上部タンク172へ流入した冷媒は、矢印R50に示すように、冷媒流出口21bから流出する。
【0118】
その他の放熱器12の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の放熱器12においても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。」
シ 図12は以下に示すとおりである。
「
[図:0001436734000001.jpg]
」
ス 図21は以下に示すとおりである。
「
[図:0001436734000002.jpg]
」
(2)引用文献1の認定事項
ア 【0112】、【0118】によると、第5実施形態は、第1実施形態と比較して、放熱器12内の冷媒の流れ方が異なるものであって、その他の放熱器12の構成は、第1実施形態と同様であるから、冷媒の流れ方以外のその他の放熱器12の構成は、第1実施形態の記載を参照する。
イ 【0016】、【0019】によると、放熱器12は、内部を流れる冷媒と外気とを熱交換させるものである。
ウ 【0026】~【0027】、【0049】、【0112】、【0115】~【0117】、図21によると、放熱器12は、風下側と風上側とに対向して配置され、内部に冷媒流路が形成された連通部材20で連通される風下側放熱器18と風上側放熱器17とを備えている。
エ 【0026】~【0028】、【0032】、【0035】によると、風上側放熱器17は、冷媒を流通させる管状部材である複数本の風上側チューブ171が積層配置されることによって熱交換部が形成されており、複数本の風上側チューブ171で構成される風上側コア部17aを有していると認められる。
オ 【0028】によると、ヘッダタンクである風上側上部タンク172は、複数本の風上側チューブ171の一端部に接続されている。
カ 【0113】、【0114】、【0117】によると、冷媒は、風上側上部タンク172からジョイント213を経由して冷媒流出口21bから流出するのだから、風上側上部タンク172は、冷媒流出部を有しているといえる。
キ 【0027】、前記オ、カによると、風上側放熱器17は、複数本の風上側チューブ171の一端部に接続され、冷媒流出部を有するヘッダタンクである風上側上部タンク172を有していると認められる。
ク 【0026】によると、風下側放熱器18の基本構成は、風上側放熱器17と同等である。
ケ 前記クを踏まえ、前記エ及び【0038】~【0041】によると、風下側放熱器18は、冷媒を流通させる管状部材である複数本の風下側チューブ181が積層配置されることによって熱交換部が形成されており、複数本の風下側チューブ181で構成される風下側コア部18aを有していると認められる。
コ 【0113】、【0114】によると、冷媒は、冷媒流入口21aからジョイント213を経由して風下側上部タンク182に流入するのだから、風下側上部タンク182は、冷媒流入部を有しているといえる。
サ 前記クを踏まえ、【0038】、【0041】及び前記キ、コによると、風下側放熱器18は、複数本の風下側チューブ181の一端部に接続され、冷媒流入部を有するヘッダタンクである風下側上部タンク182を有していると認められる。
シ 【0019】、【0089】によると、放熱器12は、流入した高温高圧気相冷媒を放熱させて凝縮し、低温冷媒を流出する凝縮器であるから、風下側上部タンク182には、高温高圧気相冷媒が流れ、風上側上部タンク172には、低温液相冷媒が流れるものといえる。
ス 【0059】、【0073】によると、風下側上部タンク182を構成する風下側タンク本体部32bと、風上側放熱器17を構成する風上側タンク本体部31bは、コアプレート40に対して固定されている。
セ 【0075】、【0076】によると、コアプレート40の境界部43には、コアプレート40の表裏を貫通するスリット44が形成されている。
ソ 【0059】、【0072】を踏まえ、図12を見ると、風下側タンク32を構成する風下側チューブ接合部32aのチューブ挿入穴41に挿入された、風下側コア部18aの複数の風下側チューブ181と、風上側タンク31を構成する風上側チューブ接合部31aのチューブ挿入穴41に挿入された、風上側コア部17aの複数の風上側チューブ171は、空気流れ方向A1において、スリット44と重なる位置になっているものがあることが看取される。
(3)引用文献1に記載された発明
前記(1)及び(2)によると、引用文献1には、第5実施形態として以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「内部を流れる冷媒と外気とを熱交換させる放熱器12であって、
風下側と風上側とに対向して配置され、内部に冷媒流路が形成された連通部材20で連通される風下側放熱器18と風上側放熱器17とを備え、
風下側放熱器18は、
冷媒を流通させる管状部材である複数本の風下側チューブ181が積層配置されることによって熱交換部が形成され、複数本の風下側チューブ181で構成される風下側コア部18aと、
複数本の風下側チューブ181の一端部に接続され、冷媒流入部を有するヘッダタンクである風下側上部タンク182と、を有し、
風上側放熱器17は、
冷媒を流通させる管状部材である複数本の風上側チューブ171が積層配置されることによって熱交換部が形成され、複数本の風上側チューブ171で構成される風上側コア部17aと、
複数本の風上側チューブ171の一端部に接続され、冷媒流出部を有するヘッダタンクである風上側上部タンク172と、を有し、
風下側上部タンク182には、高温高圧気相冷媒が流れ、
風上側上部タンク172には、低温液相冷媒が流れ、
風下側上部タンク182を構成する風下側タンク本体部32bと、風上側上部タンク172を構成する風上側タンク本体部31bは、コアプレート40に対して固定されており、
コアプレート40の境界部43には、コアプレート40の表裏を貫通するスリット44が形成され、
風下側タンク32を構成する風下側チューブ接合部32aのチューブ挿入穴41に挿入された、風下側コア部18aの複数の風下側チューブ181と、風上側タンク31を構成する風上側チューブ接合部31aのチューブ挿入穴41に挿入された、風上側コア部17aの複数の風上側チューブ171は、空気流れ方向A1において、スリット44と重なる位置になっているものがある、
放熱器12。」
2 本願発明について
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 後者の「内部を流れる冷媒と外気とを熱交換させる」態様は、前者の「内部を流れる熱媒体と、外部を流れる空気との間で熱交換を行う」態様に相当するから、後者の「放熱器12」は、前者の「熱交換器」に相当する。
イ 後者の「風下側と風上側とに対向して配置され」る態様は、前者の「空気の流れ方向において互いに対向して配置され」る態様に相当する。
後者の「内部に冷媒流路が形成された連通部材20で連通される」態様は、当該冷媒流路を通って、冷媒が相互に流通可能であることは明らかであるから、前者の「前記熱媒体が相互に流通可能に接続される」態様に相当する。
そうすると、後者の「風下側放熱器18」と「風上側放熱器17」は、前者の「第1熱交換部(10)」と「第2熱交換部(20)」にそれぞれ相当する。
ウ 後者の「冷媒を流通させる管状部材である複数本の風下側チューブ181が積層配置されることによって」「形成され」た「熱交換部」は、前者の「前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第1コア部(12)」に相当する。
エ 後者の「複数本の風下側チューブ181の一端部に接続され、冷媒流入部を有する」態様は、前者の「前記第1コア部の端部に接続され、前記熱媒体が流入する流入部(110)を有する」態様に相当する。
そして、後者の「風下側上部タンク182」はヘッダタンクであるから、前者の「第1ヘッダタンク(11)」に相当する。
オ 後者の「冷媒を流通させる管状部材である複数本の風上側チューブ171が積層配置されることによって」「形成され」た「熱交換部」は、前者の「前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第2コア部(22)」に相当する。
カ 後者の「複数本の風上側チューブ171の一端部に接続され、冷媒流出部を有する」態様は、前者の「前記第2コア部の端部に接続され、前記熱媒体を流出させる流出部(210)を有する」態様に相当する。
そして、後者の「風上側上部タンク172」はヘッダタンクであるから、前者の「第2ヘッダタンク(21)」に相当する。
キ 前記エを踏まえると、後者の「風下側上部タンク182には、高温高圧気相冷媒が流れ」る態様は、前者の「前記第1ヘッダタンクには、気相の熱媒体が流れ」る態様に相当する。
ク 前記カ、キを踏まえると、後者の「風上側上部タンク172には、低温液相冷媒が流れ」る態様は、前者の「前記第2ヘッダタンクには、前記第1ヘッダタンクを流れる気相の熱媒体よりも低温の液相の熱媒体が流れ」る態様に相当する。
ケ 後者の「風下側上部タンク182を構成する風下側タンク本体部32bと、風上側上部タンク172を構成する風上側タンク本体部31bは、コアプレート40に対して固定されて」いる態様は、風下側上部タンク182と風上側上部タンク172がコアプレート40を介して連結されているといえるから、前者の「前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは連結部(30)を介して互いに連結されて」いる態様に相当し、後者の「コアプレート40」は、前者の「連結部」に相当する。
コ 後者の「コアプレート40の境界部43には、コアプレート40の表裏を貫通するスリット44が形成され」ている態様は、前者の「前記連結部には、当該連結部を貫通するようにスリット(31)が形成され」ている態様に相当するから、後者の「スリット44」は、前者の「スリット(31)」に相当する。
サ 本願発明における「前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている」との発明特定事項は、全てのチューブがスリットと重なる位置に配置されていることまで特定するものではないから、スリットと重なる位置に配置されたチューブがあれば足りるものであり、スリットと重ならない位置に配置されたチューブがあることを排除していないと解される。
シ 前記サの理解によると、後者の「風下側タンク32を構成する風下側チューブ接合部32aのチューブ挿入穴41に挿入された、風下側コア部18aの複数の風下側チューブ181と、風上側タンク31を構成する風上側チューブ接合部31aのチューブ挿入穴41に挿入された、風上側コア部17aの複数の風上側チューブ171は、空気流れ方向A1において、スリット44と重なる位置になっているものがある」態様は、前者の「前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている」態様に相当する。
ス そうすると、両者は、
「内部を流れる熱媒体と、外部を流れる空気との間で熱交換を行う熱交換器であって、
空気の流れ方向において互いに対向して配置され、前記熱媒体が相互に流通可能に接続される第1熱交換部(10)及び第2熱交換部(20)を備え、
前記第1熱交換部は、
前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第1コア部(12)と、
前記第1コア部の端部に接続され、前記熱媒体が流入する流入部(110)を有する第1ヘッダタンク(11)と、を備え、
前記第2熱交換部は、
前記熱媒体が流れる複数のチューブの積層構造からなる第2コア部(22)と、
前記第2コア部の端部に接続され、前記熱媒体を流出させる流出部(210)を有する第2ヘッダタンク(21)と、を備え、
前記第1ヘッダタンクには、気相の熱媒体が流れ、
前記第2ヘッダタンクには、前記第1ヘッダタンクを流れる気相の熱媒体よりも低温の液相の熱媒体が流れ、
前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは連結部(30)を介して互いに連結されており、
前記連結部には、当該連結部を貫通するようにスリット(31)が形成され、
前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている
熱交換器。」
の点で一致し、相違点はない。
(2)判断
前記(1)のとおり、本願発明と引用発明の間に相違点はないから、本願発明は、引用発明である。
仮に両者に相違点があるとしても微差であり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和6年5月21日提出の意見書(以下「意見書」という。)及び審判請求書において、概略、以下のような主張をしている。
主張1(意見書1ページ)
本願発明のスリットのタンク長手方向の長さがスリット間隔のタンク長手方向の長さよりも長い点は、引用文献1には開示がありません。引用文献1においてご指摘の箇所を確認しましたが、スリットの長さについて規定する記載はありませんでした。従いまして、引用文献1に係る発明と本願発明とは同一ではありません。
主張2(意見書1~2ページ)
本願発明の連結部に相当する部分は、引用文献1では1枚のプレートであり、第1プレート部材と第2プレート部材を有する本願請求項15発明とは異なるものです。本願請求項15発発明において、スリットは、第1プレート部材と第2プレート部材両方とも貫通しております。2枚のプレートを接合しているからこそ、応力が加わると変形しにくい構成で、熱応力が発生しやすいものです。スリットで2枚のプレートを貫通させて熱応力を低減する効果があるものと思料いたします。
主張3(審判請求書4ページ)
本願請求項1発明と引用文献1に記載の発明とは、本願請求項1発明が「前記スリットの前記タンク長手方向の長さは、前記スリット間隔の前記タンク長手方向の長さよりも長い」としているのに対し、引用文献1発明は、「長手方向におけるスリットの長さと、長手方向における隣接スリット間の長さとが同一になっている」点で相違する。
主張4(審判請求書4~5ページ)
本願請求項15発明と引用文献1に記載の発明とは、本願請求項15発明が、「連結部は、第1プレート部材と第2プレート部材との接合部分であり、スリットは、連結部を貫通している」としているのに対し、引用文献1発明は、「1つのプレートに設けられたスリット」である点で相違する。
主張5(審判請求書5ページ)
尚、その他の請求項に係る発明も同様に新規性及び進歩性を有していると思料する。
上記主張について検討する。
主張1及び3は、本願の請求項1に係る発明に固有の
「前記第1ヘッダタンクの中心軸及び前記第2ヘッダタンクの中心軸に平行な方向をタンク長手方向とするとき、
前記連結部には、前記タンク長手方向に所定のスリット間隔を空けて複数の前記スリットが並べて設けられており、
前記スリットの前記タンク長手方向の長さは、前記スリット間隔の前記タンク長手方向の長さよりも長い」
との発明特定事項に関する主張であって、本願の請求項5に係る発明に固有の
「前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている」
との発明特定事項に関する主張ではない。
主張2及び4は、本願の請求項15に係る発明に固有の
「前記第1ヘッダタンク及び前記第2ヘッダタンクは、第1プレート部材と第2プレート部材とを用いて構成されており、
前記連結部は、第1プレート部材と第2プレート部材との接合部分であり、
前記スリットは、前記連結部を貫通している、」
との発明特定事項に関する主張であって、本願の請求項5に係る発明に固有の
「前記スリットは、空気の流れ方向において前記第1コア部のチューブ及び前記第2コア部のチューブと重なる位置に配置されている」
との発明特定事項に関する主張ではない。
以上のとおり、請求人の主張1~4は、本願の請求項5に係る発明である本願発明に関するものではないから、主張5を参酌しても、これらの主張を採用することはできない。
そして、請求人は、本願の請求項5に係る発明である本願発明に関し、何ら主張していない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第1項又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015272